異世界創造NOSYUYO トビラ

RHone

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8章  怪奇現象    『ゴーズ・オン・ゴースト』

書の4前半 約束の午後『約束、しちゃったのかなぁ……』

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■書の4前半■ 約束の午後 Have a date...Who, me!??

 ログアウトすれば赤旗の怪物。
 ログインしていれば赤旗が無効になるも、……暗黒比混種を発動してやっぱり俺は怪物。

 ぐわーッ!そこまで俺はバケモノになりたかったのか?
 ソレれにだけはならないと思ってたんじゃねぇのかよ!
 思い出せる過去において、とばっちりで鬼の家系だと村八分され、俺はそんなものじゃないと反発して、なんで他人から自分の価値観を決められなきゃ行けないんだって子供心に思ってて……。そういう反動から、その後も俺はどんな状況になろうとも、そんなものにはなるまいと思っていたはずなんだ。
 だから、過去に鬼だの魔物だの呼ばれていた出来事を、必死に笑い話として昇華してんじゃねぇか。それなのに、笑い話じゃなくなりやがったのか!

 得た経験の多さが背負う背景を重くする。でもそれは赤旗の仕様じゃなくて最初っからそうなんだろ?
 なのに、どうして『それ』が俺の重い過去になってんだよ!

 俺は今、風の強い魔導都市の町外れの丘に居る。
 テリーとアベルから誘われて……断れなかった。断る必要はない。俺に、話があるってんだろう?

 実際俺には縁の無い、アベルが昔好きだったという……家庭教師だった魔導師の墓の前だ。
 俺はこの墓の魔導師と生前、会った事はない。
 でもな、俺がこの魔導都市ランに来る事になった理由はコイツにある。
 俺とテリーは、アベルに付き合ってこの街に来た。
 コイツに会う為に。
 実際には……墓と対面する結末になっちまった訳だけど。
 アベルはコイツに想いを寄せていて、いずれ会いに行くのだと決めていたんだそうだ。
 で、実際このような恐らくは最悪なご対面になったにも関わらず、アベルはその事実を淡々と受け入れた。正直、奴は何がしたかったのか俺にはよく分からない。アベルのヤツ、ようやく会いに行くと決めて飛び出した段階で、……ぶっちゃけて。何が何でも会いたい訳ではない事を俺は、察する事が出来ていた。

 だが……その前にアベルはあれだろ?壮絶方向音痴だろう?

 墓参りにしろ何にしろ、だからアベル・エトオノには絶対的にまず道案内役が必要だったのだ。それで俺とテリーがイシュタル国エズから同行する羽目になったという訳である。
 そんなのテリーだけでいいじゃんって?まぁその通りなんだが。……まぁ成り行きで、互いに顔見知りではあったし。
 しかし後に、テリーとアベルだけじゃ『まずい』事が判明した。少なくともテリーはこうなる事を察していたのかもしれねぇ。

 この道中がなー、とにかくトラブルの連続でなー。俺、思わず遠い目。

 テリーやアベルは俺を指さして『お前がトラブルメイカー』などと言うが、はっきり言ってとばっちりだ。
 違うぞ、断じて違う。道中後先も考えずケンカ買ったり余計な事に足を突っ込むのは……何時だって貴様らの方だろうが!
 奴ら、自分らがトラブルの種を蒔いてるのに気が付いてないんである。
 まぁ……たまに俺がポカした事もあるけどさ。
 とにかく俺ら3人組は組み合わせ的に非常によろしくなかったのだ、馬が合っているようで全くダメ。レッドやナッツがパーティーに加わってくれたおかげでトラブルは減ったもん、てことは間違いなく『俺達』が悪い。

 というかアレだよな。
 俺ら……というのは俺含めて今ここにいる3人の事だけど――バカだから、いっつも見当違いの方向に進む事になってトラブル拾うんだよな。

 かつて、この墓の前に来る事が俺達の、短い予定が恐ろしく長くなった……旅の終着駅だったのだ。
 そしてここで解散になって、それぞれは別の道を行くはずだったんだがなぁ。
 ヤな奴に目を付けられて、気が付いたら解散し忘れちまった感じがする。

 実際にはどうだろ、本当は……解散なんかしたくなかったのかもしれない。
 俺は今、素直にそう考える事も出来る。
 アベルもテリーも、現状に文句を言う訳じゃないし案外俺と同じ意見かも知れないな。ヤボだから互いにそんな事確認する訳じゃぁねぇけど。


「過去ってのは結局、そう言うものだと思うわ」
 突然アベルが言い出した言葉に、俺は以上の事をリコレクトしつつ、たっぷり間を置いてから切り返す。
「……何が言いたいんだよ、お前」
「誰だって、すぐに自分の過去が重い事になんか気が付かないって事」
「何だそりゃ?」
「始終昔の事を気に掛けてるようなキャラじゃねぇって事さ、俺達はな」
 テリーが苦笑して肩をすくめる。
「お前、本当は嫌だったんだろ」
「何がだよ」
 俺はまた、何かを誤魔化すように笑いながら惚けていた。
「色々あるけどな、一番最近ので言えば……過去を暴露するのとか」
「嫌ならそんな事はハナからしてないし、出来ないだろ?お前、過去を全部俺に話せるか?」
 俺の弁解にテリーは笑った。
「……ああ、俺は全部暴露するようなアホな事は出来ねぇ。お前にも色々黙ってる事有るしな」
「何ィ?」
「とにかくだ……本当は暴露なんかしたくなかったんだろ。少なくとも俺とアベルには……バラしたくなかったろ」

 ログ・CC。俺の、何もない、遜色の無い、特別な事など何一つ無いありきたりな過去の事。

 俺は……ガキの頃環境の勝手な言い分で鬼と呼ばれ、忌避されていた。
 たまたま悪評のあるじいさんに拾われてしまったばっかりに、俺もその悪評を受けるハメになったのだ。
 だから俺は、勝手に俺をそのように評価した環境から逃げるのに必死だった。

 逃げるのに必死過ぎて手段が幼稚でなー。
 俺は自分で自分の身を売るという、実に逃げ場のない事をやっちまった。

 そうやって逃げた先、俺は闘技場の街エズにたどり着いたんである。

 要するに俺は、鬼とか呼ばれるのが嫌だったのだ。
 それなのに……。

 どうしてその事をアベルやテリーに開示するのが嫌だって?
 要するにだな、アベルとテリーの昔も含むから俺の一存では開示できねぇよな、ってんで保留した俺の過去エピソードにだな―――冗談で、『俺は魔物だぞ』と言っていた事があるからだよ。
 エズでの生活において、俺は自分の過去をそのように笑い話にするのに必死で……自ら自分を鬼とか魔物とかに比喩して振る舞った事があった。
 もちろん、俺は比喩の上では間違いなく鬼だ。
 エズの闘技場、神聖なる舞台の上で最も他人の血を多く捧げた『鬼』だろうさ。
 しかし同じ基準で言えばテリーも同じくである。奴は俺と違って隷属じゃなかったけど……俺に負けず劣らずの『負け無し』の肩書き持ってた剣闘士だ。
 ちなみ、正式には奴は武器を使わないので拳闘士である。
 その徹底ぶりがある意味、大馬鹿の域にすら達しているんじゃないかと思う。
 その『鬼』である事を、一々気に掛ける必要などエズの闘士には必要なかった。殺し合うのが常だからな、何人殺ったかというのがフツーに自慢話になる所である。

  特別な条件下で戦いを捧げ、殺し合った事は置いておいて。

 俺は鬼だ、モンスターという肩書きから逃れられない。そういう事件を引き起こしているのだ、エズで。
 ぶっちゃけて雇い主殺しなんだけど、流石にこれはやりすぎだったらしくてなぁ、ははは……それで俺は、自分が鬼と呼ばれるようになった事に愕然となったのだ……割と。

 それで俺はまたそのエズから逃げ出したくなったんだけどな。……止めたのだ、そこで俺は開き直ってしまった。
 だから自分が鬼である事を冗談のように取り扱い、必死に過去を昇華しようとしたのだろう。しかしその俺が『鬼』を名乗る理由が、実はこんな掘り下げて下の方からあった事を、連中に語った事が無かったかもしれん。若気の至りで村を飛び出して間抜けにも自分で自分を身売りした話は、笑い話としてテリーとアベルには散々話したと思う。
 でもそれより過去は……そうか、話した事が無かったか。
 もちろん機会があるなら話すつもりではいただろう。だから、今はそれが出来ているんだ。
 そうする事で逃げている過去と決別するつもりだったはずだ。話す予定があるから俺は、必死に鬼だ魔物だって話をしていたのだ。
 全部前振りだったんだよ。
 だが俺がエズにおいて『鬼』である事を知っているアベルとテリーには……その根本の話をする機会が結局、無くって今に至る。

  要するに、俺は嫌だったのだ。

 テリーから指摘され、ああ……そうなのかもしれないと俺は、奴から俺の過去というデータベースに打ち込まれているサブルーチン関数を受け入れてみる。
 そして、認識していた自分の過去を認識し直す。

「……結局本名は何なの?」
「なんだよ、今が偽名だと思うのか?」
「そうじゃないけど、フルネーム聞いてないなと思って」
 そうだ、鬼と呼ばれた過去を含め、ヤト・ガザミなどという名前がある事すら正しく連中には伝わっていない状態か。そーだよな、そうだった。その件はまぁ、アベルからの許可が出たらおいおいする事にしよう。
「一応本名だぜ、シエンタに住んでた頃から変わらず、俺はヤトだけどな」
「そう、……じゃぁその『話したくない』セカンドネームが……アンタを鬼にしている要因なの?」
「……そうかもな」
 『ガザミ』はじいさんの字だ、要するに家の名前だもんな。

 今、エズから自由になり、シエンタに住むでもない。
 俺を鬼だ魔物だと指さす奴は世界全体と比較すれば少数だ。俺はその少数から価値観を定められるのが嫌だった。
 でも、俺を鬼と呼ぶだろう人間は着実に増えつつある。

 俺は……忘れられないからな。
 記憶が無いとは言え、タトラメルツを3分の1消し去った事。俺の所為だと多くの人に知られている訳じゃねぇけど。暴かれたら……いずれ、俺は世界全体から鬼だ怪物だと呼ばれるようになるのかも知れない。

 タトラメルツでの動揺とはつまりそう云う事なのだと、俺は今認めてそう思う。

「……驚いたか?」
 俺の、過去について。
「納得が行ったわ」
「納得?」
「あんた、昔っから変な奴だったけど。成る程ね、そういうへんてこな事情があったからって事じゃない」
「俺から言わせりゃお前も相当に変わってると思うがな」
「そりゃそうよ……あたしが背負う過去、あたしは軽いとは思ってないもの」
 アベルは……墓に落としていた視線を俺に向けて振り返る。
「アタシは自分の過去、重いと思ってるわ。あたしにだって『こうなった』余計な……特別な事情はある。それに同情されたいとは思わない、だから……あたしはあんたみたいに全部暴露したいとは思わないわ。同情されたって……何も、傷は癒えないもの」
「なんだよそれ、俺が……」
「ただの意地ってんだろ?何でもないんだって事を主張して、自分は平気だと笑うのがテメェのやり方じゃねぇか、何時だってな。そんで、そいつが今大問題なんだろ?ったって……お前のその性根直せったって直らないと俺は思うがな」
 ちょ……っと待て?
 俺は違和感に気が付いてテリーを睨む。

 ……それ、リアルのテメェに言ってやれよ。

 現実でチキンな俺の性根を叩き直す、などと言って追い回している奴のキャラクターが言うセリフか?
 ……いや、リアルチキンな俺がこの世界で全く正反対のキャラクターやってんだから……合法だってか。

 自分が言った言葉の矛盾に気が付いたように、テリーは頭を掻きつつそっぽを向く。
「とにかくよ『こっち』にいる時間ってのが立てば立つ程に『こっち』のキャラクターに馴染むだろ?リコレクトって一気に全部は思い出せねぇんだ。冒頭の頃なんて自分がどういう過去を背負ってたかなんて、そんなの忘れてただろうが」
 うむ、確かに……そうだ。
「日常、過去の事を気に掛けてるようなキャラじゃねぇんだよ俺らは。いや、殆どがそうだろ。過去に妄執する場合は、そういう特殊な背景を『設定』しなきゃいけねぇらしいじゃねぇか」
 まぁな、ゲームとしては確かにそういう事になっている。
「だからよ、過去なんて……そんなものだわ」

 ああこいつら、もしかして俺の事慰めてたりする?
 気にすんなって、俺達は何も気にしてないから、何も落ち込むな。
 お前の過去は何も特別じゃない、そんで。
 誰にとっても過去は……特別であるんだとでも……言いたいのかな。

 俺は苦笑してその思いを汲み取ってみる。

 だな……。
 俺はこの過去と決別したかった。その為に笑い話にしたかったんだろう?けど……一方でそれは怖かったという事の裏返しなのだ。怖かったのがすでに過去だとしても、過去恐れていた事は間違いない。
 テリーとアベルに暴露して、どう思われるのか。過去を語って、奴らが俺に……異なった価値観を抱く事は分かっている。それがやっぱり怖かったのだろうか?
 ……そうかな、戦士ヤトは他人からどんな感情を抱かれようが怖くないんじゃなかったのか?割とそういうのにヤトは強いはずだ。リアルチキンである、サトウハヤトとは全く別で。
 そう考えると俺は俺自身にいたたまれない感情を抱くのだ。
 もしかすれば『俺』が、リアル弱虫のサトウハヤトが、強者であり鬼である戦士ヤトの性格を歪ませてしまっているんじゃぁなかろうか、などと。

「お前、このまま鬼でいいのか?」
 鬼、人間が道を外れて魔物の道を行く場合に呼ばれる一般的な呼称だ。
「まさか。嫌だから俺はソレに拘るんだぜ?」
「なら決まりだ、お前はシエンタでその過去としっかり蹴りつけるんだな。それが、テメェに立ってる赤旗の解決に結びついてるんだろ?いい加減次のログアウトまで何とかしねぇと……レッドじゃなくても多数決取ってお前、消すからな?」

 俺の存在が迷惑掛けてるのくらい、俺だって胃が痛い位解ってるよ。

 だから、ぶっちゃけて今は。
 全部理屈が解った今は……それでも良いかなと思ったりもする。
 それっていうのはつまり、俺は赤旗が取れないのでキャラクター消去の事だ。
 だが多分、それは結局逃げなのだろう。
 俺は逃げない……そういうキャラだ。

 最悪俺を殺せ、俺はそれでもいいとは……口が裂けても言えん。

 そんな事言ったら多分、アベルから殴られるからな。ナッツもまた俺を叩くだろう、南国で自分の事はどうでもいいみたいな暴走を果たした果てに、そうしたように。

「ああ、勿論。そうするつもりだ」
 俺とテリーは拳を打ち合い、互いの言葉を約束する。
 お前らが認めてくれるなら、俺は……越えられると思うよ。
 自分の事、変えられないとは思わんさ。

 人から受け止めてもらってそれで、案外簡単に……そんな気になるもんだなと思う。
 ああ、ここで思っても意味ないのにとか心の中で、苦笑しながら。


 さて、と……。
 夕暮れ前にレブナント・ラボに戻ってきて。
 俺は本日、忙しいのだがもう一つやっつけなければ成らない事があったりする。
「あー、お前ら。先に帰れ」
 レブナントラボをほぼ目前にして、回れ右。俺は後ろ手を振る。
「一人でフラフラすると危ないんじゃないの?」
「大丈夫だ、何か知らんが俺は今やここの街の『共通財産』らしいからな、人をヒト扱いしやがらねぇ扱いには相変わらずムカつくが……おかげで血の一滴として俺から絞る事はできないらしい」
 レッドがそう言っていた、そのように俺を保護する特例法を発令したんだそうだ。
 勿論、魔導師全員がその法令を守る保証は無い、とか抜かしてはいやがったが……発令されたばかりだから今は、それをどうやって破るかっていうのを画策している段階だ、とかで――今しばらくは安全だとか。本当かよそれ?

 俺が、希少な『魔王候補』って事でな。
 サトーが恨めしそうな顔でレッドをこっそり見てたなぁ。

「たって、法なんてもん守るのか?ここの連中」
 それもぶっちゃけてここでは正論である。だが問題ないんだ。
「お前ら心配性だな、大体俺一人じゃ……」
 ラボの扉が開き、レッドが現れてテリーは口を閉じた。
「ああ、もしかしてお前の用事か?」
「?……何ですか?」
 ……惚けた意味が俺にはよく分かりませんが、レッドさんや。
「ふぅん、そっか。レッドとデェトかぁ」
 事情を『全部』分かっているアベル、目を細めて俺に笑いながら呟いた。
「な、何言ってやがるこいつはッ!」
「アインには黙っておいてあげるわよ。聞いたら奇声を上げて狂喜乱舞しそうでウザいし」
「……何でだ?」
 テリー。
 それは知らない方が幸せなんだってば!

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