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第四十二筆 古田島さんからの誘い!
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「ギアドラゴンは彼らと出会えたかしら」
鬼丸まりあはボソボソと呟く。
それは龍がレイヴンクラブに入会し、そこに住まう『魔物達』に出会えたかどうかの心配である。
「書籍化ってのは魔物達との折り合いにかかっている……」
相変わらず「ボイトレしてくれや!」な小さな声。
だが、そこには人間らしい他者に対する労わりと優しさの感情が込められていた。
「私は気付いている……あそこは蜃気楼、最初から物事は決まっている『出来レース』という運命」
おいおい、英語なんて使っちまってるよ。
鬼丸は『意味深』で『中二病』臭い台詞を吟遊詩人のように謳い続けるぞ。
「どんな汚いことをしてでも『書籍化』させる……書籍化に取り憑かれた魔物達が住まう場所……それがレイヴンクラブ……」
スッと右手人差し指で自分の唇をなぞる鬼丸。
まるで口紅を塗っているかのような動作。
その所作が実に中二病臭い。
何かの漫画かアニメのマネだろうか。
それは我々の知るところではないが――。
「ギアドラゴンのような真面目な人が耐えられるかしら? でも、書籍化というプロを志す限りは『汚い世界』も見なけりゃならない」
そこは元プロラノベ作家様だ。
彼女は書籍化を目指している龍を敢えて虎穴にぶち込んだようだ。
そう、あのレイヴンクラブには『ヤバいヤツ』がいっぱいいる。
まだ見ぬ強豪、ぶっ飛んだWeb小説家がたくさんいる。
「彼は私に『現実』を教えてくれた……」
しかし、プロを目指すにはそういった『ヤバいヤツ』を体験せねばならない。
このラノベ業界は実に狭い。
横の繋がりを大事にしていかないと生きていけない部分がある。
そう、ラノベはエンタメというビジネス。
流行を見据えて書き続けないとすぐに首切り対象だ。
そこはプロ野球選手やサッカー選手となんら変わらない。
生き残るために作家、編集者同士の繋がりを作り、出版業界の最新情報やトレンド、読者の反応などを共有しないとならない。
業界内で良好な関係を築くことで、仕事の依頼やプロジェクトのチャンスが増えることになるからだ。
「お礼に私も『現実』を教えなきゃらならない……」
ヤバい作家や編集者と上手く付き合えるか。
毎日の重圧と気疲れに耐えられるか。
鬼丸はラノベ作家『まるぐりっと』として、龍に試練を与えたのだ。
「てか、今日は日曜日だから休みじゃん……」
ここはH市のリアル転職場所、ハローワーク。
でも、今日は日曜日だから当然としてお休みだ。
誰もいないハロワの自動扉の前で仁王立ちだ。
鬼丸はガラスの扉に映る、ゴスロリ姿の自分を見て呟いた。
「今日も、ランチは具なしのパスタ……」
鬼丸の試練が課せられていた。
生活費を浮かせようと、今日も彼女はオリーブオイルと胡椒だけで味付けしたパスタを食べるのだ。
***
「阿久津川くん大丈夫? 一人で叫んだり、一人で体をくねらせたり」
「あわ……あわわわわわ……」
うーん、これは困った困った小松帯刀。
歩きスマホで、仮想空間上のWeb小説サロン『レイヴンクラブ』に突入した龍。
その世界に入り込んでしまい、周りが見えなかったようだ。
一人で魔物達と出会い叫んだり、一人リアルダメージを受けてダンシングしたりと痛い姿を見られた。
それも、自身が苦手とする職場の上司なら尚更だ。
「あのさ……『フェアリー・ドラゴン・タップ』って何?」
あーっと!
古田島にレイヴンクラブに突入した時から見られてたようだぞ。
龍はこの時、思い出していた。
お得意の「飛龍クリック!」は、街中なので叫ばないよう細心の注意を払っていた。
しかし、ネットという仮想空間に入り込むうちに現実と仮想の境界が曖昧となり、恥ずかしい必殺タップを叫んでしまっていたようだ。
「疲れているのなら、しっかりと静養なさい。それが社会人としての努めよ」
古田島の目がキラリと光る。
ん、ちょっと待った。
目がキラリと光ると書いているが、今回に限ってメガネと書いていない。
つまり、今日の古田島はノーメガネのコンタクトモードだ。
「メガネじゃない!」
「そこはツッコミどころじゃないでしょう。というか、私の質問に答えて」
「こ、これはブレイキンダンスの練習でありますッ!」
龍はビシッと直立不動の姿勢に入った。
まさしく、それはブートキャンプにおける新米ソルジャーのようだった。
それと、オリンピック競技の練習だという見苦しい言い訳をトッピング。
何だ、この光景と台詞は。
「ブレイキンダンスって叫んだりしたっけ」
古田島は的確に相手の急所を刺すようなツッコミを入れる。
(くっ……龍よ! ベストな言い訳を考えろ!)
龍は視線を逸らして、滝のような汗を流しながら言い訳を必死らこいて考える。
そして、出た答えが――。
「ほ、本当のことを言います! これは『迅立ち』! 『迅立ち』の練習でありますッ!」
「な、何それ……」
「漫画『マスターカラテ迅』において! 作者『ナルキッソス小池』先生が描く独特なポージングのことですッ!」
龍が体をうねり「バァーン!」と述べながら、変則的なポーズを行う。
それは龍が大好きな漫画、マスターカラテ迅で描かれる独特のポージング『迅立ち』の練習であるという無茶なウソだ。
無論のこと古田島は呆れ顔で指摘する。
「そんなもの練習する必要があるの?」
「こ、今度、コスプレのイベントがあるンです! これはそのためのものですッ!」
「はいはい」
と古田島はヤレヤレといった表情で龍の肩をポンと叩く。
肩叩き、それはつまり『自由契約』を告げるのだろうか。
(お、俺が戦力外通告ですと!? トライアウトの準備をしなければならないというのか!)
頭がパニくる龍。
自分がプロ野球選手にでもなったかのような大勘違いだ。
大丈夫だ、ご安心ください。
時期はまだ年末でもないし、そもそもお前はただの配送ドライバーだ。
「ちょっと私に付き合いなさい」
「え?」
「聞こえなかった? あなたに拒否権はないの」
「な、何か前もこんなパターンありませんでしたか」
「気のせいよ。ほら、いらっしゃい」
古田島が歩き出すと共に、龍はその後をトコトコとついていく。
その姿は何だか勇者様についていく仲間のようだ。
(て、展開が使い回しじゃないのか……この間のようなバーに行くのか?)
左様、これは前も似たようなシーンがあった。
やる気のない作者様の使い回し展開なのだろうか。
龍が述べるように、これよりオサレなバーに行くのか?
しかし、まだ日も暮れてない日曜日という休日だ。お酒を飲むには早すぎるぞ。
(お、俺はこれからどうなるんだろう……)
果たして、龍は古田島にどこへ連れていかれるというのか。
現実と仮想のイベントが同時に交差する中、ギアドラゴンこと阿久津川龍の運命は如何に。
鬼丸まりあはボソボソと呟く。
それは龍がレイヴンクラブに入会し、そこに住まう『魔物達』に出会えたかどうかの心配である。
「書籍化ってのは魔物達との折り合いにかかっている……」
相変わらず「ボイトレしてくれや!」な小さな声。
だが、そこには人間らしい他者に対する労わりと優しさの感情が込められていた。
「私は気付いている……あそこは蜃気楼、最初から物事は決まっている『出来レース』という運命」
おいおい、英語なんて使っちまってるよ。
鬼丸は『意味深』で『中二病』臭い台詞を吟遊詩人のように謳い続けるぞ。
「どんな汚いことをしてでも『書籍化』させる……書籍化に取り憑かれた魔物達が住まう場所……それがレイヴンクラブ……」
スッと右手人差し指で自分の唇をなぞる鬼丸。
まるで口紅を塗っているかのような動作。
その所作が実に中二病臭い。
何かの漫画かアニメのマネだろうか。
それは我々の知るところではないが――。
「ギアドラゴンのような真面目な人が耐えられるかしら? でも、書籍化というプロを志す限りは『汚い世界』も見なけりゃならない」
そこは元プロラノベ作家様だ。
彼女は書籍化を目指している龍を敢えて虎穴にぶち込んだようだ。
そう、あのレイヴンクラブには『ヤバいヤツ』がいっぱいいる。
まだ見ぬ強豪、ぶっ飛んだWeb小説家がたくさんいる。
「彼は私に『現実』を教えてくれた……」
しかし、プロを目指すにはそういった『ヤバいヤツ』を体験せねばならない。
このラノベ業界は実に狭い。
横の繋がりを大事にしていかないと生きていけない部分がある。
そう、ラノベはエンタメというビジネス。
流行を見据えて書き続けないとすぐに首切り対象だ。
そこはプロ野球選手やサッカー選手となんら変わらない。
生き残るために作家、編集者同士の繋がりを作り、出版業界の最新情報やトレンド、読者の反応などを共有しないとならない。
業界内で良好な関係を築くことで、仕事の依頼やプロジェクトのチャンスが増えることになるからだ。
「お礼に私も『現実』を教えなきゃらならない……」
ヤバい作家や編集者と上手く付き合えるか。
毎日の重圧と気疲れに耐えられるか。
鬼丸はラノベ作家『まるぐりっと』として、龍に試練を与えたのだ。
「てか、今日は日曜日だから休みじゃん……」
ここはH市のリアル転職場所、ハローワーク。
でも、今日は日曜日だから当然としてお休みだ。
誰もいないハロワの自動扉の前で仁王立ちだ。
鬼丸はガラスの扉に映る、ゴスロリ姿の自分を見て呟いた。
「今日も、ランチは具なしのパスタ……」
鬼丸の試練が課せられていた。
生活費を浮かせようと、今日も彼女はオリーブオイルと胡椒だけで味付けしたパスタを食べるのだ。
***
「阿久津川くん大丈夫? 一人で叫んだり、一人で体をくねらせたり」
「あわ……あわわわわわ……」
うーん、これは困った困った小松帯刀。
歩きスマホで、仮想空間上のWeb小説サロン『レイヴンクラブ』に突入した龍。
その世界に入り込んでしまい、周りが見えなかったようだ。
一人で魔物達と出会い叫んだり、一人リアルダメージを受けてダンシングしたりと痛い姿を見られた。
それも、自身が苦手とする職場の上司なら尚更だ。
「あのさ……『フェアリー・ドラゴン・タップ』って何?」
あーっと!
古田島にレイヴンクラブに突入した時から見られてたようだぞ。
龍はこの時、思い出していた。
お得意の「飛龍クリック!」は、街中なので叫ばないよう細心の注意を払っていた。
しかし、ネットという仮想空間に入り込むうちに現実と仮想の境界が曖昧となり、恥ずかしい必殺タップを叫んでしまっていたようだ。
「疲れているのなら、しっかりと静養なさい。それが社会人としての努めよ」
古田島の目がキラリと光る。
ん、ちょっと待った。
目がキラリと光ると書いているが、今回に限ってメガネと書いていない。
つまり、今日の古田島はノーメガネのコンタクトモードだ。
「メガネじゃない!」
「そこはツッコミどころじゃないでしょう。というか、私の質問に答えて」
「こ、これはブレイキンダンスの練習でありますッ!」
龍はビシッと直立不動の姿勢に入った。
まさしく、それはブートキャンプにおける新米ソルジャーのようだった。
それと、オリンピック競技の練習だという見苦しい言い訳をトッピング。
何だ、この光景と台詞は。
「ブレイキンダンスって叫んだりしたっけ」
古田島は的確に相手の急所を刺すようなツッコミを入れる。
(くっ……龍よ! ベストな言い訳を考えろ!)
龍は視線を逸らして、滝のような汗を流しながら言い訳を必死らこいて考える。
そして、出た答えが――。
「ほ、本当のことを言います! これは『迅立ち』! 『迅立ち』の練習でありますッ!」
「な、何それ……」
「漫画『マスターカラテ迅』において! 作者『ナルキッソス小池』先生が描く独特なポージングのことですッ!」
龍が体をうねり「バァーン!」と述べながら、変則的なポーズを行う。
それは龍が大好きな漫画、マスターカラテ迅で描かれる独特のポージング『迅立ち』の練習であるという無茶なウソだ。
無論のこと古田島は呆れ顔で指摘する。
「そんなもの練習する必要があるの?」
「こ、今度、コスプレのイベントがあるンです! これはそのためのものですッ!」
「はいはい」
と古田島はヤレヤレといった表情で龍の肩をポンと叩く。
肩叩き、それはつまり『自由契約』を告げるのだろうか。
(お、俺が戦力外通告ですと!? トライアウトの準備をしなければならないというのか!)
頭がパニくる龍。
自分がプロ野球選手にでもなったかのような大勘違いだ。
大丈夫だ、ご安心ください。
時期はまだ年末でもないし、そもそもお前はただの配送ドライバーだ。
「ちょっと私に付き合いなさい」
「え?」
「聞こえなかった? あなたに拒否権はないの」
「な、何か前もこんなパターンありませんでしたか」
「気のせいよ。ほら、いらっしゃい」
古田島が歩き出すと共に、龍はその後をトコトコとついていく。
その姿は何だか勇者様についていく仲間のようだ。
(て、展開が使い回しじゃないのか……この間のようなバーに行くのか?)
左様、これは前も似たようなシーンがあった。
やる気のない作者様の使い回し展開なのだろうか。
龍が述べるように、これよりオサレなバーに行くのか?
しかし、まだ日も暮れてない日曜日という休日だ。お酒を飲むには早すぎるぞ。
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