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本編後推奨あとがきとオマケの章
番外編短編-9『真実としての夢』
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番外編短編-9『真実としての夢』
憂鬱だ。
何が原因でこんなにウツウツしているのか自分でもよく分からない。
体がだるい、体というか……実際にはもっと違うものに引きずられている感じでとにかく、何をするにもやる気が無い。
一番に考えられる要因は寝不足だろうけど、それはない。
なんでかって、この所最低でも連続6時間は寝てる。夜中3時過ぎに寝てバイトに起き、帰って来てから再び夕方まで寝る、なんて不衛生な生活が長かったものでエラく自分のことながら関心するくらいだ。
それが普通だって?
その普通の事が夜型人間には難しんだよ。こういう生活はよくねぇよなって思っていてもなかなか直せるものでもない。
ところがそれがすっぱり直った。
魔法みたいだよな。
MFCテストプレイヤーの座を勝ち取り、第一次テストプレイが終了……。
その後、正式に開発者チームに加わる為の事務手続きやら何やらを挟みながら、眠る間は自由にトビラへのログインが許されているフリープレイに移行している。
同時に8人ログインじゃないから、これは一種の第二次テストプレイにも当たるらしい。
自分の都合でMFCトビラをプレイしてくれという事だった。
実際、俺は中でヒマを持て余しているのでログインはそんな頻繁にする必要はない。
ないんだけど、つい……寝ている間ゲームが出来るってんならって、小型化改良された端末を耳にひっかけて寝ることが多い。もはや就寝前の儀式に近い、完全に癖になっている。
寝なきゃ、という意識が俺にあるって事だ。
眠らなきゃ体験できない事があるなら寝なきゃいけない。
脳を休ませながらなおかつゲームが出来る。いや、正確には……出来るらしい。
ゲームをやったという実感は、現実にいる限り酷く曖昧で、どうしてもはっきりとは認識出来ない。
でも、現実でそうだとはっきり言えない事だけどちゃんと、夢を見ている。
MFCを使って異世界トビラで『戦士ヤト』……いや。
肩書が変わったんだった。
『魔王八逆星 ヤト・ガザミ』をやっている俺っていうのを、非常にぼんやりと思いだせる。
一応MFCの個人メモリを見てみるとゲームをやった事になっている。その分、積み上げた経験が表示されているんだ。
つまり、これってMFCをプレイし続けた障害の一種なのかな?
目が覚めて、欝々とした感情を確かに感じてこれはいけないものなのだろうかと不安に感じている。
何かあったら細かく報告をくれと言われていたな。……一度レッドに確認してから問い合わせてみるか。
頭がぼうっと重い感覚を引きずり、陳列整理のバイトを上がる。
こっちの雇用終了も間近に迫っている。これからはアルバイターじゃない、正社員、俺が夢として見ていたゲーム会社に勤められるんだ。
もっと喜ぶべきだよ俺。
いや、喜んでいるんだ。ただ、このどうにも鬱っぽい今、それを素直に喜べない。
悪く考える必要はないのにどうしても悪い方向に考えてしまう。俺の悪い癖だ。
何かあってやっぱり採用しないとか言われたら?君は戦力外だと言われて首切られたら。
どうしたらいいだろう。今のバイトには戻れない、出戻るなんて恥ずかしくてそんな事絶対に出来ない。
新しくバイトを探さなきゃいけないのか……なんて、面倒な。
そんな事になるなら辛くても今のバイトを続ければいいのに。
辞めていいのか。
どうなるか分からない会社勤めなんかになって。
家に帰っても困った事にゲームをやる気が起きなくて、ベッドに倒れこんでしまっていた。
ちゃんと寝てるのに、頭が重いだけで眠い訳じゃないのに……。
それでも人間、横になっているといつの間にか寝てしまったりするみたいで……
*** *** ***
重い……。
何かがのしかかっている重さじゃなくて、これは……俺自身の重さか。
気がついたらいつぞやみたいに鎖につながれていた。
太めの鎖が、3重程に左腕に絡みつき……体を一回りして……右腕にも何度か絡みついて何か、壁のようなものに俺はぶら下がっているようだ。
足……は、緩めていたのを確かめるに地面があった。
気絶してたのかな?
いつぞやって……いつだ?思い当たる事がいっぱいあるような、無いような。
それは本当に俺のログなのか、それとも他人のログなのか、よくわからないけど自由が利かない。
ううん?俺ってばどこにログインしてるんだろう?
そう思ったけど、そもそもログインする前には一旦エントランスを経由するはずなんだけどな。
どうにも状況をリコレクト出来ないところ、またレッドフラグ関係でバグに遭遇しているのかもしれない。
そうだろう、それ以外にこの状況考えれないじゃん。
「……おおい」
呼びかけて見た声が壁に反響する。
石畳に囲まれた、あんまり広くはない部屋だ。
こつ、と硬い足音が聞こえて振り返る。
「……?」
見覚えのある顔がすぐそこにいて、無表情に俺を見ている。
ようするに、俺だな。この状況にもそろそろ慣れが必要だぞ俺。
こういう状況はこの所めっきりなくなったけど、絶対に無いとは言い切れないと高松さんも言っていた。
今回もどっかに残っていた俺に、たまたまデバイドし間違えたんだろう。
にしても、どういう状況なのだろうか。
目の前にいる俺がゆっくり石畳を歩き、俺の前に来る。
非常に不思議だ。こればっかりは慣れる事はないのだと思う。
鋼の具足に金色のベルト、それにひっかけられているサガラの剣、元は深い緑色だったけどすっかり退色して青み掛ったボロボロのマントと、くすんだ灰色の角度によって青か紫のようにも見える金属の鎖帷子とショルダープレート。
水銀竜の小手のはまった左手が近づいて来て俺の喉を押さえる。
ぐっと握りこまれ、息が出来なくなって首をあげ喘ごうと口をあけた途端何かが、握りつぶされる感覚に喉の奥から鉄臭いにおいが漂ってくる。
不思議な事に痛みらしい感覚は無くて、喉の奥が潰された事を悟る。
息を吸うに怪しい音が鳴り、血が肺に流れ込んで噎せる。
「黙ってろ」
そうならそうと言えばいいだろうに、声帯を潰す奴がいるか?
そう言いたいけどそれどころじゃない。潰れかけた喉で息を吸い込んで吐き出すのに必死な俺に、ヤト・ガザミは静かに、と指でジェスチャーする。
そうしておいて一歩下がり、剣を鞘から引き抜いた。
……え?ちょっと待て?何をする気だ?
鎖を、解いてくれる……訳ではなさそうな気配に口が開く。けど声は出ない。
これでは悲鳴も出ないだろう。
右膝を剣で砕かれ、右足が吹きとんだのに勿論俺の口から出たのは空気の塊だけだった。
柄尻を思いっきり振りかぶってくるのに条件反射で目をつぶり首をよければ、左腕にそれが食い込んでいる。
折れた、ついでに神経もひしゃげた。乱暴な破壊によって齎される痛みを脳が許容するために分泌される何かに全てがふわりと軽くなったような感覚におちいる。
ところがない、痛みだ、痛みが無い。
あるはずのものがない。
感覚が生きているのに痛いという苦痛だけがどうした事か感じられない。
遊んでいる、まるで剣の切れ味を確かめるように浅く何度も切りつけられる。
切っ先を軽く何度も付き入れては頸動脈を探し当て、血が噴き出すのを……奴は、楽しそうに眺めている。
楽しいのかお前?
骨から肉をそぎ、筋を引っ張りだすのが。
腹に刃を入れて皮をはぎ取るのが?
筋肉の筋をずたずたに切断してだらしなく垂れていく体や、まだ繋がっている神経を確認するように指をつき入れるのが。
楽しいのか?
視線だけで強くそのように問うに、何か俺が言いたい事がある事は悟ったようで……俺を見て、まっすぐ見つめた後小さく小首をかしげた。
その次の瞬間剣が顔に突き出されてくる。
もはや首は動かない。致命傷を避けて筋を全部切られているのだ。感覚はもちろん生きている。痛みはないが恐らく……耳をそがれた。そう思った瞬間音が全て消え去る。
キーン、という耳が無いのに耳鳴りのようなものが頭の中で鋭く響き渡った。
耳ときたらそりゃ次は目も来るだろうなとは思ったが、その通り遠慮なく抉られた。
これであとは感覚だけになったのはいいが、痛みは無いけどいい加減脱出したいな……気持ちいいものじゃない。俺は、誰かを壊すような趣味はないはずなんだけど。
無い、はずだけど……。
ついに意識が途切れてふっと眼を覚ますと、めちゃめちゃに壊された俺がぶら下がっているのを目の当たりにしてつい、悲鳴が漏れてしまったり。
いや、よく見るとそれは俺じゃない。
俺だと勘違いしたけどどうにも、俺じゃない。
……誰だ?俺じゃないのはいいとして誰なんだ?……分かるはずなのに誰なのか分からない。
誰だ?
こうやって誰かを壊した心当たりがなぜかあれこれと思いだされている。
理解したくないと突き放した多くの人、相手の都合を聞き出すにずかずかと心に踏み行って、弱い部分を踏みしだき、俺はこうやって多くの人を壊してきた。
人というより、人が認識している世界を壊してきたんだと思う。
相手の言葉を奪い、理解できない事に小首をかしげ、切れば肉は裂けて突けば血が流れる当然の反応を俺はきっと……楽しんでいた。
きっとお前もそうだろ?
そう、誰かに。
誰なのか分からないけど……問われているような気がするんだ……。
*** *** ***
とても嫌な夢を見たはずだというのに。
俺はすがすがしく目を覚ましているのだった。
いや前言撤回、この赤い夕陽にすがすがしいはない。
俺は夕焼けを窓の外に見て、寝てしまったのだという事を理解。額に手を当て深いため息を漏らしていた。
うーむ、頭痛に近い頭の重さは解消されている。
やっぱりただの疲れか?生活様式が健全に戻るに一時的に陥った不調だろうか?
あ……と、MFCに入ってないや。
じゃぁ今見た夢はログにのこんないのか……というか、何の夢見てたんだ俺?
起き上がって伸びをするに、思い出せそうになくて苦笑する。
まぁいっか、どうせ夢だし。
なんか、あんまりよくない夢だった気がするし。
気がするだけだけど、どーせリアルじゃMFCだろうと何だろうと……夢なんか思い出せないしな。
さて、シャワーでも浴びて……ゲームでもしますか。
END
そして、懺悔を読む ③があったので、続きが気になる方は
おまけ裏裏ページでご確認ください
番外編短編-9『真実としての夢』
憂鬱だ。
何が原因でこんなにウツウツしているのか自分でもよく分からない。
体がだるい、体というか……実際にはもっと違うものに引きずられている感じでとにかく、何をするにもやる気が無い。
一番に考えられる要因は寝不足だろうけど、それはない。
なんでかって、この所最低でも連続6時間は寝てる。夜中3時過ぎに寝てバイトに起き、帰って来てから再び夕方まで寝る、なんて不衛生な生活が長かったものでエラく自分のことながら関心するくらいだ。
それが普通だって?
その普通の事が夜型人間には難しんだよ。こういう生活はよくねぇよなって思っていてもなかなか直せるものでもない。
ところがそれがすっぱり直った。
魔法みたいだよな。
MFCテストプレイヤーの座を勝ち取り、第一次テストプレイが終了……。
その後、正式に開発者チームに加わる為の事務手続きやら何やらを挟みながら、眠る間は自由にトビラへのログインが許されているフリープレイに移行している。
同時に8人ログインじゃないから、これは一種の第二次テストプレイにも当たるらしい。
自分の都合でMFCトビラをプレイしてくれという事だった。
実際、俺は中でヒマを持て余しているのでログインはそんな頻繁にする必要はない。
ないんだけど、つい……寝ている間ゲームが出来るってんならって、小型化改良された端末を耳にひっかけて寝ることが多い。もはや就寝前の儀式に近い、完全に癖になっている。
寝なきゃ、という意識が俺にあるって事だ。
眠らなきゃ体験できない事があるなら寝なきゃいけない。
脳を休ませながらなおかつゲームが出来る。いや、正確には……出来るらしい。
ゲームをやったという実感は、現実にいる限り酷く曖昧で、どうしてもはっきりとは認識出来ない。
でも、現実でそうだとはっきり言えない事だけどちゃんと、夢を見ている。
MFCを使って異世界トビラで『戦士ヤト』……いや。
肩書が変わったんだった。
『魔王八逆星 ヤト・ガザミ』をやっている俺っていうのを、非常にぼんやりと思いだせる。
一応MFCの個人メモリを見てみるとゲームをやった事になっている。その分、積み上げた経験が表示されているんだ。
つまり、これってMFCをプレイし続けた障害の一種なのかな?
目が覚めて、欝々とした感情を確かに感じてこれはいけないものなのだろうかと不安に感じている。
何かあったら細かく報告をくれと言われていたな。……一度レッドに確認してから問い合わせてみるか。
頭がぼうっと重い感覚を引きずり、陳列整理のバイトを上がる。
こっちの雇用終了も間近に迫っている。これからはアルバイターじゃない、正社員、俺が夢として見ていたゲーム会社に勤められるんだ。
もっと喜ぶべきだよ俺。
いや、喜んでいるんだ。ただ、このどうにも鬱っぽい今、それを素直に喜べない。
悪く考える必要はないのにどうしても悪い方向に考えてしまう。俺の悪い癖だ。
何かあってやっぱり採用しないとか言われたら?君は戦力外だと言われて首切られたら。
どうしたらいいだろう。今のバイトには戻れない、出戻るなんて恥ずかしくてそんな事絶対に出来ない。
新しくバイトを探さなきゃいけないのか……なんて、面倒な。
そんな事になるなら辛くても今のバイトを続ければいいのに。
辞めていいのか。
どうなるか分からない会社勤めなんかになって。
家に帰っても困った事にゲームをやる気が起きなくて、ベッドに倒れこんでしまっていた。
ちゃんと寝てるのに、頭が重いだけで眠い訳じゃないのに……。
それでも人間、横になっているといつの間にか寝てしまったりするみたいで……
*** *** ***
重い……。
何かがのしかかっている重さじゃなくて、これは……俺自身の重さか。
気がついたらいつぞやみたいに鎖につながれていた。
太めの鎖が、3重程に左腕に絡みつき……体を一回りして……右腕にも何度か絡みついて何か、壁のようなものに俺はぶら下がっているようだ。
足……は、緩めていたのを確かめるに地面があった。
気絶してたのかな?
いつぞやって……いつだ?思い当たる事がいっぱいあるような、無いような。
それは本当に俺のログなのか、それとも他人のログなのか、よくわからないけど自由が利かない。
ううん?俺ってばどこにログインしてるんだろう?
そう思ったけど、そもそもログインする前には一旦エントランスを経由するはずなんだけどな。
どうにも状況をリコレクト出来ないところ、またレッドフラグ関係でバグに遭遇しているのかもしれない。
そうだろう、それ以外にこの状況考えれないじゃん。
「……おおい」
呼びかけて見た声が壁に反響する。
石畳に囲まれた、あんまり広くはない部屋だ。
こつ、と硬い足音が聞こえて振り返る。
「……?」
見覚えのある顔がすぐそこにいて、無表情に俺を見ている。
ようするに、俺だな。この状況にもそろそろ慣れが必要だぞ俺。
こういう状況はこの所めっきりなくなったけど、絶対に無いとは言い切れないと高松さんも言っていた。
今回もどっかに残っていた俺に、たまたまデバイドし間違えたんだろう。
にしても、どういう状況なのだろうか。
目の前にいる俺がゆっくり石畳を歩き、俺の前に来る。
非常に不思議だ。こればっかりは慣れる事はないのだと思う。
鋼の具足に金色のベルト、それにひっかけられているサガラの剣、元は深い緑色だったけどすっかり退色して青み掛ったボロボロのマントと、くすんだ灰色の角度によって青か紫のようにも見える金属の鎖帷子とショルダープレート。
水銀竜の小手のはまった左手が近づいて来て俺の喉を押さえる。
ぐっと握りこまれ、息が出来なくなって首をあげ喘ごうと口をあけた途端何かが、握りつぶされる感覚に喉の奥から鉄臭いにおいが漂ってくる。
不思議な事に痛みらしい感覚は無くて、喉の奥が潰された事を悟る。
息を吸うに怪しい音が鳴り、血が肺に流れ込んで噎せる。
「黙ってろ」
そうならそうと言えばいいだろうに、声帯を潰す奴がいるか?
そう言いたいけどそれどころじゃない。潰れかけた喉で息を吸い込んで吐き出すのに必死な俺に、ヤト・ガザミは静かに、と指でジェスチャーする。
そうしておいて一歩下がり、剣を鞘から引き抜いた。
……え?ちょっと待て?何をする気だ?
鎖を、解いてくれる……訳ではなさそうな気配に口が開く。けど声は出ない。
これでは悲鳴も出ないだろう。
右膝を剣で砕かれ、右足が吹きとんだのに勿論俺の口から出たのは空気の塊だけだった。
柄尻を思いっきり振りかぶってくるのに条件反射で目をつぶり首をよければ、左腕にそれが食い込んでいる。
折れた、ついでに神経もひしゃげた。乱暴な破壊によって齎される痛みを脳が許容するために分泌される何かに全てがふわりと軽くなったような感覚におちいる。
ところがない、痛みだ、痛みが無い。
あるはずのものがない。
感覚が生きているのに痛いという苦痛だけがどうした事か感じられない。
遊んでいる、まるで剣の切れ味を確かめるように浅く何度も切りつけられる。
切っ先を軽く何度も付き入れては頸動脈を探し当て、血が噴き出すのを……奴は、楽しそうに眺めている。
楽しいのかお前?
骨から肉をそぎ、筋を引っ張りだすのが。
腹に刃を入れて皮をはぎ取るのが?
筋肉の筋をずたずたに切断してだらしなく垂れていく体や、まだ繋がっている神経を確認するように指をつき入れるのが。
楽しいのか?
視線だけで強くそのように問うに、何か俺が言いたい事がある事は悟ったようで……俺を見て、まっすぐ見つめた後小さく小首をかしげた。
その次の瞬間剣が顔に突き出されてくる。
もはや首は動かない。致命傷を避けて筋を全部切られているのだ。感覚はもちろん生きている。痛みはないが恐らく……耳をそがれた。そう思った瞬間音が全て消え去る。
キーン、という耳が無いのに耳鳴りのようなものが頭の中で鋭く響き渡った。
耳ときたらそりゃ次は目も来るだろうなとは思ったが、その通り遠慮なく抉られた。
これであとは感覚だけになったのはいいが、痛みは無いけどいい加減脱出したいな……気持ちいいものじゃない。俺は、誰かを壊すような趣味はないはずなんだけど。
無い、はずだけど……。
ついに意識が途切れてふっと眼を覚ますと、めちゃめちゃに壊された俺がぶら下がっているのを目の当たりにしてつい、悲鳴が漏れてしまったり。
いや、よく見るとそれは俺じゃない。
俺だと勘違いしたけどどうにも、俺じゃない。
……誰だ?俺じゃないのはいいとして誰なんだ?……分かるはずなのに誰なのか分からない。
誰だ?
こうやって誰かを壊した心当たりがなぜかあれこれと思いだされている。
理解したくないと突き放した多くの人、相手の都合を聞き出すにずかずかと心に踏み行って、弱い部分を踏みしだき、俺はこうやって多くの人を壊してきた。
人というより、人が認識している世界を壊してきたんだと思う。
相手の言葉を奪い、理解できない事に小首をかしげ、切れば肉は裂けて突けば血が流れる当然の反応を俺はきっと……楽しんでいた。
きっとお前もそうだろ?
そう、誰かに。
誰なのか分からないけど……問われているような気がするんだ……。
*** *** ***
とても嫌な夢を見たはずだというのに。
俺はすがすがしく目を覚ましているのだった。
いや前言撤回、この赤い夕陽にすがすがしいはない。
俺は夕焼けを窓の外に見て、寝てしまったのだという事を理解。額に手を当て深いため息を漏らしていた。
うーむ、頭痛に近い頭の重さは解消されている。
やっぱりただの疲れか?生活様式が健全に戻るに一時的に陥った不調だろうか?
あ……と、MFCに入ってないや。
じゃぁ今見た夢はログにのこんないのか……というか、何の夢見てたんだ俺?
起き上がって伸びをするに、思い出せそうになくて苦笑する。
まぁいっか、どうせ夢だし。
なんか、あんまりよくない夢だった気がするし。
気がするだけだけど、どーせリアルじゃMFCだろうと何だろうと……夢なんか思い出せないしな。
さて、シャワーでも浴びて……ゲームでもしますか。
END
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