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8章 怪奇現象 『ゴーズ・オン・ゴースト』
書の8前半 王の渇望『生死を分ける種』
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■書の8前半■ 王の渇望 An Ambitious Person
久しぶりにぐっすり寝た。
野営と同じだから一応見張りは立てているけど、交代で昼近くまでゆっくり休憩を取っている。洗濯物も一通りこなして、十分に準備を整えてそれからドリュアートに向けて再び山道に挑む。
朝食には、焼きたての米粉比率の高い練りパンみたいなモノの焼きたてを頂く。昨日のうちに軽く生地を捏ねて発酵させておいたものだそうだ。釜は無いのでそこは、どうするのかと思ったらレッドの構築した熱魔法を駆使して焼いたっぽい。理論的なパン焼き温度さえ分かっていればオーブン機能を魔法で構築する事は容易い事です、とか言ってました。
そこにハムやら香草やらを挟んでほおばりながら、俺はナッツとレッドの作戦会議を眺めている。一応口を挟めそうなら参加するつもりだが……無用かもしれんな。
なんで黙っていたのか知らんがナッツの奴、宣教師視察とかでこの辺りを一度歩いた事あるらしい。ただその時奴一人で歩いた訳じゃなくて、付き人も色々居たそうである。ルートを自分で全部把握していた訳ではないみたいなので、頼りにされると嫌だから黙ってたのかね。割と奴は石橋叩いて渡るタイプだ。その性格のおかげで俺達色々助けられてる訳だけど。
不動の大陸座、ドリュアートの居る場所はやはり『そこ』で良いみたいだな。
シエンタからさらに森の北側。グランドライン山脈からシェイディ国の方向に伸びるノースロード山脈ってのがあるんだが、その分岐点あたり。
グランドラインぞいに北上するか、一旦リーリス川の支流に出てこの川沿いに行くか。あ、リーリス川ってのはコウリーリス国の南方に広がる森に動脈状に走っている川の名前だ。イメージとしてはアマゾン川に近いな。エンスっていうデルタ地帯にある町に全部繋がっていて、間違いなく面積で言えば世界最大の川になるだろう。
昔はエンスから川を遡ってドリュアートまで行けたらしいんだが……リーリス川って濁流だから結構ルートが激しく変わるらしいんだよな。
レッド曰くドリュアートにも『ブーム』とかいうのがあるらしい。なんだそりゃって突っ込んだら、ようするにドリュアートを調査するブームってのがあるんだと。
残念ながら今それは休閑期と言えるらしく、本来魔導都市ランから直通の転移門もあったはずなんだが、使う人が居なくなって管理されなくなり……今は無くなってしまったらしい。
さて、所で結局その『不動のドリュアート』なるものが一体何であるのか、それを一度も説明してきてなかったように思える。戦士ヤトが当然と知っている事だったので思わずスルーしてたんだが、要するに、だ。
その名前の通り、というのはリアルーサトウハヤト的な認識での名前の通りという意味だが――そいつは『木』なんである。リアル知識で言う所、ドリュアスとかドリュアデスとか、ドリュアードとかドライアードとか……そういう名称はファンタジーやゲームでお馴染みの存在だ。ギリシャ神話における『木の精霊』の事だ。なんつーか、大陸座の名前はこの辺りのゲームファンタジー好きお約束から引っ張られてきているのが多いので、名称を聞くだけでなんとなく、俺とかは属性が分かるんだよな……。
ナーイアストとオレイアデントも同じくギリシャ神話のニンフから来てる名前なんだが、ドリュアードと比べれば若干マイナーな方なのでご存じない方も居られる事だろう。ちなみに、ユピテルトもローマ神話におけるゼウスに値するジュピターから来てる名前っぽい。
それはともかく、リコレクトするまでもなく俺が名前の響きから連想していた通り、大陸座ドリュアートは木の属性をもれなく付随されており『動かない』とされている。
不動の、っていう修飾語が付く事にも何ら疑問は感じていなかった。
じゃ、大陸座のドリュアートは木そのものなのか?という事になるが。とどのつまりそうだと思う。少なくともリコレクトできる戦士ヤトの知識上ではその様だ。……違ってたりして?いや、普通に考えればそうなるじゃん?なんか特殊な木の事だと半ば、信仰に近く信じていたっぽいけど。
とにかく名前の通り、唯一存在が一般的にも知られているドリュアートは動けないっていうんだから本性が木であろう。で……大陸座ドリュアートはそれの精霊みたいなイメージでいいのだ、とかレッドが言ってる。
そりゃ、まんまやんけ。
とはいえ調査されなくなって久しいらしいので、古い書物や伝聞が正しいかどうかは保証出来ません、とか恐ろしい事もレッドの奴、付け加えやがった。
もし大陸座ドリュアートが不動ではなく、信仰の対象となっている木に居なかったらどーしてくれよう。
ま、他にあてが在る訳じゃないから結局、行ってみて手がかり得るしかないんだけどな。
「昔、ドリュアートは一度枯れました」
「……らしいな」
俺もその話は聞いた事がある。シエンタでもよく聞く昔話だ、多分……俺は爺さんからその話を聞いたと思う。
レッド曰く、それが比較的近年におけるドリュアート調査ブームの到来を齎した事件だったそうだ。っても、数百年前の話になる訳だけど。
突然枯れてしまった巨木……いや、イメージとして巨木だったろ?な?世界樹って奴?
思うに某世界樹、中をあんなにくりぬいてダンジョンにしちゃったら木、枯れるんじゃね?とか突っ込んではいけない。そこらへんは『死を超越したモノ』属性ももれなく付いている、侮ってはいけません。
世界樹の中は迷路っていうのはゲームでは、比較的多い表現である。ダンジョン化する訳だから巨大である事がデフォルトで想定されている事も多い。元になっているのは北欧神話におけるユグドラシルだろう。似たような神話は世界のあちこちにあるらしいが、それはリアルの事なのでここでは割愛するぞ。
このトビラ世界、八精霊大陸におけるドリュアート、例えて界樹とも云えるこの存在は、リアルにおける神話と同じ背景を持っている訳ではない。そもそも世界樹とは言わない。あえて言うならそれは『世界の真ん中にあった木』、と言われる……らしい。この辺りは多分、レッドからの受け売り知識だな。
過去形である事が重要だそうだ。
今は世界の真ん中には無い、過去あった、と表現される。
そもそも世界の中心ってドコですか?愛叫べますか?ヘソだったするんですか。何をもって中心とするのかよく分からん。そんな俺の疑問に、軍師のお二方は丁寧に答えてくださいました。
この世界においてドリュアートは『柱』だったそうだ。大昔に二つに分かれていた世界を分かち、支えるもの……とか。うーむ、ゲームとかにそういった世界設定の例もいっぱいあるよなぁ。……それはさておき。
トビラ世界における『神話』として、柱は2本あって一方がドリュアート。でもう一つが大地の柱オレイアデント、だそうだ。相当に昔の、もはや本当かどうかも分からない、ヘタすると何かを例えた作り話級の、神話として伝わる話だそうだ。一般教養ではないので、俺は教えられるまでそんな話は聞いた事が無かった。
でその神話曰く、世界の真ん中にあった木は二つに分かれいたとされる古い時代の世界が、都合一つになる課程、折れたしまったんだそうだ。なんだかイメージの沸かない話だが……ナッツが、昔読んだ専門書に分かりやすい例えを見た事があるよ、とかいって図解で説明してくれました。
ええと、中央に木が生えてこれが柱になっているわけです。で、世界の果てに大地の柱があってだな。この二つの柱で二つの世界が隔たっている。イメージ的には実はその世界の果て、大地の柱は実は柱じゃなくて壁って考えたら分かりやすいだろって説明された。ふむ……。
球体もしくは立方体に例えてナッツは説明してくれた訳だがこれは、要するに……地球ってのは丸くて俺達はその外側にいるわけだけど、このゲーム世界の神話曰く、かつての八精霊大陸は球体の内側的な世界と考える訳だな。図によっては、円柱形の内側を世界とするモデルもあったってナッツが言っていた。確かに、それの方が分かり易い。それぞれ円形の天と地が別々の、二つの世界。その世界を隔てる円柱の外壁がオレイアデントで、円柱のど真ん中にドリュアートとされる木がぶっ刺さっていて二つの世界を繋いでいる……と。
で、その中央の柱が折れたとする。
すると、その真ん中の柱で支えられていた世界が、例えて円柱形の上にあった世界が……下の世界に壊れて降り注いできて……結局の所どっちの世界も破壊されてしまいましたーとかいう具合の出来事が過去があったそうなー的に神話として残っているんだそうだ。。
一方の柱が折れてしまった為に、隔たっていた閉じた世界から解放されて……世界の果てが世界の果てに繋がって……例えて球体の中にあった世界が、球体の外側にひっくり返ったとも云う。
おいおい、本当にそんな事あるのか?それこそゲームの話みたいだがって、まぁゲームだけどさ。
思わず色々突っ込みたくなる訳だが、そういう神話だからと言われればそれまで。はい世界史終わり。
ともかくだ、ドリュアートはこの球体の外に世界があるモデルである現世界において、もはや世界の中心ではない。ましてや柱が二本に折れてその片方も健在らしいぞ。
ドリュアートの『木』は実は世界に2本あるのだ。
コウリーリス国にある方に大陸座ドリュアートは御在中なさっている事になっている。もう一本のドリュアートは南国の遥か南方の森の中だとレッドが言ってた。
かつて、世界の構造がどんなんだったのかは俺は知らん。
だがいずれにせよ……生物には必ず寿命があり、その果てに死が待ち受けている。長生きの木だって例外じゃないのだ。ましてや真っ二つに折れた、なんてやってたらそりゃイタだろ。寿命を縮める致命的なダメージには成り得ると思うけどな。
コウリーリスにあった『世界の真ん中にあった木』はそうやって、第7期に枯れてしまった。ちなみに今、第8期な。この期って単位は世界文明の節目でざっくりと分けられた時代推移なので、前期が何年、何百年前の話になるのかっていうのも実は、ざっくりとした単位でしか答えられない。大凡、3~5世紀くらい前の事を指してる事が多いな。
リアルに例えれば、第二次世界大戦の前と後、くらいなイメージで良いと思う。
さてこっちの事情に戻ろう。
7期に枯れたとされるドリュアートの木に、新しい若木が育って居る事が確認されているという。枯れた『世界の真ん中にあった木』の中に若木が在る……その発見こそが例の、魔導師のドリュアート研究ブームを指すらしい。しかし後はこの木の生育を見守るだけという段階になり、研究は衰退し整備されていた転位門も閉じてしまった。
俺達が目指すのは、第二の『世界の真ん中にあった木』って訳だ。
朽ち果てた巨大な木の残骸の中に、一本生えているだろう若木。それが、今現在のコウリーリスにあるドリュアートだ。
で……ソレを守っているのが大陸座のドリュアートだという考えがある訳だ。
大陸座が実在するようになったのはたかだか十数年前だが、元々大陸座という概念はある。ドリュアートの大陸座はドリュアートの柱であった樹に、宿っているという信仰は昔っからある訳だよ。
だから守護者という存在としてドリュアートの大陸座は割とメジャーなんだな。守護者なんだからドリュアートが動けなきゃ何処にも行けるはず無い。だから『不動』だと考えられている訳で……。
……まぁ、ファンタジーの世界には歩く木の種族ってのも居るから油断大敵な気はする。
「川沿いと山沿い、どっちが良いだろ?」
川沿い、と答えたい所だが……幾筋にも支流に分かれるリーリス川のドレを辿ればドリュアートにたどり着くのか、何本もハズレのあるあみだくじを引くようなものである。
「川のルートは結局、詳細が分からないんだろ」
「ええ、近辺の最新情報は分かりましたが、最終的には手探りでの探索になります」
とはいえ、山沿いはもっと辛いのだ。
今までの道中が辛かったからそう言っている訳ではない。
コウリーリスの開発が進まない理由は『緑の森』と呼ばれる深い森の存在が第一理由ではあるものの、実はもう一つある。
突然現れる深い渓谷……底なし淵の存在だ。
幸いシエンタ近辺には余りない、村の北上に……一つあるな。俺も一度だけじじいに連れて行って貰って、覗いた事がある。
森の中に隠されて空からは滅多に見付けられない。細いもので幅たったの数十センチから大きくても数メートル。コウリーリス国の大地を横に裂く様に、底の見えない深い谷が森の中のそこらじゅうに走っていて、あっちこっちにばっくり口を開いているのだ。
落ちたら戻って来る事は出来ないと教えられている。実際覗いてみて、それがよく分かったな。
要するに、この森の地下にはとんでもない深さで大きな亀裂が入っているのだ。で、それを森が覆い隠している。森は、沢山亀裂の入った大地を覆い隠す様に広がっているという寸法だ。
空を飛べる魔物でさえ、この亀裂の中に入ったりしないと伝わる。噂によるとこの淵の底では魔法が使えなくなるとか、毒が蔓延していていかなる生物も死んじまうとか。まぁ散々恐ろしい噂がある。
山沿いを行くと云う事は。この淵に気を付けて進まなきゃ行けないって事だ。川を遡る限り、淵に落ちる心配が無いのは……わかるよな?川が淵に滝となって落ちている所もあるそうだが、下るんじゃなくて登る以上は落ちる心配はいらないだろ?
「川、だな」
俺は結局そう答えた。
「そこまでしてその、淵とやらは恐れられているのですね」
淵についての情報はある程度、村からも吸い上げていたようだな。
「魔導都市でも研究してるんじゃねぇのか?」
レッドはメガネを押し上げて頷く。
「ええ、確かに潜ってみて無事に戻ってきた研究員が皆無ですね、魔法が上手く操れなくなり、場合によっては存在するというミストレアルで中毒死するそうですね。ミストレアルの操作方が失伝した今、研究したくてもお手上げになっている場所です」
「……うわ、魔法使えないとか毒があるとか、マジなんだ」
ところで、ミストレアルって何だっけ?どっかで聞いたこともあるような?的な事が俺の顔に書いてあるのを軍師の皆さん、しっかり読み取ってくださいますね。
「ミストレアルを知っているのかい?」
「なんか、聞いた事がある様な……」
嫌な予感がする、様な……。
「ミストレアルは古代の魔法的物質、とか言われるけど……ぶっちゃけてよくわからないものだね。レッドが言った通り失伝してるから」
「状態は気体ですがこの状況が毒でしてね、何らかの方法で結晶化出来るらしいのです。無毒化に成功したミストレアルは固体で魔法的な相性に最も適しているとされ、プラチナやミスリル銀よりも高価なものとして取り扱いされますよ。生成方法の分からない今は残存するものが全てです」
む、やっぱり……それってもしかして、黄緑色の金属の事か……?
いや、この話は止めよう。嫌な予感がする。……とりあえず、やっぱり淵は危険だって事だな。
「とりあえず、川でルートを絞り込みますか……」
レッドが俺が無関心を装った事をどうやら、察してくれた様で話を元に戻した。
「そうだね」
俺は残っていたサンドイッチを口に放り入れて咀嚼、味の薄い果実酒で流し込む。
「ヤト、例の子供の様子見てきてくれない?」
「えー?何で俺が?」
「まだ目を覚まさないって、アベルが側にいると思うから。起きたらとりあえず食事させて、話を聞かなきゃ」
俺はしぶしぶ腰かけて居た倒木から立ち上がった。
木陰に張られたテントの一群に俺は足を運ぶ。
テリーとマツナギが昨晩の見張りだ、おかげでまだ寝ている。これを起こさないようにしないとな。
「アベル、いいか?」
一応断ってマツナギが寝ている隣のテントを覗く。ああ、言っとくけどテントったって木にロープ渡して大きなシートをそこから掛けて、四隅を地面に固定した……三角柱横倒しみたいな感じの簡素な奴だからな。
風は酷くないし虫よけは魔法とかで結界張れるから、コレで十分なんである。
「……なんだよ、いないじゃねぇか」
そこには未だにシーツにくるまった頭だけが覗いているガキしかいない。何度見ても……やっぱり頭上に赤旗があるよな。
俺は用心し、腰に差している剣をしっかり握って様子を見ようとしゃがみ込んだ。
「……おなか、減った」
!、起きてるのか。
警戒した俺の様子を察したように、真っ黒い目がこっそり俺を見上げた。
外見は別に……普通だよなぁ。野性児っぽい感じだが。一見しただけじゃ赤旗の怪物には見えない。
俺はため息を漏らす。アベルの奴と入れ違いになったんだな。こいつが起きたからアベル、ナッツを探しに行ったんだろう。軍師会議はテントから一寸離れた所でやってたからなぁ。見当たらないからって何処に行ったんだと探しに、あの壮絶方向音痴……。
ぐんと引っ張られる気配に俺は、呆れて逸らしていた視線を慌てて戻す。
すらりと……俺の腰に刺さっている剣が引き抜かれてしまって反射的に飛び退いた。一寸前までは緊張していたはずなのだ。しかし、予想に反して聞こえてきたガキの呟きと無防備さに俺は、たった一瞬気を緩めてしまったらしい。
すぱりとテントを攣っていたロープの一つが切れる。
「何っ?」
一瞬でも気を抜いた自分を呪いつつ、更にもう一歩下がろうとしてその前に俺は、腰から柄を抜いている。
後ろに下がるより前に出る方が、テントの中だ。動作的には安定していると言える。初撃は躱したが次は避けられないと経験で悟っていた。
迷い無く振りかざされた二撃目を俺は、同じ金属で出来ている鞘でなぎ払う。成る程な、剣を収めるものとして鞘も同じでなくちゃいけない、ジュリエで鞘を直してくれたルビスの親父の言葉を思い出す。
切れ味、最高に良いんだからなその剣っ!
鞘で渡り合うのが正解だ、水龍銀の篭手の槍とか盾で対応していたらジリ貧になっていただろう。
相手も武器を手に取ったと理解し、しっかり構えた少年を俺は睨み付ける。鞘で弾き飛ばしたから距離を取れた、一端互いの動きが止まる。
「ちょっと、何?」
当然テントの一角が崩れて隣のマツナギが異変に気が付いて非難の声を上げた。その声に、まるで弾かれるように少年が俺に突っ込んでくる。
一寸待て、こんな危ないガキだとは聞いてないぞ!
太刀筋がド素人……じゃねぇ?なんだ、なんなんだこいつ!
かろうじて鞘で往なし、俺は攻撃に転じる隙を伺うのだが……くそ、長いぼさぼさの髪の間から覗く奴の目が、真っ直ぐ俺を見据えているのに思わず、悪態を付いてしまう。
殺気と似ているが少し違う、向けられている感情の純粋さに俺はとまどい、上手く相手の意図を読む事が出来ていない。
「ヤト!」
ペースが乱された事に対する苛立ちに、聞き慣れた声を掛けられて俺は一瞬安堵してしまった。
テリーの声に相手の攻撃を弾く、方向を間違えた。もう一歩、たったの一歩だが相手の接近を許してしまった。ったく、俺とした事が!
俺はすぐさま思考を切り替える。
危機であればあるだけ研ぎ澄まされる、戦士としての感覚がディフェンス一辺倒からオフェンスへと切り替える。
俺は鞘を持つ右手を背後に回した。
相手が、捕らえたと振りかぶった剣に自ら飛び込んでいき、攻撃ペースを乱す。ガキの低い姿勢からさらに低く俺は攻撃をかいくぐり、すれ違い様に相手の腹に柄で一撃加えた。
後でアベルから殴られるかもしれんがそん時は、そん時だ!
少年がよろめいた、ナッツが栄養失調と判断した状態だ、必ずしも体力的に万全ではないだろう。しかし……案外頑丈だな、倒れずに踏ん張って耐える。
俺はその僅かな隙に状況を素早く見渡して度肝を抜く。
巨大な蜘蛛だ、いつの間にやら……あの8本足のイノシシでさえ抱え込みそうな程デカい蜘蛛が、その足の数本が、マツナギをテントごと押し潰しているではないか。
「マツナギ!」
だが心配は無用のようだ、もぞもぞと動いている。単にテントの上から押さえ込まれているだけの様だ。……その一瞬、他に意識を飛ばした瞬間に状況が変わる。
斬られた、
傷の程度なんて確かめるヒマはないのに、緊張を保っていないとついその傷に手を伸ばしてしまう。
傷は浅い、俺は完全に少年の間合いから離れていたはずだ。それでも相手の苦し紛れの一撃が、俺の脇腹を掠って、その切れ味の良い切っ先がシャツを裂いて肉まで到達してしまっただけであって……大した傷じゃないのだが……。
だから、戦っている時はそういう判断を頭でやってるヒマはないんだって!
殺し合いを生業とした剣闘士であった俺は、監督にそのように叩き込まれていたはずなんだがなぁ、最近ぬるい生活していて生活に張りが無くなった所為か、なんか色々緩んでてダメダメだ。
僅かな出血によって漂う鉄の匂い、まるでそれに弾かれたように少年が俺に襲いかかって来た。……剣を振りかぶって来ていたなら俺は、まだなんとか対応出来たのだ、間違いない。
だが俺は、最初っから相手の行動ペースが掴めていない。相手の意図が分からないで戸惑っている。
少年は事もあろうか剣を捨て、俺に低い姿勢でのタックルをかましてきた。ようするに、今俺は引き倒されているわけだな。全く読めなかったこの状況を遅れて把握。
武器を捨てての殴り合い、剣闘士時代こういう場合も確かにあった。だが少年は迷うことなく俺の脇腹、今しがた少しだけ裂けた腹の傷にに手を伸ばし、そこに指を立てて来たのである。
理解した。
そうだ、少年が俺に向けた視線に何か既視感があると思ったらそうだ、アレじゃねぇか。
かつて旗を失ったテリーがこういう状況になって、俺の喉元に食らいついてきたよな!
この野郎、腹減ったとか抜かして人間に食らい掛かるたぁ……どーいう教育されて育ちやがった!
すぐさま俺は絞め技に入った。組みつかれた時にどう対処するか、っていうのも剣闘士時代キッチリ叩き込まれていたからな。無防備な首に腕を廻し、がっちりと固める。それでも俺の腹を裂こうとするガキの指が、ぐいぐいと脇腹を抉ってくる。
俺がガキの意識を落とすのが先か、俺が内臓引き出されるのが先か、それとも?
第三者の介入とか楽観的に願ったりした、俺がバカでした。
生暖かく無臭の何かが俺の体に降りかかってきやがった!直感的に『ヤバい』って思うが避けようが無い。ガキを絞めつつ首を回そうとしたが……その途端ぐいっと布に巻かれるような感覚が襲う。
蜘蛛の糸だ、気が付いた時にはぎゅっと縛り込まれて戦ってるどころじゃなくなる……が、とりあえず、ガキの意識は先に落ちてくれたようだ。指の進攻は止まったが……そのまま糸に絡まれて動けなくなってしまっているよ俺!
でも流石にこれだけ大騒ぎしたら全員集まってきてくれるよな。
次の瞬間熱いものがよぎった気配がして、焼き切れた蜘蛛の糸から俺と、少年は解放されてそれぞれに大地に転がっている。
くっそぅ、乱暴に腹いじりやがって……。
浅かったはずの傷が酷くなっているぞ。脇腹を押さえつつ俺はすぐに転がっていた自分の剣を拾った。そして構えた時、蜘蛛は少年の真上に陣取り、かつ俺を見下ろしている状況だ。
「おいおいレッド、致命傷負わせたんじゃねぇのか?」
「……虫には痛点が無いと聞きます」
いけしゃぁと弁解すんじゃねぇよ。
俺の背後にレッドとアベルが構えているのを感覚で理解する。目をつぶっても戦えるって前に言った通り、俺は勘働きが人よりも強い方だ。
「アベル、これでも保護するってのか?」
「……アンタが先に手ぇ出したんじゃないの?」
「あのなぁ、俺は何もしてないからな」
剣を低く構え……成る程、この巨大な蜘蛛にも赤旗があるのを確認。なら、殺戮でいいよな。
俺は負った怪我の存在を一時忘れ、一歩踏み出した。
「待て!」
別の殺気を感じて俺はその場を飛び退いていた。飛び退いた足元に突き刺さっている剣を確認。
この見慣れぬ剣に気を取られる、その瞬間蜘蛛は……倒れている少年を抱えて空高く跳躍。
くそ、逃げる気か!
慌てて振り返った俺が、何故かその次に空を飛ぶ羽目に!
「ええええっ!」
どうやらまだ全部の糸が焼き切れていなかったみたい。蜘蛛もしくは少年に、俺は引きずられてしまったのだ。
「糸が!」
空中に引き上げられた俺の体についているらしい糸を切るべく、レッドとナッツが魔法を放った様子が見える。
ちょ、待て!
糸切ってくれるのはいいが……こんな上空から叩き落とされるのもどうだろうか!
振り回されていた感覚が失われる。
糸、切れちゃたみたいー!?
放物線上につり上げられ、燃えずに残っていた巨木に激突するかという寸前、何か柔らかいものにぶつかってして掬い上げられた俺。
これは、糸の揺りかごだ。
俺は木の枝からぶら下がったそれの中で暴れるのだが……すさまじい切れ味を誇るはずの剣も通用しなくて脱出出来そうに無い。恐らく……酷く間抜けな状態に陥ってますね俺。
と、そんな必死な俺を他所に、突然の乱入者が現場に姿を現した様である。
「手を出すな、それは、俺の獲物だーッ!」
息を切らして、森の中から現れた男を俺は糸の隙間から見て思わず脱力。
おいこら!
勇者同士が敵を取り合うなんて、そんなふざけた展開お前の番外編だけにしておけよ!
スペアの剣を抜き放ち、こっちが呆れて放心しているのも気にせず――全く突然場に乱入して来た黒髪の勇者、ランドールは……落下から助けてくれたけどおかげで動けない、蜘蛛の糸の中にいる俺にビシリと剣を構えて言った。
「立ちはだかるなら容赦はしない、死ね!」
いきなり死ねと来たか貴様、てゆーか!状況をよく見ろ!一般の人もそうやって容赦なくお前はジェノサイドするのか?……確かにしそうな性格ではあったが。
……いや待て、この場合立ちはだかったのは間違いなく貴様の方だろう!そのように多大にある反論を浴びせようとした所、恐らく必死に後を追いかけてきたのであろうその他取り巻きの皆さんが一斉に追いついて来て飛び出し、ランドールを押さえ込んだ。
「ちょっと坊ちゃん、ダメです、ダメですから!」
「放せ!」
真っ先に押さえ込んだ……緑髪の巨人……ワイズが軽々と吹き飛ばされて、こっちに飛んできたのに俺は目を丸めてしまった。その次に背後から羽交い締めにした全身鎧が苦戦する間に、どうやら……睡眠魔法が入っったみたいで無防備に崩れ落ちたのが見える。場が急に静かになったぞ。
「何やってるんだよワイズ、」
地面に叩き付けられたワイズを立ち上がらせながら、ナッツは呆れた声を上げている。
「や、やぁ……久しぶりですね代理……っててて」
「もう、無茶しちゃだめですよ」
……なんだ今のちょっと甲高い特徴のある声、どっから聞こえた?誰の声だ?
明らかに愛想笑いを浮かべた背の高い女性がぺこりとこちらに頭を下げた。ええと、俺……何時までぶら下がってないといけないんでしょうか?
「ごめんなさいね、本当に……ってあら。タトラメルツの」
その単語に俺はドキっとしてしまう。
確かに……この連中とはタトラメルツで別れて以来な訳だが。
背が高くて目の細い、独特な衣装を纏った女性は暫くして成る程と何か納得したように口の中で呟いたな。
何が、成る程だ?
っていうか、ランドールを追いかけて来たランドールパーティーの殆どが、今ようやく邂逅した相手がタトラメルツで分かれたもう一方の魔王討伐パーティーだと認識したっぽい。
「タトラメルツが半壊したと聞いている、無事だったか」
「ま、無事じゃない奴もいるが」
ランドールパーティ唯一の良心に違いない、テニーさんの声に……トゲのある声で答えたのはその弟、テリーだな。
っと、やべ、緊張解けて更に脱力したら……傷が痛い。
ようやくレッドとアベルが蜘蛛の糸を取り除く作業を始めてくれた。
地面に降ろされて、俺は脇腹を押さえてうずくまってしまうのだった。
久しぶりにぐっすり寝た。
野営と同じだから一応見張りは立てているけど、交代で昼近くまでゆっくり休憩を取っている。洗濯物も一通りこなして、十分に準備を整えてそれからドリュアートに向けて再び山道に挑む。
朝食には、焼きたての米粉比率の高い練りパンみたいなモノの焼きたてを頂く。昨日のうちに軽く生地を捏ねて発酵させておいたものだそうだ。釜は無いのでそこは、どうするのかと思ったらレッドの構築した熱魔法を駆使して焼いたっぽい。理論的なパン焼き温度さえ分かっていればオーブン機能を魔法で構築する事は容易い事です、とか言ってました。
そこにハムやら香草やらを挟んでほおばりながら、俺はナッツとレッドの作戦会議を眺めている。一応口を挟めそうなら参加するつもりだが……無用かもしれんな。
なんで黙っていたのか知らんがナッツの奴、宣教師視察とかでこの辺りを一度歩いた事あるらしい。ただその時奴一人で歩いた訳じゃなくて、付き人も色々居たそうである。ルートを自分で全部把握していた訳ではないみたいなので、頼りにされると嫌だから黙ってたのかね。割と奴は石橋叩いて渡るタイプだ。その性格のおかげで俺達色々助けられてる訳だけど。
不動の大陸座、ドリュアートの居る場所はやはり『そこ』で良いみたいだな。
シエンタからさらに森の北側。グランドライン山脈からシェイディ国の方向に伸びるノースロード山脈ってのがあるんだが、その分岐点あたり。
グランドラインぞいに北上するか、一旦リーリス川の支流に出てこの川沿いに行くか。あ、リーリス川ってのはコウリーリス国の南方に広がる森に動脈状に走っている川の名前だ。イメージとしてはアマゾン川に近いな。エンスっていうデルタ地帯にある町に全部繋がっていて、間違いなく面積で言えば世界最大の川になるだろう。
昔はエンスから川を遡ってドリュアートまで行けたらしいんだが……リーリス川って濁流だから結構ルートが激しく変わるらしいんだよな。
レッド曰くドリュアートにも『ブーム』とかいうのがあるらしい。なんだそりゃって突っ込んだら、ようするにドリュアートを調査するブームってのがあるんだと。
残念ながら今それは休閑期と言えるらしく、本来魔導都市ランから直通の転移門もあったはずなんだが、使う人が居なくなって管理されなくなり……今は無くなってしまったらしい。
さて、所で結局その『不動のドリュアート』なるものが一体何であるのか、それを一度も説明してきてなかったように思える。戦士ヤトが当然と知っている事だったので思わずスルーしてたんだが、要するに、だ。
その名前の通り、というのはリアルーサトウハヤト的な認識での名前の通りという意味だが――そいつは『木』なんである。リアル知識で言う所、ドリュアスとかドリュアデスとか、ドリュアードとかドライアードとか……そういう名称はファンタジーやゲームでお馴染みの存在だ。ギリシャ神話における『木の精霊』の事だ。なんつーか、大陸座の名前はこの辺りのゲームファンタジー好きお約束から引っ張られてきているのが多いので、名称を聞くだけでなんとなく、俺とかは属性が分かるんだよな……。
ナーイアストとオレイアデントも同じくギリシャ神話のニンフから来てる名前なんだが、ドリュアードと比べれば若干マイナーな方なのでご存じない方も居られる事だろう。ちなみに、ユピテルトもローマ神話におけるゼウスに値するジュピターから来てる名前っぽい。
それはともかく、リコレクトするまでもなく俺が名前の響きから連想していた通り、大陸座ドリュアートは木の属性をもれなく付随されており『動かない』とされている。
不動の、っていう修飾語が付く事にも何ら疑問は感じていなかった。
じゃ、大陸座のドリュアートは木そのものなのか?という事になるが。とどのつまりそうだと思う。少なくともリコレクトできる戦士ヤトの知識上ではその様だ。……違ってたりして?いや、普通に考えればそうなるじゃん?なんか特殊な木の事だと半ば、信仰に近く信じていたっぽいけど。
とにかく名前の通り、唯一存在が一般的にも知られているドリュアートは動けないっていうんだから本性が木であろう。で……大陸座ドリュアートはそれの精霊みたいなイメージでいいのだ、とかレッドが言ってる。
そりゃ、まんまやんけ。
とはいえ調査されなくなって久しいらしいので、古い書物や伝聞が正しいかどうかは保証出来ません、とか恐ろしい事もレッドの奴、付け加えやがった。
もし大陸座ドリュアートが不動ではなく、信仰の対象となっている木に居なかったらどーしてくれよう。
ま、他にあてが在る訳じゃないから結局、行ってみて手がかり得るしかないんだけどな。
「昔、ドリュアートは一度枯れました」
「……らしいな」
俺もその話は聞いた事がある。シエンタでもよく聞く昔話だ、多分……俺は爺さんからその話を聞いたと思う。
レッド曰く、それが比較的近年におけるドリュアート調査ブームの到来を齎した事件だったそうだ。っても、数百年前の話になる訳だけど。
突然枯れてしまった巨木……いや、イメージとして巨木だったろ?な?世界樹って奴?
思うに某世界樹、中をあんなにくりぬいてダンジョンにしちゃったら木、枯れるんじゃね?とか突っ込んではいけない。そこらへんは『死を超越したモノ』属性ももれなく付いている、侮ってはいけません。
世界樹の中は迷路っていうのはゲームでは、比較的多い表現である。ダンジョン化する訳だから巨大である事がデフォルトで想定されている事も多い。元になっているのは北欧神話におけるユグドラシルだろう。似たような神話は世界のあちこちにあるらしいが、それはリアルの事なのでここでは割愛するぞ。
このトビラ世界、八精霊大陸におけるドリュアート、例えて界樹とも云えるこの存在は、リアルにおける神話と同じ背景を持っている訳ではない。そもそも世界樹とは言わない。あえて言うならそれは『世界の真ん中にあった木』、と言われる……らしい。この辺りは多分、レッドからの受け売り知識だな。
過去形である事が重要だそうだ。
今は世界の真ん中には無い、過去あった、と表現される。
そもそも世界の中心ってドコですか?愛叫べますか?ヘソだったするんですか。何をもって中心とするのかよく分からん。そんな俺の疑問に、軍師のお二方は丁寧に答えてくださいました。
この世界においてドリュアートは『柱』だったそうだ。大昔に二つに分かれていた世界を分かち、支えるもの……とか。うーむ、ゲームとかにそういった世界設定の例もいっぱいあるよなぁ。……それはさておき。
トビラ世界における『神話』として、柱は2本あって一方がドリュアート。でもう一つが大地の柱オレイアデント、だそうだ。相当に昔の、もはや本当かどうかも分からない、ヘタすると何かを例えた作り話級の、神話として伝わる話だそうだ。一般教養ではないので、俺は教えられるまでそんな話は聞いた事が無かった。
でその神話曰く、世界の真ん中にあった木は二つに分かれいたとされる古い時代の世界が、都合一つになる課程、折れたしまったんだそうだ。なんだかイメージの沸かない話だが……ナッツが、昔読んだ専門書に分かりやすい例えを見た事があるよ、とかいって図解で説明してくれました。
ええと、中央に木が生えてこれが柱になっているわけです。で、世界の果てに大地の柱があってだな。この二つの柱で二つの世界が隔たっている。イメージ的には実はその世界の果て、大地の柱は実は柱じゃなくて壁って考えたら分かりやすいだろって説明された。ふむ……。
球体もしくは立方体に例えてナッツは説明してくれた訳だがこれは、要するに……地球ってのは丸くて俺達はその外側にいるわけだけど、このゲーム世界の神話曰く、かつての八精霊大陸は球体の内側的な世界と考える訳だな。図によっては、円柱形の内側を世界とするモデルもあったってナッツが言っていた。確かに、それの方が分かり易い。それぞれ円形の天と地が別々の、二つの世界。その世界を隔てる円柱の外壁がオレイアデントで、円柱のど真ん中にドリュアートとされる木がぶっ刺さっていて二つの世界を繋いでいる……と。
で、その中央の柱が折れたとする。
すると、その真ん中の柱で支えられていた世界が、例えて円柱形の上にあった世界が……下の世界に壊れて降り注いできて……結局の所どっちの世界も破壊されてしまいましたーとかいう具合の出来事が過去があったそうなー的に神話として残っているんだそうだ。。
一方の柱が折れてしまった為に、隔たっていた閉じた世界から解放されて……世界の果てが世界の果てに繋がって……例えて球体の中にあった世界が、球体の外側にひっくり返ったとも云う。
おいおい、本当にそんな事あるのか?それこそゲームの話みたいだがって、まぁゲームだけどさ。
思わず色々突っ込みたくなる訳だが、そういう神話だからと言われればそれまで。はい世界史終わり。
ともかくだ、ドリュアートはこの球体の外に世界があるモデルである現世界において、もはや世界の中心ではない。ましてや柱が二本に折れてその片方も健在らしいぞ。
ドリュアートの『木』は実は世界に2本あるのだ。
コウリーリス国にある方に大陸座ドリュアートは御在中なさっている事になっている。もう一本のドリュアートは南国の遥か南方の森の中だとレッドが言ってた。
かつて、世界の構造がどんなんだったのかは俺は知らん。
だがいずれにせよ……生物には必ず寿命があり、その果てに死が待ち受けている。長生きの木だって例外じゃないのだ。ましてや真っ二つに折れた、なんてやってたらそりゃイタだろ。寿命を縮める致命的なダメージには成り得ると思うけどな。
コウリーリスにあった『世界の真ん中にあった木』はそうやって、第7期に枯れてしまった。ちなみに今、第8期な。この期って単位は世界文明の節目でざっくりと分けられた時代推移なので、前期が何年、何百年前の話になるのかっていうのも実は、ざっくりとした単位でしか答えられない。大凡、3~5世紀くらい前の事を指してる事が多いな。
リアルに例えれば、第二次世界大戦の前と後、くらいなイメージで良いと思う。
さてこっちの事情に戻ろう。
7期に枯れたとされるドリュアートの木に、新しい若木が育って居る事が確認されているという。枯れた『世界の真ん中にあった木』の中に若木が在る……その発見こそが例の、魔導師のドリュアート研究ブームを指すらしい。しかし後はこの木の生育を見守るだけという段階になり、研究は衰退し整備されていた転位門も閉じてしまった。
俺達が目指すのは、第二の『世界の真ん中にあった木』って訳だ。
朽ち果てた巨大な木の残骸の中に、一本生えているだろう若木。それが、今現在のコウリーリスにあるドリュアートだ。
で……ソレを守っているのが大陸座のドリュアートだという考えがある訳だ。
大陸座が実在するようになったのはたかだか十数年前だが、元々大陸座という概念はある。ドリュアートの大陸座はドリュアートの柱であった樹に、宿っているという信仰は昔っからある訳だよ。
だから守護者という存在としてドリュアートの大陸座は割とメジャーなんだな。守護者なんだからドリュアートが動けなきゃ何処にも行けるはず無い。だから『不動』だと考えられている訳で……。
……まぁ、ファンタジーの世界には歩く木の種族ってのも居るから油断大敵な気はする。
「川沿いと山沿い、どっちが良いだろ?」
川沿い、と答えたい所だが……幾筋にも支流に分かれるリーリス川のドレを辿ればドリュアートにたどり着くのか、何本もハズレのあるあみだくじを引くようなものである。
「川のルートは結局、詳細が分からないんだろ」
「ええ、近辺の最新情報は分かりましたが、最終的には手探りでの探索になります」
とはいえ、山沿いはもっと辛いのだ。
今までの道中が辛かったからそう言っている訳ではない。
コウリーリスの開発が進まない理由は『緑の森』と呼ばれる深い森の存在が第一理由ではあるものの、実はもう一つある。
突然現れる深い渓谷……底なし淵の存在だ。
幸いシエンタ近辺には余りない、村の北上に……一つあるな。俺も一度だけじじいに連れて行って貰って、覗いた事がある。
森の中に隠されて空からは滅多に見付けられない。細いもので幅たったの数十センチから大きくても数メートル。コウリーリス国の大地を横に裂く様に、底の見えない深い谷が森の中のそこらじゅうに走っていて、あっちこっちにばっくり口を開いているのだ。
落ちたら戻って来る事は出来ないと教えられている。実際覗いてみて、それがよく分かったな。
要するに、この森の地下にはとんでもない深さで大きな亀裂が入っているのだ。で、それを森が覆い隠している。森は、沢山亀裂の入った大地を覆い隠す様に広がっているという寸法だ。
空を飛べる魔物でさえ、この亀裂の中に入ったりしないと伝わる。噂によるとこの淵の底では魔法が使えなくなるとか、毒が蔓延していていかなる生物も死んじまうとか。まぁ散々恐ろしい噂がある。
山沿いを行くと云う事は。この淵に気を付けて進まなきゃ行けないって事だ。川を遡る限り、淵に落ちる心配が無いのは……わかるよな?川が淵に滝となって落ちている所もあるそうだが、下るんじゃなくて登る以上は落ちる心配はいらないだろ?
「川、だな」
俺は結局そう答えた。
「そこまでしてその、淵とやらは恐れられているのですね」
淵についての情報はある程度、村からも吸い上げていたようだな。
「魔導都市でも研究してるんじゃねぇのか?」
レッドはメガネを押し上げて頷く。
「ええ、確かに潜ってみて無事に戻ってきた研究員が皆無ですね、魔法が上手く操れなくなり、場合によっては存在するというミストレアルで中毒死するそうですね。ミストレアルの操作方が失伝した今、研究したくてもお手上げになっている場所です」
「……うわ、魔法使えないとか毒があるとか、マジなんだ」
ところで、ミストレアルって何だっけ?どっかで聞いたこともあるような?的な事が俺の顔に書いてあるのを軍師の皆さん、しっかり読み取ってくださいますね。
「ミストレアルを知っているのかい?」
「なんか、聞いた事がある様な……」
嫌な予感がする、様な……。
「ミストレアルは古代の魔法的物質、とか言われるけど……ぶっちゃけてよくわからないものだね。レッドが言った通り失伝してるから」
「状態は気体ですがこの状況が毒でしてね、何らかの方法で結晶化出来るらしいのです。無毒化に成功したミストレアルは固体で魔法的な相性に最も適しているとされ、プラチナやミスリル銀よりも高価なものとして取り扱いされますよ。生成方法の分からない今は残存するものが全てです」
む、やっぱり……それってもしかして、黄緑色の金属の事か……?
いや、この話は止めよう。嫌な予感がする。……とりあえず、やっぱり淵は危険だって事だな。
「とりあえず、川でルートを絞り込みますか……」
レッドが俺が無関心を装った事をどうやら、察してくれた様で話を元に戻した。
「そうだね」
俺は残っていたサンドイッチを口に放り入れて咀嚼、味の薄い果実酒で流し込む。
「ヤト、例の子供の様子見てきてくれない?」
「えー?何で俺が?」
「まだ目を覚まさないって、アベルが側にいると思うから。起きたらとりあえず食事させて、話を聞かなきゃ」
俺はしぶしぶ腰かけて居た倒木から立ち上がった。
木陰に張られたテントの一群に俺は足を運ぶ。
テリーとマツナギが昨晩の見張りだ、おかげでまだ寝ている。これを起こさないようにしないとな。
「アベル、いいか?」
一応断ってマツナギが寝ている隣のテントを覗く。ああ、言っとくけどテントったって木にロープ渡して大きなシートをそこから掛けて、四隅を地面に固定した……三角柱横倒しみたいな感じの簡素な奴だからな。
風は酷くないし虫よけは魔法とかで結界張れるから、コレで十分なんである。
「……なんだよ、いないじゃねぇか」
そこには未だにシーツにくるまった頭だけが覗いているガキしかいない。何度見ても……やっぱり頭上に赤旗があるよな。
俺は用心し、腰に差している剣をしっかり握って様子を見ようとしゃがみ込んだ。
「……おなか、減った」
!、起きてるのか。
警戒した俺の様子を察したように、真っ黒い目がこっそり俺を見上げた。
外見は別に……普通だよなぁ。野性児っぽい感じだが。一見しただけじゃ赤旗の怪物には見えない。
俺はため息を漏らす。アベルの奴と入れ違いになったんだな。こいつが起きたからアベル、ナッツを探しに行ったんだろう。軍師会議はテントから一寸離れた所でやってたからなぁ。見当たらないからって何処に行ったんだと探しに、あの壮絶方向音痴……。
ぐんと引っ張られる気配に俺は、呆れて逸らしていた視線を慌てて戻す。
すらりと……俺の腰に刺さっている剣が引き抜かれてしまって反射的に飛び退いた。一寸前までは緊張していたはずなのだ。しかし、予想に反して聞こえてきたガキの呟きと無防備さに俺は、たった一瞬気を緩めてしまったらしい。
すぱりとテントを攣っていたロープの一つが切れる。
「何っ?」
一瞬でも気を抜いた自分を呪いつつ、更にもう一歩下がろうとしてその前に俺は、腰から柄を抜いている。
後ろに下がるより前に出る方が、テントの中だ。動作的には安定していると言える。初撃は躱したが次は避けられないと経験で悟っていた。
迷い無く振りかざされた二撃目を俺は、同じ金属で出来ている鞘でなぎ払う。成る程な、剣を収めるものとして鞘も同じでなくちゃいけない、ジュリエで鞘を直してくれたルビスの親父の言葉を思い出す。
切れ味、最高に良いんだからなその剣っ!
鞘で渡り合うのが正解だ、水龍銀の篭手の槍とか盾で対応していたらジリ貧になっていただろう。
相手も武器を手に取ったと理解し、しっかり構えた少年を俺は睨み付ける。鞘で弾き飛ばしたから距離を取れた、一端互いの動きが止まる。
「ちょっと、何?」
当然テントの一角が崩れて隣のマツナギが異変に気が付いて非難の声を上げた。その声に、まるで弾かれるように少年が俺に突っ込んでくる。
一寸待て、こんな危ないガキだとは聞いてないぞ!
太刀筋がド素人……じゃねぇ?なんだ、なんなんだこいつ!
かろうじて鞘で往なし、俺は攻撃に転じる隙を伺うのだが……くそ、長いぼさぼさの髪の間から覗く奴の目が、真っ直ぐ俺を見据えているのに思わず、悪態を付いてしまう。
殺気と似ているが少し違う、向けられている感情の純粋さに俺はとまどい、上手く相手の意図を読む事が出来ていない。
「ヤト!」
ペースが乱された事に対する苛立ちに、聞き慣れた声を掛けられて俺は一瞬安堵してしまった。
テリーの声に相手の攻撃を弾く、方向を間違えた。もう一歩、たったの一歩だが相手の接近を許してしまった。ったく、俺とした事が!
俺はすぐさま思考を切り替える。
危機であればあるだけ研ぎ澄まされる、戦士としての感覚がディフェンス一辺倒からオフェンスへと切り替える。
俺は鞘を持つ右手を背後に回した。
相手が、捕らえたと振りかぶった剣に自ら飛び込んでいき、攻撃ペースを乱す。ガキの低い姿勢からさらに低く俺は攻撃をかいくぐり、すれ違い様に相手の腹に柄で一撃加えた。
後でアベルから殴られるかもしれんがそん時は、そん時だ!
少年がよろめいた、ナッツが栄養失調と判断した状態だ、必ずしも体力的に万全ではないだろう。しかし……案外頑丈だな、倒れずに踏ん張って耐える。
俺はその僅かな隙に状況を素早く見渡して度肝を抜く。
巨大な蜘蛛だ、いつの間にやら……あの8本足のイノシシでさえ抱え込みそうな程デカい蜘蛛が、その足の数本が、マツナギをテントごと押し潰しているではないか。
「マツナギ!」
だが心配は無用のようだ、もぞもぞと動いている。単にテントの上から押さえ込まれているだけの様だ。……その一瞬、他に意識を飛ばした瞬間に状況が変わる。
斬られた、
傷の程度なんて確かめるヒマはないのに、緊張を保っていないとついその傷に手を伸ばしてしまう。
傷は浅い、俺は完全に少年の間合いから離れていたはずだ。それでも相手の苦し紛れの一撃が、俺の脇腹を掠って、その切れ味の良い切っ先がシャツを裂いて肉まで到達してしまっただけであって……大した傷じゃないのだが……。
だから、戦っている時はそういう判断を頭でやってるヒマはないんだって!
殺し合いを生業とした剣闘士であった俺は、監督にそのように叩き込まれていたはずなんだがなぁ、最近ぬるい生活していて生活に張りが無くなった所為か、なんか色々緩んでてダメダメだ。
僅かな出血によって漂う鉄の匂い、まるでそれに弾かれたように少年が俺に襲いかかって来た。……剣を振りかぶって来ていたなら俺は、まだなんとか対応出来たのだ、間違いない。
だが俺は、最初っから相手の行動ペースが掴めていない。相手の意図が分からないで戸惑っている。
少年は事もあろうか剣を捨て、俺に低い姿勢でのタックルをかましてきた。ようするに、今俺は引き倒されているわけだな。全く読めなかったこの状況を遅れて把握。
武器を捨てての殴り合い、剣闘士時代こういう場合も確かにあった。だが少年は迷うことなく俺の脇腹、今しがた少しだけ裂けた腹の傷にに手を伸ばし、そこに指を立てて来たのである。
理解した。
そうだ、少年が俺に向けた視線に何か既視感があると思ったらそうだ、アレじゃねぇか。
かつて旗を失ったテリーがこういう状況になって、俺の喉元に食らいついてきたよな!
この野郎、腹減ったとか抜かして人間に食らい掛かるたぁ……どーいう教育されて育ちやがった!
すぐさま俺は絞め技に入った。組みつかれた時にどう対処するか、っていうのも剣闘士時代キッチリ叩き込まれていたからな。無防備な首に腕を廻し、がっちりと固める。それでも俺の腹を裂こうとするガキの指が、ぐいぐいと脇腹を抉ってくる。
俺がガキの意識を落とすのが先か、俺が内臓引き出されるのが先か、それとも?
第三者の介入とか楽観的に願ったりした、俺がバカでした。
生暖かく無臭の何かが俺の体に降りかかってきやがった!直感的に『ヤバい』って思うが避けようが無い。ガキを絞めつつ首を回そうとしたが……その途端ぐいっと布に巻かれるような感覚が襲う。
蜘蛛の糸だ、気が付いた時にはぎゅっと縛り込まれて戦ってるどころじゃなくなる……が、とりあえず、ガキの意識は先に落ちてくれたようだ。指の進攻は止まったが……そのまま糸に絡まれて動けなくなってしまっているよ俺!
でも流石にこれだけ大騒ぎしたら全員集まってきてくれるよな。
次の瞬間熱いものがよぎった気配がして、焼き切れた蜘蛛の糸から俺と、少年は解放されてそれぞれに大地に転がっている。
くっそぅ、乱暴に腹いじりやがって……。
浅かったはずの傷が酷くなっているぞ。脇腹を押さえつつ俺はすぐに転がっていた自分の剣を拾った。そして構えた時、蜘蛛は少年の真上に陣取り、かつ俺を見下ろしている状況だ。
「おいおいレッド、致命傷負わせたんじゃねぇのか?」
「……虫には痛点が無いと聞きます」
いけしゃぁと弁解すんじゃねぇよ。
俺の背後にレッドとアベルが構えているのを感覚で理解する。目をつぶっても戦えるって前に言った通り、俺は勘働きが人よりも強い方だ。
「アベル、これでも保護するってのか?」
「……アンタが先に手ぇ出したんじゃないの?」
「あのなぁ、俺は何もしてないからな」
剣を低く構え……成る程、この巨大な蜘蛛にも赤旗があるのを確認。なら、殺戮でいいよな。
俺は負った怪我の存在を一時忘れ、一歩踏み出した。
「待て!」
別の殺気を感じて俺はその場を飛び退いていた。飛び退いた足元に突き刺さっている剣を確認。
この見慣れぬ剣に気を取られる、その瞬間蜘蛛は……倒れている少年を抱えて空高く跳躍。
くそ、逃げる気か!
慌てて振り返った俺が、何故かその次に空を飛ぶ羽目に!
「ええええっ!」
どうやらまだ全部の糸が焼き切れていなかったみたい。蜘蛛もしくは少年に、俺は引きずられてしまったのだ。
「糸が!」
空中に引き上げられた俺の体についているらしい糸を切るべく、レッドとナッツが魔法を放った様子が見える。
ちょ、待て!
糸切ってくれるのはいいが……こんな上空から叩き落とされるのもどうだろうか!
振り回されていた感覚が失われる。
糸、切れちゃたみたいー!?
放物線上につり上げられ、燃えずに残っていた巨木に激突するかという寸前、何か柔らかいものにぶつかってして掬い上げられた俺。
これは、糸の揺りかごだ。
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「放せ!」
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「何やってるんだよワイズ、」
地面に叩き付けられたワイズを立ち上がらせながら、ナッツは呆れた声を上げている。
「や、やぁ……久しぶりですね代理……っててて」
「もう、無茶しちゃだめですよ」
……なんだ今のちょっと甲高い特徴のある声、どっから聞こえた?誰の声だ?
明らかに愛想笑いを浮かべた背の高い女性がぺこりとこちらに頭を下げた。ええと、俺……何時までぶら下がってないといけないんでしょうか?
「ごめんなさいね、本当に……ってあら。タトラメルツの」
その単語に俺はドキっとしてしまう。
確かに……この連中とはタトラメルツで別れて以来な訳だが。
背が高くて目の細い、独特な衣装を纏った女性は暫くして成る程と何か納得したように口の中で呟いたな。
何が、成る程だ?
っていうか、ランドールを追いかけて来たランドールパーティーの殆どが、今ようやく邂逅した相手がタトラメルツで分かれたもう一方の魔王討伐パーティーだと認識したっぽい。
「タトラメルツが半壊したと聞いている、無事だったか」
「ま、無事じゃない奴もいるが」
ランドールパーティ唯一の良心に違いない、テニーさんの声に……トゲのある声で答えたのはその弟、テリーだな。
っと、やべ、緊張解けて更に脱力したら……傷が痛い。
ようやくレッドとアベルが蜘蛛の糸を取り除く作業を始めてくれた。
地面に降ろされて、俺は脇腹を押さえてうずくまってしまうのだった。
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逃げました。
姉が「これはダメな勇者召喚」と断じたため、俗物丸出しのおっさん(国王)と吊り上がった細目のおばさん(王妃)の手から逃げ……られないよねぇ?
お城の中で武器を持った騎士に追い詰められて万事休すの橘一家を助けたのは、この世界の神さまだった!
神さまは自分の落ち度で異世界召喚が行われたことは謝ってくれたけど、チート能力はくれなかった。ケチ。
兄には「生活魔法」が、姉には「治癒魔法」が、小次郎は「勇者」としてのチート能力が備わっているけど子どもだから鍛えないと使えない。
私には……「手芸創作」って、なにこれ?
ダ神さまにもわからない能力をもらい、安住の地を求めて異世界を旅することになった橘一家。
兄の料理の腕におばさん軍団から優しくしてもらったり、姉の外見でおっさんたちから優遇してもらったり、小次郎がうっかりワイバーン討伐しちゃったり。
え? 私の「手芸創作」ってそんなことができちゃうの?
そんな橘一家のドタバタ異世界道中記です。
※更新は不定期です
※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています
※ゆるい設定でなんちゃって世界観で書いております。
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