ワナビスト龍

理乃碧王

文字の大きさ
6 / 76

第六筆 登場じゃがいも警察!

しおりを挟む
「うむ! 完成したッ!」

 龍はドヤ顔となる。
 男一匹ウルフ大将、第三十一話が完成したのだ。
 第三十一話『俺の体がポイズン!』の流れはこうだ。
 主人公狼介が山籠もり中、ポイズンスライムが現れ死闘開始。
 狼介はポイズンスライムの毒液を避けながら、必殺の『烈狼断拳』で撃破する。
 その後、倒したポイズンスライムが『じゃがいも』をドロップ。
 それをじゃがバターに調理して食すラストである。

 ※烈狼断拳:月影狼介が山中で編み出した必殺拳。咆哮と共に繰り出される破壊力抜群のパンチは大岩をも砕く。

「せいやッ! ドラゴン投稿ッ!」

 投稿完了。
 これで今日の執筆作業は終了。
 龍、本当にお疲れ様でした。

「それではいただきますッ!」

 仕事を終えた龍はここでやっと晩ご飯を食べることにした。
 今日のメニューは即席麵『ビョンギュソース焼きそば』だ。

「ズル! ズル! ズル! ズル! ズル!」

 ズルズルと爆音を立てながら食す。

「グビ! グビ! グビ! グビ! グビ!」

 龍は止まらない。
 続いてはペットボトルの緑茶飲料『荒鷲』だ。
 これを豪快に飲み干す。

「ごちそうさま!」

 合掌構えを見せる龍、さながら少林寺拳法。
 全ての生きとし生けるもの、自然の恵みに感謝を表すポーズだ。

「おっと……そろそろ『飛龍クリック』だな」

 そして、龍はパソコン画面の更新ボタンを押す。

 それは何故か?
 男一匹ウルフ大将に評価ポイントもしくはブクマがついているかもしれないからだ。
 一流のワナビストは、毎度の自作チェックを怠らないのである。
 このきめ細かいチェックは早速効果を出す。

 ▶感想が書かれました

「フハッ」

 新着通知に早速連絡が入った。
 男一匹ウルフ大将の感想が書かれたのである。

「ゴクッ……か、感想!」

 龍は一流のワナビスト。
 作品に感想が届いたのは初めてのこと。
 恋する乙女のようにドキドキとした気持ちとなる。

「ど、どんな感想が届いたんだろう」

 指を震わせる龍。
 それはさながら武者震いか、はたまたラブレターを好きな男子に届ける女の子か。
 あゝ心臓が張り裂けそうな気持ちだ。
 そして、意を決して感想をチェックすると――。

――――――

 気になる点
 これって異世界の中世ヨーロッパ文化だろ。
 なのにじゃがいもがあるっておかしくね?
 それとバターが急に出てくる描写が笑えるんですけどw
 これってコメディですかw

 一言
 つまらん。

 投稿者: ああああ

――――――

 気になる点
 じゃがいもを料理するとか意味不明です。
 そもそも、じゃいがいもは中世ヨーロッパにありません。
 この表現には誤りがあるので書き直した方が無難です。
 それとポイズンスライムが食べ物を落とすところも意味がわかりません。
 ゲームの影響を受け過ぎではないでしょうか、現実感に欠けます。
 後なんでしょうか、全般的にセンスが昭和過ぎますね。
 ひょっとして、あなたは40代の男性なのでしょうか。

 一言
 第一話も少し拝読しましたが非常に読みづらいの一言。
 もう少し地の文を減らした方がよろしいかと。
 それと主人公がスライムにボコボコにされる展開もダメ。
 話のテンポが悪すぎて、あくびが出てしまいました。

 投稿者: ゲロリンマン

――――――

「えっ……じゃがいもってダメなの?」

 この時、龍は初めて知った。
 どうやら『異世界にじゃがいもを出してはいけない』ようだ。
 しかし、龍はこうも思った。

「創作って自由ではないのか?」

 龍はそう思うと悶々たる気持ちになる。
 そもそも、中世ヨーロッパにじゃがいもはないってどういうことだ。
 そこで、龍はこのモヤモヤをSNSでぶつけることにした。

 ギアドラゴン:自作の感想で『中世ヨーロッパにじゃがいもを出すのはおかしい』という意見を頂いた。俺にはさっぱりわからん。創作というものは自由ではないのか?

 このポストを投稿してすぐに返事が来た。

「こ、こいつは!」

 アイコンが西洋人美少女のラノベイラスト。
 見覚えのある平仮名のアカウント名。
 引用したのはそう――。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:中世を舞台にした異世界物でじゃがいもが登場するの、ちょっと笑っちゃうわ。じゃがいもは16世紀以降にヨーロッパに伝わったものなんだから、中世には存在しないはず。時代考証くらいちゃんとして欲しいよね。歴史を無視した設定って、物語の説得力を一気に失わせるんだから。

 宿敵まるぐりっとだ。
 しかも、今度は書籍化だけでなくコミカライズも決定したようだ。
 それはそれとして、龍はまるぐりっとのイヤミな引用で気づかされた。

 後で知ったことだが、じゃがいもは中南米原産の植物。
 その起源はインカ帝国などの古代文明で栽培されたところから始まるという。
 そして、ヨーロッパでのじゃがいもの普及は16世紀後半。
 インカ帝国を滅亡させた際、スペインのフランシスコ・ピサロ軍が持ち込んだという説が有力とのこと。
 つまり、大航海時代以前の中世にじゃがいもが普及しているわけがないという主張である。

「ピサロとか魔剣士かよ!」

 龍は叫んだ。
 異世界物にじゃがいもを登場させたら、それを取り締まる『じゃがいも警察』の存在を知らなかった。

「ポテェートーウウウゥゥゥ!」

 これで暫くポテトチップスを食えそうもない。
 ポテト見るだけで、今日の無知と恥を思い出して穴に入りたくなる。
 そして、このじゃがいもに対する龍の問題提起はこれで終わるはずだったが――。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

れすとあ ─モンキーガール、風になる─

海凪ととかる
キャラ文芸
 中学女子の100㍍走の記録保持者で、天才スプリンターとして将来を嘱望されていた大倉香奈 《おおくらかな》はスポーツ特待生として陸上強豪校への進学が決まっていたが、競技中の怪我で引退を余儀なくされ、燃え尽き状態で日々を過ごしていた。  香奈のクラスメイトで同じ中学出身である宮本佑樹《みやもとゆうき》は母子家庭で、パン屋に勤める姉の紗羅《さら》、不登校である小学生の妹の咲良《さくら》と一緒に暮らしている。ミニバイク『モンキー』を姉共々愛しており、整備を一手に引き受け、高校にもモンキーでバイク通学している。  ある日、登校直前までモンキーを整備していた佑樹は、学校の玄関で電車通学している香奈と会い、オイルで汚れた手を見られ、バイクの整備ができることを明かす。その時は特にバイクに関心はなかった香奈だったが、その日の放課後、偶然に紗羅の勤めるパン屋に寄り、そこにあった沙羅のモンキーに一目惚れしたことで、モンキーに乗るために二輪免許を取ることにする。  すでに廃番となっている旧車のモンキーをどうやって手に入れたらいいか佑樹に相談した香奈に、佑樹は自宅にある壊れた廃車のモンキーを自分の手で再生《レストア》してみることを提案する。自分の目でそのモンキーを目にした香奈は、自分の足で走れなくなった自分自身と乗り手に見捨てられたモンキーの境遇を重ね、再び一緒に走れるようにモンキーのレストアに着手していく。  これは、自分の足で前へ進めなくなって俯いていた少女が新たな足を得て再び顔を上げて前へ踏み出すまでの"再生"の物語。  これは、乗り手から見捨てられて朽ちつつあった旧車のバイクが新たな乗り手によってレストアされて再び走り出す"再生"の物語。 ※この物語の本文にはAIは使用していません。表紙イラストおよび作中挿絵はAI生成です。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...