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11章 禁則領域 『異世界創造の主要』
書の2前半 リプレイ『リベンジだそうです』
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■書の2前半■ リプレイ REPLAY & REVENGE
そういや、今週って連休だったんだな。この前も連休だったのに、カレンダーは年々ズレる訳だから当たり年ってのはあるんだろうけど。俺が学生だった頃より連休増えているような気がするのだが気のせいだろうか。祝日関係ない仕事していると疎くなっちまってダメだな。
本日、暦的には振り替え休日。
仕事を終わらせて、用事がなければ乗らない路線に乗かって……レッドと待ち合わせ場所に向かう俺。
久しぶりだなぁここに来るのは。
昔ファンだったゲームのオンリーがあった時に覗いて以来だ。
そんなリアルな活動、俺一人じゃ無理だったんでナッツに付き合って貰ったっけ。まぁ、そこまで入れ込んだゲーム作品が過去にあったと思いねぇ。
だからってこういう場に足を運ぶっていうのはよっぽどの事だろうと、今の俺は思ったりする。
昔ほど1つにどっぷりって事は今じゃなくなって、好きな作品を1つに絞り込む事がめっきり出来なくなった。有る程度の深度は保ったまま、広くなった守備範囲にこういうトコまでにまで意識はいかなくなったんだな。
「あー……何?何のオンリだ?」
紙袋を下げたオンナノコが出入りするその建物を遠目に眺める。
誘導スタッフがプラカード掲げて立っているのが見えるが、イベント名が微妙すぎて何のジャンルなのかよくわからん。
え?そもオンリーとは何だって?
要するにその作品だけを取り扱う一種ファンイベントの事を略してオンリーと言ったりするのだが……ええと……あえてここがどの界隈なのかというのは言いませんが、開催されている内容については説明差し上げないといけませんよね。
……要するにだ。今俺達が遠巻きにうかがっているのは―――同人誌即売会、その一種。
同人誌とは、自費出版の事だと前にご説明差し上げたと思うのでその当たり、詳しくお知りになりたい方は自らググって頂くようにお願いしよう。その同人誌の売り買いをするフィールドをイベントと言ったりする。公式である事は同人誌というモノの属性的に無い事で、分類的にはファンの為のファンによるファンイベントだ。
で、その同人誌即売会にはジャンルを絞って開催される『オンリー』というのがある訳だ。ゲームだけとかアニメだけとか、分類がおおざっぱな場合もあれば、その中のシリーズや作品のみ、果てはその中のカップリング、誰と誰ダケ縛りというのもあるとか。
聞いた話だ、俺は詳しくない、詳しくないんだから!
対し、隣にいる百科事典の異名を持つレッドはそうじゃない、何だと聞けば的確なお答えが返ってくる。
たとえ奴に同人趣味があろうがなかろうが、だ。
何の情報であろうと精通している、というのがこのリアルにおけるレッド、イガラシ-ミギワのちょっと異常な長所である。
「ゲームのオンリーですね、円卓戦誓シリーズの王道カップリング縛りだったはずです。確か、ダイレクトに裏切姉々さん所のジャンルではなかったと思います。ですがアインさんは大ファンだとかでゲスト参加する、という話を聞いています。恐らくこのオンリーに向けての話でしょう。ゲスト参加で新刊があると聞いていますので恐らく、彼女は会場に現れるのではないかと思われます」
ああ、俺もそのゲームは持っている。というより、俺が持っていないと言うゲームの方が恐らく少ないのだが。
円卓戦誓とは、やけに美化された某騎士達を操作して敵を蹴散らすアクションゲームだ。ゲームとしては悪くない。セールスもそこそこだったしおかしなバグとかも報告されていない。だが如何せん結構昔からある路線なので斬新性は無いな。シナリオはなかなか良い方じゃないかな、そこがウケてるのかもしれん。
むしろ何で稼いでいるかって、そういう昔の同じタイプのゲームをやった事が無い層と、美形なキャラクターを見逃せない層だろう。アインは間違いなく後者。
アインは同人屋、しかも紛う事無く腐女子だ。
裏切姉々、『ウラギリネーネー』とは奴らのサークルの名前である。
サークルというのは……うーん、よくわからんがその同人誌即売会とかのイベントに出る時の名前らしい。そこにアインとカインが属しているというのが分かるが……屋号みたいなもんか?
「成る程、奴らのサークル参加ではないって事だな」
奴ら、とは。サークルは一人の場合も有るが二人以上の場合もある。裏切姉々はアインとカインの二人サークルだと聞いている。レッドの推測が正しければ、その二人そろってここには来てないはずだ、と。
「ええ、あくまで個人的なゲストで」
つまるところ、阿部瑠の姉のカナコ嬢はここには来ていないという事であろう。ぶっちゃけて阿部瑠以上に姉カナコ、通称カインが苦手である俺だ。あれとは出来れば遭遇したくない。
そんなどっぷり同人な姉と友人を持つ阿部瑠であるが、同人は良いとしてメイン腐趣味である姉らの趣味は、正直理解出来ないと言っている。ああ、頼む理解しないでくれ。理解しなくて良し。
なので基本的に阿部瑠はこういう会場に進んで足を踏み入れたりはしない様だ。ただ……某大型イベントにはアルバイトとして駆り出されたりはしているらしい。あと、姉らに弱みを握られてたまにコスプレさせられたりもするらしい。ご愁傷様。
「アインさんの話では、相方さんが王道路線反対だ、とかで」
カインはこのゲームが好きではないか、あるいは好きなカップリングとやらがその王道?とかいうものと違うので相容れないと拒否しているという事か。同じゲーム内で仲良くすればよいのに、カインの話を聞くに同じジャンル同じキャラ同士でも受けとか攻めとかいうものが逆転しただけでコミュニティとして破綻し、敵対関係にまでなってしまう事もあるらしい。
―――受けと攻めの説明も俺にしろと云うのか!?嫌だよ、それは頼むから各自ググってよ!
ともかく、カップリングの些末な違いによるアホな派閥争いがあるらしい。だが、これは女や腐に限った話じゃねぇな……男だって貧乳属性やら眼鏡属性やら会長属性やら、様々な派閥によって二次キャラにおけるアンチや信者によるくだらない闘争はある。
あと、くだらないと思いつつも譲れない時は確かに、何が何でも譲れないのだという気持ちは俺は、判らないでもない。たまに俺もそういうくだらなくてアホな事を言うのは否定しない。
貧乳萌えだ、と……?そんなもの世界に存在などしない!
ふぅ、ちょっと脳内で盛り上がってしまいました。
とにかく、そういう『譲れない思い』ってのが顕著に現れるらしい同人において、嫌いなジャンルにいちいち出るなんて事は無いだろう。
「成る程、なら間違いなくカインはここにはいない」
とはいえ……。
……その王道カップリング?……間違いなく男と男じゃん。王道なのに男と男かよ!おおよそ予測はしていたが出来れば、せめて健全カプであって欲しかった……。
え?何それだって?……だから……腐女子ってのはそーいうジャンルを愛好する人達の事を言うんだってば!健全っていうのはぶっちゃけ冷静に考えるとどこが健全なのだ?とは思うが、男と女の恋愛カップリングの場合に冠せられている。
……そういうのがメインのイベントに男は入れるのか?
入れるか否かは置いといて、感情的に言って俺は物凄く入りたくないぞ!
「大丈夫ですよ。そういう趣味の男の人だって確実に世間の中にはおりますので。入場までは拒否されたりしません。白い目で見られるとは思いますけど」
「やだよ、俺白い目で見られるの耐えられねぇ」
「ボクだってこんなジャンル好きなのかと思われたら嫌です」
「あー?お前腐趣味はねぇんだ?」
「なんで在る事前提になっているんですか」
オタクな女に向けた偏見ですな。そりゃすいません。
「とりあえず、お前の方が白い目で見られる度合いは少ないだろ?」
「そんな事ありません」
「いや、ダイジョブだ。どこからどう見てもお前は男装の令嬢だ」
「……そうですか?」
う、ちょっと地雷だったようで明らかに不機嫌な顔をされてしまった。なんだよ、その通りの癖に!性癖じゃなくてお前の男装はシュミだろうが!
そんな感じで会場入り口が見えるコンビニの前で言い合っていた俺達。何を言い合っていようが聞き耳立てていようが、全体的に見て聞かない振りをしてくれるこの現代社会に置いて、近づいてくる人の存在は脅威だ。
明らかにこちらを伺っている気配に気が付いて俺は驚いてそちらを振り返る。
「こんな所で何してるのよもぅ、見に来たらこれだもの」
と、楽しそうに笑う人物が一瞬誰だかわからずすっかり慌ててしまった。
「アイさん、ちょうどよかった」
そうだよな、リアルだとチビドラゴンじゃねぇからなぁ。
俺達を伺って背後で笑っていたのはアインだった。
案内されて会場に入るのはなぜか、それ程恥ずかしくない。だって言い訳できるもん、俺の趣味じゃありませんが友人の趣味なので付き合いで入ってるんです、みたいな?
「たっちゃん、これあたしの友人で撤収手伝わせるから入れても良いかな?」
おお?それは条件に入ってませんでしたが?と俺とレッドは顔を見合わせるが。まぁ、撤収作業くらい手伝ってもいいかとお互い妥協して顔を前に戻す。
「んー、まぁパンフも売り切れてるし……こっそり入れてー」
「了解ー」
女子特有の語尾を延ばす言葉のやり取りをぼんやり聞いていると、アインは再び俺とレッドの手を掴んで会場入り口から中入らず、休憩室の方に引っ張っていく。と、思ったら休憩室の奥の立ち入り禁止バリケードが築かれている通路に引っ張り込まれた。それで控え室を突っ切って……スタッフオンリーのトビラから……会場へ。
成る程、これがこっそりな。
しかし、別に俺達は会場に入る必然性は無いのだが、アインさんや。
明らかにまごついた俺達の腕を、アインはしかし強引に引っ張っていく。予測通り女だらけなんだけど一応男は……いるみたい。殆どがコスプレイヤー付きのカメコ(カメラマン)なんじゃねーのか?やっぱり目立つ、男性陣、圧倒的に頭数少ないんだから!
うう、いっそ女装して存在をごまかしたいくらい恥ずかしい。いや、俺に女装が似合うかというのはまた別問題だが。
アインに引っ張っていかれるままに進んでいくと……なんか突然、黄色い歓声が俺達を出迎えるではないか。
……何だ?そのようにレッドを伺うと奴の顔が引きつっている。何が起きているのか大凡察している顔だ。……まさか。
俺も危惧したのだがやっぱり、それかッ!?
「何よアイン!それあんたの連れだったん!?」
「びっくりしちゃった。もう、大笑い」
確かにアインさん、爆笑していたよな……。
「これ、例のヤト氏」
なんだその紹介。……例のって何だ、俺の口元も引きつってきた。
「もう、ダメじゃない。あんな所で仲良くしてたら格好のオチ対象になっちゃうわよ」
いや、もう完全にヲチされてたんだろうが!オチ、ウォッチの俗的な略語だ。要するに『観察されてた』って事である。
うう、やっぱこういう所には近づくもんじゃねぇな。間違いなくレッドは男として見られている。俺が完全に勘違いしていた通り、一見ではどっちの性別なのかよくわからん、コイツは有る意味整った顔をしているのだ。
それはともかく男だと認識されたら、この会場に集っているのだろう大半のとある属性を持つ方々から言わせる所明らかな、あやしい、俺は理解したくないしするつもりもない様な妄想を喚起するのだろう。
レッドが異色すぎて目立っていたに違いない、おかげで俺もそれに巻き込まれたんだ。
別に、仲良くはしてないけどなぁ……腐フィルターを通すと話をしているだけで仲良く見えるのか。恐ろしい。
アインと俺達、および俺とレッドに関しても『仕事仲間』だという事で、その場への説明を誤魔化す。俺はこの場に強引に連れてこられてしまった通り、中々アインに対し話すきっかけってものが作れずに目を泳がせているわけだが……。その後も積極的にアクションが取れるでもなく、人と話すのに忙しいアインとソロで話す機会がなかなか訪れず、結局撤収作業まで本当に力仕事を手伝うハメに。
男手少ないから助かるわーと、かなり女性スタッフの皆さんにチヤホヤされてしまった。でも、なんか嬉しくない。
奴らの本性知ってる所為かな……うん、偏見なんだけど。
でもアインさんは、俺達の用事が自分に在る事はちゃんと把握している。そりゃそうだ、腐趣味は俺とレッドに無いんだからな!それなのにこんな所に現れるってんだ、都合を把握しないアインではないだろう。
スタッフ手伝いの打ち上げがあったみたいなんだけど、それをパスして俺達に付き合ってくれるみたいだ。
やけに元気な女性イベントスタッフの人たちとしきりに手を振って分かれたのを見送り、俺はアインを伺う。
「いいのか?」
「いいのいいの、あんまりこっちのジャンルに深入りするとカインちゃんと体裁保てなくなるから。その事情はみんなにも話してあるし。あたしがこのイベ手伝ったのはカインちゃんには秘密だからねー」
相方だったら以心伝心なのかと思いきや、まぁ色々あるようである。ただその当たりはあまり話すつもりが無いようだ。
本人がいないからといって、あれこれグチをドコでもかしこでも漏らすような人じゃないって事だな。
世の中にはそういう二面性が顕著な奴もいたりして、俺はそんなリアルでの付き合いがあった事に辟易したのを思い出す。今人の悪口や陰口を言っているこいつは……俺の見えない所で俺について同じく誰かに話すのだろう、と思ったら付き合うのが気持ち悪くなってイヤになったもんだ。
一度疑い始めると全てがそうであるように思えてしまったりもする。
被害妄想、自意識過剰もいいところだとは思うがどうしても、その自分の妄想を止められずリアル世間から俺は逃げているんだよなぁ。
「カインとは、実は仲悪いのか?」
「そんな訳無いでしょ。そりゃ、大好きって訳じゃないかもしれないけど。深い付き合いをしていれば見たくない事も見えちゃうことはあるわ。それがイヤだなと思う事も有る。でもそれはそれ、逆に見習わなきゃと思うところも沢山あるんだもの。完璧な人なんていないのよ」
アインは、賢い人だよな。そうだ、人間悪しきところは誰だって有る。聖人君主はいない。たとえそれが理想としてあって努力をしていても。してない奴もいるけど。ほら、例えば俺とか?
そういうの弁えない事には他人とは付き合えないのは分かっているが、なかなか上手く処理できないから俺は世間的に脱落しているダメ人間で、アインはきっとその対極にあるんだろうなぁ。
「……悪い」
「いいのいいの、気にしないで。さて……どっかでお茶でもしながら話をしよっか。仕事とか忙しくてさ、今日以外時間取れないし。一度ヤト氏とはカインちゃんやアベちゃんが居ない所で話がしたかったしね」
「あ、ボクは案内しただけですので……」
ようやくスキを見つけたとばかりに撤退しようとしたレッドを……抱きついて止めるアイン。この人もスキンシップ過剰、だよなぁ……。
びっくりしてレッドは固まっている。
「ごめんね、男の子扱いしちゃって。でも、いいのよねこれで?」
って事は、アインも察していたのか!レッドがリアルで女だって事!
まさか……阿部瑠の奴が話したんじゃあるまいな?話すなよって、一応俺からも釘さしておいたというのに。
「誰から聞いたんだ」
「……あなたもご存じなんですか」
話してないのにと、完全に怯んだレッドにアインはにっこり笑う。
「別に、誰にも何も聞いていないわよ。あら、誰かにそれを口止めしているの?分かったのは勘なんだけどな。あたし、その当たりはかなり鼻が利くのよ?」
要するにこれは……カマ掛けられた、って事か。
いやぁ、鼻利くのは中の方のチビドラゴンの技能じゃね?
近場のファミレスを携帯端末でナビしながら目指す道中、アインは無駄にはしゃいで俺とレッドの間に入り、強引に腕を組んで来た。
「うはは、両手に葉っぱ!こういうの一度やってみたかったんだよねぇ~」
などとちょっと不気味に微笑んでいる。
俺から言わせるとこういう時の女の微笑みは『不気味』だ。まぁ、でも彼女可愛いからいいや。振り払う理由も上手く見つけられず放置する俺。しかしレッドは恥ずかしいみたい。
「迷惑なら辞めるよ?」
すぐその雰囲気に気が付いたようでアインはレッド伺う。でも本当に嫌がられるなら彼女はこういう事自体をやらないだろうな。改めて聞かれてしまってレッドはさらに困惑気味だ。
「い、いえ……全体的に触れ合いに対し慣れていないだけですので、お構いなく」
「お堅いんだから、もぅ。しっかし、こういうネタに困らない人達が一杯周りにいて私も鼻が高いわ。このネタで暫くイケるくらい」
どんなネタだ、恐ろしい。
「お前、楽しそうだよな」
俺は、彼女がなぜここまで楽しいそうなのかよく分からない。心の中の声が口を出て、小さくぼやいてしまっていた。
「楽しいわよぅ、ん、じゃぁこうしてみようか」
そう言ってアインは俺の左腕と組んでいた腕を解いて……かなり強引に俺とレッドの腕を組ませ……自分は回り込んで俺の右腕にぶら下がる。
「ほら、これなら『在る意味』両手に花だけど?どう?楽しくない?」
うーん……。俺は、かなり顔を赤くしているレッドを見ながら……顔を上に上げる。看板ばっかりの町の上空。
……状況を俯瞰するにかなり、恥ずかしくないかこれ?
「微妙?」
照れ隠しにそのように答えてしまう俺だ。
「嬉しくないの?もぅ、素直に嬉しいって言えばいいのに」
素直になんか言えるかっつーの。
俺はそう思って無言で、ゆっくり両腕を振りほどく。
「あら、随分対応が違うのね?」
「……何と?」
「いやねぇ、アベちゃんが言うに『ひっつくな!』とかって乱暴に振り払われるとか聞いていたものだから」
と、にやにや笑いながら聞かないでください、俺はそっぽを向いてしまう。
あー……どうにもトビラの中で勘違いする思いって、リアルの事情の反映が強いと思う。トビラの中にリアルでの思いが持ち込まれているのは割と、間違いないかもしれん。トビラは一方通行だ。こっちからアッチはありだけれど、アッチからこっちは無い訳だし。
俺がトビラの中でアインが好きだと言っているのは、こっちのリアルのアインにも少なからず好意があるからだろう。無ければあそこまでチビドラゴンにアプローチはしていないと俺は、こっちから戦士ヤトの心情を俯瞰していた。
やっぱり、トビラはゲームなんだな。
トビラはプレイヤーの為にある世界なんだ。
独立している異世界の上に俺達が降り立っているように綺麗に騙される、凄まじいゲーム。
何考えてるんだ俺、そんなのあたりまえだ。俺が今現実とする世界に居てそれが現実であると認識し、トビラはゲームだと認識している以上、その価値観が覆る事などない。俺が今この世界にいる限りここが現実。
トビラの中でヤトが考えている常識はココでは通用しない。アレは全部、こっちでは嘘だ。逆に今俺が考えている事はトビラの中では正しくない。
トビラを介し、逆転する価値観。逆転している事は理解できる。しかし逆転するからこそ比較して物事を考える事がどうしても出来ない。
トビラの中が、現実であるはずがない。
そんなのすでに分かり切っている事だろうに。
それでも少しその結論に迷うのは同じ事が反復されたからだ。でも、反復したのはトビラじゃない。結局……こっちの事情を持ち込んだ俺達なんだよな。
戦士ヤト・ガザミがアベル・エトオノを受け入れなかった事情。
サトウ-ハヤトがアベ-ルイコの側に居たくない理由。
根本は同じだ。他人の所為じゃない。
全部『俺』の都合。
お前に俺は見合わない、だから、俺を選ぶのは止めろ。
実際、見合ってない。
頼むから俺を一人にしてくれ。
一人になりたい奴を構わなくてもいいのに。
一人じゃホントは嫌なくせにと言われて、確かに否定が出来ない、俺はダメ人間だよ。
でもさ、一人が嫌なのは俺じゃない……お前なんだろ。
そのように言い返したら……どうだろう。
きっと彼女、傷つくだろうな。
俺は、彼女を傷つけたい訳じゃない。だからそれは言えない。傷ついた彼女を受け入れられる訳でもないのだし。
その店舗は初めて使うが、チェーンだから慣れた感覚がある某ファミレスに落ち着いて……俺はフリードリンクを揃えた所で腹を割って、アインに問題の話を振った。
どうやって何を、彼女に話そうか。考える時間はたっぷりあった。
「なぁ、……前にカインが俺に言った言葉を覚えているか?」
「……ん?何時の話?」
「……真っ当な理由もないくせにウチの妹を苛めるな、って奴」
俺はアインに向けて、かつて阿部瑠の姉であるカインが俺に言った言葉を反復してみせる。
はっきり憶えている。あれは……痛かった。
心に刺さり込んできた、だから今でもはっきり憶えているんだ。
なまじ阿部瑠をないがしろにしたという意識があって、阿部瑠の姉が妹を大切にしている気持ちも分かるだけに、超が付く程その通りで言い返す言葉もなく……俺は萎縮するしかなかった。
俺、トビラみたいに一人っ子じゃない。実は、姉と妹がいたりする。
兄弟姉妹の絆の強さってのが少なからず、分かってる。……兄弟姉妹で疎遠な奴らもいるけどな。少なくとも俺は……妹と仲良かったし。妹苛められたらそりゃ、兄としては苛めた相手をフルボッコにしたいと思う。
ようするにそれと同じだろ?俺はすぐに同じだと把握できた。置き換えが出来てしまったから阿部瑠の姉、カインからの一方的な攻撃的言葉攻めに耐えた。
でも殴られっぱなしってのもなぁ、一応俺男の子だし。感情的になってじゃぁどうすればいいんだと反論したらアンタが大人の対応すれば良いんでしょと間髪カウンターを貰った。
俺からは十分に大人の対応をしたつもりだったんだぞ。それだけに腹が立ったんだけど、自分に自信が無いのはそりゃもう折り紙つきな訳で。途端俺は自分の判断が間違っていたのかと思って何も言い返せなくなってしまった。
後に冷静になって考えるに、どうしても阿部家の連中は俺に、折れて欲しかったみたいだ。阿部家の連中も冷静じゃなかったって事だな。しかし、あそこまで言われたらもぅ、俺だって意固地にもなる。
「あぁ、『つまりアンタには他に好きな人が居る訳ね?そう言う事でしょ?』って啖呵切られて、その通りだが悪いか?と返しちゃったあの時の事ね。そういえば、ヤト氏とはあの時初めて顔合わせしたのよねぇ」
そう、そうだった。アインとは何処かで会っていたはずだと思っていたが、そこで初めて会っていたのか。
んで、阿部瑠の告白を受け付けずにチキン男が妹を振ったという事態を知った姉が、怒って俺を呼び出して、という事件の後どうなったかというと……。
カインから嫌がらせが始まった訳です。
つまり、こういう事だなともの凄い悪趣味な事に巻き込まれた訳だ。ダイレクトな表現じゃなかったがあまりにもシチュエーションが同じで、これは俺に対する嫌がらせだとすぐに理解できるものだった。
何をされたか?
だから。
奴らの得意な自費出版で、俺はネタにされてしまったのである。何のネタとかはいい加減察してくれ。アインが友人らに『これが例のヤト氏よ』と紹介した理由はそこらへんにあるんだろう。あそこの連中、俺がどういう事をやらかした人物なのか、きっとカイン姉から聞いているに違いない。あるいは、かつてカインが俺にやった嫌がらせ本の存在を知っているに違いないのだ。
くそ、昔散々それで鬱った俺だが……まだ過去の笑い話には出来てない。完全に立ち直れていない。気分が悪くなってきた。
所で俺は、別に奴らの同人誌など読む訳じゃない。あの時先にそうだと気が付いて激怒したのは……妹の阿部瑠の方だったりする。
阿部瑠は……あの時俺の肩を持ってくれたよな。
だからこそ今、友人という関係が続いている気もしないでもない。
姉の悪行に、破綻しかけた俺と阿部瑠の一致団結したのな。同じ『被害』を受けた者同士、そういう事で団結したのであってそれ以外の何でもない。そも、別に阿部瑠を現すアイコンは登場していないのに阿部瑠がソレを嫌がった理由が俺にはよくわからなかったりするのだが。
カインの、俺への『嫌がらせ本』発行は全て、妹を思っての事だったらしいがその妹から怒られて姉妹仲が悪くなったと聞いている。それもこれも俺が悪いとカインからはなじられたので更に心証は悪くなった俺だ。しかしその替わり破たんしたはずの俺と阿部瑠の仲が『友人』まで回復してしまったのだから……計算づくだったのか?
だとしたら関心通り越して恐ろしくなる。
「あれは……ちょっと悪ふざけ過ぎたよね。でもあの本、おかげさまですごいリアルで良かったーって、かなりウケたんだよ」
アインめ、悪く思っているとか言う癖に笑っているぞその顔ッ!どっちだよ!
「その後どう?進展はしてないみたいねぇ、阿部ちゃんもカインちゃんの横槍が嫌でしばらく、あなたの事はカインちゃんに報告しなくなったみたいだし。カインちゃんもあれで結構反省したんだから。あの本が原因で妹からあそこまで嫌がられるとは思ってなかったみたい。阿部ちゃんの為にやったつもりみたいだったし。……でも、今もカインちゃんは阿部ちゃんの応援をしているんだよ。それはさ、ヤト氏に向けても同じだと思う」
いい迷惑だっつの。
「阿部ちゃんがリベンジ目論んでる雰囲気察して、また仲良くしているらしい事とか阿部ちゃんも、少しカインちゃんに話すようになったみたいで。それで最近ぶっちゃけて『あのシリーズ』の新刊話に乗り気になってくれてるの!あ、安心して。キャラはトビラの中の方に切り替えておいておいてあげるから」
「ソレは全然安心できませんが!」
「あはは、やっぱ嫌かぁ。冗談として受け取ってよぉ」
当然俺は『あのシリーズ』とやらの大被害者なのだから渋い顔をして向けてやった。
「あ、あのなぁ……」
「んー……そういえばR・リコレクトしたら、中の方もまた変な展開になってたわよねぇ」
その言葉にレッドが、メニューを見ていた所顔を上げる。
「瑠衣子さんもそんな事を言っていましたね、何が起きているんです?」
ああ、じゃぁまだトビラの中のログ的にはレッドらと別行動になってて、合流出来てないんだろうか?事情説明がお互いに出来てない所そういう事になるのだろう。
「多分、中の方で何があったかってのは全部、ログCC許可出ないと思うわ」
アインは苦笑してレッドに答える。
「どうしてです?」
「確か、口止めされてたと思うもの。中のヤト君から」
確かに俺はチビドラゴンのアインに向けて、この件は誰にも言わないでくれよと言ったかもしれないと思い出す。
「いいじゃないレッド、中のあなたには関係ないでしょ……それとも、関係在るのかしらッ!?」
目を輝かせるな目を。
お約束を裏切らない、雰囲気を丁度良く保ってくれるアインには脱帽だ。俺は苦笑いを浮かべながらコーヒーを啜った。
「ホントそういうのにしか興味ないのか、お前」
そういうの、というのは不健全な他人の恋愛、というような意味だ。言葉足らずであるが意図は伝わったようで俺の問いに、初めてアインが明らかに照れたな。
「いやぁ、それは……別腹っていうか?」
「じゃぁ……その。中の予告通り俺がちょっとがんばってみたら……どうする?」
それは何だ?と事情を全く知らないレッドが怪訝な顔をしている。
ふっふっふ……これは俺とアインさんだけの話なんだぜっ。
前週は全く思い出せていなかったが、その反省をふまえその当たり、今回はばっちりR・リコレクトして夢からリアルに引っ張ってきた俺を褒めてくれ。
リアル俺には無理かもな、とか言ってくれたな戦士ヤト。
みろ、なんとか王手までこぎ着けてみたぜ……ッ!
うは、なんかドキドキしてきた。
思えば俺から告りに行ったの今回が、生まれて初めてなんじゃねぇの?
「うーん……」
焦らされているうちに少しずつ気持ちが落ち着いてくる。
……俺は、初めてだからのこの変な感覚を知らない。うん、なんか変な気分だ。
阿部瑠の奴もこんな気持ちだったのかなぁと思ったら……思ったら。
ごめんなさいと言われたら……どうよ。
いやでも、俺は撃沈されるの前提で告白した所があるからなぁ、そういう後ろ向き姿勢が俺の、紛れもなく悪い所です。
「条件があるかなぁ」
だがしかし、ダイレクトにごめんなさいには行かなかった。
途端再びドキドキが止まらない俺。
「とりあえず、あたしはこれでちゃんと社会人だから。フリーター相手は勘弁よね」
……一瞬思考が固まった。う、それは、何も言葉が出てこない……。
ぐっさりと真っ当なご意見に貼り付けにされている俺にレッドが苦笑した。
「そう云う所、割と女性はシビアですからねぇ」
分かったように言うじゃねぇかレッド!
「うん……でもね、私の趣味を分かった上で私を選んでくれる人ってホント希少だと思ってる。そう云う意味では、あんまり悪くないかなっては思ってるんだ」
俯いてメニューをめくりながらアインは早口に言った。
「でもね、でも……我が儘言ったらやっぱり、仕事が出来る人がいいの。社会的安定って意味でも……でも、あたし自分の趣味諦めるつもりもない。あたし、会社ではオタクなの隠してるから。これで結構会社の同僚とか、取引先さんとか、それらしい誘いは受けるし、おつきあいもそれなりにあったりするの」
ところで、貴方達食べるの決まった?と突然聞いてくる。
照れ隠しだなぁアインさん。
一旦話はそこで途切れ、食べるものを注文した所でアインの話は続く。
「でね、どーしてもあたしはフルヤ-アイの仮面を被っちゃう。どうしても、アインという本性が言えない」
いやまて、フルヤ-アイの方がお前の本性だろう。
……いや?この場合は……違うのか?
「言ったらドン引きされちゃう。折角築いたノーマルな私が崩れるのは、無理。ダメ。考えられない。でも……本性隠してお付合いはもっと無理。そこまでして付き合わなくてもいいやってなっちゃう」
めんどくせぇなぁというのが俺の本心だが、女ってのは間違いなくそういうめんどくさい事をやる生物だよな。仮面被るのが上手いよお前ら。
仮面を被るような行為は男だってやるけど男と根本的に違うのは、女の仮面は男を騙すものでは無いって所か。あくまで、仮面は本性を隠すためにある。男だって本性隠して仮面くらい被っているが、その理由はちょっと違う気がする。男は仮面の下を本気で隠したいとは思ってない所はあるかもしれない。だから、仮面を取られるのにそんなに危機感は抱いてなかったりもするのだ。
正直、仮面の下も察して欲しいと思っている、というか。仮面を被るのも一種のスタイル、というか。……少なくとも俺はそうなんだけど、どうだろうな?
「動機は……ヤト氏と似てるんだ」
俺と?どういう意味だろう。
「お付合いしてって近づいてくる人をさ、彼氏いますから!って言えたら余計な嘘とか言って誤魔化す必要ないじゃない?」
そんな理由で虫除けにあたしと付き合って、などと言われたら引くわな。たとえ好きでも、別の下心ありかよと思うとヘコむ。
しかしよく考えると俺も、ぶっちゃけて同じ理由でアインに告っているんだよな。
そうでした、実はそうですごめんなさい。
アインと付き合っていると言えば阿部瑠は諦めるのでは無かろうか、とか画策してました。
すいませんでしたッ!
そのように無言で事情に気が付いて反省する俺に、あ、うんお互い様だからそんな沈まないで~と割と本気でアインは心配してくれた。
そ、そうですね。もの凄くお互い様です……。
「でもね、それで他の誰かとお付合い出来るかって言ったら、そんな事出来る人いないのよ。私の本性知っていて付き合ってくれる人。酷いのは私の方だから、だって出来ればちゃんとした社会人がいいとか言ってるんだよ?凄い我が儘で、酷いでしょ。その方が言い訳が立つから、とか。……打算的でご免ね」
「いや、別に」
「あとね、もう一つ懸念があるの」
俺は顔を上げる……と、注文したのが運ばれてきた為再び話は中断。食べる方向と食べ物に対する何ともない会話を挟んだ後、再びアインは続きを話し出した。
「結局さ、ヤト氏は阿部ちゃんの事好きなんでしょ?」
あやうく気管に入りそうになり俺はむせる。
レッドがチャーハンを口に運ぼうとしたのを止めて、そんな俺を凝視。
「ねー、ほらッ図星!」
「好きならここまで必死に距離置こうと思わんだろッ!」
咽せた所為で感情的に吐露してしまった俺だ。
「違うのよ、だから。それが好きな理由になってるの!だって、あなたが阿部ちゃんと距離を置いた理由は……」
「やめろ、あんな奴俺は好きじゃねぇ。ぶっちゃけて俺のストライクゾーンは年上だ!俺はロリじゃねぇ!」
「ああ、でもそれはYATOの属性ですよね」
冷静にレッドから突っ込まれ、確かに仮想ウェブ上で俺が喚いている事だがそれで悪いかッ?
「つまり、それはここにいる貴方の本当の好み、だとは限らない訳でしょう」
「う……いきなり冷静なツッコミは止せ」
「図星、ですね」
レッドからにっこり微笑んで言われた。俺は言い返す言葉が無くだんまりしてしまう。ああ、だからそれは肯定になっちゃうんだよ俺!でも、否定の言葉が上手くひねり出せない。
て事は、指摘された通り事実って事か?まさか!
違う、俺は……あれは友人で良い。良いんだ。今のままの関係で構わない。これ以上俺の方に踏み込んで来て欲しくない。
友人で居て欲しい。
そう願ったのは俺か。
これ以上の進展は望まないと、トビラの中で唱えたのは俺の方か。
もっとましな展開って何だ。
その先を望んでいないのなら、これ以上の展開など無いんだ。
じゃぁ阿部瑠はどうなのだろう。
奴も必死に良い展開を願ったのだろうか?俺がこのままでいいと願った為に……進展はなかったのか。
妥協したのか?俺の思いに。
負けたのか。俺と違って何も望みはしなかったのか。
お互いが望む、その鬩ぎ合い。
リアルでこうなって、トビラの中でもああなった。
望むが勝る、思いによって作られている世界の理。
そういや、今週って連休だったんだな。この前も連休だったのに、カレンダーは年々ズレる訳だから当たり年ってのはあるんだろうけど。俺が学生だった頃より連休増えているような気がするのだが気のせいだろうか。祝日関係ない仕事していると疎くなっちまってダメだな。
本日、暦的には振り替え休日。
仕事を終わらせて、用事がなければ乗らない路線に乗かって……レッドと待ち合わせ場所に向かう俺。
久しぶりだなぁここに来るのは。
昔ファンだったゲームのオンリーがあった時に覗いて以来だ。
そんなリアルな活動、俺一人じゃ無理だったんでナッツに付き合って貰ったっけ。まぁ、そこまで入れ込んだゲーム作品が過去にあったと思いねぇ。
だからってこういう場に足を運ぶっていうのはよっぽどの事だろうと、今の俺は思ったりする。
昔ほど1つにどっぷりって事は今じゃなくなって、好きな作品を1つに絞り込む事がめっきり出来なくなった。有る程度の深度は保ったまま、広くなった守備範囲にこういうトコまでにまで意識はいかなくなったんだな。
「あー……何?何のオンリだ?」
紙袋を下げたオンナノコが出入りするその建物を遠目に眺める。
誘導スタッフがプラカード掲げて立っているのが見えるが、イベント名が微妙すぎて何のジャンルなのかよくわからん。
え?そもオンリーとは何だって?
要するにその作品だけを取り扱う一種ファンイベントの事を略してオンリーと言ったりするのだが……ええと……あえてここがどの界隈なのかというのは言いませんが、開催されている内容については説明差し上げないといけませんよね。
……要するにだ。今俺達が遠巻きにうかがっているのは―――同人誌即売会、その一種。
同人誌とは、自費出版の事だと前にご説明差し上げたと思うのでその当たり、詳しくお知りになりたい方は自らググって頂くようにお願いしよう。その同人誌の売り買いをするフィールドをイベントと言ったりする。公式である事は同人誌というモノの属性的に無い事で、分類的にはファンの為のファンによるファンイベントだ。
で、その同人誌即売会にはジャンルを絞って開催される『オンリー』というのがある訳だ。ゲームだけとかアニメだけとか、分類がおおざっぱな場合もあれば、その中のシリーズや作品のみ、果てはその中のカップリング、誰と誰ダケ縛りというのもあるとか。
聞いた話だ、俺は詳しくない、詳しくないんだから!
対し、隣にいる百科事典の異名を持つレッドはそうじゃない、何だと聞けば的確なお答えが返ってくる。
たとえ奴に同人趣味があろうがなかろうが、だ。
何の情報であろうと精通している、というのがこのリアルにおけるレッド、イガラシ-ミギワのちょっと異常な長所である。
「ゲームのオンリーですね、円卓戦誓シリーズの王道カップリング縛りだったはずです。確か、ダイレクトに裏切姉々さん所のジャンルではなかったと思います。ですがアインさんは大ファンだとかでゲスト参加する、という話を聞いています。恐らくこのオンリーに向けての話でしょう。ゲスト参加で新刊があると聞いていますので恐らく、彼女は会場に現れるのではないかと思われます」
ああ、俺もそのゲームは持っている。というより、俺が持っていないと言うゲームの方が恐らく少ないのだが。
円卓戦誓とは、やけに美化された某騎士達を操作して敵を蹴散らすアクションゲームだ。ゲームとしては悪くない。セールスもそこそこだったしおかしなバグとかも報告されていない。だが如何せん結構昔からある路線なので斬新性は無いな。シナリオはなかなか良い方じゃないかな、そこがウケてるのかもしれん。
むしろ何で稼いでいるかって、そういう昔の同じタイプのゲームをやった事が無い層と、美形なキャラクターを見逃せない層だろう。アインは間違いなく後者。
アインは同人屋、しかも紛う事無く腐女子だ。
裏切姉々、『ウラギリネーネー』とは奴らのサークルの名前である。
サークルというのは……うーん、よくわからんがその同人誌即売会とかのイベントに出る時の名前らしい。そこにアインとカインが属しているというのが分かるが……屋号みたいなもんか?
「成る程、奴らのサークル参加ではないって事だな」
奴ら、とは。サークルは一人の場合も有るが二人以上の場合もある。裏切姉々はアインとカインの二人サークルだと聞いている。レッドの推測が正しければ、その二人そろってここには来てないはずだ、と。
「ええ、あくまで個人的なゲストで」
つまるところ、阿部瑠の姉のカナコ嬢はここには来ていないという事であろう。ぶっちゃけて阿部瑠以上に姉カナコ、通称カインが苦手である俺だ。あれとは出来れば遭遇したくない。
そんなどっぷり同人な姉と友人を持つ阿部瑠であるが、同人は良いとしてメイン腐趣味である姉らの趣味は、正直理解出来ないと言っている。ああ、頼む理解しないでくれ。理解しなくて良し。
なので基本的に阿部瑠はこういう会場に進んで足を踏み入れたりはしない様だ。ただ……某大型イベントにはアルバイトとして駆り出されたりはしているらしい。あと、姉らに弱みを握られてたまにコスプレさせられたりもするらしい。ご愁傷様。
「アインさんの話では、相方さんが王道路線反対だ、とかで」
カインはこのゲームが好きではないか、あるいは好きなカップリングとやらがその王道?とかいうものと違うので相容れないと拒否しているという事か。同じゲーム内で仲良くすればよいのに、カインの話を聞くに同じジャンル同じキャラ同士でも受けとか攻めとかいうものが逆転しただけでコミュニティとして破綻し、敵対関係にまでなってしまう事もあるらしい。
―――受けと攻めの説明も俺にしろと云うのか!?嫌だよ、それは頼むから各自ググってよ!
ともかく、カップリングの些末な違いによるアホな派閥争いがあるらしい。だが、これは女や腐に限った話じゃねぇな……男だって貧乳属性やら眼鏡属性やら会長属性やら、様々な派閥によって二次キャラにおけるアンチや信者によるくだらない闘争はある。
あと、くだらないと思いつつも譲れない時は確かに、何が何でも譲れないのだという気持ちは俺は、判らないでもない。たまに俺もそういうくだらなくてアホな事を言うのは否定しない。
貧乳萌えだ、と……?そんなもの世界に存在などしない!
ふぅ、ちょっと脳内で盛り上がってしまいました。
とにかく、そういう『譲れない思い』ってのが顕著に現れるらしい同人において、嫌いなジャンルにいちいち出るなんて事は無いだろう。
「成る程、なら間違いなくカインはここにはいない」
とはいえ……。
……その王道カップリング?……間違いなく男と男じゃん。王道なのに男と男かよ!おおよそ予測はしていたが出来れば、せめて健全カプであって欲しかった……。
え?何それだって?……だから……腐女子ってのはそーいうジャンルを愛好する人達の事を言うんだってば!健全っていうのはぶっちゃけ冷静に考えるとどこが健全なのだ?とは思うが、男と女の恋愛カップリングの場合に冠せられている。
……そういうのがメインのイベントに男は入れるのか?
入れるか否かは置いといて、感情的に言って俺は物凄く入りたくないぞ!
「大丈夫ですよ。そういう趣味の男の人だって確実に世間の中にはおりますので。入場までは拒否されたりしません。白い目で見られるとは思いますけど」
「やだよ、俺白い目で見られるの耐えられねぇ」
「ボクだってこんなジャンル好きなのかと思われたら嫌です」
「あー?お前腐趣味はねぇんだ?」
「なんで在る事前提になっているんですか」
オタクな女に向けた偏見ですな。そりゃすいません。
「とりあえず、お前の方が白い目で見られる度合いは少ないだろ?」
「そんな事ありません」
「いや、ダイジョブだ。どこからどう見てもお前は男装の令嬢だ」
「……そうですか?」
う、ちょっと地雷だったようで明らかに不機嫌な顔をされてしまった。なんだよ、その通りの癖に!性癖じゃなくてお前の男装はシュミだろうが!
そんな感じで会場入り口が見えるコンビニの前で言い合っていた俺達。何を言い合っていようが聞き耳立てていようが、全体的に見て聞かない振りをしてくれるこの現代社会に置いて、近づいてくる人の存在は脅威だ。
明らかにこちらを伺っている気配に気が付いて俺は驚いてそちらを振り返る。
「こんな所で何してるのよもぅ、見に来たらこれだもの」
と、楽しそうに笑う人物が一瞬誰だかわからずすっかり慌ててしまった。
「アイさん、ちょうどよかった」
そうだよな、リアルだとチビドラゴンじゃねぇからなぁ。
俺達を伺って背後で笑っていたのはアインだった。
案内されて会場に入るのはなぜか、それ程恥ずかしくない。だって言い訳できるもん、俺の趣味じゃありませんが友人の趣味なので付き合いで入ってるんです、みたいな?
「たっちゃん、これあたしの友人で撤収手伝わせるから入れても良いかな?」
おお?それは条件に入ってませんでしたが?と俺とレッドは顔を見合わせるが。まぁ、撤収作業くらい手伝ってもいいかとお互い妥協して顔を前に戻す。
「んー、まぁパンフも売り切れてるし……こっそり入れてー」
「了解ー」
女子特有の語尾を延ばす言葉のやり取りをぼんやり聞いていると、アインは再び俺とレッドの手を掴んで会場入り口から中入らず、休憩室の方に引っ張っていく。と、思ったら休憩室の奥の立ち入り禁止バリケードが築かれている通路に引っ張り込まれた。それで控え室を突っ切って……スタッフオンリーのトビラから……会場へ。
成る程、これがこっそりな。
しかし、別に俺達は会場に入る必然性は無いのだが、アインさんや。
明らかにまごついた俺達の腕を、アインはしかし強引に引っ張っていく。予測通り女だらけなんだけど一応男は……いるみたい。殆どがコスプレイヤー付きのカメコ(カメラマン)なんじゃねーのか?やっぱり目立つ、男性陣、圧倒的に頭数少ないんだから!
うう、いっそ女装して存在をごまかしたいくらい恥ずかしい。いや、俺に女装が似合うかというのはまた別問題だが。
アインに引っ張っていかれるままに進んでいくと……なんか突然、黄色い歓声が俺達を出迎えるではないか。
……何だ?そのようにレッドを伺うと奴の顔が引きつっている。何が起きているのか大凡察している顔だ。……まさか。
俺も危惧したのだがやっぱり、それかッ!?
「何よアイン!それあんたの連れだったん!?」
「びっくりしちゃった。もう、大笑い」
確かにアインさん、爆笑していたよな……。
「これ、例のヤト氏」
なんだその紹介。……例のって何だ、俺の口元も引きつってきた。
「もう、ダメじゃない。あんな所で仲良くしてたら格好のオチ対象になっちゃうわよ」
いや、もう完全にヲチされてたんだろうが!オチ、ウォッチの俗的な略語だ。要するに『観察されてた』って事である。
うう、やっぱこういう所には近づくもんじゃねぇな。間違いなくレッドは男として見られている。俺が完全に勘違いしていた通り、一見ではどっちの性別なのかよくわからん、コイツは有る意味整った顔をしているのだ。
それはともかく男だと認識されたら、この会場に集っているのだろう大半のとある属性を持つ方々から言わせる所明らかな、あやしい、俺は理解したくないしするつもりもない様な妄想を喚起するのだろう。
レッドが異色すぎて目立っていたに違いない、おかげで俺もそれに巻き込まれたんだ。
別に、仲良くはしてないけどなぁ……腐フィルターを通すと話をしているだけで仲良く見えるのか。恐ろしい。
アインと俺達、および俺とレッドに関しても『仕事仲間』だという事で、その場への説明を誤魔化す。俺はこの場に強引に連れてこられてしまった通り、中々アインに対し話すきっかけってものが作れずに目を泳がせているわけだが……。その後も積極的にアクションが取れるでもなく、人と話すのに忙しいアインとソロで話す機会がなかなか訪れず、結局撤収作業まで本当に力仕事を手伝うハメに。
男手少ないから助かるわーと、かなり女性スタッフの皆さんにチヤホヤされてしまった。でも、なんか嬉しくない。
奴らの本性知ってる所為かな……うん、偏見なんだけど。
でもアインさんは、俺達の用事が自分に在る事はちゃんと把握している。そりゃそうだ、腐趣味は俺とレッドに無いんだからな!それなのにこんな所に現れるってんだ、都合を把握しないアインではないだろう。
スタッフ手伝いの打ち上げがあったみたいなんだけど、それをパスして俺達に付き合ってくれるみたいだ。
やけに元気な女性イベントスタッフの人たちとしきりに手を振って分かれたのを見送り、俺はアインを伺う。
「いいのか?」
「いいのいいの、あんまりこっちのジャンルに深入りするとカインちゃんと体裁保てなくなるから。その事情はみんなにも話してあるし。あたしがこのイベ手伝ったのはカインちゃんには秘密だからねー」
相方だったら以心伝心なのかと思いきや、まぁ色々あるようである。ただその当たりはあまり話すつもりが無いようだ。
本人がいないからといって、あれこれグチをドコでもかしこでも漏らすような人じゃないって事だな。
世の中にはそういう二面性が顕著な奴もいたりして、俺はそんなリアルでの付き合いがあった事に辟易したのを思い出す。今人の悪口や陰口を言っているこいつは……俺の見えない所で俺について同じく誰かに話すのだろう、と思ったら付き合うのが気持ち悪くなってイヤになったもんだ。
一度疑い始めると全てがそうであるように思えてしまったりもする。
被害妄想、自意識過剰もいいところだとは思うがどうしても、その自分の妄想を止められずリアル世間から俺は逃げているんだよなぁ。
「カインとは、実は仲悪いのか?」
「そんな訳無いでしょ。そりゃ、大好きって訳じゃないかもしれないけど。深い付き合いをしていれば見たくない事も見えちゃうことはあるわ。それがイヤだなと思う事も有る。でもそれはそれ、逆に見習わなきゃと思うところも沢山あるんだもの。完璧な人なんていないのよ」
アインは、賢い人だよな。そうだ、人間悪しきところは誰だって有る。聖人君主はいない。たとえそれが理想としてあって努力をしていても。してない奴もいるけど。ほら、例えば俺とか?
そういうの弁えない事には他人とは付き合えないのは分かっているが、なかなか上手く処理できないから俺は世間的に脱落しているダメ人間で、アインはきっとその対極にあるんだろうなぁ。
「……悪い」
「いいのいいの、気にしないで。さて……どっかでお茶でもしながら話をしよっか。仕事とか忙しくてさ、今日以外時間取れないし。一度ヤト氏とはカインちゃんやアベちゃんが居ない所で話がしたかったしね」
「あ、ボクは案内しただけですので……」
ようやくスキを見つけたとばかりに撤退しようとしたレッドを……抱きついて止めるアイン。この人もスキンシップ過剰、だよなぁ……。
びっくりしてレッドは固まっている。
「ごめんね、男の子扱いしちゃって。でも、いいのよねこれで?」
って事は、アインも察していたのか!レッドがリアルで女だって事!
まさか……阿部瑠の奴が話したんじゃあるまいな?話すなよって、一応俺からも釘さしておいたというのに。
「誰から聞いたんだ」
「……あなたもご存じなんですか」
話してないのにと、完全に怯んだレッドにアインはにっこり笑う。
「別に、誰にも何も聞いていないわよ。あら、誰かにそれを口止めしているの?分かったのは勘なんだけどな。あたし、その当たりはかなり鼻が利くのよ?」
要するにこれは……カマ掛けられた、って事か。
いやぁ、鼻利くのは中の方のチビドラゴンの技能じゃね?
近場のファミレスを携帯端末でナビしながら目指す道中、アインは無駄にはしゃいで俺とレッドの間に入り、強引に腕を組んで来た。
「うはは、両手に葉っぱ!こういうの一度やってみたかったんだよねぇ~」
などとちょっと不気味に微笑んでいる。
俺から言わせるとこういう時の女の微笑みは『不気味』だ。まぁ、でも彼女可愛いからいいや。振り払う理由も上手く見つけられず放置する俺。しかしレッドは恥ずかしいみたい。
「迷惑なら辞めるよ?」
すぐその雰囲気に気が付いたようでアインはレッド伺う。でも本当に嫌がられるなら彼女はこういう事自体をやらないだろうな。改めて聞かれてしまってレッドはさらに困惑気味だ。
「い、いえ……全体的に触れ合いに対し慣れていないだけですので、お構いなく」
「お堅いんだから、もぅ。しっかし、こういうネタに困らない人達が一杯周りにいて私も鼻が高いわ。このネタで暫くイケるくらい」
どんなネタだ、恐ろしい。
「お前、楽しそうだよな」
俺は、彼女がなぜここまで楽しいそうなのかよく分からない。心の中の声が口を出て、小さくぼやいてしまっていた。
「楽しいわよぅ、ん、じゃぁこうしてみようか」
そう言ってアインは俺の左腕と組んでいた腕を解いて……かなり強引に俺とレッドの腕を組ませ……自分は回り込んで俺の右腕にぶら下がる。
「ほら、これなら『在る意味』両手に花だけど?どう?楽しくない?」
うーん……。俺は、かなり顔を赤くしているレッドを見ながら……顔を上に上げる。看板ばっかりの町の上空。
……状況を俯瞰するにかなり、恥ずかしくないかこれ?
「微妙?」
照れ隠しにそのように答えてしまう俺だ。
「嬉しくないの?もぅ、素直に嬉しいって言えばいいのに」
素直になんか言えるかっつーの。
俺はそう思って無言で、ゆっくり両腕を振りほどく。
「あら、随分対応が違うのね?」
「……何と?」
「いやねぇ、アベちゃんが言うに『ひっつくな!』とかって乱暴に振り払われるとか聞いていたものだから」
と、にやにや笑いながら聞かないでください、俺はそっぽを向いてしまう。
あー……どうにもトビラの中で勘違いする思いって、リアルの事情の反映が強いと思う。トビラの中にリアルでの思いが持ち込まれているのは割と、間違いないかもしれん。トビラは一方通行だ。こっちからアッチはありだけれど、アッチからこっちは無い訳だし。
俺がトビラの中でアインが好きだと言っているのは、こっちのリアルのアインにも少なからず好意があるからだろう。無ければあそこまでチビドラゴンにアプローチはしていないと俺は、こっちから戦士ヤトの心情を俯瞰していた。
やっぱり、トビラはゲームなんだな。
トビラはプレイヤーの為にある世界なんだ。
独立している異世界の上に俺達が降り立っているように綺麗に騙される、凄まじいゲーム。
何考えてるんだ俺、そんなのあたりまえだ。俺が今現実とする世界に居てそれが現実であると認識し、トビラはゲームだと認識している以上、その価値観が覆る事などない。俺が今この世界にいる限りここが現実。
トビラの中でヤトが考えている常識はココでは通用しない。アレは全部、こっちでは嘘だ。逆に今俺が考えている事はトビラの中では正しくない。
トビラを介し、逆転する価値観。逆転している事は理解できる。しかし逆転するからこそ比較して物事を考える事がどうしても出来ない。
トビラの中が、現実であるはずがない。
そんなのすでに分かり切っている事だろうに。
それでも少しその結論に迷うのは同じ事が反復されたからだ。でも、反復したのはトビラじゃない。結局……こっちの事情を持ち込んだ俺達なんだよな。
戦士ヤト・ガザミがアベル・エトオノを受け入れなかった事情。
サトウ-ハヤトがアベ-ルイコの側に居たくない理由。
根本は同じだ。他人の所為じゃない。
全部『俺』の都合。
お前に俺は見合わない、だから、俺を選ぶのは止めろ。
実際、見合ってない。
頼むから俺を一人にしてくれ。
一人になりたい奴を構わなくてもいいのに。
一人じゃホントは嫌なくせにと言われて、確かに否定が出来ない、俺はダメ人間だよ。
でもさ、一人が嫌なのは俺じゃない……お前なんだろ。
そのように言い返したら……どうだろう。
きっと彼女、傷つくだろうな。
俺は、彼女を傷つけたい訳じゃない。だからそれは言えない。傷ついた彼女を受け入れられる訳でもないのだし。
その店舗は初めて使うが、チェーンだから慣れた感覚がある某ファミレスに落ち着いて……俺はフリードリンクを揃えた所で腹を割って、アインに問題の話を振った。
どうやって何を、彼女に話そうか。考える時間はたっぷりあった。
「なぁ、……前にカインが俺に言った言葉を覚えているか?」
「……ん?何時の話?」
「……真っ当な理由もないくせにウチの妹を苛めるな、って奴」
俺はアインに向けて、かつて阿部瑠の姉であるカインが俺に言った言葉を反復してみせる。
はっきり憶えている。あれは……痛かった。
心に刺さり込んできた、だから今でもはっきり憶えているんだ。
なまじ阿部瑠をないがしろにしたという意識があって、阿部瑠の姉が妹を大切にしている気持ちも分かるだけに、超が付く程その通りで言い返す言葉もなく……俺は萎縮するしかなかった。
俺、トビラみたいに一人っ子じゃない。実は、姉と妹がいたりする。
兄弟姉妹の絆の強さってのが少なからず、分かってる。……兄弟姉妹で疎遠な奴らもいるけどな。少なくとも俺は……妹と仲良かったし。妹苛められたらそりゃ、兄としては苛めた相手をフルボッコにしたいと思う。
ようするにそれと同じだろ?俺はすぐに同じだと把握できた。置き換えが出来てしまったから阿部瑠の姉、カインからの一方的な攻撃的言葉攻めに耐えた。
でも殴られっぱなしってのもなぁ、一応俺男の子だし。感情的になってじゃぁどうすればいいんだと反論したらアンタが大人の対応すれば良いんでしょと間髪カウンターを貰った。
俺からは十分に大人の対応をしたつもりだったんだぞ。それだけに腹が立ったんだけど、自分に自信が無いのはそりゃもう折り紙つきな訳で。途端俺は自分の判断が間違っていたのかと思って何も言い返せなくなってしまった。
後に冷静になって考えるに、どうしても阿部家の連中は俺に、折れて欲しかったみたいだ。阿部家の連中も冷静じゃなかったって事だな。しかし、あそこまで言われたらもぅ、俺だって意固地にもなる。
「あぁ、『つまりアンタには他に好きな人が居る訳ね?そう言う事でしょ?』って啖呵切られて、その通りだが悪いか?と返しちゃったあの時の事ね。そういえば、ヤト氏とはあの時初めて顔合わせしたのよねぇ」
そう、そうだった。アインとは何処かで会っていたはずだと思っていたが、そこで初めて会っていたのか。
んで、阿部瑠の告白を受け付けずにチキン男が妹を振ったという事態を知った姉が、怒って俺を呼び出して、という事件の後どうなったかというと……。
カインから嫌がらせが始まった訳です。
つまり、こういう事だなともの凄い悪趣味な事に巻き込まれた訳だ。ダイレクトな表現じゃなかったがあまりにもシチュエーションが同じで、これは俺に対する嫌がらせだとすぐに理解できるものだった。
何をされたか?
だから。
奴らの得意な自費出版で、俺はネタにされてしまったのである。何のネタとかはいい加減察してくれ。アインが友人らに『これが例のヤト氏よ』と紹介した理由はそこらへんにあるんだろう。あそこの連中、俺がどういう事をやらかした人物なのか、きっとカイン姉から聞いているに違いない。あるいは、かつてカインが俺にやった嫌がらせ本の存在を知っているに違いないのだ。
くそ、昔散々それで鬱った俺だが……まだ過去の笑い話には出来てない。完全に立ち直れていない。気分が悪くなってきた。
所で俺は、別に奴らの同人誌など読む訳じゃない。あの時先にそうだと気が付いて激怒したのは……妹の阿部瑠の方だったりする。
阿部瑠は……あの時俺の肩を持ってくれたよな。
だからこそ今、友人という関係が続いている気もしないでもない。
姉の悪行に、破綻しかけた俺と阿部瑠の一致団結したのな。同じ『被害』を受けた者同士、そういう事で団結したのであってそれ以外の何でもない。そも、別に阿部瑠を現すアイコンは登場していないのに阿部瑠がソレを嫌がった理由が俺にはよくわからなかったりするのだが。
カインの、俺への『嫌がらせ本』発行は全て、妹を思っての事だったらしいがその妹から怒られて姉妹仲が悪くなったと聞いている。それもこれも俺が悪いとカインからはなじられたので更に心証は悪くなった俺だ。しかしその替わり破たんしたはずの俺と阿部瑠の仲が『友人』まで回復してしまったのだから……計算づくだったのか?
だとしたら関心通り越して恐ろしくなる。
「あれは……ちょっと悪ふざけ過ぎたよね。でもあの本、おかげさまですごいリアルで良かったーって、かなりウケたんだよ」
アインめ、悪く思っているとか言う癖に笑っているぞその顔ッ!どっちだよ!
「その後どう?進展はしてないみたいねぇ、阿部ちゃんもカインちゃんの横槍が嫌でしばらく、あなたの事はカインちゃんに報告しなくなったみたいだし。カインちゃんもあれで結構反省したんだから。あの本が原因で妹からあそこまで嫌がられるとは思ってなかったみたい。阿部ちゃんの為にやったつもりみたいだったし。……でも、今もカインちゃんは阿部ちゃんの応援をしているんだよ。それはさ、ヤト氏に向けても同じだと思う」
いい迷惑だっつの。
「阿部ちゃんがリベンジ目論んでる雰囲気察して、また仲良くしているらしい事とか阿部ちゃんも、少しカインちゃんに話すようになったみたいで。それで最近ぶっちゃけて『あのシリーズ』の新刊話に乗り気になってくれてるの!あ、安心して。キャラはトビラの中の方に切り替えておいておいてあげるから」
「ソレは全然安心できませんが!」
「あはは、やっぱ嫌かぁ。冗談として受け取ってよぉ」
当然俺は『あのシリーズ』とやらの大被害者なのだから渋い顔をして向けてやった。
「あ、あのなぁ……」
「んー……そういえばR・リコレクトしたら、中の方もまた変な展開になってたわよねぇ」
その言葉にレッドが、メニューを見ていた所顔を上げる。
「瑠衣子さんもそんな事を言っていましたね、何が起きているんです?」
ああ、じゃぁまだトビラの中のログ的にはレッドらと別行動になってて、合流出来てないんだろうか?事情説明がお互いに出来てない所そういう事になるのだろう。
「多分、中の方で何があったかってのは全部、ログCC許可出ないと思うわ」
アインは苦笑してレッドに答える。
「どうしてです?」
「確か、口止めされてたと思うもの。中のヤト君から」
確かに俺はチビドラゴンのアインに向けて、この件は誰にも言わないでくれよと言ったかもしれないと思い出す。
「いいじゃないレッド、中のあなたには関係ないでしょ……それとも、関係在るのかしらッ!?」
目を輝かせるな目を。
お約束を裏切らない、雰囲気を丁度良く保ってくれるアインには脱帽だ。俺は苦笑いを浮かべながらコーヒーを啜った。
「ホントそういうのにしか興味ないのか、お前」
そういうの、というのは不健全な他人の恋愛、というような意味だ。言葉足らずであるが意図は伝わったようで俺の問いに、初めてアインが明らかに照れたな。
「いやぁ、それは……別腹っていうか?」
「じゃぁ……その。中の予告通り俺がちょっとがんばってみたら……どうする?」
それは何だ?と事情を全く知らないレッドが怪訝な顔をしている。
ふっふっふ……これは俺とアインさんだけの話なんだぜっ。
前週は全く思い出せていなかったが、その反省をふまえその当たり、今回はばっちりR・リコレクトして夢からリアルに引っ張ってきた俺を褒めてくれ。
リアル俺には無理かもな、とか言ってくれたな戦士ヤト。
みろ、なんとか王手までこぎ着けてみたぜ……ッ!
うは、なんかドキドキしてきた。
思えば俺から告りに行ったの今回が、生まれて初めてなんじゃねぇの?
「うーん……」
焦らされているうちに少しずつ気持ちが落ち着いてくる。
……俺は、初めてだからのこの変な感覚を知らない。うん、なんか変な気分だ。
阿部瑠の奴もこんな気持ちだったのかなぁと思ったら……思ったら。
ごめんなさいと言われたら……どうよ。
いやでも、俺は撃沈されるの前提で告白した所があるからなぁ、そういう後ろ向き姿勢が俺の、紛れもなく悪い所です。
「条件があるかなぁ」
だがしかし、ダイレクトにごめんなさいには行かなかった。
途端再びドキドキが止まらない俺。
「とりあえず、あたしはこれでちゃんと社会人だから。フリーター相手は勘弁よね」
……一瞬思考が固まった。う、それは、何も言葉が出てこない……。
ぐっさりと真っ当なご意見に貼り付けにされている俺にレッドが苦笑した。
「そう云う所、割と女性はシビアですからねぇ」
分かったように言うじゃねぇかレッド!
「うん……でもね、私の趣味を分かった上で私を選んでくれる人ってホント希少だと思ってる。そう云う意味では、あんまり悪くないかなっては思ってるんだ」
俯いてメニューをめくりながらアインは早口に言った。
「でもね、でも……我が儘言ったらやっぱり、仕事が出来る人がいいの。社会的安定って意味でも……でも、あたし自分の趣味諦めるつもりもない。あたし、会社ではオタクなの隠してるから。これで結構会社の同僚とか、取引先さんとか、それらしい誘いは受けるし、おつきあいもそれなりにあったりするの」
ところで、貴方達食べるの決まった?と突然聞いてくる。
照れ隠しだなぁアインさん。
一旦話はそこで途切れ、食べるものを注文した所でアインの話は続く。
「でね、どーしてもあたしはフルヤ-アイの仮面を被っちゃう。どうしても、アインという本性が言えない」
いやまて、フルヤ-アイの方がお前の本性だろう。
……いや?この場合は……違うのか?
「言ったらドン引きされちゃう。折角築いたノーマルな私が崩れるのは、無理。ダメ。考えられない。でも……本性隠してお付合いはもっと無理。そこまでして付き合わなくてもいいやってなっちゃう」
めんどくせぇなぁというのが俺の本心だが、女ってのは間違いなくそういうめんどくさい事をやる生物だよな。仮面被るのが上手いよお前ら。
仮面を被るような行為は男だってやるけど男と根本的に違うのは、女の仮面は男を騙すものでは無いって所か。あくまで、仮面は本性を隠すためにある。男だって本性隠して仮面くらい被っているが、その理由はちょっと違う気がする。男は仮面の下を本気で隠したいとは思ってない所はあるかもしれない。だから、仮面を取られるのにそんなに危機感は抱いてなかったりもするのだ。
正直、仮面の下も察して欲しいと思っている、というか。仮面を被るのも一種のスタイル、というか。……少なくとも俺はそうなんだけど、どうだろうな?
「動機は……ヤト氏と似てるんだ」
俺と?どういう意味だろう。
「お付合いしてって近づいてくる人をさ、彼氏いますから!って言えたら余計な嘘とか言って誤魔化す必要ないじゃない?」
そんな理由で虫除けにあたしと付き合って、などと言われたら引くわな。たとえ好きでも、別の下心ありかよと思うとヘコむ。
しかしよく考えると俺も、ぶっちゃけて同じ理由でアインに告っているんだよな。
そうでした、実はそうですごめんなさい。
アインと付き合っていると言えば阿部瑠は諦めるのでは無かろうか、とか画策してました。
すいませんでしたッ!
そのように無言で事情に気が付いて反省する俺に、あ、うんお互い様だからそんな沈まないで~と割と本気でアインは心配してくれた。
そ、そうですね。もの凄くお互い様です……。
「でもね、それで他の誰かとお付合い出来るかって言ったら、そんな事出来る人いないのよ。私の本性知っていて付き合ってくれる人。酷いのは私の方だから、だって出来ればちゃんとした社会人がいいとか言ってるんだよ?凄い我が儘で、酷いでしょ。その方が言い訳が立つから、とか。……打算的でご免ね」
「いや、別に」
「あとね、もう一つ懸念があるの」
俺は顔を上げる……と、注文したのが運ばれてきた為再び話は中断。食べる方向と食べ物に対する何ともない会話を挟んだ後、再びアインは続きを話し出した。
「結局さ、ヤト氏は阿部ちゃんの事好きなんでしょ?」
あやうく気管に入りそうになり俺はむせる。
レッドがチャーハンを口に運ぼうとしたのを止めて、そんな俺を凝視。
「ねー、ほらッ図星!」
「好きならここまで必死に距離置こうと思わんだろッ!」
咽せた所為で感情的に吐露してしまった俺だ。
「違うのよ、だから。それが好きな理由になってるの!だって、あなたが阿部ちゃんと距離を置いた理由は……」
「やめろ、あんな奴俺は好きじゃねぇ。ぶっちゃけて俺のストライクゾーンは年上だ!俺はロリじゃねぇ!」
「ああ、でもそれはYATOの属性ですよね」
冷静にレッドから突っ込まれ、確かに仮想ウェブ上で俺が喚いている事だがそれで悪いかッ?
「つまり、それはここにいる貴方の本当の好み、だとは限らない訳でしょう」
「う……いきなり冷静なツッコミは止せ」
「図星、ですね」
レッドからにっこり微笑んで言われた。俺は言い返す言葉が無くだんまりしてしまう。ああ、だからそれは肯定になっちゃうんだよ俺!でも、否定の言葉が上手くひねり出せない。
て事は、指摘された通り事実って事か?まさか!
違う、俺は……あれは友人で良い。良いんだ。今のままの関係で構わない。これ以上俺の方に踏み込んで来て欲しくない。
友人で居て欲しい。
そう願ったのは俺か。
これ以上の進展は望まないと、トビラの中で唱えたのは俺の方か。
もっとましな展開って何だ。
その先を望んでいないのなら、これ以上の展開など無いんだ。
じゃぁ阿部瑠はどうなのだろう。
奴も必死に良い展開を願ったのだろうか?俺がこのままでいいと願った為に……進展はなかったのか。
妥協したのか?俺の思いに。
負けたのか。俺と違って何も望みはしなかったのか。
お互いが望む、その鬩ぎ合い。
リアルでこうなって、トビラの中でもああなった。
望むが勝る、思いによって作られている世界の理。
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