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8章 怪奇現象 『ゴーズ・オン・ゴースト』
書の5後半 乱暴な自由『とりあえず騙し通したという事です』
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■書の5後半■ 乱暴な自由 Rough Liberty
真上から襲いかかってきたデカい虎っぽい獣の両腕が、俺を抱える前に眉間目がけて槍を突き出す。
勢いを殺いだ所でまっぷたつに剣で引き裂いて、続けざま襲いかかってきた小型の犬の群れを蹴りも見舞いながら蹴散らした。
一部から噛みつかれたが鋼の足具を砕く程のパワーは無い。そのかわり足を止められる……へたすると足を引っ張られ引き倒されそうだ。
俺は槍を篭手に素早く戻し、振りかぶった篭手に再び槍を構えた。ホント便利で重宝してますキリュウもとい……ユーステル。そして……俺に盾としての機能を教えてくれたアイツにも一応礼を言っておくか。
ありがとよ、ナドゥのおっさん。
俺は割と両利きである、前にも何度か言った通り。
闘技場で死にものぐるいで生き残った、その賜物だ。最初っからこんなに強い訳じゃない。それなりの努力がある。
その為の経験値の重さって奴だろう。
左手で槍を振り回して犬をはじき飛ばして一匹ずつ、とどめを刺していく。
おっと、小休止だ。一息付く間もない混戦中だからな、大事な休憩に俺は荒れた吐息を整えて剣のつゆを払い、目に入りそうな返り血をマントで拭う。そうしながらなかなか見渡せない状況を確認。
丘になっている中腹で一列となってそれぞれ魔王軍を相手にしている俺の両脇はテリーとアベルだな。その奥ではマツナギとアイン、ナッツとレッドがそれぞれペア組んで同じく奮闘しているはずだ。
割と俺ら、一人一人強い設定を初期で行ってしまったので共闘する必要が無いのだ。圧倒的多数相手の場合は一人で戦った方が効率が良かったり、なんである。
今しがた俺達が始末した抵抗しようの無い黒い怪物達に、下方にいた魔導師達が一斉に攻撃魔法。
強力な油か何かを作って、それをばら撒きながら強風で火を吹き掛けて焼き払っている。
丘の下から、徐々に炎に追いつめられていくのを……。
エルドロウは黙って見守っているな。
「……大丈夫かアイツ?まだ何かたくらんでるんじゃねぇえだろうな?」
俺はぼやいて丘を上がった。そろそろ奴に声は届くだろうか。
「おいテメェ、ふんぞり返ってんじゃねぇぞ!」
突っ込んできた角の生えた馬の怪物の首を刎ね上げ、空から突いてくる鳥は槍で突き落とす。
おっと、良い具合に巨大な爪を振り上げて俺を待ち構えている敵がいるじゃねぇか。バァカ、俺を切り裂くなんて百年早ぇんだよ!
槍に串刺した怪鳥をそいつに投げつけてやると、多々良を踏んで怯む。そこを復活した名剣で切り伏せてやるぜ。
腕と首を綺麗に飛ばす、コツがいるんだぜ?まずはぶっきらぼうに関節目指して肉を断ち、骨に当たったら適度に流して骨の隙間に刃を誘導、そうして筋と関節を断ち切るのだ。
分厚い筋肉の流れをぶった切ると力がいるからな、その場合は横から刃を入れる、角度が重要である。
もっとも、ここまで切れ味の良い剣があるから出来る芸当だ。俺は、アベルみたいに何でも切り裂くような魔法を自主的に剣に付加させるような事は出来ないし、奴ほど怪力ではない。
戦いながら、俺をエズで鍛えてくれた監督のアドバイスがリコレクトされる。
どうすれば効率よく人、もしくは生物を壊す事が出来るか、ってのを教えてくれた……俺の第二の先生だ。
第二関節からもぎ取った腕が宙を舞う、俺はそれを左手に納めて一旦剣を地面に突き刺して……右手利き腕でエルドロウに向けて、思いっきり怪物の腕を投げつけてやった。
手の大きさに見合わない巨大な爪を備えたソレは、無様に肉と血を滴らせながら回転して飛んでいく。
「……無粋ナ」
それを太っとい腕でエルドロウ、払いのけやがった。……防御壁とか展開してるって聞いてたがな。何時の間にか解除してやがる。魔法とか使った訳じゃないらしく、爪が腕に引っかかって明らかに、血が滴っているのが見えた。
と思ったら、すぐにその傷がふさがったようだな。
チッ、その青い光、自分にも効くのかよ。
「おら、掛かってきやがれ!」
俺はついでにまだ敵が周りにいなかったので、ファックポーズも決めて挑発してみた。
「……言っておクが……私は確かメに来ただケで争いニ来たのでハ無い」
「だったらこの怪物共……引き上げろよッ!」
再び群がってきた怪物を相手にしながら、俺はさらに丘を登る。
「哀れナ怪物……。我々の血より出でル、その一端ヲ担う者とシて、最後を見守ル必要は有るかと思っていルのだガ」
「だったら、復活させるような真似を……するなっての!」
死骸の蔭から飛び出して来た小物を切り捨てる。
「……試していルのだ」
何を言ってるんだか。
俺は熊のような犬のような、猿のような……なんとも言いようのない怪物の首を掻き斬って踏み倒す。その胸に剣を突き刺し、とどめを刺しつつ血を払って剣をエルドロウに向けた。
「俺達がお前らにくれてやるのは破壊だ、変わらねぇぞ、俺は変えられないんだ」
俺が、どう足掻いても破壊する方だってのはもう知っている。俺は多分……これからこのまま、ずっとこうだろう。
密かに俺はそう思っている。
多分……それを他の連中はよしとしない事は知っている。越えて欲しいと思っているだろう。暗黒比種化、すなわちそれは魔物になる事。赤旗の魔王化はなんとかするとしても、俺の魔物化は止まらないだろうと俺は……思っている。
シエンタに行ったって多分、何も変わりはしねぇんだ。引き金を引いた事件はそんな過去の出来事じゃない。
全てリコレクトして、全てぶっちゃけてみて俺は何が自分の心的要因なのか大体察して来ている。
タトラメルツだ。
リコレクトするたびに俺は、痛みを伴って思い出す。俺の所為だと殆どの者が知らずにいる。
けれど、俺の所為。
俺にその具体的な記憶があるわけじゃない。
けれど、タトラメルツが三分の一消えたのは俺の所為なのだ。
それを認めてしまった時、俺は再び過去そうしたように開き直った。
故に償いたい、死んだって何も償う事など出来ない、だから。生きて、全ての原因を俺は……破壊すると心に決めた。
俺の決意を組んでくれたか。
唐突にエルドロウは……組んでいた両手をふりほどく。
「ふム、そうか」
馬の口をもごもごとさせて……いや、よく考えたら馬は喋れねぇよな?
この声はどこから聞こえるんだ?
「少なくトもお前は、救う方デは無いという事だナ」
「……」
俺は奇妙な気持ちになって言葉が止まってしまった。
ん?主語はどこだよ。
……誰を救うって?
そう思いつつ、俺は多分……全てのものを間接的にしか救う事は出来んのだろうなと心の中で苦笑していた。
世界を救う為に悪いと思われるモノを破壊する。そういう方法でしか何かを救えない、俺達は典型的な……ダメ勇者だ。
俺が嫌いな、典型的って言われる……俺はそういう救い手にならんとしている。
勿論嫌だ、でも嫌だからといって立ち止まる訳にはいかない。俺は、戦士ヤトはそういうキャラクターなんである。必死に平凡を嫌った挙句にそういう道に誘い込まれている。
だからこそ俺に『破壊者』の宿命が課せられたなんてのは考えすぎかね。はは、止めよう。
考え出したら切りがねぇ。
だからもしかすれば、エルドロウが言った『救い』というのは……彼ら魔王八逆星や赤旗の連中を、という事なのかもしれない。
時間にして……2時間の長丁場は静かに幕を下ろした。
エルドロウの撤退でな、奴はその後静かに姿が消えて、同時に青白い光が収まって怪物は復活するのを止めた。
……魔導師達は討ち取りたかったみたいだけど、レッドは逃げられる事も頭にはあったようだ。
勿論、それはこの場では口には出してねぇけど。
しれっとした顔してるからそこに、この結果で問題なしってのが書いてあるんだよお前。
はぁ……流石に今回はキツかったな、ひっきりなしに1時間超、殆ど休憩無しだぞ?ありえねぇっつーの。
ようやく訪れた休息に俺は黒い返り血を吸い込んだマントを脱ぎ捨てて草むらに腰を下ろした。
「お疲れ、」
ナッツがコーヒー入れてくれたのがマジで嬉しいよ。
「怪我は?」
「……俺に聞く必要があるか?」
俺は苦笑したが……途端ナッツがちょっと眉を寄せて怒った顔をしたので……そっぽを向いて……戦闘中爪でえぐられてしまった左腕を差し出した。
厚手の服が破れた下から、傷のない俺の腕が見えただろう。ナッツはため息をついて俺の手を離した。
「……コントロール出来ないんだろ?」
「けどオートで傷が塞がるらしい。気が付いたら治ってやがった。もしかするとあの青い光で……」
「ヤト、……自虐的になるなよ」
静かに窘められ、俺は苦笑して服の破れを下ろす。
「もちろんだ。……悪いな……なぁ。あいつが最後に言った言葉……お前にも聞こえていたか?」
「いや、何か話したのか」
俺はその返答に……苦笑してならいい、何でもないと誤魔化そうとしたが……。
「おやおや、秘密にしたい程痛い事でも言われたのかい?」
そういう事言われるとつい意地になるだろうが。
「救う方じゃねぇな……ってさ」
「僕らが……何を?」
俺が引っかかった所でナッツも首をかしげる。
「さぁな、俺もそれは結局分からんけど」
その後、いろいろグダグダあったのだが……俺ぁ人間って種族であって能力的なポテンシャルっつーの?それが最下位です。テリーもこれは同じくだ。
緊張が途切れた途端にもの凄い、クるのだ……疲れという名前の眠気が。
とかく闘技場で極端な生活が長かった訳だろ?たまには長丁場だってあったさ。その間ずっと緊張を維持しておいて、舞台を降りたら倒れてもよかったもんだから、そういう無理な体力の使い方には慣れているのだ。……本当は良くないのだが。
軍隊とかだとすれば、絶対ダメな体の使い方だと思う。
気が付いたら寝てたらしくて色々展開をすっ飛ばしていた。
リコレクト、薄暗い寝床……ここは、レッドのラボだ。レブナトラボでお世話になってるベッド。
……何時戻ってきた?
時計とか、無い訳じゃないけど普及率は高くない。この部屋には時計なんぞない。基本的には日のある方向で時間を見るのだが、恐らくまだ日は昇ってないんだろう。だからこんなに暗いんだ。
俺は……二度寝はしない質である。割と早起き得意なのは前にも言ったな。
もう、リアル俺がどうだとか比較はしないと思っているが癖って事で今回は言っておく。
リアル俺、サトウハヤトなら間違いなく二度寝する場面であるが俺は起きた。
相部屋になっているのは今回もナッツであるが……ナッツは居なかった。俺は閉じていたカーテンを開ける、……天気悪い、灰色の空の向うが赤く色づいているのを発見して窓を開ける。
朝日か、この時期だと相当に早いな。早朝5時位だろうか。
リコレクトし、一応汚れは落としてベッドに倒れ込んだ事を思い出す。水だけ腐る程飲んで寝た所為で空腹だ、ついでにもの凄い尿意をもよおしている事を察し、慌てて厠に駆け込む。
それですっきり目は覚めた。
そうだ、エルドロウが居なくなっちまって、途端に魔王軍は崩れ落ちた。魔導師達はエルドロウを追おうとしたんだが、転移扉追跡が困難とかで結局諦めたようだった。
それでランに戻ってきて、どっと疲れが出てしまった俺は戦いの汚れだけ落として鎧や武器の手入れもほっぽって寝てしまったのだった。
腹は減っているが、食えそうなもんは無いしなぁ。……携帯食料から乾し肉と乾パンでも囓ってるか。
天気悪いと思っていたが、朝日が昇るに連れて雲が晴れて来る。魔導都市ランは比較的高地にある、山の天候は変わり易いとは良く言ったもんだ。
俺はラボの裏手の井戸から水を汲み、乾し肉を噛みつつヒマだったんで武具の手入れをする事にした。普段はスキップしているが、日々ちゃんと下着の処理やらやってるんだぜ。
返り血に汚れた鎧をビスをはずして濯ぎ、乾かす。返り血に染まった服は水洗いしたのち、特殊染料につけ込んで天日干しだな。その間に剣の手入れだ。水で洗いながら刃の欠けを確認し、研ぎ石を掛ける。俺の愛剣はそーいう作業が不要の剣と謳われてはいるものの、剣士にとってこの辺りの作業はルーチンみたいなものなのだ。身に沁みついてて、やらないと落ち着かない。
そういえば、鞘が合ってないんだよなぁ、これも一度バラして汚れを落として錆を防ぐ油を回して……と……。
そんなんやってたらテリーも起き出してきたな。
剣士はそういう作業がヤボったいよな、とかお前はものぐさだから拳闘士になったのかとか雑談を交わしたり。
いつもの作業で再び、任意でスキップかな。
気が付いたら朝食の席にいた。
「昨日は、ご苦労様でした」
ようやく温かいご飯だ、がっつく俺の前でレッドが頭を下げた。
「そういえばお前ら、何処行ってたんだ?」
どうも、さっきまでラボには居なかったようだ。お前ら、というのはレッドとナッツだな。
「状況整理をしてきたよ」
「徹夜か?」
「心配は要りません、あなた方が先頭で戦う分の仕事をこなしたまでです」
どうやら、この場で状況説明に入ったようだ。
例によって俺の理解した範囲で説明しよう。
まず、エルドロウの『確認したかった事』だな。
というかまず、エルドロウ自身の事からか。
……奴はかつて魔導師としてこの魔導都市ランにいたらしい。しかし色々協会で禁呪扱いにしていた魔法に手を出した事で位が剥奪され、無色魔導という……ちょっと特殊な魔導師になったんだそうだ。
いや、普通なら魔導師じゃなくて邪術師と呼ぶらしく、実際そう呼んでも構わないらしいが。ちょっと特殊な出来事があって色の無い魔導師、という特別な扱いになっていたらしい。基本的に魔導師って、法なんかあっても守らないだろ?そういう枠にはまらない行動力が逆に褒められちまう所だからな。割と無色に対する信者もいたとかなんとか。
レッド曰く、特例として位を剥奪した上でどの位にも属していない魔導師、というのが許されているらしい。そういうのを無色魔導と言うんだと。
一応エルドロウより前の例があるんだとか。そういや、自分も本来なら紫ではなく無色だったとレッド、ぼやいてたなぁ。
エルドロウは魔導都市を追われ、学士の城に招致されたという曰くがあるらしい。
おいおい、学士の城とやらには誰も行けないんだろ?行ったら戻って来れないとかサトーが言っていたように思うが。
とにかく、ある日エルドロウは消息を絶ち、それ故に学士の城に行ったのだという噂が立ったって訳だな。
しかし、今エルドロウは姿を大きく変えて魔王八逆星の一人として、頭上にバグの赤旗立てて現れた。何たって馬二頭立てだもんな、明らかに元の姿とはかけ離れている。
見た目であれがエルドロウとは気付くはずもない。しかし、レッドは少しエルドロウの魔王関与を疑っていたようだ。というのも、エルドロウの得意とする魔法ってのが……空間に関するものだとか――ええと難しいので俺に半分以上理解不能でいたがッ!とにかくだ。
大陸座を触れ得ないように遮断してしまった仕業がだな……どうもエルドロウっぽいと密かに思っていたんだそうだ。あと、装備品がどう見ても特徴的な模様の施された魔導マントだった、とか。
だから、大陸座を遮るのは『魔法』と断定し、これを魔導師は解く事が可能だと奴は在る程度の確信を密かに持っていた様だ。
ところがだ、実際に大陸座を遮断しているのがエルドロウの魔法なら、俺達はやっぱり簡単に突破出来ないはずだろう?勿論、エルドロウもそれは知っている、奴は俺達だけ大陸座に会えるように小細工したつもりはないらしい。
それなのに世界から遮断しているナーイアストが閉じられた結界の中から解放されて消え、オレイアデントも同じく消えた。なぜ自分の魔法空間を突破するのか?奴もある程度その理屈を察して現れたという事らしい。これは、ナッツの談。
ここのカラクリは、こうだ。
ええとまずは……ナッツとアインはジーンウイントに会ったって事を説明しよう。
エルドロウと一緒にな。
そして判明した事には、だ。
大陸座に触れられないようにしたのはエルドロウなのだが、そのように魔法で遮断する意図を悟った大陸座のジーンウイントがこれに小細工した。
つまり、エルドロウの魔法をジーンウイントが乗っ取って、……ええとつまり大陸座と世界を引き剥がしたのはエルドロウなのだが実際には。
ジーンウイントという事になるようである。
もっともそこら辺は俺達だけのヒミツにして、魔導師協会とかには説明しないみたいだけど。
「何でだ?」
当然の疑問だな。
エルドロウの魔法を乗っ取る事が出来るなら、剥がす事だって出来るだろう。なのになぜ、世界と自分を仕切らにゃいけんのだ。自分はともかく、どうして全部の大陸座も同じように世界から引き剥がした?
「……残念ながらキシさんは、そのあたり多くは語ろうとしなかったな」
キシというのはジーンウイントの本来のキャラクター名だそうだ。
どうやら……エルドロウが学士の城に招致されたというのは本当らしい。エルドロウとジーンウイントのキシさんとやらは顔見知りで、会話からすると互いに出し抜き合っている気配があったとか。
それであまり多くを語ろうとせず、ナッツにデバイスツールを渡してさっさと消えちまったらしい。
トゲの生えたような結晶体だ。青い細かいトゲのような細い8面結晶が集合した形であるらしい。内一本を抜き取ってレッドが複製、こっそり魔導師達に『謎の石です調べてください』などと差し出してきたそうだ。
もちろん、大半である本体がここにあるのは魔導師達は知らない。
曰く、敵を欺くにはまず味方からだとか。
「……エルドロウは、ジーンイントに触れられないのか?」
「いや、そういう感じじゃなかったな。……僕が思うに、多分……触れられるのだと思うよ」
「じゃぁ、物理的に奴らは大陸座と争える状態だろう?それでも実力的に敵わないって根拠でもあるのか?……どうしてエルドロウは……八逆星は大陸座を隔離しようとしたんだ」
「それが分かれば苦労しないのです」
「でも、推測はあるだろ?」
レッドとナッツは顔を合わせた。勿論、推測はあるのだろう。だが話す程強い根拠がないから黙っているつもりでいたんだろうな。
「それで、事足りると思ったんじゃないんですかね」
「……事足りる?」
「エルドロウの魔法がいつまで有効なのかは分かりませんが。とりあえず、僕らと大陸座の接触は『拒める』と思っていたのでしょう。だから、それで事足りるのだ、と」
「大陸座をあたし達が目指すのを……連中は分かってたって事かい?」
マツナギの言葉にはっとなる。成る程、そういう風にも取れるぞ。
どうなんだと俺は再びナッツとレッドを睨んだ。
「だから、全部分かれば苦労はしません」
「穴だらけだよ、さっぱり分からないさ。……とにかく、話を聞ける大陸座から事情を聞くしかないだろう?問題の相手、魔王の発端が9人目、バルトアンデルトだって事は割れてるんだから。もしかすればだからこそ、大陸座は予測した事があるんじゃいのかな。最も……魔王討伐を望んだのも大陸座であるはずなんだけど」
確かにな、ナーイアストはそんな事を言っていたように思う。でもその魔王とやらがバルトアンデルトだって事は……本当に知らなかったのか?
ようするに、そこが肝なのかもしれない。
真上から襲いかかってきたデカい虎っぽい獣の両腕が、俺を抱える前に眉間目がけて槍を突き出す。
勢いを殺いだ所でまっぷたつに剣で引き裂いて、続けざま襲いかかってきた小型の犬の群れを蹴りも見舞いながら蹴散らした。
一部から噛みつかれたが鋼の足具を砕く程のパワーは無い。そのかわり足を止められる……へたすると足を引っ張られ引き倒されそうだ。
俺は槍を篭手に素早く戻し、振りかぶった篭手に再び槍を構えた。ホント便利で重宝してますキリュウもとい……ユーステル。そして……俺に盾としての機能を教えてくれたアイツにも一応礼を言っておくか。
ありがとよ、ナドゥのおっさん。
俺は割と両利きである、前にも何度か言った通り。
闘技場で死にものぐるいで生き残った、その賜物だ。最初っからこんなに強い訳じゃない。それなりの努力がある。
その為の経験値の重さって奴だろう。
左手で槍を振り回して犬をはじき飛ばして一匹ずつ、とどめを刺していく。
おっと、小休止だ。一息付く間もない混戦中だからな、大事な休憩に俺は荒れた吐息を整えて剣のつゆを払い、目に入りそうな返り血をマントで拭う。そうしながらなかなか見渡せない状況を確認。
丘になっている中腹で一列となってそれぞれ魔王軍を相手にしている俺の両脇はテリーとアベルだな。その奥ではマツナギとアイン、ナッツとレッドがそれぞれペア組んで同じく奮闘しているはずだ。
割と俺ら、一人一人強い設定を初期で行ってしまったので共闘する必要が無いのだ。圧倒的多数相手の場合は一人で戦った方が効率が良かったり、なんである。
今しがた俺達が始末した抵抗しようの無い黒い怪物達に、下方にいた魔導師達が一斉に攻撃魔法。
強力な油か何かを作って、それをばら撒きながら強風で火を吹き掛けて焼き払っている。
丘の下から、徐々に炎に追いつめられていくのを……。
エルドロウは黙って見守っているな。
「……大丈夫かアイツ?まだ何かたくらんでるんじゃねぇえだろうな?」
俺はぼやいて丘を上がった。そろそろ奴に声は届くだろうか。
「おいテメェ、ふんぞり返ってんじゃねぇぞ!」
突っ込んできた角の生えた馬の怪物の首を刎ね上げ、空から突いてくる鳥は槍で突き落とす。
おっと、良い具合に巨大な爪を振り上げて俺を待ち構えている敵がいるじゃねぇか。バァカ、俺を切り裂くなんて百年早ぇんだよ!
槍に串刺した怪鳥をそいつに投げつけてやると、多々良を踏んで怯む。そこを復活した名剣で切り伏せてやるぜ。
腕と首を綺麗に飛ばす、コツがいるんだぜ?まずはぶっきらぼうに関節目指して肉を断ち、骨に当たったら適度に流して骨の隙間に刃を誘導、そうして筋と関節を断ち切るのだ。
分厚い筋肉の流れをぶった切ると力がいるからな、その場合は横から刃を入れる、角度が重要である。
もっとも、ここまで切れ味の良い剣があるから出来る芸当だ。俺は、アベルみたいに何でも切り裂くような魔法を自主的に剣に付加させるような事は出来ないし、奴ほど怪力ではない。
戦いながら、俺をエズで鍛えてくれた監督のアドバイスがリコレクトされる。
どうすれば効率よく人、もしくは生物を壊す事が出来るか、ってのを教えてくれた……俺の第二の先生だ。
第二関節からもぎ取った腕が宙を舞う、俺はそれを左手に納めて一旦剣を地面に突き刺して……右手利き腕でエルドロウに向けて、思いっきり怪物の腕を投げつけてやった。
手の大きさに見合わない巨大な爪を備えたソレは、無様に肉と血を滴らせながら回転して飛んでいく。
「……無粋ナ」
それを太っとい腕でエルドロウ、払いのけやがった。……防御壁とか展開してるって聞いてたがな。何時の間にか解除してやがる。魔法とか使った訳じゃないらしく、爪が腕に引っかかって明らかに、血が滴っているのが見えた。
と思ったら、すぐにその傷がふさがったようだな。
チッ、その青い光、自分にも効くのかよ。
「おら、掛かってきやがれ!」
俺はついでにまだ敵が周りにいなかったので、ファックポーズも決めて挑発してみた。
「……言っておクが……私は確かメに来ただケで争いニ来たのでハ無い」
「だったらこの怪物共……引き上げろよッ!」
再び群がってきた怪物を相手にしながら、俺はさらに丘を登る。
「哀れナ怪物……。我々の血より出でル、その一端ヲ担う者とシて、最後を見守ル必要は有るかと思っていルのだガ」
「だったら、復活させるような真似を……するなっての!」
死骸の蔭から飛び出して来た小物を切り捨てる。
「……試していルのだ」
何を言ってるんだか。
俺は熊のような犬のような、猿のような……なんとも言いようのない怪物の首を掻き斬って踏み倒す。その胸に剣を突き刺し、とどめを刺しつつ血を払って剣をエルドロウに向けた。
「俺達がお前らにくれてやるのは破壊だ、変わらねぇぞ、俺は変えられないんだ」
俺が、どう足掻いても破壊する方だってのはもう知っている。俺は多分……これからこのまま、ずっとこうだろう。
密かに俺はそう思っている。
多分……それを他の連中はよしとしない事は知っている。越えて欲しいと思っているだろう。暗黒比種化、すなわちそれは魔物になる事。赤旗の魔王化はなんとかするとしても、俺の魔物化は止まらないだろうと俺は……思っている。
シエンタに行ったって多分、何も変わりはしねぇんだ。引き金を引いた事件はそんな過去の出来事じゃない。
全てリコレクトして、全てぶっちゃけてみて俺は何が自分の心的要因なのか大体察して来ている。
タトラメルツだ。
リコレクトするたびに俺は、痛みを伴って思い出す。俺の所為だと殆どの者が知らずにいる。
けれど、俺の所為。
俺にその具体的な記憶があるわけじゃない。
けれど、タトラメルツが三分の一消えたのは俺の所為なのだ。
それを認めてしまった時、俺は再び過去そうしたように開き直った。
故に償いたい、死んだって何も償う事など出来ない、だから。生きて、全ての原因を俺は……破壊すると心に決めた。
俺の決意を組んでくれたか。
唐突にエルドロウは……組んでいた両手をふりほどく。
「ふム、そうか」
馬の口をもごもごとさせて……いや、よく考えたら馬は喋れねぇよな?
この声はどこから聞こえるんだ?
「少なくトもお前は、救う方デは無いという事だナ」
「……」
俺は奇妙な気持ちになって言葉が止まってしまった。
ん?主語はどこだよ。
……誰を救うって?
そう思いつつ、俺は多分……全てのものを間接的にしか救う事は出来んのだろうなと心の中で苦笑していた。
世界を救う為に悪いと思われるモノを破壊する。そういう方法でしか何かを救えない、俺達は典型的な……ダメ勇者だ。
俺が嫌いな、典型的って言われる……俺はそういう救い手にならんとしている。
勿論嫌だ、でも嫌だからといって立ち止まる訳にはいかない。俺は、戦士ヤトはそういうキャラクターなんである。必死に平凡を嫌った挙句にそういう道に誘い込まれている。
だからこそ俺に『破壊者』の宿命が課せられたなんてのは考えすぎかね。はは、止めよう。
考え出したら切りがねぇ。
だからもしかすれば、エルドロウが言った『救い』というのは……彼ら魔王八逆星や赤旗の連中を、という事なのかもしれない。
時間にして……2時間の長丁場は静かに幕を下ろした。
エルドロウの撤退でな、奴はその後静かに姿が消えて、同時に青白い光が収まって怪物は復活するのを止めた。
……魔導師達は討ち取りたかったみたいだけど、レッドは逃げられる事も頭にはあったようだ。
勿論、それはこの場では口には出してねぇけど。
しれっとした顔してるからそこに、この結果で問題なしってのが書いてあるんだよお前。
はぁ……流石に今回はキツかったな、ひっきりなしに1時間超、殆ど休憩無しだぞ?ありえねぇっつーの。
ようやく訪れた休息に俺は黒い返り血を吸い込んだマントを脱ぎ捨てて草むらに腰を下ろした。
「お疲れ、」
ナッツがコーヒー入れてくれたのがマジで嬉しいよ。
「怪我は?」
「……俺に聞く必要があるか?」
俺は苦笑したが……途端ナッツがちょっと眉を寄せて怒った顔をしたので……そっぽを向いて……戦闘中爪でえぐられてしまった左腕を差し出した。
厚手の服が破れた下から、傷のない俺の腕が見えただろう。ナッツはため息をついて俺の手を離した。
「……コントロール出来ないんだろ?」
「けどオートで傷が塞がるらしい。気が付いたら治ってやがった。もしかするとあの青い光で……」
「ヤト、……自虐的になるなよ」
静かに窘められ、俺は苦笑して服の破れを下ろす。
「もちろんだ。……悪いな……なぁ。あいつが最後に言った言葉……お前にも聞こえていたか?」
「いや、何か話したのか」
俺はその返答に……苦笑してならいい、何でもないと誤魔化そうとしたが……。
「おやおや、秘密にしたい程痛い事でも言われたのかい?」
そういう事言われるとつい意地になるだろうが。
「救う方じゃねぇな……ってさ」
「僕らが……何を?」
俺が引っかかった所でナッツも首をかしげる。
「さぁな、俺もそれは結局分からんけど」
その後、いろいろグダグダあったのだが……俺ぁ人間って種族であって能力的なポテンシャルっつーの?それが最下位です。テリーもこれは同じくだ。
緊張が途切れた途端にもの凄い、クるのだ……疲れという名前の眠気が。
とかく闘技場で極端な生活が長かった訳だろ?たまには長丁場だってあったさ。その間ずっと緊張を維持しておいて、舞台を降りたら倒れてもよかったもんだから、そういう無理な体力の使い方には慣れているのだ。……本当は良くないのだが。
軍隊とかだとすれば、絶対ダメな体の使い方だと思う。
気が付いたら寝てたらしくて色々展開をすっ飛ばしていた。
リコレクト、薄暗い寝床……ここは、レッドのラボだ。レブナトラボでお世話になってるベッド。
……何時戻ってきた?
時計とか、無い訳じゃないけど普及率は高くない。この部屋には時計なんぞない。基本的には日のある方向で時間を見るのだが、恐らくまだ日は昇ってないんだろう。だからこんなに暗いんだ。
俺は……二度寝はしない質である。割と早起き得意なのは前にも言ったな。
もう、リアル俺がどうだとか比較はしないと思っているが癖って事で今回は言っておく。
リアル俺、サトウハヤトなら間違いなく二度寝する場面であるが俺は起きた。
相部屋になっているのは今回もナッツであるが……ナッツは居なかった。俺は閉じていたカーテンを開ける、……天気悪い、灰色の空の向うが赤く色づいているのを発見して窓を開ける。
朝日か、この時期だと相当に早いな。早朝5時位だろうか。
リコレクトし、一応汚れは落としてベッドに倒れ込んだ事を思い出す。水だけ腐る程飲んで寝た所為で空腹だ、ついでにもの凄い尿意をもよおしている事を察し、慌てて厠に駆け込む。
それですっきり目は覚めた。
そうだ、エルドロウが居なくなっちまって、途端に魔王軍は崩れ落ちた。魔導師達はエルドロウを追おうとしたんだが、転移扉追跡が困難とかで結局諦めたようだった。
それでランに戻ってきて、どっと疲れが出てしまった俺は戦いの汚れだけ落として鎧や武器の手入れもほっぽって寝てしまったのだった。
腹は減っているが、食えそうなもんは無いしなぁ。……携帯食料から乾し肉と乾パンでも囓ってるか。
天気悪いと思っていたが、朝日が昇るに連れて雲が晴れて来る。魔導都市ランは比較的高地にある、山の天候は変わり易いとは良く言ったもんだ。
俺はラボの裏手の井戸から水を汲み、乾し肉を噛みつつヒマだったんで武具の手入れをする事にした。普段はスキップしているが、日々ちゃんと下着の処理やらやってるんだぜ。
返り血に汚れた鎧をビスをはずして濯ぎ、乾かす。返り血に染まった服は水洗いしたのち、特殊染料につけ込んで天日干しだな。その間に剣の手入れだ。水で洗いながら刃の欠けを確認し、研ぎ石を掛ける。俺の愛剣はそーいう作業が不要の剣と謳われてはいるものの、剣士にとってこの辺りの作業はルーチンみたいなものなのだ。身に沁みついてて、やらないと落ち着かない。
そういえば、鞘が合ってないんだよなぁ、これも一度バラして汚れを落として錆を防ぐ油を回して……と……。
そんなんやってたらテリーも起き出してきたな。
剣士はそういう作業がヤボったいよな、とかお前はものぐさだから拳闘士になったのかとか雑談を交わしたり。
いつもの作業で再び、任意でスキップかな。
気が付いたら朝食の席にいた。
「昨日は、ご苦労様でした」
ようやく温かいご飯だ、がっつく俺の前でレッドが頭を下げた。
「そういえばお前ら、何処行ってたんだ?」
どうも、さっきまでラボには居なかったようだ。お前ら、というのはレッドとナッツだな。
「状況整理をしてきたよ」
「徹夜か?」
「心配は要りません、あなた方が先頭で戦う分の仕事をこなしたまでです」
どうやら、この場で状況説明に入ったようだ。
例によって俺の理解した範囲で説明しよう。
まず、エルドロウの『確認したかった事』だな。
というかまず、エルドロウ自身の事からか。
……奴はかつて魔導師としてこの魔導都市ランにいたらしい。しかし色々協会で禁呪扱いにしていた魔法に手を出した事で位が剥奪され、無色魔導という……ちょっと特殊な魔導師になったんだそうだ。
いや、普通なら魔導師じゃなくて邪術師と呼ぶらしく、実際そう呼んでも構わないらしいが。ちょっと特殊な出来事があって色の無い魔導師、という特別な扱いになっていたらしい。基本的に魔導師って、法なんかあっても守らないだろ?そういう枠にはまらない行動力が逆に褒められちまう所だからな。割と無色に対する信者もいたとかなんとか。
レッド曰く、特例として位を剥奪した上でどの位にも属していない魔導師、というのが許されているらしい。そういうのを無色魔導と言うんだと。
一応エルドロウより前の例があるんだとか。そういや、自分も本来なら紫ではなく無色だったとレッド、ぼやいてたなぁ。
エルドロウは魔導都市を追われ、学士の城に招致されたという曰くがあるらしい。
おいおい、学士の城とやらには誰も行けないんだろ?行ったら戻って来れないとかサトーが言っていたように思うが。
とにかく、ある日エルドロウは消息を絶ち、それ故に学士の城に行ったのだという噂が立ったって訳だな。
しかし、今エルドロウは姿を大きく変えて魔王八逆星の一人として、頭上にバグの赤旗立てて現れた。何たって馬二頭立てだもんな、明らかに元の姿とはかけ離れている。
見た目であれがエルドロウとは気付くはずもない。しかし、レッドは少しエルドロウの魔王関与を疑っていたようだ。というのも、エルドロウの得意とする魔法ってのが……空間に関するものだとか――ええと難しいので俺に半分以上理解不能でいたがッ!とにかくだ。
大陸座を触れ得ないように遮断してしまった仕業がだな……どうもエルドロウっぽいと密かに思っていたんだそうだ。あと、装備品がどう見ても特徴的な模様の施された魔導マントだった、とか。
だから、大陸座を遮るのは『魔法』と断定し、これを魔導師は解く事が可能だと奴は在る程度の確信を密かに持っていた様だ。
ところがだ、実際に大陸座を遮断しているのがエルドロウの魔法なら、俺達はやっぱり簡単に突破出来ないはずだろう?勿論、エルドロウもそれは知っている、奴は俺達だけ大陸座に会えるように小細工したつもりはないらしい。
それなのに世界から遮断しているナーイアストが閉じられた結界の中から解放されて消え、オレイアデントも同じく消えた。なぜ自分の魔法空間を突破するのか?奴もある程度その理屈を察して現れたという事らしい。これは、ナッツの談。
ここのカラクリは、こうだ。
ええとまずは……ナッツとアインはジーンウイントに会ったって事を説明しよう。
エルドロウと一緒にな。
そして判明した事には、だ。
大陸座に触れられないようにしたのはエルドロウなのだが、そのように魔法で遮断する意図を悟った大陸座のジーンウイントがこれに小細工した。
つまり、エルドロウの魔法をジーンウイントが乗っ取って、……ええとつまり大陸座と世界を引き剥がしたのはエルドロウなのだが実際には。
ジーンウイントという事になるようである。
もっともそこら辺は俺達だけのヒミツにして、魔導師協会とかには説明しないみたいだけど。
「何でだ?」
当然の疑問だな。
エルドロウの魔法を乗っ取る事が出来るなら、剥がす事だって出来るだろう。なのになぜ、世界と自分を仕切らにゃいけんのだ。自分はともかく、どうして全部の大陸座も同じように世界から引き剥がした?
「……残念ながらキシさんは、そのあたり多くは語ろうとしなかったな」
キシというのはジーンウイントの本来のキャラクター名だそうだ。
どうやら……エルドロウが学士の城に招致されたというのは本当らしい。エルドロウとジーンウイントのキシさんとやらは顔見知りで、会話からすると互いに出し抜き合っている気配があったとか。
それであまり多くを語ろうとせず、ナッツにデバイスツールを渡してさっさと消えちまったらしい。
トゲの生えたような結晶体だ。青い細かいトゲのような細い8面結晶が集合した形であるらしい。内一本を抜き取ってレッドが複製、こっそり魔導師達に『謎の石です調べてください』などと差し出してきたそうだ。
もちろん、大半である本体がここにあるのは魔導師達は知らない。
曰く、敵を欺くにはまず味方からだとか。
「……エルドロウは、ジーンイントに触れられないのか?」
「いや、そういう感じじゃなかったな。……僕が思うに、多分……触れられるのだと思うよ」
「じゃぁ、物理的に奴らは大陸座と争える状態だろう?それでも実力的に敵わないって根拠でもあるのか?……どうしてエルドロウは……八逆星は大陸座を隔離しようとしたんだ」
「それが分かれば苦労しないのです」
「でも、推測はあるだろ?」
レッドとナッツは顔を合わせた。勿論、推測はあるのだろう。だが話す程強い根拠がないから黙っているつもりでいたんだろうな。
「それで、事足りると思ったんじゃないんですかね」
「……事足りる?」
「エルドロウの魔法がいつまで有効なのかは分かりませんが。とりあえず、僕らと大陸座の接触は『拒める』と思っていたのでしょう。だから、それで事足りるのだ、と」
「大陸座をあたし達が目指すのを……連中は分かってたって事かい?」
マツナギの言葉にはっとなる。成る程、そういう風にも取れるぞ。
どうなんだと俺は再びナッツとレッドを睨んだ。
「だから、全部分かれば苦労はしません」
「穴だらけだよ、さっぱり分からないさ。……とにかく、話を聞ける大陸座から事情を聞くしかないだろう?問題の相手、魔王の発端が9人目、バルトアンデルトだって事は割れてるんだから。もしかすればだからこそ、大陸座は予測した事があるんじゃいのかな。最も……魔王討伐を望んだのも大陸座であるはずなんだけど」
確かにな、ナーイアストはそんな事を言っていたように思う。でもその魔王とやらがバルトアンデルトだって事は……本当に知らなかったのか?
ようするに、そこが肝なのかもしれない。
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