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番外編 補完記録13章 『腹黒魔導師の冒険』
書の2前半 現実証明補完論『扉を閉じて尚来る混沌』
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■書の2前半■現実証明補完論 invites chaos kamma
10年と少し前、僕はまだ師に従う位、赤いマントを羽織った魔導師の、弟子でした。
とはいっても実力は、すでに黒衣以上と噂され……在る事無い事色々云われていたんですけどね。
本来、僕は魔法使いになる事なんて無いだろう環境に生れて、そこで何の疑問も無く生きていました。
出身は種族的な都合、分かりますよね?僕はサウター、南国人です。当然生れは南国カルケードになるのですが、カルケードもあれで広いですからね、都会的な所も在れば、随分田舎な所だってあるのです。
南国の更に南、昔ファイアーズという国が在った地方のさらに南の奥地に、農園で暮らしを立てている村がいくつかあるのですが、僕は大体その辺りで生まれました。はっきりとした場所や地名は分かりません、気が付いた時には両親が居なくて、僕は農園の若い働き口として……いわばちゃんと世話されている奴隷みたいな所で生活していたので……。
自然環境は過酷な方でしたので、こうやって孤児になる子供は結構居た様です。そういう子どもを面倒を見る者に国が援助を出している様ですね……働き口を必要としているこの辺りの農園では別に珍しい事でも無かったようです。家族という単位より、共同体としての単位で生活しているのが当たり前という文化がある様ですね。
あ、これは後になってから調べて解った事なんですよ。
自分が生まれ育ったところがどういう所か、あまりに記憶が薄かったので色々と……後から調べて、分からない所は推測で話をしています。
寝るところもあれば、食事もちゃんと出るし国の方針とかで一応、最低限の学業制度もあるんですよ。
悪い所では無かった様ですね、でも……さほど良い未来が開けている訳でもない。
農作物の心配をして、機嫌の悪い自然環境に向けて平和な気候を祈るばかり。そうしていずれ農業知識を得て自分の畑を持てれば立派なものです。
南国というのは、一番魔法技術が遅れている所でもあるんですよ。
もっとも、魔法技術が高い事が幸せ、とは限らないのかもしれませんけどね。
南国の首都近辺であっても遅れていると言えるのですから、そのさらに田舎の農村に、魔導師なんて居るはずが在りません。存在自体、幻みたいなものですよ。
それを知識としては知っていても一生見る事は無いだろう所に僕は生まれて、住んでいたんです。
そんな所に魔導師がやってきた。
事も在ろうに……この僕を探して。
正しくは、魔法の高い資質者を探して、南国の僻地まで魔導師がやってきた。
当時はよくわかりませんでしたが、どうやら魔法素質の高い人材を魔法で探知してやってきたらしいのです。後から把握する事ながら、南国までわざわざやって来た魔導師は……『空間転位』が得意だった為にこんな僻地までやって来てしまった様ですねぇ。
極めて指向性の高い探知魔法を組んであちこちの国を飛び回っていた様です、僕の師匠、アルベルト・レブナントは。
でもほら、僕が居たのは魔法も魔法と知らない様な人ばかり住んでいるド田舎ですよ?そこに魔導師なんかやってきて、弟子にするから農園の働き口の男の子を貰いたいなんて、そんな話通用すると思います?
僕らは環境の所為で一種奴隷みたいな境遇ではあるけれど、実際はこの閉じた世界でそれなりに幸せを謳歌していたんです。要するに、平和に暮らしていた訳ですよ。
貴重な働き手を農園がそう簡単に手放すはずがないんです。血のつながりは無いけれど、僕らは農園という一つの家族みたいに暮らしているんですから。
お金の問題でもない、南国の通貨パルは農園にも在ったけれど、お金よりも農作物を沢山収穫する方が農園にとっては大事な事なのです。
農園は、僕をアルベルトに渡すことを断ったようですね。
それで多分……僕は、魔導都市ランで魔導師になるハメになったのです。
残念な事にこの辺りはあくまで僕の推測です、実際アルベルトと僕が暮らしていたであろう農園の間でどういったやり取りがあったのかは分かりません。しかし、気が付いた時には僕は、アルベルトに連れられて故郷を後にしていました。あの時の事は……ただただ呆気にとられて、一体何が起きたのかもさっぱり思い出せません。
後から色々考えていって僕は、あくまで想像で物事を補完して状況を理解できるようになった。
農園は、アルベルトによって焼き払われたのでしょう。
ぼんやりと、激しい野火を思い出せます。
厳しい自然環境では野火はよくある事で、これが起きたら延焼を防ぐべく農作物を刈り取る等の対策するしか成す術が無い。だから僕は野火があって、対処に遅れて農園が焼けたのだろうという認識でした。
でも違う、よく考えると何かが違う。
僕は10年と少し前の話をすると云いましたが、この幼少期というのはそれよりも幾分前の記憶です。ましてやまだ幼い頃の記憶なので極めて曖昧なのですが……多分、僕はアルベルトによって強引に故郷から、魔導都市ランに連れてこられたのではないかと思っています。
いや、それを推測する頃にはもうとっくに僕は魔導師だったものですから、果たしてどちらが『仕合せ』だったのかなど比較するのもおかしな話で。
ただまぁ、流石は師匠、中々ゲスい事をすると無駄に納得する程度なのでした。
実際の所どうなのかを師に訊ねれば良い?
勿論、疑問に感じた事は問い正しましたよ。でもね、魔導師というのは必ずしも本当の事を話す訳では無い、そういうやっかいなモノなのです。僕がそもそもそうですからね、分かるでしょう?
そう、僕の師匠アルベルト・レブナントは実に……何と云いますか、貪欲で自分勝手極まりない、魔導師の鑑みたいな人だったのです。
しかし師匠の弟子を見出した目は確実でしたね。確かに僕には魔法を使う才能があった。まぁ、サウターなのですから普通の大陸人よりかは素質があるのは当たり前の話なんですけど。
南国は一番魔法技術が遅れている、とはいえそれが魔法が使えないという理論にはなりません。魔法と云う『手段』はこの世界において普遍的な力なんです。それをより上手く使いこなす事が出来るか出来ないか、という事で天と地ほどの差が生まれるに過ぎません。南国は魔法を使う技術を積極的に求めなかった、求める必要が無かったのですね、在れば勿論便利で色々革新的に変わったのでしょうけど、そういう変化とかを文化的に求める気質が薄い。
サウターには砂貴族種という、今は完全に南国人に帰化していてそう呼べる魔種が存在しないのですが……とにかくそういう魔物の血が入っている。おかげで西方人、ウェシタラーより幾分長生きで先天的な魔法素質も高い事が広く知られています。
つまり……魔法は手段の一つとして、先天的に行使しているのがサウターなのです。
例えばそれは勘が鋭いとか、水の匂いを嗅ぎ分けるとか、人の気配に敏感だとか……そういう風に顕現していて、彼らはそれが魔法だとは知らずにいるものなのです。
そういう魔種混じりの有力種を弟子にする、っていうのは……実は魔導都市ではやや反則な所があるみたいですね。魔法を使えない者に魔法と云う手段を与える、というのが魔導都市の意義ですから。明らかな混血というわけでも無い、見た目は何ら変わったところの無いサウターを、その中でも特に素質が高いと見込まれて僕なんかが、魔導都市に連れてこられたら……どうなりますか。
最初は地獄でしたね、師匠がかなり厳しく僕に魔導を教えたからです。
何が何だかわからず知らない土地に連れて来られて、お前は魔法使いにならねばならぬと言い含められ、今まで肉体労働をしていた僕が机に縛り付けられて勉強漬けですよ?最初は、地獄に来たと思うしかないでしょう。しかも世間体の目も冷たい、事も在ろうか魔種混じりの魔導師だ、あの強欲アルベルトの弟子だと、理不尽な後ろ指を差されるばかり。
でもね、困った事に僕には見込まれただけの素質があった。
魔導師らしい、探求心も強かった。
理解が進めば、勉強は次第に楽しいものになり、知識を得る喜びを知ってしまった。
幼い頃に繰り返していた単純かつどちらかと云えばキツめの肉体労働で、自然と云う驚異には成す術も無い諦観からくる……忍耐力みたいなものが備わっていたのでしょう。
僕はアルベルトの思惑通り、あっという間に魔導師としての実力をつけ、位を上げて行ったのです。ただ経歴や年齢の都合黒衣は得られず、赤位の時代が長かったと云えるでしょう。
アルベルトの野望についてはもちろん知っています。
自分の弟子、すなわちブランドから……紫の位を出す事です。
その一歩手前、浅黄色さえも排出したことが無い、自身も黒衣どまりであるというのにね。
いや、だからこそ自分に出来ないのなら、自分が育てた者に自分の能力の証明をさせようというのでしょう。
自分はもっと高い位に在るべきだ、そう訴えるために彼は、僕という魔導師を作った。
僕は、彼の作品だった。
そうだとはっきり言われていなくてもよく分かっている。
これと言って別に欲が無い、あえて言うなら魔導師としての知識欲しか無かった僕は、言われるままに高みを目指していました。僕も自分がどこまで行けるのか知りたかったのです。知りたいのは、それだけでした。
でも良くある話ではあるんですが、そういう伸びに伸びまくって有頂天になっていた者は、天井に一度でも頭をぶつけると大変なんです。大変っていうのは、色々ありますが……厄介、とでも云いますか。
そこで頭打ちされてへこたれればまだ良い方で、伸びる事が出来なくなったと知った、力を得る事だけに生きがいを感じていたりする者は……何をすると思います?
更なる力を得る手段を探すんですよ。
そうなった僕が作ったのが……アーティフィカル・ゴースト、というワケです。
具体的にこの魔導の仕様を説明すると皆さん、ただでさえ僕の長い話で辟易なされているでしょうから出来るだけ簡単な説明にとどめる事にしますが……ようするに、これは理論的に解体した『レッドフラグ』だと言えば、イメージは掴めるのではないでしょうか。
出来の悪いレッドフラグ、あるいはリュステル・シーサイドが開発したとされる『後天性暗黒比種発動理論』の亜流版みたいな感じです。
もっともっと極めて単純に言うと、アーティフィカル・ゴーストというのは能力値の底上げをする魔導式と言えます。
少なくとも、僕の理論上ではそうなるはずでした。
アーティフィカル・ゴーストがなぜリュステルが開発した技術の亜式かといえば、想定した程能力付加が出来なかったからですね。
後天性(以下略)とは、人間を一度魔道に落として存在理論を組み替えて、引き上げるというシロモノである為に確実に能力値はチート化して飛躍的に上がります。
実際、レッドフラグはリュステルが作った理論の鬼強化版みたいなもので、魔道に落とすどころか一旦存在として殺す、破たんさせてしまうので何をもってしても元に戻せない強烈なバグとして作用している所があります。
これは本来ならば理論的に成立しないのですが、大陸座バルトアンデルトの能力値を削る都合で実現するに至ってしまったバグだった事が、12章までの冒険の書を公開するまでには判明していますね。
この追加章冒頭の話は、まだ4章最後位の話なのである程度推測は出来ていますが、はっきりと認識していて話している事ではないんですよ?
それはさておき話を戻しましょう。
対し僕が作った理論値の底上げ『アーティフィカル・ゴースト』は、名前からして察する事が出来るかもしれませんが……ようするに能力値の外付けでしかない。
肉体を持たない『人工的な死霊』とは、寄生させた人物に外付けハードディスクや強大なメモリの様な働きをして、寄生者の能力を底上げするはずでした。
ところが、アーティフィカル・ゴーストとして呼び出せる媒体が想像していたよりも小さかったのです。例えるならペタバイト級を付加できると思っていたのに、実際にはメガバイト程度しかメモリが増やせなかったとすれば……がっかりでしょう?それでは容量増えたかどうかも分からない程度でしかない事はお分かりいただけると思うのですが。どうでしょう?
しかも、事も在ろうか場合によってはメモリの逆流が起きる。増やしたはずのメモリの所為で動作が落ちる、みたいな感じです。
分かりやすくする為に比喩で言いましたが……つまり、能力値を付与できず、逆にアーティフィカル・ゴーストに能力を吸われてしまう。
能力値の低下というより、憑けた者の命を削る結果になる場合が多い様です。
能力などとぼんやりとした言い方をしましたが、つまりそれは生きている上での総合的な力の事なのですが……これも詳しくやると話が長くなりすぎるのでとりあえず、ざっくりとしたイメージで勘弁してください。
僕が作った理論は、憑ければ恒久的に働きかけるアップ系の薬、みたいな働きをするはずでした。
もっと上手く行けば、元になったゴーストの生前の能力、知識や技術も引き出せると見込んだものですが……。
ようするに、それを作るなら元となっている死霊は何でも良いわけでは無い、という事でしょう。自分よりも高次な者を呼び出してアーティフィカル・ゴーストとし、自らに付加しなければならない。
安易に数で攻めれば能力値が、メモリの容量が増える様に底上げできるという考えは間違っていた訳です。
そもそも、コンピュータのメモリーとCPUの違い的な、初歩的な勘違いをしていた様な感じです。
メモリーを増やせばパソコンの処理速度が早くなる、訳では無い事くらいは段々常識的な知識として備わっておいてもらいたいものですが、どうなのでしょう?まぁ、ここも説明していると長くなりますから省きます。リアル知識なので分からない人は各自ググってくださいね。
……僕の、魔導師の時の名前を思い出してください。
一番最初に、僕の名前の事はご紹介しました。
僕は ―・レブナント です。
元々レブナントは召喚や門の技術に特化していて、僕が『死霊使い』の二つ名を持っているのは本編で言った通りですよ。
紫魔導師になると経歴の都合『アール』という愛称みたいなもので呼ばれる事が多くなるんですが、この頃はまだ、ワンとか、ダッシュとかアルベルトジュニアと呼ばれる事の方が多かったと思います。
ダッシュと呼んでくれる人の方がまだ善意がありましたね、あのアルベルトの弟子だと名指して呼ぶ者にはどうにも、悪意を感じます。
死霊召喚は昔から得意でした、倫理観に抵触して禁忌っぽく感じるかもしれませんが、死霊召喚および使役魔法は肉体労働力として魔導都市ではスタンダードです、普通に重宝されていましたよ。
西方の倫理観で言えばとんでもない事かもしれません。死霊調伏に特化している天使教からは白目で見られても良いものでしょうが、ナッツさんは比較的その辺り寛容でしたねぇ、あの人はなかなか懐が深いです。
骸骨を数体呼ぶなんて赤衣魔導師程度で誰でもできます、しかし、軍隊一個師団を外骨格の替わりになる鎧付きで呼び出せるのは、当時の魔導都市では僕くらいだったでしょう。
若かりし頃、僕は数を呼ぶ事が肝要だと思って居たのですよ。アーティフィカル・ゴーストを開発している最中の事です。
しかし後にそれは間違いだと分かりました。
そこで、ようやく考え方を改めた。漸くメモリとCPUの違いを理解した、みたいな感じです。
一人の大物を呼び出す方がアーティフィカル・ゴースト理論では重要なのだ、と。
そうして僕が呼んだのは誰なのか、察している方もおられるでしょう。
極めて近年、禁忌を破る為に禁忌を重ねたという、稀有な魔導師が居ました。やはり死霊は年代が近い方が呼び出しやすい。西方の言葉で言えば縁を結びやすいのです。
それがエルドロウ、紫魔導でありながら更なる高みを目指したか、単純に魔導技術の発展を願っていたのか……禁忌という概念を本気で取り払おうと考えたのか。
死人に口は無く、真意はもはや分からない事ながら彼はその類い稀なる技術を称えられ、魂は学士の城に招致されたとも云われる『無色』の魔導師。
その魂を呼ぶことは果たして、禁忌に触れるのか?
エルドロウをアーティフィカル・ゴースト化するにあたり、僕は彼の死霊召喚が違法に当たるかどうかを慎重に検討する必要がありました。魔導師協会に反して邪術師認定を受けては元も子も在りません。
実力を正規に認めてもらうためには、定められた枠の上で魔導を組む必要があります。
ですが……どう考えてもエルドロウ自体が禁忌みたいな扱いなので詰問するまでも無く違法でしょう。
学士の城に招かれた、という魔導都市の比喩は、その魂が死霊化して余計な事をしでかさないように牢に入れておく、に近いニュアンスも含んでいます。
エルドロウは死してもその存在を方位神、あるいはこの頃現れ始めた大陸座という超常の者達に監視されている。
それでも、そういう危険なクラスを呼ぶしか無い。
上手く行けば僕の実績は紫を越えるでしょう、あるいは色を奪われ無色となって……命を落とすかもしれません。
僕は、そういう決心を師であるアルベルトに打ち明けました。
アルベルトが求めているものは、僕が死しても構わない、位の高い魔導士を出したという実績だと信じていたからです。僕はそれをアルベルトに約束する以外に望んでいる事など特には無くて、そうして死ねるなら魔導師冥利に尽きるのではと思っていたんですよ。
勿論、師は喜んでくれました。
自分の為に、そこまでしてくれるお前と云う素晴らしい弟子を誇りに思うと、涙を流して喜んでくれたんです。
俄然やる気になったものです。
周りからの誹謗中傷に耐えながら、そう多くの者が手を伸ばすことが適わない高みへ手を翳す事、僕にはそれが出来るという事。そう出来る僕を師は見つけ出してくれた事。その感謝を、行動でちゃんと伝える事が出来る事。
全てが僕には『仕合せ』な事に思えたのです。
そうして死ぬ事になるのが幸せなんて、他人から見れば頭がおかしいと思われるかもしれません。
勿論、死なずに無色を冠する事が出来ればもっと良い事でしょう。
昔、アールという名前の無色魔導が数世紀存在していた事があったという伝承も在ります。僕はそういう圧倒的な存在に成りたかった。
たとえそれで……この世界そのものから追われるとしても、です。
そうして、色々と失敗を重ねましたがアーティフィカル・ゴースト理論は完成したのです。
死霊使いの二つ名を持つ僕にとって、エルドロウを呼び出すのは造作も無い事でした。呼び出した事が世間に知られてしまえば罰せられますが、死霊を元に個性の消滅した付与概念、アーティフィカル・ゴーストを作ってしまえば……元の死霊が何であったかなど誰にもわかるはずが無い。
僕は、師の立ち合いの元でついに自身の最高傑作となる魔導を組み上げました。
ゴーストの質によっては、リュステルの後天性暗黒比種理論を超える。故に少しだけ禁忌に触れてしまうけれど、魔導師的な感覚で言えば『バレなければ何も問題は無い』。
僕の理論は極めて、完璧でしたね。
完全に予測通りの働きをした、だからこそ……僕はこの後、黒衣、浅黄衣を飛び越えて紫衣魔導師となってしまうのです。
10年と少し前、僕はまだ師に従う位、赤いマントを羽織った魔導師の、弟子でした。
とはいっても実力は、すでに黒衣以上と噂され……在る事無い事色々云われていたんですけどね。
本来、僕は魔法使いになる事なんて無いだろう環境に生れて、そこで何の疑問も無く生きていました。
出身は種族的な都合、分かりますよね?僕はサウター、南国人です。当然生れは南国カルケードになるのですが、カルケードもあれで広いですからね、都会的な所も在れば、随分田舎な所だってあるのです。
南国の更に南、昔ファイアーズという国が在った地方のさらに南の奥地に、農園で暮らしを立てている村がいくつかあるのですが、僕は大体その辺りで生まれました。はっきりとした場所や地名は分かりません、気が付いた時には両親が居なくて、僕は農園の若い働き口として……いわばちゃんと世話されている奴隷みたいな所で生活していたので……。
自然環境は過酷な方でしたので、こうやって孤児になる子供は結構居た様です。そういう子どもを面倒を見る者に国が援助を出している様ですね……働き口を必要としているこの辺りの農園では別に珍しい事でも無かったようです。家族という単位より、共同体としての単位で生活しているのが当たり前という文化がある様ですね。
あ、これは後になってから調べて解った事なんですよ。
自分が生まれ育ったところがどういう所か、あまりに記憶が薄かったので色々と……後から調べて、分からない所は推測で話をしています。
寝るところもあれば、食事もちゃんと出るし国の方針とかで一応、最低限の学業制度もあるんですよ。
悪い所では無かった様ですね、でも……さほど良い未来が開けている訳でもない。
農作物の心配をして、機嫌の悪い自然環境に向けて平和な気候を祈るばかり。そうしていずれ農業知識を得て自分の畑を持てれば立派なものです。
南国というのは、一番魔法技術が遅れている所でもあるんですよ。
もっとも、魔法技術が高い事が幸せ、とは限らないのかもしれませんけどね。
南国の首都近辺であっても遅れていると言えるのですから、そのさらに田舎の農村に、魔導師なんて居るはずが在りません。存在自体、幻みたいなものですよ。
それを知識としては知っていても一生見る事は無いだろう所に僕は生まれて、住んでいたんです。
そんな所に魔導師がやってきた。
事も在ろうに……この僕を探して。
正しくは、魔法の高い資質者を探して、南国の僻地まで魔導師がやってきた。
当時はよくわかりませんでしたが、どうやら魔法素質の高い人材を魔法で探知してやってきたらしいのです。後から把握する事ながら、南国までわざわざやって来た魔導師は……『空間転位』が得意だった為にこんな僻地までやって来てしまった様ですねぇ。
極めて指向性の高い探知魔法を組んであちこちの国を飛び回っていた様です、僕の師匠、アルベルト・レブナントは。
でもほら、僕が居たのは魔法も魔法と知らない様な人ばかり住んでいるド田舎ですよ?そこに魔導師なんかやってきて、弟子にするから農園の働き口の男の子を貰いたいなんて、そんな話通用すると思います?
僕らは環境の所為で一種奴隷みたいな境遇ではあるけれど、実際はこの閉じた世界でそれなりに幸せを謳歌していたんです。要するに、平和に暮らしていた訳ですよ。
貴重な働き手を農園がそう簡単に手放すはずがないんです。血のつながりは無いけれど、僕らは農園という一つの家族みたいに暮らしているんですから。
お金の問題でもない、南国の通貨パルは農園にも在ったけれど、お金よりも農作物を沢山収穫する方が農園にとっては大事な事なのです。
農園は、僕をアルベルトに渡すことを断ったようですね。
それで多分……僕は、魔導都市ランで魔導師になるハメになったのです。
残念な事にこの辺りはあくまで僕の推測です、実際アルベルトと僕が暮らしていたであろう農園の間でどういったやり取りがあったのかは分かりません。しかし、気が付いた時には僕は、アルベルトに連れられて故郷を後にしていました。あの時の事は……ただただ呆気にとられて、一体何が起きたのかもさっぱり思い出せません。
後から色々考えていって僕は、あくまで想像で物事を補完して状況を理解できるようになった。
農園は、アルベルトによって焼き払われたのでしょう。
ぼんやりと、激しい野火を思い出せます。
厳しい自然環境では野火はよくある事で、これが起きたら延焼を防ぐべく農作物を刈り取る等の対策するしか成す術が無い。だから僕は野火があって、対処に遅れて農園が焼けたのだろうという認識でした。
でも違う、よく考えると何かが違う。
僕は10年と少し前の話をすると云いましたが、この幼少期というのはそれよりも幾分前の記憶です。ましてやまだ幼い頃の記憶なので極めて曖昧なのですが……多分、僕はアルベルトによって強引に故郷から、魔導都市ランに連れてこられたのではないかと思っています。
いや、それを推測する頃にはもうとっくに僕は魔導師だったものですから、果たしてどちらが『仕合せ』だったのかなど比較するのもおかしな話で。
ただまぁ、流石は師匠、中々ゲスい事をすると無駄に納得する程度なのでした。
実際の所どうなのかを師に訊ねれば良い?
勿論、疑問に感じた事は問い正しましたよ。でもね、魔導師というのは必ずしも本当の事を話す訳では無い、そういうやっかいなモノなのです。僕がそもそもそうですからね、分かるでしょう?
そう、僕の師匠アルベルト・レブナントは実に……何と云いますか、貪欲で自分勝手極まりない、魔導師の鑑みたいな人だったのです。
しかし師匠の弟子を見出した目は確実でしたね。確かに僕には魔法を使う才能があった。まぁ、サウターなのですから普通の大陸人よりかは素質があるのは当たり前の話なんですけど。
南国は一番魔法技術が遅れている、とはいえそれが魔法が使えないという理論にはなりません。魔法と云う『手段』はこの世界において普遍的な力なんです。それをより上手く使いこなす事が出来るか出来ないか、という事で天と地ほどの差が生まれるに過ぎません。南国は魔法を使う技術を積極的に求めなかった、求める必要が無かったのですね、在れば勿論便利で色々革新的に変わったのでしょうけど、そういう変化とかを文化的に求める気質が薄い。
サウターには砂貴族種という、今は完全に南国人に帰化していてそう呼べる魔種が存在しないのですが……とにかくそういう魔物の血が入っている。おかげで西方人、ウェシタラーより幾分長生きで先天的な魔法素質も高い事が広く知られています。
つまり……魔法は手段の一つとして、先天的に行使しているのがサウターなのです。
例えばそれは勘が鋭いとか、水の匂いを嗅ぎ分けるとか、人の気配に敏感だとか……そういう風に顕現していて、彼らはそれが魔法だとは知らずにいるものなのです。
そういう魔種混じりの有力種を弟子にする、っていうのは……実は魔導都市ではやや反則な所があるみたいですね。魔法を使えない者に魔法と云う手段を与える、というのが魔導都市の意義ですから。明らかな混血というわけでも無い、見た目は何ら変わったところの無いサウターを、その中でも特に素質が高いと見込まれて僕なんかが、魔導都市に連れてこられたら……どうなりますか。
最初は地獄でしたね、師匠がかなり厳しく僕に魔導を教えたからです。
何が何だかわからず知らない土地に連れて来られて、お前は魔法使いにならねばならぬと言い含められ、今まで肉体労働をしていた僕が机に縛り付けられて勉強漬けですよ?最初は、地獄に来たと思うしかないでしょう。しかも世間体の目も冷たい、事も在ろうか魔種混じりの魔導師だ、あの強欲アルベルトの弟子だと、理不尽な後ろ指を差されるばかり。
でもね、困った事に僕には見込まれただけの素質があった。
魔導師らしい、探求心も強かった。
理解が進めば、勉強は次第に楽しいものになり、知識を得る喜びを知ってしまった。
幼い頃に繰り返していた単純かつどちらかと云えばキツめの肉体労働で、自然と云う驚異には成す術も無い諦観からくる……忍耐力みたいなものが備わっていたのでしょう。
僕はアルベルトの思惑通り、あっという間に魔導師としての実力をつけ、位を上げて行ったのです。ただ経歴や年齢の都合黒衣は得られず、赤位の時代が長かったと云えるでしょう。
アルベルトの野望についてはもちろん知っています。
自分の弟子、すなわちブランドから……紫の位を出す事です。
その一歩手前、浅黄色さえも排出したことが無い、自身も黒衣どまりであるというのにね。
いや、だからこそ自分に出来ないのなら、自分が育てた者に自分の能力の証明をさせようというのでしょう。
自分はもっと高い位に在るべきだ、そう訴えるために彼は、僕という魔導師を作った。
僕は、彼の作品だった。
そうだとはっきり言われていなくてもよく分かっている。
これと言って別に欲が無い、あえて言うなら魔導師としての知識欲しか無かった僕は、言われるままに高みを目指していました。僕も自分がどこまで行けるのか知りたかったのです。知りたいのは、それだけでした。
でも良くある話ではあるんですが、そういう伸びに伸びまくって有頂天になっていた者は、天井に一度でも頭をぶつけると大変なんです。大変っていうのは、色々ありますが……厄介、とでも云いますか。
そこで頭打ちされてへこたれればまだ良い方で、伸びる事が出来なくなったと知った、力を得る事だけに生きがいを感じていたりする者は……何をすると思います?
更なる力を得る手段を探すんですよ。
そうなった僕が作ったのが……アーティフィカル・ゴースト、というワケです。
具体的にこの魔導の仕様を説明すると皆さん、ただでさえ僕の長い話で辟易なされているでしょうから出来るだけ簡単な説明にとどめる事にしますが……ようするに、これは理論的に解体した『レッドフラグ』だと言えば、イメージは掴めるのではないでしょうか。
出来の悪いレッドフラグ、あるいはリュステル・シーサイドが開発したとされる『後天性暗黒比種発動理論』の亜流版みたいな感じです。
もっともっと極めて単純に言うと、アーティフィカル・ゴーストというのは能力値の底上げをする魔導式と言えます。
少なくとも、僕の理論上ではそうなるはずでした。
アーティフィカル・ゴーストがなぜリュステルが開発した技術の亜式かといえば、想定した程能力付加が出来なかったからですね。
後天性(以下略)とは、人間を一度魔道に落として存在理論を組み替えて、引き上げるというシロモノである為に確実に能力値はチート化して飛躍的に上がります。
実際、レッドフラグはリュステルが作った理論の鬼強化版みたいなもので、魔道に落とすどころか一旦存在として殺す、破たんさせてしまうので何をもってしても元に戻せない強烈なバグとして作用している所があります。
これは本来ならば理論的に成立しないのですが、大陸座バルトアンデルトの能力値を削る都合で実現するに至ってしまったバグだった事が、12章までの冒険の書を公開するまでには判明していますね。
この追加章冒頭の話は、まだ4章最後位の話なのである程度推測は出来ていますが、はっきりと認識していて話している事ではないんですよ?
それはさておき話を戻しましょう。
対し僕が作った理論値の底上げ『アーティフィカル・ゴースト』は、名前からして察する事が出来るかもしれませんが……ようするに能力値の外付けでしかない。
肉体を持たない『人工的な死霊』とは、寄生させた人物に外付けハードディスクや強大なメモリの様な働きをして、寄生者の能力を底上げするはずでした。
ところが、アーティフィカル・ゴーストとして呼び出せる媒体が想像していたよりも小さかったのです。例えるならペタバイト級を付加できると思っていたのに、実際にはメガバイト程度しかメモリが増やせなかったとすれば……がっかりでしょう?それでは容量増えたかどうかも分からない程度でしかない事はお分かりいただけると思うのですが。どうでしょう?
しかも、事も在ろうか場合によってはメモリの逆流が起きる。増やしたはずのメモリの所為で動作が落ちる、みたいな感じです。
分かりやすくする為に比喩で言いましたが……つまり、能力値を付与できず、逆にアーティフィカル・ゴーストに能力を吸われてしまう。
能力値の低下というより、憑けた者の命を削る結果になる場合が多い様です。
能力などとぼんやりとした言い方をしましたが、つまりそれは生きている上での総合的な力の事なのですが……これも詳しくやると話が長くなりすぎるのでとりあえず、ざっくりとしたイメージで勘弁してください。
僕が作った理論は、憑ければ恒久的に働きかけるアップ系の薬、みたいな働きをするはずでした。
もっと上手く行けば、元になったゴーストの生前の能力、知識や技術も引き出せると見込んだものですが……。
ようするに、それを作るなら元となっている死霊は何でも良いわけでは無い、という事でしょう。自分よりも高次な者を呼び出してアーティフィカル・ゴーストとし、自らに付加しなければならない。
安易に数で攻めれば能力値が、メモリの容量が増える様に底上げできるという考えは間違っていた訳です。
そもそも、コンピュータのメモリーとCPUの違い的な、初歩的な勘違いをしていた様な感じです。
メモリーを増やせばパソコンの処理速度が早くなる、訳では無い事くらいは段々常識的な知識として備わっておいてもらいたいものですが、どうなのでしょう?まぁ、ここも説明していると長くなりますから省きます。リアル知識なので分からない人は各自ググってくださいね。
……僕の、魔導師の時の名前を思い出してください。
一番最初に、僕の名前の事はご紹介しました。
僕は ―・レブナント です。
元々レブナントは召喚や門の技術に特化していて、僕が『死霊使い』の二つ名を持っているのは本編で言った通りですよ。
紫魔導師になると経歴の都合『アール』という愛称みたいなもので呼ばれる事が多くなるんですが、この頃はまだ、ワンとか、ダッシュとかアルベルトジュニアと呼ばれる事の方が多かったと思います。
ダッシュと呼んでくれる人の方がまだ善意がありましたね、あのアルベルトの弟子だと名指して呼ぶ者にはどうにも、悪意を感じます。
死霊召喚は昔から得意でした、倫理観に抵触して禁忌っぽく感じるかもしれませんが、死霊召喚および使役魔法は肉体労働力として魔導都市ではスタンダードです、普通に重宝されていましたよ。
西方の倫理観で言えばとんでもない事かもしれません。死霊調伏に特化している天使教からは白目で見られても良いものでしょうが、ナッツさんは比較的その辺り寛容でしたねぇ、あの人はなかなか懐が深いです。
骸骨を数体呼ぶなんて赤衣魔導師程度で誰でもできます、しかし、軍隊一個師団を外骨格の替わりになる鎧付きで呼び出せるのは、当時の魔導都市では僕くらいだったでしょう。
若かりし頃、僕は数を呼ぶ事が肝要だと思って居たのですよ。アーティフィカル・ゴーストを開発している最中の事です。
しかし後にそれは間違いだと分かりました。
そこで、ようやく考え方を改めた。漸くメモリとCPUの違いを理解した、みたいな感じです。
一人の大物を呼び出す方がアーティフィカル・ゴースト理論では重要なのだ、と。
そうして僕が呼んだのは誰なのか、察している方もおられるでしょう。
極めて近年、禁忌を破る為に禁忌を重ねたという、稀有な魔導師が居ました。やはり死霊は年代が近い方が呼び出しやすい。西方の言葉で言えば縁を結びやすいのです。
それがエルドロウ、紫魔導でありながら更なる高みを目指したか、単純に魔導技術の発展を願っていたのか……禁忌という概念を本気で取り払おうと考えたのか。
死人に口は無く、真意はもはや分からない事ながら彼はその類い稀なる技術を称えられ、魂は学士の城に招致されたとも云われる『無色』の魔導師。
その魂を呼ぶことは果たして、禁忌に触れるのか?
エルドロウをアーティフィカル・ゴースト化するにあたり、僕は彼の死霊召喚が違法に当たるかどうかを慎重に検討する必要がありました。魔導師協会に反して邪術師認定を受けては元も子も在りません。
実力を正規に認めてもらうためには、定められた枠の上で魔導を組む必要があります。
ですが……どう考えてもエルドロウ自体が禁忌みたいな扱いなので詰問するまでも無く違法でしょう。
学士の城に招かれた、という魔導都市の比喩は、その魂が死霊化して余計な事をしでかさないように牢に入れておく、に近いニュアンスも含んでいます。
エルドロウは死してもその存在を方位神、あるいはこの頃現れ始めた大陸座という超常の者達に監視されている。
それでも、そういう危険なクラスを呼ぶしか無い。
上手く行けば僕の実績は紫を越えるでしょう、あるいは色を奪われ無色となって……命を落とすかもしれません。
僕は、そういう決心を師であるアルベルトに打ち明けました。
アルベルトが求めているものは、僕が死しても構わない、位の高い魔導士を出したという実績だと信じていたからです。僕はそれをアルベルトに約束する以外に望んでいる事など特には無くて、そうして死ねるなら魔導師冥利に尽きるのではと思っていたんですよ。
勿論、師は喜んでくれました。
自分の為に、そこまでしてくれるお前と云う素晴らしい弟子を誇りに思うと、涙を流して喜んでくれたんです。
俄然やる気になったものです。
周りからの誹謗中傷に耐えながら、そう多くの者が手を伸ばすことが適わない高みへ手を翳す事、僕にはそれが出来るという事。そう出来る僕を師は見つけ出してくれた事。その感謝を、行動でちゃんと伝える事が出来る事。
全てが僕には『仕合せ』な事に思えたのです。
そうして死ぬ事になるのが幸せなんて、他人から見れば頭がおかしいと思われるかもしれません。
勿論、死なずに無色を冠する事が出来ればもっと良い事でしょう。
昔、アールという名前の無色魔導が数世紀存在していた事があったという伝承も在ります。僕はそういう圧倒的な存在に成りたかった。
たとえそれで……この世界そのものから追われるとしても、です。
そうして、色々と失敗を重ねましたがアーティフィカル・ゴースト理論は完成したのです。
死霊使いの二つ名を持つ僕にとって、エルドロウを呼び出すのは造作も無い事でした。呼び出した事が世間に知られてしまえば罰せられますが、死霊を元に個性の消滅した付与概念、アーティフィカル・ゴーストを作ってしまえば……元の死霊が何であったかなど誰にもわかるはずが無い。
僕は、師の立ち合いの元でついに自身の最高傑作となる魔導を組み上げました。
ゴーストの質によっては、リュステルの後天性暗黒比種理論を超える。故に少しだけ禁忌に触れてしまうけれど、魔導師的な感覚で言えば『バレなければ何も問題は無い』。
僕の理論は極めて、完璧でしたね。
完全に予測通りの働きをした、だからこそ……僕はこの後、黒衣、浅黄衣を飛び越えて紫衣魔導師となってしまうのです。
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