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10章 破滅か支配か 『選択肢。俺か、俺以外』
書の8前半 ログアウトⅢ『幸せを望む果ての不幸』
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■書の8前半■ ログアウトⅢ Hope you'll be happiness the end of miserable
振りかぶった武器が交差する音が重く響き渡る。
右手だけに残った武器に左手を添え、押し込む俺にキリさんの視線が限りなく近づいた。
言葉を交わしているヒマなんてねぇ。実はもうお互いに口は息をするので精一杯。
力比べの結果、緩慢な動きで俺は相手をはじき飛ばす。キリさん、もう一杯一杯らしくしりもちをついた。
俺はそこに鋭く剣を突き出した。
「まだやるか?」
息も絶え絶え、肩で息をしているのを極力抑えながら俺は訊ねた
三つの目が瞬き、挑発気味に俺を見上げている。
「いいのよ、殺しても」
つまり、俺の勝利が『それ』で『決まる』という事だ。
疲労の蓄積で筋肉が震え始めたのをごまかす為に軽く、剣を振る。
「俺は……死人をあんたに捧げてたんじゃない」
剣を静かに引き上げて……左手を差しだそうとしてそれが、すでにまともに機能していない事を思い出した。
左腕は痛みという『危険信号』を出す事を通り越し、すでに痺れて麻痺していて動いてくれなかった。血がだくだくと流れ出ていく感覚だけをいまさら知覚する。
でも、傷を見てしまうと途端、忘れていた痛みを脳の方で勝手に思いだしやがるのな。肉が剥がれ掛かっているというその有様に、俺は口を引きつらせてしまった。
仕方がない、俺は剣を手放して右手を差し出す。
その手を、キリさんも武器を手放して握り返してきた。
「……ん、よし。合格」
俺は多くの人にこうやって手を差し出し、勝者として相手の命を許してきた。
観念して、ちゃんと握り返してくれる人にしか俺は、この手を差し出した事がない。お前の情けなんぞいらん!と言って差し出した手を振り払われた事が無い。そういう奴には、そういう対応をしてきた。
俺をどう思っているかなんてのは分かるんだ……闘ってみれば。
だから、戦いの果てに俺を憎むだけの相手に向けて、情けは掛けない事にしていた。
わかってしまう、今捧げられた戦いを、その相方を務めた俺を、相手が……どう思っているか。
勝敗が付いた時に、どんな幕引きをするべきなのかは自然と分かっているものだった。
手を差し出した所で受け取らず、殺せと吠えるか。
剣を向けた途端命は取らないでくれとひれ伏すかどうか。
この俺の感覚、今まで一度として裏切られた覚えがない。
この神聖なる舞台で行われているのは殺し合いだ。
相手を恨んだり、憎んだり、そういう理由付けをする必要がない、命を賭した『殺し合い』。
だから、勝った負けたの果てに相手を殺すか否か、あるいは和睦するか今後憎み合うかは『勝者の自由』。
この舞台で繰り広げられる儀式の意味を正しく『理解』しているならば憎しみは生まれない。舞台にあるのは純粋な、力と力がぶつかる闘争があるのみ。
そこに憎いだの生意気だだの……そういう理由は無いし、いらない。
そういう『理由』を持って戦う奴は……この国、イシュタル国で儀式として成り立つこの闘技場の舞台に今後、上るに値しない。
俺はそのように判断して時に、打ち負かした相手の命を遠慮なく奪ってきた。
殺して良し。
かつて、このエズに蔓延した『商業』としての闘技。
エトオノとクルエセルという大きな二つの闘技場が引き起こした、町全体を巻き込んだ儀式の形骸化。
それを律する為に俺は、正直不本意だけどこの町の頂点を目指した。
俺一人足掻いてもどうにかなるもんじゃないので俺達、比較的若い剣闘士達でそういう事を理想と掲げて戦い続けた。
そう、テリーも俺と同じ事をやってた奴の一人である。クルエセル側にも、俺達の理想は理解してもらえたんだ。いや、そもそもクルエセル側からの提案だったのかもしれない。その辺りはよく覚えていないな、何しろ簡単に人が死ねる職場だ、人の入れ替わりが激しいから、何時、どこからそういう思想が生まれて俺達を結び付けたのかは……はっきりとは思い出せない。
若い奴ら全員が同調した訳じゃなかった。戦う事が尊いとか、到底考えられないような奴だっていた。俺も正直言えばそうだ。殺し合いのどこが尊いもんかと思っていた。
でもそれはみんなそうだろう、テリーだってその当たりは詭弁だって事くらいわかってたはずだ。
それでも当時、俺達は戦うしか能のない人種で、戦う事でしか何かを変えることが出来なかったんだからしかたがない。
俺とテリーと、他何人かの『戦いバカ』が集って革命を推し進めたんだよ。
その結果起こったのは……闘技の町エズにおける二大巨頭の一つ、エトオノの経営破綻だ。ようするにエトオノをツブしてしまった。俺達の活動を続けるに、必ずそう云う事が起こる事は分かっていた。分かっていて……やった。
がんばっちゃった理由はいくつかある。でもあえて言うなら……。
俺はぶっちゃけてエトオノをツブしたかった。
エトオノが嫌いだったとか、そういう理由じゃない。嫌いだという理由の方がまだ成り立つというような、もの凄い個人的な理由で……俺はエトオノを解体したくて……がんばっちゃったんだ。
俺の手に掴まり立ち上がったキリさんは、そのまま倒れ込むように抱きついてきた。
「ようやく見つけた、」
「……何をだ?」
元から頭は良くないと自負する俺であり、今現在何かを考えられる程冷静ではないのだが。
それでも途端にいやーな予感がして、そのように突っ込んでしまっていた。
がっちり肩をつかまれ、三つの目が真剣に俺を覗き込んでくる。
「決まってるでしょ!あたしの後継者よ!」
「はぁッ!?」
試合が終わるまで舞台には上がるな、と強く言い含められているアインさんが場外でウロウロ飛び回っているのに、俺は視線を投げ……ちょっと救いを求めてみたがチビドラゴンに救いを求めた所でどうにもならんよな、と三つ目のお姉さんに向き直る。
「……後継者?」
「そうよ!大陸座だかなんだか知らないけどあたしは、そんな役目に縛られるのはごめんなの!自由に生きたいの!」
おいこらまてい!
「何言ってるんだ、あんた大陸座だろう!?」
なんたって頭上に白い旗がついている。ササキ-リョウさんのキャラクターを持った管理者としての存在の癖に!……何言ってやがる?
役割に縛られるのはゴメンだ?自由に生きたい?
こんな仮想『神』である戦いの神、イシュタルトに戦いを捧げるために今といい過去といい、あんな反吐な生活をしてきたのか俺は。
そして、こんな奴の為に……。
よく考えるとどいつもこいつも『管理者』という自覚がねぇから、こっちは色々分からない事だらけで困っている気がしてきたぞ?
沸き上がってきた理不尽な思いや不満を俺が口に出す前に、キリさんから大怪我に分類されるだろう左腕を掴み上げられて俺は悲鳴を上げる。
「こら、男の子なら我慢しなさい!」
そりゃごもっともだと俺も思うが、どうにも不意打ちがダメなのだ。こういう形式張った所でやりあった経験ばっかりあるから、実際問題戦っている時とそうでない時の気の張り具合が天地程に差があるのは……自覚済みです。
痛みの所為で涙目になっている俺をよそに、キリさんは俺の両腕の切り傷の具合を見ているようだ。
傷口に火を当てられているような錯覚を憶えて俺は顔を顰める。……いや、思った程熱くはない?これは……痛みからくる熱ではなく……覚えがある、リコレクト。
傷癒しの魔法を受けている経験を俺は、思い出す。
ついでだから詳しく説明しておくけど、よくナッツが使う『傷塞ぎ』と『傷癒し』は別の魔法なんだな、系統としては同じだけど直す度合いが違う。それから『傷癒し』では骨折は直せない。そんでもってもう一つ余計な事言うとこれらの治癒魔法は、小汚い環境で傷を負ったりする冒険者達にはあまりお勧め出来ない魔法だそうだ。消毒をロクにせずに傷だけ治すなんて体の中に毒を入れて蓋をしている様な物だ、とのナッツさん談です。
闘技場での過去も含め、俺は多くの生傷と大の仲良しという環境で生きてきた。
だったらこう、体中傷跡だらけでしかるべきなのだが、実際それなりの傷があちこちにあるとは思うが、剣闘士というのは『戦いを見せる』商売である。戦いだけではなく、戦っている方にも目が向いてくる。お客は血のっけの多い男ばかりじゃぁない。俺には無縁な世界だが、イシュタル国エズには綺麗なお兄さんや美しい女性らだけを集めて戦わせるというマニアックな趣向の闘技場もある位だ。
趣味で傷跡を残す奴もいるが、大きな傷を持っていながら生きているって事はそれなりの実力者だと悟らせてしまう場合がある。賭け事もやってる訳だからな、闘技場経営者としちゃなるべく選手の情報は漏らさないようにするべきだろう?
一番にやっぱり、みてくれってのが大事でな、外見で実力悟られないように客を騙す手法も闘技場経営者には求められるし、見世物にしている訳だから見苦しいのは避けようとする。
そんな訳で、剣闘士が受けた傷は、雇い主の方で大抵綺麗に塞いでくれるのだ。
骨が折れたら『接骨魔法』、切り傷だったら『傷塞ぎ』。潰されたとか複雑骨折の場合は外科手術に魔法処置を組み合わせた手術なんかを問答無用で受けるハメになる。
傷癒しは、連戦しなければ行けない時の応急処置として受けた記憶があるな。
闘技場では挑戦者と戦う場合であっても武器は登録制だ。舞台は血でいくら洗われようとその都度清められ、変な病気とかを『戦う相手以外』から貰わないように割と清潔な環境が保たれていると言える。
これは、戦いは必ず1対1という厳粛なイシュタル国の儀式の作法に則る考えなんだそうだ。
そういう環境であるなら大怪我を負い、急遽『傷癒し』で傷を完全に治してしまっても問題はなかったって事だろう。
しかし他の環境ではそうじゃないんだよな。
この間、壮絶な森歩きして感染症がどうたらこうたらって、ナッツが色々神経尖らせて処理してくれた訳だけど……劣悪な環境で負った傷を即座に塞いでしまったら、傷の中に生きている悪い菌類残したままで、体の中に閉じこめてしまう事になる。傷口を塞ぐにしても、急速に再生力を高めて癒したとしても、この魔法には消毒的な作用は一切ない。自己免疫力に全て、かかっている状況だ。
内側って割と、弱いんだぜ。
冒険者という酔狂、いや、とち狂った肩書きを持つ者の死ぬ理由の90%は冒険先での傷が原因だとかナッツが言っていた。適切な傷の処理を行わない所為なんだと。
無事生還しても、その後拾って持ち帰って来てしまった菌や寄生虫などが原因で病で倒れてあっさり死ぬパターンも多いんだ、とか。
俺達が今ピンピンしていられるのは間違いなくナッツさんのおかげです。
熱い感覚のうちに、俺の両腕の傷が白い粉を吹くような煙を上げて癒えていく。傷の奥の方からじわりと熱を帯びて塞がっていく感覚は何とも奇妙な感じだ。痛みもすっかり引いている筈なのだが、警戒物質は分泌されたままなのか痺れに似た感覚が脳の奥の方に残っている。
傷だけ癒えてもな、それに伴い神経に作用するいろいろな化学物質が出ているとかいうのをリアルの経験から引っ張ってきてしまいながら俺はこの、奇妙な感覚を受け入れるのに必死だ。
傷は治るけど痛みは残る、というキュアもどこぞであったよなぁ。それにちょっと似ている。
すっかり元通りになった左腕を俺は持ち上げてみる。
頭の奥では大怪我を負ったという経験が残っていて、指が震えて動かし難い。怪我しているから無用に動かすな、と脳の奥の方から言われているのかもしれない。
「……凄いな……」
傷跡もない。斬られた服はどうにも元に戻らないので穴だらけだけど。
ようやく戦いが『終わった』のだと悟ってアインが飛び込んできた。
「うわぁあん!血が一杯~で、びっくりしたぁあぁッ!」
突撃してきたアインを受け止めて俺は苦笑する。
「そういや、今回救護班が控えている訳じゃないもんなぁ……」
キリさんが回復魔法を使えたからいいものの。
使えないとなったら俺、ここで左腕を失うハメになっていたかもしれない。
いや、腕の良い医者とも傷を多く負って来ただけに付き合いが長い。そこに駆け込めば綺麗に直してくれるだろう。金はふんだくられるだろうけどな。
「……さて、じゃぁさっそくあたしの後を引き継いで大陸座をやんなさい、と……言いたい所だけど」
キリさんはため息を漏らし腕を組む。
「その前に約束があったわね。デバイスツールを渡す……」
キリさん……目を閉じて……考えているな。
考えないと分かんないのかこのお姉さん?
暫くして目を開けた。
「ダメじゃない」
「何が?」
「デバイスツール渡してしまったら私、また見えなくなるじゃない!」
そこらへん……考えてみないと分からんかったようだな。
「でも約束は約束でしょ!」
アインさんが首を突き出すと、キリさんはため息を漏らして肩を落とす。
「あぁあ……ようやく壁が取れて、自由になったって言うのに」
「ジーンウイントの……キシさんだっけか。そいつが張ってた干渉を遮る『壁』か?」
「ん?何それ」
いやまて、今壁がどーのこうの言ったの姐さんじゃねぇかよ。
なんだかなぁ、なんかもの凄く……話がかみ合わない。というか話し辛い。
こっちの話が通用しない所……。俺はつい、アベルを思い浮かべてしまうな。
どっちかっていうと……ええと、混ぜて悪いんだが……リアル、アベ-ルイコの方。
「酷いのよ?あたしはここに居なきゃダメなんだ、とかでさ、ユピテルトのマツミヤ君がここに私を封じたの」
「マツミヤ君?」
俺とアインの言葉がハモってしまいました。
「ユピテルトって……大陸座の事だよな?……残りは誰だ?」
「……んー……タカマツさん?」
「……あの人フルネームなんだっけ?」
「確か、ミヤビさんだったと思ったけど……」
つまり、タカ-マツミヤ-ビ……か。
やはり安直な……。
「まぁいっか、最期に良い戦いが出来たし。仕方が無い、あっちに行ってルミザでもひっつかまえて、存分に遊ぶ事にしようっと」
キリさんの呟きに俺は斜め上を見上げる。
ルミザ……どっかで聞いた事があるような気がするとリコレクトすると、ミスト王から聞いた戯曲『北神の恋』を思い出している。
そうだ、南の方位神ってルミザって名前じゃなかったっけか。
方位神は大陸座と似たような存在だが、背負っているのが精霊という八つの属性ではなく、最大17方位という空間であるという違いがある……という説明をレッドからされた事を思い出せる。
大陸座と方位神の違いって何よ?って疑問に思っていたからリオさんからも聞いたよな。ようするに神様だ。大陸座よりもずっと昔から神のよう扱いを受けている『人格者』達。
「ルミザを捕まえる?遊ぶ……?あっちってドコだ?」
「決まってるじゃない」
と答えておいて、具体的な名称が思い出せなかったのか。暫く三つの目を泳がせてからキリさんは答えた。
「開発者レイヤーよ」
「そこに方位神もいるのかよ!?」
「居ちゃまずいの?」
いや、方位神なんて居ても居なくても問題ない、神という『概念』だもんな。ぶっちゃけどうでもいいのか?
「まずいんじゃない?」
所が俺の頭の上にいつものように登りこんだアインが首をかしげている。
「どうしてだよ。方位神ってのこそ概念だろ、概念って事はその伝承があればいいって事で、実在する必要はないだろうが。大陸座だって本来存在出来ないもので見えたり触れたり出来るのが『おかしい』のだと軍師連中が言ってた訳だし。大陸座はデバイスツールとキャラクターがあるから存在してるんだろ?方位神なんてはなからこっちの世界に触れられない、キャラクターだけの存在だろうが」
そう、それだ!と俺、自分で言っておいて思わず納得するね。
方位神は言い換えれば『キャラクター』なんだよ。
このトビラ世界、中から言えば八精霊大陸の中で定義されている神というキャラクターなのだ。リアル例に出して悪いがマンガやアニメのキャラクターと同じ。オリンピックなんかの時にキャンペーンキャラクターがいるのと同じ。
あれは実在はしないだろ。実際の人物を指しているんではない。あくまで仮想の中に作られた人格『概念』。
そういうのを神と例えてこの世界では信奉していたりする。
というか、そもそも宗教に置ける神とはそういう位置づけに限りなく近いんじゃぁないのだろうか?神学はよくわからないので俺は、アニメキャラクターと同じようなもんだろという頭の悪い例えしか出来ないのだが。
とにかく方位神とはこの世界にとって神のキャラクターなのだ。……いや、実際神様になって宗教をも興しているのは西方方位神のシュラードだけだっけか?
「だから、あたし達は今大陸座をその開発者レイヤーに退避させているでしょ?大陸座が赤旗の原因になっているから大陸座を完全消去しようって話になってるじゃない。開発者レイヤーごと!」
「あ!」
と言う事は、つまり……大陸座と一緒に、開発者レイヤーに居るらしい方位神も全部消去って事なのか!
方位神というキャラクターもこの世界から……消える?
「そんな話は聞いてないよなぁ……」
てっきり大陸座だけ消去だと思っていたのに。方位神も一緒に消えちまうって事なのか……?
いやまずその前に。
開発者レイヤーとやらを消去してもこの世界には、何も影響はないのか?キャラクターという形で深くこの世界に根ざしている概念を、一体全体どうやって消去するのだろう?そこらへん、開発者側の話なのでさっぱり俺には分からない。
消えるのは……概念であって蓄積された情報ではないという事だろうか。
システム的には実在した事にはなっていない方位神という『キャラクター』は、情報という側面としては確実にあるのかもしれない。ただレイヤー、すなわち存在階層が違うので一般的には実在している風には見えない。
ようするに、方位神というキャラクターは『開発者レイヤー』という特殊な所にいる。
本来この開発者レイヤーにいる人格も、概念も、実世界トビラあるいは八精霊大陸に干渉が出来るものではない。
ところが今回デバイスツールやら何やらが投入された事により、大陸座というものが世界に干渉をした。出来る存在に存在階層を変移させた訳だが……かつては、方位神も同じように世界に干渉する方法を持っていたのかもしれん。
ところが今は、方位神はそういう干渉を止めて、誰も手が届かない、同時にどこにも手が届かない何処か、曰く……『開発者レイヤー』に退避している……そういう事か?
この思考は戦士ヤトが出来る事じゃないな。サトウ-ハヤトである俺だから考えられる事だ。
本来このように世界がシステムだ、ゲームだという考えはするべきじゃないし、この世界に混ぜては行けないものなのかもしれない。俺はそのように思ってなるべくこういうゲームだとかいう認識を改めてするような事をしないように最近気を付けていたが……。
大陸座相手にしているときくらいいいよな?一応、デバッカーっていう役目もあるんだし。
……とすると、デバイスツールを取り上げた大陸座だけに留まらず、どうにも方位神も混在しているらしいその『開発者レイヤー』を消してしまって問題はないのか。
……無いんだよな。
無いからレイヤーを消してしまおうって開発者主任の高松さんは言っている。
つまり、この世界で語られている大陸座、方位神という概念の消去は、すなわち語られた歴史、蓄積情報までもが連動して消えると言う意味では無いのだろうと思う。そこまで消す必要は無い。あと、多分技術的にそれは不可能だろう。
方位神や大陸座というものが昔いました、あるいは神として存在しますという歴史は、すでに大陸の中で語られ、刻まれ、残されている。
ようするにそこまで消してしまう訳ではないって事なのではないか、と俺は思うのだ。
というか、方位神と大陸座が『いた』という歴史を根本から消したら歴史の改ざんが必要になるだろう?その改ざんは世界を全く別のものに変えてしまう。
ぶっちゃけて『今』を破壊するのと同じだ……と、開発者達は言っていたはずだな。
このバグの混在した世界を正すために、ゲームとして、システムの外側から干渉するとそういう処理になってしまう。
だから俺達は内側に来ていて、内側の理屈で神とその概念を当たり障りのない世界に追いやる作業をこなしている。
とりあえず、大丈夫かどうかってのは俺が考えるトコじゃない。
トビラの開発者である高松さんが大丈夫と言うのだから大丈夫なのだ。ただどうして大丈夫かという理屈を思えば恐らく、そんな所じゃないかなと思う。
「約束は約束だしね」
そう言ってキリさん、ずぶりと何の躊躇いもなく自分の額にある第三の目に指を突っ込んだ!!!驚いて躊躇した俺らをよそに、何事もなかったかのように額から指を引き抜く。
すると、さっきまで確かにあった目が額から消えている。
替わりに差し出された掌の上には……。
何もない……よ、ね?
俺は確認するようにアインを見上げていたが、アインも俺を確認するように見下ろしている。
「悪いわねぇ、イシュタルトには形が無いのよ」
「……はぁ」
形がない……そういや、形がないという特徴もイシュタルトを表す特徴にあったかもしれないとリコレクト。
「目には見えないの。でも貴方がそこにあると思えばそこにあるから」
俺は、目には見えない何かを受け取るジェスチャーをした。目に見えないどころか重さも感覚もない。
完全に何もない。
すると少し慌てたようにキリさんは俺の何もない、手を掬い上げる様に触れて支えた。
「無い、と思っちゃダメ。そう思ったらそこにはないんだから」
「……はぁ」
俺は気の抜けた返事をするしかできない。わ、わけがわからん!助けて頭のいい人!
「あー……というか、とりあえず貴方で持っていた方が良いわ。手っ取り早く体の中に入れなさい」
「体の中に?」
ナーイアストのデバイスツールのように、俺の体の中に埋め込めというのか。誰かに頼んで入れて貰うにも、形がなけりゃどうしようもないんじゃないのか?
「……貴方の体の中にある石の効力は、もう消えかかっているわよ?」
「え?」
キリさんにはナーイアストの石の事は話していないのに。
何で分かるんだ?
そんな顔を俺がしていたらしく、笑いながらキリさんは自分の、もはや何もない額を指さす。
「イシュタルトの第三眼は全てを見通す真実の瞳よ。それ、無いとまずいんでしょ。貴方の青い旗も消えかかっているのが私には見える。随分おかしな存在の仕方をしているみたいだけど……とりあえず、青い旗を立てる替わりにはなると思うから」
「どうするんだよ?」
「分かんないかな?ここに入れるのよ」
そう言って俺の額を指す。
「俺は、大陸座なんて継がないって言ってるだろ!?」
「分かってるわよ、大体、デバイスツールを手放せって時点であたしに課せられている『ここにいろ』という役割は終わってるじゃない」
最初から俺達はそう言っているのだが!
それを嫌だと言ったのはどこの誰ですかっ!
どうやらホントに人の話を聞かない人のようです。
「なんで地域に縛る必要があるのよ?ねぇ」
同意を求められても困ります。知るかそんな理由!知らないけれど、そうしたって事はようするに、
「理由、あったんじゃないのか?」
キリさんをイシュタル国に留めておかなければ行けない何か、理由があったんだろ?と答えておくのだった。
この落ち着きのない大陸座は、居場所を定められるのを嫌ったって事だと思う。
なもんで大陸座ユピテルト、マツミヤさんとやらは強引にキリさんをこの場に封印したという所だろうか?
きっとそうでもしなきゃ、魔王討伐第一陣にキリさん本人が現れていただろう……そういう事をしそうな元気なお姉さんだ。そういうトンチキな所、ユピテルトのマツミヤさんは見越したのではないかと思われる。
「そのマツミヤさんの封印が解けたって事は……どういう事かしら?」
アインの問いに、俺もはっとなって顔を上げる。
今それが解けている、と云う事は?
「まさか、ユピテルトに何かあったのか?!」
「あったんじゃない?私、これで世界を広く見渡せるからねぇ~。つい最近、突然やっとこ全部の枷が外れたのよね」
キリさん、楽天的に笑っているが……ん?そういえば……この人俺にデバイスツール渡したのにまだ……消えないんだな?
伸びをするように両手を組み合わせて頭上に伸ばし、キリさんはため息を漏らす。
「ああ、でも悪い事しちゃったなぁ」
「は?……誰に」
いきなり話を飛ばすなお姉さん。
俺達レッドら程頭が良く無いので穴だらけの話を追いかけるのに振り回されっぱなしである。
「ここの闘技場の人達よ……酷い暴動だったわ」
クルエセルの暴動の事か?
どうして、それが、何が悪い?
「酷いのよ、私をここに縛り付けておくのにマツミヤ君ったらセーフティも付けてったの!しかもキシの奴のも暫く働いていたでしょ?何重封印されてんのよあたし!どーせあたしには関係ないのに」
大陸座を世界から隔てる轍が、ジーンウイントのキシさんの仕業である事は分かっているようだ。何それとかとぼけたくせに。
……いや、それは彼女にとっては関係ないと今言ったな。だから何それ、だったのか?
とてもアホそうなこのお姉さん、それでも真実の大陸座であるからして事実はよく見渡していたのだろう。
というか、この人アホの癖に物事を見通しすぎている。
自分一人で分かっていて、相手が分かってないって事を完全に見落としているんだな。相手が理解している事を確認もしないでどんどん自分の都合で話しやがるんだ。
「私ね、ここの闘技場に封じられていたのよ。実際にはその狭間ね。私、他の大陸座と違ってかなり自由に出来る理力を持っているし……だから、まだもうちょっと粘ってここにいる訳なんだけど……。貴方達青い旗立てているからまだ見えているのよ。他の人にはもう、あたしの姿は見えないと思うから」
「どうしてだよ」
「物理的な所を補えていないもの。それは貴方にデバイスツールとして渡しちゃったでしょ?で、普通はその途端存在が破綻して開発者レイヤーに送られちゃうんだけど……とりあえず手放したけど貴方がデバイスツールの存在をまだ疑っているからその所為で、まだ全部渡し切れてないの。それだからまだ、私は粘れている訳」
……だめだ、訳が分からん。ホントに助けて頭のいい人。
そんな俺の理解不能な様子はちゃんと察するのな。キリさん、苦笑している。
「ようするに、私の所為なの」
ん?あれ?やっぱり察してない?
「……何が?」
この人の話のぶっ飛びようはほんと手に負えない。
「だから……エトオノとクルエセルが潰れたのは私の所為。私が、私が自由になりたいからそのようにお願いしたの」
どうしてそうなるのかよく分からないだけに信じられない。よく分からない。
「誰に?」
「ルル・クルエセルに」
それは……。
誰だっけとリコレクトした時一緒にテリーが思い出されてくる。ルル、憶えている、知っている人だ。
でも親しくはない。
ぶっちゃけ俺はルルの奴を見た事がほとんど無い。大体、奴隷同然の剣闘士と、雇い主では無い別の闘技場主の上層ファミリーであるルルと言葉を交わす事などありえない。
ルルの存在を知らない奴も多かったはずだ。アベルは……知っていたみたいだけどかなり嫌っていたかもしれない。
クルエセルの次期支配人だ、という話を聞いたことがある。その肩書通り箱入りで、滅多に姿を見せないとも聞いている。
だから、クルエセルのルルってどんな奴だよ?とクルエセルの専属剣闘士であるテリーに聞いた事がある。そうしたら、奴はもの凄く嫌な顔をしたのを俺は……憶えているんだな。リコレクトしている。
聞くな。あれは『狂っている』ので有名だ、俺は関わり合いたくない。
そうやってテリーから一刀両断された事を思い出している。
振りかぶった武器が交差する音が重く響き渡る。
右手だけに残った武器に左手を添え、押し込む俺にキリさんの視線が限りなく近づいた。
言葉を交わしているヒマなんてねぇ。実はもうお互いに口は息をするので精一杯。
力比べの結果、緩慢な動きで俺は相手をはじき飛ばす。キリさん、もう一杯一杯らしくしりもちをついた。
俺はそこに鋭く剣を突き出した。
「まだやるか?」
息も絶え絶え、肩で息をしているのを極力抑えながら俺は訊ねた
三つの目が瞬き、挑発気味に俺を見上げている。
「いいのよ、殺しても」
つまり、俺の勝利が『それ』で『決まる』という事だ。
疲労の蓄積で筋肉が震え始めたのをごまかす為に軽く、剣を振る。
「俺は……死人をあんたに捧げてたんじゃない」
剣を静かに引き上げて……左手を差しだそうとしてそれが、すでにまともに機能していない事を思い出した。
左腕は痛みという『危険信号』を出す事を通り越し、すでに痺れて麻痺していて動いてくれなかった。血がだくだくと流れ出ていく感覚だけをいまさら知覚する。
でも、傷を見てしまうと途端、忘れていた痛みを脳の方で勝手に思いだしやがるのな。肉が剥がれ掛かっているというその有様に、俺は口を引きつらせてしまった。
仕方がない、俺は剣を手放して右手を差し出す。
その手を、キリさんも武器を手放して握り返してきた。
「……ん、よし。合格」
俺は多くの人にこうやって手を差し出し、勝者として相手の命を許してきた。
観念して、ちゃんと握り返してくれる人にしか俺は、この手を差し出した事がない。お前の情けなんぞいらん!と言って差し出した手を振り払われた事が無い。そういう奴には、そういう対応をしてきた。
俺をどう思っているかなんてのは分かるんだ……闘ってみれば。
だから、戦いの果てに俺を憎むだけの相手に向けて、情けは掛けない事にしていた。
わかってしまう、今捧げられた戦いを、その相方を務めた俺を、相手が……どう思っているか。
勝敗が付いた時に、どんな幕引きをするべきなのかは自然と分かっているものだった。
手を差し出した所で受け取らず、殺せと吠えるか。
剣を向けた途端命は取らないでくれとひれ伏すかどうか。
この俺の感覚、今まで一度として裏切られた覚えがない。
この神聖なる舞台で行われているのは殺し合いだ。
相手を恨んだり、憎んだり、そういう理由付けをする必要がない、命を賭した『殺し合い』。
だから、勝った負けたの果てに相手を殺すか否か、あるいは和睦するか今後憎み合うかは『勝者の自由』。
この舞台で繰り広げられる儀式の意味を正しく『理解』しているならば憎しみは生まれない。舞台にあるのは純粋な、力と力がぶつかる闘争があるのみ。
そこに憎いだの生意気だだの……そういう理由は無いし、いらない。
そういう『理由』を持って戦う奴は……この国、イシュタル国で儀式として成り立つこの闘技場の舞台に今後、上るに値しない。
俺はそのように判断して時に、打ち負かした相手の命を遠慮なく奪ってきた。
殺して良し。
かつて、このエズに蔓延した『商業』としての闘技。
エトオノとクルエセルという大きな二つの闘技場が引き起こした、町全体を巻き込んだ儀式の形骸化。
それを律する為に俺は、正直不本意だけどこの町の頂点を目指した。
俺一人足掻いてもどうにかなるもんじゃないので俺達、比較的若い剣闘士達でそういう事を理想と掲げて戦い続けた。
そう、テリーも俺と同じ事をやってた奴の一人である。クルエセル側にも、俺達の理想は理解してもらえたんだ。いや、そもそもクルエセル側からの提案だったのかもしれない。その辺りはよく覚えていないな、何しろ簡単に人が死ねる職場だ、人の入れ替わりが激しいから、何時、どこからそういう思想が生まれて俺達を結び付けたのかは……はっきりとは思い出せない。
若い奴ら全員が同調した訳じゃなかった。戦う事が尊いとか、到底考えられないような奴だっていた。俺も正直言えばそうだ。殺し合いのどこが尊いもんかと思っていた。
でもそれはみんなそうだろう、テリーだってその当たりは詭弁だって事くらいわかってたはずだ。
それでも当時、俺達は戦うしか能のない人種で、戦う事でしか何かを変えることが出来なかったんだからしかたがない。
俺とテリーと、他何人かの『戦いバカ』が集って革命を推し進めたんだよ。
その結果起こったのは……闘技の町エズにおける二大巨頭の一つ、エトオノの経営破綻だ。ようするにエトオノをツブしてしまった。俺達の活動を続けるに、必ずそう云う事が起こる事は分かっていた。分かっていて……やった。
がんばっちゃった理由はいくつかある。でもあえて言うなら……。
俺はぶっちゃけてエトオノをツブしたかった。
エトオノが嫌いだったとか、そういう理由じゃない。嫌いだという理由の方がまだ成り立つというような、もの凄い個人的な理由で……俺はエトオノを解体したくて……がんばっちゃったんだ。
俺の手に掴まり立ち上がったキリさんは、そのまま倒れ込むように抱きついてきた。
「ようやく見つけた、」
「……何をだ?」
元から頭は良くないと自負する俺であり、今現在何かを考えられる程冷静ではないのだが。
それでも途端にいやーな予感がして、そのように突っ込んでしまっていた。
がっちり肩をつかまれ、三つの目が真剣に俺を覗き込んでくる。
「決まってるでしょ!あたしの後継者よ!」
「はぁッ!?」
試合が終わるまで舞台には上がるな、と強く言い含められているアインさんが場外でウロウロ飛び回っているのに、俺は視線を投げ……ちょっと救いを求めてみたがチビドラゴンに救いを求めた所でどうにもならんよな、と三つ目のお姉さんに向き直る。
「……後継者?」
「そうよ!大陸座だかなんだか知らないけどあたしは、そんな役目に縛られるのはごめんなの!自由に生きたいの!」
おいこらまてい!
「何言ってるんだ、あんた大陸座だろう!?」
なんたって頭上に白い旗がついている。ササキ-リョウさんのキャラクターを持った管理者としての存在の癖に!……何言ってやがる?
役割に縛られるのはゴメンだ?自由に生きたい?
こんな仮想『神』である戦いの神、イシュタルトに戦いを捧げるために今といい過去といい、あんな反吐な生活をしてきたのか俺は。
そして、こんな奴の為に……。
よく考えるとどいつもこいつも『管理者』という自覚がねぇから、こっちは色々分からない事だらけで困っている気がしてきたぞ?
沸き上がってきた理不尽な思いや不満を俺が口に出す前に、キリさんから大怪我に分類されるだろう左腕を掴み上げられて俺は悲鳴を上げる。
「こら、男の子なら我慢しなさい!」
そりゃごもっともだと俺も思うが、どうにも不意打ちがダメなのだ。こういう形式張った所でやりあった経験ばっかりあるから、実際問題戦っている時とそうでない時の気の張り具合が天地程に差があるのは……自覚済みです。
痛みの所為で涙目になっている俺をよそに、キリさんは俺の両腕の切り傷の具合を見ているようだ。
傷口に火を当てられているような錯覚を憶えて俺は顔を顰める。……いや、思った程熱くはない?これは……痛みからくる熱ではなく……覚えがある、リコレクト。
傷癒しの魔法を受けている経験を俺は、思い出す。
ついでだから詳しく説明しておくけど、よくナッツが使う『傷塞ぎ』と『傷癒し』は別の魔法なんだな、系統としては同じだけど直す度合いが違う。それから『傷癒し』では骨折は直せない。そんでもってもう一つ余計な事言うとこれらの治癒魔法は、小汚い環境で傷を負ったりする冒険者達にはあまりお勧め出来ない魔法だそうだ。消毒をロクにせずに傷だけ治すなんて体の中に毒を入れて蓋をしている様な物だ、とのナッツさん談です。
闘技場での過去も含め、俺は多くの生傷と大の仲良しという環境で生きてきた。
だったらこう、体中傷跡だらけでしかるべきなのだが、実際それなりの傷があちこちにあるとは思うが、剣闘士というのは『戦いを見せる』商売である。戦いだけではなく、戦っている方にも目が向いてくる。お客は血のっけの多い男ばかりじゃぁない。俺には無縁な世界だが、イシュタル国エズには綺麗なお兄さんや美しい女性らだけを集めて戦わせるというマニアックな趣向の闘技場もある位だ。
趣味で傷跡を残す奴もいるが、大きな傷を持っていながら生きているって事はそれなりの実力者だと悟らせてしまう場合がある。賭け事もやってる訳だからな、闘技場経営者としちゃなるべく選手の情報は漏らさないようにするべきだろう?
一番にやっぱり、みてくれってのが大事でな、外見で実力悟られないように客を騙す手法も闘技場経営者には求められるし、見世物にしている訳だから見苦しいのは避けようとする。
そんな訳で、剣闘士が受けた傷は、雇い主の方で大抵綺麗に塞いでくれるのだ。
骨が折れたら『接骨魔法』、切り傷だったら『傷塞ぎ』。潰されたとか複雑骨折の場合は外科手術に魔法処置を組み合わせた手術なんかを問答無用で受けるハメになる。
傷癒しは、連戦しなければ行けない時の応急処置として受けた記憶があるな。
闘技場では挑戦者と戦う場合であっても武器は登録制だ。舞台は血でいくら洗われようとその都度清められ、変な病気とかを『戦う相手以外』から貰わないように割と清潔な環境が保たれていると言える。
これは、戦いは必ず1対1という厳粛なイシュタル国の儀式の作法に則る考えなんだそうだ。
そういう環境であるなら大怪我を負い、急遽『傷癒し』で傷を完全に治してしまっても問題はなかったって事だろう。
しかし他の環境ではそうじゃないんだよな。
この間、壮絶な森歩きして感染症がどうたらこうたらって、ナッツが色々神経尖らせて処理してくれた訳だけど……劣悪な環境で負った傷を即座に塞いでしまったら、傷の中に生きている悪い菌類残したままで、体の中に閉じこめてしまう事になる。傷口を塞ぐにしても、急速に再生力を高めて癒したとしても、この魔法には消毒的な作用は一切ない。自己免疫力に全て、かかっている状況だ。
内側って割と、弱いんだぜ。
冒険者という酔狂、いや、とち狂った肩書きを持つ者の死ぬ理由の90%は冒険先での傷が原因だとかナッツが言っていた。適切な傷の処理を行わない所為なんだと。
無事生還しても、その後拾って持ち帰って来てしまった菌や寄生虫などが原因で病で倒れてあっさり死ぬパターンも多いんだ、とか。
俺達が今ピンピンしていられるのは間違いなくナッツさんのおかげです。
熱い感覚のうちに、俺の両腕の傷が白い粉を吹くような煙を上げて癒えていく。傷の奥の方からじわりと熱を帯びて塞がっていく感覚は何とも奇妙な感じだ。痛みもすっかり引いている筈なのだが、警戒物質は分泌されたままなのか痺れに似た感覚が脳の奥の方に残っている。
傷だけ癒えてもな、それに伴い神経に作用するいろいろな化学物質が出ているとかいうのをリアルの経験から引っ張ってきてしまいながら俺はこの、奇妙な感覚を受け入れるのに必死だ。
傷は治るけど痛みは残る、というキュアもどこぞであったよなぁ。それにちょっと似ている。
すっかり元通りになった左腕を俺は持ち上げてみる。
頭の奥では大怪我を負ったという経験が残っていて、指が震えて動かし難い。怪我しているから無用に動かすな、と脳の奥の方から言われているのかもしれない。
「……凄いな……」
傷跡もない。斬られた服はどうにも元に戻らないので穴だらけだけど。
ようやく戦いが『終わった』のだと悟ってアインが飛び込んできた。
「うわぁあん!血が一杯~で、びっくりしたぁあぁッ!」
突撃してきたアインを受け止めて俺は苦笑する。
「そういや、今回救護班が控えている訳じゃないもんなぁ……」
キリさんが回復魔法を使えたからいいものの。
使えないとなったら俺、ここで左腕を失うハメになっていたかもしれない。
いや、腕の良い医者とも傷を多く負って来ただけに付き合いが長い。そこに駆け込めば綺麗に直してくれるだろう。金はふんだくられるだろうけどな。
「……さて、じゃぁさっそくあたしの後を引き継いで大陸座をやんなさい、と……言いたい所だけど」
キリさんはため息を漏らし腕を組む。
「その前に約束があったわね。デバイスツールを渡す……」
キリさん……目を閉じて……考えているな。
考えないと分かんないのかこのお姉さん?
暫くして目を開けた。
「ダメじゃない」
「何が?」
「デバイスツール渡してしまったら私、また見えなくなるじゃない!」
そこらへん……考えてみないと分からんかったようだな。
「でも約束は約束でしょ!」
アインさんが首を突き出すと、キリさんはため息を漏らして肩を落とす。
「あぁあ……ようやく壁が取れて、自由になったって言うのに」
「ジーンウイントの……キシさんだっけか。そいつが張ってた干渉を遮る『壁』か?」
「ん?何それ」
いやまて、今壁がどーのこうの言ったの姐さんじゃねぇかよ。
なんだかなぁ、なんかもの凄く……話がかみ合わない。というか話し辛い。
こっちの話が通用しない所……。俺はつい、アベルを思い浮かべてしまうな。
どっちかっていうと……ええと、混ぜて悪いんだが……リアル、アベ-ルイコの方。
「酷いのよ?あたしはここに居なきゃダメなんだ、とかでさ、ユピテルトのマツミヤ君がここに私を封じたの」
「マツミヤ君?」
俺とアインの言葉がハモってしまいました。
「ユピテルトって……大陸座の事だよな?……残りは誰だ?」
「……んー……タカマツさん?」
「……あの人フルネームなんだっけ?」
「確か、ミヤビさんだったと思ったけど……」
つまり、タカ-マツミヤ-ビ……か。
やはり安直な……。
「まぁいっか、最期に良い戦いが出来たし。仕方が無い、あっちに行ってルミザでもひっつかまえて、存分に遊ぶ事にしようっと」
キリさんの呟きに俺は斜め上を見上げる。
ルミザ……どっかで聞いた事があるような気がするとリコレクトすると、ミスト王から聞いた戯曲『北神の恋』を思い出している。
そうだ、南の方位神ってルミザって名前じゃなかったっけか。
方位神は大陸座と似たような存在だが、背負っているのが精霊という八つの属性ではなく、最大17方位という空間であるという違いがある……という説明をレッドからされた事を思い出せる。
大陸座と方位神の違いって何よ?って疑問に思っていたからリオさんからも聞いたよな。ようするに神様だ。大陸座よりもずっと昔から神のよう扱いを受けている『人格者』達。
「ルミザを捕まえる?遊ぶ……?あっちってドコだ?」
「決まってるじゃない」
と答えておいて、具体的な名称が思い出せなかったのか。暫く三つの目を泳がせてからキリさんは答えた。
「開発者レイヤーよ」
「そこに方位神もいるのかよ!?」
「居ちゃまずいの?」
いや、方位神なんて居ても居なくても問題ない、神という『概念』だもんな。ぶっちゃけどうでもいいのか?
「まずいんじゃない?」
所が俺の頭の上にいつものように登りこんだアインが首をかしげている。
「どうしてだよ。方位神ってのこそ概念だろ、概念って事はその伝承があればいいって事で、実在する必要はないだろうが。大陸座だって本来存在出来ないもので見えたり触れたり出来るのが『おかしい』のだと軍師連中が言ってた訳だし。大陸座はデバイスツールとキャラクターがあるから存在してるんだろ?方位神なんてはなからこっちの世界に触れられない、キャラクターだけの存在だろうが」
そう、それだ!と俺、自分で言っておいて思わず納得するね。
方位神は言い換えれば『キャラクター』なんだよ。
このトビラ世界、中から言えば八精霊大陸の中で定義されている神というキャラクターなのだ。リアル例に出して悪いがマンガやアニメのキャラクターと同じ。オリンピックなんかの時にキャンペーンキャラクターがいるのと同じ。
あれは実在はしないだろ。実際の人物を指しているんではない。あくまで仮想の中に作られた人格『概念』。
そういうのを神と例えてこの世界では信奉していたりする。
というか、そもそも宗教に置ける神とはそういう位置づけに限りなく近いんじゃぁないのだろうか?神学はよくわからないので俺は、アニメキャラクターと同じようなもんだろという頭の悪い例えしか出来ないのだが。
とにかく方位神とはこの世界にとって神のキャラクターなのだ。……いや、実際神様になって宗教をも興しているのは西方方位神のシュラードだけだっけか?
「だから、あたし達は今大陸座をその開発者レイヤーに退避させているでしょ?大陸座が赤旗の原因になっているから大陸座を完全消去しようって話になってるじゃない。開発者レイヤーごと!」
「あ!」
と言う事は、つまり……大陸座と一緒に、開発者レイヤーに居るらしい方位神も全部消去って事なのか!
方位神というキャラクターもこの世界から……消える?
「そんな話は聞いてないよなぁ……」
てっきり大陸座だけ消去だと思っていたのに。方位神も一緒に消えちまうって事なのか……?
いやまずその前に。
開発者レイヤーとやらを消去してもこの世界には、何も影響はないのか?キャラクターという形で深くこの世界に根ざしている概念を、一体全体どうやって消去するのだろう?そこらへん、開発者側の話なのでさっぱり俺には分からない。
消えるのは……概念であって蓄積された情報ではないという事だろうか。
システム的には実在した事にはなっていない方位神という『キャラクター』は、情報という側面としては確実にあるのかもしれない。ただレイヤー、すなわち存在階層が違うので一般的には実在している風には見えない。
ようするに、方位神というキャラクターは『開発者レイヤー』という特殊な所にいる。
本来この開発者レイヤーにいる人格も、概念も、実世界トビラあるいは八精霊大陸に干渉が出来るものではない。
ところが今回デバイスツールやら何やらが投入された事により、大陸座というものが世界に干渉をした。出来る存在に存在階層を変移させた訳だが……かつては、方位神も同じように世界に干渉する方法を持っていたのかもしれん。
ところが今は、方位神はそういう干渉を止めて、誰も手が届かない、同時にどこにも手が届かない何処か、曰く……『開発者レイヤー』に退避している……そういう事か?
この思考は戦士ヤトが出来る事じゃないな。サトウ-ハヤトである俺だから考えられる事だ。
本来このように世界がシステムだ、ゲームだという考えはするべきじゃないし、この世界に混ぜては行けないものなのかもしれない。俺はそのように思ってなるべくこういうゲームだとかいう認識を改めてするような事をしないように最近気を付けていたが……。
大陸座相手にしているときくらいいいよな?一応、デバッカーっていう役目もあるんだし。
……とすると、デバイスツールを取り上げた大陸座だけに留まらず、どうにも方位神も混在しているらしいその『開発者レイヤー』を消してしまって問題はないのか。
……無いんだよな。
無いからレイヤーを消してしまおうって開発者主任の高松さんは言っている。
つまり、この世界で語られている大陸座、方位神という概念の消去は、すなわち語られた歴史、蓄積情報までもが連動して消えると言う意味では無いのだろうと思う。そこまで消す必要は無い。あと、多分技術的にそれは不可能だろう。
方位神や大陸座というものが昔いました、あるいは神として存在しますという歴史は、すでに大陸の中で語られ、刻まれ、残されている。
ようするにそこまで消してしまう訳ではないって事なのではないか、と俺は思うのだ。
というか、方位神と大陸座が『いた』という歴史を根本から消したら歴史の改ざんが必要になるだろう?その改ざんは世界を全く別のものに変えてしまう。
ぶっちゃけて『今』を破壊するのと同じだ……と、開発者達は言っていたはずだな。
このバグの混在した世界を正すために、ゲームとして、システムの外側から干渉するとそういう処理になってしまう。
だから俺達は内側に来ていて、内側の理屈で神とその概念を当たり障りのない世界に追いやる作業をこなしている。
とりあえず、大丈夫かどうかってのは俺が考えるトコじゃない。
トビラの開発者である高松さんが大丈夫と言うのだから大丈夫なのだ。ただどうして大丈夫かという理屈を思えば恐らく、そんな所じゃないかなと思う。
「約束は約束だしね」
そう言ってキリさん、ずぶりと何の躊躇いもなく自分の額にある第三の目に指を突っ込んだ!!!驚いて躊躇した俺らをよそに、何事もなかったかのように額から指を引き抜く。
すると、さっきまで確かにあった目が額から消えている。
替わりに差し出された掌の上には……。
何もない……よ、ね?
俺は確認するようにアインを見上げていたが、アインも俺を確認するように見下ろしている。
「悪いわねぇ、イシュタルトには形が無いのよ」
「……はぁ」
形がない……そういや、形がないという特徴もイシュタルトを表す特徴にあったかもしれないとリコレクト。
「目には見えないの。でも貴方がそこにあると思えばそこにあるから」
俺は、目には見えない何かを受け取るジェスチャーをした。目に見えないどころか重さも感覚もない。
完全に何もない。
すると少し慌てたようにキリさんは俺の何もない、手を掬い上げる様に触れて支えた。
「無い、と思っちゃダメ。そう思ったらそこにはないんだから」
「……はぁ」
俺は気の抜けた返事をするしかできない。わ、わけがわからん!助けて頭のいい人!
「あー……というか、とりあえず貴方で持っていた方が良いわ。手っ取り早く体の中に入れなさい」
「体の中に?」
ナーイアストのデバイスツールのように、俺の体の中に埋め込めというのか。誰かに頼んで入れて貰うにも、形がなけりゃどうしようもないんじゃないのか?
「……貴方の体の中にある石の効力は、もう消えかかっているわよ?」
「え?」
キリさんにはナーイアストの石の事は話していないのに。
何で分かるんだ?
そんな顔を俺がしていたらしく、笑いながらキリさんは自分の、もはや何もない額を指さす。
「イシュタルトの第三眼は全てを見通す真実の瞳よ。それ、無いとまずいんでしょ。貴方の青い旗も消えかかっているのが私には見える。随分おかしな存在の仕方をしているみたいだけど……とりあえず、青い旗を立てる替わりにはなると思うから」
「どうするんだよ?」
「分かんないかな?ここに入れるのよ」
そう言って俺の額を指す。
「俺は、大陸座なんて継がないって言ってるだろ!?」
「分かってるわよ、大体、デバイスツールを手放せって時点であたしに課せられている『ここにいろ』という役割は終わってるじゃない」
最初から俺達はそう言っているのだが!
それを嫌だと言ったのはどこの誰ですかっ!
どうやらホントに人の話を聞かない人のようです。
「なんで地域に縛る必要があるのよ?ねぇ」
同意を求められても困ります。知るかそんな理由!知らないけれど、そうしたって事はようするに、
「理由、あったんじゃないのか?」
キリさんをイシュタル国に留めておかなければ行けない何か、理由があったんだろ?と答えておくのだった。
この落ち着きのない大陸座は、居場所を定められるのを嫌ったって事だと思う。
なもんで大陸座ユピテルト、マツミヤさんとやらは強引にキリさんをこの場に封印したという所だろうか?
きっとそうでもしなきゃ、魔王討伐第一陣にキリさん本人が現れていただろう……そういう事をしそうな元気なお姉さんだ。そういうトンチキな所、ユピテルトのマツミヤさんは見越したのではないかと思われる。
「そのマツミヤさんの封印が解けたって事は……どういう事かしら?」
アインの問いに、俺もはっとなって顔を上げる。
今それが解けている、と云う事は?
「まさか、ユピテルトに何かあったのか?!」
「あったんじゃない?私、これで世界を広く見渡せるからねぇ~。つい最近、突然やっとこ全部の枷が外れたのよね」
キリさん、楽天的に笑っているが……ん?そういえば……この人俺にデバイスツール渡したのにまだ……消えないんだな?
伸びをするように両手を組み合わせて頭上に伸ばし、キリさんはため息を漏らす。
「ああ、でも悪い事しちゃったなぁ」
「は?……誰に」
いきなり話を飛ばすなお姉さん。
俺達レッドら程頭が良く無いので穴だらけの話を追いかけるのに振り回されっぱなしである。
「ここの闘技場の人達よ……酷い暴動だったわ」
クルエセルの暴動の事か?
どうして、それが、何が悪い?
「酷いのよ、私をここに縛り付けておくのにマツミヤ君ったらセーフティも付けてったの!しかもキシの奴のも暫く働いていたでしょ?何重封印されてんのよあたし!どーせあたしには関係ないのに」
大陸座を世界から隔てる轍が、ジーンウイントのキシさんの仕業である事は分かっているようだ。何それとかとぼけたくせに。
……いや、それは彼女にとっては関係ないと今言ったな。だから何それ、だったのか?
とてもアホそうなこのお姉さん、それでも真実の大陸座であるからして事実はよく見渡していたのだろう。
というか、この人アホの癖に物事を見通しすぎている。
自分一人で分かっていて、相手が分かってないって事を完全に見落としているんだな。相手が理解している事を確認もしないでどんどん自分の都合で話しやがるんだ。
「私ね、ここの闘技場に封じられていたのよ。実際にはその狭間ね。私、他の大陸座と違ってかなり自由に出来る理力を持っているし……だから、まだもうちょっと粘ってここにいる訳なんだけど……。貴方達青い旗立てているからまだ見えているのよ。他の人にはもう、あたしの姿は見えないと思うから」
「どうしてだよ」
「物理的な所を補えていないもの。それは貴方にデバイスツールとして渡しちゃったでしょ?で、普通はその途端存在が破綻して開発者レイヤーに送られちゃうんだけど……とりあえず手放したけど貴方がデバイスツールの存在をまだ疑っているからその所為で、まだ全部渡し切れてないの。それだからまだ、私は粘れている訳」
……だめだ、訳が分からん。ホントに助けて頭のいい人。
そんな俺の理解不能な様子はちゃんと察するのな。キリさん、苦笑している。
「ようするに、私の所為なの」
ん?あれ?やっぱり察してない?
「……何が?」
この人の話のぶっ飛びようはほんと手に負えない。
「だから……エトオノとクルエセルが潰れたのは私の所為。私が、私が自由になりたいからそのようにお願いしたの」
どうしてそうなるのかよく分からないだけに信じられない。よく分からない。
「誰に?」
「ルル・クルエセルに」
それは……。
誰だっけとリコレクトした時一緒にテリーが思い出されてくる。ルル、憶えている、知っている人だ。
でも親しくはない。
ぶっちゃけ俺はルルの奴を見た事がほとんど無い。大体、奴隷同然の剣闘士と、雇い主では無い別の闘技場主の上層ファミリーであるルルと言葉を交わす事などありえない。
ルルの存在を知らない奴も多かったはずだ。アベルは……知っていたみたいだけどかなり嫌っていたかもしれない。
クルエセルの次期支配人だ、という話を聞いたことがある。その肩書通り箱入りで、滅多に姿を見せないとも聞いている。
だから、クルエセルのルルってどんな奴だよ?とクルエセルの専属剣闘士であるテリーに聞いた事がある。そうしたら、奴はもの凄く嫌な顔をしたのを俺は……憶えているんだな。リコレクトしている。
聞くな。あれは『狂っている』ので有名だ、俺は関わり合いたくない。
そうやってテリーから一刀両断された事を思い出している。
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