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完結後推奨 番外編 西負の逃亡と密約

◆BACK-BONE STORY『西負の逃亡と密約 -12-』

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◆BACK-BONE STORY『西負の逃亡と密約 -12-』
 ※これは、本編終了後閲覧推奨の、テリー・ウィンの番外編です※


 逃げろGM。全てを投げてお前は……ここから逃げていくべきだ。

 どうすればお前は逃げて行ってくれるだろう?

 俺が打った手は全て空回り、すでにあった狂いを致命的にしてしまった気がする。
 GMは今更ながら逃げる事を忌避し、崩れていく世界に取り残される者を守るに必至になりやがる。

 俺にも借りがある、出来てしまった。
 だから……俺はあいつの仕合せを願わなきゃいけない。

 そんなのはいい、放っておけとは言えない俺。
 こうなってしまった理由を知っている事に後ろめたくなって全てを……ぶちまけたい気持ちと戦っている。今更リミットかよ、この最悪なタイミングでこいつらに、本当の事を言ったらどうなる?

 それこそルルの思うつぼって奴だろう。

 いつか、いつか……きっとあいつに俺の全てを話すんだ。
 何が何でもあいつに受け取ってもらう。俺はそう勝手に決めて、分かったじゃぁあの地図の読めないお嬢様の面倒は俺がちゃんとしっかり見るからお前は……。

 今は自分を自由にする事を選べ、と。
 最後の舞台に送り出してしまった。

 何があったって、詳しく話すと長くなる。
 そんなに長くは無い祭りの熱狂の中で静かに……一つの巨塔が崩れて行ってたんだ。
 経営的にヤバそうだという噂は漏れ聞こえていたから、GMにはこれが最後のチャンスだぞと言いきかせてある。この大大会で好成績を納めて逃げそびれたら……エトオノの剣闘士達は全員、事もあろうかクルエセルに統合される事になる。
 それでうまくいくはずがない。
 長い事いがみ合っていた闘技場の統合なんて、経営テーブル上は簡単だろうが実際一緒にされる剣闘士達は穏やかじゃないだろう。
 せっかく淘汰した派閥争いが勃発し、クルエセルを内部から壊す事になりかねない。

 それがルルの狙いだ。

 俺は、そうなるのを知った。だからこの大会終わったらクルエセルを出る。ルルも俺に自由を許した。西に送り返すのかと思ったけどその必要はない、ってな。俺は、エトオノとクルエセルを潰す為に飼われていた駒だったんだ。役目が終われば捨てられる。ただそれだけの事。

 全部後手かよ。
 ああ、畜生。

 逃げ場のない者の仕合せを願い、GMは俺にアベルを逃がす段取りを頼んで来た。何かがエトオノで起きている。何か起きちまうだろう事は予感してた、カーラスが……ルルにそそのかされて何か起こしちまったのだろう。

 知りたくない、もうこれ以上ただ事実を知るだけで何も出来ないのは嫌だ。

 何が起きたと問うにあいつは、何も答えなかったな。
 とにかくアベルを外に連れてってくれと、俺に願ったんだ。
 ……それはお前がやるんだろう。
 自由を手に入れ、そうした上でお前があいつを連れてくんじゃなかったのか?
 もちろんそうしたかったのだろう、けどそれじゃぁ間に合わない。だから俺に頼んで来ているのだという事は分かる。
 断ればいいのに俺は……全てを知ってしまったから断れなかった。
 俺に出来る事をするしかないだろう?もう知って、何も出来ないという事に頭を抱えるのは嫌だった。

 そしてあいつは自由を手に入れた。奴が得たのは永久の自由。

 二度と戻ってこなかった。

 GMは二度と、この世界に戻ってくる事は無くなった。

 ああ、だからか。
 だから俺にアベル押しつけてお前は行ったんだな。


 やっぱり俺は後手に回っている。いや?……今度こそ先に回ってやるぜ。


 そしていつかちゃんと俺の事情を『あいつ』に話すんだ。
 そう思ったけど、俺とアベルの目の前に戻ってきたあいつは別人になっていた。
 すでにこれ、番外編含めると3回目くらいになるだろうオチなので驚きも何も無いだろうが、俺達は全く見知らぬ他人様と再会を果たすはめになるわけだな。
 先回ったつもりでイシュタル国首都レイダーカで待ち構えていたら、現れたのは……。

 ヤト・ガザミ。

 うざったい前髪をきれいさっぱり短くして、緑色の瞳で迷いなく世界を見据えて、はじめましてよろしくと手を差し出しやがった。

 おかげさまで俺は少し迷ったのだ。
 いつかちゃんと俺の事情をあいつに話すと誓ったはいいがこいつは……誰なのだろう。
 そういう、非常に些細な事にな。

 もっとも、奴のお望みの通り簡単に、人は生まれ変われるはずがないのはご周知の通りだ。
 人生ゲームじゃねぇ、リセットはないしキャラクターの作り直しは出来やしねぇんだ。
 そうやって、過去を見直している奴を見ていて俺は、些細な事に悩んでいるんだなと気がついた。
 出来れば関わり合いたくなかったけど気がついたらなんか、兄貴とも顔合わすハメになってるし、ランドールとも闘う羽目になってるし……。


*** *** *** ***


 馬を強引に奪取して乗り潰し、俺が数年ぶりにそこに着いた時、すでにある程度の決着はついていて……朝日が昇ってくる数時間前、紫色の空が沈下した火からくすぶる煙の合間にうかがえる頃合いだった。

 先に行っていたレッドとナッツを探すに見回す。
 程なくしてマツナギも追いついてきた、流石に馬のギャロップより足は速くはねぇんだな。
「テリー、馬が嫌がっている」
 確かに落ち着き無く地面を蹄で掻いているのに言われて気が付く。強引に抑えつけていた所、悪かったと首を叩いてその背から降り自由にしてやった。
 途端馬は俺から慌てたように遠ざかり、道をそれ人から離れたところで座り込んでしまったようだ。大分無茶させて走らせてしまった様だ。
 エズの空が燃えている。
 何か起きている事に焦った俺は、気迫で馬を圧倒し強引にここまで走らせて来てしまったのだ。
「アインは?」
「お前が振り落として行っただろう」
 確かにそうだったかもしれない。
「後からみんなと一緒に来るだろうけど……」
 改めて現状を見渡し、マツナギは顔をしかめた。
「これは酷いね」
「どういう風に」
 確かに風景としちゃよくないか。
 いくつかの民家が燃え、当たりには血の溜まりと思われる染みがいくつも残っている。
「魔王軍が暴れた……という風ではないな。ここで多く命を落としたのは人だ」
 人が命を落とした気配を敏感に察知し、マツナギは険しい表情を浮かべていた。
 彼女は精霊使いの気があるんだったな。そういうの、直観的に分かるらしい。
 俺は彼女に倣い顔をしかめ、ここで多く死んだのが何であるのか察して……無言でその場を早足に歩き去った。
 レッド達を探そう。
 早足に、いやな染みの続く道を奥へと進んでいく。
 焦げ付いた壁の向こう側に見慣れない木が通路のど真ん中に突っ立っている現状を見やった。
 ……明らかに変だぞ?マツナギもおかしいという事に気がついたようで俺に目くばせする。

 急いで駆けつけると、数人の剣闘士が斧や鋸を手に……木を切ろうってのか?
「テリーさん、早いですね!」
 俺に気がついたレッドが急いで駆け寄ってくる。走り寄る、というのは奴にはしては珍しい行為だ。
「どうした、これはなんだ?」
「すいません、手を貸していただきたい。中に人が飲まれているんです」
 俺はすぐにドリュアートの木でかつて『あった事』を思い出していた。
 マツナギも同じくであるらしい。
 何って?
 前にこういう事があったあろう。
 そう、ドリュアートに誰かさんがが飲み込まれて埋まってた事があった。
「まさか、ヤトか?」
 奴はアベルと一緒に先にここ、エズに行っていたはずだ。あいつらもこの惨状に関与しているのか?
「いえ、彼はまた倒れたのでナッツさんが介抱してます」
 また倒れたって、もはやしょっちゅうある事なので別段驚かない俺達。
 それよりもこの木だ、もしかして……ヤトの暴走に誰か巻き込まれたって事か?
 レッドから案内されて回り込むに、巨大な木の幹からはみ出している手を、その手にはまっている小手とその形、紋を見て俺は息を呑んでいた。
 斧やら鋸を持ってどこからどう手をつければいいのか迷っている連中を追い払う。
「テリーさん、」
「離れてろ、巻き添え喰いたいのか」
 問答無用で追い払い、俺は素早く人が埋まっていると分かる木の反対側に回り込んだ。低く腰を落として両手を翳し、重ね、拳を開き掌底に集中する。
 それをゆっくりと幹に押し当て……イメージを重ねて衝撃を放った。

 鈍く何かが破裂する音が響く。

 次の瞬間斧などを投げ捨てた剣闘士達が、慌てたように砕けた木を素手で引きちぎり、へし折っては突如道中に生えた大木に走った傷を広げあっという間に……そいつを引きずり出して助け出した。
「生きてるか?」
「ええ……大丈夫そうですね」
 レッドが脈を診て俺を振り返るに心底ほっとして……しゃがみ込む。
「全く……なんだって木に飲まれてたんだ?……ここの惨状は誰がやった」
 それには、今しがた助け出した男達の目が語っている。

 今木の中から引きずりだし、助けだした男を暗い表情で睨んでいるのを見渡した。

「……そうか、こいつが暴れた所為みたいだな」

 じゃぁなんで助けたんだろう。
 こいつが、ランドールが……ここで多く剣闘士徴兵軍を殺戮したのなら、木に埋めておいていい気味だと笑ってもいいだろうに。
 そんな俺の疑問には、まるで心を読んだかのようにレッドが答える。
 実際こいつ、読心術使ってんじゃねーかと疑いたくなるがどうなのだろう。俺は魔法には疎いのでよくわからん。
「……ヤトが彼を生かしたのです」
「何?」
 どういう意味だ。
「お察しの通り、このランドールの現状は彼の暴走の後ですよ」
 ヤトの野郎、たまにこうやって得体のしれない力を暴発させて問答無用な破壊をやっちまう事がある。それは知っているが……けど、その後破壊をもたらした『それ』は枯れる事が多いだろうが。
 枯れずにこうやって木が突っ立って残っている、ってのは……初めてじゃねぇかな?
「でも彼は、今回は……誰も殺していない。ランドールでさえこのようにかろうじて生かした。その意図を、彼らは尊重したのでしょう」
 レッドの言葉に剣闘士達は視線を泳がせている。
「あいつが……ね」
 気絶しているランドールの、額に掛る黒い髪を退けてみる。
 俺はたぶん初めてちゃんと……ランドールに触れて、極めて近い所で見いるな。

 これは、俺の弟。

 こいつはそうだとは知らないだろう、けど俺は知っている。意識をしている。
 欲しかった、でもこんな形ではあって欲しくなかった。俺の弟だ。

「まだしっかりと現状は聞いておりませんが……今分かる範囲でご説明するにどうやら、ランドールも誰かしらに操られていた節があるとか」
「それは、在るかもしれないな」
「どうしてだい?」
 俺はランドールの前髪を元に戻して鼻で笑う。
「ヤトがこいつに止めを刺してないからだ」
 意味が分からない、というようにマツナギは意図を問いただすようにレッドを向いた。が、レッドも俺達闘士の言葉は完全に翻訳可能って訳じゃないらしく、呆れたような溜息を洩らす。
「僕らはあなた方のその話には付いていけないのです、理解できるように言っていただきたいのですが」
 そうかもしれない。

 俺達は今も、この町で覚えたルールの上に生きているのだろう。

 しゃーねぇ、説明し辛い事ながらなんとか噛み砕いてみるか。
「決着つけちまうならそれなりに、きっちりとした戦いを重んじたいんだよ。あの野郎……きっとこの町にきてそんな事を思い出したんじゃねぇのか」


 この時、逃げられないんだろうなと覚悟を決めて、俺はあいつに俺の過去を話す決心がついていた。
 ついでに、ここにきてやっぱりあいつはアイツなのだとようやく判別がついたとも言える。
 長らく掛っちまった。
 これで俺も……心の整理が出来るようになるだろうか。
 逃げていたものから逃げださず、今度こそ、それらと戦う為に。
 俺が背負い、背負わされていた事と、俺がそれをどうやって背負い込み、逃げだしたか。
 逃げだした先、何を誓ってお前の傍にいたのか。


 俺はヤトに、自分の事を全部ぶちまける事にしたんだ。


 そんで、そうしたらあいつは何って俺に返したと思う?本編の話な。
 きっととんでもねぇ告白になってたはずなのに、怒って俺をぶん殴ってもいい事だろうに。
 俺の懺悔と俺の都合をそりゃもう簡単に、信じるとよこしやがった。

 全く……お前の持っている隙間は広すぎて、敵わねぇよ。

 かつて俺があいつの昔話を笑わなかった様に。
 過ぎ去った過去を……過去だ、と。

 お前はホントは捨てたいんじゃない。忘れてしまいたい訳じゃない。
 忘れようにも忘れられない。体に染みついているように、アイツの癖がしっかり残ってる。
 あれは自分だと知っているけど、アベルとかの都合どうしても一つに成れない。バカな約束に縛られているだけなんだよな。
 だから、あいつは過去と切り捨てようとしたものと戦うハメになるんだ。
 そーなるだろうと俺は思っていた。それ、王道ってどっかで聞いてたし。
 だから……もう会うまいと思っていたのに奴とはもう一度会う事になる。

 まるでリアルで『俺』と『あいつ』が再び出会う羽目になったのと同じように。

 あまり良いとは言えない再開を果たし……それで。


 俺の中で違うものだった二つが一つの、正しい形になって今変わらずそこにいるんだろう。

 変わってねぇんだ。
 違ってたんじゃない。
 違うように見えてただけ、なんだよな……きっと。


*** *** *** ***


 俺もそうだ。俺はここでは紛れもなくテリーで、そこに嘘も偽りもない。
 代替えですらない。
 ここで抱いた全ての感情、全ての思いはここにいる限り正しくて、ここではないところから眺めたら嘘に見えたとするなら嘘でもいいんだ。

 道場で正坐して師範代と対峙して俺は、背筋を正して今こそつまずいた問題に答えようと思う。
「兄貴、やっぱり俺はゲームが好きだ」
 そんな話をする為に呼び出したのか?
 露骨に嫌な顔をされたが俺は迷いなく顔を前に向ける。
 俺には迷いがあったんだ。好きだと知るこの思いに、迷いがあったのだという事を理解した。
「さんざん言われてきたがやっぱり俺は、この思いを捨てられない」
「……それで?」
 礼節に乗っ取り静かに頭を下げる。
「俺の名前を下ろして欲しい」
 どんな顔してるのか、伺う必要はない。
 名前を下ろすってのはようするに、道場に並んでる名札外してくれって事だ。
 俺は、道場を出ると言っている。
「俺はそもそも暴力が大っ嫌いだって分かった。ゲームで戦うのは師範代の言うように代替え行為じゃぁない。そこは絶対に違う」
 顔をあげて、強く自らの意思を貫いてやる。
「俺は力が嫌だったからここから逃げる為にゲーセンに通ってた」
 全部、望まずして手にしてしまったあらゆる『力』への当てつけだ。
 嫌だから俺は、嫌な自分をそこに作った。
「……意味が分からんな」
 まぁな、簡単じゃねぇ。一種訳の分からん理屈が働いているのは確かだろう。

 そもそも俺の問題が『家族にゲーマーである事がバレた』に始まるにそれの、どこが問題なのだというのを細かく説明するのに似ている。
 めんどくさいだろ?
 だからもうそれ、俺は繰り返したりしねぇぜ。

 俺は笑って鼻じろんでいる兄貴に言ってやるぜ。
「でもそこで分かったんだ。闘いは好きだって事に」
 いや、そういうや居たよなぁどっかにそういう訳の分からない公式設定持ってる奴が。俺の持ちキャラじゃなかったから忘れてたけど。俺、主人公チーム主に使ってたからなぁ、あのシリーズ。というのは、ゲームの話だな。俺が大好きな格闘ゲームの話だ。
「…………」
「戦うのに俺は、力を欲するような事をしたくない。俺が例え弱くてもゲームならそんなのは関係ないだろう?俺がやりたいのは力に関係なく等しく戦えるという事だと思う。……俺の友人にすんげぇダメ人間がいてさ。私生活メチャクチャでだらしがなくて、口先ばっかりのチキン野郎。けどそいつゲームは強いんだよ。ゲームの中ではすんげぇ強くて俺も敵わない」
 そいつに俺は、ゲームの中で勝ちたい。
 俺が勝ちたいのは仮想の中での話だ。現実での話じゃない。多分、現実だと勝負にならない。十中八九俺の勝ちだ。
「くだらねぇだろ」
 同意を引き出したいのだが兄貴は無言だ。
「こんなくだらない奴道場に置いとかなくたっていいだろう。俺が好きだったのは闘いだ。でもそれは、ここじゃなくても出来る。道場で追及すべきなのは、そっちの事じゃない事くらい俺は知ってる」
「……マツ、」
「俺は何を言われようとゲームの方が好きなんだよ。そこなら誰にも迷惑掛けずに闘える。だから俺はゲームに行くんだ」
 兄貴は目を閉じ深くため息を漏らした。
 別にそこまで覚悟する事じゃないだろう、きっとそんな風にも思っているんだろうな。
 うん、俺もそう思っているがこれは……けじめだと思う。道場で追及される『力』を俺は必要としない。それがたとえ精神的なものだとしても俺は知ってしまった。
 別に強くなくたって人は生きていける。
 だって最弱な野郎が何ごともなく隣で生きている。
「ようするにお前は。……本気だ、と言いたい訳だな」
「ああ。……そうだ」

 残念ながら、バカか貴様はとその後兄貴から投げ飛ばされちょっとしたバトルに発展。綺麗に事は運ばないもんである。
 きっと神聖なんだろう道場で繰り広げられたのは……単なる兄弟げんかだな。
 何事かと駆けつけて来た人達に抑えられてようやくおさまり、その後もきっと盛大にくだらないであろう口論は都度続き……
 俺はそれでも自分の意を曲げずついに、頑固な兄貴を説き伏せた。
 ああ、俺ん家両親居ないんだわ。実は師範代の兄貴の上にもう一人兄貴が居たんだが両親ともども旅行先で事故ってな。
 あと、この兄貴ってのは元から道場に居た姉の婿さんである。でも昔から道場で、もう一人の兄みたいな存在だった人だ。血の繋がりはとか関係無く、師範代は間違いなく俺の兄なのだ。
 この一軒で、照井家の柱としてガンバってる師範代が一応の妥協してくれた事になった。おかげで、実際家の中では最強である姉達もあまり強くは俺の針路変更にとやかく言わなくなった。兄貴が俺の心意気を理解してくれた、と信じておこう。

 かくして俺は道場から名前を下ろして、やっぱり姉達からは『なにもそこまでしなくても』と笑われながら。

 仮称、MFC開発チームに正式に入社する事になる。

 もしかしたらすげぇくだらない事かもしれねぇのにな。
 説き伏せるに時間が掛っちまったよ、全く。



               おわり
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