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9章  隔たる轍    『世界の成り立つ理』

書の8後半 蒐集癖『そして、これも愛』

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■書の8後半■ 蒐集癖 Exceptional Mania

 半分を火山、半分を森で占める南の果てにある死の国。空の上から見ると、存外小さなものだ。レッド曰く、この小さな島を中心として激しい気流が渦巻いており、外あるいは中からの出入りを阻害しているらしい。
 構築したのが溶岩なのに、ペレーの背中の上は別に灼熱の地獄という訳ではなかった。
 ペレストロイカ、再構築だとレッドが呟いていたな。俺達は彼女の大きな背中に乗って上空から小さな島国を見ている。

 死の国とされる閉ざされた島、周りは真っ赤な海だ。
 その異様な海が少しだけ南の本大陸の端に到達している。俺達がたどり着いた岸はあそこだろう。
 上空にはレッドの言った通り、激しい上昇気流が吹き荒れていた。それらにびくともしない巨大な鳥の背中に俺達はのっかっているがこれは、簡単じゃねぇぞ。吹きっ晒しじゃ呼吸さえままならないし、当然吹き付ける風も半端無い。気圧を保つ保護魔法をナッツが展開してくれなきゃとっくに俺ら、吹き飛ばされているだろう。俺達がそういう手段を講じてちゃんと背中に収まる事を、ペレーは承知していたと言う事だね、とナッツが言った。

 もしかすれば、ノーデライの語りに触発されて彼女もまた、思い出したのかもしれません……と、レッドが俺達に耳打ちした。
 そうして彼女は死国で行うべき正しい再構築をしたのだろう。
 陥った、人の姿から本来の姿まで、経験値を正常値に取り戻したのかもしれない。

 赤い海と青い海の堺で、もの凄い勢いで嵐の雲が形成されていくのが遠く、見えるな。
 この赤い海と死国は、発達する積乱雲のただ中にあるようだ。おお、それどこの天空都市。
「そっか、あたし空中散歩で少しだけ、上空を飛びすぎたのね」
 アインが納得してため息を漏らした。
「ええ、それで上空の嵐に捕まって東の方まで吹き飛ばされたのだと思います」
「そっかぁ、そうだったんだ」
 逆にレッドはそのようにアインがペランストラメールまで来ただろう『理屈』はさっさと把握してやがったようだ。だからこそ逆の理論を構築し、俺達は死の国に上陸したのだ。
 風の吹く方向を逆にする魔法を使って嵐を相殺して穴を開け、とっても乱暴に……パーティーがバラバラになるのを承知で死の大陸に入ったって訳。

 それはともかくペレーは一旦空高く舞い上がった後、急激な角度で再び下降し始めた。

「どうしたよ!」
 急な動きに振り落とされそうになりながら俺は怒鳴る。
「………急いだだけ!」
 少し間をおいてペレーは叫び返してきた。
 もの凄い勢いで地上が迫ってくる。
 赤い海と、僅かにある島の砂浜に人影があるのが見えてくる。数人だ、って事はあれはランドールパーティか?急激に迫ってくる俺達の姿を一人が、気が付いて顔を上げた。
 それ程長い時じゃない。
 顔を上げた黒髪の男がにやりと笑って剣を構えたのが見えて、俺はペレーに向かって叫ぶ。
「気を付けろ、奴は……!」
 攻撃してくると忠告する前に、見えない斬撃がペレストロイカの右の翼をへし折っていた。
 バランスが崩れる……が、そもそもペレーは落下する速度で地上を目指していたらしい、降下速度は変わら無い。しかし間違いなく、方向転換やら上昇やらは見込めない状況になった。それでもなんとかペレーは地に激突する前に燕が翻る要領で、天に向かって再上昇、その後緩やかに滑降、旋回。
 片方の翼でペレストロイカは姿勢を立て直した、いや……すでに四散して存在しない右の翼を補う様に、何かの膜が張ってあるのが空気抵抗に薄っすら見える。
「ペレーちゃん!」
「大丈夫、問題ないわ……ここは死の国だもの。あなた達はともかくあたしは平気」
 レッドを振り返る、珍しく手を差し出し交差させて魔法を行使しているのが分かるモーションをしていた。奴は上級魔導師らしく魔法行使を最低限の動きで行うから、こういうハデな動作をする事が稀だ。それくらい、咄嗟に魔導式とやらを構築して行使したと云う事だろう。
「持つのかレッド!」
「いえ、無理です、急ごしらえ過ぎる」
 ゆるやかに落下しながら、長い首を回してペレーは……笑ったように見える。だが鳥だからな、表情在るのかどうか微妙だけど。いつもの俺の錯覚だろうか。
「どうせまたすぐに生まれ変わるわ。この島のどこかで」
「俺達は平気じゃねぇぞ!?」
 乗り物全般が苦手なテリーはたった数分ですでに顔が青い。精神的余裕がないのか珍しく怒鳴って言い返している。
「分かってるわよ、大丈夫。ちゃんと届けてあげるわ」
「でも、ペレーちゃん!どうして攻撃受けたの?避けれなかったの?」
「アイン、あたしはね。死ぬは怖くないのよ」
 地面に激突するまでの短い間にペレーは言った。
「ただ……死んでもすぐに生き返る。それがとっても嫌なだけ」

 そう言って、ペレーは自分を下敷きにして砂浜へ滑り落ちた。激しく砂を巻き上げながら赤い海へ突っ込んでいく。
 俺達は彼女の背中にしがみつき振り落とされないようにするのに必死だ。衝撃が消えた時……彼女を犠牲にして無事砂浜に降り立ったことを理解する。
 俺は目を開け、巨大な鳥が沈黙して海の際に横たわっているのを目の当たりにしていた。
 取り巻く赤い海。
 それが、まるで彼女の流した血のように錯覚してしまって……。
「ペレーちゃん!」
 赤い海に沈んだ首にアインが必死に呼びかけている。
「ペレーちゃんってば!」
「……大丈夫、またすぐに……ちょっと……嫌なだけで……。アイン」
 海に沈んだ首がか細く囁いた。
「またね」
 アインが今にも海の中に飛び込みそうな勢いなので、嫌がるの知ってて俺は彼女の尻尾を掴んだ。
 頭の中では分かってるんだろう。死の国で生まれた彼女は彼女の言う通り、死んだ所ですぐにもどこかで生まれ出るという事は頭では分かっている。それでも……ノイの時もそうだけど。
 それを簡単に受け入れる事なんてできねぇんだ。
「……ねぇアイン」
 ペレーは最後に小さく呟いた。
「貴方、外に行くんでしょ」
 アインは、少し迷ってから俺達を振り返り……小さく肯定して頷いた。
「なら……あたし、貴方とお外で会えたら素敵だと思うわ」
 ふっと足下が固くなる。柔らかい鳥の産毛は失われ、見る間にごつごつした岩に変わっていくに合わせ……ペレーの体が海の中に沈み込んでいくので俺達は慌てて、尻尾の所から砂地に上陸する。
 嫌がるアインをテリーと二人がかりで引きずり下ろす。
「その時は……まぁ、好きじゃないけど。どうせまたパスと一緒よ。あたし達腐れ縁なんだもの。でもその時……貴方の事。憶えていないかも知れない」

 それでもあたし達だと思ったら。

 言葉は赤い海の中に消え入った。最後まで聞き取れなかった言葉の続きはそれぞれ、心の中で補えばいい。
 十分だ、お前の言葉は俺達に十分に伝わったよ。

 俺は今だ暴れるアインをテリーに任せ、静かに赤い海の際に立っている男を振り返る。
「分かんねぇな、どうしていきなり攻撃しやがった?」
 今だ剣を抜き身のまま、男は俺を見下して答える。
「決まっている、貴様の事が嫌いだからだ」
 好き嫌いで采配するのか。そうかそうか、幼稚だな貴様と言いたい所なのだが……。
 昔、俺も似たような事をした憶えが在る手前、強くは言い返せない。

 所詮全ての動機は好きか嫌いか。

 そのどちらかに集約されるというのなら……その根本にある愛という概念は迷惑千万だよな。いや、愛が下らんと言う訳ではない。
 俺もまた、愛という理屈で生きていると言えばその通りだと思う。
 いろんな意味で、愛ってのはスゲェ。
 凄まじい。

「どうせ貴様らも俺の邪魔をするんだろう」
 静かに剣を構える、目の前の男。
 ランドール・A。
 俺は前を警戒しながら辺りの様子を伺う。
 いきなりこの場に乱入した訳だからここで何が行われていたのか当然、俺は把握していない。
 なぜ、こういう状況になっちまったのか。
 まったり推理するヒマがあるならそうしたい所だが、目の前のランドールを見ているだけでそのヒマがないのは分かる。
 理由か?

 奴の頭上に赤い旗が付いちゃってるからだ。

 とはいえ、その事実を把握出来るのは俺達青旗プレイヤーに限られる。ランドールを取り巻いている奴の連れ達は、奴が今がどういう状況に陥っているのか状況が上手く把握出来てないはずである。
 奴の頭上に、魔王八逆星達が付けてるのと同じ赤い旗があるのが見えないのだから……どういう状態に陥りつつあるのか、という事を把握出来るはずがない。
 いやまず、その前に。
 例え見えたとしてもだ。

 把握したくないという感情での拒絶があるかもしれない。

 俺は、慎重に右手を剣の柄に掛けた。
 赤旗が見えるったって、それを理由に奴に斬りかかっていっていい訳ではない。見えるのは俺達のプレイヤーとしての都合だ。赤い旗はバグだってのも同じく。
 それが付いているのが重要なのではなく、なんで付いちまったかというのが重要なんである。
 慎重に辺りの様子を確認しよう……重鎧の、マースが倒れている。
 傷の具合はここからでは分からない。それにリオさんが付き添っている……ん?あれ?もう一人誰か倒れているように見えるが……ここからでは俺の視力では確認できないな。
 そのすぐ手前でアービスが剣を構えてランドールに対峙していて……その脇で、テニーさんが剣の柄に手を当てたまま何やら迷っているのが分かる。
 その背後に尻餅をついたまま呆然としているワイズ。
 何も出来ずに構えたまま、突っ立っている魔術師のエース。
 ……ナドゥは何処行きやがった?
 一緒にいるんじゃなかったのかよ。
 と、静かに辺りを探してみたら、ずっと遠くに立っている姿をようやく見付けた。奴だけだ、蜘蛛の入れ物に入っているたウリッグらしいモノはどこにも見あたらない。
 どうにもおっさん、俺達を傍観するつもりらしくずっと離れた所に立ってこちらを伺っている。
 うーんこの状況、一体何が起っているのか俺にはさっぱり分からんな。
 まぁ、乱入したんだし。聞いても良いだろ。

「俺達が何を邪魔するって?」
 瞬間ランドールは鋭く剣を俺から45度くらい逸れた方向に突き出した。
「そこの気にくわない奴を殺したいんだが……な」
 ……ゆっくり俺は奴が示している方向に目を向ける。テニーさん、いや……違うな。エース爺さん……でもない。
 腰を抜かしてて倒れているワイズが、口を歪ませてどうやら僕みたいですよと自分を指さしているのに行き当たった。
「気にくわない?」
「そうだ、非常に気にくわない」
 ランドールの比較的整った顔がどこか異様に歪んで……否、笑っているのが不気味だ。
 風を切り、ランドールが剣を払う。
「そして、その次は貴様だ」
 剣は真っ直ぐ俺を向いている。
 ……ように見えるが俺にその禍々しい殺気は降り注いでいない気がする。見えないが……不思議と殺気ってのは感じられるのだな。切っ先こそ俺に向いているが殺気は別に向いている……って事は。
 俺は、ゆっくり背後を振り返る。
 俺の背後にいる人物の中で、一体ランドールは誰を殺すと宣言しているのだろう。一瞬泳いだ俺の瞳を見て、ナッツがため息を漏らす。
「まぁ、順当に言って僕の事だろうなぁ」
 ナッツはそう言って、つかつかと奥から俺の隣に歩いてきた。ナッツは攻撃的な魔法をあまり持たないので大体パーティーの一番後ろで状況把握に努めている事が多い。前に出てくる事なんてまず、無い。
「お前、あいつから恨まれるような事やったのか?」
「さぁね、ランドール君に関わった覚えはないけど」
 ナッツはいつになく厳しい横顔をランドールに向けたまま目を細めた。
「ウリッグに対してだったらまぁ、心当たりは在ると言えば在るよ」
 俺は驚いてランドールを振り返る。
 例の会心スマイルゼロ円を浮かべる奴の整った顔が、今は異常に、どうにも異様に見えるのは……もしかして。中に宿るものが違うからこそ生またギャップの所為だろうか?
 理解出来た。ナッツが言わんとしている事、おバカな俺でも把握出来る。
「貴様、ウリッグか!」
「……何の事だ」
 惚けて通すつもりなのか?それともナッツや俺の推測はハズレなのか。ランドールは微笑んだ表情を変えずに答えた。
 もちろん、本来なら違うのか?と素直に展開を疑う所だろう。
 しかし俺達青旗プレイヤーには見えてしまっている。

 奴の頭上に、赤いバグを示す旗がはためいている事が。それがどうやってくっついてしまったか、というのを考えるに、赤旗のホストとの関連性が切り離せない。アービスから感染はしないだろ?しないと思う。アービスでその方法を把握しているから、感染させないように注意くらいはするだろう。ならやっぱウリッグからってのが可能性高いじゃねぇか。
 奴は『中身』なんだ。
 外側はどんな形をしているのかはっきりしていないらしい。
 なら、可能性として無いとは言い切れないだろう?!
 大蜘蛛の中に居たウリッグが、ランドールっていう器に乗り換えていれば、ウリッグに灯っていたレッドフラグがランドールの頭上にあるのにも納得が行く。

「どういう理屈でそうなるのかいまいちよく分かりませんが……そうだとするなら僕がウザがられる理由に納得行きますねぇ」
 ようやくワイズは立ち直りゆっくり立ち上がった。
「僕……『貴方』を擁護の立場ですよ?正直流石に命は惜しい。うざいなんて言わないでちょっと考え直してくれませんかねぇ」
 状況を把握した為か、途端余裕を表してワイズはにやりと笑った。
「問題なのは中身じゃない、貴方の場合は外側だ。そうでしょ?」
「ワイズ!」
 ナッツが何かを止めるように叫んだ。俺、ちょっと驚き。普段前に出てこない人だからな、この翼の神官。
「すいませんね代理、僕にだって立場ってものがある」
「開き直ったかグランソール、だが……俺はハナから気にくわないから始末すると言っているはずだ。お前は当てにはならない。信用するに値しない。その自らの実績を貴様は知らんとでもいうのか?」
 ランドールは不気味に笑いながら武器を降ろし、左手を胸に当ててワイズの方に向き直った。
「俺はランドール・アースドだ。ウリッグなんて知らん。それこそ、中身など」
 この間、テニーさんが突然抜刀した意味を誰が察する事が出来ただろう?少なくとも今の展開がちんぷんかんぷんである俺には無理な訳で。
「……どうでも良い事だと、貴様が言う通り」
 俺の隣を、走り抜けようとしたテリーをランドールの剣が止める。テリー?なんで、いきなりお前が前に出るんだ?テニーさんの意図を察する事が出来るとするならその弟、テリー位なのかもしれない。俺はまだ状況に頭が付いて行ってない。
 その事に気を取られていて、肝心の出来事の瞬間を見逃す。
 リオさんの悲鳴が上がった。
 テニーさんが投げつけた剣によってワイズが倒れ、止まっていた時間が動き出す。
 俺は抜刀した。瞬間的に構図を読み解く。理性で理解したのではない。互いが発する殺意によって勢力図を把握したのだ。
 テリーはテニーさんの行動を恐らく『予測した』。だから止めようとしたのだがそれをランドールに邪魔されてしまった。テリーの一撃とランドールの剣がぶつかり跳ね返る、俺はその瞬間にランドールの相手を引き受ける為に二人の間に乱入した。
「ほらな、やはり邪魔をしてきた」
 テリーを行かせて間に入ってきた俺に、ランドールは微笑して剣を構える。
「うざい、邪魔だって理屈で剣を振るう奴をほっとけるかよ!」
 小手調べの一撃を互いに剣を弾いて距離を取る。その間ナッツ達をワイズ達の方向に向かわせた。
 とりあえず、ナドゥがこっちに手出しをしてくる気配はない。
 ランドールさえ押さえておけばいいだろう。テニーさんの件はテリーに任せた。奴ら兄弟だ、奴らにだけ通じる何か事情があるんだろ。
 強烈な斬撃。
 上から振り下ろされているから当然だろうがそれにしては重い、なんつー重い一撃だ!衝撃が後から覆い被さってくる、ランドールの剣を受止め俺はそれをなんとかはじき飛ばした。
 怪力女アベルの一撃に匹敵するぞ、奴も細っこい腕して凄まじい力で剣を振り下ろすからな。おかげさまでこういう力に頼った一撃往すコツは心得ている。
 すぐさま剣を翻し、横から切り込んでくる一撃は籠手にしてしまっている盾で防いだ。とはいえ衝撃を吸収しきれねぇ、左腕が軋む。
 突然現れた小さな盾に一撃を阻まれランドールは舌打ち。
 いつまでも防御一辺倒だと押し込まれる、誰も止めてくれない事だし……俺は、ランドールへ攻撃に出る事に決めた。そもそも中身だ外側だという話はよく分からないが、赤い旗付けてるなら『滅殺』の対象だ。
 向けられる殺意を切り裂くべく、同じく殺意を研ぎ澄ませて目を細めて剣を構える。戦いに集中すべく雑念を捨てる。
 今はまだランドールも小手調べ程度だってのは分かっている。中途半端な戦いは命取りだ。
 こいつは久しぶりに『本気』って奴を出す必要がある。自分にあるそのスイッチを押すべきだ。

 俺は、そのように仕込まれている元剣闘士なのだ。

 必ず殺すと書いて必殺。まぁそこまで極端ではないにせよ、お互いの命を奪うつもりの一撃が文字通り火花を散らした。
 力任せだけではない鋭いランドールの一撃。早すぎる、目で追っていては追いつかない。だが向かってくる殺気だけ感じていれば十分だ。
 俺は狙われていた心臓に到達する剣の軌道を読み勝ち、盾で往した上で敵の刃を呼び水に伝い剣を差し込む。
 金属がこすれ合う甲高い音を立てて後手の俺、心臓を狙った一撃は紙一重で避けられていた。
 凄まじい反射神経だ、相手に殺意で悟られない為の、冷徹に研ぎ澄まてあったはずの俺の一撃をランドールは反射神経で避けたぞ、人間技じゃねぇ、明らかに人間を越えた種の成せる技だ。
 相変わらず不気味な笑みを浮かべたままのランドール、俺は俺でどんな顔をしているのかは知らん。戦闘中に鏡を見ているヒマはない。
 互いに互いを睨み付けたまま、手元だけが執拗に互いの心臓、あるいは致命的に成り得る急所を狙う。
 瞬間半歩お互いに下がった後、相手に攻撃のリズムを悟られないように瞬間的に繰り出された剣が狭い範囲で交錯する。
 タメがないのに強烈な一撃、だが強すぎる一撃というのはは諸刃の剣だ。
 それを理解させてやる。

 俺は片足を暗黒比種という魔物化の一種に突っ込んでいる最中だが、今の所まだ完全に人間を踏み外している訳じゃねぇからな。能力的に人間の持ちうる上限を超えてはいないだろう。ポテンシャルという意味で言うと俺は、ランドールには敵わん事になる。
 だからこそ強い相手をどのように凌ぐか、って事に知恵を絞るんだ。無い知恵だって?うっせぇよ!

 涼しい音を立てて折れた剣の破片を盾で防ぐ。
 相手の力を逆に利用して敵の武器をまず戦闘不能に持っていく、これはテリーのやり方だ。俺はそんな好敵手を手本にして、上等な剣を持つ事を心がけたと言っても良い。
 ランドールの武器がどういう銘なのかは知らんが、俺が使っているリメイク品サガラの剣を上回ることはあるまい。相手もサガラクオリティだったら打ち負けるだろうがその可能性は圧倒的に低い。いくらランドールでも『サガラの剣』を持っている可能性は無いに等しいはずだ。『サガラの剣』の一般流通率を考えればそうだ。
 まして、ランドールほどの使い手ともなればあえて武器を選んだりはしないだろう。選ばなくても十分という域と思われる。
 その俺の読みは当り、俺はランドールの武器を破壊することに成功したという訳だ。

 ところが……。

 回転して飛んでいく破片の欠片がランドールの頬と首筋に当って鮮血が飛び散る。顔はハデに血は出るが致命傷になることは少ない。
 相手もそれは分かっているのだろうが……顔を傷つけられた事に少々、先方がぶち切れた気配を感じてしまった。
 相手の武器折ったのはいい、それが自分に刺さるのをちゃっかり防いだのも良い。がしかし、相手に向けたこの二次災害は予期していなかった……うむ、やばいかも。
 直感的にそのように危険を察する。俺はこの、危険察知に特化した戦士だという自覚がある。知覚するのは後だ。
 そのように思った次の瞬間衝撃が腹に来る。
 思いっきり蹴りを入れられた、その一撃を完全には読めずに俺は吹き飛ばされてしまう。
 とりあえず、距離を稼げたのはいいのかなぁ。
 塩でガチガチに固くなっている砂浜を何回転かした所でようやく起きあがり、俺は踏ん張って足を立たせつつそんな事を思った。完全にボケていたら肋骨がイっていただろう。ある程度は緩和させるべく吹っ飛ばされる方向に自分の重点をずらし、衝撃を殺す事には成功した。がしかし、この一撃も例によって重い。胃の中身をぶちまけそうになって、殆ど入ってなかったおかげででなんとか耐えた。でも気持ち悪ィ。胃液逆流で喉が焼けたぞ。
 今までぶつけ合っていたのとは桁違いの殺気を叩き込まれ、俺は瞬間襲いかかってくるどう猛な獣を感じて反射敵に剣を構えていた。剣を先に構えてからゆっくり腰を上げる。
 どうやらワイズ達の方を放っておいて俺に噛みついてきてくれそうだ。そうだ、それでいい。

 俺が今やっているのはそうやって、ランドールの気を引く事だ。

 俺の隣に黒い影が立つ。気配で察する、振り向いているヒマはない。
「アービス」
 助っ人に前だけに絞っていた警戒を少し解き、広域に広げた。アービスが助太刀して来た理由。ああ……ナドゥがこちらに向かって歩いてきているからだ。どうやらあのおっさん、俺達に何やら水を差してくれるようだな。
「時間切れだなアースド、ここでの用事は終わった」
 その言葉に激しくこちらに叩きつけていた殺気をランドールは収めた。目を細めて流れるままにしていた頬の血を拭う。
「ちっ……もう終わりか」
「ナドゥ!俺の弟は……!」
 そのナドゥ・DSはため息を漏らして構えているアービスに言った。
「しつこいな、お前も。お前に弟などいないのだという事がまだ分かないのか?」
「……ッ!」
 俺は、反論出来ないで口を開けたままにしているアービスを伺ってしまう。
 アービスは元の自分というものを捨ててしまった。アービスという彼の名前も、今の顔も。姿も。仮の姿なのだ。
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「まぁ所詮、道具から裏切られるようでは奴の集めたものなどたかが知れている……と、言いたい所だが。私も根本はDSと同じだ。全てに置いて興味が勝る」
「知らんぞ、それでお前も逆鱗に触れる」
 ランドールが小さく呟いた言葉が聞こえる。
「かもしれんな……まぁその時はお前を差し出せばいいだけの話だ。お前が私と彼の望みを叶えるだろう」
「ふん、どうかな」
 ランドールは鼻で笑って折れた剣を鞘に収めた。そのランドールにナドゥは小さな声で言った。
「君の望みは叶うだろう。私は君こそが望みを叶える者だと信じている」
「別に俺はお前らの為に動いている訳じゃない。そういう、人を頼った考えの奴はいけ好かない……俺の前に立つべきじゃない」
 ギラギラと未だに睨む相手は誰だ?俺じゃない。俺の後ろに殺気が向いている。
 奴が睨んでいる相手が誰なのかはすぐに解った。ナッツが叫んだ声が背後から届く。
「ランドール!ウリッグはどうした!お前は、ウリッグに復讐したいんじゃなかったのか?」
 ランドールは小さく頭を下げ、睨むようにナッツの方に視線を投げているのだろう。
 ムカつくが俺やアービスはまったく視野に入れていない。
「俺の復讐はすでに叶った。だから次の復讐に着手したまでだ……ハクガイコウ」
 いや、ナッツはハクガイコウじゃねぇよな。代理だって言ってなかったっけか……?ランドールに恨まれるような憶えはないって言ってるのに。それともそれは嘘か。あるいは。
 ナッツに覚えがないランドールの勝手な被害妄想か?
 俺は目前に注意をしながらも斜めに構え、ナッツを伺う。
 剣を胸に挿したまま、倒れているワイズの前に跪いているナッツは小さく笑っていた。俺はなんだか嫌な感じがした、今この場にそぐわない表情の様な気がして、正直ナッツのその様子にギョッとしている。
「捨てられない執着、愛。自分の首を絞める事になる紐にも成りうるって言うのに。君はそうやって些細な恨みも虱潰しに集めないと欲しい感情も維持出来ないのかい?」
 ……何を言っている?
 俺には理解不能だったが少なくともランドールには意味が通じているらしい。明らかに不機嫌な顔でナッツを睨み付けている。
 低い音を耳が拾い、一拍おいて俺は顔を上げる。
 レッドが構えた、何かの魔法が発動する音……って、この状況じゃ発動する魔法なんて絞り込めるだろ。
 転移門だ!
 魔法は発動されたら止めようがない。ナドゥの奴、転移門で逃げようとしている!

 エース爺さんが瞬間炎の玉を頭上に呼び出し、ナッツが唯一攻撃背のある魔法で作ったかまいたちを放つべく腕を振り上げた。
 だが、その前に躍り出た人物に怯んで互いに魔法を放つのをやめてしまう。
 両手を広げ、ナドゥ達の前に……というよりは。俺達の前に立ち塞がったのはテニー・ウィンさん。
「お行きくださいランドール様!」
 かげさまで一同、攻撃の手段を緩めてしまった。
 そもそもなんでテニーさんはあの状態のランドールに対しても肩を持つのだ?ランドールの奴、自分の仲間の……ワイズを殺そうとしてるってのに……いや待て、そういえば……それをテニーさん助長したよな?
 というか……そうだ。テニーさんが……ワイズに剣を投げた。
 投げたんだった。
 ランドールの気を引くのに必死で、状況がどう転んだのか俺はすっかり失念していて、テニーさんの行動に今更ながら愕然としている。
 だからといって短絡的にテニーさんがランドールの味方だと判断して良いのか?いや、そう考えるべきかも知れない。それでも俺は容易くその様に考えを改める事が出来ずに行動を止めてしまった。多くが俺と同じ状況だろう。
 渦巻く疑問に、俺達の行動はすっかり止められてしまう。
「くぉの、クソ兄貴!」
 だがテリーが容赦なく殴り掛かっていった声が全員に決意を促す。とはいえ、俺は魔法に関してはお手上げだ、テリーとテニーさんのやり取りに目が行っていた。
 テニーさん、弟君の正拳突きを避けるつもりが無い……!?
 弟の拳が兄の顎を的確に打ち抜いたのと同時に、交差した瞬間テリーの腕に短剣が突き刺さっていた。
 場はあっという間に阿鼻叫喚。
 一度に多くの事が起り、俺は全てを認識出来ない。
 テニーさんが構えた短剣の角度から……ヘタするとテリーの胸に向けて刺そうとした角度じゃないか?こっからは詳細が見えん!という事に意識を奪われテリー様子が気になって走り出していた。同じくアベルが俺と一緒に、テリーから殴られて意識を混濁させているテニーさんを押さえ込んだ。
「くそ、何で解放したんだよ!」
「ごめん、ごめんなさい!」
 心配したが流石は俺の好敵手。とっさに急所は庇ったらしい、心配して損した。
 左腕に突き刺さった剣を押さえながら悪態をつくテリーにアベルは平謝りだが……まて、アベル、お前も切られているじゃぇか!
 俺はテニーさんを両足座り込む様に押さえ込んだままひったくるようにアベルの右腕を掴む。
「お前、傷!」
「たいしたこと無い、でも、ごめんなさい、おどろいちゃって……テニーさん押さえてたの、放しちゃって……」
 流石に全体を把握しているヒマはなかったが、どうやら俺がランドールの気を引いていた頃、アベルとテリーでワイズに剣を投げつけたテニーさんを押さえ込んでいたらしい。主にアベルが押さえていたのだな。ナドゥが近づいてきたから有事に備え、テリーは前線に戻っていた……と。
 テニーさんはアベルの隙をついて短剣を翻しアベルの拘束を解いた。で、今さっき突然立ちはだかってきたと言う訳だ。
 俺はため息を漏らしてしまう。アベルの傷はたいしたことなさそうだ。これくらいの傷で驚いてしまう……まぁ、そもそも彼女は肉体的に有能とはいえ実践向けとは言い難いのだ。仕方がない。
 テリーもそれは分かっているようでそれ以上悪態は付かなかった。
 弓引く音に顔を上げる。マツナギが弓矢で牽制……と、振り返って状況がさらに一転している事に俺は度肝を抜かれる。
 ナッツが防御に徹している?対魔法防御?火の玉の爆発に視界が遮られ、レッドが明らかに舌打ちして風の魔法を放ち煙を蹴散らす。その晴れた視界の隙を縫ってマツナギが弓矢を射るもランドールから全部剣でたたき落とされてしまっている。
 ランドールの武器、もっと根本からへし折っておくんだった!
 てゆーか。
「エース、どういうつもり?」
 リオさんが悲鳴のような叫び声を上げる。
「どうもこうもないわい、ちょっと興味があっての……こっちに付いた方がわしの目的には早そうだ。そう判断したにすぎんよ」
 なんと、エース爺さんも裏切りやがったていたのだ!ランドールは腕を組んで目を細める。
「懸命な判断だな、エース」
「テニー殿はどうしますか?」
「ふん、」
 エース爺さんの加勢によって俺達の足止めが成立、その間にナドゥが完成させた転移門にのっかりながらランドールは、テリーとアベルに押さえつけられているテニーを一瞥する。
「……南国で待っているぞ、テニー」


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