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10~11章後推奨 番外編 縁を持たない緑国の鬼

◆BACK-BONE STORY『縁を持たない緑国の鬼 -10-』

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◆BACK-BONE STORY『縁を持たない緑国の鬼 -10-』
 ※ これは、実は隠し事がいっぱいあるナッツ視点の番外編です ※

 最後に一つ、余計なエピソードを入れてやるぜ。へっへ、そうだ……俺の説話だ。

 結局どっちがドッチだと?
 野暮な事を聞きやがる、どっちも俺だ。
 見せかけにだまされちゃぁいけねぇな。魔物化とか魔法とか、なんでもありに見えるかもしれないが……ようするに都合よく見えるようにつじつまを合わせる『手段』でしかねぇんだ。
 それがこの世界に許されている、理を超える理って奴だろ。
 と、エラそうに言ってみたが俺の弁じゃぁねぇな。

 これは俺がとある奴から聞いた受け売りだ。

 さて、最後にナニを余計に付足すかって?これはもう蛇足の域だが知ったこっちゃねぇ。

 俺はご周知の通り、誰かに名前を名乗ったこともない、だが後に『緑国の鬼』と呼ばれるようになるしがない野盗だ。
 成程『鬼』ね、不思議とどこにいても同じように呼ばれるものだな。
 だが俺は、好きで鬼をやっている訳じゃぁねぇ。
 俺に鬼役を押し付けたのは俺を取り巻く環境であり、俺以外の殆ど全ての存在だ。

 今でこそこのように豪胆に語るが、そもそも俺はこういう気の強い性格じゃない。
 むしろ、情けないほどに気の弱い男だったな。いや……性格というのは天性のものじゃぁないんだ。結局置かれている環境がそう作るものだと思うぜ。

 俺を取り巻く環境が、俺をすっかり弱らせたのさ。

 言い訳がましく聞こえるかもしれないが、俺にとっては事実の一つである愚痴を聞いてもらうとすれば……。
 ちょっとした手違いで、ガキの頃にだな。
 ダチを殺してしまった事があるのだ。
 繰り返すが手違いだ、俺に殺意があったわけじゃない。完全な不幸な事故だよ、誓って言う。
 ところがだ、俺がどんなに事故だと訴えても……俺の周りはそれを認めなかったんだな。
 多数決で、俺が『殺した』事になっちまった。

 今現在の俺を見て想像が付く通り、ガキの時分からガタイばっかりは立派でな。ちいとばかし力が有り余っていたんだろう。
 任意じゃないんだ、俺だってどうしてそういう結果になったのか分からねぇよ。
 とにかく、俺が殺した事になってしまった。
 俺には『そういう気質』があるのだという事になってしまった。

 ……俺は、すっかりそれに騙されたのさ。

 それからは転落の一途って奴で、何をしても俺は、殺人者という肩書を取り外す事が出来なかった。
 しまいにゃ、自暴自棄になって自ら殺人鬼になったってか?
 違う、そうじゃない。
 その前に俺にはまだ、出来る事があるだろ?

 俺は耐えられなくなって、俺を鬼と指さす連中の所から必至で逃げたのさ。
 へへ、そこが小せぇって評価してるわけだ。
 ところがだ、すっかり小さくなっちまった俺は逃げだした先で、自分って奴を挽回する事が出来なかった。追剥やってた連中に、腕っ節を見込まれて引きこまれたはいいがすっかり染みついた押しの弱さが祟った。汚れ仕事をぜぇんぶ回されて、更に悪い事に俺は、それを断る事が出来なかったのだ。
 人恋しさに追剥連中の仲間に入ったはいいが……俺の『悪』と連中の『悪』の認識には隔たりがあり過ぎた。
 要するに、俺はガタイはデカかったが中身がガキのまんまで、鬼だと罵られるようになった頃から全く時間が止まったようになってしまって成長も、変化もしていなかった。

 連中に言われるままに人を殺す様になっていた。

 バカな俺、言いなりになる事が正しく、反抗する事が『悪』であった俺は何の疑問もなく、身ぐるみ剥がれて素っ裸の行商人どもの首をかっ切ってやったのさ。
 寒い風の吹く冬の季節だったな、道もろくに整備されていない森の中、裸で放置されたら勝手に死ぬだろうに。
 ここは森の中に集落が点在するだけのコウリーリス国だ。西方から香辛料の買い付けに来ていた連中が、裸でこの森の国の冬を乗り過ごせる保障など無いに等しい。
 親切だなぁ、寒さと飢えにひもじい思いをして悶え死ぬか、モンスターどもに生きたまま食われるかの二択に……今ここで息の根を止めてやるっていう選択肢を選ばせてやったんだ。

 お前はいい事をしたぜ?

 背後で嗤っている仲間達の声が俺に突き刺さり、見えない傷になり、見えない血が流れた。
 その血だまりが、影が、俺の逃避の場所となり『俺』となっていた。
 俺は殺戮の専門者となり、殺す事に特化して……ある日何の前置きも無く、俺と『俺』の立場が逆転。

 流れ過ぎたのだろうな、目には見えない血が。
 俺は殺人者である事をようやく自覚し、殺人鬼である事に諦めが付いた……とも言う。
 影で散々人間じゃないと、仲間から囁かれている事は知っていた。

 結構だ。

 なら、人間とつるむ必要性は無い。

 ある日プツンとブチ切れて、人間である事と縁を切る為に、俺は好んで殺戮しその行為に必死になった。
 もう殺す事しか目に入って無かった。
 かつて俺を殺人鬼と指さしてくれた通り、お前らのお望み通りになってやったと言う訳だ。


 で……それで?
 どうしたかっていうのが重要な所だ。

 開き直って殺しまくってから、だな。
 俺はその後、そういう自分自身がバカげた存在だと云う事に気が付いて、堪らなくなったのさ。
 血の海を作り、人が苦しむ様を見やってのたうちまわるのを見て楽しみながらも、だ。
 結局独りってのが寂しいんだなぁ。
 たまに優しく女を抱いても、染みついた血の匂いに敏感な女どもはすぐに俺の本性に気が付きやがる。
 人間と縁を結ぶ事を無条件に忌避している俺は、俺の本性に気が付いた女どもを朝には肉片にしているという具合な訳だ。

 流石に誰一人として俺を愛さないという事に虚しくなったのだ。

 死のう、と思ったわけだ。
 ところが……一方の弱い俺がそれを許さない。

 自分の血が流れるのが怖いのだろうなぁ……見えない血を流しすぎてる癖に、自分の本当の血が流れるのが怖くて堪らない。俺の臆病な本心が途端に現れ、どうしても自分の腹をかっさばく事が出来ない。そうすればきっと楽なはずなのに、何故か苦しみ、恐れる事の方に踏みとどまっている。
 それでだ。
 それで、俺は自分をいずれ『さばいて』くれるだろう人間を求めて盗みを働くようになった。
 俺が自分をさばけないなら、俺をさばく誰かを俺で求めよう。
 理不尽だと?知るか、弱い奴が悪いのだ。そう。『弱い』奴が『悪い』。
 俺の価値観はその時そのように変化した。

 人はもはや、誰もが指をさして俺をののしる。
 殺人鬼、悪い奴、悪党だってな。
 悪い奴ってのは、西方では『さばかれる』らしいと聞いた。ふらふらと、まるで蛾が燃え盛る炎の中に迷い込む要領で俺は西方に足を向けていた。
 ところが風景が変わっても中々俺を『さばく』奴は現れない。
 もっとデカい山に登らなきゃいけないと、まんまと俺はおびき寄せられるようにあのお宝に手を出したのだ。そんな大層な物を狙って近づけば、きっと俺は『さばかれる』のだろうと。

 とはいえ、目の当たりにするまで他の『宝』とどう違うのかなど俺は分からなかった。

 盗みに入り、目の前にして。

 俺は、ついに得るべき唯一の宝を手に入れてしまった。

 
 これは彼女からの受け売りだ。


 彼女が言うに、テラールと殺戮者は相性がいいのだという。
 大昔の因縁による事で、その縁をテラールという一族は切る事が出来ずにいるのだという。
 だから、彼女曰く。
 殺人鬼の俺と、人嫌いの彼女がこのように出会う事もある意味必然なのだという。
 思ってもみなかった、この俺に同類がいるなんてな。
 俺の目の前にいる、この目がよく見えなていない女は、生まれながらにしての生粋の鬼。
 心の中に人を忌避する思想を隠す、世界を滅ぼす毒を持つ女だ。
 とはいえ、そんな事『理性的』に理解できる俺じゃぁねぇ。へへ、理性だってさ。
 とっくの昔にそんなもん、ぶっとんでいらぁ。

 人を殺すか、殺されるかという瀬戸際にだけ立っている俺だったが……そのぶっとんだ理性が同類を目の前にして……一瞬まともに戻っちまったのさ。

 とりあえず奪いあげて、女子供だったらフルコース与えてやるのが俺の手口だ。
 あたり前だが泣き喚いて俺を拒否するか、途中で俺と同じくぶっ飛んで壊れるかという事になる。だから、最終的に俺が『さばく』事になっちまう訳で。

 殺人鬼を受け入れた女に初めて遭遇したんだよ。とどのつまりは。
 テラールだとか因縁だとか、そんなもんは俺には関係ない。理解しねぇ、する頭がねぇのは自覚してるからな。とにかく、そんなこの俺を受け入れたという事実があって、俺はそれで……ちいとばかし正気に戻っちまったのさ。
 もう、頭で分かってない。
 何で理解したのかもよく分からん、彼女曰く惚れたんだろうとか言われた。
 そうかもしれない、だがそんな甘っちょろい感情だろうか?惚れたなんて程度の話か?
 むしろ『執着』に近い。
 彼女が俺を『さばく』訳でもないのに、俺は彼女を『さばく』事ができなかった。
 こんな奴を目の前にしたのは久しぶりだったから相当に、困惑したのは想像に難しくないだろう?何しろ、なんでなのか分からないし、その理性がぶっとんでる訳だろう?
 どうして殺せないのか理解する頃にゃ、相手は自分と同じく鬼なのだと気が付いたって具合さ。
 と同時に、俺は久しぶりに自分が鬼だって事を思い出したりした。
 そしてさらには……俺は昔、人間だったって事もついでに。


 人間ってのはアホなもんでよ、独りが寂しいとテメェでぶっ飛んで置きやがって、いざ隣りに誰かが座ると途端に怖くなくなるのだな。
 勝手に相手を独りにしちゃいけないと思って、途端に死ぬのが本気で怖くなるのだ。

 魔物化って現象はなぁ……残念ながら前に進むだけなのだ。時間と同じで、絶対に後ろに向って巻き戻る事はない。

 ええと、これもとある奴からの受け売りだな。

 ゆえに、俺が鬼になっちまったらそこから、どうあがいても人間に戻る事など出来ないんだな。
 でも俺はそんなのは知らんし、自分が人間から鬼になった事だって今さっき理解したような状況だ。 
 大昔に事故でダチを殺した事になり、その時から俺は人間ではないと言われ続けてそれに騙され続けた。
 そう、騙されていたんだと俺以外の鬼を目の前にして、ようやく気が付いたという訳だ。

 思うに、一生気が付かずに『さばかれ』ていたら幸せだっただろうと思うぜ?

 アホ通り越して人間は哀れだ。俺は、観客的に『俺』を振り返ってそう思う。
 俺を受け入れてくれた彼女は、そんな俺の懺悔には耳を貸さなかった。
 正気に戻ってしまった俺をちょっとだけ寂しそうな目で見ていたと思う。彼女が何を思っていたのか、俺には分からない。
 わからないが……。
 もし彼女が俺と同類だとするなら、結局望んでいる事も同じだと考えるのが妥当だよなぁ。
 彼女は俺の思いを踏みにじるように唐突に言ったのさ。
 西国ファマメントのハクガイコウとかいう、翼ある神の御使いともう一度話がしたい、とな。
 俺はそんな奴ぁ知らん。
 知らないが……知らない奴と会いたいなどという彼女の思いが目ざわりだった。俺のその怒りは彼女を逸れて、ハクガイコウとかいう奴に向いていた。
 自動的に、だ。
 そのようになると、彼女は知ってたに違いない。明らかに俺より頭良さそうだったし。
 逆に俺は壮絶な位頭悪くて単純な訳だからな。

 結果……俺に念願の『さばき』が待っていた。
 なんという悲劇だ、大人しく惚れた女の手を引っ張って、全ての縁を切って逃げ出していればいいものを。本当に欲しかったものを手に入れてた後で、過去に渇望したものを与えられたってそんなの、顔が引き攣るだけだろう?

 もう死にたいとは思っていない。
 欲しいものを手に入れた、死にたくない。
 彼女の為に俺は死ねないのだ。

 何が何でも生きてやる、何をしてでも。何をしてでも、だ。

 そうやってあがいた結果が……これだ。 

 俺は今、最高に愉快に笑いながら再び『鬼』をやる事になってしまったという訳だな。
 無様にも繰り返すハメになっているのさ。
 そうすればまた、失った縁が戻ってくるんじゃなかろうかと密かに祈りながら。


 で?
 今、何をしているか、だと?

 聞くかお前、ここまでぶちゃけているんだからあとは、それくらいはテメェで察しろ。

 俺が誰かなど、そんな事は聞くもんじゃねぇ。
 それは、死にたいから腹ぁかっさばいてくださいと言っているようなもんだ。
 この縁を持たない緑国の鬼と、かならずブチ切れる約束になっている縁を結びたいたぁいい度胸だ。

 そうじゃぁなく?

 そうしてソコに居るのか、ってのが疑問だってか?

 そりゃぁ言っただろうが。
 それが俺の望みだったからだ。
 それで、ぶっとい縁が出来ちまって……俺はそれをぶった切るのに必死なんだよ。
 その為にソコに居るのさ。
 クックック……最高にくだらない理由で笑えるぜ、本当に。

 そんでここで願っているのさ。
 あの西の国で結んでしまった切れない縁が、望んだ通りにきれいさっぱり切れてくれる事をな。



 おわり
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