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3章 トビラの夢 『ゲームオーバーにはまだ早い』
書の8前半 届かない手 『虎の子は怪しい虎穴の中に』
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■書の8前半■ 届かない手 beyond reach of this hand
揺れる馬車の旅はヒマだ。いっそ俺達は別で歩いた方がいいかなとも思う。その方がもっと早くファルザット入りする事も出来るだろうし、レッドの転移門を開くって手もあったりする。
それでもミスト王子の進軍に付き合っているのは何故かというと……怖いから、なんだよな、実は。
「問題は、カルケード首都ファルザットにおける赤旗保有率です」
難しい顔でレッドは告げた。言われなくてもそれくらいの事は俺だって懸念する。
魔王の手中に落ちているという国の首都へ、俺達はこれから初めて足を運ぶんだ。
その国に、だ。まるで禍々しい赤い花が咲き乱れる様に、そこらじゅうをレッドフラグが占拠していたらどうしよう。
想像しただけで身の毛もよだつ。見渡す限り敵、敵、敵。
この世界に存在の許されない刻印。
『敵』という表示で埋め尽くされる街なんて、殺戮系アクションRPGじゃ在るまいに。
迫り来る敵をばったばったと切り倒す?市街地で、人々がゾンビになって襲い掛かってくるみたいなモノか?善良な市民がレッドフラグに感染したばっかりに、勇者達に皆殺しにされるという図を想像して俺、本当に胃が痛くなって来た……。
敵対的ならまだマシだ。赤旗ブッ差した状態で町が平和そのものに日常を送っている、っていうのも想像するだけでかなりキツい。
「嫌だぞ、そんな展開」
俺が小さく呟いた声の指す所は大体、全員が察しただろうと思う。テリーお得意のアーケードゲームにだって似たようなゲームがあるし、マツナギが専攻している大型筐体ならなおさらガンシューティングだと、ゾンビパニック物は定番だ。
「ホストを倒せば正気に戻る、とかいう都合の良い展開には……ならないだろうからね」
ナッツは困った顔で腕を組む。
「そもそも僕らはまだ、赤旗の実体を全くと言って良い程把握していません。ホストとやらの総数がどれだけの割合を示すのかも分からない。魔王の構成だってそうです……アイジャンが魔王だと決まった訳ではない」
ミスト王子曰く、入れ替わっている兄王アイジャンというのは、魔王と取り引きしていてもおかしくは無いような悪徳人らしい。自己顕示欲が強くて残虐嗜好、何より、ミスト王子の父であるアテムートを偏執的に嫌っているという。尚且つ頭が切れて武勇が高く狡猾。
大丈夫なのかな、ミスト王子。
明らかに相手は強そうだぞ?強敵な気配が濃厚だ。レッドから色々と聞いていると、なんだか圧倒的に不安な気持ちになって来る。
「そろそろ川が見えるかな……ちょっと、偵察に行って来ようか?」
俺は無言でナッツに、ナーイアストから貰った石を投げ渡した。一応役に立つかもしれないからな。ナッツは石を受け取って頷くと、馬車の外で翼を広げて飛び立って行った。
現在山添の道を進むカルケード軍の行き先は、ワイドビヨン河の源流の一つを越えた所にある貿易港マイリーだ。俺達はその進軍に便乗する形でカルケード国首都、ファルザットを目指している。
偽王を討つ事を決めたミスト王子は、フェイアーンに集められていた者達と決起し、今まさに首都ファルザットへ戻ろうとしている訳な。
そんなんで今フェイアーンの町における軍隊は、もぬけの殻だったりする。そこの所をファマメントから攻められたらどうするんだろうという俺の疑問には、今は他国と戦争をしている場合ではないから、というミスト王子の返答が返ってきた。
一応、ミスト王子の名前での親書を持たせて伝令が走っていると言うが、それをファマメント側がどう受け止めるのかを確認せずに街を出た感じになっている。
最悪を踏まえフェイアーンの者達には、ファマメント国の軍に逆らわないように……攻められたらおとなしく降伏するようにミストが言い含めたそうだ。
森を挟んでの隣町バセリオンに駐在していたファマメント軍は正規の様だ。荒くれ傭兵連中とは違う、略奪蹂躙される事は無いだろうと俺も思うな。
それよりもまず、自国の正常化が必須だとミストは説いた。フェイアーンを失ってでもそれが急務だと訴えてそれが支持されたんだ。
フェイアーンに飛ばされた、王の行動を疑っていた軍官や兵士達はこぞってミスト王子の言葉に同意した形だ。レッドの言った通り、ピンチ転じてチャンスになったな。堅い団結でフェイアーン軍は決起に応じ、ミスト王子を頂に据えて首都奪還に向け急速に再編されている最中である。
取って返す行動まで一週間未満。
ちんたらやってたら隣のバセリオンから『動向』を察知されるかもしれない。
フェイアーンが空になる、とかいう情報じゃなくて。なぜフェイアーンを空にしてまで兵を引く必要があるのだと、隣の国から勘ぐられるのが危険なのだ。とにかく、王が偽者であるという情報が外に漏れる前に決着をつけなければいけない。そういう訳だな。
しかし正直、俺はファルザットに近付く事が怖い。
予測した、最悪な展開が待っていたら……俺達は一体何が出来るだろう?今も相当に迷っている。
……でもユーステル女王がそこに、居るはずなんだ。彼女を助け出さなきゃいけない。
あ。
そういえば、あの謎が未解決じゃねぇ?
ほら、キリュウからの手紙に書いてある『どうかキリュウを助けて欲しい』という謎の文面な。
俺がそんな話を振ると、レッドは伊達眼鏡フレームを押し上げて言った。
「推測ですが、もしかするとユーステル女王は名前を騙っていたのでは?」
それってアレか?キリュウの名前でミスト王子と手紙のやり取りをしていた、って奴?
「なんでそんな事する必要があるんだ?」
大体、どうしてそれを真っ先に俺達に『キリュウ』が説明しないんだよ。重要な部分だろうが。今回みたいにおかしな事態になっちまう、先に説明しておかないと簡単にボロが出るぞ?
「じゃぁ、ユースはミスト王子らに自分の名前は『キリュウ』だと説明してたって事か?キリュウもそれを知っていたから、手紙をやり取りしていたユースの事を相手にわからせる為に、わざわざ『キリュウ』をどうか助けて欲しいって書いた?俺達含むで誤解を解かないままどうしてそんな手紙を書くかな?刻印だってキリュウ・シーサイドのままになってたじゃないか」
「それは僕にも何とも……」
ふぅむ名前騙り説も、いまいち弱いな。俺はヒマをもてあまして狭い馬車の幌の中で立ち上がる。
「よし、聞いてこよう」
「今ですか?」
「王子だってきっとヒマしてると思うぜ」
「落ち着きが無ぇだけだろ」
と、馬車の隅で横になっているテリーさんは例によって馬車酔いの真ッ最中です。酔うんなら馬車なんか乗るなよお前は!走れ、走ってついて来い!良い鍛錬になるぞ!
「ナッツが帰って来たわよ」
幌の布が上がり、御車台に座っていたアベルが顔を覗かせた。幌に翼を畳み込むナッツの影が映る。
「どうだった?」
「とりあえず、マイリーは別段変わった感じは受けないし石も反応無しだよ。……むしろ普段通りなんじゃないかな」
背中の羽を器用に肩に乗せて折りたたみ収納し、狭そうにナッツが馬車の中に入ってきた。
「てっきり、国王軍と川を挟んで合戦にでもなるのかなぁと懸念したんだけどね」
なる程、国王軍が配備されている動きは無しか。
「フェイアーンを分断してファマメント国と戦わせる作戦が、失敗した事を察知したのでしょう」
「……だとすると、」
ナッツが座り込んだので、俺は立ち上がっていた所仕方なく腰を降ろした。
「このままだとミスト王子は非常にやりにくい事になるんじゃないのかい?」
「……思っていた以上に相手は上手ですね」
相変わらず軍師二人の会話についていけない俺。何、何なの?何が非常に『やりにくい』んだよ?
「ヤト、ミスト王子の所へ行きましょう」
「え?何で?」
どういう流れでそういう展開に戻るんだ?レッドは狭そうに立ち上がり、ローブを整えながら幌布をめくる。
「このままでは後手に回ります、王子の決起決断を無駄にするわけには参りません。手を打つ必要性があるのです」
俺は再び立ち上がり尻を叩いた。まぁ軍師役のお前がそういう見解にいたったってんなら、そうするべきだろうな。パーティリーダーである俺は例え話が見えて無くても、先頭に立ってる必要がある訳でして。
「どうするつもりだ?」
「やはり、僕らは王子より先にファルザット入りした方がよさそうですね」
俺は正直それに怖じ気づいているから眉を寄せて怪訝な顔を作ってしまった。
「どうせ行かなきゃいけないんだ、観念しなよ」
マツナギから言われ、俺はばつが悪く頭を掻く。
「そりゃそうだけど……実際どうするわけ?多数赤旗を敵に回して立ち回るハメになったら」
俺は、待っているんだ。
ミストの進軍に付き合っているのは、待っているからなんだ。レッドフラグをどうにかしてくれるツールを待っている。メージンからの朗報が、届く事を今か、今かと。
「今は僕らの事情より、出来るだけ王子の力になってやる事……それが大切ではありませんか?」
「そりゃ、そうだけど……」
「ちゃんと恩を売っておかないと、後々やり辛くなりますよ」
「って、お前の基準はそっちかよ」
この、腹黒魔導師め!
「行くべきよヤト。あんたらしくない、リーダーなんだから迷っちゃダメ」
アベルからも強く言われて、いつもなら何かしら言い返す所だがどうにも反論できなくて俺は、正直困った。多分、ちゃんとリーダーとして認めてくれてた事に……感動してる、んだなこれは。
よし、よしよし。俺は顔を上げた。テンションが上がって参りましたッ!ここでウジウジしててどうするよ俺!
一刻も早く、ユーステルを助けなきゃいけないんだ。今はミスト王子を頼りに、彼のバックアップをするべきだろう。
「よし、行こう」
「ええ、そうこなくては」
レッドの懸念は、ミスト王子にも同じように在ったようだ。
誰かしら……恐らく、その役割は特殊部隊隊長にして忠誠の厚いヒュンス辺りになったんだと思うが……を先に首都ファルザットに送り、何らかの工作を行わなくてはならないと考えていたらしい。
だから俺達がファルザットに向かい、事前工作を行う事を申し出ると非常に喜んで逆にお願いされた。
「ではヒュンス、彼らに作戦の説明を」
「心得ました。彼等になら私も安心して任せる事ができます」
「ああ、頼むぞ」
そう言って、ミスト王子は馬車に繋がれていた馬の背に飛び乗って素早く縄を解き、俺が声を掛ける間もなくどこかへ走り去っていってしまった。
ミスト王子に話があったのに……。
「お忙しいようですね」
レッドはそれを止めようとはせず見送って、地図を広げたヒュンスに向き直る。
「それはな、全面的に兵士達はミスト殿下の力になる事を示しはされたが、相性の悪い部隊の把握や人員との連絡網も開発途上、手足となる人材の不足もある。今は王子自らも動かねばならない」
ヒュンスはそれなりに王子の側近として機能するエラい立場の人らしかった。レッド曰く、国務機関上がりだとかで、それで顔見知りなんだろうとか。
はっきり言ってその国務機関とやらの説明をされたが、いまいち理解できなかった。……それはつまり育成学校みたいなものらしくてな、要するにヒュンスはエリート仕官生みたいなものだろうと俺は解釈したんだが。
……間違ってたらごめんなさい。
「王子の林檎は健在でしょうかね?」
何だそれ?レッドはヒュンスに聞いた様だ。ヒュンスはもちろん健在だがそれがどうした、と聞き返してきた。
「あそこは学術部では有名な待ち合わせ場所でしょう?記念に枝を折ったり幹に印を彫ったりするからすっかり、みすぼらしい姿になってしまって……結構昔に立ち入り制限の柵が作られましたよね」
「……あの柵はそういう経緯で出来たものだったのか」
憮然とヒュンスが腕を組んだ。
「結構な樹齢ですし、新しい木が植樹される可能性も無くは無いので一応、」
「いや、その後腕の良い庭師があの柵の中を薔薇園にしてな。ついで王子の林檎も健在だと聞く」
「それは、好都合」
レッドは例の、にやりとした笑みを浮かべた。
「実は卒業記念にあの林檎に木に転移紋章を刻んだ覚えがあるのです。そういう訳で、僕らはカルケード城内に直接転移できるんですよ」
思うに、この木が引っこ抜かれてたらどうだっただろうと思うと、色々と過去を振り返って薄ら寒い気持ちになるんですが。こいつ嘘吐き腹黒魔導師で定着しつつあるから、今更突っ込むまでもなく全員が同じ事を思っているに違いないと俺は想像する。
すでに無い、という可能性の方が低いわけだし、実際今も実在するのだから無かったかもしれないという可能性だけでレッドを責めても仕方が無いし、それはあまりにも不毛だ。
レッドの瞬間場所移動魔法『転移門』と呼ばれる魔法の門を潜り、出た先は薔薇の庭。
「おやまぁ」
麦藁帽子を被り、手ぬぐいを肩に掛けたばあさんが驚いて俺達を出迎えてくれました。
よく切れそうなシックルを構えてるが案ずる事無かれ、フツーに草刈鎌だから。
「珍しい、夏でもないのに門が開かれるとはねぇ」
「驚かねぇのか?」
テリーが肩を竦めて聞いた言葉に、庭師の老婆はにっこりと微笑んだ。
「転移紋章とかいう物が刻まれているんですってね。夏の祭りの次期だと、多くの魔導師達がここを目指して転移してくるのよ」
「そうでしたか、僕は今回はじめて使ったのですが……」
「でも、どうかしらねぇ」
老婆は困った様にそう呟いて、再び腰を曲げて雑草取りに励みながら言った。
「この木、抜いてしまおうという話もあるのよ。城の防衛上良くないとか、そんな事言ってもカルケード城が閉じた日など一日も無いのにねぇ……」
「それはやはり、国王の命で」
「そこまでは分からないわ、大体国王陛下はここ数年月白の丘には御出でになって無いのよ?ここは王子様方のお城」
俺達はその話に目配せをした。
ヒュンスの話の通りである。
俺達が今立っている薔薇の庭は、カルケード城内にあるんだ。この城は月白の丘と呼ばれる頂に建っていて、月白城とも呼ばれている。
近年、多分王が入れ替わってから、国王は神殿の一つに新居を移して、王が遠ざけていた国政に対して手腕を振るう様になっているとか。
庭師のばあさんに丁重にお別れを言い、俺達は小さな薔薇園を出た。
昼間のカルケード城は賑やかだ。
レッドから聞かされた通り、城の中は自由に開放されていて市民や商人達が行ったり来たりしている。ここは国務窓口みたいなもんらしく、国に用事のある連中はここに来れば全ての手続きが出来るようになっているんだと。今は、国王への謁見だけは出来ない訳だが。
それで、遥昔っからこのように、広く開放しているのが特徴らしい。
これじゃぁ確かに防衛という面からは心もとない。
他人の恨みを買うような事をしていないならこれでいいんだろうが……アイジャン偽王は、こんなあけっぴろな城に住むわけには行かないだろう。だからといって、城の門を閉めるわけにもいかないんだな。長年開け放ってきたのにそれを閉めるなんて言い出したら、猜疑の視線を向けられちまうに違いないんだから。
しかし、目下俺達の目的は偽王じゃない。
王が住居にしている南方神殿の近辺は、すっかり守りが固められている事はヒュンスから聞いているし、証拠も無しに王に近づいても不審者として怪しまれるだけだ。
よって、俺達がまずすべき事はユーステル女王の奪還である。ミスト王子は彼女は王の身元ではなく、月白城のどこかにいるだろうと断定している様だ。その様にヒュンスから聞かされている。
というのもユーステル女王を攫ったのは王ではなくてミスト王子の弟で、弟王子はこの城に住んでいるからな。
そして弟王子と偽王アイジャンの仲は険悪だ、よく分からないがとにかく、偽王と王子が手を組む事はありえないらしいから、まずはその弟王子とやらと通じる事を進められた。
賑やかな城の表通りを横切り、俺達は一旦城の外に出る予定だ。
一先ず首都ファルザットの状況を確認して、定番ですが城には夜中にこっそりと忍び込む事にしている。何処で誰が見ているか分からないから、不審行動は出来ない。若干緊張して俺達は大きな表門を潜り、眼下に扇状に広がった城下町を見下ろした。
キラキラとまぶしく輝く巨大な湖、そこを囲んで広がる畑は青く、町は大きくそれらに寄り添っている。
本当にここは砂漠のど真ん中にある街なのか?そう疑いたくなるくらい、巨大な街がそこに広がっていた。
揺れる馬車の旅はヒマだ。いっそ俺達は別で歩いた方がいいかなとも思う。その方がもっと早くファルザット入りする事も出来るだろうし、レッドの転移門を開くって手もあったりする。
それでもミスト王子の進軍に付き合っているのは何故かというと……怖いから、なんだよな、実は。
「問題は、カルケード首都ファルザットにおける赤旗保有率です」
難しい顔でレッドは告げた。言われなくてもそれくらいの事は俺だって懸念する。
魔王の手中に落ちているという国の首都へ、俺達はこれから初めて足を運ぶんだ。
その国に、だ。まるで禍々しい赤い花が咲き乱れる様に、そこらじゅうをレッドフラグが占拠していたらどうしよう。
想像しただけで身の毛もよだつ。見渡す限り敵、敵、敵。
この世界に存在の許されない刻印。
『敵』という表示で埋め尽くされる街なんて、殺戮系アクションRPGじゃ在るまいに。
迫り来る敵をばったばったと切り倒す?市街地で、人々がゾンビになって襲い掛かってくるみたいなモノか?善良な市民がレッドフラグに感染したばっかりに、勇者達に皆殺しにされるという図を想像して俺、本当に胃が痛くなって来た……。
敵対的ならまだマシだ。赤旗ブッ差した状態で町が平和そのものに日常を送っている、っていうのも想像するだけでかなりキツい。
「嫌だぞ、そんな展開」
俺が小さく呟いた声の指す所は大体、全員が察しただろうと思う。テリーお得意のアーケードゲームにだって似たようなゲームがあるし、マツナギが専攻している大型筐体ならなおさらガンシューティングだと、ゾンビパニック物は定番だ。
「ホストを倒せば正気に戻る、とかいう都合の良い展開には……ならないだろうからね」
ナッツは困った顔で腕を組む。
「そもそも僕らはまだ、赤旗の実体を全くと言って良い程把握していません。ホストとやらの総数がどれだけの割合を示すのかも分からない。魔王の構成だってそうです……アイジャンが魔王だと決まった訳ではない」
ミスト王子曰く、入れ替わっている兄王アイジャンというのは、魔王と取り引きしていてもおかしくは無いような悪徳人らしい。自己顕示欲が強くて残虐嗜好、何より、ミスト王子の父であるアテムートを偏執的に嫌っているという。尚且つ頭が切れて武勇が高く狡猾。
大丈夫なのかな、ミスト王子。
明らかに相手は強そうだぞ?強敵な気配が濃厚だ。レッドから色々と聞いていると、なんだか圧倒的に不安な気持ちになって来る。
「そろそろ川が見えるかな……ちょっと、偵察に行って来ようか?」
俺は無言でナッツに、ナーイアストから貰った石を投げ渡した。一応役に立つかもしれないからな。ナッツは石を受け取って頷くと、馬車の外で翼を広げて飛び立って行った。
現在山添の道を進むカルケード軍の行き先は、ワイドビヨン河の源流の一つを越えた所にある貿易港マイリーだ。俺達はその進軍に便乗する形でカルケード国首都、ファルザットを目指している。
偽王を討つ事を決めたミスト王子は、フェイアーンに集められていた者達と決起し、今まさに首都ファルザットへ戻ろうとしている訳な。
そんなんで今フェイアーンの町における軍隊は、もぬけの殻だったりする。そこの所をファマメントから攻められたらどうするんだろうという俺の疑問には、今は他国と戦争をしている場合ではないから、というミスト王子の返答が返ってきた。
一応、ミスト王子の名前での親書を持たせて伝令が走っていると言うが、それをファマメント側がどう受け止めるのかを確認せずに街を出た感じになっている。
最悪を踏まえフェイアーンの者達には、ファマメント国の軍に逆らわないように……攻められたらおとなしく降伏するようにミストが言い含めたそうだ。
森を挟んでの隣町バセリオンに駐在していたファマメント軍は正規の様だ。荒くれ傭兵連中とは違う、略奪蹂躙される事は無いだろうと俺も思うな。
それよりもまず、自国の正常化が必須だとミストは説いた。フェイアーンを失ってでもそれが急務だと訴えてそれが支持されたんだ。
フェイアーンに飛ばされた、王の行動を疑っていた軍官や兵士達はこぞってミスト王子の言葉に同意した形だ。レッドの言った通り、ピンチ転じてチャンスになったな。堅い団結でフェイアーン軍は決起に応じ、ミスト王子を頂に据えて首都奪還に向け急速に再編されている最中である。
取って返す行動まで一週間未満。
ちんたらやってたら隣のバセリオンから『動向』を察知されるかもしれない。
フェイアーンが空になる、とかいう情報じゃなくて。なぜフェイアーンを空にしてまで兵を引く必要があるのだと、隣の国から勘ぐられるのが危険なのだ。とにかく、王が偽者であるという情報が外に漏れる前に決着をつけなければいけない。そういう訳だな。
しかし正直、俺はファルザットに近付く事が怖い。
予測した、最悪な展開が待っていたら……俺達は一体何が出来るだろう?今も相当に迷っている。
……でもユーステル女王がそこに、居るはずなんだ。彼女を助け出さなきゃいけない。
あ。
そういえば、あの謎が未解決じゃねぇ?
ほら、キリュウからの手紙に書いてある『どうかキリュウを助けて欲しい』という謎の文面な。
俺がそんな話を振ると、レッドは伊達眼鏡フレームを押し上げて言った。
「推測ですが、もしかするとユーステル女王は名前を騙っていたのでは?」
それってアレか?キリュウの名前でミスト王子と手紙のやり取りをしていた、って奴?
「なんでそんな事する必要があるんだ?」
大体、どうしてそれを真っ先に俺達に『キリュウ』が説明しないんだよ。重要な部分だろうが。今回みたいにおかしな事態になっちまう、先に説明しておかないと簡単にボロが出るぞ?
「じゃぁ、ユースはミスト王子らに自分の名前は『キリュウ』だと説明してたって事か?キリュウもそれを知っていたから、手紙をやり取りしていたユースの事を相手にわからせる為に、わざわざ『キリュウ』をどうか助けて欲しいって書いた?俺達含むで誤解を解かないままどうしてそんな手紙を書くかな?刻印だってキリュウ・シーサイドのままになってたじゃないか」
「それは僕にも何とも……」
ふぅむ名前騙り説も、いまいち弱いな。俺はヒマをもてあまして狭い馬車の幌の中で立ち上がる。
「よし、聞いてこよう」
「今ですか?」
「王子だってきっとヒマしてると思うぜ」
「落ち着きが無ぇだけだろ」
と、馬車の隅で横になっているテリーさんは例によって馬車酔いの真ッ最中です。酔うんなら馬車なんか乗るなよお前は!走れ、走ってついて来い!良い鍛錬になるぞ!
「ナッツが帰って来たわよ」
幌の布が上がり、御車台に座っていたアベルが顔を覗かせた。幌に翼を畳み込むナッツの影が映る。
「どうだった?」
「とりあえず、マイリーは別段変わった感じは受けないし石も反応無しだよ。……むしろ普段通りなんじゃないかな」
背中の羽を器用に肩に乗せて折りたたみ収納し、狭そうにナッツが馬車の中に入ってきた。
「てっきり、国王軍と川を挟んで合戦にでもなるのかなぁと懸念したんだけどね」
なる程、国王軍が配備されている動きは無しか。
「フェイアーンを分断してファマメント国と戦わせる作戦が、失敗した事を察知したのでしょう」
「……だとすると、」
ナッツが座り込んだので、俺は立ち上がっていた所仕方なく腰を降ろした。
「このままだとミスト王子は非常にやりにくい事になるんじゃないのかい?」
「……思っていた以上に相手は上手ですね」
相変わらず軍師二人の会話についていけない俺。何、何なの?何が非常に『やりにくい』んだよ?
「ヤト、ミスト王子の所へ行きましょう」
「え?何で?」
どういう流れでそういう展開に戻るんだ?レッドは狭そうに立ち上がり、ローブを整えながら幌布をめくる。
「このままでは後手に回ります、王子の決起決断を無駄にするわけには参りません。手を打つ必要性があるのです」
俺は再び立ち上がり尻を叩いた。まぁ軍師役のお前がそういう見解にいたったってんなら、そうするべきだろうな。パーティリーダーである俺は例え話が見えて無くても、先頭に立ってる必要がある訳でして。
「どうするつもりだ?」
「やはり、僕らは王子より先にファルザット入りした方がよさそうですね」
俺は正直それに怖じ気づいているから眉を寄せて怪訝な顔を作ってしまった。
「どうせ行かなきゃいけないんだ、観念しなよ」
マツナギから言われ、俺はばつが悪く頭を掻く。
「そりゃそうだけど……実際どうするわけ?多数赤旗を敵に回して立ち回るハメになったら」
俺は、待っているんだ。
ミストの進軍に付き合っているのは、待っているからなんだ。レッドフラグをどうにかしてくれるツールを待っている。メージンからの朗報が、届く事を今か、今かと。
「今は僕らの事情より、出来るだけ王子の力になってやる事……それが大切ではありませんか?」
「そりゃ、そうだけど……」
「ちゃんと恩を売っておかないと、後々やり辛くなりますよ」
「って、お前の基準はそっちかよ」
この、腹黒魔導師め!
「行くべきよヤト。あんたらしくない、リーダーなんだから迷っちゃダメ」
アベルからも強く言われて、いつもなら何かしら言い返す所だがどうにも反論できなくて俺は、正直困った。多分、ちゃんとリーダーとして認めてくれてた事に……感動してる、んだなこれは。
よし、よしよし。俺は顔を上げた。テンションが上がって参りましたッ!ここでウジウジしててどうするよ俺!
一刻も早く、ユーステルを助けなきゃいけないんだ。今はミスト王子を頼りに、彼のバックアップをするべきだろう。
「よし、行こう」
「ええ、そうこなくては」
レッドの懸念は、ミスト王子にも同じように在ったようだ。
誰かしら……恐らく、その役割は特殊部隊隊長にして忠誠の厚いヒュンス辺りになったんだと思うが……を先に首都ファルザットに送り、何らかの工作を行わなくてはならないと考えていたらしい。
だから俺達がファルザットに向かい、事前工作を行う事を申し出ると非常に喜んで逆にお願いされた。
「ではヒュンス、彼らに作戦の説明を」
「心得ました。彼等になら私も安心して任せる事ができます」
「ああ、頼むぞ」
そう言って、ミスト王子は馬車に繋がれていた馬の背に飛び乗って素早く縄を解き、俺が声を掛ける間もなくどこかへ走り去っていってしまった。
ミスト王子に話があったのに……。
「お忙しいようですね」
レッドはそれを止めようとはせず見送って、地図を広げたヒュンスに向き直る。
「それはな、全面的に兵士達はミスト殿下の力になる事を示しはされたが、相性の悪い部隊の把握や人員との連絡網も開発途上、手足となる人材の不足もある。今は王子自らも動かねばならない」
ヒュンスはそれなりに王子の側近として機能するエラい立場の人らしかった。レッド曰く、国務機関上がりだとかで、それで顔見知りなんだろうとか。
はっきり言ってその国務機関とやらの説明をされたが、いまいち理解できなかった。……それはつまり育成学校みたいなものらしくてな、要するにヒュンスはエリート仕官生みたいなものだろうと俺は解釈したんだが。
……間違ってたらごめんなさい。
「王子の林檎は健在でしょうかね?」
何だそれ?レッドはヒュンスに聞いた様だ。ヒュンスはもちろん健在だがそれがどうした、と聞き返してきた。
「あそこは学術部では有名な待ち合わせ場所でしょう?記念に枝を折ったり幹に印を彫ったりするからすっかり、みすぼらしい姿になってしまって……結構昔に立ち入り制限の柵が作られましたよね」
「……あの柵はそういう経緯で出来たものだったのか」
憮然とヒュンスが腕を組んだ。
「結構な樹齢ですし、新しい木が植樹される可能性も無くは無いので一応、」
「いや、その後腕の良い庭師があの柵の中を薔薇園にしてな。ついで王子の林檎も健在だと聞く」
「それは、好都合」
レッドは例の、にやりとした笑みを浮かべた。
「実は卒業記念にあの林檎に木に転移紋章を刻んだ覚えがあるのです。そういう訳で、僕らはカルケード城内に直接転移できるんですよ」
思うに、この木が引っこ抜かれてたらどうだっただろうと思うと、色々と過去を振り返って薄ら寒い気持ちになるんですが。こいつ嘘吐き腹黒魔導師で定着しつつあるから、今更突っ込むまでもなく全員が同じ事を思っているに違いないと俺は想像する。
すでに無い、という可能性の方が低いわけだし、実際今も実在するのだから無かったかもしれないという可能性だけでレッドを責めても仕方が無いし、それはあまりにも不毛だ。
レッドの瞬間場所移動魔法『転移門』と呼ばれる魔法の門を潜り、出た先は薔薇の庭。
「おやまぁ」
麦藁帽子を被り、手ぬぐいを肩に掛けたばあさんが驚いて俺達を出迎えてくれました。
よく切れそうなシックルを構えてるが案ずる事無かれ、フツーに草刈鎌だから。
「珍しい、夏でもないのに門が開かれるとはねぇ」
「驚かねぇのか?」
テリーが肩を竦めて聞いた言葉に、庭師の老婆はにっこりと微笑んだ。
「転移紋章とかいう物が刻まれているんですってね。夏の祭りの次期だと、多くの魔導師達がここを目指して転移してくるのよ」
「そうでしたか、僕は今回はじめて使ったのですが……」
「でも、どうかしらねぇ」
老婆は困った様にそう呟いて、再び腰を曲げて雑草取りに励みながら言った。
「この木、抜いてしまおうという話もあるのよ。城の防衛上良くないとか、そんな事言ってもカルケード城が閉じた日など一日も無いのにねぇ……」
「それはやはり、国王の命で」
「そこまでは分からないわ、大体国王陛下はここ数年月白の丘には御出でになって無いのよ?ここは王子様方のお城」
俺達はその話に目配せをした。
ヒュンスの話の通りである。
俺達が今立っている薔薇の庭は、カルケード城内にあるんだ。この城は月白の丘と呼ばれる頂に建っていて、月白城とも呼ばれている。
近年、多分王が入れ替わってから、国王は神殿の一つに新居を移して、王が遠ざけていた国政に対して手腕を振るう様になっているとか。
庭師のばあさんに丁重にお別れを言い、俺達は小さな薔薇園を出た。
昼間のカルケード城は賑やかだ。
レッドから聞かされた通り、城の中は自由に開放されていて市民や商人達が行ったり来たりしている。ここは国務窓口みたいなもんらしく、国に用事のある連中はここに来れば全ての手続きが出来るようになっているんだと。今は、国王への謁見だけは出来ない訳だが。
それで、遥昔っからこのように、広く開放しているのが特徴らしい。
これじゃぁ確かに防衛という面からは心もとない。
他人の恨みを買うような事をしていないならこれでいいんだろうが……アイジャン偽王は、こんなあけっぴろな城に住むわけには行かないだろう。だからといって、城の門を閉めるわけにもいかないんだな。長年開け放ってきたのにそれを閉めるなんて言い出したら、猜疑の視線を向けられちまうに違いないんだから。
しかし、目下俺達の目的は偽王じゃない。
王が住居にしている南方神殿の近辺は、すっかり守りが固められている事はヒュンスから聞いているし、証拠も無しに王に近づいても不審者として怪しまれるだけだ。
よって、俺達がまずすべき事はユーステル女王の奪還である。ミスト王子は彼女は王の身元ではなく、月白城のどこかにいるだろうと断定している様だ。その様にヒュンスから聞かされている。
というのもユーステル女王を攫ったのは王ではなくてミスト王子の弟で、弟王子はこの城に住んでいるからな。
そして弟王子と偽王アイジャンの仲は険悪だ、よく分からないがとにかく、偽王と王子が手を組む事はありえないらしいから、まずはその弟王子とやらと通じる事を進められた。
賑やかな城の表通りを横切り、俺達は一旦城の外に出る予定だ。
一先ず首都ファルザットの状況を確認して、定番ですが城には夜中にこっそりと忍び込む事にしている。何処で誰が見ているか分からないから、不審行動は出来ない。若干緊張して俺達は大きな表門を潜り、眼下に扇状に広がった城下町を見下ろした。
キラキラとまぶしく輝く巨大な湖、そこを囲んで広がる畑は青く、町は大きくそれらに寄り添っている。
本当にここは砂漠のど真ん中にある街なのか?そう疑いたくなるくらい、巨大な街がそこに広がっていた。
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