異世界創造NOSYUYO トビラ

RHone

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番外編・後日談 A SEQUEL

◆ 『トビラ』リリースβ版『黄金色のトビラを閉めろ!』下

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『黄金色のトビラを閉めろ!』下

※正式リリースされた想定の『後日談』です
 某のゲストキャラとのPvP(プレイヤーキル)戦


 さてこれで場はドローに持ち込んだ形になる。仕切りなおしだ。
 いや?もう少し事態を考えようぜ俺?
 軍師連中がいないんだから、俺自身で考えるしかない。
 なんでこいつは回復を選んだ?その意味を考えろ俺。
 ……自爆が使えないのは何故か、死ねないのはなぜか。簡単だ。

 こいつはゲストじゃなくてヘッドだとするならどうだよ。

 たやすく捨て駒になるわけにはいかないだろう?
 その俺の予測を裏付けるように、突然第三者が現れる。
「大丈夫かルイ!」
 転移してきた、こいつも魔法使いだな。こっちは典型的な魔導師マントを身に着けているから良くわかる。中性的な顔立ちの……多分男。
「悪い、そっちは大丈夫なのか?」
「入り口は全てふさいでいる、突破しそうな奴はいないとオービットが判断した」
 オービット、さっきの青年だな。
 ……あれも魔導師っぽかったし、言動からしてゲストとは思えないんだが……ヘッド同士の連携も産まれつつあるのかもしれない。
「入り込んだ奴らのレベルが半端無いよ」
「みてぇだな」
 しかし……魔法使い二人相手はちょいと俺には厳しいのですが。うーむ、撤退時かな。ヤバい時は素直に撤退、コレ常識。死んだらコンティニューできませんから。そこんところ、理解しないとこの世界ではやってけない。
 とはいえ、どこに逃げればいいんだろう。やっぱ窓か?
「……!」
 しかし新規参入した魔法使いが突然顔色を変える。
「……やれやれ、ようやく合流できましたねぇ」
 空間が歪む。
 その歪みは見て取れて強引な力によるものであるように、抵抗する空間を押し出すように何かが入り込んでくる。
「レッド!」
「……ッ、やられた、」
 転移して来た我らが腹黒魔導師事レッドは、にやりと笑って敵二人を一瞥した。
「転移門を開くときはお気を付けて……逆門追尾は比較的容易いのでね」
 どうやらレッドに一杯食わされたらしい、中性的な顔立ちの魔導師は苦々しい顔で身構えている。逆門追尾、魔法転移によって開いた通路の痕跡を辿る魔法だ、転移門は万能逃走魔法じゃないのはこの追尾魔法の存在があるそうだ。一度道筋を付けるとトレースされる危険性が高いらしい。
「……俺の所為か」
 シーフっぽい男は舌打ちして頭を掻く。ああなるほど、この新規参入魔導師は監視部屋の男を守るためにここに駆け込んで来た訳か。ゲストがヘッドを守る行動を取ったという訳だな。
「しかたないだろ、いきなりこのフロアに踏み込んだ奴がいたのが失敗だ」
 ……つまり、俺の所為か。
 俺だって好きでアタリを踏んだ訳じゃねぇんだ、アベルの奴が突然どつきやがったからこんなハメに……いや、俺達的には好状況ですが。
 ともあれ、目の前の敵を撃破してから文句は言う事にしよう。
 互いに構え、レッドが先制。
 氷の槍を何本も生成すると瞬時に投げつける。しかしそれは中性的な顔の魔法使いが張った盾に阻まれて四散した。その隙に背後のルイ、とかいう男が魔法詠唱を終えて火の矢を連発するが……それはあっけなくレッドの張っている盾に阻まれる。
 魔法使いとしてのレベルは圧倒的にレッドが上だな、一人で防御まで手を廻せている。
 何しろ、最高レベルってのがこの我らが腹黒魔導師なわけですから。
 だが相手を攻撃するまでの手段はなさそうだな。何しろ先方は片方が攻撃、片方が防御に徹している。コンビネーションも絶妙、割と鉄壁だ。

 なら、俺が動くしかない。

 相手が物理盾を張っている時は近づけないから、レッドが魔法攻撃をした時に、魔法防御盾を発動した時に一撃見舞うしかない。
「いくぞレッド。ハデに行け」
「お任せください」


 それで……城が崩壊を始めた。

 いや、ハデに行けって言っちゃった手前俺は何もいえない立場だが。
 発端は恐らく、魔法使い二人の鉄壁ペアのペースを崩すためにレッドが床をぶち抜いたのが……悪い。

「むちゃくちゃだ!」
 悪かったな、無茶苦茶でよ!
 俺は落下する床石を蹴り、魔法使い二人への距離を詰める。
 レッドから放たれた氷結魔法を防ぐのに精一杯の盾役をすり抜け、背後で次の魔法攻撃の準備に入っていた攻撃専門のルイという男に……槍を一突き食らわすつもりだったのだが……。
 そこに、突然物理盾が現れた。

 魔法的なものではなく、本物の……盾!

 二階部分へ崩れた埃が舞う中、巨漢の男が俺の槍を事もあろうか素手で止めやがった!
 この場合槍から手を放すべきなのだが、俺はその事実への対応に若干遅れ、逆に相手は反応が早い。
 槍から手を離す動作に迷い、動けない間に俺は槍ごと背後に投げ出されて壁に叩きつけられた。
 それ程相手は怪力の持ち主だったって事だよ。
「おいおい、テメェの相手はこの俺だろうが」
 壁に打ち付けられてずり落ちた所、顔を上げれば……テリーが前方を見据えて拳を構えている。
 そうか、さっき魔法映写の中でテリーと激しい格闘を繰り広げていたのは……この男か。
「乱戦気味だな」
 三階が全部崩れ落ち、もうもうと土煙が舞う中俺は立ち上がって苦笑する、まだまだ、このくらいでくたばる程俺は軟じゃねぇぜ。
「あー、ダメだこりゃ、まずいわ」
 声が上からする。見上げると……例の青年、オービットが頭を掻き毟っている。
「ちょっと強すぎる、他の連中がお手上げして撤退し始めちゃった。ヤバいから俺らもずらかろう」
「ちッ、根性の無い野郎どもだ」
 どう云う事だ、撤退って……奴ら、どこに逃げるってんだ。
 そのオービットが素早く跳ぶ。見慣れた矢が刺さっているのを俺は発見した。
 マツナギだ!
 オービットは身軽に次々と襲い来る矢を躱しながら、二階に下りて下の味方と合流しようとするが……。
 何かからつっこまれてバランスを崩す。
「オービット!」
 あれは……!
「丸こげにおなりーッ!」
 アインだ!
 矢に気を取られていたオービットにしがみつき、ゼロ距離で灼熱のブレスを吹きかけようとしているが……。
 あの青年もなかなかやる、冷静に小竜の首を掴むと……あ、こっちに向けやがった。
「ひぃぃッ!」
 俺とレッド、テリーは慌ててその場を待避するはめになった。魔法壁なんぞ張ってる場合じゃない。
 あの一撃の強烈さは身に沁みて知っている。物理防壁なんぞヘタすりゃあっという間に突破し、あらゆるものを溶かす程の超高温ブレスなのだ!
 あっという間に壁が溶け、一階および地下まで穴が……。
 あ、アインさん!手加減をいい加減覚えたらどうなんですかーッ!
「ちょっと!危ないじゃないのよアイ!」
 聞き慣れた罵倒が下の階から聞こえますぜ~。
 見下ろすと、アベルが剣士と戦っている所だったらしく、開いた穴を隔てて対峙している所だった。
「どうなってるんだ?ぶち抜かれてるじゃないか」
 その対峙している戦士も、上の階の散々たる有様に目を丸くしている。
「ちょうどいい、ブレイズ、撤退」
 オービットが親指で上に上がれと指示する。……あの剣士はオービットのゲストか?
「どうりで、人がいないと思った」
 苦笑して下の階の青年が躊躇無く上の階へ跳躍する。
 俺達の隣をすり抜けようとするが……そうはいくか!
 俺は剣を構えてその前に立ちふさがった。
「ヤト!」
 アベルからの心配そうな声が届くが、その意味するところを察しているヒマは無い。
 ブレイズという黒髪の青年は抜き放っていた剣を横に構え、容赦なく突っ込んでくる。
 切り結んだ、そこで少なくとも相手の足は止まる筈なのに……止まらない?え?
 気が付いたら剣が弾き返されていて、俺は背後にたたらを踏んでよろめいていた。
 その隙に剣士の青年は俺に一撃入れる事も出来ただろうが……無視して合流を優先したようである。

 何、こいつ今、何しがやった?

「強いわよ、相当に」
 アベルも登って来て呆然としている俺に告げる。敵を目で追っている彼女の横顔がマジだ。
 アベルに強いと言わせるとは……そりゃぁ、確かに相当だ。

 マツナギも上の階から飛び降りてきた。
 途端、パラパラと砂が落ちてくる。
「ヤバいよ」
 端的な彼女の言葉は言うなれば……予言だ、精霊使いの。
「何がヤバいんだよ」
 当然の疑問だな。
「建物の要が壊れてる、この城崩れるよ」

 ……精霊使いの予言は怖いくらい当たるぞ。

「それはいけませんね、先方も撤退したいみたいですし。じゃぁ僕らも待避しますか」
「待って、ナッツはどこよ」
 おお、そういえば奴の姿が見えない。トラップに引っかかるほど間抜けな奴じゃないからな、きっとどこかで……。
「おーい」
「げッ!」
 顔を上げたオービットが、ぎょっとした顔をしたのが見える。
 何事かと頭上を見上げると……ウワサのナッツだ。
 レッドが最初にぶちあけた床の穴の上で、ナッツが何かを掲げて手を振っている。
「扉、ゲットー」
 おぅッ、流石は後方支援諜報部員!
 さり気なく目的のブツをゲットしてましたか。抜け目無いぜ。

 しかし、扉ってそんなに小さなものなんだな。

 ナッツの片手に収まる、それは黄金色に輝く丸い宝玉だった。

「間違いないんだな?」
 テリーの疑問はもっともだろう。だが、怪しいものを根拠無くそうだと言う程ナッツは浅はかじゃないぞ。
「うん、生き残っていたヘッドはこれを通じてログアウトしたから、間違いないよ」
 そう言って背中の翼を広げ、ナッツは堂々と下の階に降りて来る。
「あちゃー、負けちゃった」
 しかし敵であるオービットは苦笑して、額を抑えて割りとさばさばしてやがる。
 イエロー権限のログインキャラは現実世界の事情を持ち込めないのに……なんだこの楽天的なキャラクターは。
 お前ら、わかってんのか?
 扉は俺達が閉じる、お前らは負けだぞ?
 消滅だぞ?
 ……ってちょっと待て。
 俺はナッツの言った言葉をふいと思い出す。
 『これ』を通じてログアウトしたからって、どういうこった?
「はい」
「えーッ!」
 驚いて喚いたのは俺である。
 先方ではない。

 ナッツから『扉』を手渡されたオービットは苦笑して頭を掻いた。

「ナッツさん、何相手に渡してるんですか!」
「いやぁ僕らの勝利は間違いないんだから、多少お情けを掛けても問題は無いだろう?」
 それは……。
 俺は呆れつつも、黄金旗の連中に向けた同情を禁じ得ない。
 ナッツ、お前も割りとフツーな顔して酷い事を言うよな?

 はっきり言って、それはとても残酷な事だと思わないのか?

「いいのかなぁ、逃がしたら俺達、もう一度『侵略』に来るんだけど」
 オービットは苦笑したまま扉を手に持ち、俺達を伺った。
「雑魚も多かったがな、俺達相手にここまで粘ったんだ、正直褒めてやるぜ」
 割と今回の『戦い』に満足してるらしいな、テリーは。
 あの盾役の怪力男が相当強かったに違いない。
「しかし……一つ疑問が残りますね。よろしければご回答いただけませんか?」
「何さ」
「……貴方達は他の人達よりずば抜けて強かった。この短期間にどうやって他との差を?」
 レッドが一歩前に出て眼鏡フレームを押し上げた。
「どうしよっか」
 オービットはルイ、という男を伺う。
「いいんじゃね?こっちは負けてんだ、答えてやれよ」
 やっぱりあの男がヘッドか?
「うーん、まぁ負けた手前隠し事は出来ないよなぁ」
「ふん、そんなの少し考えれば分かる事だろ。わかっている癖に聞くのか?」
 中性的な顔立ちの魔導師は不機嫌な顔で言った。
 ……すいません、俺には少し考えても良く分からないのですが。
「まー、無秩序に群れてたってしょうがないんだよね、俺達。だから淘汰したんだよ」
 オービットは苦笑した。
 淘汰。
 その響きにどこか残酷な雰囲気を感じる。
 人当たりの良さそうな顔のまま、恐ろしい事をさらりと言う。

 こいつは、こいつはアレだな。

 レッドやナッツと同じ分類だ。
 感情を排他し、合理的に物事を進めるタイプ、そう……言動に見合わずこいつが軍師だ。

 ヘッドはルイじゃないんだ。

 オービットがこいつら4人のヘッドなのだと俺は今、気が付いた。

「こっちに来てすぐにバトルロワイヤルをやったのさ、味方を喰って先に力を溜めて他の連中を従えたんだよ。見せつけ的にも一石二鳥だし」

 本来もっと多くの参加者がこの城にはいたのだろう。
 このオービットのレギオンは、それを淘汰という形で攻撃し経験値を稼いだのだ。ほかの連中もすぐに同じことを始めたに違いないが、オービットは元々他の連中を従える事も頭に入れていた。
 実力を見せつけ、抵抗しないヘッドを従えて、あっという間に城の黄金旗を統率したのだろう。
 その支配から、逃げ出そうとした奴がいる。
 あの、桟橋で死んでいたヘッドは……多分それで殺されたのか。
 ようやくあの死体の意味が判明した。
 なるほど、そういう事情だったのか……。

「でもダメだったね、もうちょっと時間があればなんとか形になったんだけど……簡単に侵略ってのはいかないもんだねぇ」
 俺達の進行速度が速すぎて形になら無かったって訳か。
 しかし恐ろしい、相手だ……!
 一般プレイヤーがこいつらに勝てたかどうかはかなり際どい、時間を許せば許すだけこっちが不利になっていたに違いない。

 本当にこんなプレイヤーを放っておいていいのか?ナッツ。

「感銘した、成る程、そんなやり方があるとは……」
 しかしナッツ、本気で関心している様だ。
「今度僕らと会う時はその時も完全に敵だから。そのつもりで次の侵略を待ってるよ」
「はは、今度はあんたらと当たらない事を祈ってる」

 名前をそれぞれに告げた。
 ヘッドがオービット、魔法使い双璧がルインとハイドローで、戦士二人がダークとブレイズ。
 こっちも全員、名前を相手に教えてやった。強敵だった事に対するサービスだ。
 オービット達は俺達の名前を強敵として、この世界に刻むだろう。でもそれでいい、俺達はそうやって『敵』であってもかまわない。
 今後、俺達が再びパーティーを組んでこの世界を訪れる事はほとんど無いだろう。組んだとしても必ずオービット率いる黄金旗連中に当たるとは限らない。

 『この世界』は広い、広すぎる。

 この世界にいる限り全ては現実で、上限などなく、どこまでも広く果てしないのだから。

 今、多くの『扉』が開かれて世界は新しい形を迎える。
 トビラ元年、だが物語は終わらない、システム管理者としても。
 この世界の俺、ヤトとしてもな。


 楽しかった。
 やっぱりゲームは楽しくあるべきだと思う。
 目が覚めて楽しかったと、β版プレイヤー達がそういう朝を迎える事を俺は願っているぜ。



   終
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