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完結後推奨 番外編 妄想仮想代替恋愛
◆トビラ後日談 A SEQUEL『妄想仮想代替恋愛 -2-』
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◆トビラ後日談 A SEQUEL『妄想仮想代替恋愛 -2-』
※本編終了後閲覧推奨、古谷愛ことアインさんメインの後日談です※
「あれー、一人だー」
「……一人で悪いか?」
時間ぴったりに待ち合わせ場所に駆けつけた所、ヤト氏が今にもお帰りしそうな最底辺なテンションで一人、席に収まっているのを見つけた。
ちなみに、ここはよく私達が待ち合わせに使う某ファミリーレストラン通称ファミレス。
ヤト氏は多分、待ち合わせ時間に誰も現れないからこの場に居るのが堪えられなくなって『逃げ出す』寸前だったのかも。
で、ようやく現れたのが私な訳でしょ?
なんかねー、今だに誤解されまくってるのよ私。
「珍しいなぁ、みんな遅刻かー?」
「てか、まさかまた俺を罠にハメたとか、そんなんじゃないよな?」
ほら、すんごい警戒されてるよ。でもそれは自意識過剰で被害妄想過剰だよヤト氏。
「何時から居たの?」
「……5分前くらい?」
ああ、そう言えば彼には別段遅刻属性は無いのだった。
……遅刻しない人物と言えば、
「レッド君は?」
ヤト氏、ちょっと顔を顰めた。
ちなみに私は『彼女』の事をあえて『レッド君』と呼ぶ事にしている。
「なんで奴の都合を……」
俺が把握していなければいけない、という所はごにょごにょと口ごもりつつそっぽ向いちゃった。
ああもう、ツンデレめ!可愛い奴!
「ごめんね、あたしも危うく遅刻する所で急いで来たから……」
鞄を肩に掛けていまにも席を立ち上がりそうなヤト氏をシート席の奥に追いやるように行動を封じながら携帯端末を取り出す。
ああ、やっぱり連絡来てた~慌てててチェック出来てなかった~。
連絡無しに遅刻するのはナギちゃんで……なっつん事ナツメ氏はこの会合が発案された時点で遅刻予告を貰っている。ナギちゃん以外は遅刻理由を事前に連絡くれるけど……ずぼらなのか何なのか、タイミングがずれてるのが……アベちゃん。彼女のの連絡は遅い。アベちゃっていうのは通称だとアベルって呼ばれてる、カインちゃんの妹でカインちゃんと同じく男勝りで気が強い女の子ね。
彼女、このもっぱらチキンだとかダメ人間だとか言われているヤト氏からフラれた伝説を持っている。伝説なの、在る意味、それは伝説級だと私は思うな。
ああいう恋愛話はフツー無いでしょ。ヤト氏の性格からして無い。ゆえに伝説級だ。
元ネタがあれだからってそこまでフラグ折ってどーすんだって所が私的には萌えるんだけどそれは、顔には出さないわよ、そりゃーね。
「んー……照井氏は急な家事手伝いがあって遅れるらしいし、メージンからは……ヤト氏、何か連絡届いてない?」
「ん?」
言われてのろのろとヤト氏、自分の携帯端末を取り出してああ、なんか来てるけどレッドからだぞ、とか言いながら。
文面読んで私の方を見やる。
「ほら、レッド君からの連絡はあたしじゃなくて、ヤト氏に行ってる」
メージンとナギちゃんとレッドは、別のファミレスで勉強会していてそれがちょっと煮詰まりすぎて、遅れるという連絡があたしの所にメージンから来ていたんだ。
やっぱりナギちゃんは連絡他人任せだった。まぁいつもの事だ。
で、私はアベちゃんに直接電話。
「もしもしアベちゃん?」
通話相手がアベちゃんと知ってかヤト氏、少しびくついている。反応が一々分かりやすくて面白いよ、もう。
『ごめーん、間に合うかなーと思ったんだけど、やっぱり間に合わなかった』
「だったらそうと連絡くらい寄越しなさいよ、心配するでしょ?」
『今それを打ってたんだよ~』
遅刻確定してからじゃなくて、遅刻しそうだったら連絡を寄越しなさいってば。その大雑把な所本当にカインちゃんそっくりなんだから。
「ふぅ、」
通話を終えて携帯の電源を落とすと同時に、ヤト氏今度こそ腰を浮かせて退散のポーズを見せている。
すかさず腕を掴んで止める。
途端固まって動けなくなるのはチキンっ子の仕様かしら?
「というわけで、今回も30分押し集合になるみたい」
「……今度から集合時間の30分後に来よう……」
「んー……あのね、現時点ですでに30分押してるんだけど」
「あ?」
「だからね、いっつもみんな遅刻してくるじゃない、でヤト氏先に帰ろうとするんですよってレッド君が言ってたからさ。今回、毎度遅刻メンバーには30分早い集合予定時刻を伝えてあったのよ」
あ、ヤト氏、項垂れて深いため息を漏らしてますね。
「ごめんね、こう云う時に限って言い出しっぺのあたしが定時に終われそうになくってさ。ヤト氏が来てるのは分かってたから急いできたんだ」
私は遅刻出来ないよね、当然だけど。
でもその当然の気遣いとかにこの子、無駄に感動してしまうタイプであるのは把握済み。
勝手に帰ろうとした事に後ろめたい感情はあるらしく、途端大人しくなって鞄を肩から降ろしてくれた。
「急いできたからおなか減ったんだ~先頼んでよ」
そういって強引にメニュー端末の片方を渡す、こんな時強気になれず流されてしまうのがヤト氏クオリティ。
「何食べよっかな?今日はね、がっつり食べたい気分なんだ」
さて、暫く彼と二人っきりか。
何を話せばいいかな?
引っ込み思案を穴から突っつき出すのはこれで、結構得意と心得る私である。
ドリンクバーに向かい並んだ所、コーヒーが出来上がるのを待つ彼の横でティーポットに湯を注ぎながら私は早速仕掛ける事にした。
「ヤト氏はさ、タチとネコどっちがいい?」
「は?」
即答即座返答が返ってまいりました。彼のスルースキルは低い。噂によるとリアルでもMッ気があって知り合いのドSの人にしょっちゅうイジられていると聞いている。
「だからぁ、せ……」
「そー言う話をこんな所でするな!」
小声で遮られた所、どうやら理解はしているようだと把握。
「どっちかって言ったらどっちなら『許せる?』」
「そりゃ、聞くまでもないだろ?」
「あ、にゃんにゃんの方がいいんだ?」
一歩確実に背後に引いた。そして、反撃を言いよどんでおります。不用意に逆を口にも出せないで困っておりますね。
お湯の満たされたティーカップをトレイに乗せながら私は笑う。
「中途半端に誤魔化して答えるからいけないのよー」
「てか、なんでそんな話を俺に振る!」
「それはもちろん、そーいう本を作るに参考にするからよ」
「うぉおい!冗談だろう!」
「ううん、ガチ」
なんかねー、誤解されまくってるからこの際はっきり言っておこうと思うんだ。
「私ね、結構ヤトちゃん好きよ」
一瞬怯んでから冷静に誰を好きだと私が言ったのかを把握し、立ち直って……やっぱり憤るヤト氏。
「!……って、だから、なんでそれが!」
からかうと面白いから多分、ヤト氏はみんなから弄られるんだと思うよ?
「じゃ、続きはテーブルでね~」
「……俺の事は振ったじゃねぇか……」
席に戻る間の短い間、ヤト氏が小さくぼやいたの、ちゃんと聞えてるんだけどな?
「多分ね、それが運命なんだよ」
「……運命って」
トビラの中でもやっぱり、ヤトはアインさんにアタックしたのよね。
それで、種族や年齢的な問題もあるからダメってチビドラゴンのアインさんはヤトを振っちゃったんだ。
実際には……ヤト・ガザミの本当に感情に気が付いていたからアインさんは断ったのだと思う。
他人事みたいに言うのね、って?仕方ないよ。
私、トビラの中では確かにチビドラゴンのアインの中の人だけど、トビラ世界の記憶や感情はね……あの世界の本質が『夢』である都合全部、正しく現実に持ち帰る事が出来ないんだ。だからついつい他人事みたいになっちゃう。
私だけじゃないよ。トビラをプレイしたみんなそうなんだって。
ヤト氏もそう。彼はトビラ世界のヤト・ガザミだけれどその時の記憶や、感情をこちらに全部持って帰れてない。
全て持って帰る事が可能ならみんなみんな、トビラを経て性格や人格、考え方さえ変化してしまう事になっちゃうでしょ?
そうはならない、持って帰れないのは仕様じゃないよ。
そんな事は出来ないんだよ。
変わるのって難しい事なんだから。その難しい事が出来ているように仮想世界では騙されているだけ。
だから、中と外じゃぁ人格違う人も居るのは当然でしょう?
中のヤトは、自分がどういう心理でチビドラゴンに本気の告白を行っているのか『分かってない』みたいだった。
その時、彼の心の中には分かりやすく、たった一人しかいないのがチビドラゴンにもバレバレなのにね。
どんなに本人が口や行動でその事実を否定しても、どうしようもなく『たった一人』の事を大切に思っているのが分かるんだもん。それの次にあたしを含め、多くの人達を同列に『大切』に思っているのがチビドラゴンにも分かったんだよ。一番に好きだから告白じゃないんだよ。一番を選べない都合があるから二番目に、っていう事だったんだよ、それは。
……ヤトはたった一人を選べなかったのだと思う。
たった一つとその他大勢を秤に掛けてしまって……その他大勢を選んだ結果、その他大勢代表としてチビドラゴンさんに告白という事になってしまったのだと思うんだ。
そして現実で、フルヤ-アイもまたヤト氏の遠回しな告白を拒絶したりしてみた。
ヤト氏ってば、アベちゃんの事本当は好きな癖にそういう事しちゃう子なのね。彼女の事を大切にする自信がないばっかりに逃げてばかり。
あたしとか、逃げる為の口実にされちゃ適わないわよ、って……ちょっとキツめに言い過ぎたかもしれない。
でもヤト氏は……色々と理解して、それで吹っ切れてくれたみたい。
結果的には良かったのかな。
この『好き』だっていう思いは、すれ違う運命なんだ。
だって私が好きなのは……目の前のサトウ-ハヤト氏じゃなくて、間違いなくトビラの中のヤト・ガザミの方なんだし。
私は、絶対に交わらない世界の人、ようするに空想の方を愛している。
ヤト氏とヤト・ガザミは同じだろうって?違うのよ、全然違う。
実際ゲームを夢として世界を共有し、ともに戦ったからこそ実は同じであるはずの二人の違いが際だって見えているだけ?
そんな事ないでしょ、だって、会話のテンションからしてヤト氏とヤトじゃ全然違うじゃない。
別人だよ。あたしにしてみれば『別キャラ』なんだって。
今ある事実は関係ないの、私が好きなのはヤト・ガザミっていうキャラクターの方だって事でもある。
そりゃね、この口数少ない癖に感情ばっちり顔に出ちゃうヤト氏も見てて楽しいんだけど、なまじリアルな男として目の前に居る所為か、仮想妄想に慣れきった都合か、トビラん中のちょっと俺様が入っている方がなんというか……色々と崩し甲斐がある?
こっちのリアルヤト氏、押し弱いんだもん。
……なんかあっさり押し倒されてそう。
一昔こういう乙女チックな男が流行った事もあったそうだけど、なんだっけ、草食系?
私は受けっぽいメンズが好きという訳じゃぁない。腐女子ってのは好きな子単体が好きなんじゃなくて、好き合っている関係性が好きってトコがあるかもね。
私も昔はね、男同士でラブラブイチャイチャしているだけで満足してたかもしれない。でもそれは、その時はまだそーいうのに照れがあったからだと思うの。そーいうの、ってのは要するに性別関係がちょっとオカしな恋愛形態にときめく感情の事よ。
それは代替恋愛な訳じゃない、あたしは本当に腐ってるって言われても男同士の恋愛が好きだと主張すればする程に、都合の良い代替受けキャラには萌えなくなっている事に気が付いてしまった。
代替受けキャラっていうのはようするに、女の子っぽい猫役の男の子の事ね。寝る方、と言うことで『ねこ』とか呼ばれたりする。逆は立てる方で『たち』、基本用語としては攻めとも言う。
昔から有る腐女子小話を挟めておこうかな。
皆さん~『攻める』の反対語は『受ける』じゃなくて『守る』ですよ~。漢字テストで腐女子が間違いやすい箇所です、要注意ね~。
話逸れたわ、……とにかくこう、弱そうでヘタレな受けキャラにあたしの食指が動かなく成りつつある訳ね。
そういうのに『自分』を投影してた時期が確実にあったんだろうけど、今はそれが出来なくなった。
ぶっちゃけて言う、あたしはツン誘い受けがガチ。
ようするに、簡単にフラグ成立されるよりは複雑で攻略しにくい方が断然に萌える。
リアルヤト氏は腐ったあたしから見てどう見ても完全に受け属性なのよね。
彼がガツガツしてるイメージが湧いてこない。どう考えてもレッド君の方が上になっているイメージさえある。……ごめんねレッド君。
……本人らには言わないけど、脳内妄想に留めておりますけれども!
逆にトビラの中のヤトちゃん、王道嫌いって散々脇道に逸れる属性持ってて色々事情も単純じゃない。それに、何だかんだ言いつつちゃんと『リーダー』してる。
ヤト・ガザミはちゃんと、強いと思う。
実際には昔に比べては格段に『弱く』なったらしいけど。
よく分からないな?GM君と比較してって事なのだろうか。
ヤト・ガザミは『過去』を殺し、それと決別するに弱さを選んだらしい……というのは分かるけど、だからってあのGM君とどう関係があるのかあたしとかにははっきり教えてくれないのよね。
エズ3人組は重要な事はいつも申し合わせたように黙りだし。
GM君は完全にリアルヤト氏の逆すぎて、完全他人も良い所、みたいにあたしには感じるかな。あそこまで突き抜けてるんならドS極めて最強の攻めキャラでも良いと思うなぁお姉さんは。そしてそういう属性を押し倒したい私の性癖ッ!
ヤト・ガザミは……リアルヤト氏とGM君、二人の丁度中間にいる感じかな。
ツンだけど受けっていう属性がガチのあたしにはそこがっ、とても重要!
『どっちにもなりうる』リバーシブルなトコがイイのかもね。ふふふ……。美味しいよね、もうやりたい放題よ、ぐふふふ……。
ココアと、お茶のポットをトレイに乗せて席に戻ると、ヤト氏は運命って何だと、何やら考えているみたい。不機嫌な様子をあからさましたままコーヒー啜って、そっぽを向いている。
その横顔を眺めているのも楽しい。
楽しいけれど、……あたしはマジなんだよお兄さん。
マジでヤト・ガザミが好きだからその思いを成就したい。
空想、恋愛なんだけどさ。
その空想に全力で立ち向かうのが腐女子の一つの側面だし、腐女子同人者の天命みたいなものだよ。
少なくとも私はそう思ってる。
だから、誰が何って言おうとガチでヤル気でいるから!
同人誌で!
「……でさ、また黙って勝手に好き勝手改変されるのはヤでしょ?」
一方的に話を再開してみる。
「勿論だ」
乱暴にカップをソーサに戻しつつヤト氏、真面目な顔で、そっぽを向いたまま言う。なんで真面目な顔してるのか分かるかって言うと、ガラスに写ってるからね。
「だからって許可なんか出さないからな、俺は!」
断ればいいってもじゃねぇぞ、と威嚇してるみたいね。
ふふん。
「じゃ、黙って出せば良かったんだ?黙っていれば勝手に改変しても良いって事?見えない所でこっそり楽しめばいいだろ~って?俺の見えない所、知らない所ならいいって言うんだ?」
「……あのな!」
「いいじゃない、ヤトはヤトでしょ、代理なんだから。てゆーかキャラ的に正規版とか始まったらこの手の個人の妄想は絶対避けて通れないわよ?上の人達は二次創作規制は考えていないって云う話じゃない」
という話はレッド君からちゃっかり仕入れています。
「私みたいな配布者が現れないにせよ、想像を規制することは出来ないんだから」
「俺だって人の妄想まで規制するつもりは……だから、なんでそれを配布するんだ、と!」
「だっておいしいもの、美味しい夢を見たいんだよ。世の中には美味しい夢を『つくる』人がいる、同じ思いを共有しているからこそ美味しい方がいいって事」
ヤト氏もエロいメディアコンテンツを同人誌含め、嗜まない訳ではない都合、全面的に否定は出来ずに困っているのかもしれない。
「……あんたの妄想に付き合う奴なんかいるのか?」
「バカね、居るに決まってるじゃない」
しっかり腐ってる私が断言するわ!
「だからって、……あんた達でやるなよ」
……恥ずかしい、そのように小さくぼやいたの、聞えてるってばヤト氏!はっきり言いなさいよ!そういう所、カインちゃんから男らしく無いとか言われちゃうんでしょー?
「その恥じらいすらも萌えにするのが同人魂ってもんよぅ」
どんなに止めてもあたしがヤル気である事は察したようだ。
ヤト氏、テーブルに突っ伏してしまった。
「それで、俺の代理の人が可愛そう過ぎるとは思わないのか」
ヤト・ガザミの事?
「あはん、可愛い子ほど苛めたくなるものでしょ?ヤト氏、勘違いしてない?別にあたしはヤト氏やヤト君を苛めたい訳じゃないのよ?逆、大好きだから大好きだって言う為の本を出すの」
「だからってどーしてそーいう方向性になる!?」
そーいう方向性とは男同士のイチャコラ話という事ね。
顔を上げて憤るヤト氏だけど……そうねぇ、理由はちゃんとあるんだけれど。
説明すると長くなるなぁ。
それに……ちょっと自分から言うのは件の……タブーに触れる気がする。
理由をはっきりヤト氏に言ったら、私が見ようとしている夢が醒めちゃうよ。
だから、言えないな。
「何も知らせなかった方がよかったかな?ちょっとだけ妥協してね、ヤト氏が許せる範囲で許可を貰った上で活動しようかなって思ったんだけど」
「俺はいかなるシチュも認めません!」
「なら健全ならいいの?」
「何が健全だ!」
「男女カプ」
あ、コーヒー吹いた。
「それただのエロになるんじゃないのかアンタらのクオリティだと!」
「だって、同性同士は不健全だとか思ってるんでしょ?」
「バカか!なんでどーしてそこまでして俺、というか俺の代理の人でなければいけないんだよ!」
だーから、それはヤトちゃんが好きだからだって。
夢が醒めるから言わないけれど。
ようするに……ヤトちゃんになりたいんだよ、私は。
トビラの中のヤトが羨ましいんだ、みんなから愛されててさ、その愛を素直に受け取れなくてツンツンしちゃって。
そういうのを口説き落としたいのよ。
そういうのを、組み伏せてみたいわけですよ!
あと、現実でなかなか近づけない人と仮想世界で仲良くしてるのとか見てるとさ。
私はヤトになりたいって思っちゃうもんだよ。
この気持ちは言えないや。
思わず視線を逸らし、十分に蒸らした紅茶をカップに注ぎ入れる。
「わかった、エロは入れないから!キス止まりで我慢する!」
「だからそーいう事を力一杯言うな!」
※本編終了後閲覧推奨、古谷愛ことアインさんメインの後日談です※
「あれー、一人だー」
「……一人で悪いか?」
時間ぴったりに待ち合わせ場所に駆けつけた所、ヤト氏が今にもお帰りしそうな最底辺なテンションで一人、席に収まっているのを見つけた。
ちなみに、ここはよく私達が待ち合わせに使う某ファミリーレストラン通称ファミレス。
ヤト氏は多分、待ち合わせ時間に誰も現れないからこの場に居るのが堪えられなくなって『逃げ出す』寸前だったのかも。
で、ようやく現れたのが私な訳でしょ?
なんかねー、今だに誤解されまくってるのよ私。
「珍しいなぁ、みんな遅刻かー?」
「てか、まさかまた俺を罠にハメたとか、そんなんじゃないよな?」
ほら、すんごい警戒されてるよ。でもそれは自意識過剰で被害妄想過剰だよヤト氏。
「何時から居たの?」
「……5分前くらい?」
ああ、そう言えば彼には別段遅刻属性は無いのだった。
……遅刻しない人物と言えば、
「レッド君は?」
ヤト氏、ちょっと顔を顰めた。
ちなみに私は『彼女』の事をあえて『レッド君』と呼ぶ事にしている。
「なんで奴の都合を……」
俺が把握していなければいけない、という所はごにょごにょと口ごもりつつそっぽ向いちゃった。
ああもう、ツンデレめ!可愛い奴!
「ごめんね、あたしも危うく遅刻する所で急いで来たから……」
鞄を肩に掛けていまにも席を立ち上がりそうなヤト氏をシート席の奥に追いやるように行動を封じながら携帯端末を取り出す。
ああ、やっぱり連絡来てた~慌てててチェック出来てなかった~。
連絡無しに遅刻するのはナギちゃんで……なっつん事ナツメ氏はこの会合が発案された時点で遅刻予告を貰っている。ナギちゃん以外は遅刻理由を事前に連絡くれるけど……ずぼらなのか何なのか、タイミングがずれてるのが……アベちゃん。彼女のの連絡は遅い。アベちゃっていうのは通称だとアベルって呼ばれてる、カインちゃんの妹でカインちゃんと同じく男勝りで気が強い女の子ね。
彼女、このもっぱらチキンだとかダメ人間だとか言われているヤト氏からフラれた伝説を持っている。伝説なの、在る意味、それは伝説級だと私は思うな。
ああいう恋愛話はフツー無いでしょ。ヤト氏の性格からして無い。ゆえに伝説級だ。
元ネタがあれだからってそこまでフラグ折ってどーすんだって所が私的には萌えるんだけどそれは、顔には出さないわよ、そりゃーね。
「んー……照井氏は急な家事手伝いがあって遅れるらしいし、メージンからは……ヤト氏、何か連絡届いてない?」
「ん?」
言われてのろのろとヤト氏、自分の携帯端末を取り出してああ、なんか来てるけどレッドからだぞ、とか言いながら。
文面読んで私の方を見やる。
「ほら、レッド君からの連絡はあたしじゃなくて、ヤト氏に行ってる」
メージンとナギちゃんとレッドは、別のファミレスで勉強会していてそれがちょっと煮詰まりすぎて、遅れるという連絡があたしの所にメージンから来ていたんだ。
やっぱりナギちゃんは連絡他人任せだった。まぁいつもの事だ。
で、私はアベちゃんに直接電話。
「もしもしアベちゃん?」
通話相手がアベちゃんと知ってかヤト氏、少しびくついている。反応が一々分かりやすくて面白いよ、もう。
『ごめーん、間に合うかなーと思ったんだけど、やっぱり間に合わなかった』
「だったらそうと連絡くらい寄越しなさいよ、心配するでしょ?」
『今それを打ってたんだよ~』
遅刻確定してからじゃなくて、遅刻しそうだったら連絡を寄越しなさいってば。その大雑把な所本当にカインちゃんそっくりなんだから。
「ふぅ、」
通話を終えて携帯の電源を落とすと同時に、ヤト氏今度こそ腰を浮かせて退散のポーズを見せている。
すかさず腕を掴んで止める。
途端固まって動けなくなるのはチキンっ子の仕様かしら?
「というわけで、今回も30分押し集合になるみたい」
「……今度から集合時間の30分後に来よう……」
「んー……あのね、現時点ですでに30分押してるんだけど」
「あ?」
「だからね、いっつもみんな遅刻してくるじゃない、でヤト氏先に帰ろうとするんですよってレッド君が言ってたからさ。今回、毎度遅刻メンバーには30分早い集合予定時刻を伝えてあったのよ」
あ、ヤト氏、項垂れて深いため息を漏らしてますね。
「ごめんね、こう云う時に限って言い出しっぺのあたしが定時に終われそうになくってさ。ヤト氏が来てるのは分かってたから急いできたんだ」
私は遅刻出来ないよね、当然だけど。
でもその当然の気遣いとかにこの子、無駄に感動してしまうタイプであるのは把握済み。
勝手に帰ろうとした事に後ろめたい感情はあるらしく、途端大人しくなって鞄を肩から降ろしてくれた。
「急いできたからおなか減ったんだ~先頼んでよ」
そういって強引にメニュー端末の片方を渡す、こんな時強気になれず流されてしまうのがヤト氏クオリティ。
「何食べよっかな?今日はね、がっつり食べたい気分なんだ」
さて、暫く彼と二人っきりか。
何を話せばいいかな?
引っ込み思案を穴から突っつき出すのはこれで、結構得意と心得る私である。
ドリンクバーに向かい並んだ所、コーヒーが出来上がるのを待つ彼の横でティーポットに湯を注ぎながら私は早速仕掛ける事にした。
「ヤト氏はさ、タチとネコどっちがいい?」
「は?」
即答即座返答が返ってまいりました。彼のスルースキルは低い。噂によるとリアルでもMッ気があって知り合いのドSの人にしょっちゅうイジられていると聞いている。
「だからぁ、せ……」
「そー言う話をこんな所でするな!」
小声で遮られた所、どうやら理解はしているようだと把握。
「どっちかって言ったらどっちなら『許せる?』」
「そりゃ、聞くまでもないだろ?」
「あ、にゃんにゃんの方がいいんだ?」
一歩確実に背後に引いた。そして、反撃を言いよどんでおります。不用意に逆を口にも出せないで困っておりますね。
お湯の満たされたティーカップをトレイに乗せながら私は笑う。
「中途半端に誤魔化して答えるからいけないのよー」
「てか、なんでそんな話を俺に振る!」
「それはもちろん、そーいう本を作るに参考にするからよ」
「うぉおい!冗談だろう!」
「ううん、ガチ」
なんかねー、誤解されまくってるからこの際はっきり言っておこうと思うんだ。
「私ね、結構ヤトちゃん好きよ」
一瞬怯んでから冷静に誰を好きだと私が言ったのかを把握し、立ち直って……やっぱり憤るヤト氏。
「!……って、だから、なんでそれが!」
からかうと面白いから多分、ヤト氏はみんなから弄られるんだと思うよ?
「じゃ、続きはテーブルでね~」
「……俺の事は振ったじゃねぇか……」
席に戻る間の短い間、ヤト氏が小さくぼやいたの、ちゃんと聞えてるんだけどな?
「多分ね、それが運命なんだよ」
「……運命って」
トビラの中でもやっぱり、ヤトはアインさんにアタックしたのよね。
それで、種族や年齢的な問題もあるからダメってチビドラゴンのアインさんはヤトを振っちゃったんだ。
実際には……ヤト・ガザミの本当に感情に気が付いていたからアインさんは断ったのだと思う。
他人事みたいに言うのね、って?仕方ないよ。
私、トビラの中では確かにチビドラゴンのアインの中の人だけど、トビラ世界の記憶や感情はね……あの世界の本質が『夢』である都合全部、正しく現実に持ち帰る事が出来ないんだ。だからついつい他人事みたいになっちゃう。
私だけじゃないよ。トビラをプレイしたみんなそうなんだって。
ヤト氏もそう。彼はトビラ世界のヤト・ガザミだけれどその時の記憶や、感情をこちらに全部持って帰れてない。
全て持って帰る事が可能ならみんなみんな、トビラを経て性格や人格、考え方さえ変化してしまう事になっちゃうでしょ?
そうはならない、持って帰れないのは仕様じゃないよ。
そんな事は出来ないんだよ。
変わるのって難しい事なんだから。その難しい事が出来ているように仮想世界では騙されているだけ。
だから、中と外じゃぁ人格違う人も居るのは当然でしょう?
中のヤトは、自分がどういう心理でチビドラゴンに本気の告白を行っているのか『分かってない』みたいだった。
その時、彼の心の中には分かりやすく、たった一人しかいないのがチビドラゴンにもバレバレなのにね。
どんなに本人が口や行動でその事実を否定しても、どうしようもなく『たった一人』の事を大切に思っているのが分かるんだもん。それの次にあたしを含め、多くの人達を同列に『大切』に思っているのがチビドラゴンにも分かったんだよ。一番に好きだから告白じゃないんだよ。一番を選べない都合があるから二番目に、っていう事だったんだよ、それは。
……ヤトはたった一人を選べなかったのだと思う。
たった一つとその他大勢を秤に掛けてしまって……その他大勢を選んだ結果、その他大勢代表としてチビドラゴンさんに告白という事になってしまったのだと思うんだ。
そして現実で、フルヤ-アイもまたヤト氏の遠回しな告白を拒絶したりしてみた。
ヤト氏ってば、アベちゃんの事本当は好きな癖にそういう事しちゃう子なのね。彼女の事を大切にする自信がないばっかりに逃げてばかり。
あたしとか、逃げる為の口実にされちゃ適わないわよ、って……ちょっとキツめに言い過ぎたかもしれない。
でもヤト氏は……色々と理解して、それで吹っ切れてくれたみたい。
結果的には良かったのかな。
この『好き』だっていう思いは、すれ違う運命なんだ。
だって私が好きなのは……目の前のサトウ-ハヤト氏じゃなくて、間違いなくトビラの中のヤト・ガザミの方なんだし。
私は、絶対に交わらない世界の人、ようするに空想の方を愛している。
ヤト氏とヤト・ガザミは同じだろうって?違うのよ、全然違う。
実際ゲームを夢として世界を共有し、ともに戦ったからこそ実は同じであるはずの二人の違いが際だって見えているだけ?
そんな事ないでしょ、だって、会話のテンションからしてヤト氏とヤトじゃ全然違うじゃない。
別人だよ。あたしにしてみれば『別キャラ』なんだって。
今ある事実は関係ないの、私が好きなのはヤト・ガザミっていうキャラクターの方だって事でもある。
そりゃね、この口数少ない癖に感情ばっちり顔に出ちゃうヤト氏も見てて楽しいんだけど、なまじリアルな男として目の前に居る所為か、仮想妄想に慣れきった都合か、トビラん中のちょっと俺様が入っている方がなんというか……色々と崩し甲斐がある?
こっちのリアルヤト氏、押し弱いんだもん。
……なんかあっさり押し倒されてそう。
一昔こういう乙女チックな男が流行った事もあったそうだけど、なんだっけ、草食系?
私は受けっぽいメンズが好きという訳じゃぁない。腐女子ってのは好きな子単体が好きなんじゃなくて、好き合っている関係性が好きってトコがあるかもね。
私も昔はね、男同士でラブラブイチャイチャしているだけで満足してたかもしれない。でもそれは、その時はまだそーいうのに照れがあったからだと思うの。そーいうの、ってのは要するに性別関係がちょっとオカしな恋愛形態にときめく感情の事よ。
それは代替恋愛な訳じゃない、あたしは本当に腐ってるって言われても男同士の恋愛が好きだと主張すればする程に、都合の良い代替受けキャラには萌えなくなっている事に気が付いてしまった。
代替受けキャラっていうのはようするに、女の子っぽい猫役の男の子の事ね。寝る方、と言うことで『ねこ』とか呼ばれたりする。逆は立てる方で『たち』、基本用語としては攻めとも言う。
昔から有る腐女子小話を挟めておこうかな。
皆さん~『攻める』の反対語は『受ける』じゃなくて『守る』ですよ~。漢字テストで腐女子が間違いやすい箇所です、要注意ね~。
話逸れたわ、……とにかくこう、弱そうでヘタレな受けキャラにあたしの食指が動かなく成りつつある訳ね。
そういうのに『自分』を投影してた時期が確実にあったんだろうけど、今はそれが出来なくなった。
ぶっちゃけて言う、あたしはツン誘い受けがガチ。
ようするに、簡単にフラグ成立されるよりは複雑で攻略しにくい方が断然に萌える。
リアルヤト氏は腐ったあたしから見てどう見ても完全に受け属性なのよね。
彼がガツガツしてるイメージが湧いてこない。どう考えてもレッド君の方が上になっているイメージさえある。……ごめんねレッド君。
……本人らには言わないけど、脳内妄想に留めておりますけれども!
逆にトビラの中のヤトちゃん、王道嫌いって散々脇道に逸れる属性持ってて色々事情も単純じゃない。それに、何だかんだ言いつつちゃんと『リーダー』してる。
ヤト・ガザミはちゃんと、強いと思う。
実際には昔に比べては格段に『弱く』なったらしいけど。
よく分からないな?GM君と比較してって事なのだろうか。
ヤト・ガザミは『過去』を殺し、それと決別するに弱さを選んだらしい……というのは分かるけど、だからってあのGM君とどう関係があるのかあたしとかにははっきり教えてくれないのよね。
エズ3人組は重要な事はいつも申し合わせたように黙りだし。
GM君は完全にリアルヤト氏の逆すぎて、完全他人も良い所、みたいにあたしには感じるかな。あそこまで突き抜けてるんならドS極めて最強の攻めキャラでも良いと思うなぁお姉さんは。そしてそういう属性を押し倒したい私の性癖ッ!
ヤト・ガザミは……リアルヤト氏とGM君、二人の丁度中間にいる感じかな。
ツンだけど受けっていう属性がガチのあたしにはそこがっ、とても重要!
『どっちにもなりうる』リバーシブルなトコがイイのかもね。ふふふ……。美味しいよね、もうやりたい放題よ、ぐふふふ……。
ココアと、お茶のポットをトレイに乗せて席に戻ると、ヤト氏は運命って何だと、何やら考えているみたい。不機嫌な様子をあからさましたままコーヒー啜って、そっぽを向いている。
その横顔を眺めているのも楽しい。
楽しいけれど、……あたしはマジなんだよお兄さん。
マジでヤト・ガザミが好きだからその思いを成就したい。
空想、恋愛なんだけどさ。
その空想に全力で立ち向かうのが腐女子の一つの側面だし、腐女子同人者の天命みたいなものだよ。
少なくとも私はそう思ってる。
だから、誰が何って言おうとガチでヤル気でいるから!
同人誌で!
「……でさ、また黙って勝手に好き勝手改変されるのはヤでしょ?」
一方的に話を再開してみる。
「勿論だ」
乱暴にカップをソーサに戻しつつヤト氏、真面目な顔で、そっぽを向いたまま言う。なんで真面目な顔してるのか分かるかって言うと、ガラスに写ってるからね。
「だからって許可なんか出さないからな、俺は!」
断ればいいってもじゃねぇぞ、と威嚇してるみたいね。
ふふん。
「じゃ、黙って出せば良かったんだ?黙っていれば勝手に改変しても良いって事?見えない所でこっそり楽しめばいいだろ~って?俺の見えない所、知らない所ならいいって言うんだ?」
「……あのな!」
「いいじゃない、ヤトはヤトでしょ、代理なんだから。てゆーかキャラ的に正規版とか始まったらこの手の個人の妄想は絶対避けて通れないわよ?上の人達は二次創作規制は考えていないって云う話じゃない」
という話はレッド君からちゃっかり仕入れています。
「私みたいな配布者が現れないにせよ、想像を規制することは出来ないんだから」
「俺だって人の妄想まで規制するつもりは……だから、なんでそれを配布するんだ、と!」
「だっておいしいもの、美味しい夢を見たいんだよ。世の中には美味しい夢を『つくる』人がいる、同じ思いを共有しているからこそ美味しい方がいいって事」
ヤト氏もエロいメディアコンテンツを同人誌含め、嗜まない訳ではない都合、全面的に否定は出来ずに困っているのかもしれない。
「……あんたの妄想に付き合う奴なんかいるのか?」
「バカね、居るに決まってるじゃない」
しっかり腐ってる私が断言するわ!
「だからって、……あんた達でやるなよ」
……恥ずかしい、そのように小さくぼやいたの、聞えてるってばヤト氏!はっきり言いなさいよ!そういう所、カインちゃんから男らしく無いとか言われちゃうんでしょー?
「その恥じらいすらも萌えにするのが同人魂ってもんよぅ」
どんなに止めてもあたしがヤル気である事は察したようだ。
ヤト氏、テーブルに突っ伏してしまった。
「それで、俺の代理の人が可愛そう過ぎるとは思わないのか」
ヤト・ガザミの事?
「あはん、可愛い子ほど苛めたくなるものでしょ?ヤト氏、勘違いしてない?別にあたしはヤト氏やヤト君を苛めたい訳じゃないのよ?逆、大好きだから大好きだって言う為の本を出すの」
「だからってどーしてそーいう方向性になる!?」
そーいう方向性とは男同士のイチャコラ話という事ね。
顔を上げて憤るヤト氏だけど……そうねぇ、理由はちゃんとあるんだけれど。
説明すると長くなるなぁ。
それに……ちょっと自分から言うのは件の……タブーに触れる気がする。
理由をはっきりヤト氏に言ったら、私が見ようとしている夢が醒めちゃうよ。
だから、言えないな。
「何も知らせなかった方がよかったかな?ちょっとだけ妥協してね、ヤト氏が許せる範囲で許可を貰った上で活動しようかなって思ったんだけど」
「俺はいかなるシチュも認めません!」
「なら健全ならいいの?」
「何が健全だ!」
「男女カプ」
あ、コーヒー吹いた。
「それただのエロになるんじゃないのかアンタらのクオリティだと!」
「だって、同性同士は不健全だとか思ってるんでしょ?」
「バカか!なんでどーしてそこまでして俺、というか俺の代理の人でなければいけないんだよ!」
だーから、それはヤトちゃんが好きだからだって。
夢が醒めるから言わないけれど。
ようするに……ヤトちゃんになりたいんだよ、私は。
トビラの中のヤトが羨ましいんだ、みんなから愛されててさ、その愛を素直に受け取れなくてツンツンしちゃって。
そういうのを口説き落としたいのよ。
そういうのを、組み伏せてみたいわけですよ!
あと、現実でなかなか近づけない人と仮想世界で仲良くしてるのとか見てるとさ。
私はヤトになりたいって思っちゃうもんだよ。
この気持ちは言えないや。
思わず視線を逸らし、十分に蒸らした紅茶をカップに注ぎ入れる。
「わかった、エロは入れないから!キス止まりで我慢する!」
「だからそーいう事を力一杯言うな!」
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