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61~最終話
61b、何を隠そう
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「ちょっ、ちょっとリヴェリー様! そんなに急がれては、せっかくのセットがお乱れにっ!」
「だって、早く見たいんだもの!」
ぎりぎり駆け足にならない速度でせかせかと廊下を進むと、階下に広がる玄関ホールに目当ての人物を見つけた。
「グレンー!!」
「———リヴ。そこで待っていろ」
制止されて足を止めれば、わざわざ階段を上ってきたグレニスがすっと手を差し出してくれる。
「転んでは危ない」
「ありがとうございます」
ガシャン、ガシャッ、ガシャッ
エスコートされて階段を下りるのに合わせ、吹き抜けの空間に硬質な金属音が響く。
玄関ホールに下り立つと、グレニスは改めてこちらに向き直った。
真っ直ぐな視線がゆっくりと全身を撫でる。
「リヴ……いつも綺麗だが、今日は一段と美しい。そのドレスもとてもよく似合っている。明るくやわらかな風合いが、リヴの雰囲気そのものだ」
メイクを気遣ってくれたのだろう、グレニスの指先は頬ではなくするりと耳を撫で、耳朶に揺れるイヤリングを弄んだ。
「私もそう思います! ……ふふっ」
いたずらっぽく笑みを深める。
何を隠そうこのドレスは、グレニスが「リヴのイメージで選んだ」と贈ってくれたハンカチをモチーフにしているのだ。
忙しいグレニスはドレスの打ち合わせに参加していないので、そのことを知らない。けれどグレニスならきっと、とても似合うと言ってくれると確信していた。
「だって、早く見たいんだもの!」
ぎりぎり駆け足にならない速度でせかせかと廊下を進むと、階下に広がる玄関ホールに目当ての人物を見つけた。
「グレンー!!」
「———リヴ。そこで待っていろ」
制止されて足を止めれば、わざわざ階段を上ってきたグレニスがすっと手を差し出してくれる。
「転んでは危ない」
「ありがとうございます」
ガシャン、ガシャッ、ガシャッ
エスコートされて階段を下りるのに合わせ、吹き抜けの空間に硬質な金属音が響く。
玄関ホールに下り立つと、グレニスは改めてこちらに向き直った。
真っ直ぐな視線がゆっくりと全身を撫でる。
「リヴ……いつも綺麗だが、今日は一段と美しい。そのドレスもとてもよく似合っている。明るくやわらかな風合いが、リヴの雰囲気そのものだ」
メイクを気遣ってくれたのだろう、グレニスの指先は頬ではなくするりと耳を撫で、耳朶に揺れるイヤリングを弄んだ。
「私もそう思います! ……ふふっ」
いたずらっぽく笑みを深める。
何を隠そうこのドレスは、グレニスが「リヴのイメージで選んだ」と贈ってくれたハンカチをモチーフにしているのだ。
忙しいグレニスはドレスの打ち合わせに参加していないので、そのことを知らない。けれどグレニスならきっと、とても似合うと言ってくれると確信していた。
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