【完結】男運ゼロな高身長ド貧乳女の私が、過保護なスパダリイケメンに溺愛執着された理由

福重ゆら

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最終章 楓と直樹の長い一日

94. 楓と直樹の誓いの話 side.楓

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 白い光に包まれた私は、元いたベッドに戻ってきた。
 私が瞳を開けるのと同時に、瞼を上げる直樹さんが視界に入る。

「……直樹さん! 私たちの願い、叶いましたね!」
「……楓! 俺たちの願い、叶ったね!」

「「……!」」

 2人同時に口にして、あれは夢なんかじゃないと確信する。
 思わず涙ぐみながら、直樹さんと強く抱き締め合った。

「願ってよかったね……!」

「はい……!」

「俺、楓と結婚したいって願いまで叶ったよ」

「……わ、私もです……」

「俺、幸せだ……!」

「私も……」

 そうして、直樹さんと唇を重ねた。
 込み上げる幸福感のまま、何度も何度も唇を合わせては離し、クスクス笑い合った。

 それを何度も繰り返したあと、直樹さんは何かを思いついたように言った。

「……楓、明日ジュエリーショップに行かない?」

 ジュエリーと聞いて、生まれ変わった葵先輩の、宝石のように輝く紫色の瞳を思い出した。
 あんな綺麗な紫色の石はあるのだろうか。

「いいですね! 私、紫色の石を見たいです」

「えっ?! 婚約指輪ってダイヤモンドじゃなかったっけ?!」

「えぇっ?! 婚約指輪ですか?!」

 驚く私を見た直樹さんが、我に返ったようにハッとした。
 そして、申し訳なさそうに眉を下げた。

「……ごめん、先走ってた。結婚するって決まったから、楓に婚約指輪を贈りたくて。婚約指輪と、あと結婚指輪も良いのがあったら注文しちゃおうか」

「えええっ?! 結婚指輪もですかっ?!」

「うん、……去年のクリスマスに、ブレスレットを贈ったでしょ?」

 クリスマスにもらったペアブレスレットはお気に入りで、直樹さんと一緒に今も毎日付けている。

「あの時、本当は楓にペアリングを贈りたくて、ジュエリーショップを見てたんだけど、あの時は付き合ってすぐだったから、ブレスレットにしたんだ。でも、その時点で既に結婚指輪が欲しくなってたんだよね……」

「そうだったんですか……!」

 直樹さんがそんなに前から私との結婚を意識していてくれたと知って、嬉しい気持ちになる。

「でも、楓は紫色の石が好きなんだね。紫は確か、アメジストだったかな? 婚約指輪と、あと結婚指輪もお揃いでアメジストにしようか」

「待ってください! 直樹さん、違うんです!」

「え?」

「……すみません、私、婚約指輪や結婚指輪の話だと思ってなくて。だから、明日一緒に見て決めましょう」

「? うん、そうしようか。……でも、紫色の石がいいんじゃないの?」

「はい、特にこだわりがある訳ではないんです。葵先輩の瞳が綺麗な紫色だったから、……あんな色の宝石はあるのかなと興味が湧いただけなので」

「……!」

 直樹さんは落ち込んだような顔をした。

「直樹さん? どうしました?」

「……」

 私の問いに、直樹さんは言うか言うまいか、ものすごく迷っているようだった。

「直樹さん、すぐに言うって約束したじゃないですか」

 私がそう言うと、直樹さんは拗ねたように口を開いた。

「……楓がジュエリーショップって聞いた時、俺との誓いの指輪よりも先に、葵ちゃんの瞳を連想したんだ?」

「……あ、ご、ごめんなさいっ」

 すると、直樹さんは、『言ってしまったのだからこの際全部言ってしまえ』といった様子で、続けた。

「それに楓、さっき葵ちゃんのこと抱き締めてたね」

「え?! そ、それは……」

「……俺は楓に抱き締められたことないのに、ズルい」

「ええっ! 今だって、直樹さんと抱き締め合ってるじゃないですか」

「……うーん、少し違うんだよ。俺も抱き締められたい」

 直樹さんはそう言って、ベッドの上で身を起こし、私を見ながら両手を広げた。

 私は困惑しながら、先ほど夢で葵先輩を抱き締めた時の身長差を思い出す。
 直樹さんの脚の間で膝立ちになり、直樹さんの頭を胸に抱き込んでみた。

「こんな感じ、ですか?」

「……うん、こんな感じ」

 そう言って、直樹さんが私の胸に顔を埋めたのだけど、胸が小さいのが非常に申し訳ない気持ちになる。

「楓? ……何でそんな顔してるの?」

「えっ? ええと……」

「……さすがに引いた?」

「いえ! 違いますっ!」

「じゃあ、どうして?」

「……」

「……すぐに言うって約束だよ?」

 こちらを見上げる直樹さんに、心が見透かされる気持ちになる。
 私は観念して、口を開いた。

「……ち、小さくて……申し訳ないなって……」

「楓の身体、最高だよ。本当に綺麗だ……」

「で、でも! ……さっき、夢で葵先輩に再会してすぐ、葵先輩に抱きしめられたんです。葵先輩、ふわふわで……」

 すると、直樹さんの顔色が変わった。

「えっ、……楓、葵ちゃんに抱き締められたの?!」

「えっ、あっ、はい……」

 直樹さんがジトっとした目で私を見る。

「……葵ちゃんがふわふわで、どう思ったの?」

「ええと、幸せというか、気持ち良いというか、ずっとこうしていたいというか……」

「……俺もふわふわになりたい……!!!」

「え?!?!?! あっ! な、直樹さん、違いますよ! 葵先輩のふわふわは、私にとって、ペットのモフモフとか、そういうジャンルで……」

「……だけど俺、筋肉だけじゃなくて脂肪もつきづらくて……」

「直樹さんの身体、細身なのに適度に筋肉もあって、私、すごく好きですよ?」

「……ほんと?」

「ほんとです! 最高、です!」

「嬉しい……!」

「たぶん、……私以外にもそう思ってる女性、たくさんいると思いますよ?」

 すると、直樹さんは目を瞬いたあと、少し拗ねたように私の胸に顔を埋めた。

「……そんなのどうでもいいよ。楓にとって俺が最高なら、あとはどうでもいい」

 直樹さんはそう言って、わたしの胸元にまた顔を埋めた。

「……全部正直に言っちゃったけど、さすがに引いた?」

「引いたりなんかしませんよ! 直樹さんっの愛を感じて嬉しいので、もっと言って欲しいぐらいです」

 そう言ってぎゅうと直樹さんの頭を抱き込んだら、直樹さんも私の腰をギュッと抱き締めた。

「ほんと? じゃあ、もっと言う……!」

「ふふっ、……はい、もっと言ってください!」

 あどけない様子の直樹さんが可愛くて、更に強く抱き込むと、直樹さんはそのまま私の膝の下に腕を入れ、私を縦抱きにした状態で立ち上がった。

「えっ? 直樹さん?!」

「よし、じゃあお風呂にしよっか。ここのお風呂、見た?」

「はい! お留守番の時に掃除してたんですけど、大きくて驚きました!」

「驚くよね! ……俺さ、楓とゆっくりお風呂に入りたくて、部屋を探し始めたんだよ」

「そうだっんですか?」

「その時は、まさか買うなんて思ってなかったけど。ここならゆっくり入れるから、楓のこと、綺麗に洗って、また気持ち良くしてあげるね」

「いえいえ、さっき、たくさん気持ち良くしてもらいましたよ? だから今度は私が、直樹さんのこと、綺麗に洗って、うーんと気持ち良くしてあげます!」

「……っ!」

 直樹さんが息を呑んだ。
 でも、その後すぐにイタズラっぽく笑って言った。

「……じゃあ、お願いしようかな?」

「はい! 覚悟しててください」

「ははっ、……俺、大丈夫か心配だなぁ」

 以前の直樹さんは『ダメ』と言って、私にはさせてくれなかったことを思い出す。
 こんな風に、受け入れてくれるようになったことに幸せを感じた。


 お風呂に到着し、直樹さんが私を床に下ろした。
 そして、直樹さんは私をまっすぐに見た。

「俺さ、楓とのこと、今までは『ずっと一緒にいたい』って願うだけだった。……だけど」

 直樹さんは私の頬に手を添えて、私の瞳をまっすぐに見つめた。
 その真剣な瞳に、胸が高鳴る。

「楓を守る。楓を幸せにする。そして、最後の1秒まで、楓の隣にいると誓うよ」

「……!」

 私も、同じだった。
 1年前のあの日に自信を失ってから、私は願うだけだった。
 それはどこか受け身で、運命を相手に委ねていて。
 だから怖いと感じていたのかもしれない。

 でも、『誓い』は違う。
 口にした内容を叶えるべく、自ら行動するのだ。

 行動は、……私の得意分野だ!

 私は、覚悟を決めて、口を開いた。


「私も、直樹さんを守ります! 他の誰より私が、直樹さんを幸せにします! そして、最後の1秒まで、直樹さんの隣にいるって、……誓います!!!」


 そう言い終えると、心のどこかでずっと感じていた大きな恐怖が、すぅっと消えていくのを感じた。
 葵先輩に言われた言葉を思い出す。

 ーーー『わたしが悠くんを幸せにするって決めたらね、不思議と怖いと思う気持ちがなくなったの』

 葵先輩が言っていたのは、こういうことだったのかもしれない。

 胸がいっぱいになって、涙が込み上げた。


 その瞬間、直樹さんにぎゅうっと強く抱き締められた。

「楓……っ、俺、今、誰にも負ける気がしない」

 「私も、一番怖かったものが、なくなりました……!」

 直樹さんが腕を緩め、私の顔を覗き込む。

「楓も……?」

「はいっ」

 私の瞳からは涙がとめどなく溢れるのに、心には力がみなぎっていた。
 お昼に駅で感じたものよりも、ずっとずっと強く。

 私は直樹さんの頬に手を添えて、口を開いた。


「……最強です」
「……最強だ」


 私と同時に口にした直樹さんの頬にも涙が伝っていて、お互いの涙を拭いながら、クスクス笑い合った。


「私、誓いを絶対に叶えます!」

「うん、俺も。絶対に、叶えてみせるよ」


 そう口にしながら、唇を重ねた。


 その時、まるで私たちを祝福するように、遠くの方で葵先輩と悠斗さんが笑い合う声が聞こえた気がした。
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