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5章 際会と再会と再開 『破壊された世界へ』
書の8後半 足りない欠片 『満会一致で秘密な出来事』
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■書の8後半■ 足りない欠片 missing ring
やっぱり散々なログインになっちまったんだな。俺は氷漬けだし、ナッツはボロボロだし、テリーはトチ狂ってるし、アインは野生に戻ってたって言うし、大事な石は行方不明だし。
おまけに……って、多分この不幸はまだまだ続く気が何となくするんだがそれは何故だろう?
残すはマツナギとレッド、という事になり……。とりあえずタトラメルツがすぐ近くにある訳だが、ミストラーデ国王には色々とお世話になっているのでこのまま、南国とおさらばする訳には行かない。
一旦首都ファルザットに戻るか……という話になった。すると、今まで黙って俺たちの様子を窺っていたカオスが言ったのだ。突然に、何の前触れも無く。
マツナギをタトラメルツ領主が預かっている、と。
「どういう事だ?」
俺は壁際にひっそりと佇むローブ男を振り返る。
「……口で言っても事情は分かるまい。連れてくる」
「……?」
そう言ってカオスは小さく俯いて……ふっと何かの気配に俺は視線を横に動かした。カオスの立っている隣の壁がぐにゃりと、溶けたように歪んだのを見つける。
「……転移門、」
紋も詠唱も無く、突然現れた遠い二点を繋ぐ扉。
謎だらけのローブ男、カオスが『悪魔』だというアインの説は割とアタリかもしれないな。何しろ魔法というのは元々この悪魔の専売特許的な技術だと聞いている。だから魔法を追求する魔導師というのは悪魔と縁を結びやすい。そういう理屈だったよな?
予備動作を一切しないで、手を振る様な手軽さでこんな大技を使うのは、やっぱり『悪魔』かもしれない。
でも……こいつ、初めて会った時と印象違うよな?
タトラメルツに行く時……結局奴にとっては戻る時、になる訳だが――も危険だから是非一緒に、とか言ってたがそれって結局嘘だろ?
フェイアーンからタトラメルツまでソレで移動できるなら、タトラメルツのすぐ近くの村で逡巡する必要無ぇだろうが。あれは俺達を導く為に打っていた芝居なんだ、色々猫被ってやがったんだな。
今はその被ってた皮を脱ぎ捨てたから、俺は違和感を感じるだけなのだろうか?
「連れて来るって、俺達がそっちに行けばいいじゃねぇか」
テリーの指摘に対ししかし、カオスはすっとローブの下の顔を上げて無表情に告げた。
「定員超過だ。それとも、一人の代表をそちらで決められるか?」
うッ、つまり……カオスはその転移門で二人しか運べないのか。ううう……お手軽さの理由はそういう事か。仮に悪魔だとしても魔法というのは万能ではないのな。
そういえば、悪魔っていうのは結局コッチの世界に適応したものではないので、色々と制限受ける~とかいう話もリコレクトできるな。例えてカオスが悪魔だとするなら、全員運べる転移門を開けるレッドの魔導師としてのレベルは相当なもんだ、魔導師は悪魔から『魔法』を奪う側であり、使役する立場に居なきゃならない、とかだろうか?その過程悪魔にはリミッターが付いている、みたいな状況なのかもしれない。
俺達はカオスの言葉を聞いてそれぞれ顔を見回した。
「無理そうだから、連れて来てもらう方向でよろしくお願いします」
代表してナッツが苦笑しながら答えた。
一人一つ不幸というか、とんでもないエピソードを背負っているなら、この流れはまだ続くのな。俺の予測した通り。殆どのプレイヤーがマトモにログインが出来てない。エントランスでメージンが言っていた言葉も気になる所だ。
ログイン妨害。障害じゃない、誰かしら何かしらの意図的な妨害にあってログインをマトモに出来ない俺達。
今目の前に立っている背の高い彼女も当然と、例外ではない訳で……。
「……この方達は?」
一瞬誰だこのデカいねぇちゃんは?とか思ってしまって、その声を聞いて俺は愕然とした。
長い銀髪を頭上に結い上げ、決して派手ではない衣服に溢れんばかりの肉体を収めた美しいがデカいこの女性は、誰だと思ったら……マツナギさんじゃぁありませんか。
侍みたいな和風鎧に身を固めた姿や、ラフな森人スタイルばっかり見てたからな。町人風のクラシックな格好をしていて誰なのか本気で判別つかなかった。
しかし……。マツナギの赤い瞳の中に困惑が浮かんでいる。隣で相変わらず顔をローブの中に埋めたカオスは、ややくぐもった無感情な声で俺達を示しながら言った。
「彼らが話して聞かせた……君の仲間達だ」
「……そう」
ふっと悲しそうに瞼を落としてマツナギは視線を床に投げる。演技じゃない。記憶喪失はマツナギの演技じゃないのだ。ええと。重要な事サラリと言ったな俺。
記憶喪失。彼女は、事もあろうか記憶喪失なのだ。
本気で彼女は記憶が無い。マジだ、だって頭上に青い旗が立ってない!マツナギの意識とログが入り込めていない証拠だ。それに加えて記憶障害……キャラのCOMも行方不明か、だがもはやこう云う展開である事にも別段驚かない俺。テリーも似たような状況だったわけだし。
俺はキョロキョロとあたりを見回して見る。
うーむ……エントランスに居ない訳だから、どっかそこらへんにログイン出来ないマツナギのフラグがフラフラ浮いてないかなぁとか安易に考えてみたがあるはず無いよな。別に俺達の意識がこっちの世界のキャラクターを乗っ取って動かしている訳じゃないし。
一体『マツナギ』はドコに行っちまったのか。
「状況に……納得は行ったか」
「……はい」
ナッツが苦い顔で頷いた。カオスはそれを見届けてから隣で視線を逸らし、係わり合いを避けたいという雰囲気を隠さないマツナギを振り向く。
「私は強引にでも、君たちの元へ彼女を返してやりたい所なのだが」
その言葉に俺達は自然と、怪訝な顔をしてしまった。強引に人を獣の前に投げ込んで見たり、野性に戻ってるのを捕まえたり。記憶が無く困惑している彼女を強引に、ここに連れてきたのはそのまま俺達に返品する為。カオスのそんな強引な手段に俺達が怪訝な顔をしてしまうのは、強引に事を運ばれても困るという意思表示だよな。実はその辺りアベルが、散々カオスに詰ったんだよ。
カオスは未だ『導き手』として、領主の『自分の領土に居る魔王をなんとかしたい』という願いをかなえるべく、その手段として俺達を、どこかに導いて行こうとしている。だが、その方法が強引で感情論的に嫌だとアベルに説教されているのをリコレクト出来る。
だからカオスもちょっと反省して、慎重になっているみたいだ。強引にマツナギを置き去りにするつもりはないらしい。
「……どうする?待っていればいずれ状況が好転する訳でもないとは思うが」
「マツナギ、君はどうしたい?」
自分の名前がマツナギである事は承知しているらしい、マツナギはナッツからの質問に視線を逸らし、床を眺めた。
「……私は……。私には割り振られた仕事があるから……戻りたい。タトラメルツに」
ナッツは俺達を振り返った。
……そうだな……どうやったら彼女の記憶を元に戻せるのは、はっきり分からないからこの場合、彼女の望む様にしておいた方がいいのではないだろうか?居場所がハッキリしているならこっちから、迎えに行けばいい話しだし。
俺はアベル達と目配せしてからナッツに無言で頷いて返した。
ナッツはマツナギの反感を買わないように少し微笑んで答える。
「うん、なら君の意見を優先するよ。タトラメルツへは僕らで迎えにいくから」
「……でも」
「帰ろう」
カオスは素っ気なくそう言うと、何か言いよどんだマツナギは顔を上げる。
「あ、……はい」
「……どうした?」
「いいえ……私、このままここに置いていかれるのかと思っていましたから……」
「説明不足で悪かった」
カオスはそう言って、微妙な顔を隠しきれていないナッツを振り返る。
「言葉で説明しても納得しそうになくてな」
「アンタは会話が苦手って言うか、ヘタよね。全部に対して説明不足なのよ。そのお陰様でテリーは危うく人間を食べてしまう所だったのよ?」
アベルの怒った責めの言葉にカオスはしかし、動じずに無言を返す。
そうそう、テリーな。
意識が無くって暴れまくってフェイアーンの町を半壊しちゃったテリーであるが、実はその半分はそんなテリーを捕まえようとしたカオスの仕業であったようだ。町の人達の視線が痛かった訳だよ。暴れまくった怪物を捕まえてくれた凄い魔法使い、として迎え入れられたカオスは、半分担った破壊行動については見て見ぬ振りされる形となった様なのである。
ここらへんの憶測も俺の予想通りだったなぁ。
で、こっからが問題だ。
カオスから捕まって地下牢に封印されたテリーであったが、その直前まで何をやってたかというと、だ。
獣の心に支配された彼は家畜小屋を来襲しまして、鶏や家畜を襲っては食い散らかしたというのだ。そもそも怪物という評価が誇張されたものだったのかもしれない。なまじ外見魔物としての特徴の無い、見た感じただの西方人のどちらかというと美形な男が……明らかに気の狂った野蛮な行動をするのにフェイアーンの人達はビビったのだな。なんとも言えない不気味な気配を感じて、震え上がったと言う訳だ。
取り押さえようとすると『喜んで』暴れる。
忘れるな、奴の本性は『格闘バカ』である、敵対する者とは戦いたい。幸い、命を奪うという行動にはならず、獣っぽいのに戦いを『楽しむ』という根本スタイルが更にもまして恐怖感を煽ったはずだ。
そこへカオスがテリーを捕らえにやって来て、強敵来襲にテンションの上がってしまったテリーはカオスと激突。すったもんだで町を半壊。その果てに、なんとかテリーは地下牢に封印という運びとなった。
で、だ。これから一週間は死なないだろうが、流石に2週間食わずでは恐らく持たないだろうという判断をカオスがした。……幸い、あの地下牢は僅かだが地下水が染み出してるらしい。水は多少あるのな。
よってあの言葉だ。
一週間は持つだろう。だがそれから7日後、彼の者にエサを与えよ……とな。これを守らせる為に脅しも忘れない。そうしなければ怪物は再び暴れるぞとでも言ったのだろう。
色々とすっぱ抜けているのだ重要な所が。
いや、冷静に事情を考えられる豪胆な主導者がいたのなら、少女が生け贄よろしく差し出される事態にはならなかっただろう。所が、すっかり暴れた男の奇行に恐れを成していたフェイアーンの住人達は……勝手にテリーは人食い鬼だと断定してしまったのである。
……閉鎖地域の思い込みってのは怖いもんだ。こういうのがホラーやミステリーになるんだな。
大体にして、カオスの口調が悪い。一方的に『エサを与えよ』は無いだろう。エサという言い方にも問題があったと俺は思う。カオスは最低でも一週間に一度はご飯を食べさせてやれよ、という意味で……それを言い残したというのが真相だ。
何はともあれ、テリーは人食いは免れていたようだ。何より本人が胸をなでおろしていた。明らかに筋張ってて美味そうじゃない俺に喰らい付くんだからな、あの西方人の女の子がエサにされてたら間違いなくテリーは人食い鬼の称号を得ていたであろう。
アインは、この一言足りない男、カオスは悪魔だと囁く。
人間ではなく生物ではなく、世界にとっては規格外の何者か。カオスの声にも、水色の瞳の中にも感情が無い。アベルが喚く通り、コイツは話すのがヘタだなと俺も思う。理論立てて一方的に話すのは良いとして、対人の言葉のキャッチボールが出来てない。
一方で疑問もあるのだ。……俺だけか?どうも、最初に会った時と何か、印象が違うく無いかコイツ?その違和感がどうしても気になる。初めて会った時、そしてタトラメルツでライバルパーティーであるランドール共々説明を受けた時……そん時のコイツは声こそ平坦で無感情だったが、かなり饒舌だった気がする。係わり合いを避けるような、淡白な対応は変わらないが、もっと存在感はあった気がするんだよ。
今ではそこにたっている存在すら時に忘れそうになる程気配が希薄だ。本人がそのように気配を消すように心がけているのだろうか?と疑ってしまう位。
転移魔法を潜り、タトラメルツに戻ってしまったカオスとマツナギを見送って俺はちょっと呆然。
「あいつ、かなり凄腕の魔法使いなのか?」
ナッツにカオスの事情を振るつもりで俺は、わざとらしく訊いてみた。
「どうも……そんなレベルじゃぁ無い気もするけどね」
と、ナッツが今だに渋い顔をしている。軍師的にはマツナギを返してしまうのには反対だったのかもしれないな。
「確かにマツナギを保護してくれたのはカオスだから感謝はする、でもやり方が一々気にいらないよね。テリーの件もそうだし」
「ホント、手を貸してくれるのはいいけど変に中途半端というか……」
不自然にアベルは言葉を切った。
「……何だよ」
「何でもないわ」
アベルは俺の突っ込みに対してそっぽを向く。
「アイン、やっぱり相談しておいた方がよくねぇ?」
カオスが、悪魔っぽいって奴を、さ。
「んー?何の事?」
「とボケんな」
どうやら仲直りは済んでいるらしい。何時もの通りテリーの肩の上にいるアインの額を、俺は軽くでこピン。
「いたッ!やん、ここ敏感なのにぃ」
小さな手で額を抑えるアイン。貴様ぁ……一々可愛いのが憎い、憎いぞ。微妙に俺がその余韻に浸っていると、ナッツが小さく溜め息を漏らして呟いた。
「大丈夫、大体察してる。ウチの国でタブーのアレだって話だろ」
ナッツはファマメント国の元神官で、そこで国を挙げて奉ってるのは『翼ある神』だったかな。天使教と呼ばれる宗教戒律に属してて、確か悪魔や場合によっては魔物すら禁忌とする。
カオスが『悪魔』かもしれない疑惑、ナッツも予測してたのか。
「なんだ、分かってたのかよ」
「何となくね……レッドの言動からしてそうかなぁとは思っていたんだ」
「……奴ぁ何か際どい事言ってたっけ?」
すると、なぜか一同困った顔を見合わせた。申し合わせた様な動作だったので俺は、一人きょとんとして目を瞬く。
「それより、どうやってナギのフラグを立てるのか考えないとな」
一瞬の沈黙を強引にテリーが破る。お前、今間違いなく何かをごまかそうとして話振らなかったか?俺がそんな疑惑の視線を送ったが、どうした事が全員がテリーにあわせるのな。
「そうだね、具体的にどうやって正気に戻しているのか……確かに法則性がわからない」
「ショック療法かしらね、アイの場合だと」
「俺は血かと思ったが」
「確かに血みどろにはなったけどあたしは別に噛み付いたりした訳じゃないしぃ……」
「ちょっと待てお前ら」
俺抜きで進む会話に、俺は大声で乱入する。
流石の俺でも察した。連中が、何を避けたのか。
だが……ダイレクトに聞いてもきっとごまかす方向性になるんだろうな。そんな気配を感じる。
ちょっと頭を使って聞き出す必要性がある。俺は、気迫に押されて黙った一同に言った。
「マツナギはいいじゃないか、ちゃんと無事にタトラメルツにいるんだし。それよりレッドを探すのの方が先だろうが」
アベルが素直に視線を逸らした。ナッツやテリー、アインはそこまで単純ではない。即反論を返してくる。
「確かにそうだけど、手がかりもないだろ?それより早くマツナギと合流しておいた方がいい」
「そうだ、無事ったってお前、タトラメルツにいるんだぞ?何時どんなちょっかい出されるか分かったもんじゃ無い」
「マツナギちゃんを早くログインさせて上げないと」
ああ、めんどくさい。
俺は思わず苦笑した。
「お前ら、俺が気が付いて無いとでも思ってるのか?」
「……な、何をだい?」
ナッツが怯んだ。珍しい、俺が怯ませてる?石を無くした事を暴露した時でさえ余裕にボケをかます奴が。
今明らかに俺の突っ込みに怯んだよな?
「……俺を氷漬けにしたのは……レッドだろう?」
再び、俺は未確認ながらかなり確信のある事実を一同に聞き返す。
答えは戻ってこない。答えたくないのか、それとも本当に答えは知らないのか。
どっちでもいい。
「じゃぁ、お前らを追っかけてきたのは誰だ?ログイン妨害?確かにそれで片付けてもいいが……要因が無くて意味不明のバグは起きたりしねぇだろう?……誰だよ」
俺は反論する言葉を失って黙り込む一同を見回した。
「俺達のログイン邪魔してる奴は、誰だ?」
「そんなの分からないに決まってるでしょ?」
アベルが顔を顰めて床を睨んだまま言った。
「誰を疑ってるのか知らないけど……良く考えて物事をしゃべりなさいよ」
「うっせぇ、考えて喋ってんだよ俺は」
強気にやり返す。いつもならすぐに反論するだろうアベルが何も言わず……俯いてしまった。俺は前髪を掻き揚げて苛々した気分をごまかしながら言った。
「マツナギが最後じゃないんだな」
「え?」
俺は惚けた声を出したナッツを睨む。
「こっちに一番最後にログインしたのは……実は、俺だろ?」
思い出している。
『トビラ』を潜るあの瞬間。
俺は空元気にエントランスからこちらの世界を目指し、たどり着く直前後ろを振り返った。
そしてその時、自分一人だったのに軽くショックを受けた。
その意味を、俺は深く考えるヒマを与えられなかったな。ログインした先が氷の中ってんだから、現状を理解するのに必死で俺は、一番最初に抱いた違和感をすっかり忘れていた。
俺は普通に、問題なくログイン出来たと思っていた。でも多分違うのだ。問題があったのは他じゃなくて俺の方だったのではないのか?俺は、問題なくログイン出来ていたとしても少なくとも1ヶ月、氷漬けの状態だった訳じゃないか。その間一体何があったのか俺は知らない。
知る事が出来ない。
エントランスからも出てしまい、セーブも出来ずに止められていた俺はエントランスに引き返す事も出来ないのだ。
「お前ら、俺が氷漬けになってる間……何してた」
テリーがちらりとナッツを窺った。それを察してナッツが重い口を開く。
「……アベルから聞いただろ。魔王の追っ手から……逃げてたんだよ」
結局ナッツは、同じ言葉でその具体的な答えを避けている。俺は都度何かしらんが答えをごまかされて来た。
「追っ手ね、俺はその詳細を聞きたいんだけどな。……直接抑えてたんだろ?分からないとは言わないよな?何で詳しく言わない、お前ら何を隠してる?それは俺には言えない事か?何満会一致で秘密にしてるんだよ!」
ナッツは苦笑して額を抑えた。
「こういう時ばっかり君は、頭が回るんだから……ホント参るよ」
そのセリフ、どっかで聞いた事があるような気がするが……俺は、上手く思い出せない。
「悪かったな、こういう時だけ狡猾で」
だから、よもや同じセリフで言い返していたとは。俺はそれをまだ、それを思い出せないでいる。
やっぱり散々なログインになっちまったんだな。俺は氷漬けだし、ナッツはボロボロだし、テリーはトチ狂ってるし、アインは野生に戻ってたって言うし、大事な石は行方不明だし。
おまけに……って、多分この不幸はまだまだ続く気が何となくするんだがそれは何故だろう?
残すはマツナギとレッド、という事になり……。とりあえずタトラメルツがすぐ近くにある訳だが、ミストラーデ国王には色々とお世話になっているのでこのまま、南国とおさらばする訳には行かない。
一旦首都ファルザットに戻るか……という話になった。すると、今まで黙って俺たちの様子を窺っていたカオスが言ったのだ。突然に、何の前触れも無く。
マツナギをタトラメルツ領主が預かっている、と。
「どういう事だ?」
俺は壁際にひっそりと佇むローブ男を振り返る。
「……口で言っても事情は分かるまい。連れてくる」
「……?」
そう言ってカオスは小さく俯いて……ふっと何かの気配に俺は視線を横に動かした。カオスの立っている隣の壁がぐにゃりと、溶けたように歪んだのを見つける。
「……転移門、」
紋も詠唱も無く、突然現れた遠い二点を繋ぐ扉。
謎だらけのローブ男、カオスが『悪魔』だというアインの説は割とアタリかもしれないな。何しろ魔法というのは元々この悪魔の専売特許的な技術だと聞いている。だから魔法を追求する魔導師というのは悪魔と縁を結びやすい。そういう理屈だったよな?
予備動作を一切しないで、手を振る様な手軽さでこんな大技を使うのは、やっぱり『悪魔』かもしれない。
でも……こいつ、初めて会った時と印象違うよな?
タトラメルツに行く時……結局奴にとっては戻る時、になる訳だが――も危険だから是非一緒に、とか言ってたがそれって結局嘘だろ?
フェイアーンからタトラメルツまでソレで移動できるなら、タトラメルツのすぐ近くの村で逡巡する必要無ぇだろうが。あれは俺達を導く為に打っていた芝居なんだ、色々猫被ってやがったんだな。
今はその被ってた皮を脱ぎ捨てたから、俺は違和感を感じるだけなのだろうか?
「連れて来るって、俺達がそっちに行けばいいじゃねぇか」
テリーの指摘に対ししかし、カオスはすっとローブの下の顔を上げて無表情に告げた。
「定員超過だ。それとも、一人の代表をそちらで決められるか?」
うッ、つまり……カオスはその転移門で二人しか運べないのか。ううう……お手軽さの理由はそういう事か。仮に悪魔だとしても魔法というのは万能ではないのな。
そういえば、悪魔っていうのは結局コッチの世界に適応したものではないので、色々と制限受ける~とかいう話もリコレクトできるな。例えてカオスが悪魔だとするなら、全員運べる転移門を開けるレッドの魔導師としてのレベルは相当なもんだ、魔導師は悪魔から『魔法』を奪う側であり、使役する立場に居なきゃならない、とかだろうか?その過程悪魔にはリミッターが付いている、みたいな状況なのかもしれない。
俺達はカオスの言葉を聞いてそれぞれ顔を見回した。
「無理そうだから、連れて来てもらう方向でよろしくお願いします」
代表してナッツが苦笑しながら答えた。
一人一つ不幸というか、とんでもないエピソードを背負っているなら、この流れはまだ続くのな。俺の予測した通り。殆どのプレイヤーがマトモにログインが出来てない。エントランスでメージンが言っていた言葉も気になる所だ。
ログイン妨害。障害じゃない、誰かしら何かしらの意図的な妨害にあってログインをマトモに出来ない俺達。
今目の前に立っている背の高い彼女も当然と、例外ではない訳で……。
「……この方達は?」
一瞬誰だこのデカいねぇちゃんは?とか思ってしまって、その声を聞いて俺は愕然とした。
長い銀髪を頭上に結い上げ、決して派手ではない衣服に溢れんばかりの肉体を収めた美しいがデカいこの女性は、誰だと思ったら……マツナギさんじゃぁありませんか。
侍みたいな和風鎧に身を固めた姿や、ラフな森人スタイルばっかり見てたからな。町人風のクラシックな格好をしていて誰なのか本気で判別つかなかった。
しかし……。マツナギの赤い瞳の中に困惑が浮かんでいる。隣で相変わらず顔をローブの中に埋めたカオスは、ややくぐもった無感情な声で俺達を示しながら言った。
「彼らが話して聞かせた……君の仲間達だ」
「……そう」
ふっと悲しそうに瞼を落としてマツナギは視線を床に投げる。演技じゃない。記憶喪失はマツナギの演技じゃないのだ。ええと。重要な事サラリと言ったな俺。
記憶喪失。彼女は、事もあろうか記憶喪失なのだ。
本気で彼女は記憶が無い。マジだ、だって頭上に青い旗が立ってない!マツナギの意識とログが入り込めていない証拠だ。それに加えて記憶障害……キャラのCOMも行方不明か、だがもはやこう云う展開である事にも別段驚かない俺。テリーも似たような状況だったわけだし。
俺はキョロキョロとあたりを見回して見る。
うーむ……エントランスに居ない訳だから、どっかそこらへんにログイン出来ないマツナギのフラグがフラフラ浮いてないかなぁとか安易に考えてみたがあるはず無いよな。別に俺達の意識がこっちの世界のキャラクターを乗っ取って動かしている訳じゃないし。
一体『マツナギ』はドコに行っちまったのか。
「状況に……納得は行ったか」
「……はい」
ナッツが苦い顔で頷いた。カオスはそれを見届けてから隣で視線を逸らし、係わり合いを避けたいという雰囲気を隠さないマツナギを振り向く。
「私は強引にでも、君たちの元へ彼女を返してやりたい所なのだが」
その言葉に俺達は自然と、怪訝な顔をしてしまった。強引に人を獣の前に投げ込んで見たり、野性に戻ってるのを捕まえたり。記憶が無く困惑している彼女を強引に、ここに連れてきたのはそのまま俺達に返品する為。カオスのそんな強引な手段に俺達が怪訝な顔をしてしまうのは、強引に事を運ばれても困るという意思表示だよな。実はその辺りアベルが、散々カオスに詰ったんだよ。
カオスは未だ『導き手』として、領主の『自分の領土に居る魔王をなんとかしたい』という願いをかなえるべく、その手段として俺達を、どこかに導いて行こうとしている。だが、その方法が強引で感情論的に嫌だとアベルに説教されているのをリコレクト出来る。
だからカオスもちょっと反省して、慎重になっているみたいだ。強引にマツナギを置き去りにするつもりはないらしい。
「……どうする?待っていればいずれ状況が好転する訳でもないとは思うが」
「マツナギ、君はどうしたい?」
自分の名前がマツナギである事は承知しているらしい、マツナギはナッツからの質問に視線を逸らし、床を眺めた。
「……私は……。私には割り振られた仕事があるから……戻りたい。タトラメルツに」
ナッツは俺達を振り返った。
……そうだな……どうやったら彼女の記憶を元に戻せるのは、はっきり分からないからこの場合、彼女の望む様にしておいた方がいいのではないだろうか?居場所がハッキリしているならこっちから、迎えに行けばいい話しだし。
俺はアベル達と目配せしてからナッツに無言で頷いて返した。
ナッツはマツナギの反感を買わないように少し微笑んで答える。
「うん、なら君の意見を優先するよ。タトラメルツへは僕らで迎えにいくから」
「……でも」
「帰ろう」
カオスは素っ気なくそう言うと、何か言いよどんだマツナギは顔を上げる。
「あ、……はい」
「……どうした?」
「いいえ……私、このままここに置いていかれるのかと思っていましたから……」
「説明不足で悪かった」
カオスはそう言って、微妙な顔を隠しきれていないナッツを振り返る。
「言葉で説明しても納得しそうになくてな」
「アンタは会話が苦手って言うか、ヘタよね。全部に対して説明不足なのよ。そのお陰様でテリーは危うく人間を食べてしまう所だったのよ?」
アベルの怒った責めの言葉にカオスはしかし、動じずに無言を返す。
そうそう、テリーな。
意識が無くって暴れまくってフェイアーンの町を半壊しちゃったテリーであるが、実はその半分はそんなテリーを捕まえようとしたカオスの仕業であったようだ。町の人達の視線が痛かった訳だよ。暴れまくった怪物を捕まえてくれた凄い魔法使い、として迎え入れられたカオスは、半分担った破壊行動については見て見ぬ振りされる形となった様なのである。
ここらへんの憶測も俺の予想通りだったなぁ。
で、こっからが問題だ。
カオスから捕まって地下牢に封印されたテリーであったが、その直前まで何をやってたかというと、だ。
獣の心に支配された彼は家畜小屋を来襲しまして、鶏や家畜を襲っては食い散らかしたというのだ。そもそも怪物という評価が誇張されたものだったのかもしれない。なまじ外見魔物としての特徴の無い、見た感じただの西方人のどちらかというと美形な男が……明らかに気の狂った野蛮な行動をするのにフェイアーンの人達はビビったのだな。なんとも言えない不気味な気配を感じて、震え上がったと言う訳だ。
取り押さえようとすると『喜んで』暴れる。
忘れるな、奴の本性は『格闘バカ』である、敵対する者とは戦いたい。幸い、命を奪うという行動にはならず、獣っぽいのに戦いを『楽しむ』という根本スタイルが更にもまして恐怖感を煽ったはずだ。
そこへカオスがテリーを捕らえにやって来て、強敵来襲にテンションの上がってしまったテリーはカオスと激突。すったもんだで町を半壊。その果てに、なんとかテリーは地下牢に封印という運びとなった。
で、だ。これから一週間は死なないだろうが、流石に2週間食わずでは恐らく持たないだろうという判断をカオスがした。……幸い、あの地下牢は僅かだが地下水が染み出してるらしい。水は多少あるのな。
よってあの言葉だ。
一週間は持つだろう。だがそれから7日後、彼の者にエサを与えよ……とな。これを守らせる為に脅しも忘れない。そうしなければ怪物は再び暴れるぞとでも言ったのだろう。
色々とすっぱ抜けているのだ重要な所が。
いや、冷静に事情を考えられる豪胆な主導者がいたのなら、少女が生け贄よろしく差し出される事態にはならなかっただろう。所が、すっかり暴れた男の奇行に恐れを成していたフェイアーンの住人達は……勝手にテリーは人食い鬼だと断定してしまったのである。
……閉鎖地域の思い込みってのは怖いもんだ。こういうのがホラーやミステリーになるんだな。
大体にして、カオスの口調が悪い。一方的に『エサを与えよ』は無いだろう。エサという言い方にも問題があったと俺は思う。カオスは最低でも一週間に一度はご飯を食べさせてやれよ、という意味で……それを言い残したというのが真相だ。
何はともあれ、テリーは人食いは免れていたようだ。何より本人が胸をなでおろしていた。明らかに筋張ってて美味そうじゃない俺に喰らい付くんだからな、あの西方人の女の子がエサにされてたら間違いなくテリーは人食い鬼の称号を得ていたであろう。
アインは、この一言足りない男、カオスは悪魔だと囁く。
人間ではなく生物ではなく、世界にとっては規格外の何者か。カオスの声にも、水色の瞳の中にも感情が無い。アベルが喚く通り、コイツは話すのがヘタだなと俺も思う。理論立てて一方的に話すのは良いとして、対人の言葉のキャッチボールが出来てない。
一方で疑問もあるのだ。……俺だけか?どうも、最初に会った時と何か、印象が違うく無いかコイツ?その違和感がどうしても気になる。初めて会った時、そしてタトラメルツでライバルパーティーであるランドール共々説明を受けた時……そん時のコイツは声こそ平坦で無感情だったが、かなり饒舌だった気がする。係わり合いを避けるような、淡白な対応は変わらないが、もっと存在感はあった気がするんだよ。
今ではそこにたっている存在すら時に忘れそうになる程気配が希薄だ。本人がそのように気配を消すように心がけているのだろうか?と疑ってしまう位。
転移魔法を潜り、タトラメルツに戻ってしまったカオスとマツナギを見送って俺はちょっと呆然。
「あいつ、かなり凄腕の魔法使いなのか?」
ナッツにカオスの事情を振るつもりで俺は、わざとらしく訊いてみた。
「どうも……そんなレベルじゃぁ無い気もするけどね」
と、ナッツが今だに渋い顔をしている。軍師的にはマツナギを返してしまうのには反対だったのかもしれないな。
「確かにマツナギを保護してくれたのはカオスだから感謝はする、でもやり方が一々気にいらないよね。テリーの件もそうだし」
「ホント、手を貸してくれるのはいいけど変に中途半端というか……」
不自然にアベルは言葉を切った。
「……何だよ」
「何でもないわ」
アベルは俺の突っ込みに対してそっぽを向く。
「アイン、やっぱり相談しておいた方がよくねぇ?」
カオスが、悪魔っぽいって奴を、さ。
「んー?何の事?」
「とボケんな」
どうやら仲直りは済んでいるらしい。何時もの通りテリーの肩の上にいるアインの額を、俺は軽くでこピン。
「いたッ!やん、ここ敏感なのにぃ」
小さな手で額を抑えるアイン。貴様ぁ……一々可愛いのが憎い、憎いぞ。微妙に俺がその余韻に浸っていると、ナッツが小さく溜め息を漏らして呟いた。
「大丈夫、大体察してる。ウチの国でタブーのアレだって話だろ」
ナッツはファマメント国の元神官で、そこで国を挙げて奉ってるのは『翼ある神』だったかな。天使教と呼ばれる宗教戒律に属してて、確か悪魔や場合によっては魔物すら禁忌とする。
カオスが『悪魔』かもしれない疑惑、ナッツも予測してたのか。
「なんだ、分かってたのかよ」
「何となくね……レッドの言動からしてそうかなぁとは思っていたんだ」
「……奴ぁ何か際どい事言ってたっけ?」
すると、なぜか一同困った顔を見合わせた。申し合わせた様な動作だったので俺は、一人きょとんとして目を瞬く。
「それより、どうやってナギのフラグを立てるのか考えないとな」
一瞬の沈黙を強引にテリーが破る。お前、今間違いなく何かをごまかそうとして話振らなかったか?俺がそんな疑惑の視線を送ったが、どうした事が全員がテリーにあわせるのな。
「そうだね、具体的にどうやって正気に戻しているのか……確かに法則性がわからない」
「ショック療法かしらね、アイの場合だと」
「俺は血かと思ったが」
「確かに血みどろにはなったけどあたしは別に噛み付いたりした訳じゃないしぃ……」
「ちょっと待てお前ら」
俺抜きで進む会話に、俺は大声で乱入する。
流石の俺でも察した。連中が、何を避けたのか。
だが……ダイレクトに聞いてもきっとごまかす方向性になるんだろうな。そんな気配を感じる。
ちょっと頭を使って聞き出す必要性がある。俺は、気迫に押されて黙った一同に言った。
「マツナギはいいじゃないか、ちゃんと無事にタトラメルツにいるんだし。それよりレッドを探すのの方が先だろうが」
アベルが素直に視線を逸らした。ナッツやテリー、アインはそこまで単純ではない。即反論を返してくる。
「確かにそうだけど、手がかりもないだろ?それより早くマツナギと合流しておいた方がいい」
「そうだ、無事ったってお前、タトラメルツにいるんだぞ?何時どんなちょっかい出されるか分かったもんじゃ無い」
「マツナギちゃんを早くログインさせて上げないと」
ああ、めんどくさい。
俺は思わず苦笑した。
「お前ら、俺が気が付いて無いとでも思ってるのか?」
「……な、何をだい?」
ナッツが怯んだ。珍しい、俺が怯ませてる?石を無くした事を暴露した時でさえ余裕にボケをかます奴が。
今明らかに俺の突っ込みに怯んだよな?
「……俺を氷漬けにしたのは……レッドだろう?」
再び、俺は未確認ながらかなり確信のある事実を一同に聞き返す。
答えは戻ってこない。答えたくないのか、それとも本当に答えは知らないのか。
どっちでもいい。
「じゃぁ、お前らを追っかけてきたのは誰だ?ログイン妨害?確かにそれで片付けてもいいが……要因が無くて意味不明のバグは起きたりしねぇだろう?……誰だよ」
俺は反論する言葉を失って黙り込む一同を見回した。
「俺達のログイン邪魔してる奴は、誰だ?」
「そんなの分からないに決まってるでしょ?」
アベルが顔を顰めて床を睨んだまま言った。
「誰を疑ってるのか知らないけど……良く考えて物事をしゃべりなさいよ」
「うっせぇ、考えて喋ってんだよ俺は」
強気にやり返す。いつもならすぐに反論するだろうアベルが何も言わず……俯いてしまった。俺は前髪を掻き揚げて苛々した気分をごまかしながら言った。
「マツナギが最後じゃないんだな」
「え?」
俺は惚けた声を出したナッツを睨む。
「こっちに一番最後にログインしたのは……実は、俺だろ?」
思い出している。
『トビラ』を潜るあの瞬間。
俺は空元気にエントランスからこちらの世界を目指し、たどり着く直前後ろを振り返った。
そしてその時、自分一人だったのに軽くショックを受けた。
その意味を、俺は深く考えるヒマを与えられなかったな。ログインした先が氷の中ってんだから、現状を理解するのに必死で俺は、一番最初に抱いた違和感をすっかり忘れていた。
俺は普通に、問題なくログイン出来たと思っていた。でも多分違うのだ。問題があったのは他じゃなくて俺の方だったのではないのか?俺は、問題なくログイン出来ていたとしても少なくとも1ヶ月、氷漬けの状態だった訳じゃないか。その間一体何があったのか俺は知らない。
知る事が出来ない。
エントランスからも出てしまい、セーブも出来ずに止められていた俺はエントランスに引き返す事も出来ないのだ。
「お前ら、俺が氷漬けになってる間……何してた」
テリーがちらりとナッツを窺った。それを察してナッツが重い口を開く。
「……アベルから聞いただろ。魔王の追っ手から……逃げてたんだよ」
結局ナッツは、同じ言葉でその具体的な答えを避けている。俺は都度何かしらんが答えをごまかされて来た。
「追っ手ね、俺はその詳細を聞きたいんだけどな。……直接抑えてたんだろ?分からないとは言わないよな?何で詳しく言わない、お前ら何を隠してる?それは俺には言えない事か?何満会一致で秘密にしてるんだよ!」
ナッツは苦笑して額を抑えた。
「こういう時ばっかり君は、頭が回るんだから……ホント参るよ」
そのセリフ、どっかで聞いた事があるような気がするが……俺は、上手く思い出せない。
「悪かったな、こういう時だけ狡猾で」
だから、よもや同じセリフで言い返していたとは。俺はそれをまだ、それを思い出せないでいる。
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