異世界創造NOSYUYO トビラ

RHone

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8章  怪奇現象    『ゴーズ・オン・ゴースト』

書の5前半 乱暴な自由『とりあえず騙し通したという事です』

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■書の5前半■ 乱暴な自由 Rough Liberty

 結局、赤旗の正体というのを魔導師達は解明出来てないらしい。

「出来ないのではない、現状出来ていないだけだ」
「……それを出来なかったと言うんじゃないのか」
 俺の突っ込みに、顔を真っ赤にして魔王軍解析に燃えている、知らない魔導師の代表らしい人が次の言葉を探している。
「……高位、今一度チャンスを頂きたいッ!」
 頭のはげた黒衣魔導と赤位魔導師の群れは突然レッドに向いて、一斉に頭を下げた。
「サンプルは存分に与えたはずです。それに、数日で結果が出るとは僕は思っていません。……必要なのは確かな結果なのです、経過ではない。分かりますねツクバ師位」
 あのハゲ、ツクバっていうのか。反論を探しているな、目を必死に泳がせている。
 魔導師ったって全部が全部レッドみたいに口が達者な訳じゃぁない。少なくともこのツクバという魔導師はそういうのは苦手であるようだ。ド素人の俺の突っ込みで沈黙したもんな。

 結局反論出来なかったツクバ魔導師を置いておいて、俺達はこれから……。
 学士の城とやらがある区画に向かう。

 そこに行く為の転移門がある場所に行く最中にだな、あのツクバ魔導師率いるグループがどやどや推し掛けてきて何やらよく分からない事を言い出したのだ。
 要するに、自分達のグループでは解析が上手く行かないから今一度『サンプル』が欲しい、的な直訴だったらしい。このサンプルてのが俺の血だってんなら多少の妥協もしてもいいんだが……そうもいかない。

 ツクバ魔導師が必要としたサンプルは俺の中から生えてくる蔦の方だ。『役目』を終えると速攻枯れちまうアレな。

 結果出そうったって任意で出せるなら世話は無い。アレが何なのか分からなくて困ってるのは間違いないが。かといって解決の為に協力すべくサンプル渡そうにも、出現させると俺が暴走する危険性があるのだからそうそう出来る事じゃない。とりあえず、どういった状況で『出て来る』のか、という推測は高い断定で出来ているらしいぞ。
 あれは俺の命、肉体の生を脅かす事態に陥ると出てくるらしい。それで、脅かした存在に報復しようとするんではないか、とかうちの軍師連中は予測しているそうだ。前回のログアウトの時にやった実験兼ねた封印で分かった事っぽい。
 そんな危険な状況にしないと取れないサンプルだもんな。
 貴重なものって事に『なってる』らしい……レッド曰く。
 なんかもう一段階詭弁が働いている気もするが。
 とにかくだ、一度説明している諸々の事情を『もう一度』説明するヤボをレッドはしない。
 ようするにツクバ魔導師が無能だという事ですと、ばっさりレッドは切り捨てた。


「いいのか、あんな奴に解析頼んで」
「貴方や魔王軍について解析しているのは彼だけではありません。魔導師というのは得意分野があります、その得意分野からアプローチしているのですから……相性が悪ければあのように何の結果も残せない事もあり得る。大体そんなに早急に結果が出る筈がないのです。……彼は手柄を焦っただけでしょう。簡単に何かしら結果が出ると思っていたのでしょうね、ところが何も出なかった。……それで『最初』から間違えたと思い、最初からやり直そうとしてあのように勝手な事を言っている」
「……厳しいんだなぁ」
「実験体だもん、コイツだけこの街に置いていけばいいじゃない」
「何をぉ?」
 アベルの言葉に俺は冗談じゃないと振り返った。
 いくら俺が希少な検体とはいえ、やっぱり一人で残されるのは怖いんだからッ!
 俺は素直にその気持ちを込めた。そこはもう迷わないぜ。

 俺をここに一人にしないでッ 涙

「……まぁ、それでもいいんだよね」
「魔王連中とガチになって暴走されるよりかはいいわな」
「だよねー、大事な検体だもんねー」
 ナッツとテリーとアインの実に愛のない言葉に、俺はマジ泣きしそうだ。
「何言ってるんだ、パーティーリーダーは俺だろうッ!?」
「ある意味、ここまで撃たれ弱い盾も無いですよね。核でありながら装甲も兼ねるなんて。それ、盾って言いませんよ?」
「……そんなに俺は戦力外なのか……」
「いや、戦力外とは思ってねぇけどよ。いい加減お前戦い方を変えろよ、命を賭す必要はもう無いだろ?」
「なんだそれ?」
「無茶な戦い方をするなと言ってるんだ。俺みたいに好きでやってるならまだしも」
 テリー……お前、好きで命賭けて戦ってるっていう自覚はあったんだな。
 アンド、そんな奴から言われたくねぇ。
「とにかく」
 全員から指さされた。

『もう無茶するな!』

「誓いなさい」
 命令形です、どうやらログアウト挟んで俺の過去リコレクトC・Cして、連中は俺の無謀っぷりがそも問題だと『気が付いて』しまったようです。そして俺がそのように昔から暴走キャラであった事を、俺が暴露した過去話でガッテンしやがったのだ。
 俺……がっくり肩を落として右手を上げる。
「誓います、ヤト・ガザミは今後自分勝手な暴走はしないと努力します」
「努力じゃダメだろ?」
「ばっきゃろー、俺だって暴走したくなんかねぇんだよー……いいよ。アベルには前にも言ったけど、いざって時には暴力でもいいから止めろ。それでいいから、な?」
「他力本願ですね」
「ホントよね」
 くそぅ、ああいえばこう言う!


 散々言われながらも一応、連れてってくれました。

 学士の城……それってどんなんだろうなと思ったが、そういえばサトーが言ってたな。
 存在すると言われるだけで何人も辿り着けないとか、何とか。
 案の定、転移門を潜った先に城など無い。霧の掛る高台があるだけだった。もやっとしていて辺りの様子は殆ど見渡せない。
 ここは……ドコだ?

 ところが、軍師連中は案の定ではなかったようだ。
 割と安易にそれは『見えるもの』と思っていたようで……現在二人で額を合わせて作戦会議中である。
 で、この霧掛った丘のあっちこっちにすでに戦闘の跡があり……黒い怪物が幾つも転がっている。
 ご存じ、魔王軍の混沌の怪物だ。とはいえ……死体には赤旗が立たんのだが。だから赤旗は魔王軍である怪物からは拡散しない。
 ……死体研究しても意味無いかもしれないんだよな、でも残念ながらそうだと口出し出来ない。それにはこっちの世界の連中から、自力で気付いてもらうしかない。どうして死体を調べる事が無意味なのか、俺達が把握している根拠が示せないのだ。
 延長線で言うと実は、俺から出てくる謎の蔦についても同じ事が言えるのかもしれない。
 しかし無関係だから調べる必要が無いと断言はできないよな。根拠となる部分がフラグという、この世界には関係の無い階層の出来事だと俺達は分かっているとはいえ、そうだという説明は出来ないのだし。赤旗バグについては『世界の中から』も解決策を探してくれと頼まれている事でもある。
 魔王軍についてるバグ、レッドフラグが見えるのは俺達だけだ。
 しkし赤旗が消えたからそれは調べても意味ない、とは……言えない。

 さて、事前に聞いていた状況を説明しよう。

 この霧の丘の上に『学士の城』というのがある、らしい。
 もちろん……今はそれらしいものなど見た感じ、無い。有るべき所に結界が働いていて入れないとかでもない、丘のあっちこっちで怪物の死体を吟味する魔導師達が散らばっているだけだ。
 時間によって謎の城が現れる……訳でもないだろうな。
 レッド曰く、存在次元がずれているから一般的には見えないし触れ得ないという事だ。要するに……俺らのエントランスみたいなもんだろう。

 だから、ここにさえ来れば青旗立ててる俺らには、何かしらが見えるだろうと割と安易にウチの軍師連中は考えていたようだが……その憶測が全く外れてしまって今現在、困っているらしい。

「どうするんだ?」
「お手上げです、とりあえず……僕らはここに招致されている。ソレは間違いないのです、待つ事にしましょう」
「……ああ、どうやらおもてなしの準備は整ったようだぜ」
 テリーが好戦的に身構えた。

 俺達は一斉に霧の掛る空を見上げる。
 霧を裂き、黒いものが唐突に現れた……違うな、黒い怪物達が丘の上に飛び降りてくる影だ。

 魔導師達は現れた怪物は放置して、怪物が現れる霧に隠れた空を指さしている。
 誰かが風を起こす魔法を行使し、霧を振り払った。突如吹き荒れる風に俺は身をすくめてしまう。そんくらい無遠慮な突風を突然巻き起こしやがって!

 しかし、おかげで霧がすっかり晴れて……頭上で何が起っているのかよく理解できた。

「あれは、馬の……」
 ええと、名前なんだっけ。聞いたはずなんだけどすぐにリコレクトしない。……てゆーか、どこで聞いたんだっけ?
 リコレクト。
 そうだ、魔王連中にとっ捕まっていた時だ。本人からは聞いていないのだが確かナドゥのおっさんから聞いたような。でも……そこまでリコレクトするのに肝心の名前を思い出せん。
 聞いたはずなのだが、このように頭が悪いと知能判定に負けて全部の出来事を思い出せないのだッ!

 白い馬の頭を二つはやした巨大な……何だろうな。手とかは普通に人間ぽく5本指なんだけど。
 二つ首の怪物、だな。
 こういうあり得ない造形のモンスターの事はこの世界では、合成獣と言う。そのまんまであるが、それは要するにああいう頭二つ生やした造形の魔物が一般的ではないからそういう名称に落ち着くのだ。
 純粋にモンスターって事で、あり得ない怪物、でもいいんだが。一応合成獣としてのモンスター分類もある様だ。リコレクト出来る知識で言うと、具体的にこういう変な造形の魔物は東に多い。東には、合成獣がまかり通る土壌があるわけだ。
 ようするに、そういうのを作ってみました★ってやる魔導都市ランがあるから、なんだろうなぁ……今思うとそういう事かとげんなりしてきた。

 人間の二倍以上はある巨体の、合成獣の魔王八逆星が高い空の上に『逆向き』になって立っている。まるで空に足をついているみたいで……実におかしな具合だ。
 その逆に向いた八逆星がこちらに向かって両手を上げていて、その両手の先に光を乱反射する何かの模様が展開、さらにその下から黒い混沌の怪物『魔王軍』がバラバラと降り注いでくるという状態だな。
「……召還門……ですね。マツナギさん」
 突然レッドから呼ばれて、少し驚いてマツナギが振り返る。
「何だい?」
「精霊干渉力をお持ちだそうですね、精霊使いは魔法使いよりもはっきりと魔法の歪みを発見出来る場合があると聞いた事があります。あの、馬顔魔王の足下を見てください。……何か見えませんか?」
 言われて、マツナギは濃い赤い瞳を細めた。
「……ああ、何か丸く歪んでいるように思う」
「ナッツさん、その場所を把握しておいてください」
 ナッツは無言で頷いた。
「とりあえず……奴をボコればいいんだな」
 テリーが両手の拳を握り込む。俺も……剣を抜いた。
「おい、馬野郎!」
 さて、開幕だ。
 久しぶりに暴力沙汰ですよ俺。
 剣を抜き放ち、逆さに空に浮かんでいる名前ド忘れ魔王に差して叫んだ。風はすでに止んでいて、丘の上では魔導師達と怪物の戦いがおっ始まっている。それに突っ込む前に、聞くべき事は聞いておかないとな。
「馬野郎トは酷い言種だナ。……その様にして、私の怒リを買いタいのかネ」
「いいから降りてこい、俺らに用事だろうが!」
「そウ言えば、直にハ名乗っテいなカった様ニ思うな。本当ハあの場デ名乗る予定ダったンだが」
 差し出していた手を引っ込め、広い胸の前で巨大な手を組む。
「私の名を聞くガいい」
 馬顔の声がはっきりと聞こえるな、……なんだろう。叫んでるようには見えない。かなり離れた所にいるのに、こんなにはっきり声が聞こえるって事は……そのように魔法を使っているという事か?
 リコレクト、拡張伝達とかいう初歩的な魔法があるらしいぜ。王様の演説とかでも使われているし、俺が昔いた闘技場でも場内アナウンスに使われていた魔法だ。多分そいつで語りかけられているし、あっちもこっちの会話を拾う魔法を使っているのだろう。
「エルドロウ、無色魔導エルドロウだ」
「ッ、やはりそうですか」
 かなり低くレッドが呟いた。
「……知り合いか?」
「まさか、数十年前に魔導師協会から追い出された邪術士ですよ。へたをすれば僕は彼に続いて邪術士認定されて同じく、無色魔導を名乗る羽目になっていたのです。それを忌避してしまって、……だからといって紫が与えられるのも……どうかと、思いましたけどね」
「って事は何か?あのなりで魔導師かよ」
 がっかりした口調ですねぇテリーさんや。恐らく……ガチで殴り合えるとでも思ってたんだろうな。いやそういう俺もまさか、あの巨体で魔導師だとは思わなかったが。
「魔王軍を片づけておいてください。この場でエルドロウを名乗るとは……」
 レッドは……例の黒い笑みで笑った。
「実に好都合です」
 俺はレッドのいつもの真っ黒い笑みはとりあえずほっといて、未だ逆さに浮いている馬野郎、エルドロウに叫んだ。
「何の用だ?俺達の前にノコノコやって来るたぁ良い度胸だ!」
「用事か?確かめニ来たのダ。私の空間遮断を破ルと聞いたかラな。前に見セて貰った壁魔法も実ニ、見事だっタ。あれ程原始的な魔法を使えル人間はそうそう居なイ。何か特殊な存在と、ナドゥも認めテいるようであルし」
 なんとも独特な……もしかして馬だから上手く発音出来てないんだろうか。とにかくちょっと聞き辛い、たまに声が裏返る変なしゃべり方をしやがる。
「しかシ……思うに、それだケでは無い気がシてな……」
 しかし別にこっちをバカにしているわけではないようだ。……バカにされているように聞こえるけど。
「見たいというのなら、見せてやりますか」
「……マツナギ、援護を頼むよ」
 ナッツはレッドの言葉に背中の羽をふくらませて身構えた。
 む、お前飛ぶ気か、飛んで空に浮いてる奴に仕掛けようってか?
 空飛ぶ魔王軍もいるからな、一斉にこちらの行動を察したようにエルドロウの前に立ちはだかるっている。
「アイン、僕の後に続いて」
「分かったわ」

 ナッツとアイン空にが飛び立ち、それに空飛ぶ魔王軍が襲いかかったのが俺達の開戦合図となった。

 マツナギの強弓、アベルが飛ばした真空波、およびレッドが放った氷の槍によって空から襲いかかった魔王軍がたたき落とされる。ナッツは素早く上空へ飛び上がり、後を追いかけてきたいくつかをアインの灼熱のブレスが迎え撃つ。
 っと、俺もいつまでも空の様子を目で追っている場合ではない。
 地上を駆けてくる黒い怪物相手に剣を構えた。
「エルドロウは任せたぞ、」
 俺はその場にレッドを残し、テリーとアベルとそれぞれ進む方向を目で打ち合わせて……待ち構えるのも待ち遠しい、俺は久々の乱闘に明らかに口元に笑みを浮かべて魔王軍に斬りかかっていった。


 それから暫く混戦だ、こうなっちまうと大きく状況を見ている場合ではない。だがちらちら状況を見ていた所……ナッツとアインの姿が空から消えたな……ついでに、エルドロウも。
 心配だが今は、奴らを信じるしかない。空中に居たんじゃ俺ら、手出しできないし。戦士が魔導師に殴りかかっていくのは前にも言ったが、愚行でしかないからな。
 心の隅で心配はしつつ、とにかく丘に大量に降ってきた怪物をやっつける事に没頭する。ちょっと数が多い。

 と、突然空間が裂けたのが分かる。

 かなり俺の足下に死骸が積み重なった頃合いだな。
 とはいえ、まだ遠巻きにこちらを伺う奴らがいるから、これからそいつらに斬りかかっていこうとして、ちょっと返り血を拭った所。
 ふっと開けた空に、青いモノが突然現れた瞬間を俺はたまたま目撃したのである。

「……あれは……?」
 何だと聞こうにも聞ける奴が周りにいねぇ。
 仕方が無く襲いかかってきた魔王軍を再び相手に剣を振りかぶる。
 再び間を見付けて空を見上げてみたが……もうそこには何もなかった。しかし次の瞬間、俺は横殴りの衝撃に吹き飛ばされている。

 僅かな坂になっている丘を転げ落ち、自分で築いた怪物の死骸につっかかって止まる。

「くそ、何だ?」
 と、その死骸と思っていたものが突然立ち上がり、俺を見下ろした。
「……え?」

 振り下ろされた巨大な拳を俺はギリギリの所、防御成功。
 ……さて、これは誰に教えて貰った方法だっけな。俺は怪しくリコレクトしながら盾を構えている。
 盾?そんなん俺の装備にあったかって?
 ああ。盾役にして俺は確かに盾なんぞ装備していない。
 青白い、左腕を噛むこの盾は時に槍となり、時に……俺の腕を守る篭手。そう、キリュウもといユーステルから貰った水龍銀の万能籠手。
 実はこの篭手、こういう使い方もアリなのだ。
 俺は上半身に無駄に筋肉の発達した、巨大なゴリラっぽい怪物の腹に剣を刺し、捻る。内臓をぶちまけながら横に転がって立ち上がった。
「ヤト、一旦下がって!」
 おお?いつの間にやらナッツがいる。

 と、その手に……何か握っているのを見た。

 俺はゴリラの怪物の横っ腹を反対側にも切り裂きつつ、背から思いっきり蹴りつけて背骨をへし折った。つなぎ止める筋さえなきゃもろいもんだぜ。
 下り坂を降りてみて、ナッツの隣に来て振り返ってみて状況が理解出来る。

 今俺が切り伏せた怪物達がな……非常にゆっくりなのが助かるのだが……復活してやがる。死骸だと思ったのは間違いなく死骸だった。それが……死霊復活とは違う。
 怪しい光を浴びて再び息を吹き返していやがる。

 青白い光が丘の上から溢れている、大丈夫かこの光?
 そういう疑問を含んだであろう俺の顔に、ナッツは厳しい顔で言った。
「冷たい光だね……流石は禁忌を犯した魔導師だ。時間を操る魔法も容易く使う」
「何?」
「……魔王軍の時間を引き戻しているんだよ、アレを止めない事にはどうしようもないんだけど……強い壁魔法を作っていてはじき飛ばされてこの通りさ」
 いつの間にやら殆どの奴らが丘の下に居て、丘から溢れてくる不気味な青い光を不安な顔で見ている。魔導師達も何が起っているか理解してないって顔だ。
 山盛り魔王軍であろうと数十分で片づける俺達である。いつもより5ダース程数が余計だったがな、しかし今回は他の魔導師達の援護がある。恐らく、あらかた片づけ終わっていたはずなのに。
 今再び、丘の上の方から倒れた怪物達が復活して立ち上がって来るのが見える。

「……見てヤト、再生時間には差がある」
 アベルの仕業だろうか、細切れにされた怪物の肉片がひくひくいいながら統合する様を俺は眉をしかめて見ていた。それに対し切り落とされていたた腕は速攻に繋がってしまった。
「あたしが燃やしたのは復活しないね」
 と、アインが飛んできて俺の頭に着地。
「アイン、お前ら……何やらかしたんだ?」
「ジーンウイントに会ってきたのよ」
「……何ィ?」
 俺はアインを頭の上に載せたまま、ナッツを振り返った。
「ドコにいやがったんだよ、……そういえばさっき青い……」
「それについては後で説明する。……それより、これを僕が手に入れた以上……エルドロウは簡単には引き下がらないだろう」
 そういって、ナッツは握っていた右手を開いた。

 そこには、青いウニ……じゃなく。鋭い棘の付きだした目も冴える青い色の結晶体が握られていた。

「……デバイスツールか?」
 俺の小声にナッツは無言で頷いた。
 ようやく散り散りになっていた他の連中が走り寄ってくる。ナッツはレッドに青いウニのような結晶、デバイスツールを手渡した。するとレッド、まるで手品のように右手と左手に全く同じ結晶体を取り出してみせる。
「……手品してる場合じゃないでしょ?」
「とりあえず、騙す事は可能です」
 アベルの非難の声を軽く流しつつレッドはナッツに、片方の結晶を戻して紫色のマントを翻した。
 背後に控えた、……何時の間にやら増えてる所増援を頼んだんだろう。魔導師達に向き直る。
「……邪術士エルドロウが魔王軍と手を組んでいるのは明白です。これより、掃討作戦を行います。状況をどう見ますか」
 背後に控えていた、見た事のない魔導師の一人が顎を擦りながら答えた。……よく見たらじいさん、紫色……あれ?

 レッドの背後の5人が紫魔導じゃねぇか!
 紫って、世界中に人の指の数も居ないとか言われているんじゃなかったっけか?それが今この場に6人集結って!

「死をも覆す時の巻き戻し魔法か、理論的には可能とされている程度で……その前に幾つかの障害があったはず。……とりあえず原初理論は突破出来んようだが」
「悪しき事態ですなぁ……出来れば、傍観を決め込みたい所でしたが」
「そうも言っていられまいよ、邪術師を排出し、それが魔王軍に加担しているのを放置する事は魔導師協会として許せる事態ではないからの」
「とりあえず全方位より取り囲み、死の宿命の炎を放ち奴を追いつめるとしよう」

 魔導師の話は難しくて理解不能だが……ぶっちゃけてレッドが説明してくれた。
 ようするに、火に弱いと言う事らしい。
 原初理論とやらが何なのか分からないが、燃えてしまうと元には戻れない、という事らしいな。

「よし、俺達はどうすりゃいい?」
「引き続き魔王軍を蹴散らしてください。僕らは先頭に立ち蹴散らす係です」
「了解、行くぜテリー!」
「うし、もう一暴れだな」
「少しは休ませなさいよ」
 流石のアベルも息乱してんな、俺は苦笑しつつ弱音吐いてんじゃねぇぞと怒鳴って、再び丘を登るべく地面を蹴り上げた。
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