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9章 隔たる轍 『世界の成り立つ理』
RECOLLECT-LOG COPY-RECOLLECT 『分岐の帰還』
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間幕 RECOLLECT-LOG COPY-RECOLLECT
『分岐の帰還』
1月から10月 飛んで 12月
※ これは とある人の 誰かに向けた 日記です ※
※ 少なからず暗黒史です 本来公開必要な文章ではありません ※
※本編理解には支障はありませんので興味がある方のみご閲覧ください※
久しぶりに存在が認められた時、何も感じる事は無いと思い込んでいたが……苦笑と共に憎まれ口を叩いてしまった。
私の事など、どうでも良いのではなかったのかね、と。
同時に、私には良く理解出来る。
どうでも良い訳ではなかったという事を、だ。
我ながら巧妙な事をする。
終いに私は笑い、帰還した事を自らで祝福する。
いや?どうだろう。
『ゴミ箱』と認識される私の帰還は、祝福されるべき事なのか。
提供してやるとしようか。
卑しくも私の成してきた事の記録を。
先に言って置くが、以下の記録に幸せな結末や心安まる様な話は全く含まれていない。むしろ、不幸な出来事や悲惨な結末だけが羅列されているだけだろう。何しろ満足する結果をまだ何一つ、得られていないのだから。
しかし、他人が何と評価しようがそれは私には関係無く、これらの記録は有意義なものなものである。
私は、必要としたから淡々と記録した。
幸も不幸も関係はないのだ。
必要だ、その私の望みの前に他人の感情など何の意味もない。
だから、同時に他人の感情が私をどのように捌くのかも興味はないし、それに憤る事はしまい。
結果、私は屠られる事になったがまぁ、そんな事はどうでも良い事だし、私にとっては実に些細だ。
重要なのはこの記録が無事届けられる事。
ただ、それだけが私にとっては重要で、それが叶った今、もはや何も望む事などありはしない。
注意を喚起しよう。
以下はそんな私の、伝えるべく残された研究日記だ。
これを必要とする『私』以外が読んだ所で実に不快な気分になるだけであろう。恐らくそれが正常な人の感覚での真実。そして、私はその『正常』と言えるだろう感覚に訴えるべくこのように残虐とも言える研究日誌をここに残す。
万人がこれに付き合う必要は無い。
私にとって、この記録と付き合って貰いたいのはたった一人だ。そのたった一人のために残す記録である。
ゆえに、注意と警告をここに行う。
残虐な描写が苦手であるなら、ここより以下は読まぬ方がよい。
起った出来事の詳細など、そんなものは語らずとも物語は紡いでいける。時にそれが嘘であっても問題ではない。
間違っていたとしても、その時はその時で別の物語が生まれ出るに過ぎない事だ。
これだけ注意しても読みたいというのなら私はまた、そんな君の望みを止めはしまい。
望むは何にも勝る力だ。
私もまた、そんな力に魅入られた一人であるのだから。
□□□ □□□ □□□
=不死龍の月=
一日の日の長さが等しくなる、穏やかな月であるのになんとも物騒な名前も付いている。
不死、この世界に詭弁的にあって事実として存在しない絵空事。
ドラゴンは不死であるという間違った見聞を広めるに至ったドラゴン分類学は、書物としては優秀だが取り扱われ方に難があった。あれは、一般大衆に広めるべき知識ではなかったと、多くの識者が過去を批判する事となる。
多く、無意味なドラゴンの乱獲を後押しし、良く研究されもしないうちに絶滅、あるいは別種や亜種への変化によってドラゴンというかつてあった正式種族は消滅しようとしている。
ドラゴンが不死であったのか、と云う事は結局の所、乱獲絶滅の危機に瀕した事情によりよく分かっていない。
結局、不死だったろうという伝説だけを残して事実をうやむやに、幻のなかに消え行こうとしている。
ところが、大衆に認知されていない所で不死という事実は、意外な形をもって実証されている。
すなわちそれは、消滅の後に再び同じものが再生するという形でもって成される。
私は、これが限りなく不死に近い現象ではないかと着目し、研究を進める事とする。
決して死なない、という事が不死であるという一般的である認識は捨て去るべきだ。
それよりもふさわしい不死と呼ぶべき形式はあるのだ、と。
=巨角魚の月=
おもしろい事に、生物とは日に日に死と生を繰り返している。
そこら辺に落ちている石などとは違い、生物は一個体としてを形成しながらその中で古い部分を殺し、新しく同じ部分を作り出して再生し……その過程で成長をする。
一定の年月を過ぎると、肉体を構成する細胞が全て違うものに置き換わっている。生物を構成する最小単位とするのはおこがましいが、その概念に近しい『細胞』は、『細胞』が構成する生物の寿命よりも圧倒的に短い。
その過程、最終的に生物は死へと行きつく。
『細胞』の再生能力が無くなるのだ。細胞は死ぬ一方になり、最終的に細胞の群、その全体として括られる『生物』も生という活動を終えなければ行けなくなる。
生物としての一個体に刻まれている、定まっている死という終焉の運命。
物質はいずれ滅びる。時の推移と共に劣化し、かつてあった姿を忘れ去る。
それは、多くの経過のもとに蓄積された情報によって過去を覆い隠されてしまう事に似ており、実際そのようにしてかつてあった姿を忘れ去り、記憶の海の中に沈めてしまうのだろう。
その点、落ちている石も、一個体として群れを成すいかなる生命も同じだ。
等しく流れうる時間が、全ての運命の有無を裏付けている。
大いなる時に反逆する事は難しい。
だが、かつてあった記憶を留意する事はさほど難しい事ではない。異なった時間の流れに身を委ねるものに、別々に格納し、互いを補完しあえば良い事だ。
それにより完全に劣化を防げるという訳ではないが、かなりの時間を引き延ばす事は可能である。
この方法よってもたらす事の出来た延命は、不死などと云う名からはほど遠いだろうが、時間の流れを制する事が死という概念を打ち消すに必要である、という着眼は間違ってないと思われる。
さて、代替的価値の問題は良い。
まがい物でも不死、そしてそれに伴うであろうと夢想される副産物、不老という甘美な響きに魅了される者は多い。
自らで『それ』を追求する力がない替わり、彼らは見合う対価を支払う事で『それ』を手に入れようとする。
価値、すなわち金銭的な問題が無ければ私の研究も続かないとなれば、不老とは金銭的な価値に裏付けられる事となるのだろうか?
そして、それは無条件の金の額でもって評価される。
正直私は金に興味はないが、金がなければ研究が上手く立ちゆかないとなれば、その評価を批判する理由が無い。
転じて、これが必要とされている事だとははき違えない事だと自らに律するとしよう。
私は望んではいるが、決してそれは誰かの為ではないし、ましてや金の為ではない。
金を支払う者の為でもない。
例え支払う者が玉座に座るものだとしても、私の前では神も王も人も石ころも無価値であり、同時に等価だ。
価値が違うものがあるとすればそれは私自身であり、私に流れる血と言えるだろう。
彼らに向けては、適当な成果を出してやらねばならない。
自らの望みの前には、全ての事は必然なのだから。
=鷲天馬の月=
死んだものを生き返えらせる事は出来ない。
それは、真実の不死を実現させるのと等しく難しい事だ。
少なくともそれは私の専門ではなく、どちらかといえば他の者達がすでにいくばかの成果を出している研究である。
他人の畑を荒らすつもりはないし、それは私の望む所ではない。
しかし、死んだものを生き返らせろと私に云い募って来るのはどういう事か?
大凡検討はつく。
不死とは死そのものを生へ転換させた概念だと勘違いをしているのだろう。ようするに、対価を払う者は結局の所、私の仕事の内容をよく把握していないという事だろう。
まぁいいだろう、そう云う事もある。
理解され難い事は知っているし、説明するのに骨が折れる事も同じく。
理解していない者に理解などさせなくとも、物事を前に運ぶ事は出来る。
私の研究は不死であり、死人を甦らせる事ではない。
だがしかし、それと似たような事は出来なくもない。
死体となった男を生き返らせろ……ようするに同じようなものを作ればよいのだろう?
私にその様に命じた者の、正確な意図を理解すれば答えは出てくる。
死体の男が必要なのではない。
死体の男が立っていた場所に居るべき人物が必要なのだ。
そして、そういう人材はなかなか居ないもので、この死体の男以外に務まらないというのだろう。
ついでだからもっと便利なものを作って差し上げよう。
私はそのように約束をした。
金さえあれば材料の調達に手間取りはしない。
しかし、なるべく秘密にとなると少々やっかいだ。
世間一般的に、私のやっている事は理解されがたく、どちらかというと目を逸らされ、酷い惨いと非難されるという事は知っている。
世間というものを波風立てずにやって行くには、やはりなるべく事は隠密にという願いも理解出来る。
とすると、金は問題ないとして、やはり手間が掛かるか。
要するに時間だ。
思えば、私はそれを一番やっかいだとすでに認識して久しい訳だが……一応、在る程度を突破する手段は身につけている。
時間と対を成す事象は、法則的に空となっている。
成る程この認識は正しい。
時間という問題を解決するのは結局、空間だ。空間と空間を行き来する情報の伝達時間こそが問題で、空はこの時間の拡散を一定法則でもって妨げている。
時は空を自在にする事が出来ない。
ならばその理を曲げればよい。曲げうる場所がはっきりしていれば、魔法というのは効率がよくなるものなのだ。
魔法という、望みをねじ曲げる力は強大である。時に、偉大なる時と空の約束さえ突破する。
これで材料の調達が多少は容易くなったといえるだろう。
先立つものとして黄金は不可欠だがこれも心配は要らない。
良い材料は目星を付けていずれ手にはいるように、段取りを付けておけばいい。
=舞武虎の月=
時間の流れを曲げる事は望みの前に、可能だ。
ただ、世間一般的にはあまり良い事ではないし、技術や能力のいる事と言える。
材料を調達し、多くの検体を必要とする私の研究であるが、材料というのは有限ではない。
最終的な望みを叶える為に、周りの環境を整える事は必須となる。その為に余計な技術や研究をするハメになる事も、まぁ厭わない。
生物には、忌避しがたい死という運命が刻まれている。
上手くこれを取り払ってやればいいのではないかと長らく研究をしたのだが、よくよく調べると成る程死の運命とは生物にとって、必要な事なのだと把握する。
抑止力が無いとどこまでも拡張し、果てがない。果ての無いものが世界にあふれると飽和し、世界を破滅させる事に成りかねない。
まず、世界が無限ではないのだ。それを死という存在から間接的に予感する。
……残念ながら私も含めた生物の構造とは、死を前提とした設計となっているようだ。
後付け的に死を得たようである。そういえば、八精霊に基づく神話においてもそういう事になっていたのだったな……。
全てに終わりを定めたのは、物質世界が出来上がった後だと言われている。
そうしなければ世界にあふれる。種として破綻する事を生物は悟り、自ら寿命を得たのだという歴史を私は紐解く。
ようするに、変化する環境に対応する力を失うという事だ。
変化しないと云う事は、この変化する事が全てに置いて許されている世界に置いて致命的な弱点になりうる。
その為か、生物には再生する限界があり、その限界が訪れると死へと転落していく。
老化の始まりである。
かといってその限界を取り除いてしまうと、いつまでも同じ姿を繰り返すに過ぎず、存在として不死だとしても命として存在を残す事が不可能になる。
やはり、死と再生は切り離すべき事ではないのだろう。
種子によって、増やせる限界というものが存在する。
先に述べた、生物の再生の限界にも通じる問題だ。
それでも、最初の果実をもぎ取ってくる事よりは種を採取し、孵化させる事の方が容易い。
人為的に戦争や争いを起こし、実験体を確保する事と、こちらの実験で犠牲になる物資の比率が釣り合わない。
材料は有限ではない、という問題にも通じる。
そこで、強制的に検体を増やす方法を確立させる。
理論的には難しい事ではないが、一番に問題なのが時間……手間だ。ここでも時は私の邪魔をする。
時間を引き延ばす事が可能なら、少しばかり早送りする事も不可能ではない。だが、そのように急激に物質として肉体を育てた場合、当然とそれに付随するはずの経験は伴わない事となる。
そういう検体で構わない場合もあるが、事情から言うと経験は必要だ。ソレがなければ始まらない場合も多い。
出来れば、重い経験が必要だ。薄っぺらいものは要らない。そして晒される状況に合致したものであるほうが良い。
そして、その経験と肉体が一致していた方が良い場合もある。異なる器に異なる形のものを入れれば、不具合が起るのだという研究はそれなりに、別の方向で進んでいる事だ。
それによって多くの大切な検体が失われた訳だが、真実を開いて行く為ならば仕方がない犠牲だ。
多く、人は私の行いを理解する事はないだろう。
だからあまり公の場でこれらの研究をする訳にも行かない。
かつて昔、魔物が生物としての地位を確立していなかった頃。いくら殺しても賞賛はされども誰からも咎められる事は無い、という時代だあったという。
今となっては信じられない時代だが過去、確実にあったようだ。その時代が今に残す遺物が残っている。
その時代に置いて、魔物を切り刻む事を公然と行っていた一派があると云う。
多くの魔物を実験に使う為、任意の怪物を作り出してはそれに、多く魔物を狩り出させる。最終的には畏怖はされども尊敬はされなくなった一派だ。
おかげで魔物を多く切り裂いた事で得た多くの技術は失われ、禁忌として封印されてしまった。
私がやっているのはそれと同じ事だ。今は、何を切り裂いても罪に問われる可能性を危惧しなければならない。
だから、全ては秘密裡に行う必要が有る。秘密にやらせてくれる場所も限られている。
不老や不死という錬金術を行う対価として得た黄金の他に、秘密という重大な隠れ蓑も必要となって来た。
そして万が一暴かれた時には、迫りくる不都合な相手をねじ伏せる力を持った一団も。
=混沌獣の月=
私は切り札を手に入れている。
出来ればこの理論についても追求したい所であるが、今はそれを調べている場合ではない。
それよりも先に着手した課題があるだ。時間は既に引き延ばされている。焦る必要はない。
まずはそれを完成させてから研究したとしても遅くはないだろう。
しかし本当の事を言えば『完成』は夢のようなものだった。
……完成、そのような『終わり』があるのだろうかと疑っていたのだ、私は。
いや、全ての物事には終わりが必ずあると、理の上ではそうなっているが。果たして私が終わりだと思う、完成という終わりが本当に来るものかと……少し疑っていた。
もしその終わりが来ないのであれば、私の追い求める事は世界から許されていない。ただその一言で片が付く。それだけである。
だが、切り札を手に入れた今、それは現実身を帯びてきている。
可能なのだ。
これは、私が躓いた理論を全て可能にする。
まさか、このような切り札を手中に収める事が出来る事など、私の予測の内には無かった。それだけに驚いてもいる。幸運だ、運命も実力のうちだというのならまさしく、世界は私に私がもたらす可能性を許しているという事だろう。
予測に無いと言う事は、この力を知らなかったと云う事である。
いや……ほんの少しだけこの力の『噂』を聞いた事があった。それこそ、絵空事か誰かの戯言、伝説とかいう物語の一つだろうという『噂』で真実だとは思っていなかった。
世界には王と呼ばれるものがいる。
王、とは神と同じく機関の一つだ。群衆によって選ばれて贄とされるもの。そのかわり絶大な権力を誇る。
しかし王の姿は様々だ。王や神というのが個人を指す事ではなく、あくまで『機関』であるという理論上、それは当然の事ではあるが。
西方のシュラード王のような神々しい偶像である場合もあれば、邪悪の化身として蔑まれる北の主、北神の場合もある。
王という機関は人間にとって必ずしも都合の良い存在では無いという事だ。時に暴君である事もある。
そして、私が噂に聞いた王はまさしく暴君だ。
その王は、三つの世界のうちの一つの頂にいる王であるという。
実質的に三つの世界のうち、その暴君が収める世界が一番力を持っていると言えるだろう。
なぜなら、暴君が収めるのは精神の世界だからだ。物質世界や幽体世界に比べ、理論的に精神……すなわち意思、心というものの占める割合は大きい……と予測している。
多くの意思を持つ者が住む世界には、その数だけ精神の世界がある。
そして、精神や心とは、全ての理論を曲げてしまう事が出来る事になっている。
王が望むままにある世界。
そも、精神世界に自らを王と名乗る、意思のあるモノが玉座について良いものか?
思うに、本来その玉座に座るモノには『自らの意思』というものは与えられないはずである。
実際、本来そのようなものは持ちうるはずはなかったのだと云われる。それでも、意志を持ってしまったから暴君だと評価されるのだろう。
意志を持った王は退屈だった。
下手な事を望めば、そのように世界が歪む。もちろん、歪ませてめちゃくちゃにしても良かったのだ。我々には誰の所為でそのようになったのかなど、余りにも高見の事で解らないだろう。
ところが、意思を持った暴君は高見から低い所を見下ろしていた様だ。低い所に何か一つ、たった一つでも一つ以上でもいい。
壊してはいけないと思う何かがあったとしたら?
触れてはならないと慈しみ愛護するものがあったとするなら。
暴君は何も望む事はせず、世界がただままにある事だけを望むだろう。
自らの意思の元、歪む世界において、守るべきものを真の意味で守る為には干渉は許されない。
王は退屈だったろう。
だが、その退屈の中で、愛するものが世界に生きる事だけを黙って見守る事でその退屈を紛らわせたのかもしれない。
私が手に入れた切り札とは、その退屈な王によって統率された力であると言える。
そして、この強大な切り札は世界を変えるだろう。
変えるだけの力を持つ。使い方次第だ、勿論かの暴君程の力を私で齎すことは出来ない、得られたのは末端の、些細な力でしかない。
私がこれを手に入れて、世界を変える事が許されているとするなら……恐らく精神世界の王と呼ばれた者は。もはや玉座にいないのだろうな。
なぜなら、私が世界を変えてしまう事を世界の安寧を願ったであろう噂の王は、許しはしないのだろうから。
=環界龍の月=
隣国は貧しい所だ。
実際自らで足を運んでみると、目に写る景色としては決して貧しい所ではないように思えるかもしれない。
本来多くの可能性が秘められていて、努力した分報われる、無償の恵みに溢れた大地であるのだが……。
隣国の文化に毒された結果、豊かである事の意味をはき違えた者達が、貧しいと口々に言うようになってしまった……そこは、物質的にというよりは『精神的』に貧しい所である。
今、私の手の中にある黄金。
要するに金だ。代替的に流通する通貨というもの。合金であるからこの貨幣そのものにさほどの価値はない。後付け的に黄金と比較した価値を与えられている、これは悪魔の道具だ。
これに匹敵するものが辺りには溢れている。
今、私の目の前にあるものもそうである。
しかしこの貧しい隣国は、私の手の中にある悪魔たらしい黄金の輝きに目が眩み、それに匹敵する価値があるものに気が付いていない。
実際これから私は黄金を支払い、その等価たるものを得ようとしている。しかし実際の所これらのものはこれしきの黄金で得る事の叶わない、崇高なものだという事を私は知っている。
黄金に目の眩んだ者は、その価値に気が付いていないのだ。
どうやら黄金を欲する者にとって、私が求めるものの価値はずいぶんと低いようである。しかし、価値についてこの者らに諭してやる程私は暇ではない。
相手の示した価値で取引するのが最大の敬意になるのだろうと、私は手に黄金を携えてやってきた。
彼らは私がこれから得ようとしているものに、価値があるものだとは全く思っていないのだろう。
貧しいと訴える夫婦から、最も価値あるものを黄金で取引する。
そも、価値とは人それぞれであるのかも知れない。私にとっては魅力的でも、この夫婦にとってはそうではない。腐臭を放つゴミも同然という事だろう。
邪魔で棄てたがっている。だが……棄てる勇気もない。
あるいは迷っているのだろうか。
くだらない、邪魔だと思って棄てようと思っている癖に。
少しばかりの迷いの正体は……実にくだらない。
貧しいくせに、節操は無い。
違うな、本来この国の人々はここまで貧しくはなかったはずだ。貧しくさせたのは周りの、自分達は『比較して』豊かだと勘違いしている他の国だ。
10人にも増えた子供達を育てるに困るこの夫婦は、すっかり周辺国の毒に冒されてしまった。
容易い。
実に容易く堕落していく貧しい国に私は苦笑を漏らした。
私が何をしたのかを記そう。
隣国、国土の大半が森であるために実際には国として統率はされていないコウリーリスの南側に、マリアという町がある。
コウリーリスにおいて町と表記しても間違いではない、それなりの規模を誇る集落だ。
マリアは黒竜海や東方大陸につながる竜首半島ぞいにディアス国と隣接している。
ディアスは私が隠れ蓑にしている国だ。古い歴史を持ち、本来西方大陸の中央に座していた国なのだが、多くの戦乱の後に南東の島国に移動している。
歴史が古いだけに、考え方や統治の方法も古い。古い事が悪いと言っている訳ではない。ディアスは遥か昔に上等な統治の理論を作り上げているという事だ。だから一応、今も通用している。
マリアは、いつディアス国に切り取られてもおかしくはない町である。残念ながら交通の便が良いとは言えない事、またディアス国内で長らく身内の事情により混乱が合った事がマリアの植民地計画を大幅に遅らせ、頓挫させてしまった。
混乱は今だ収まっているとは云い難い。ディアス国はだいぶ昔から統治政権の派閥闘争が泥沼化しており、一旦統制は取れた時代もあるようだが……結局の所一度火の上がった所がくすぶり続けて今もじりじりと国のてっぺんを焦がしている状況である。
当然コウリーリス国への進出、植民地化計画は上手く進んでいない。これに反発する派閥があって、上手い事折り合いが付けられずにいるのだ。
上辺の事情など私には関係がない。関係を結ぶと面倒な事を知っている。
だから誰か、植民地化を推している政治家に荷担している訳ではない。それは先に言っておく。
政治とは距離を置き、その上で密かに国の方針を操作する事は容易い。私にはそれが容易く出来てしまう。
まがい物の不死や不老、一般的には不可能と思われる技術、その先にある情報などを黄金の価値によって『平等』に提供する私は、そうやって少しずつ動く事が無いと思い込んでいる少し大きな石をずらす様に、彼らの思惑を動かす事が出来る。
石の一つが少し動いた所でたいしたことはない、と彼らは思っているだろう。だが、そのように思っている石が大量にあったとするなら、それは大きな流れとなって世界の有様を変えるのだ。彼らはすっかり、自分が動く事に必死で、世界全体を見渡す事が出来ずにいる。
マリアの植民地化計画の第1段階として、現地の人々をどのように征服するか、という問題がある。
ディアス国は過去、西方で戦争に勝って国を統一した歴史を持つ国だ。当然武力制圧すべきだという考えが強い。
だが国が西方以外にも多く発展した今日、いつまでも戦争をしていると、世界各国情勢から仲間はずれにされる。武力制圧はしない方がよい……という派閥もある。
そも他国制圧など辞めた方がいいという超穏健派もいる。
収拾がつかない訳である。
私ならば……こうするだろう。
商家の一つに、マリアへの商業指導をさせるのだ。
ディアスの最大商家と名高いフィナル家が、海を隔てて近いコウリーリス国の一つザイールに農業指導をして成功を収めている。ちなみに、フィナル家は政治家ではないが政治に多大な影響力を持つ……俗に言えば超穏健派でもある。
対し私が白羽の矢を立てたロダナム家はこの、フィナル家に尻尾を振りつつも対抗意識を燃やしている商家の一つだ。
感情を弄んでやる事で実に簡単に、ロダナム家は私の傀儡となってくれた。
私の提案通りにマリアでの商業指導を行い、ロダナム家は今私の思惑通に成功を収めた。
マリアには今、オピウムの花が咲き乱れる畑が多く広がっているだろう。
勿論花を咲かせるだけなら私の技術提供はいらない。私がロダナム家に提供した技術は、多く医療薬品として貴重である物質、モルヒネとヘロインの生成方法だ。
この物質の生産までをマリアでやらせている。なぜなら、ディアスの上流階級で鎮静効果のあるこの薬が流行の兆しを見せていて、少なからず問題視されて警戒されているからだ。
当然、その流布については私の手引きがある。
常習性がある事など知っている。知っているから流布させているのだ。今やロダナム家の名前でもってディアス上流階級に知れ渡っているこの薬は、多くの中毒者を抱えている。ロダナム家は薬を密売する事で多くの政治家を手中に収める事が出来るだろう。
さて、しかし私の狙いはディアスの崩壊ではない。マリアで大規模な生産を始めたとは言え、ロダナム薬は高値だ。ディアスで密売をするにしても、正規ルートでマリアからディアスに輸出するにしても……全てはディアスで買い取れないだろう。政府でさらにこれを各国に売りさばく技量がディアスにはない。その仕事は、商人らにまかせっきりだから、各国に売りさばく所までロダナム家が請け負う必要がある。
先にも言った通り政府としては、これを危険視し始めているので輸入を控えているはずだ。
するとどうなるかというと、マリアに今までになかった多額の黄金が渡り、それと同時にロダナム薬の在庫がディアス国の上流の嗜みとして流出し始める。結局の所、裏で物資と金が動くからだ。
そも、コウリーリス国は他国と活発な商売をしている国ではない。指導してやらなければ売買ルートなど上手い事作れない。
ロダナム家はフィナルに比べて商家としての手腕は上等とは言い難い。私腹や欲を満たす事を優先する結果、マリアの発展までは頭が回らない……だが、それでいい。
ディアス国は一つ重大な問題に直面している。
国内需要に対し国内生産が間に合わず、輸入と輸出の精算が合致していないのである。
フィナル家がここの所、何とか支えている状況でおかげでディアス国は穏健派フィナルに頭が上がらない……という状況にあるわけだ。
ロダナム家の躍進は、この状況に変化をもたらすだろう。
まぁ、その変化については私はどうでもいい。
とりあえずマリアが廃れてくれればいいのだ。戦争を起こしにくい現状、戦争以外で『材料』を調達するには、途上地域の植民地化が最も手っ取り早い。
戦争などしなくても、反抗の意思を取り除く方法などいくらでもある。
マリアがディアス国によって支配されてしまうのは時間の問題だろう。
=陽獅子の月=
黄金の突然の流入や、文化の急速な発展はその土地に格差を与える。
貧困な層と、裕福な層に二分化するのだ。
私はその様に町の様子をすっかり変化させた上で、黄金を携えて搾取にやってきた。
そう、私は裕福と呼ばれる方である。
そして、今目の前にあるのは貧困な方。
喰うに困り、黄金に目が眩み、10人もの子供を設けてしまったこの家族はついに、子供を売り払う事を決めた。
もっとも、子供というのが『売れる』という知識をまず与えてやらなければいけないのだが。
それが罪な事だという認識を真っ先に奪っておく事で、容易く彼らは子供を売るようになる。
いや、多少の罪悪感はあるのだろう。
罪悪感があるから子供を棄てるのではなく、売るのだ。
しかし呆れた事に、10人引き取りに行って蓋を開ければ、内3人が乳飲み子で幼児が3人。言葉を話せる年齢の者がたったの4人だ。内、在る程度知能も発達して働けるであろう人物は二人である。あとは年齢的に幼すぎる。
私は、背後で卑しくすり手を使う夫婦に苦笑する。
成る程、恐らくこの夫婦の子供は数人か、あるいは夫婦に子供などそもそもいなかった可能性が高い。10人とは無節操なとは思ったが、働き手を作る為に子供を多く設ける貧困層も少なくない。
しかし、これはちがう。
地下に閉じこめられているこの子供達は、最初から売る為に集められたものだ。
私に売る為に、二束三文で買い叩き集めた……といった所か。
全員引き取ってやっても良いのだが、乳飲み子というのはどうにも困る。正直に言えば飽和しているから不要だ。
エサくらいにしかならない。育てる手間を掛けている程私はひまではない。
呆れたついでに、手間減らしとしようか。
約束はしたので、最初に話を付けた黄金を支払い……私は、夫婦に告げた。
10人は要らない。
一人でよい、と。
貰うものさえ貰えればどうでも良いのだろう、その条件でも問題はないようだ。恐らく、人買いは他にもいると思っているのだろう。
残念ながら人の売買というのは世界的に見れば余りよい文化とは言い難く、活発なものではない。この途上国では、そのような現状さえ知らないのだからしかたがない。
西方ではすっかり奴隷という制度は廃れている。廃れてはいるが裏では横行している。奴隷と等しい労働者でも人権は一応認められている時代であるにも関わらず、だ。
南方には奴隷需要は端から無い。
魔物という最底辺だった生命を等価なものに引き上げた発祥の地において、そのような文化があるはずがないか。
もう一つの東国、ペランストラメールと山脈グランドラインで隔たっていなければマリアにも、人買い集団も現れるだろうが……それも望めない。
ディアスでは労働力として奴隷はいるが、その多くはペランから運ばれてきている。ペランストラメールと隣り合っていながら地形的に行き来のないマリアからは、あまり奴隷人材の流出は無い。そも、子供が売れるという知恵とて最近知っただろうしな。
地下に閉じこめられていたやつれた子供達を見回して、さて。どれにすべきか。……決まっている。
私からは指を指す事はしない。指など指さなくとも、状況と条件を話してやれば誰が名乗りを上げるのかは決まっている。
君達の『ご両親』は君達を養うお金が無くて困っているらしい。そこで私がお金を上げる事にしたんだ。その代わり君達の内一人を、私が引き取る事になった。
その様な事を適当に話した所で、その言葉の意味を理解出来るものは限られている。
私はあえて彼らに選ばせる。はたして誰を差し出すべきか、を。
またそうする事で退路を塞ぐべきだ。
彼は私に選ばれたのではなく、自らで選んで私の手を取らなければいけない。
そうする事で最良の『材料』と成るのだ。
一人決意を固めてこちらを睨み返してくるのを見いだす。
自分が選ばれる事によって、この惨めな状況を『家族は』脱出できるのだと理解した一人だ。
家族か、果たしてあの呆れた夫婦にそのようなものを作るつもりがあるかどうか……。
私は年長者の一人を地下から引き上げた。
緊張に強ばる青年を引き連れての帰路、私は青年に悟られない様に笑った。
夫婦に支払った黄金は実際には、二人分なのだ。
一人は今引き取った。だがもう一人は、もう少し成熟を必要とする。
後に引き取りに来るとしよう。
あの場に残すべきは、自ら贄となる事で他を救おうとする小賢しい知恵や勇気ではない。だから今、それは引き抜いてきた。
原石を磨き余計なものを研ぎ落とすに必要なもの……飢え、絶望、嫉妬、愛、あるいは狂気。
それを免れるのは残された者達で、それを被るのは自分だと信じている年長者の青年。彼を一人連れて、私は自分の研究所に戻ってくる。
逆転した価値に、毒されている事を彼らは知らない。
ディアス国の者達は割と皆そうだ。
不幸なのは常に自分だと思っている。そして不幸なのは、幸せな者達の所為だと思いこんでいていつも不幸自慢をしている。
不幸である事がまるで誇るべき事であるように悲嘆を語り、悲劇に涙し、悲壮に寄り添おうとする。
もはやここまで来ると喜劇だ。
青年は必死に、私が命じた事に従うだろう。自らで背負ったと思いこんで反抗心を殺すだろう。
自分というものを踏みにじる事こそが自らへの救いだと思いこんでいる。
見事に私の望んだ材料と成りはてた。
哀れな青年。
自分は幸せになってはいけないのだと、そう信じているのだ。
だから何の解決もしようとはしない。
ただ晒される出来事に堪え忍び、嵐が去る事だけを待つ。
自分は何かを得ようとしてはいけないと、信じているのだろう。
=一角獣の月=
ところで、私は一度失敗を犯している。
それに挫折して膝を折るのは早い。失敗を糧に、望むものを得るべく研究を続けなければいけない。
彼の……マリアから連れてきた青年の名前は何と言ったか?
失われるのであればそれさえも必要ではないと、彼は名前を名乗らなかったのかも知れない。まぁ、私はそんなものに興味はないのでどうでもいい。材料の固有名詞など必要だろうか?
栄養失調の体にたっぷり栄養をとらせ、基礎体力を整えさせた所で……かつて失敗した実験の続きを行うとしよう。
昔……この研究実験はかなり良い所まで行ったのだ。しかし主な材料に問題があって基本的な所で躓き、最終的には失敗に終わった。
結果私は打ちのめされた訳だ。非常に基本的な事だっただけに少なからずこの失敗を悔いた。
死体を生き返らせる事は出来ない。
当然の理だ。こればかりは未だに誰もが成し得ていない。
……いつまでも失敗に悔いている場合ではない……前向きに考え直す必要がある。
死体となり終焉を迎えたものを、再び物質的に再生する事は可能だ。
私に限らず、魔導師達の正式研究でも実現した事が公にされている。もっとも、そうした所で死んだ者が生き返る訳ではない。既に何度も言った通りだ。
物質的に再生した所で、そこに同じ精神や同じ幽体が宿る訳ではない……という事情による事だ。同じ物質を再生しても、同じ人格と同じ幽体を宿す事になるとは限らない。
生命を人工的に作り出す事は難しい事ではない。それは。ずっと昔に実証されている。
難しくはない。生物の営みとして『人工的』に子を成す事に何か難し作法がいるだろうか?人は、相手をきっちり選んで子供を作る事が出来る。
その理論が母親の腹の中か、試験管の中かで何か違いがあるだろうか?違いがあるとすれば生まれという経歴、記録の差だけだ。
かつてあった名前を失い、姿を失い、経歴さえ失う。
青年の顔をそぎ落とし、再生した死体の男から顔をはぎ取って貼り付ける。これは難しい事ではない。
禁じられてはいるが、三界接合と呼ばれる半魔法理論を使えば、異なるものを接続させる事も容易い。そのように青年を調整出来るならば尚のこと、である。
慎重に拒絶反応などを警戒しながら、肉体の外観をはぎ取り、付け替えて行く。
この術式は青年にとって相当に辛かっただろう、痛みなどを失わせる薬品を使ったとしても、多くの検体が精神的な悲痛の叫びの内に止めてくれと訴える術だ。
それに泣き言一つ言わなかったのは褒めてやっていいものか。そこまでして残した兄弟や家族の為に自らを捧げようと言う精神には正直……問題が残る。
いずれ正しい事は教えてやらなければいけない。
その時、全ての痛みを堪え忍んだ彼の精神はどこまでを許容範囲とするだろう。
私に黄金を握らせ、死者を生き返らせよと命じたものに……。
詭弁的に作り上げた生きる屍をを捧げよう。
理論的には死者を蘇らせた訳ではない。
死者と同じ肉体を持つ者を再生させ、死者の背負っている経歴を背負わせ、死者の持つべき精神を宛ったにすぎない。
しかしこの結果に大いに満足はしてくれたようだ。
そう、必要なのは死者の男ではなく。
死体となった男が立っていた場所に居るべき人物だ。
死者の名前はアービス・G。
青年は今をもってディアス国四方騎士、異端編成、北魔槍の団長アービスとして生きる事になる。
実験は上手く行ったな。
なるほど、この手法は場合によっては『使える』。
かつての失敗を挽回するも不可能ではない。
完成の為の手段として、頭の隅にしっかりと留めておくとしよう。
=翼有蛇の月=
とじこめられてみっかめになる。
兄さんがいなくなってみっかめだ。
なきつづけていたやつらがしずかになった。
兄さんだけそとにいった、ずるいよとか。そのうちもどってきてくれるよとか。そんなことをおしゃべりするのにももうあきた。
今、くちをひらけばみんなおなかへった、のどがかわいたとしか言わない。
ぼくは兄さんに、みんなをよろしくっていわれたんだ。
ぼくがみんなをまもるんだぞって、兄さんはぼくに言ってでていったんだ。
だから、うまくできるかわからなかったけど、兄さんのまねをしてみることにしたんだ。
兄さんはつかまえるのがとくいなんだ。
おなかがへったとき、よくわなにかかったのをうまくさばいてたべさせてくれた。
でも、このへやにいるのはねずみくらい。それでもおなかがへっているからみんなでひっしになってつかまえたんだよ。
ぼくは兄さんからもらったナイフでねずみのおなかをさいて、小さなおにくをはいで弟や妹にあげた。ゆびのさきに小さくのっかった欠片を、ぼくの指ごとたべちゃうんじゃないかってくらいのいきおいでむしゃぶりつかれた。
ぼくは かわ や ないぞう をくちにいれてみたけど、とってもまずかった。
兄さんはないぞうはほとんどたべずにすてちゃっていたけど、まずいからなんだろうなと思った。
それからねずみを数匹つかまえたけど、ぜんぜんたりないんだ。そのうちに、ずっとないていた奴がしずかになったのに妹がきがついて足をひっぱってもってきたんだ。
ちからがないかんじは、兄さんがつかまえて足をもってぶらさがっていたうさぎさんみたいだった。
ぼくはないていた奴のおなかを、兄さんがうさぎさんのおなかを裂くのをまねて開いてみて、ぷっくりふくれあがっていたところからひもみたいなものをかきだした。
そのおなかの中にたまったちはなまぐさかったけど、のどがからからだったぼくらは、それをこぼさないようにちゅういしながらのんだ。
そのあと、てとかあしをナイフでさきながらみんなでたべたよ。ねずみよりもおいしかったんだ。
ぼくは兄さんがいつもそうしてくれるように弟や妹にあげるのをゆうせんして、さいごにのこったものをたべたんだ。
ないぞうはどれも苦くておいしくなかった。
だけど一つたべやすいのがあったから、ぼくはしばらくこれをたべて、みんなにはお肉の部分をたべさせてあげようと思った。
うるさいやつがしずかになったのを、ぼくはじゅんばんにさばいてやった。
そのうちにたべるものがなくなってしまったけど、その時はしずかにしてやればいいのだってわかったんだ。
でもそうしたら、こんどはうるさいやつもみんないなくなってしまったんだ。
たべるものがない、お外にも出れない。
兄さん……兄さん、いつもどってくるのかな。
……おなかへった。
=守護竜の月=
原石が輝きを伴った頃合いを見て、引き取りに行った。
その家はすっかり外側から蓋がされていて、数ヶ月放置されただけだというのにすっかり、森の緑の中に埋もれている。
私が訪れたのが夏で、今は秋の終わり。
このまま冬を越す事は無い。その時は原石も、ともした光を失いただの石、あるいはそれ以下となって転がっているだけになる。
あの夫婦は早々とこの場所に見切りを付け、どこかに行ったのだろう。
棄てたのだ……この家もろとも。欲を出さずに居た事は褒めてやってもいいかもしれない。最も、上手く買い手がつかなかっただろうから、こうなる事くらいは予測していた。
いや、むしろこうでなくては困る。
夫婦達のその後の足取りに興味はない。
それよりも……恐らくここに残したままにしただろう原石だ。
執拗な程、その大きくはない小屋の入り口という入り口、窓、それらに板がされて塞がれている。地下室にある僅かな窓は前から板で塞がれていたが、そこは更に厳重に塞がれていた。そして、それらが緑色の草を半分枯らせた執拗な蔓植物のなかに埋もれている。
私は扉を乱暴にこじ開け、薄暗い小屋の中に足を進める。
地下への入り口の上に古い家具や椅子、板の残りなどを積み上げて完全に塞いでいる様子に目を細めた。
案の定、あの夫婦はこの地下にあるものの価値を理解していない。
逆だ、むしろ価値ではなく、恐ろしいものとしてこのように封印するに至った。
そんなに恐ろしいのであれば殺してしまえばいいというのに。棄てる事は出来ても自らの手を汚す事は出来ない。
愚かな事だ。自らの事だけを考え、他人の苦しみを鑑みない。
子供らの死に安寧を祈る事が出来ないから放置して逃げるのだろう。そのように弔わない場合、死体は死霊化する事がある。自ら手を下す事で、死霊と縁を結ぶ事を恐れた結果だ。
放置してこの場を逃げ出す事で彼らは安息を手に入れたつもりだろう。
恐らく……地下に閉じこめられたままの9人の子供は、長らく強請って叫び続けたのだろうな。
手に入れた黄金を、夫婦は無価値だと決めつけて居るものに使うつもりはなかったのだろう。集められた子供達を育てるつもりなどさらさら無いと言う事だ。
乳飲み子、言葉を喋れぬ幼児、意味もなく言葉を発する者、辛うじて兄の話の聞ける者。
そして唯一立場や状況を解っていた兄。
だが、その中で最も年長者であっただろう知恵者の青年は数ヶ月前、私が引き抜いておいた。
今は名前も姿も経歴も捨て去って、アービスという名前の重鎧を着た団長を演じている。
家族が、兄弟が。
このように無惨に崩壊している事などつゆも知らずにな。
私は瓦礫を難儀して取り除きながら、この事をアービスに話してやるべきか……今は出来ないとして、いつ話してやろうか。そんな段取りを考えてみる。
永久に口を閉ざしているつもりはない。私は、アービスがあれで『完成』しているとは考えていない。『完成』させるにはもう少し手を加えてやらなければいけない。
私の目指す『完成』への段取りを組む事に没頭し、肉体労働の辛さを追いやる。
ようやく見えてきた地下への扉を用心深く開けると……すでに漂ってきていた腐敗臭が一段と鼻に付く。
暗闇の中に降りていき、私はその中でか細い声を聞いて素直に微笑んだ。
いる、ここに……私の望んだ原石が確かに息づいている。
=地知犬の月=
機密事項により閲覧禁止
=狂戦士の月=
約束をする事は容易い。
容易くはないのは、その約束を守る事、あるいは破る事だ。
帰還を果たした私は、一つ約束を破って酷い目にあっている。だがそれは約束をして、それを守る努力を怠った結果であるのだから恨みはしない。
当然の結果として受け入れる用意がある。
そして、そこまでして破らなければならない約束だったとも言える。
望む事は何よりも勝る。
必要だ、その望みを私は理解している。
その為に今また、易い約束をするとしよう。
「子守をして貰いたいのだ」
私は、育成に困った少年を預けられる者を見いだしそのように願い出た。
「なんでそれを俺に頼むのか、よくわかんねぇな。そも、お前は俺にちょっかいを出してぶっ飛ばされたじゃねぇか。懲りねぇ奴だよ」
呆れたような声が天上から返ってくる。
「よもやまた手を出すとは思わないだろう」
私はそのように答え、暗闇の天井に居るものを見上げる。
「私の望みが何であるか、それは前にも言ったはずだ」
「どうだろうな、お前の言ってる事は確かに理に適ってるんだろうが、それの一つとして俺が必要だって言う理屈には頭を捻るぜ?」
「誇っても良いのだと言ったはずだ、お前は私が選んだ人格者。必要な者だ。その証拠に、その不安定な存在ながらも揺らぎ無く精神を保っている。その、強き心が必要だ」
暗闇の中でそれは笑う。
決して私が言っている事を真に受けて嬉しい笑みを零しているのではないのだ。慎重に、私の言っている言葉の深意を汲み取ろうと隙を伺っている。
「残念だが、お前の望みはそれとして、俺の望みも昔と変わりはしねぇんだ。一度失敗しているお前にもう一度任せる程俺は、間抜けじゃねぇんだよ」
「勿論だ、同じ事を二度やろうとは思わんよ」
私はそのようにすぐに反論し、少し焦らすようにこちらの表情を隠す。
「そもそも、あれは存在として破綻している。お前にふさわしいとは言えない」
「完璧を望むつもりは無いとも、前に言ったはずだ」
連れない声に、私は論点をずらすべく顔を上げる。
「死んだものを返す事は出来ない。だが、死んだものから同じものを再生する事は可能だ」
「………それすらも不可能な程に破綻している、と説明されたと思ったがな」
頭の良い奴だ。こちらも油断をするつもりはない。
私は天井に潜むそれを私は、下に見ている訳ではない。そのように下げずんだ途端、掌を返すような聡い人格者であることを私は知っている。
「もちろんだ、完全に同じ、という訳にはいかない。だが限りなく近いものは再生出来た……とするなら?どうする?」
「くくく……どうする?だと?それを答える前にそのからくりを説明してもらおうか」
「ウリッグ」
私はため息混じりにその名前を呼ぶ。
「これは取引だ、それを忘れるな」
「互いに不当な、利害の一致する……か。おもしろい、話してみろよゴミ箱野郎」
挑発に乗る程私は軽率ではない。
だが、自分で認識している分にはどうでもいいが他人からゴミ箱と呼ばれる事は決して気分が良い事ではないと認識する。
お前は頭はよいし知恵も回るが、少しばかり小賢しい。
=鬼子母の月=
結局、叶えられる事の出来る不死とは、人為的な工作を必要とするもので作品として、独立させる事が難しい。
技法が失われればその時、不死も途端に立ちゆかなくなる。
私が目指したのはそんなものではない。
だが完璧を求める事は愚かしい事だと、少なからず私はその結果に満足し、ならばその仕組も含めて望むものを組み立てればよいのだと結論づけたようだ。
悪くはない。
その小さな諦めこそが私に付け入る隙を与えてくれる。
そろそろ感づかれたようだ。
この私が、こそこそと画策する事の真意について。
だが私に振られた役割とはこういう事で、私はその様にして自らの存在を世界に問いかけているのだろうという事は知っている。
私を使って試しているのだ。
それは私の抱えるとても小さな迷い、躊躇い、不安。
そういうものは必要ではないと、棄てられたのが『私』である。私はゴミ箱であり、ゴミ溜なのだ。
そうやって棄てたものさえ拾い上げて私は世界の中で、何が出来るのかという事を試しているのだろう。
私から言わせれば愚かな事をやっている。
要らないのならば棄ててしまえば良かったというのに。それさえも出来ず、結局拾い上げて懐にしまい込まなければいけない。それが恐らく、私も含めて人の愚かな部分だろう。
その愚かしい部分を克服しようとしているのではなかったのか?と私は笑い、私の目的がそれさえも越えた所にあるのだと知って更に笑う。
必要なものだけを集めた所で成り立たない。
不必要なものなど無いのだと云う様に、王に与えられる小さな狂気。小さな挫折。小さな不安。
それは、ウイルスによって蹂躙される前に耐性をつけるための抗体生成と良く似ている。
だが、その最初に与えられるごくごく弱い毒が、抗体を作る間もなく致命的に体を蝕んでしまう場合もあると云う事を認識していないのか?
そんな事はあり得ない、それ程小さな事だと思っているのか?
傷に具合など在るものか。
傷は傷だ、大きいも小さいも関係などない。
完璧である事を諦めた時から、傷が在る事を認めてしまった時から……かつて望んだ事と姿がかけ離れている事に気が付かないのか。
それとも、一つの傷くらいも克服出来ない王など必要ではない……という事なのか。
私の求める『完成』が近い。
どちらがより『完成』に近いかという答えは時期に分かる事だろう。
『分岐の帰還』
1月から10月 飛んで 12月
※ これは とある人の 誰かに向けた 日記です ※
※ 少なからず暗黒史です 本来公開必要な文章ではありません ※
※本編理解には支障はありませんので興味がある方のみご閲覧ください※
久しぶりに存在が認められた時、何も感じる事は無いと思い込んでいたが……苦笑と共に憎まれ口を叩いてしまった。
私の事など、どうでも良いのではなかったのかね、と。
同時に、私には良く理解出来る。
どうでも良い訳ではなかったという事を、だ。
我ながら巧妙な事をする。
終いに私は笑い、帰還した事を自らで祝福する。
いや?どうだろう。
『ゴミ箱』と認識される私の帰還は、祝福されるべき事なのか。
提供してやるとしようか。
卑しくも私の成してきた事の記録を。
先に言って置くが、以下の記録に幸せな結末や心安まる様な話は全く含まれていない。むしろ、不幸な出来事や悲惨な結末だけが羅列されているだけだろう。何しろ満足する結果をまだ何一つ、得られていないのだから。
しかし、他人が何と評価しようがそれは私には関係無く、これらの記録は有意義なものなものである。
私は、必要としたから淡々と記録した。
幸も不幸も関係はないのだ。
必要だ、その私の望みの前に他人の感情など何の意味もない。
だから、同時に他人の感情が私をどのように捌くのかも興味はないし、それに憤る事はしまい。
結果、私は屠られる事になったがまぁ、そんな事はどうでも良い事だし、私にとっては実に些細だ。
重要なのはこの記録が無事届けられる事。
ただ、それだけが私にとっては重要で、それが叶った今、もはや何も望む事などありはしない。
注意を喚起しよう。
以下はそんな私の、伝えるべく残された研究日記だ。
これを必要とする『私』以外が読んだ所で実に不快な気分になるだけであろう。恐らくそれが正常な人の感覚での真実。そして、私はその『正常』と言えるだろう感覚に訴えるべくこのように残虐とも言える研究日誌をここに残す。
万人がこれに付き合う必要は無い。
私にとって、この記録と付き合って貰いたいのはたった一人だ。そのたった一人のために残す記録である。
ゆえに、注意と警告をここに行う。
残虐な描写が苦手であるなら、ここより以下は読まぬ方がよい。
起った出来事の詳細など、そんなものは語らずとも物語は紡いでいける。時にそれが嘘であっても問題ではない。
間違っていたとしても、その時はその時で別の物語が生まれ出るに過ぎない事だ。
これだけ注意しても読みたいというのなら私はまた、そんな君の望みを止めはしまい。
望むは何にも勝る力だ。
私もまた、そんな力に魅入られた一人であるのだから。
□□□ □□□ □□□
=不死龍の月=
一日の日の長さが等しくなる、穏やかな月であるのになんとも物騒な名前も付いている。
不死、この世界に詭弁的にあって事実として存在しない絵空事。
ドラゴンは不死であるという間違った見聞を広めるに至ったドラゴン分類学は、書物としては優秀だが取り扱われ方に難があった。あれは、一般大衆に広めるべき知識ではなかったと、多くの識者が過去を批判する事となる。
多く、無意味なドラゴンの乱獲を後押しし、良く研究されもしないうちに絶滅、あるいは別種や亜種への変化によってドラゴンというかつてあった正式種族は消滅しようとしている。
ドラゴンが不死であったのか、と云う事は結局の所、乱獲絶滅の危機に瀕した事情によりよく分かっていない。
結局、不死だったろうという伝説だけを残して事実をうやむやに、幻のなかに消え行こうとしている。
ところが、大衆に認知されていない所で不死という事実は、意外な形をもって実証されている。
すなわちそれは、消滅の後に再び同じものが再生するという形でもって成される。
私は、これが限りなく不死に近い現象ではないかと着目し、研究を進める事とする。
決して死なない、という事が不死であるという一般的である認識は捨て去るべきだ。
それよりもふさわしい不死と呼ぶべき形式はあるのだ、と。
=巨角魚の月=
おもしろい事に、生物とは日に日に死と生を繰り返している。
そこら辺に落ちている石などとは違い、生物は一個体としてを形成しながらその中で古い部分を殺し、新しく同じ部分を作り出して再生し……その過程で成長をする。
一定の年月を過ぎると、肉体を構成する細胞が全て違うものに置き換わっている。生物を構成する最小単位とするのはおこがましいが、その概念に近しい『細胞』は、『細胞』が構成する生物の寿命よりも圧倒的に短い。
その過程、最終的に生物は死へと行きつく。
『細胞』の再生能力が無くなるのだ。細胞は死ぬ一方になり、最終的に細胞の群、その全体として括られる『生物』も生という活動を終えなければ行けなくなる。
生物としての一個体に刻まれている、定まっている死という終焉の運命。
物質はいずれ滅びる。時の推移と共に劣化し、かつてあった姿を忘れ去る。
それは、多くの経過のもとに蓄積された情報によって過去を覆い隠されてしまう事に似ており、実際そのようにしてかつてあった姿を忘れ去り、記憶の海の中に沈めてしまうのだろう。
その点、落ちている石も、一個体として群れを成すいかなる生命も同じだ。
等しく流れうる時間が、全ての運命の有無を裏付けている。
大いなる時に反逆する事は難しい。
だが、かつてあった記憶を留意する事はさほど難しい事ではない。異なった時間の流れに身を委ねるものに、別々に格納し、互いを補完しあえば良い事だ。
それにより完全に劣化を防げるという訳ではないが、かなりの時間を引き延ばす事は可能である。
この方法よってもたらす事の出来た延命は、不死などと云う名からはほど遠いだろうが、時間の流れを制する事が死という概念を打ち消すに必要である、という着眼は間違ってないと思われる。
さて、代替的価値の問題は良い。
まがい物でも不死、そしてそれに伴うであろうと夢想される副産物、不老という甘美な響きに魅了される者は多い。
自らで『それ』を追求する力がない替わり、彼らは見合う対価を支払う事で『それ』を手に入れようとする。
価値、すなわち金銭的な問題が無ければ私の研究も続かないとなれば、不老とは金銭的な価値に裏付けられる事となるのだろうか?
そして、それは無条件の金の額でもって評価される。
正直私は金に興味はないが、金がなければ研究が上手く立ちゆかないとなれば、その評価を批判する理由が無い。
転じて、これが必要とされている事だとははき違えない事だと自らに律するとしよう。
私は望んではいるが、決してそれは誰かの為ではないし、ましてや金の為ではない。
金を支払う者の為でもない。
例え支払う者が玉座に座るものだとしても、私の前では神も王も人も石ころも無価値であり、同時に等価だ。
価値が違うものがあるとすればそれは私自身であり、私に流れる血と言えるだろう。
彼らに向けては、適当な成果を出してやらねばならない。
自らの望みの前には、全ての事は必然なのだから。
=鷲天馬の月=
死んだものを生き返えらせる事は出来ない。
それは、真実の不死を実現させるのと等しく難しい事だ。
少なくともそれは私の専門ではなく、どちらかといえば他の者達がすでにいくばかの成果を出している研究である。
他人の畑を荒らすつもりはないし、それは私の望む所ではない。
しかし、死んだものを生き返らせろと私に云い募って来るのはどういう事か?
大凡検討はつく。
不死とは死そのものを生へ転換させた概念だと勘違いをしているのだろう。ようするに、対価を払う者は結局の所、私の仕事の内容をよく把握していないという事だろう。
まぁいいだろう、そう云う事もある。
理解され難い事は知っているし、説明するのに骨が折れる事も同じく。
理解していない者に理解などさせなくとも、物事を前に運ぶ事は出来る。
私の研究は不死であり、死人を甦らせる事ではない。
だがしかし、それと似たような事は出来なくもない。
死体となった男を生き返らせろ……ようするに同じようなものを作ればよいのだろう?
私にその様に命じた者の、正確な意図を理解すれば答えは出てくる。
死体の男が必要なのではない。
死体の男が立っていた場所に居るべき人物が必要なのだ。
そして、そういう人材はなかなか居ないもので、この死体の男以外に務まらないというのだろう。
ついでだからもっと便利なものを作って差し上げよう。
私はそのように約束をした。
金さえあれば材料の調達に手間取りはしない。
しかし、なるべく秘密にとなると少々やっかいだ。
世間一般的に、私のやっている事は理解されがたく、どちらかというと目を逸らされ、酷い惨いと非難されるという事は知っている。
世間というものを波風立てずにやって行くには、やはりなるべく事は隠密にという願いも理解出来る。
とすると、金は問題ないとして、やはり手間が掛かるか。
要するに時間だ。
思えば、私はそれを一番やっかいだとすでに認識して久しい訳だが……一応、在る程度を突破する手段は身につけている。
時間と対を成す事象は、法則的に空となっている。
成る程この認識は正しい。
時間という問題を解決するのは結局、空間だ。空間と空間を行き来する情報の伝達時間こそが問題で、空はこの時間の拡散を一定法則でもって妨げている。
時は空を自在にする事が出来ない。
ならばその理を曲げればよい。曲げうる場所がはっきりしていれば、魔法というのは効率がよくなるものなのだ。
魔法という、望みをねじ曲げる力は強大である。時に、偉大なる時と空の約束さえ突破する。
これで材料の調達が多少は容易くなったといえるだろう。
先立つものとして黄金は不可欠だがこれも心配は要らない。
良い材料は目星を付けていずれ手にはいるように、段取りを付けておけばいい。
=舞武虎の月=
時間の流れを曲げる事は望みの前に、可能だ。
ただ、世間一般的にはあまり良い事ではないし、技術や能力のいる事と言える。
材料を調達し、多くの検体を必要とする私の研究であるが、材料というのは有限ではない。
最終的な望みを叶える為に、周りの環境を整える事は必須となる。その為に余計な技術や研究をするハメになる事も、まぁ厭わない。
生物には、忌避しがたい死という運命が刻まれている。
上手くこれを取り払ってやればいいのではないかと長らく研究をしたのだが、よくよく調べると成る程死の運命とは生物にとって、必要な事なのだと把握する。
抑止力が無いとどこまでも拡張し、果てがない。果ての無いものが世界にあふれると飽和し、世界を破滅させる事に成りかねない。
まず、世界が無限ではないのだ。それを死という存在から間接的に予感する。
……残念ながら私も含めた生物の構造とは、死を前提とした設計となっているようだ。
後付け的に死を得たようである。そういえば、八精霊に基づく神話においてもそういう事になっていたのだったな……。
全てに終わりを定めたのは、物質世界が出来上がった後だと言われている。
そうしなければ世界にあふれる。種として破綻する事を生物は悟り、自ら寿命を得たのだという歴史を私は紐解く。
ようするに、変化する環境に対応する力を失うという事だ。
変化しないと云う事は、この変化する事が全てに置いて許されている世界に置いて致命的な弱点になりうる。
その為か、生物には再生する限界があり、その限界が訪れると死へと転落していく。
老化の始まりである。
かといってその限界を取り除いてしまうと、いつまでも同じ姿を繰り返すに過ぎず、存在として不死だとしても命として存在を残す事が不可能になる。
やはり、死と再生は切り離すべき事ではないのだろう。
種子によって、増やせる限界というものが存在する。
先に述べた、生物の再生の限界にも通じる問題だ。
それでも、最初の果実をもぎ取ってくる事よりは種を採取し、孵化させる事の方が容易い。
人為的に戦争や争いを起こし、実験体を確保する事と、こちらの実験で犠牲になる物資の比率が釣り合わない。
材料は有限ではない、という問題にも通じる。
そこで、強制的に検体を増やす方法を確立させる。
理論的には難しい事ではないが、一番に問題なのが時間……手間だ。ここでも時は私の邪魔をする。
時間を引き延ばす事が可能なら、少しばかり早送りする事も不可能ではない。だが、そのように急激に物質として肉体を育てた場合、当然とそれに付随するはずの経験は伴わない事となる。
そういう検体で構わない場合もあるが、事情から言うと経験は必要だ。ソレがなければ始まらない場合も多い。
出来れば、重い経験が必要だ。薄っぺらいものは要らない。そして晒される状況に合致したものであるほうが良い。
そして、その経験と肉体が一致していた方が良い場合もある。異なる器に異なる形のものを入れれば、不具合が起るのだという研究はそれなりに、別の方向で進んでいる事だ。
それによって多くの大切な検体が失われた訳だが、真実を開いて行く為ならば仕方がない犠牲だ。
多く、人は私の行いを理解する事はないだろう。
だからあまり公の場でこれらの研究をする訳にも行かない。
かつて昔、魔物が生物としての地位を確立していなかった頃。いくら殺しても賞賛はされども誰からも咎められる事は無い、という時代だあったという。
今となっては信じられない時代だが過去、確実にあったようだ。その時代が今に残す遺物が残っている。
その時代に置いて、魔物を切り刻む事を公然と行っていた一派があると云う。
多くの魔物を実験に使う為、任意の怪物を作り出してはそれに、多く魔物を狩り出させる。最終的には畏怖はされども尊敬はされなくなった一派だ。
おかげで魔物を多く切り裂いた事で得た多くの技術は失われ、禁忌として封印されてしまった。
私がやっているのはそれと同じ事だ。今は、何を切り裂いても罪に問われる可能性を危惧しなければならない。
だから、全ては秘密裡に行う必要が有る。秘密にやらせてくれる場所も限られている。
不老や不死という錬金術を行う対価として得た黄金の他に、秘密という重大な隠れ蓑も必要となって来た。
そして万が一暴かれた時には、迫りくる不都合な相手をねじ伏せる力を持った一団も。
=混沌獣の月=
私は切り札を手に入れている。
出来ればこの理論についても追求したい所であるが、今はそれを調べている場合ではない。
それよりも先に着手した課題があるだ。時間は既に引き延ばされている。焦る必要はない。
まずはそれを完成させてから研究したとしても遅くはないだろう。
しかし本当の事を言えば『完成』は夢のようなものだった。
……完成、そのような『終わり』があるのだろうかと疑っていたのだ、私は。
いや、全ての物事には終わりが必ずあると、理の上ではそうなっているが。果たして私が終わりだと思う、完成という終わりが本当に来るものかと……少し疑っていた。
もしその終わりが来ないのであれば、私の追い求める事は世界から許されていない。ただその一言で片が付く。それだけである。
だが、切り札を手に入れた今、それは現実身を帯びてきている。
可能なのだ。
これは、私が躓いた理論を全て可能にする。
まさか、このような切り札を手中に収める事が出来る事など、私の予測の内には無かった。それだけに驚いてもいる。幸運だ、運命も実力のうちだというのならまさしく、世界は私に私がもたらす可能性を許しているという事だろう。
予測に無いと言う事は、この力を知らなかったと云う事である。
いや……ほんの少しだけこの力の『噂』を聞いた事があった。それこそ、絵空事か誰かの戯言、伝説とかいう物語の一つだろうという『噂』で真実だとは思っていなかった。
世界には王と呼ばれるものがいる。
王、とは神と同じく機関の一つだ。群衆によって選ばれて贄とされるもの。そのかわり絶大な権力を誇る。
しかし王の姿は様々だ。王や神というのが個人を指す事ではなく、あくまで『機関』であるという理論上、それは当然の事ではあるが。
西方のシュラード王のような神々しい偶像である場合もあれば、邪悪の化身として蔑まれる北の主、北神の場合もある。
王という機関は人間にとって必ずしも都合の良い存在では無いという事だ。時に暴君である事もある。
そして、私が噂に聞いた王はまさしく暴君だ。
その王は、三つの世界のうちの一つの頂にいる王であるという。
実質的に三つの世界のうち、その暴君が収める世界が一番力を持っていると言えるだろう。
なぜなら、暴君が収めるのは精神の世界だからだ。物質世界や幽体世界に比べ、理論的に精神……すなわち意思、心というものの占める割合は大きい……と予測している。
多くの意思を持つ者が住む世界には、その数だけ精神の世界がある。
そして、精神や心とは、全ての理論を曲げてしまう事が出来る事になっている。
王が望むままにある世界。
そも、精神世界に自らを王と名乗る、意思のあるモノが玉座について良いものか?
思うに、本来その玉座に座るモノには『自らの意思』というものは与えられないはずである。
実際、本来そのようなものは持ちうるはずはなかったのだと云われる。それでも、意志を持ってしまったから暴君だと評価されるのだろう。
意志を持った王は退屈だった。
下手な事を望めば、そのように世界が歪む。もちろん、歪ませてめちゃくちゃにしても良かったのだ。我々には誰の所為でそのようになったのかなど、余りにも高見の事で解らないだろう。
ところが、意思を持った暴君は高見から低い所を見下ろしていた様だ。低い所に何か一つ、たった一つでも一つ以上でもいい。
壊してはいけないと思う何かがあったとしたら?
触れてはならないと慈しみ愛護するものがあったとするなら。
暴君は何も望む事はせず、世界がただままにある事だけを望むだろう。
自らの意思の元、歪む世界において、守るべきものを真の意味で守る為には干渉は許されない。
王は退屈だったろう。
だが、その退屈の中で、愛するものが世界に生きる事だけを黙って見守る事でその退屈を紛らわせたのかもしれない。
私が手に入れた切り札とは、その退屈な王によって統率された力であると言える。
そして、この強大な切り札は世界を変えるだろう。
変えるだけの力を持つ。使い方次第だ、勿論かの暴君程の力を私で齎すことは出来ない、得られたのは末端の、些細な力でしかない。
私がこれを手に入れて、世界を変える事が許されているとするなら……恐らく精神世界の王と呼ばれた者は。もはや玉座にいないのだろうな。
なぜなら、私が世界を変えてしまう事を世界の安寧を願ったであろう噂の王は、許しはしないのだろうから。
=環界龍の月=
隣国は貧しい所だ。
実際自らで足を運んでみると、目に写る景色としては決して貧しい所ではないように思えるかもしれない。
本来多くの可能性が秘められていて、努力した分報われる、無償の恵みに溢れた大地であるのだが……。
隣国の文化に毒された結果、豊かである事の意味をはき違えた者達が、貧しいと口々に言うようになってしまった……そこは、物質的にというよりは『精神的』に貧しい所である。
今、私の手の中にある黄金。
要するに金だ。代替的に流通する通貨というもの。合金であるからこの貨幣そのものにさほどの価値はない。後付け的に黄金と比較した価値を与えられている、これは悪魔の道具だ。
これに匹敵するものが辺りには溢れている。
今、私の目の前にあるものもそうである。
しかしこの貧しい隣国は、私の手の中にある悪魔たらしい黄金の輝きに目が眩み、それに匹敵する価値があるものに気が付いていない。
実際これから私は黄金を支払い、その等価たるものを得ようとしている。しかし実際の所これらのものはこれしきの黄金で得る事の叶わない、崇高なものだという事を私は知っている。
黄金に目の眩んだ者は、その価値に気が付いていないのだ。
どうやら黄金を欲する者にとって、私が求めるものの価値はずいぶんと低いようである。しかし、価値についてこの者らに諭してやる程私は暇ではない。
相手の示した価値で取引するのが最大の敬意になるのだろうと、私は手に黄金を携えてやってきた。
彼らは私がこれから得ようとしているものに、価値があるものだとは全く思っていないのだろう。
貧しいと訴える夫婦から、最も価値あるものを黄金で取引する。
そも、価値とは人それぞれであるのかも知れない。私にとっては魅力的でも、この夫婦にとってはそうではない。腐臭を放つゴミも同然という事だろう。
邪魔で棄てたがっている。だが……棄てる勇気もない。
あるいは迷っているのだろうか。
くだらない、邪魔だと思って棄てようと思っている癖に。
少しばかりの迷いの正体は……実にくだらない。
貧しいくせに、節操は無い。
違うな、本来この国の人々はここまで貧しくはなかったはずだ。貧しくさせたのは周りの、自分達は『比較して』豊かだと勘違いしている他の国だ。
10人にも増えた子供達を育てるに困るこの夫婦は、すっかり周辺国の毒に冒されてしまった。
容易い。
実に容易く堕落していく貧しい国に私は苦笑を漏らした。
私が何をしたのかを記そう。
隣国、国土の大半が森であるために実際には国として統率はされていないコウリーリスの南側に、マリアという町がある。
コウリーリスにおいて町と表記しても間違いではない、それなりの規模を誇る集落だ。
マリアは黒竜海や東方大陸につながる竜首半島ぞいにディアス国と隣接している。
ディアスは私が隠れ蓑にしている国だ。古い歴史を持ち、本来西方大陸の中央に座していた国なのだが、多くの戦乱の後に南東の島国に移動している。
歴史が古いだけに、考え方や統治の方法も古い。古い事が悪いと言っている訳ではない。ディアスは遥か昔に上等な統治の理論を作り上げているという事だ。だから一応、今も通用している。
マリアは、いつディアス国に切り取られてもおかしくはない町である。残念ながら交通の便が良いとは言えない事、またディアス国内で長らく身内の事情により混乱が合った事がマリアの植民地計画を大幅に遅らせ、頓挫させてしまった。
混乱は今だ収まっているとは云い難い。ディアス国はだいぶ昔から統治政権の派閥闘争が泥沼化しており、一旦統制は取れた時代もあるようだが……結局の所一度火の上がった所がくすぶり続けて今もじりじりと国のてっぺんを焦がしている状況である。
当然コウリーリス国への進出、植民地化計画は上手く進んでいない。これに反発する派閥があって、上手い事折り合いが付けられずにいるのだ。
上辺の事情など私には関係がない。関係を結ぶと面倒な事を知っている。
だから誰か、植民地化を推している政治家に荷担している訳ではない。それは先に言っておく。
政治とは距離を置き、その上で密かに国の方針を操作する事は容易い。私にはそれが容易く出来てしまう。
まがい物の不死や不老、一般的には不可能と思われる技術、その先にある情報などを黄金の価値によって『平等』に提供する私は、そうやって少しずつ動く事が無いと思い込んでいる少し大きな石をずらす様に、彼らの思惑を動かす事が出来る。
石の一つが少し動いた所でたいしたことはない、と彼らは思っているだろう。だが、そのように思っている石が大量にあったとするなら、それは大きな流れとなって世界の有様を変えるのだ。彼らはすっかり、自分が動く事に必死で、世界全体を見渡す事が出来ずにいる。
マリアの植民地化計画の第1段階として、現地の人々をどのように征服するか、という問題がある。
ディアス国は過去、西方で戦争に勝って国を統一した歴史を持つ国だ。当然武力制圧すべきだという考えが強い。
だが国が西方以外にも多く発展した今日、いつまでも戦争をしていると、世界各国情勢から仲間はずれにされる。武力制圧はしない方がよい……という派閥もある。
そも他国制圧など辞めた方がいいという超穏健派もいる。
収拾がつかない訳である。
私ならば……こうするだろう。
商家の一つに、マリアへの商業指導をさせるのだ。
ディアスの最大商家と名高いフィナル家が、海を隔てて近いコウリーリス国の一つザイールに農業指導をして成功を収めている。ちなみに、フィナル家は政治家ではないが政治に多大な影響力を持つ……俗に言えば超穏健派でもある。
対し私が白羽の矢を立てたロダナム家はこの、フィナル家に尻尾を振りつつも対抗意識を燃やしている商家の一つだ。
感情を弄んでやる事で実に簡単に、ロダナム家は私の傀儡となってくれた。
私の提案通りにマリアでの商業指導を行い、ロダナム家は今私の思惑通に成功を収めた。
マリアには今、オピウムの花が咲き乱れる畑が多く広がっているだろう。
勿論花を咲かせるだけなら私の技術提供はいらない。私がロダナム家に提供した技術は、多く医療薬品として貴重である物質、モルヒネとヘロインの生成方法だ。
この物質の生産までをマリアでやらせている。なぜなら、ディアスの上流階級で鎮静効果のあるこの薬が流行の兆しを見せていて、少なからず問題視されて警戒されているからだ。
当然、その流布については私の手引きがある。
常習性がある事など知っている。知っているから流布させているのだ。今やロダナム家の名前でもってディアス上流階級に知れ渡っているこの薬は、多くの中毒者を抱えている。ロダナム家は薬を密売する事で多くの政治家を手中に収める事が出来るだろう。
さて、しかし私の狙いはディアスの崩壊ではない。マリアで大規模な生産を始めたとは言え、ロダナム薬は高値だ。ディアスで密売をするにしても、正規ルートでマリアからディアスに輸出するにしても……全てはディアスで買い取れないだろう。政府でさらにこれを各国に売りさばく技量がディアスにはない。その仕事は、商人らにまかせっきりだから、各国に売りさばく所までロダナム家が請け負う必要がある。
先にも言った通り政府としては、これを危険視し始めているので輸入を控えているはずだ。
するとどうなるかというと、マリアに今までになかった多額の黄金が渡り、それと同時にロダナム薬の在庫がディアス国の上流の嗜みとして流出し始める。結局の所、裏で物資と金が動くからだ。
そも、コウリーリス国は他国と活発な商売をしている国ではない。指導してやらなければ売買ルートなど上手い事作れない。
ロダナム家はフィナルに比べて商家としての手腕は上等とは言い難い。私腹や欲を満たす事を優先する結果、マリアの発展までは頭が回らない……だが、それでいい。
ディアス国は一つ重大な問題に直面している。
国内需要に対し国内生産が間に合わず、輸入と輸出の精算が合致していないのである。
フィナル家がここの所、何とか支えている状況でおかげでディアス国は穏健派フィナルに頭が上がらない……という状況にあるわけだ。
ロダナム家の躍進は、この状況に変化をもたらすだろう。
まぁ、その変化については私はどうでもいい。
とりあえずマリアが廃れてくれればいいのだ。戦争を起こしにくい現状、戦争以外で『材料』を調達するには、途上地域の植民地化が最も手っ取り早い。
戦争などしなくても、反抗の意思を取り除く方法などいくらでもある。
マリアがディアス国によって支配されてしまうのは時間の問題だろう。
=陽獅子の月=
黄金の突然の流入や、文化の急速な発展はその土地に格差を与える。
貧困な層と、裕福な層に二分化するのだ。
私はその様に町の様子をすっかり変化させた上で、黄金を携えて搾取にやってきた。
そう、私は裕福と呼ばれる方である。
そして、今目の前にあるのは貧困な方。
喰うに困り、黄金に目が眩み、10人もの子供を設けてしまったこの家族はついに、子供を売り払う事を決めた。
もっとも、子供というのが『売れる』という知識をまず与えてやらなければいけないのだが。
それが罪な事だという認識を真っ先に奪っておく事で、容易く彼らは子供を売るようになる。
いや、多少の罪悪感はあるのだろう。
罪悪感があるから子供を棄てるのではなく、売るのだ。
しかし呆れた事に、10人引き取りに行って蓋を開ければ、内3人が乳飲み子で幼児が3人。言葉を話せる年齢の者がたったの4人だ。内、在る程度知能も発達して働けるであろう人物は二人である。あとは年齢的に幼すぎる。
私は、背後で卑しくすり手を使う夫婦に苦笑する。
成る程、恐らくこの夫婦の子供は数人か、あるいは夫婦に子供などそもそもいなかった可能性が高い。10人とは無節操なとは思ったが、働き手を作る為に子供を多く設ける貧困層も少なくない。
しかし、これはちがう。
地下に閉じこめられているこの子供達は、最初から売る為に集められたものだ。
私に売る為に、二束三文で買い叩き集めた……といった所か。
全員引き取ってやっても良いのだが、乳飲み子というのはどうにも困る。正直に言えば飽和しているから不要だ。
エサくらいにしかならない。育てる手間を掛けている程私はひまではない。
呆れたついでに、手間減らしとしようか。
約束はしたので、最初に話を付けた黄金を支払い……私は、夫婦に告げた。
10人は要らない。
一人でよい、と。
貰うものさえ貰えればどうでも良いのだろう、その条件でも問題はないようだ。恐らく、人買いは他にもいると思っているのだろう。
残念ながら人の売買というのは世界的に見れば余りよい文化とは言い難く、活発なものではない。この途上国では、そのような現状さえ知らないのだからしかたがない。
西方ではすっかり奴隷という制度は廃れている。廃れてはいるが裏では横行している。奴隷と等しい労働者でも人権は一応認められている時代であるにも関わらず、だ。
南方には奴隷需要は端から無い。
魔物という最底辺だった生命を等価なものに引き上げた発祥の地において、そのような文化があるはずがないか。
もう一つの東国、ペランストラメールと山脈グランドラインで隔たっていなければマリアにも、人買い集団も現れるだろうが……それも望めない。
ディアスでは労働力として奴隷はいるが、その多くはペランから運ばれてきている。ペランストラメールと隣り合っていながら地形的に行き来のないマリアからは、あまり奴隷人材の流出は無い。そも、子供が売れるという知恵とて最近知っただろうしな。
地下に閉じこめられていたやつれた子供達を見回して、さて。どれにすべきか。……決まっている。
私からは指を指す事はしない。指など指さなくとも、状況と条件を話してやれば誰が名乗りを上げるのかは決まっている。
君達の『ご両親』は君達を養うお金が無くて困っているらしい。そこで私がお金を上げる事にしたんだ。その代わり君達の内一人を、私が引き取る事になった。
その様な事を適当に話した所で、その言葉の意味を理解出来るものは限られている。
私はあえて彼らに選ばせる。はたして誰を差し出すべきか、を。
またそうする事で退路を塞ぐべきだ。
彼は私に選ばれたのではなく、自らで選んで私の手を取らなければいけない。
そうする事で最良の『材料』と成るのだ。
一人決意を固めてこちらを睨み返してくるのを見いだす。
自分が選ばれる事によって、この惨めな状況を『家族は』脱出できるのだと理解した一人だ。
家族か、果たしてあの呆れた夫婦にそのようなものを作るつもりがあるかどうか……。
私は年長者の一人を地下から引き上げた。
緊張に強ばる青年を引き連れての帰路、私は青年に悟られない様に笑った。
夫婦に支払った黄金は実際には、二人分なのだ。
一人は今引き取った。だがもう一人は、もう少し成熟を必要とする。
後に引き取りに来るとしよう。
あの場に残すべきは、自ら贄となる事で他を救おうとする小賢しい知恵や勇気ではない。だから今、それは引き抜いてきた。
原石を磨き余計なものを研ぎ落とすに必要なもの……飢え、絶望、嫉妬、愛、あるいは狂気。
それを免れるのは残された者達で、それを被るのは自分だと信じている年長者の青年。彼を一人連れて、私は自分の研究所に戻ってくる。
逆転した価値に、毒されている事を彼らは知らない。
ディアス国の者達は割と皆そうだ。
不幸なのは常に自分だと思っている。そして不幸なのは、幸せな者達の所為だと思いこんでいていつも不幸自慢をしている。
不幸である事がまるで誇るべき事であるように悲嘆を語り、悲劇に涙し、悲壮に寄り添おうとする。
もはやここまで来ると喜劇だ。
青年は必死に、私が命じた事に従うだろう。自らで背負ったと思いこんで反抗心を殺すだろう。
自分というものを踏みにじる事こそが自らへの救いだと思いこんでいる。
見事に私の望んだ材料と成りはてた。
哀れな青年。
自分は幸せになってはいけないのだと、そう信じているのだ。
だから何の解決もしようとはしない。
ただ晒される出来事に堪え忍び、嵐が去る事だけを待つ。
自分は何かを得ようとしてはいけないと、信じているのだろう。
=一角獣の月=
ところで、私は一度失敗を犯している。
それに挫折して膝を折るのは早い。失敗を糧に、望むものを得るべく研究を続けなければいけない。
彼の……マリアから連れてきた青年の名前は何と言ったか?
失われるのであればそれさえも必要ではないと、彼は名前を名乗らなかったのかも知れない。まぁ、私はそんなものに興味はないのでどうでもいい。材料の固有名詞など必要だろうか?
栄養失調の体にたっぷり栄養をとらせ、基礎体力を整えさせた所で……かつて失敗した実験の続きを行うとしよう。
昔……この研究実験はかなり良い所まで行ったのだ。しかし主な材料に問題があって基本的な所で躓き、最終的には失敗に終わった。
結果私は打ちのめされた訳だ。非常に基本的な事だっただけに少なからずこの失敗を悔いた。
死体を生き返らせる事は出来ない。
当然の理だ。こればかりは未だに誰もが成し得ていない。
……いつまでも失敗に悔いている場合ではない……前向きに考え直す必要がある。
死体となり終焉を迎えたものを、再び物質的に再生する事は可能だ。
私に限らず、魔導師達の正式研究でも実現した事が公にされている。もっとも、そうした所で死んだ者が生き返る訳ではない。既に何度も言った通りだ。
物質的に再生した所で、そこに同じ精神や同じ幽体が宿る訳ではない……という事情による事だ。同じ物質を再生しても、同じ人格と同じ幽体を宿す事になるとは限らない。
生命を人工的に作り出す事は難しい事ではない。それは。ずっと昔に実証されている。
難しくはない。生物の営みとして『人工的』に子を成す事に何か難し作法がいるだろうか?人は、相手をきっちり選んで子供を作る事が出来る。
その理論が母親の腹の中か、試験管の中かで何か違いがあるだろうか?違いがあるとすれば生まれという経歴、記録の差だけだ。
かつてあった名前を失い、姿を失い、経歴さえ失う。
青年の顔をそぎ落とし、再生した死体の男から顔をはぎ取って貼り付ける。これは難しい事ではない。
禁じられてはいるが、三界接合と呼ばれる半魔法理論を使えば、異なるものを接続させる事も容易い。そのように青年を調整出来るならば尚のこと、である。
慎重に拒絶反応などを警戒しながら、肉体の外観をはぎ取り、付け替えて行く。
この術式は青年にとって相当に辛かっただろう、痛みなどを失わせる薬品を使ったとしても、多くの検体が精神的な悲痛の叫びの内に止めてくれと訴える術だ。
それに泣き言一つ言わなかったのは褒めてやっていいものか。そこまでして残した兄弟や家族の為に自らを捧げようと言う精神には正直……問題が残る。
いずれ正しい事は教えてやらなければいけない。
その時、全ての痛みを堪え忍んだ彼の精神はどこまでを許容範囲とするだろう。
私に黄金を握らせ、死者を生き返らせよと命じたものに……。
詭弁的に作り上げた生きる屍をを捧げよう。
理論的には死者を蘇らせた訳ではない。
死者と同じ肉体を持つ者を再生させ、死者の背負っている経歴を背負わせ、死者の持つべき精神を宛ったにすぎない。
しかしこの結果に大いに満足はしてくれたようだ。
そう、必要なのは死者の男ではなく。
死体となった男が立っていた場所に居るべき人物だ。
死者の名前はアービス・G。
青年は今をもってディアス国四方騎士、異端編成、北魔槍の団長アービスとして生きる事になる。
実験は上手く行ったな。
なるほど、この手法は場合によっては『使える』。
かつての失敗を挽回するも不可能ではない。
完成の為の手段として、頭の隅にしっかりと留めておくとしよう。
=翼有蛇の月=
とじこめられてみっかめになる。
兄さんがいなくなってみっかめだ。
なきつづけていたやつらがしずかになった。
兄さんだけそとにいった、ずるいよとか。そのうちもどってきてくれるよとか。そんなことをおしゃべりするのにももうあきた。
今、くちをひらけばみんなおなかへった、のどがかわいたとしか言わない。
ぼくは兄さんに、みんなをよろしくっていわれたんだ。
ぼくがみんなをまもるんだぞって、兄さんはぼくに言ってでていったんだ。
だから、うまくできるかわからなかったけど、兄さんのまねをしてみることにしたんだ。
兄さんはつかまえるのがとくいなんだ。
おなかがへったとき、よくわなにかかったのをうまくさばいてたべさせてくれた。
でも、このへやにいるのはねずみくらい。それでもおなかがへっているからみんなでひっしになってつかまえたんだよ。
ぼくは兄さんからもらったナイフでねずみのおなかをさいて、小さなおにくをはいで弟や妹にあげた。ゆびのさきに小さくのっかった欠片を、ぼくの指ごとたべちゃうんじゃないかってくらいのいきおいでむしゃぶりつかれた。
ぼくは かわ や ないぞう をくちにいれてみたけど、とってもまずかった。
兄さんはないぞうはほとんどたべずにすてちゃっていたけど、まずいからなんだろうなと思った。
それからねずみを数匹つかまえたけど、ぜんぜんたりないんだ。そのうちに、ずっとないていた奴がしずかになったのに妹がきがついて足をひっぱってもってきたんだ。
ちからがないかんじは、兄さんがつかまえて足をもってぶらさがっていたうさぎさんみたいだった。
ぼくはないていた奴のおなかを、兄さんがうさぎさんのおなかを裂くのをまねて開いてみて、ぷっくりふくれあがっていたところからひもみたいなものをかきだした。
そのおなかの中にたまったちはなまぐさかったけど、のどがからからだったぼくらは、それをこぼさないようにちゅういしながらのんだ。
そのあと、てとかあしをナイフでさきながらみんなでたべたよ。ねずみよりもおいしかったんだ。
ぼくは兄さんがいつもそうしてくれるように弟や妹にあげるのをゆうせんして、さいごにのこったものをたべたんだ。
ないぞうはどれも苦くておいしくなかった。
だけど一つたべやすいのがあったから、ぼくはしばらくこれをたべて、みんなにはお肉の部分をたべさせてあげようと思った。
うるさいやつがしずかになったのを、ぼくはじゅんばんにさばいてやった。
そのうちにたべるものがなくなってしまったけど、その時はしずかにしてやればいいのだってわかったんだ。
でもそうしたら、こんどはうるさいやつもみんないなくなってしまったんだ。
たべるものがない、お外にも出れない。
兄さん……兄さん、いつもどってくるのかな。
……おなかへった。
=守護竜の月=
原石が輝きを伴った頃合いを見て、引き取りに行った。
その家はすっかり外側から蓋がされていて、数ヶ月放置されただけだというのにすっかり、森の緑の中に埋もれている。
私が訪れたのが夏で、今は秋の終わり。
このまま冬を越す事は無い。その時は原石も、ともした光を失いただの石、あるいはそれ以下となって転がっているだけになる。
あの夫婦は早々とこの場所に見切りを付け、どこかに行ったのだろう。
棄てたのだ……この家もろとも。欲を出さずに居た事は褒めてやってもいいかもしれない。最も、上手く買い手がつかなかっただろうから、こうなる事くらいは予測していた。
いや、むしろこうでなくては困る。
夫婦達のその後の足取りに興味はない。
それよりも……恐らくここに残したままにしただろう原石だ。
執拗な程、その大きくはない小屋の入り口という入り口、窓、それらに板がされて塞がれている。地下室にある僅かな窓は前から板で塞がれていたが、そこは更に厳重に塞がれていた。そして、それらが緑色の草を半分枯らせた執拗な蔓植物のなかに埋もれている。
私は扉を乱暴にこじ開け、薄暗い小屋の中に足を進める。
地下への入り口の上に古い家具や椅子、板の残りなどを積み上げて完全に塞いでいる様子に目を細めた。
案の定、あの夫婦はこの地下にあるものの価値を理解していない。
逆だ、むしろ価値ではなく、恐ろしいものとしてこのように封印するに至った。
そんなに恐ろしいのであれば殺してしまえばいいというのに。棄てる事は出来ても自らの手を汚す事は出来ない。
愚かな事だ。自らの事だけを考え、他人の苦しみを鑑みない。
子供らの死に安寧を祈る事が出来ないから放置して逃げるのだろう。そのように弔わない場合、死体は死霊化する事がある。自ら手を下す事で、死霊と縁を結ぶ事を恐れた結果だ。
放置してこの場を逃げ出す事で彼らは安息を手に入れたつもりだろう。
恐らく……地下に閉じこめられたままの9人の子供は、長らく強請って叫び続けたのだろうな。
手に入れた黄金を、夫婦は無価値だと決めつけて居るものに使うつもりはなかったのだろう。集められた子供達を育てるつもりなどさらさら無いと言う事だ。
乳飲み子、言葉を喋れぬ幼児、意味もなく言葉を発する者、辛うじて兄の話の聞ける者。
そして唯一立場や状況を解っていた兄。
だが、その中で最も年長者であっただろう知恵者の青年は数ヶ月前、私が引き抜いておいた。
今は名前も姿も経歴も捨て去って、アービスという名前の重鎧を着た団長を演じている。
家族が、兄弟が。
このように無惨に崩壊している事などつゆも知らずにな。
私は瓦礫を難儀して取り除きながら、この事をアービスに話してやるべきか……今は出来ないとして、いつ話してやろうか。そんな段取りを考えてみる。
永久に口を閉ざしているつもりはない。私は、アービスがあれで『完成』しているとは考えていない。『完成』させるにはもう少し手を加えてやらなければいけない。
私の目指す『完成』への段取りを組む事に没頭し、肉体労働の辛さを追いやる。
ようやく見えてきた地下への扉を用心深く開けると……すでに漂ってきていた腐敗臭が一段と鼻に付く。
暗闇の中に降りていき、私はその中でか細い声を聞いて素直に微笑んだ。
いる、ここに……私の望んだ原石が確かに息づいている。
=地知犬の月=
機密事項により閲覧禁止
=狂戦士の月=
約束をする事は容易い。
容易くはないのは、その約束を守る事、あるいは破る事だ。
帰還を果たした私は、一つ約束を破って酷い目にあっている。だがそれは約束をして、それを守る努力を怠った結果であるのだから恨みはしない。
当然の結果として受け入れる用意がある。
そして、そこまでして破らなければならない約束だったとも言える。
望む事は何よりも勝る。
必要だ、その望みを私は理解している。
その為に今また、易い約束をするとしよう。
「子守をして貰いたいのだ」
私は、育成に困った少年を預けられる者を見いだしそのように願い出た。
「なんでそれを俺に頼むのか、よくわかんねぇな。そも、お前は俺にちょっかいを出してぶっ飛ばされたじゃねぇか。懲りねぇ奴だよ」
呆れたような声が天上から返ってくる。
「よもやまた手を出すとは思わないだろう」
私はそのように答え、暗闇の天井に居るものを見上げる。
「私の望みが何であるか、それは前にも言ったはずだ」
「どうだろうな、お前の言ってる事は確かに理に適ってるんだろうが、それの一つとして俺が必要だって言う理屈には頭を捻るぜ?」
「誇っても良いのだと言ったはずだ、お前は私が選んだ人格者。必要な者だ。その証拠に、その不安定な存在ながらも揺らぎ無く精神を保っている。その、強き心が必要だ」
暗闇の中でそれは笑う。
決して私が言っている事を真に受けて嬉しい笑みを零しているのではないのだ。慎重に、私の言っている言葉の深意を汲み取ろうと隙を伺っている。
「残念だが、お前の望みはそれとして、俺の望みも昔と変わりはしねぇんだ。一度失敗しているお前にもう一度任せる程俺は、間抜けじゃねぇんだよ」
「勿論だ、同じ事を二度やろうとは思わんよ」
私はそのようにすぐに反論し、少し焦らすようにこちらの表情を隠す。
「そもそも、あれは存在として破綻している。お前にふさわしいとは言えない」
「完璧を望むつもりは無いとも、前に言ったはずだ」
連れない声に、私は論点をずらすべく顔を上げる。
「死んだものを返す事は出来ない。だが、死んだものから同じものを再生する事は可能だ」
「………それすらも不可能な程に破綻している、と説明されたと思ったがな」
頭の良い奴だ。こちらも油断をするつもりはない。
私は天井に潜むそれを私は、下に見ている訳ではない。そのように下げずんだ途端、掌を返すような聡い人格者であることを私は知っている。
「もちろんだ、完全に同じ、という訳にはいかない。だが限りなく近いものは再生出来た……とするなら?どうする?」
「くくく……どうする?だと?それを答える前にそのからくりを説明してもらおうか」
「ウリッグ」
私はため息混じりにその名前を呼ぶ。
「これは取引だ、それを忘れるな」
「互いに不当な、利害の一致する……か。おもしろい、話してみろよゴミ箱野郎」
挑発に乗る程私は軽率ではない。
だが、自分で認識している分にはどうでもいいが他人からゴミ箱と呼ばれる事は決して気分が良い事ではないと認識する。
お前は頭はよいし知恵も回るが、少しばかり小賢しい。
=鬼子母の月=
結局、叶えられる事の出来る不死とは、人為的な工作を必要とするもので作品として、独立させる事が難しい。
技法が失われればその時、不死も途端に立ちゆかなくなる。
私が目指したのはそんなものではない。
だが完璧を求める事は愚かしい事だと、少なからず私はその結果に満足し、ならばその仕組も含めて望むものを組み立てればよいのだと結論づけたようだ。
悪くはない。
その小さな諦めこそが私に付け入る隙を与えてくれる。
そろそろ感づかれたようだ。
この私が、こそこそと画策する事の真意について。
だが私に振られた役割とはこういう事で、私はその様にして自らの存在を世界に問いかけているのだろうという事は知っている。
私を使って試しているのだ。
それは私の抱えるとても小さな迷い、躊躇い、不安。
そういうものは必要ではないと、棄てられたのが『私』である。私はゴミ箱であり、ゴミ溜なのだ。
そうやって棄てたものさえ拾い上げて私は世界の中で、何が出来るのかという事を試しているのだろう。
私から言わせれば愚かな事をやっている。
要らないのならば棄ててしまえば良かったというのに。それさえも出来ず、結局拾い上げて懐にしまい込まなければいけない。それが恐らく、私も含めて人の愚かな部分だろう。
その愚かしい部分を克服しようとしているのではなかったのか?と私は笑い、私の目的がそれさえも越えた所にあるのだと知って更に笑う。
必要なものだけを集めた所で成り立たない。
不必要なものなど無いのだと云う様に、王に与えられる小さな狂気。小さな挫折。小さな不安。
それは、ウイルスによって蹂躙される前に耐性をつけるための抗体生成と良く似ている。
だが、その最初に与えられるごくごく弱い毒が、抗体を作る間もなく致命的に体を蝕んでしまう場合もあると云う事を認識していないのか?
そんな事はあり得ない、それ程小さな事だと思っているのか?
傷に具合など在るものか。
傷は傷だ、大きいも小さいも関係などない。
完璧である事を諦めた時から、傷が在る事を認めてしまった時から……かつて望んだ事と姿がかけ離れている事に気が付かないのか。
それとも、一つの傷くらいも克服出来ない王など必要ではない……という事なのか。
私の求める『完成』が近い。
どちらがより『完成』に近いかという答えは時期に分かる事だろう。
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