異世界創造NOSYUYO トビラ

RHone

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5章 際会と再会と再開 『破壊された世界へ』

書の1後半 過去形遊戯『ログに裏付けされる記憶達』

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■書の1後半■ 過去形遊戯 the past game play

 久しぶりに爽やかな挨拶だね、と誉められた。ん?これって誉められたのか?それとも今日以外の俺は爽やかじゃないと注意されたダケか?
 ともかく……欠伸を我慢しなくてもいいバイトは久しぶりだった。その所為か、結構ものぐさで悩んでいたバイトを辞める件をあっさり店主に告げられたりして。俺の雇い主である店主は話を聞いて正直に、芝居がかった様子も無く残念そうな顔をしてくれた。
 俺はその店主の様子に内心ほっとしてしまって、どうしてか心持ち浮かれた気分になって帰路についた。

 携帯端末が振動する、マナーモードになってたから音が切ってあるんだった。取り出してみるとメール着信でナッツからだ。
「……なんだろ」
 開くと見慣れないアドレスに同時配信されている。
「……?」
 誰だ?って、少し考えればわかるだろう俺。あいつらだよ。ほら、タイトルにも書いてある。
 MFCテストプレイヤー連中のメールアドレスだ。

 内容を読んで見て、実際このメールはアインから発信されているものである事を知った。それをナッツが俺に転送して来たのだ。文面を読んでどうしようか迷っていたら今度は通話着信だ。
「おう、今見てた」
 街灯の立つ柱近くで立ち止まって俺はそう応答する。
『ダメだろ、先にさっさと帰ったら』
 するとナッツからやや呆れた声で窘められた。背景はがやがやと煩い……丁度昼時だ、ナッツもまだ普通に別ゲーム会社に勤めてるからな、日中だとこの時間帯しか連絡はよこさない。……って勤務?いや……ナッツの会社だと土日出勤も割と当たり前だった。ご愁傷様。
『てっきりメルアド交換くらいやったのかなと思ったら、お前のアドレス誰も知らないって言うし』
「悪い、なんか……苦手でそういうの」
 そうなんだ。MFC試作機貰って解散となった第一回テストプレイその後、俺はそそくさと帰宅した。
 アインやテリー達がなにやら携帯端末を弄って恐らく、SNSやメルアドやらのアドレス交換をしているのを尻目にトイレに行くと言ったまま……逃亡してたりしたのだ俺は。
 そういう俺の性格を知っているはずのナッツは、通話の向こうであからさまな溜め息を漏らしている。
『いいかげん克服しようぜ、俺と阿部瑠も出るんだから付き合えよ?』
「うん……分かってるよ」
『場所、わかんないだろ?』
「うん、わかんない」
 流石ナッツだ、世間体にウトい俺の事をよーく分かってらっしゃる。
『迎えに行くからちゃんと家に居ろよな?徘徊してんなよ?』
「俺は徘徊癖のあるおじいちゃんですかい」
『兎に角、逃げるなよな』
 逃げるな、という言葉で〆られた。割とナッツからはよく言われる言葉だ。
 ……俺ってリアルだとチキンだからな……自覚してる。切れた通話の画面をしばらく眺めてから溜め息を漏らした。確かに、土壇場でやっぱり面倒だと思って約束をすっぽかす事が……俺は、少なからず在るわな。
 これはリアル事情に限る。
 ゲームやネット約束はちゃんと守れるのに、リアルだとものすごく人見知りして尻込みしてしまう。気が付くと……足が動かなくなるんだ。気が付くと逃避している自分がいる。

 携帯をポケットにねじ込んで苦笑した。今回は別に面倒だなぁとは思って無い。俺が迷ったのは場所がわからん……という所だけなのに。そこも見事に看破して対応策を立ててくるナッツさんには敵いませんや。
 逃げたりしないよ、別に今回は怖く無いし。
 夢の中で、一緒に冒険した仲だしな。



 アインとテリーが軸になって、MFCテストプレイヤーで集まらないか?という話だった。メンバーに学生さんが居る事を考慮して集合時間は6時からとやや早め、場所も飲み屋とかじゃなくてファミレスである。
 俺のような出不精が居る事を予測したように、アインからの殺し文句がついていた。

 『お姉さんが、おごるわよ☆』

 給料がまだ降りて無い俺にはなかなかクリティカルな一撃だ。

 しかしまだ時間があるし……昨日クリアできなかったゲームのエンディング見なくちゃ。迎えに来てくれるみたいだしな。俺はゲーム部屋の定位置に座り、コンビニで買ってきた昼飯を突付きながらデータをロードした。
 そこへ突然鳴り響くチャイム。
 俺はそれに素直に驚いて、座り込んだ状態で飛び上がった。
「お、開いてる。無用心だな」
「……え?」
「よぉ、想像していた通りの部屋だなぁ」
「……」
 一瞬それがダレなのか思い出せずに口を半開きにしてしまった。
「おいおい、何豆鉄砲喰らったハトみてぇな間抜けな面してんだ?」
「テリー?」
「夢の記憶とトリップでもしてたか?」
 段々と状況判断が追いついて来た俺である。
「な、なな……なんで俺の家を……」
「ああ。ナツメから聞いた」
 ナッツさんーッ!?
「お前、リアル事情だとドタキャンする癖があるんだってな?」
 事実だ、認めるが。
「それでわざわざ……」
 言葉が上手く続かなかった。が、大体意味は察してくれたようである。要するにナッツが迎えに来てくれるんじゃなくてコイツが、俺を引っ張っていくって訳か……。そうだよな、良く考えれば判る事なのだが、ナッツが現地6時集合に合わせてこんなベッドタウンまで迎えに来れるはずがないのだ。
 だってちゃんと今日も出社してんだもんな、日曜日出勤だけど……恐らく集合会場には直接向かった方が早いはず。
「おぅ、スゲェなお前の部屋。前言撤回、想像してた以上に……」
「悪かったな汚くて」
「いや、想像してたより整理してあんな」
「俺の事をどんな風に思ってんだよ!」
「おいおいコンビニ弁当かよ!そんなんだからガリガリなんだぜ?」
「うっせぇ、何喰おうが俺の勝手だ」
「冷蔵庫の中は予想した通りだ」
 いつの間にか奥の狭いダイニングにまで侵入を許してしまった。
「か、勝手に漁るなーッ!」
 人の話を全く聞かん奴だ!でもアレ?こいつ、こんなキャラだったっけーッ!?


 結局、見たかったゲームのエンディングは見れなかった。明日だ、明日こそ見る。

 そう思いながら俺は今……なぜかゲーセンに居た。ゲーセン、ゲームセンターな。しかも太鼓とか叩いたりするファミリー向けな大型筐体や、レーシングゲーム、お子様向けのカードゲーム、メダルゲーム、景品ゲット型ゲームよりも『ビデオゲーム』と呼ばれるモノが多めに揃えてある、そういうゲームセンターの方。
「お前、腕落ちたな」
「最近やってないんだよ」
「引き篭もってんじゃねぇぞコラ?」
「俺の勝手だろ、そんなの」
 格闘ゲームの対戦を止め、テリーがCOMと戦うのを見ながら言葉の応酬。流石格ゲー枠でテストプレイヤー枠を上がって来ただけあって上手いよな、あーそれ繋がるんだ、知らんかったなっていうような連携技を叩きこんでいるのを俺は関心して見て居たりする。
「あ、珍しい奴が居るよ」
 そうこうしている内に……ここのゲーセンの常連達にとっ捕まった。そういや日曜日だもんな今日。
「誰よ、コイツ。お前に友人なんて珍しいなぁ」
「悪かったなぁ……どうせ俺は人付き合い嫌いだよ!……それはそうとリン、まだこのシリーズやってる?」
「やってるよ、今年の夏の奴、先輩は出ないの?」
「んなヒマねぇの」
 テリーはややニヤニヤした顔でゲームに興じている。そういえば……今年の夏はどうするつもりだコイツ……?というのも、何の事かと説明するに……『夏』な、今テリーがやってるゲーム会社主催のゲーム大会があるのだ。正しくは他にも幾つかのタイトルも含めて総合的に行われるもので、今はちょっと名前とか色々違うんだけど昔からの愛称として『トウゲキ』って呼ばれてる。その、格闘ゲームのお祭りの事を連中は言っている。
 俺は忙しいと言ったものの実際、MFCにかまけてもゲーセン通いは全然出来る。新型ハードのテストプレイは寝てる間に行うから……起きている実生活には何の影響も無いんだよな。
 何の影響も無い、というのはウソだ。実際には在る。
 悪い方向じゃ無いけどな……多分、こうやって俺が久しぶりに外を出歩いているのは、良い方向での影響。

「リン、コイツと戦ってみろよ」
「いいのか?」
 昔は一々対戦すんのに相手の顔色なんざ窺ったりしなかったがなぁ。これも時代か、ううむ。リンというのは当然奴のHNだ、俺の事先輩などと呼ぶが絶対コイツは俺の事、敬ってない。
 3Dライン格闘シリーズで、オンライン対戦も出来るのだがこうやって、伝統的な筐体挟んでの対戦も可能だ。テリーはスタンダードな太極拳使いで、リンは軽いフットワークのルチャ使い。
 で結果、詳細を説明すんのも面倒なくらい、テリーがリンを圧倒的に叩き潰して終わった。
「少しは手ぇ抜けよ」
「バカ言え、そんなみっともない真似は出来ねぇ」
 あーん?どこらへんがみっともないのか俺にはよくわかんねぇ。
「センパーイ!なんだよ、なんで先に教えてくんないんだよ!」
 負けたリンがやや興奮した面持ちで立ち上がった。
「誰かと思ったらテリーさんじゃんかよ!」
 画面をよく見れば気がつく話だ。カード認識でこれから戦う相手の登録プロフィールが出るんだし。
「顔で分かれ」
 ゲーム歴では後輩に当たる、ゲーセン友人の頭を俺は軽く叩いた。
「無理ッスよ!俺まだこの世界極めて無いもん!うわ、何スか、こっちまで来るんスか?」
 お前、思わずムカつく程態度違うな……。一応実年齢だとテリーより俺の方が年上だぞ?リンが戦ってる間に他の連中も目ざとく気が付いて周りを囲まれてしまった。
「ていうかヤト、引き篭もりのお前がこっそりこんな交流を深めていようとは……はッまさか、夏に俺達を裏切ってテリーさんと組もうとしてるとか?」
 もう一人、俺より年上の友人がやや大げさに驚いて見せる。
「そうなのか!」
 団体戦もあるからな、数年前まではコイツらに引っ張り込まれて出た事はあるけど……。
「だーから、俺は出ないって」
 唐突に黙ったままゲームを興じていたテリーが言った。
「出ろよ、ここの看板背負って。受けて立つぜ?」
「嫌だ」
 即答してしまった。テリーは逆に、そんなにあっさり拒絶されるとは思ってなかった様でちょっときょとんとする。
「何で?」
 そ、その返され方は困るなぁ。
「別に、」
 そこで定型文で打ち返す。
「別にじゃないだろ、分かりやすく理由を述べろ」
 ぐッ、貴様、文系の知的女教師みたいなセリフで返しやがって……!
「……面倒だ。それにしばらくやって無いから……」
「情熱が無い訳じゃないんだろ?ゲームに」
「幅が広いんだよゲームったって。お前は格ゲー一本だから良いが俺はな、幅広く愛してんの?分かる?」
「ちッ」
 舌打ちして、あっさりゲームクリアしてしまってテリーは立ち上がった。スタッフロールをスキップする。
 背は高いはがっちりしてるわ、おまけに割とおっかない形相だわで……こういう友人は正直欲しく無いぜ俺。顔の割にキャラクターはユニークだってのは……今回初めて知った訳だが。
「面白くねぇな……」
「はいはいどーせ俺は面白く無い人間デスヨ」
「ひねんな」
「別にひねて無ぇよ、ホントの話だし」
 テリーは溜め息をついて……腕時計で時間を確認してそろそろ行くか、と声を掛けた。
「え、もう行くんスか?」
「ちょくちょく来るぜ、今日は用事があってな……こいつを引き摺って行かなきゃなんねぇ」
 そういって俺の首根っこ掴むのはやめてくれませんかテリーさんや。



「ナツメがな、割と俺の縄張りでゲームして行きやがるんだ」
 駅のホームで車両が入ってくる僅かの間、テリーがぼやいた言葉に俺は逸らしていた目を上げた。
「そういえば……あいつが勤めてる会社からは結構近いな」
 テリーがホームにしているゲーセンがどこにあるのか俺は、勿論知っている。昔ネットワーク対戦で熱く戦った仲……であるからな。どこのゲーセンって情報ちゃんと出るのだ、ネット対戦だと。しかし、縄張りと云ったかコイツは。やっぱりヤンキーなんだろうなぁ。大会とか良く出てるし、そういうののネット配信もあるからそれに写ったりして顔もぼんやりとは知っていた。今日みたいに、実際会って戦った事も在るにはある。でも、顔をつき合わせた数は少ないから、色々と誤解していた所はあるだろう。

 きっと、お互いに。

「俺と奴とのゲーム趣味は違うだろ?お前は何でも嗜むんだろうが、俺はシューティングはやらん」
「……そりゃそうだ」
 ナッツはシューターだ。シューターっていうのは自機から玉などを打ち出しながら強制スクロールするステージをクリアするゲームを好んでプレイする奴の意味なのだが、……元々は違うぞ?そもそもナッツは俺と同じ、ゲームなら何でもやるタイプである。格闘ゲームもする勢なのだ。最近シューティングゲームやパズルゲームに圧倒的に傾いているのは……仕事が忙しいから絞り込んだのだろう。絞り込むなら、一番好きな方向性が残されるのは至極当然だよな。
「顔は見かけるんだが……話をする機会が無くってな。おとといMFC関係で顔合わせて……どっかで見た事在る奴だと思ってたら……ウチのにわか常連シューターだって話じゃねぇか。昨日案の定ゲーセンで会ってよ、色々話込んだって訳」
「ふぅん」
 ナッツは……決して誰とでも仲良くなる奴じゃない。
 俺が底辺なだけで……ナッツは多分普通、位だろうと思う。そういやナッツ、テリーが割とひょうきんな性格である事を知ってたみたいだもんな。……テリーが縄張りと言ってたゲームセンターでテリーを見ていて、そういうのに気がついてたんだろう。
 しかしコイツ、テリーの交際スキルは異常だ。何だこのうっとうしさ!俺の拒絶オーラを感じないのかコイツは?
「後半からは人生相談」
 語尾を笑わせて、コーヒー缶を手の中で回しながらテリーは続ける。
「あんまりナツメに負担掛けてンじゃねぇぞ?」
「はぁ?それどう言う意味だよ」
「そのまんまの意味だ。面倒見良すぎるんだよアイツ、定職持ってるのに友人がダメ人間で困ってんだよ」
 騒音が風に乗って流れ込む。俺はやや強い言葉で言い返していた。
「知ってるよ、迷惑掛けてる事くらい」
「結構、だから俺もお前の迷惑をこうむる事にした」
「はぁ?」
「その腐った根性を叩きなおしてやる、まずは夏イベ参加復帰からだな……覚悟しろ?」
 しまった……家の場所ばれちまったんだよな……。今後はちゃんと鍵掛けてチェーンロックも忘れずにしておいかないとだ。んー……それだと、俺公認で勝手に上がりこんでくる友人やナッツが困るかな?
 いやいや?困らないよ?だって俺の家に入る時いっつもナッツから言われるもんな。
『こら、ちゃんと鍵掛けとかなきゃダメだろ?』
 とかさ。こんな事言うの思い出してみるとナッツさんだけ、だけど。
「今はテストプレイヤーだからそんなんで良いだろうが……それで終わるつもりか?折角の大手就職をよ。改善しねぇとすぐキられるぞ?」
「お前に心配される事じゃない」
「取り付く島もねぇのな、まぁいい。矯正しがいがあるってもんだぜ」
 スチール缶をパキリと、片手で握りつぶしたテリー。

 ぐわーッ!何なのこの人?俺はリアルでか弱いダメ人間なんですけどーッ!


 なんでこんなにコイツはダメ人間教育に燃えているか、というとだな……。理由がちゃんとあるのな。ぶっちゃけて性格で、ぶっちゃけて家系で、ぶっちゃけて家業の所為であるようだ。
 何か格闘技やってるなーと薄々感じてはいたが……まさか家で道場開いてるとは。末弟らしいから別に師範代とかいうのでは無いらしいが、根性の曲がった奴らを矯正する為の『正義の暴力』を……この照井家、どうも推奨しているらしい。
 ヤンキーよりもヤバい奴だった、こいつはヤンキーを喜んで矯正したがる、実際何人もの矯正実績を誇るゲームセンターの恐るべきボスだったのだ。基本的には格闘ゲームで相手をボコるのだが、最終的に表に出ろ案件になる事もあったそうだ、恐ろしい武勇伝を聞かされてしまった俺である。
 しかもそれ、見事に返り討ちにする訳だろ。そして暴力はゲーム内でだけ振え、的な事を徹底的に叩き込むのだそうだ。そうやって出来た舎弟が年齢関係無く、奴の縄張りと称される地域ではわんさか居るっぽい。

 ヤバいよその家、息子さんの教育方針絶対何か間違ってるよ。

「……あら、じゃぁあたしが一番年上じゃないの?」
 そんな事を考えてぼんやりしていた俺に、アインの話が被ってきた事を感じる。俺は慌てて視線を上げた。
「ん、ああ……そうなるな。俺と同い年か……」
 最年長は俺だと思っていたが、どうやらアインは俺と同じ年生まれであるようだ。後は全員俺より年下である。ナッツは俺の一つ下だ。じゃぁなんで同級生かって?ははは……そんなの良く考えれば分かる話だろう?
「何月?」
 話の流れを推測するに……誕生日の事と思われ、アインさんに答える俺。
「ん……6月」
「いやん、じゃぁやっぱりあたしの方が上じゃないの!しかたないなぁ、でも宣言したから奢るわよ~。心配しないで」
「別に心配してねぇよ」
 奢ってくれるのは正直嬉しいけど……女の子から奢られるのもどうなのかなぁ?そこの辺りテリーさん、にわか正義心がうずかないのか?ん?これって正義とは関係無いか……。
「しっかし、メージンが高校生だとはなぁ。お前よくゲームに費やしてる時間があるよな?」
「はぁ、結構大変です」
 ちょい癖っ毛の背の低い少年……と、言ったら高校生には失礼なんだろうか?とにかく制服着てなかったら間違いなく小学生か中学生に間違えそうな位、メージンは少年だった。
「それで皆さん……どうです?ログは確認しましたか?」
 リアルもバーチャルも外見全く変わりの無い……顔を見て違うと認識すんのはメガネフレームだけのレッドが話を振ってくる。
「したした、ドキドキして眠れないかと思ったけど、朝起きたの早かったし、すんなり寝てた!」
「でも勿体無いよね、結局夢でしか記録を反芻できないんだもの」
 マツナギの言葉に女性陣はそうよねー、勿体無いと口々に賛同する。

 そうなのだ。結局、夢の中の話は夢の中でしか見る事が出来ない。ログを確認するにしても……結局MFCを通さないといけない。MFCを起動するにはすなわち、プレイヤーが寝てなきゃいけない。
 モニター画面に出して見れる情報なんてごくごく僅かでしかなかった。こんなに記録あるのかーとか思ったけど、その実際内容の余りの多さに、ログ確認を終えて起きた朝、俺はちょっと愕然としたもんな。

 絵も音も、今までのゲームには無かった感触や匂いや味さえも。人が感じうる5感全てに働きかけるあのリアルなゲーム内容は、人の脳内でしか『再生』されない。というか『再生』できるのは結局、人間の脳味噌以外に無いという事だな。
 空気の振動や光に変換させずにダイレクトに脳を騙して仮想体験させてしまう……それを夢という領域で行うのがMFCというゲームハードであるらしい。そしてログを脳内で『再生』させるには、まず自意識を追い払わないといけない。即ち……一般的には眠らないといけない。 
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