異世界創造NOSYUYO トビラ

RHone

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4章   禍 つ 者    『魔王様と愉快な?八逆星』

書の1後半 女王?暴露する 『まじですか。それ、マジデスカ』

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■書の1後半■ 女王?暴露する maybe queen,come to light

 俺の思考はその時、間違いなくクラッシュした。
 そして機能停止に陥ったであろう俺を予測した面々が、白々しい視線をいくつか俺に向けて飛ばして来ているのを意識する。

 いやいやいや。ちょぉっと待て。落ち着いて状況を整理しようじゃぁないか。

 北方シーミリオン国の王に匹敵する存在は女王である。その女王の名前はユーステル・シールーズである。所が、このユーステル・シールーズ女王が攫われてしまった。
 彼女の補佐官であり一応王族であるキリュウは、何故か彼女が攫われる事を予測していた。彼らには色々と事情があるらしく、攫われた女王を救って欲しいとは一言も俺達に言わなかった。
 でも言われなくても奪還する気満々だった俺達。複数形だ。重要だ。その意気込みに負けて、手がかりとなる手紙を俺達に託したキリュウ。

 その時に『女王は女王であってそうではない』的な謎の言葉を残した。今も、その意味は良く分らない。

 国の事情を暴露した手紙の中に入っていた『キリュウの刻印が刻まれた手紙』を、南国に届ける事になった。情報屋ミンジャンの話だと、十年程前に北国と南国は『キリュウ』と『ミスト』の間で推定恋文らしいものが横行していたと情報を洩らしてくれた。
 キリュウから、久しぶりにミスト宛てに送られた手紙にはなぜだかどうして。

 『キリュウを助けて欲しい』と書いてあったりした。

 ……この辺りからどうも訳がわからなくなってきている。

 ようやく会ったミスト王子に、ユーステル女王が攫われた事を伝えると、ミスト王子は女王を攫ったのは弟王子だろうと何故か断定……。そしてミスト王子が推測した通りに、今地下牢でユーステル女王との再会を――壁越しにだけど―――果たした俺達であったが……。

 ユーステル女王が『ユーステルは男』だと暴露してくださった今現在。

 えーと?ん?あれ?

 何一つ解決してない気がするんだが、それって俺がおバカさんだから分かって無いだけでしょうか?
 ねぇレッドさんや。


 俺の思考が連続団子結びみたいに強固に固まっている事を、顔を見て理解したらしいレッドは深く溜め息を漏らした。
「とりあえず地下牢側に出ましょうか、気になる点がいくつかあります……テリーさん、この壁壊せますかね」
「ぶち破るのか?」
「塗装面を剥いでもらいたいのです」
 テリーは下がっていろと全員を自分から遠ざけ、苔生す壁に右手を当てて深呼吸。静かに左片足を上げて、勢いよく踏み拉く反動を左手に余す事なく伝える。その衝撃で奴の足元の水が逆流。さらに、ビシィッというヤバそうな音が響き渡った。
 手が退けられるとバラバラと壁が崩れ去ったが……その奥に堅そうな岩を積み上げてセメントで固めた壁が現れた。テリーの放った衝撃波にもヒビ一つ入っていない。
「やはり多重構造の様です。並半端な攻撃力ではびくともしませんし、この狭い空間で破壊魔法を振るうのも危険です」
「じゃぁどうすんだよ」
 レッドは眼鏡フレームを押し上げながら言った。
「局所的な分解魔法を使います。岩盤は見た所礫岩なので、分子構造を脆くする魔法が拡散してしまって効き難い。しかしセメント接合部分は月白砂漠の珪砂を使ったもの、これなら確実に珪素結合を狙って分解破壊が可能です」
「その後岩を抜き取るって寸法か」
 ディストルージョンとか云う分解魔法と、テリーのゼロ距離衝撃波を何度か使って最後のレンガ構造までたどり着くのに1時間強。
 レンガ構造を繋ぐセメントを脆くして、一つのレンガをユーステル側から押し込んでもだって開いた穴からようやく薄暗い明かりの中に彼女の顔が覗く。
「皆さん、」
 感激して泣きそうな顔をしている、そんな彼女が『男』ってどーいう意味なんだ?次々にレンガを取り除き、狭い穴からテリーがまず牢屋側に出た。
「よし、問題無い」
 それから次々に俺達もユーステル側に出る。
 魔法の明かりに照らされた彼女はすっかりやつれていた。推定じゃない、見て明らかにやつれているのだ。鉄格子の下に置いてあるトレイに、手のつけられていない夕飯が放置されているのを見つけてしまう。
「ユース」
 俺の視線に気がついて、ばつが悪そうにユーステルは顔を俯かせた。
「食べてないな?」
 細い腕を掴む。元から彼女はこんなに細かっただろうか?いいや、華奢とはいえここまで細くは無かったはずだ。俺から両肩を掴まれて緊張の糸が途切れたように力を無くした彼女を、俺は抱きかかえる格好になってしまう。これは相当に弱っている、ナッツ、応急処置ヨロシク。
「……大丈夫です、何もしていないからお腹が減らなくて……」
 俺は溜め息を漏らした。彼女、差し出された食べ物を一切口にしていないんだ、間違いない。
 捕われた身であるから、用心して?……それとも推定女王としての威厳と維持で施しを受けたくなかったのか。
 薄い毛布の置いてある石のベッドに彼女を座らせて、ナッツが水などを飲ませている間に俺達は、牢屋の構造を観察した。

 外から鍵の掛かった所を見て、俺は例のブラックフラグが立ってる鍵束を取り出した。
 鍵は4つ。それぞれ赤青黄色と白の小さな玉がついている。何となく白を試したらあっけなく扉は開いた。

 長い廊下に出てみる。
 人の、生命の気配がしない。若干じめっとした空気はそれ程不快なものではなく、清潔感すらあった。ずらりと並ぶ鉄格子の部屋。明かりはユーステルの居る部屋にだけ灯っていてあとは暗闇が続くばかり。
 構造的に、右手に行けば最深部で左手にいけば、151室目の区切り扉があるはずである。レッドから渡された青白く光る石を手に、左手に少し進んでみると遠くにぼんやり行き止まりが見えた。近づいてみる、すっかり埃にまみれていて……これは開いた形跡が無いな、ヘタに形跡を消さないように慎重に近づきしゃがみこんで伺うと、うっすらと積もった細かいチリの上には一つとして『足跡』が見当たらない。
「どうですか、」
「誰かが通った形跡は無し、だな」
 レッドは頷き、数メートル前にある扉を指差した。
「あれにも鍵が掛かっているでしょうか?」
 俺は慎重に近づいてドアノブに手を掛ける。ああ、鍵が掛かっている。鍵穴の上に赤い玉飾りがついているのを発見し、俺は同じく赤い玉飾りのついた鍵を入れてみた。これがぴったんこ合致。一度回して開けてもう一度鍵をかけて振り返った。
「仕切り扉4つに対応してる鍵か?」
「いえ、仕切りは3つです、最初の白の鍵は牢のマスターキーでは?」
 俺は適当に、すぐ傍の鉄格子の鍵に白鍵を入れて見る。なる程、その通りだと頷いた。
「と云う事は、ユーステルさんはどこから連れられて来てあの牢に入れられたのでしょうか」
 魔法転移が出来ない構造らしいからな、この牢屋。その条件は誰であろうと同じであるはず。
「食事を運んで来るっていう男が、どっから来るのかも謎だな」
 アベルとテリーが加わって、開いた形跡の無い仕切り扉から続く鉄格子の部屋を一つずつ鍵が掛かっているか、出入りした形跡があるかどうかを調べていった。50部屋ある訳だが、1部屋にそんなに時間をかけるわけじゃぁ無いからざっくりと、あっという間に終わる。
 あっという間に長い牢獄の一番奥へとやって来ていた。
「ねぇヤト、気が付いてる?」
「何にだ?」
 慎重に突き当たりの壁を調べているレッドを見ていた俺は、アベルからの言葉にぶっきらぼうに答えた。別に機嫌が悪いわけじゃないが、何となく心と頭の整理が付いてないもんで、割とつっけんどんな返答になってしまった。
 これでよくケンカする羽目になっちまうんだ、と気が付いた時には遅い。慌てて言い繕おうとして振り返ると、彼女は俺の返答の仕方を気にしていない様に真っ暗な背後を見ていた。
「真っ暗でしょ?」
「……ああ」
 相変わらず、彼女が何を言いたいのかよくわからない。
「あたしにはここから少しだけ、ユーステルが居る部屋の明かりが見えるんだけど……この廊下、真っ直ぐじゃないのよ?」
「……?直線じゃない?曲がってるってのか」
 そもそも、通ってきた通気口からしてぼんやりとした光苔を頼りにここまで来た。見通しは全然利いてない。特別な暗視能力が無い俺には、真っ暗なこの建物の構造は見渡せるものではない。しかしアベルやマツナギ、それからアインなんかは有能な暗視能力を持っている。
 俺は真っ直ぐ歩いていたつもりだったが、実は緩やかなカーブを描いていたってわけだな?
「静かに」
 レッドが素早く振り向いて口に人差し指を置いた。
「何か、分かったか?」
 小声で近づきながら聞くと、レッドはしゃがみこんでいて地面を指差す。青白い魔法の光を灯しながら俺達もしゃがみこんでみる。テリーが手をついてゆっくり床を弄り、その手を上げた。
「砂……だな」
 素手なのは奴だけなのだ。なる程、キラキラ光る砂漠の砂が若干堆積している。
 レッドは次に上を指差す。しゃがみこんだまま俺達は頭上を見上げた。
「……?」
 ふっと、レッドは魔法の灯火を消してしまう。
 すると、頭上から細く青白い光が差し込んで来た。それから、砂を踏むような音が近づいてきて……頭の上で立ち止まったのがよく分かる。
 途端に光がさえぎられパラパラと細かく砂が落ちてくる。
「今、何か聞こえなかったか?」
 聞きなれない声が頭上から届く。俺は思わず口に手を当てていた。
「空耳だろ、今日は珍しくデザートガストが大人しいからな、静かな夜なもんで砂嵐に慣れた耳でジンの声でも聞いたんだろ?」
「でなきゃ、お前の耳ん中だけ砂嵐が吹いてるとかな」
「ちゃんと耳穴掃除しろよゥおい」
 和やかな笑い声まで丸聞こえ。……何だ、どういう事だ?
 レッドは無言で戻りましょうと示し、静かに立ち上がって歩き出す。それに続く俺達、ナッツの掛けてくれた足音消しの魔法はまだ生きている。
 ユーステルの部屋の付近までやって来てからようやくレッドは口を開いた。
「どうやらこの地下牢の構造はゆるやかな螺旋構造ですね」
「って事は、さっきの声は牢屋番の兵士どもか」
 テリーは関心気味に腕を組んだ。
 レッドから言われて俺は地図を渡す。レッドはその地図に、再び灯した魔法の光をかざした。
「地下牢施設の詳細はこの通り、機密とされて形状が記載されていません。第三通気路が地下牢施設に寄り添うものであるという事までしか記載されていない。割とカルケード国の方でも失伝しているのかもしれませんね……」
 というのも牢屋構造については、平行して並んだ部屋が100部屋ずつで直線構造、としかヒュンスから説明されていなかった。秘密通路から、牢屋施設に平行して作られている通気路に出る事が出来る、という事実だけで俺達はここまで来たわけである。地図にも直線で部屋が並んでいる事しか書いて無い。
 だが実は、本当は直線ではなく緩やかなカーブを描いて、かつ螺旋状に成っているのだろうとレッドは推測。
 地下牢の入り口のほぼ真下に、牢の一番奥の部屋が在ったりする訳である。
「じゃぁ、さっきの天井からユーステルは入った訳ね?」
 地下牢の入り口付近に、事も在ろうか地下牢の一番奥の部屋に通じる抜け道がある、という事だろう。
「どんな仕掛けで一番奥の部屋から食事を運んで来ているのだろうと思えば……真実とは割に捻くれて単純なものですねぇ」
 レッドは関心した様に感慨深く呟き、地図を折る。
「それで、どうしましょうかね」
 レッドは、ベッドに腰を降ろしているユーステルを振り返った。
「貴方がこの国に攫われた、理由があるはずですね。それをお話して頂けませんか?」
 一瞬ユーステルが沈痛な顔をちらっと見せたのに、俺は何となく顔を背けてしまった。

 何だろう、何となくその話すげぇ、聞きたくない。

 気にいってた人から嫌な事をされて、それで嫌な気分になるならば。
 いっそ誰も信じなけりゃいい。
 思えばこれって、俺のリアルでの理論。対人関係が苦手な俺は、他人は怖い物だという固定観念に囚われている。
 固定観念、単なる妄想と自分で思って気が付いていても、これが中々崩せない強固な壁として俺の心って奴を取り囲んでいるものでして……。我ながらダメじゃんと自分を呆れてしまう。
 ダメじゃない、俺はダメな奴じゃないと、仮想の中で演じられる俺の理想の『戦士ヤト』。
 仮想であるこの世界では、嘘が真実で演技が現実。なのにこの非現実な世界に、現実の俺が混じってくるなんてそんなのは……ダメだ。
 それはゲームの仮想を現実に持ち込むのと同じ事だ。それは、現実と仮想の区別がつけられないという事だ。……俺がかつて、心の中で笑い飛ばした事だ。
 俺は、俺達はここでゲームをしている。このあまりに現実的な仮想『異世界』の中を、ゲームとして。
 騙されろ、俺の脳。
 ここは現実じゃない、ここは現実じゃないから何も恐れる事は無い。俺はここではサトウハヤトではなく、俺はここでは戦士ヤト。
 演じるのが常。ロールプレイングとは役になりきる事でもある。
 でも、信じて騙されて、それで……痛い思いをしないわけではない。
 痛みのある世界。
 それは肉体的な問題ではなくて、俺が恐れる心と精神の方にまで及ぶ。でも、やっぱりそれでも。痛みを感じる事が怖くても。この世界は、そうであるべきだと思う。

 俺は戦士ヤトを演じるために顔を上げた。

 ぶっちゃけて、やっぱ。
 苦しみは、必要だと思う。その思いは変わらない。



 ユーステルはゆっくりと、時々迷って言葉を選びながら事情を話してくれた。
 途中何度もレッドがその言葉を俺達にも分かりやすい様に咀嚼してくれたが、その咀嚼という言葉通り……ぽつりと語った言葉を噛み砕き、臼歯でごりごりとすり潰すみたい思えて正直、俺は居た堪れなくなってしまった。
 何度かレッドに目配せしたが、奴は意味を分かっているのか。それともわざとなのか。
 ……それも腹黒魔導師としての演技なら、リアルの方も真っ黒じゃねぇかと俺は思ったりもするが……。とにかくユーステルが薄暗い明かりの中、どこか苦しそうな顔をしているのを俺は見てられなかった。
 決して裏切られる事に対する俺のヘタレな恐怖じゃない。うん、それはちゃんと今マイ決着をつけましたから。
 そりゃぁ全て俺達に事情を語ってくれていなかった事を知って、まだまだ信用が足りてないんだなぁと思って、なんか……落ち込んじまったんだけどさ。でも話を聞いていくうちにその誤解は解けて……。
 そんで、なんか物凄い事情が判明して来ちゃいました。

 ええッ?マジですか、それマジなんですかッ!?

 そうこしつつ俺達は地下牢で朝を待つ事になった。
 ユーステルに三度の食事を持ってくるという男が何者なのかを突き止める事にしたんだ。ミスト王子曰く、ユーステルを攫ったのは弟のエルーク王子だという事だが……。どうも、ユーステルの話だけではエルーク王子が魔王連中と繋がっているかどうかの確信を得られなかったんだ。

 ユーステルを攫ったのは間違いなく魔王八星の一人であるインティなのだが、そのインティとエルーク王子との繋がりが全く謎だ。では魔王と取り引きしているという問題の偽王、ミスト王子の伯父であるアイジャンと、エルーク王子にパイプがあるかというと……これが、無い。
 ミスト王子が言っていた通りだ。
 偽者本物関係なく王とエルーク王子の仲は険悪だそうで、弟王子はこの月白城の上階に幽閉されているようなものなのだそうだ。
 ちなみにユーステルはこの南国カルケードの王が偽者に入れ替わっていて、それが本来の王アテムートではなくアイジャンだという事はすでに知っている。そういう事実は、弟王子エルークから聞いているのだそうだ。エルークも偽王の事は知っている訳だな。


「という事は、アイジャンはエルーク王子が偽王の事実を無闇に言い触らさない様に……城に幽閉しているわけですね」
「それを言ったらミスト王子だって立場は同じじゃない?」
「ですからそれは、」
 例によって不機嫌なアベルの問いに、レッドは眼鏡のブリッジを押し上げる。
「ミスト王子は国政を混乱させない為に弾劾する事を躊躇って来た。しかし弟王子の方は話から伺うに、兄王子と違って随分と……幼稚な……精神をお持ちです」
「……そうですね」
 ユーステルは小さな溜め息を漏らして俯いた。疲れたんだろうか、なんだか顔色が悪い。

 ユーステルが誘拐された理由。
 これがまぁ、とんでもなかった。
 いや、よくあるイベント的に考えると割とありきたりの様な気もしないでもないが……しかし実際リアルに目の当たりにすると思わず呆れてしまう様な理由があったんだ。

 なんでユーステルが攫われる『可能性』をキリュウが示唆したのか。これからして悩む事でも無い程に単純だった。どうして気がつかなかったのかという位で、実際気付いてないのは俺だけだったのかもしれない。
 ……俺達と会う前に女王の所にだな、南国から招待状が来ていたんだよ。
 シーミリオンは国を閉ざして首都を魔王八逆星に占拠されている状況、手紙が届く事態が異常だ。国交を断絶しているのになぜ、そんな手紙が届くというのだろう。あやしいだろ?それって。
 対処の仕様が無い、何しろ返事も書けない。当然この招待状には返事すら出せずに放置という措置を取ったそうである。

 で、今判明した攫われた表向きな理由はこう。

 ユーステルをエルーク王子が娶ろうとした。
 分かりやすく言い直すか?

 エルーク王子はユーステルと結婚しようとしたのだ。

 その為に誘拐などという手段を用いる段階でアレだ。
 強引に有無を言わさず拒否権無しにって奴だ。

 つまり南国から来た招待状とは、王子が女王を娶るから遣せ、的なちょっと強請り集りの効いた書状だったりしたわけだよ。だから表に姿を晒せば下手すりゃ攫われる危険性があると、彼らは分かっていたらしいのな。
 何でまた鎖国している国の女王を掻っ攫って来てまで結ばれようとしたのか?という疑問は当然湧くだろう?ユーステルはそこの所、若干の憶測で語ってくれたんだが多分、それで間違ってないと俺も思うね。
 レッドやナッツが反論しなかったんだから多分全員同意見。

 ……エルーク王子はミスト兄王子に劣等感を抱いているんだ。
 一方的に仲が悪いという話も本当らしくて、とにかく何でもかんでもミスト兄に反発している。あの手のこの手で、兄王子を困らせようとロクでも無い事ばかりをやるのだそうだ。

 それって、ぐれた不良っぽいな。ちなみにこの場合、『不良』と書いて『ガキ』と読ませる。

 つまりだ、ユーステルと結婚するって突飛な話も結局の所、兄を困らせようとするという稚拙かつ卑劣な思いつきから出たもので……それで女王誘拐なんぞという犯行にまで及んだ訳だ。
 それを魔王が実行しちまうハメになるんだから、エルークのやらかす嫌がらせはもはや悪戯だなんてレベルで済む話じゃねぇ。それでミストは一応、すでにユーステルと『会った』って訳だな。
 全く……。結局の所ユーステルは地下牢に幽閉って運びになっちまうしな!迷惑千番、一発ぶん殴って目ぇ覚まさせてやらねぇとなんだよ、そういう奴は!
 ミスト王子もアレだ、甘やかしたりしないで厳しく接すればいいのに、とも思うが案外……ここまで反発されると、もうどうやったら捻くれた弟王子の気を晴らす事が出来るのか分からなくて困ってたのかもしれないな。

 しかしだ、今だ魔王と王子を結ぶ線が謎なんだよ。なんでユーステル誘拐を魔王八逆星がやったのか、それがよくわからないんだ。アイジャンとエルーク王子は繋がっていない、それなのにユーステル誘拐に魔王が絡んで来ている。エルーク王子は一体全体どうやって魔王と関わりあっているんだ?ミストもどうやってエルークがユーステル女王を連れて来たのか、疑問には思わなかったのか?

 という事で最初のフリに戻るぜ。
 食事を持ってくる、ユーステル幽閉に噛んでいる男をとっちめて捕まえて、エルーク王子の事情を聞き出そうって事になったんだ。

 所がこれが、待てども待てども来る気配が無い。

 唯一の入り口は、真上に伸びるほぼ直線のちょっと狭い井戸くらいの大きさの穴なのだが、その中間にちょっとしたくぼみがある。何故かそこを行き来する足跡があった。そこに魔法ではない、糸を張って簡単なトラップを仕掛け、俺達は交代で休みを取りながら男の到来を待ったわけなのだが……どうした事か朝の十時を過ぎてる頃だってのに来る気配が無い。
 ついにレッドが腰を上げた。
「出ましょうか」
「けど、」
「これ以上待っても僕らが後手に廻るだけです。考えても見てください、今日僕らがユーステルさんを救出する事は、少なくとも魔王インティにはバレています」
 まぁな。奴はまるで手引きをするように、鍵と月白の丘地下通路の地図の写しまで渡してきた。何でそんな事をするのかも謎だが、ユーステルをこの地下牢から出して欲しかったという意図があるとすればもう、ユーステルはここにはいない。食事も必要ない……ってぇ?
「おい、それって」
「ええ、少なくともはっきりしたわけです」
 レッドは振り返り、小さく頷いた。
「ユーステルさんをここに幽閉していたのは魔王関係者である事はこれで、はっきりと」
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