ワナビスト龍

理乃碧王

文字の大きさ
61 / 76

第六十一筆 二次創作者との対峙!

しおりを挟む
 読物マルシェは終わり、日常へと帰ってきた龍。
 どんちゃん騒ぎの古田島達創作者チームの打ち上げは終わり、ただの配送ドライバーに戻っていた。
 そして、龍は一人の創作者として己の創作道を開拓しようと決心したのだが――。

「うーむ……」

 創作における生みの苦しみは常に伴う。
 では、果たして『自分が書きたいもの』とは何だろうか。
 そう問われると、明確な答えが出なかった。
 龍の部屋のちゃぶ台の上には紙が置かれ、シャーペン書きの文字が並ぶ。
 その文字は『友情』『努力』『勝利』『愛』『拳』『令嬢』『ファンタジー』『エスパー』エトセトラ、エトセトラ。
 思いつく限りの単語を書き出すことで『答え』を見つけ出そうとしていた。

「ムサアアアアア!」

 龍は紙を破り捨てた。
 文字を羅列して書いただけで答えなど見つかるはずもない。

「ライオン令嬢もすっかりエタってしまったぜ」

 某探偵のように頭をボリボリとかく龍。
 己だけの令嬢ものを書こうと決心したが、読物マルシェとの出会い以降、ここ数日全く書けないでいた。
 というよりも、Web小説から少しづつ距離を置いている状況だ。
 最近では古田島の作品である『月夜の竜と光の湖』を読む毎日であった。

「この作風の作品はWebではスコップしないと見つからないし、あったとしても受けないだろうな」

 龍はポツリと言葉を述べる。
 古田島の『月夜の竜と光の湖』は児童文学的な作品だった。
 内容は幻想的な森と湖に囲まれた小さな村に住む幼い兄妹が主人公の物語であった。
 兄と妹はある日、森の奥にある光の湖『エルヴァーナ』が満月の光で輝くのを目にした。
 古くから村では、その湖には『月夜の竜』が住んでいるという言い伝えがあったのだ。
 ある夜、兄妹は好奇心に駆られて湖へと向かい、月光の下で美しい銀色の鱗を持つ『月夜の竜』に出会った。
 この龍は人間の言葉を話し、兄妹に『湖の光を守る使命』を与える。
 龍によると、湖の光は森と村の平和を保つ力の源であり、それを狙う『影の獣』が迫っているという――。

「……俺にはとてもじゃないが書けない」

 龍は破った紙と一緒に置かれる『月夜の竜と光の湖』の表紙を見つめる。
 それと同時にため息も出る。
 このような作品は自分では絶対に書けないものであろうことを理解していたからだ。

「他のWeb小説家も書けない人の方が多いんじゃないか」

 と述べながら龍は赤いスマホを取り出した。
 半ば自分の才能の無さに呆れ、SNSを眺めることにした。
 悩んでイライラしたところでしょうがない。
 気分展開の一環として、各Web小説家のポストでどのようなことを呟いているかチェックすることにしたのだ。
 ひょっとしたら、そこに龍の創作のヒントが隠されているのかもしれないからだ。

「毎度のことながら、流行とか、ランキング攻略とか、コンテストの選考とかそんな話ばっかりだな」

 ため息がより一層強くなる。
 Web小説家のポストはいつもの通りだった。
 龍が述べるように、Web小説家のポスト内容は投稿サイトの流行やランキング攻略などで溢れている。

 そして、各投稿サイトで行われるコンテストの選考内容で一喜一憂する姿、書籍化の報告。
 龍は指を動かしながらスクロールしながら確認するも、まるでbotのように繰り返されるポスト群。
 自分は何故創作活動をするのか、何を創っていきたいのか――。
 そういった、創作の原点と目標を語るポストをとうとう目にすることがなかった。

「そういえば、うまむすこさんは低浮上気味になったな」

 龍はスクロールしていって気づいた。
 最近シュートが強いうまむすこのポストが流れてこない。
 うまむすこだけではない、腐ったみかんスミスなど他のアンチストギル梁山泊達のポストが流れてこなくなったのだ。
 それもそのハズ、彼らはいつの間にかアンチ活動を止めており、アカウントは低浮上気味でポストがほぼない。

 あるとしても、スポーツや著名人に関するニュースなどのリポストしかしていない。
 どこかのラノベ作家やWeb小説家のポストに噛みつくような仕草をやめていたのだ。
 思えば、うまむすこは「アンチ活動を続けてきたがそれも最近は疲れてきた」と言っていた。
 あのDMでのやり取り以降、彼らがWeb小説に対するアンチ活動は終わりを見せ始めていたのだ――。

「……ん?」

 龍にある宣伝ポストが目に入った。
 それはアンチ活動から寝返った二次創作の雄、色帯寸止めのものであった。

 色帯寸止め:📢 契約作品!『無比無敵のオッサン魔導師とビギナー美少女冒険者達の迷宮配信!』🔮色帯寸止めが贈る迷宮配信バトルが始まる!🔮無敵のオッサン魔導師と、初心者冒険者の美少女達が繰り広げるスリリングでハプニングだらけの生配信!📖 ガウロンセンで今すぐチェック!

「これは……」

 それは敬愛していた色帯寸止めの作品宣伝のポスト。
 小説投稿サイト『ガウロンセン』のオープンと同時に発表された作品である。
 そういえば、黒鳥のサイバーラウンジで紹介していたことを龍はすっかり忘れていた。
 何でも『1PVにつき報酬が貰える』という斬新なシステムの新興サイト。
 そこで色帯寸止めは『契約作品』として新作を発表している。

「ちょっと見てみるか」

 龍はガウロンセンがどのようなサイトか確認することにした。

「……ここか」

 ガウロンセンで検索し、公式ホームページに入る。
 そこには作品が各ジャンルごとにわけられて、人気順に作品タイトルが並んでいた。
 やはり、ここでも人気なのは異世界ファンタジーや異世界恋愛といった作品である。

「他の大手サイトとそんなに変わらんな」

 龍は「やっぱりな」という気持ちで画面を見つめていた。
 結局どんなサイトがオープンされようとも、書き手達の多くが自分の創作ではなく、流行を追うスタイルを変えない限りは同じである。
 どこかで見たようなタイトルや内容、別サイトの転載作品がギッシリと掲載されていたのだ。

「これか、色帯寸止め先生の作品は」

 龍はガウロンセン内の検索画面で作品を見つけた。
 色帯寸止めが満を持して発表した一次創作作品『無比無敵のオッサン魔導師』である。(正式タイトルは長いため略称)
 あらすじはストギル内によくある配信物であった。

 ダンジョン配信をしているパーティがあったが、そこに峠を過ぎた中年男性が一人いた。
 だが、パーティの足を引っ張る中年男性は「役立たず」とされ追放されてしまう。
 その中年男性は途方に暮れるが、偶然にもチート級のスキルを手に入れてしまう。
 そこから男の快進撃が始まり、冒険途中で美少女達に惚れられダンジョン配信の人気もうなぎのぼり――という展開である。

「よくある内容だな」

 龍は自然とそう述べてしまった。
 数話ほど読み進めていくと、あまりにもご都合展開のオンパレード。
 特に追放されてから努力もしていない中年男性が、棚ぼた的に能力を身につけてから人生を好転させるという内容が腑に落ちない。
 何だか宝くじを当てたら幸せになりました程度のことで、龍の心には全く響かなかった。
 それにこの内容、よくあるダンジョン配信ものであったが気づいたことがある。

「……ダンジョンオデッセイの二次創作じゃないか」

 そう、この『無比無敵のオッサン魔導師』。
 登場する魔物が、ダンジョン探索型RPG『ダンジョンオデッセイ』のものをそのまま流用していたのだ。
 また、武器や防具、アイテムも少しばかり名前を変えただけで全くの同じもの。
 つまり、色帯寸止めが小説家として全盛期だった頃のゲームノベライズをテンプレ的に改造しただけのものであった。

「色帯寸止め先生……あなたは二次創作しか書けないんですね」

 龍は哀しい表情になりながら決心する。
 この『無比無敵のオッサン魔導師』の感想を色帯寸止め先生に送ることにしたのだ。

 ギアドラゴン:色帯寸止め先生の『無比無敵のオッサン魔導師』を読ませて頂きました。あれは先生が過去に書いておられた『ダンジョンオデッセイ』のノベライズを意識したものですか?

 それは感想欄ではなくDMという形である。
 直接的なフルコンタクトはDMの方がよいと龍が判断したからだ。
 さて、色帯寸止めからの返答はあるのだろうか――。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

れすとあ ─モンキーガール、風になる─

海凪ととかる
キャラ文芸
 中学女子の100㍍走の記録保持者で、天才スプリンターとして将来を嘱望されていた大倉香奈 《おおくらかな》はスポーツ特待生として陸上強豪校への進学が決まっていたが、競技中の怪我で引退を余儀なくされ、燃え尽き状態で日々を過ごしていた。  香奈のクラスメイトで同じ中学出身である宮本佑樹《みやもとゆうき》は母子家庭で、パン屋に勤める姉の紗羅《さら》、不登校である小学生の妹の咲良《さくら》と一緒に暮らしている。ミニバイク『モンキー』を姉共々愛しており、整備を一手に引き受け、高校にもモンキーでバイク通学している。  ある日、登校直前までモンキーを整備していた佑樹は、学校の玄関で電車通学している香奈と会い、オイルで汚れた手を見られ、バイクの整備ができることを明かす。その時は特にバイクに関心はなかった香奈だったが、その日の放課後、偶然に紗羅の勤めるパン屋に寄り、そこにあった沙羅のモンキーに一目惚れしたことで、モンキーに乗るために二輪免許を取ることにする。  すでに廃番となっている旧車のモンキーをどうやって手に入れたらいいか佑樹に相談した香奈に、佑樹は自宅にある壊れた廃車のモンキーを自分の手で再生《レストア》してみることを提案する。自分の目でそのモンキーを目にした香奈は、自分の足で走れなくなった自分自身と乗り手に見捨てられたモンキーの境遇を重ね、再び一緒に走れるようにモンキーのレストアに着手していく。  これは、自分の足で前へ進めなくなって俯いていた少女が新たな足を得て再び顔を上げて前へ踏み出すまでの"再生"の物語。  これは、乗り手から見捨てられて朽ちつつあった旧車のバイクが新たな乗り手によってレストアされて再び走り出す"再生"の物語。 ※この物語の本文にはAIは使用していません。表紙イラストおよび作中挿絵はAI生成です。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...