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番外編・後日談 A SEQUEL
◆ 『トビラ』β版-逆ver.『ジニアーの異世界侵略-5』追憶編
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『ジニアーの異世界侵略-5』追憶編
※正式リリースされた想定の『後日談』
『黄金色の扉を閉めろ!』SFサイド側からバージョン
※※ この番外編は某のCM的な要素を含みます ※※
まず、あの6人を団体で出迎えるのは最悪手だ。
何しろこちらは対して5人、しかも内一人であるオービットは口は回れど戦闘能力は皆無。
まずは敵を分散させることが急務だろう。
一応はその段取りで、部屋に待機させている玉持ちがまだ残っている。何も説明せずに敵を待ち構え、待機を命じてあるものだ。すでにほどんどの玉持ちが死に、オービットに権限が取られているとは思っていないだろう。時間を掛けない限り、それらの駒はまだ利用価値がある。しかし、そこに誘導する仕組みが完成していない。ある程度仕込みは終わっているが、最終的にどこに誰をどう繋げるかという微調整を後回しにしていた。
一先ず時間を稼ぐ為にオービット自身が、敵と対面する事になった。
「大丈夫か?」
「任せておけ、口八丁が俺の取柄だ、最後に相手の情報取って帰るつもりなんだから俺も少しは仕事しないとな」
「……お前は十分に働いているぜ」
と、ルインは肩を叩いてさっさと自分の持ち場に歩いて行ってしまった。
オービットは深く息を吸い……状況を整理する。
ここまで、敵は何故か受け身で行動している様だと分析している。
積極的な攻撃はあまりないし、もっと強引にこちらを攻める事が出来るはずだという懸念もある。オービットは、敵にも何か意図する所があるのだろうと判断していた。
多分、それは『会話』だ。
中庭でカナリア部隊と戦う前に、一瞬躊躇した様子を見ていた。何か言葉を発していた様にも思える。
心配するブレイズらに、お前らもさっさと所定の位置につけと手を振ってオービットは、仰々しく両手を上げて二階踊り場から下を見下ろす。
敵は二階相当の高さの貯水槽には貧弱な、煉瓦の突起を使った階段しかついていない。
先に敵に踊りかかった『こちらの』戦士達は必殺の想定で上空から斬りかかったのだが、ほぼ返り討ちの様な対処をされてしまった。今回も、敵に全く傷を負わせる事が出来無かった様だ。
「やー、ちょっとレベルを読み間違えたかな」
貯水槽の下を覗きこめば、昇りやすいように氷の階段が出来ている。そこから立ち上がる靄を振り払いオービットは……敵が攻撃をしてこない事を祈りつつ前に踏み出す。
ここで一発攻撃を貰ったらすべてが台無しになるが、90%それはないと踏んで顔を出しているのだ。想定外が起きる可能性はゼロではないので、本来ビビリであるオービットは仲間達が心配する通り、実際には戦々恐々としていた。
「へッ、ようやく話し合う気になったか?」
格闘家か、という風の男が拳を打ち鳴らしたのに逃げたくなる足をなんとか留める。
「話し合う?」
読みは、あたりだ。
奴らは『話し合い』を求めている。
「……無駄だろ。あんたらの目的は『扉』を閉める事だ。扉の開放を妥協して貰わない限り俺達とは絶対に相容れない、そうだろ?」
やっと余裕を得て、オービットは肩をすくめておどけてみせた。
世界の保全者、オービットにしてみれば『敵』はそこで各々顔を見合わせた様子が見て取れる。
「確かに、僕達は扉を閉めに来た。しかし誰も僕らの話し合いに応じるつもりは無く、貴方がたが何故違法である扉を開けたのか、その理由を僕らは存じ上げております」
「理由があり、それが正当なら退く?」
あくまで笑って、その様に心がけてオービットはこちらからあまりしゃべり切る事が無いように言葉を選ぶ。
「その理由にもよるでしょうが。お話願えませんか」
ウチの人達は仕事が早い。早くも準備出来たと合図を貰ったオービットは、長々と話をする必要が無くなってしまった。ともすれば、こんないつまでも弱点丸出しの状況は脱するべきだ。
会話をさっさと切り上げるべく、こちらの目的を端的に伝える。
「この世界への侵略なんだけど」
オービットの突き放した返答に向けて、一瞬彼らは少し考えるような沈黙を返して来た。
あれ?別段驚いたりしないんだなと思ったがそれは顔には出さずに、一体彼らは何を知り、何を考えているのか思いを巡らす。
紫色のマントを羽織った黒髪の男が一歩前に出て来る。他の玉から得た知識によるところ、最高位の魔法使いというのは彼の事だろう。
「僕らはこの世界を保全する、その最先鋒ですからね。残念ですが和睦は無理かと」
和睦、そうか……彼らは俺らと話し合いを求め、共存すべく道を探しに来たのか……と、オービットはようやくこちらがあまりに敵対的な対応をしすぎた事を反省した。だから相手は積極的な攻撃的手段を取らなかったのだろう。
世界の保全は、異端を排除する事で成るのだという先入観に、自分はしっかり捕らわれていただろう事を改めた所で……しかし、状況が転じるわけでもない。
こちらの目的は変わりがない。
そう、この世界への侵略だ、相手がそれを理解しようがしまいが、目的は変わりがない。
自戒を込めて、オービットは言った。
「世界保全ね……異なる者を排除する事が保全に繋がるとは限らないと思うけど」
その間オービットは敵の様子をじっくりと見ていた訳だが……何故か、茶髪の剣士という風体の男に異様な懐かしさを感じ、理由を考えたのだが……どうしても『思い出せない』
いや、求めている答えはそうではない。懐かしく感じる理由は何なのか考えているのに、帰って来る答えが『思い出せない』というのは何か、可笑しくは無いか?
どこかで見た事が在ると思うのなら、そうだという答えが内側から帰って来るものだろう。
なのにその工程をふっ飛ばして『思出せない』とは、何だ?
その青年がなんだか苦笑いの様なものを零しながらも笑ったのを見ていた。
「あんたらとは……長い闘争になりそうだ」
その青年が黒髪の青年よりもう一歩前に出て、構えていた武器を下ろして……何をするのかと思えば手を差し出してくる。
届くならば、それは握手を求めている様な仕草だ。
「俺はヤト、覚えておいて損は無いぜ」
彼がこのパーティーの中心人物なんだな、そう理解してオービットは笑って応じた。
「オービットだ」
ゆっくり身を翻しとっとと姿が見えない所まで来たところでオービットは、待ってくれていたハイドローの所まで思わず小走りに駆け寄る。
「ひゃぁー、命が縮むぅ~」
「多分あいつはビビリだからなって、ルイがさっさと仕掛けを完成させてくれたよ」
「うへぇ、後で礼を言わないとだな……で、これは?」
「転位罠を張ってみた」
この階層、実は二階なのだが窓という窓、扉という扉を閉め切って一切の光を遮った廊下は暗く、タイルの一枚一枚に転位魔法を付加してあるのは分かり辛い。
「引っかかってくれるかなぁ?」
「僕の予想では踏んでくれると思うよ」
ハイドローはオービットの手を取り……空中浮揚の魔法でその問題のタイルを踏まないようにして長い廊下を渡り切った。
このように、罠を踏まなければどうと云う事は無いからだ。狭い廊下なので敵側にいた有翼人は飛べないだろうが、魔法使いが別にいる。浮遊魔法くらい訳なく使って来るだろう。
それなのに、この罠をあの6人らはわざわざ踏んでくれるはずだと……未来予測に長けるハイドローが言っている。
彼らは、楽しんでいるのかもな……と、オービットは苦々しく思った。
あいつらにとって世界保全だってたかが遊戯という感覚なのだろう。
「で、これが君の部屋だ」
たどり着いた廊下の向こうにある階段には昇らずに、その手前の最後の列、真ん中のタイルをハイドローは、オービットを掴んだままで踏み込む。
すると視界が縦に一回転するような異様な錯覚が襲い、気が付くと窓が大きく取られた明るい部屋の真ん中にハイドローと一緒に立っていた。
「もしかしなくても、城にあった塔の最上階か……?」
「見張り台だから昇り梯子が無いと来れないけど、それは今取っ払ってあるよ」
「いや、あのメンツに向けては無駄でしょ。だって羽有りが居るし」
「そこを全力で阻止する為の罠を張って、僕らは分断した彼らと一戦交えるんだ。ルインの情報はちゃんと繋がっているな?」
「うん、大丈夫」
意識すれば、ルインが魔法で探知している城各所の状況が逐一イメージとして頭に浮かぶ。
「じゃぁ僕も持ち場に戻る。君はここでギリギリまで玉を維持し、限界だと思ったら」
「……こいつを、壊すんだな」
この異世界侵略は、異世界人とってとても、都合の良い法則に縛られている。
その尤もたるのが、元の世界に戻る作法と云えるのかもしれない。
「普通はさ、大事なモノ壊れたらダイジになるもんだと思うけど」
「拠点占拠のフェーズになったら玉の破壊は強制撤退になるからね、考え方次第だと思うよ。今回はお前がすでに撤退の方向性を打ち出しているから都合良い様に感じているだけだろ?」
「そうかな?……まぁいい、俺が壊しても、敵が壊しても、何が原因でもとにかく玉が割れたら強制送還なんだな」
「そうだ、君がこの世界で死ぬよりも先に、玉を壊せばそれで一応は僕らの『勝ち』だよ」
「そうか、そういう懸念もあるのちょっとすっぱ抜けてた」
「そりゃそうさ、僕らは基本、誰も欠けない、欠ける筈が無いっていう前提があるからね。何をしてもお前を守る。お前も僕らも、そう簡単にやられたりはしないよ」
その『前提』は何故か意識出来る事で、しかしどうしてそう強く思うのか。
これも理由は『思い出せない』のだが……何故かとても信じる事が出来る。
「じゃ、僕も持ち場に戻る。あとは……よろしく頼むよ」
あとは俺に、宜しく頼む……か。
魔法で姿が消えたハイドローが居た辺りを興味本位に触れてみて、改めて魔法というのは便利でいてかつ、得体の知れない力だなぁと思う。
「俺も何か、そういう手段を得られないもんかな」
あのルインにだって出来るんだ、魔法を使えるようになる可能性は閉じている訳じゃ無いだろうとオービットは思う、思うが……。
その時は俺も人外の仲間入りだ。
でもその人以外という存在が、不変的に溢れる世の中にあれば人間である事になどさほど拘る必要はないだろう。目指すのは、そういう『先』の世界であるべきなのかもしれない。
オービットは玉を握り込み改めて部屋の様子をうかがう。
用心しながらも四方に開いている大きな窓から外を伺った。と、北側に開いた窓の柱に、さらに塔の屋根に昇れるように僅かなレンガの足掛かりが在るのを発見した。
さて、玉は……どこに置くべきか。
オービットは青い空が広がるばかりの『異世界』を見渡す。5階相当の高さで見通しは良く辺りは鬱蒼とした森が広がるばかりだ。しかし遠くに高い山が連なるのが確認できるし、その麓には畑や泉や川があるのか、キラキラと光を反射する平原がぼんやり霞んで見える。
間違いなく異世界だな、と思う景色だ。少なくともここはサンデイではない。
サンデイなら、四方八方トラス環山に囲まれて灰色の壁があるだけだ。晴天の日は少なく、こんな穏やかな陽気が降り注ぐ日など年に数えるほどしかない。
サンデイに住む者の数なんて、そもそもサンデイという土地が狭いのだからたかが知れている。どうにかこの辺りの森くらい異世界人に譲ってくれないものだろうか。
保全者である敵は、最初和睦できるかどうかと探るように会話を望んだものだが……和睦して、それで俺達に何を施してくれるというのだろう。
せめてそれ位は聞いておいた方が良かったのかもしれないな、と遅ればせながらオービットはのんびりと思った。
と、鋭い剣戟の音が聞こえて我に返る。
身をひるがえし、反対側、南側の窓から辺りを覗けば南側に広がる城の様子が一望出来る。二階部分にある大きな屋敷の屋根の上で渡り合う、二人の剣士の姿に思わず慌てて姿を隠した。幸い敵はこちらに背を向けていて、敵の方が気が付いていない。狙ってそうなったわけでは無く偶然だろう、そんな気遣いが出来るウチの領主ではない。
逆に主塔の窓にオービットを見付けた領主、ブレイズ・サンデイは手こそ挙げなかったが明らかにこちらを見てにっこりと笑って返してきた。
これで俺の居場所が完全に割れた、だからあのボケ領主は!と思ったオービットだったが……その心配は無用だとしばらくして悟る。
剣を持たせ、戦わせれば悪鬼の如く恐ろしく強い使い手となるブレイズを前に、対峙している赤毛の戦士はやや苦戦を強いられているらしく周囲の様子に全く気が行っていないのだ。
やはり、一対一に持ち込めばそれなりに勝機はあるらしい。
暫らく我らが領主の素晴らしい剣裁きに翻弄される敵の様子をオービットは見る事となった。いや、確かにブレイズが優勢ではあるが有効打を与えている気配はない。危なっかしい足取りで、高い屋根の上にも関わらず赤毛の……体格からして女性だろう戦士は絶妙なバランスと曲芸師じみた体裁きでブレイズの鋭い攻撃を掻い潜り、弾き飛ばして凌いでいる。そのうちに堪らず、屋根から下へ飛び降りて行った女剣士を追ってブレイズも建物の死角に消えて行ってしまった。
ずんと、腹に響く低重音が壁を伝ってくる。その後に塔が揺れているようで漆喰がパラパラと剥がれ落ちたのを見た。……どうやら分断作戦は上手く行っている様だ。
すぐ真下でも何か言い争う様な声などが漏れ聞こえるし、遠く一番遠い跳ね橋前の広場に隠して置いた待機兵が予定通り飛び出していくのが見える。
「さて、俺達はどこまで出来るかな……?」
互いの拳が心中必殺の勢いのまま遠慮なく、真正面からぶつかり合う。
攻撃が攻撃によって弾かれた、その衝撃は重要と思われる辺りの柱に致命的な崩壊を与え、かつビリビリとだだっ広い石畳の空間全体にいきわたる。
本来もっと壁があって、部屋が割り振られていたのだろうが人が住まなくなり、後付けした貧弱な仕切りは真っ先に腐って朽ちたと見える。
拳闘士が飛ばされた先は一階下、閉ざされた表門から続く、大きなフロアだ。窓は小さく、薄暗いが意図的に閉じられていた二階よりは見通しが効く。
待ち構えていたのは、体格が良いと自負する自分より、さらに一回り大きな巨体の男であり、それが静かに量の拳を握った事に拳闘士、テリー・ウィンは内心歓喜した。
そうだ、こういう戦闘を求めてるんだよ俺は。
言葉を交わす必要も無く、互いの拳が互いの拳にぶつかる一撃で理解する。
体感ゆっくりと、だが実際には瞬時に二人は自分の拳を引き、ほぼ同じ動作で左の蹴りの応酬となる。がっちりと噛み合った互いの一撃、その重さ、気を抜けば吹き飛ばされるギリギリの拮抗をテリーは明らかに、楽しんでいた。
対する男は何処までも真面目にこちらを、拳一つで砕き折ろうとしている気概を感じる。
楽しんではいけないのだろうが、根がどうしても戦いを好む自分の嗜好はどうしようもなく、こうやって強い者に出会うのが堪らなく嬉しい。
病的に白い肌の巨漢が、圧倒的殺意を以て腕を振り回して来た事に危機感を覚える。咄嗟に避けに転じれば、背後に在った柱が豆腐のように抉れて持っていかれた。
男は拳を緩め、鉤爪の様に太い指で空間をえぐり取る様な連撃を見舞って来る。
攻撃で応えれば即座、腕や足を掴まれるか最悪抉り取られるだろう。
腕の回す速度は早いが、足回りは牛歩である事でテリーは難なく男の背後を取った。
下半身がぐるりと追い掛けて来る、想像以上に柔軟なその体に、脳天に踵落としを見舞おうとしたが直前で辞めた。半端なダメージを与えた所でこの男は沈まない、瞬間天井まで跳躍していたテリーはそのまま男の背中を蹴って距離を取った。
力いっぱい蹴り入れてやったつもりだったが、勿論倒れる事無くびくともしない。
緩やかな動きで体の向きを変え、身構えて低く突進してくる敵に向け、テリーは正拳を構える。
重心の全てを注ぎ、足を踏み込む力も加えて相手が突撃してくる力に相乗。
危険な両の手の鉤を僅かな隙から掻い潜り、相手の胸へ拳を置いて……一気に衝撃を叩きこむ。
完璧に決まった、そう思ったが巨漢は、その場で普通の人間なら木っ端みじんになっていてもおかしくない一撃を受けきって……吹き飛ばされるのを耐えた。
「マジか」
力なく、突き出していた腕を掴まれてテリーは我に返る。
ダメージは確実に与えている様で相手の意識が吹き飛んでいるのが分かる、それなのにこちらの腕を掴もうと探り、握られた事で瞬間的に……その腕を、体を、握りつぶされる殺気を感じて渾身の蹴り技を交えなんとか懐を脱出。
冷や汗をかいている事にテリーは、笑う。
この俺がビビって相手から距離を取り、逃げる事になるとは。
意識が無く、蹴り飛ばされて流石に転倒するかという瀬戸際、意識を持ちなおした様で太い脚で体制を整えて仰け反っていた顔が前に戻る。
構えが、僅かに防御寄りに変わった。
「たまんねぇな、こりゃぁヤりがいがあ……」
突然に、天井が崩れて崩壊したのに双方、背後に跳んで回避。
突然ではない、何本も柱をへし折ったりしていれば当然こうなるだろう。ましてや頭上の階でも普通屋内でするべきでは無い様な戦闘が繰り広げられていたのだ。
人に管理されなくなって放置されていた、廃墟同然の城である。
落ちて来たのが仲間の戦士、ヤトだと気が付いてテリーは目を瞬いた。瓦礫共々崩れ落ちて来ながらも、見慣れない男に槍を突き刺そうとしている所だったが……先ほどまで戦っていた巨漢が土埃を突き破って間に入り、ヤトの槍を掴んでそのまま、投げ飛ばしたのを見送る。
「おいおい、テメェの相手はこの俺だろうが」
投げ飛ばされた都合、上からなお容赦なく降り注ぐ瓦礫に埋もれる事は回避し、ヤトが槍を杖にして起き上がった。
「乱戦気味だな」
その後で悠々と紫魔導師、レッドが階下に魔法による浮遊で降りて来た。瓦礫の量からして、一階分余計に崩れてしまっているだろう。
「あー、ダメだこりゃ、まずいわ」
聞いた声だとテリーが顔を上げると、先ほどオービットと名乗った軽薄そうな男が頭を掻きむしっていた。
「ヤバいから俺らもずらかろう」
遠くに待機させていた玉持ち一団が、まともに機能せず逃げを選択したのを確認したからだ。
おかげで遠くに引きはがした敵が逃げ出す者を相手にせず、即座仲間との合流を目指して動き出してしまったのを確認し、こちらも早急に合流するべきだと判断したのである。
一対一ならいざ知らず、こうやって乱戦になったら数の上でも勝ち目が無い。
「ちッ、根性の無い野郎どもだ」
ルインがグチを零すが……しかして、狙いは別にあった。
このままこちらが攻撃をする限り、相手も攻撃で応えるだろう。
敵わない相手に戦う必要はもはや無く、出来る事ならこの『経験』は失う事無く持ち帰った方が後々有利になると、オービットは考えている。
逃げるべきだ、そのためにまず仲間たちの攻撃姿勢を排除する必要があった。
彼の算段の上ではこれで、攻撃の手は緩むはず……だったのだが……。
遠くから矢が迫る音を察知して慌てて飛びさする。
内心、冗談じゃないと思いながら必死に、見えない所から弧を描き飛んでくる矢を避ける。きっと相手はこちらを見ていないだろうに、勘だけでここまで正確にこちらの位置を察知出来るものだろうか。
勘の鋭い精霊使い、マツナギだからこそ、出来る芸当だ。
障害物を避ける都合弓形で飛んでくる矢を辛うじて避けつつ、オービットはなんとか瓦礫をつたって階下に折り、盾役であるダークと合流しようとするが……。
矢ではない、何か別のものが突っ込んで来て足を踏み外す。
ダークの手が届き、転倒は免れたが体にしがみついている、子犬ほどの大きさの爬虫類、いや、ドラゴンだろうか?
がっつりとしがみつかれていて振り払えず、あんぐりと口を開けているのをオービットは、何の動作なのか理解してその小さな首を即座両手でつかんで方向を変えた。
「丸こげにおなりーッ!」
次の瞬間、白濁した光線の様な物がその小さなドラゴンの口から吐き出され、それは咄嗟に首を向けた方向の石壁に当ると、事も在ろうかそれをガラス質に溶かして穴を開けた。さらに壁の向こうの床に当って地下空間に向かって穴を開けてしまう。微妙に放射線状に広がるそれは、最終的に巨大な穴を城内部に穿つに至っていた。
「ちょっと!危ないじゃないのよアイ!」
その地下から、女性の罵倒が聞こえて来る。
オービットにしがみついていたチビドラゴンは、ダークの手によって強引に引きはがされ……しかし、禍々しい生物というより愛くるしい愛玩動物的な魅力のあるそれは、無下に握りつぶされる事無く……そっと、地上に放されていた。
「ん、あれ?小動物的なの好きだっけ?」
「……きらいじゃない」
それは意外な一面だとオービットは苦笑う。
チビドラゴンはちょっと驚いた顔をしつつも……瓦礫の散らばる床をとたとたと短い脚で仲間達の方へと走って行った。
それを、オービットは合点が言った様子で見送って呟く。
「……か……可愛い」
「で、しょ?」
敵である6人と一匹天…あの小さなドラゴンも攻撃力だけは一端であるようだ。
改めて、ドラゴンブレスが開けた大穴の行方を目で追うと、何時の間にやら地下に移動して戦っていたらしいブレイズと赤毛の女戦士の姿が見える。
「ちょうどいい、ブレイズ、撤退」
いつの間にかこんな地下で戦っていたんだと、すっかり戦闘に夢中で気が付いていなかったブレイズは頭を掻いている。
「どうりで、人がいないと思った」
女剣士より先に地下から地上階へ跳躍し、こちらに向かって来るブレイズは……それを止めようとした戦士の一撃を軽く受け流し、かつ重心をずらして押し返し、くるりと位置を入れ替える。
どこでどうすればそこまでの剣技が身につくのか、とにかく……一人放置しておいても問題無くどんな局面も切り抜けて来る、それがブレイズ・サンデイである事を知っているオービット達は難なく合流。
ハイドローが、小声でオービットに聞いた。
「逃げるなら今だぞ」
「大丈夫、もう少しだけこいつらの特性を見たい」
オービットは、にやりと笑った顔を仲間達にだけ見せた。
「おーい」
顔を上げ、オービットはあからさまにぎょっとした顔をしてみせたのを……ルインは奇妙な顔で見ていた。それをハイドローが隠せと無言で嗜める。
「扉、ゲットー」
やはり翼持ち、城の中に居るよりは、きっと外を飛び回っているだろうと思っていた。
無事、主塔の屋根の頂上付近にあるくぼみに置いてあった玉を見つけて来てくれたようだ。
「間違いないんだな?」
という拳闘士テリーの問いに、ふわふわとした雰囲気の有翼の男は黄金色に光を放つ玉を見せながら言った。
「うん、生き残っていたヘッドはこれを通じてログアウトしたから、間違いないよ」
そう言って、背中の翼を広げて三階付近から崩落し、すっかり広々とした城の内部に舞い降りて来る。
「あちゃー、負けちゃった」
オービットは苦笑して負けた宣言を出して……その後の相手の出方を伺っていた。
ヘッド、というのは多分……玉持ちの事だろう。一人でも残しておくべきでは無かったかもしれない。その宝玉の使い方をあの有翼種は見ていた……という事になる。
どうするのか、と……その男が、音も無くオービットの目の前に降りて来た。
ブレイズは納めていた剣の柄に手をやったがこれを、オービットは抑える。
「はい」
敵であろう男から宝玉を、差し出されてしまいこれは……完全に俺達の負けだとオービットは微かに天を仰いでいた。
きっと見つけたら即座割ってくれると思っていたのだが、こうやって……手渡された意味をオービットは悟っている。
彼らはこれを破壊しない。
玉を壊し、この世界から消えるなら……それは俺達自身でそう判断して撤退しろ。
その様に言われているのがひしひしと分かる。
致し方なく玉を受け取ったが笑みは、引きつっていた事だろう。
「えーッ!ナッツさん、何相手に渡してるんですか!」
「いやぁ、僕らの勝利は間違いないんだから、多少お情けを掛けても問題は無いだろう?」
*** *** ***
夢を見た様な気がする。
目が覚めた彰は、危うく耳元についている機器をつけたまま顔を洗う所だった。
何だこれはと取り外した時にようやく、昨夜の事情を思い出す。
「……そういえば、海人からゲームに誘われたんだった」
しかしそのゲームというのが奇天烈だった。
これは、夢の中でプレイするゲームだと云う。
こうやって夢の中で遊ぶゲームをするべく小さな機器を耳に付けて就寝し、何事も無く朝を迎えたのだが……。当然だが、いまいちゲームをしたという感覚が無い。
それはそうだろう、夢の中に自意識など無い。
ただ、夢を見た気がする。
そう思うだけだ。
でも、悪い夢じゃぁなかった気がするのだ。
彰は苦笑して、機器を濡れない所に置いてから顔を洗って髭を剃る。
懸命に夢の内容を思い出そうとするが……上手く行かない。だけど、思い出そうとするとなぜか愉快な気分になってくる。理由は良く分からない、そんなに面白い夢だったのか?
内容を覚えてないのに。
海人が起きるのは……きっと昼過ぎだなぁと彰は考えながら……。
夢の中でどんな冒険をしたのか。心なしかログ確認を楽しみにしている自分を知って再び苦笑する。
ゲーム嫌いの南なんか、どういう反応をするだろう。
是非、聞いてみたいと思ったのだ。
END
アレの宣伝。異世界創造NOSYUYO『トビラ』との合同番外編でした。
つまりこの話はSF長編、『SRPU』側にあった番外編で、この度余計に書き下ろしを加えましたが大凡SRPU側の話になっています。
下敷きにしている『隠れ鬼遊戯』というキャラクターだけ使いまわした四期の話があるのですが、改修工事が終わっていないので公開は多分、SRPUを持ってきたあとになると思います。
『叡智』の説話についてはナッツさんから別の番外編があるのでそちらをお待ちください。
……なんというか予定外に書いた感じが多大にします。おかしい、どうしてこんな事に?
トビラ側からは、トビラ視点の彼らの行動が見れます。あっちが総合的。こっちは付属的な感じです。
ちなみにトビラ内の設定はほぼ、『隠れ鬼遊戯』の設定で行ってます。
番外編に彼らが再登場するのがあるのでざっくりと説明しておきます。
魔導師盗賊……ルイ(ルイン)・クローディア
→戦部隆輝 攻撃特化05機 黄色カラーリングの リーダー職
冷徹軍師 ……オービット・ファース
→猿沢海人 情報統括04機 白色カラーリングの ヘタレ軍師
人外の盾 ……ダーク
→彼渡成馬 防御特化03機 黒色カラーリングの 心が乙女のゲイ
足手まとい……ハイドロー・フェラリラ
→合歓 南 バックアップ02機 青色カラーリング 文科系イジメっ子
鬼強剣士 ……ブレイズ・サンデイ
→月代 彰 バランス型01機 赤色カラーリングの 押しの弱いスポ根
大体逆っぺぇ性格ですが口調はそのまま。
理想が反映されて若干逆転が起きています。
この話『SRPU』は別の所に、番外編と終了後オマケを除いて改修が終わっているので、順次もって来れれば良いなとは思っています。
おわり。
※正式リリースされた想定の『後日談』
『黄金色の扉を閉めろ!』SFサイド側からバージョン
※※ この番外編は某のCM的な要素を含みます ※※
まず、あの6人を団体で出迎えるのは最悪手だ。
何しろこちらは対して5人、しかも内一人であるオービットは口は回れど戦闘能力は皆無。
まずは敵を分散させることが急務だろう。
一応はその段取りで、部屋に待機させている玉持ちがまだ残っている。何も説明せずに敵を待ち構え、待機を命じてあるものだ。すでにほどんどの玉持ちが死に、オービットに権限が取られているとは思っていないだろう。時間を掛けない限り、それらの駒はまだ利用価値がある。しかし、そこに誘導する仕組みが完成していない。ある程度仕込みは終わっているが、最終的にどこに誰をどう繋げるかという微調整を後回しにしていた。
一先ず時間を稼ぐ為にオービット自身が、敵と対面する事になった。
「大丈夫か?」
「任せておけ、口八丁が俺の取柄だ、最後に相手の情報取って帰るつもりなんだから俺も少しは仕事しないとな」
「……お前は十分に働いているぜ」
と、ルインは肩を叩いてさっさと自分の持ち場に歩いて行ってしまった。
オービットは深く息を吸い……状況を整理する。
ここまで、敵は何故か受け身で行動している様だと分析している。
積極的な攻撃はあまりないし、もっと強引にこちらを攻める事が出来るはずだという懸念もある。オービットは、敵にも何か意図する所があるのだろうと判断していた。
多分、それは『会話』だ。
中庭でカナリア部隊と戦う前に、一瞬躊躇した様子を見ていた。何か言葉を発していた様にも思える。
心配するブレイズらに、お前らもさっさと所定の位置につけと手を振ってオービットは、仰々しく両手を上げて二階踊り場から下を見下ろす。
敵は二階相当の高さの貯水槽には貧弱な、煉瓦の突起を使った階段しかついていない。
先に敵に踊りかかった『こちらの』戦士達は必殺の想定で上空から斬りかかったのだが、ほぼ返り討ちの様な対処をされてしまった。今回も、敵に全く傷を負わせる事が出来無かった様だ。
「やー、ちょっとレベルを読み間違えたかな」
貯水槽の下を覗きこめば、昇りやすいように氷の階段が出来ている。そこから立ち上がる靄を振り払いオービットは……敵が攻撃をしてこない事を祈りつつ前に踏み出す。
ここで一発攻撃を貰ったらすべてが台無しになるが、90%それはないと踏んで顔を出しているのだ。想定外が起きる可能性はゼロではないので、本来ビビリであるオービットは仲間達が心配する通り、実際には戦々恐々としていた。
「へッ、ようやく話し合う気になったか?」
格闘家か、という風の男が拳を打ち鳴らしたのに逃げたくなる足をなんとか留める。
「話し合う?」
読みは、あたりだ。
奴らは『話し合い』を求めている。
「……無駄だろ。あんたらの目的は『扉』を閉める事だ。扉の開放を妥協して貰わない限り俺達とは絶対に相容れない、そうだろ?」
やっと余裕を得て、オービットは肩をすくめておどけてみせた。
世界の保全者、オービットにしてみれば『敵』はそこで各々顔を見合わせた様子が見て取れる。
「確かに、僕達は扉を閉めに来た。しかし誰も僕らの話し合いに応じるつもりは無く、貴方がたが何故違法である扉を開けたのか、その理由を僕らは存じ上げております」
「理由があり、それが正当なら退く?」
あくまで笑って、その様に心がけてオービットはこちらからあまりしゃべり切る事が無いように言葉を選ぶ。
「その理由にもよるでしょうが。お話願えませんか」
ウチの人達は仕事が早い。早くも準備出来たと合図を貰ったオービットは、長々と話をする必要が無くなってしまった。ともすれば、こんないつまでも弱点丸出しの状況は脱するべきだ。
会話をさっさと切り上げるべく、こちらの目的を端的に伝える。
「この世界への侵略なんだけど」
オービットの突き放した返答に向けて、一瞬彼らは少し考えるような沈黙を返して来た。
あれ?別段驚いたりしないんだなと思ったがそれは顔には出さずに、一体彼らは何を知り、何を考えているのか思いを巡らす。
紫色のマントを羽織った黒髪の男が一歩前に出て来る。他の玉から得た知識によるところ、最高位の魔法使いというのは彼の事だろう。
「僕らはこの世界を保全する、その最先鋒ですからね。残念ですが和睦は無理かと」
和睦、そうか……彼らは俺らと話し合いを求め、共存すべく道を探しに来たのか……と、オービットはようやくこちらがあまりに敵対的な対応をしすぎた事を反省した。だから相手は積極的な攻撃的手段を取らなかったのだろう。
世界の保全は、異端を排除する事で成るのだという先入観に、自分はしっかり捕らわれていただろう事を改めた所で……しかし、状況が転じるわけでもない。
こちらの目的は変わりがない。
そう、この世界への侵略だ、相手がそれを理解しようがしまいが、目的は変わりがない。
自戒を込めて、オービットは言った。
「世界保全ね……異なる者を排除する事が保全に繋がるとは限らないと思うけど」
その間オービットは敵の様子をじっくりと見ていた訳だが……何故か、茶髪の剣士という風体の男に異様な懐かしさを感じ、理由を考えたのだが……どうしても『思い出せない』
いや、求めている答えはそうではない。懐かしく感じる理由は何なのか考えているのに、帰って来る答えが『思い出せない』というのは何か、可笑しくは無いか?
どこかで見た事が在ると思うのなら、そうだという答えが内側から帰って来るものだろう。
なのにその工程をふっ飛ばして『思出せない』とは、何だ?
その青年がなんだか苦笑いの様なものを零しながらも笑ったのを見ていた。
「あんたらとは……長い闘争になりそうだ」
その青年が黒髪の青年よりもう一歩前に出て、構えていた武器を下ろして……何をするのかと思えば手を差し出してくる。
届くならば、それは握手を求めている様な仕草だ。
「俺はヤト、覚えておいて損は無いぜ」
彼がこのパーティーの中心人物なんだな、そう理解してオービットは笑って応じた。
「オービットだ」
ゆっくり身を翻しとっとと姿が見えない所まで来たところでオービットは、待ってくれていたハイドローの所まで思わず小走りに駆け寄る。
「ひゃぁー、命が縮むぅ~」
「多分あいつはビビリだからなって、ルイがさっさと仕掛けを完成させてくれたよ」
「うへぇ、後で礼を言わないとだな……で、これは?」
「転位罠を張ってみた」
この階層、実は二階なのだが窓という窓、扉という扉を閉め切って一切の光を遮った廊下は暗く、タイルの一枚一枚に転位魔法を付加してあるのは分かり辛い。
「引っかかってくれるかなぁ?」
「僕の予想では踏んでくれると思うよ」
ハイドローはオービットの手を取り……空中浮揚の魔法でその問題のタイルを踏まないようにして長い廊下を渡り切った。
このように、罠を踏まなければどうと云う事は無いからだ。狭い廊下なので敵側にいた有翼人は飛べないだろうが、魔法使いが別にいる。浮遊魔法くらい訳なく使って来るだろう。
それなのに、この罠をあの6人らはわざわざ踏んでくれるはずだと……未来予測に長けるハイドローが言っている。
彼らは、楽しんでいるのかもな……と、オービットは苦々しく思った。
あいつらにとって世界保全だってたかが遊戯という感覚なのだろう。
「で、これが君の部屋だ」
たどり着いた廊下の向こうにある階段には昇らずに、その手前の最後の列、真ん中のタイルをハイドローは、オービットを掴んだままで踏み込む。
すると視界が縦に一回転するような異様な錯覚が襲い、気が付くと窓が大きく取られた明るい部屋の真ん中にハイドローと一緒に立っていた。
「もしかしなくても、城にあった塔の最上階か……?」
「見張り台だから昇り梯子が無いと来れないけど、それは今取っ払ってあるよ」
「いや、あのメンツに向けては無駄でしょ。だって羽有りが居るし」
「そこを全力で阻止する為の罠を張って、僕らは分断した彼らと一戦交えるんだ。ルインの情報はちゃんと繋がっているな?」
「うん、大丈夫」
意識すれば、ルインが魔法で探知している城各所の状況が逐一イメージとして頭に浮かぶ。
「じゃぁ僕も持ち場に戻る。君はここでギリギリまで玉を維持し、限界だと思ったら」
「……こいつを、壊すんだな」
この異世界侵略は、異世界人とってとても、都合の良い法則に縛られている。
その尤もたるのが、元の世界に戻る作法と云えるのかもしれない。
「普通はさ、大事なモノ壊れたらダイジになるもんだと思うけど」
「拠点占拠のフェーズになったら玉の破壊は強制撤退になるからね、考え方次第だと思うよ。今回はお前がすでに撤退の方向性を打ち出しているから都合良い様に感じているだけだろ?」
「そうかな?……まぁいい、俺が壊しても、敵が壊しても、何が原因でもとにかく玉が割れたら強制送還なんだな」
「そうだ、君がこの世界で死ぬよりも先に、玉を壊せばそれで一応は僕らの『勝ち』だよ」
「そうか、そういう懸念もあるのちょっとすっぱ抜けてた」
「そりゃそうさ、僕らは基本、誰も欠けない、欠ける筈が無いっていう前提があるからね。何をしてもお前を守る。お前も僕らも、そう簡単にやられたりはしないよ」
その『前提』は何故か意識出来る事で、しかしどうしてそう強く思うのか。
これも理由は『思い出せない』のだが……何故かとても信じる事が出来る。
「じゃ、僕も持ち場に戻る。あとは……よろしく頼むよ」
あとは俺に、宜しく頼む……か。
魔法で姿が消えたハイドローが居た辺りを興味本位に触れてみて、改めて魔法というのは便利でいてかつ、得体の知れない力だなぁと思う。
「俺も何か、そういう手段を得られないもんかな」
あのルインにだって出来るんだ、魔法を使えるようになる可能性は閉じている訳じゃ無いだろうとオービットは思う、思うが……。
その時は俺も人外の仲間入りだ。
でもその人以外という存在が、不変的に溢れる世の中にあれば人間である事になどさほど拘る必要はないだろう。目指すのは、そういう『先』の世界であるべきなのかもしれない。
オービットは玉を握り込み改めて部屋の様子をうかがう。
用心しながらも四方に開いている大きな窓から外を伺った。と、北側に開いた窓の柱に、さらに塔の屋根に昇れるように僅かなレンガの足掛かりが在るのを発見した。
さて、玉は……どこに置くべきか。
オービットは青い空が広がるばかりの『異世界』を見渡す。5階相当の高さで見通しは良く辺りは鬱蒼とした森が広がるばかりだ。しかし遠くに高い山が連なるのが確認できるし、その麓には畑や泉や川があるのか、キラキラと光を反射する平原がぼんやり霞んで見える。
間違いなく異世界だな、と思う景色だ。少なくともここはサンデイではない。
サンデイなら、四方八方トラス環山に囲まれて灰色の壁があるだけだ。晴天の日は少なく、こんな穏やかな陽気が降り注ぐ日など年に数えるほどしかない。
サンデイに住む者の数なんて、そもそもサンデイという土地が狭いのだからたかが知れている。どうにかこの辺りの森くらい異世界人に譲ってくれないものだろうか。
保全者である敵は、最初和睦できるかどうかと探るように会話を望んだものだが……和睦して、それで俺達に何を施してくれるというのだろう。
せめてそれ位は聞いておいた方が良かったのかもしれないな、と遅ればせながらオービットはのんびりと思った。
と、鋭い剣戟の音が聞こえて我に返る。
身をひるがえし、反対側、南側の窓から辺りを覗けば南側に広がる城の様子が一望出来る。二階部分にある大きな屋敷の屋根の上で渡り合う、二人の剣士の姿に思わず慌てて姿を隠した。幸い敵はこちらに背を向けていて、敵の方が気が付いていない。狙ってそうなったわけでは無く偶然だろう、そんな気遣いが出来るウチの領主ではない。
逆に主塔の窓にオービットを見付けた領主、ブレイズ・サンデイは手こそ挙げなかったが明らかにこちらを見てにっこりと笑って返してきた。
これで俺の居場所が完全に割れた、だからあのボケ領主は!と思ったオービットだったが……その心配は無用だとしばらくして悟る。
剣を持たせ、戦わせれば悪鬼の如く恐ろしく強い使い手となるブレイズを前に、対峙している赤毛の戦士はやや苦戦を強いられているらしく周囲の様子に全く気が行っていないのだ。
やはり、一対一に持ち込めばそれなりに勝機はあるらしい。
暫らく我らが領主の素晴らしい剣裁きに翻弄される敵の様子をオービットは見る事となった。いや、確かにブレイズが優勢ではあるが有効打を与えている気配はない。危なっかしい足取りで、高い屋根の上にも関わらず赤毛の……体格からして女性だろう戦士は絶妙なバランスと曲芸師じみた体裁きでブレイズの鋭い攻撃を掻い潜り、弾き飛ばして凌いでいる。そのうちに堪らず、屋根から下へ飛び降りて行った女剣士を追ってブレイズも建物の死角に消えて行ってしまった。
ずんと、腹に響く低重音が壁を伝ってくる。その後に塔が揺れているようで漆喰がパラパラと剥がれ落ちたのを見た。……どうやら分断作戦は上手く行っている様だ。
すぐ真下でも何か言い争う様な声などが漏れ聞こえるし、遠く一番遠い跳ね橋前の広場に隠して置いた待機兵が予定通り飛び出していくのが見える。
「さて、俺達はどこまで出来るかな……?」
互いの拳が心中必殺の勢いのまま遠慮なく、真正面からぶつかり合う。
攻撃が攻撃によって弾かれた、その衝撃は重要と思われる辺りの柱に致命的な崩壊を与え、かつビリビリとだだっ広い石畳の空間全体にいきわたる。
本来もっと壁があって、部屋が割り振られていたのだろうが人が住まなくなり、後付けした貧弱な仕切りは真っ先に腐って朽ちたと見える。
拳闘士が飛ばされた先は一階下、閉ざされた表門から続く、大きなフロアだ。窓は小さく、薄暗いが意図的に閉じられていた二階よりは見通しが効く。
待ち構えていたのは、体格が良いと自負する自分より、さらに一回り大きな巨体の男であり、それが静かに量の拳を握った事に拳闘士、テリー・ウィンは内心歓喜した。
そうだ、こういう戦闘を求めてるんだよ俺は。
言葉を交わす必要も無く、互いの拳が互いの拳にぶつかる一撃で理解する。
体感ゆっくりと、だが実際には瞬時に二人は自分の拳を引き、ほぼ同じ動作で左の蹴りの応酬となる。がっちりと噛み合った互いの一撃、その重さ、気を抜けば吹き飛ばされるギリギリの拮抗をテリーは明らかに、楽しんでいた。
対する男は何処までも真面目にこちらを、拳一つで砕き折ろうとしている気概を感じる。
楽しんではいけないのだろうが、根がどうしても戦いを好む自分の嗜好はどうしようもなく、こうやって強い者に出会うのが堪らなく嬉しい。
病的に白い肌の巨漢が、圧倒的殺意を以て腕を振り回して来た事に危機感を覚える。咄嗟に避けに転じれば、背後に在った柱が豆腐のように抉れて持っていかれた。
男は拳を緩め、鉤爪の様に太い指で空間をえぐり取る様な連撃を見舞って来る。
攻撃で応えれば即座、腕や足を掴まれるか最悪抉り取られるだろう。
腕の回す速度は早いが、足回りは牛歩である事でテリーは難なく男の背後を取った。
下半身がぐるりと追い掛けて来る、想像以上に柔軟なその体に、脳天に踵落としを見舞おうとしたが直前で辞めた。半端なダメージを与えた所でこの男は沈まない、瞬間天井まで跳躍していたテリーはそのまま男の背中を蹴って距離を取った。
力いっぱい蹴り入れてやったつもりだったが、勿論倒れる事無くびくともしない。
緩やかな動きで体の向きを変え、身構えて低く突進してくる敵に向け、テリーは正拳を構える。
重心の全てを注ぎ、足を踏み込む力も加えて相手が突撃してくる力に相乗。
危険な両の手の鉤を僅かな隙から掻い潜り、相手の胸へ拳を置いて……一気に衝撃を叩きこむ。
完璧に決まった、そう思ったが巨漢は、その場で普通の人間なら木っ端みじんになっていてもおかしくない一撃を受けきって……吹き飛ばされるのを耐えた。
「マジか」
力なく、突き出していた腕を掴まれてテリーは我に返る。
ダメージは確実に与えている様で相手の意識が吹き飛んでいるのが分かる、それなのにこちらの腕を掴もうと探り、握られた事で瞬間的に……その腕を、体を、握りつぶされる殺気を感じて渾身の蹴り技を交えなんとか懐を脱出。
冷や汗をかいている事にテリーは、笑う。
この俺がビビって相手から距離を取り、逃げる事になるとは。
意識が無く、蹴り飛ばされて流石に転倒するかという瀬戸際、意識を持ちなおした様で太い脚で体制を整えて仰け反っていた顔が前に戻る。
構えが、僅かに防御寄りに変わった。
「たまんねぇな、こりゃぁヤりがいがあ……」
突然に、天井が崩れて崩壊したのに双方、背後に跳んで回避。
突然ではない、何本も柱をへし折ったりしていれば当然こうなるだろう。ましてや頭上の階でも普通屋内でするべきでは無い様な戦闘が繰り広げられていたのだ。
人に管理されなくなって放置されていた、廃墟同然の城である。
落ちて来たのが仲間の戦士、ヤトだと気が付いてテリーは目を瞬いた。瓦礫共々崩れ落ちて来ながらも、見慣れない男に槍を突き刺そうとしている所だったが……先ほどまで戦っていた巨漢が土埃を突き破って間に入り、ヤトの槍を掴んでそのまま、投げ飛ばしたのを見送る。
「おいおい、テメェの相手はこの俺だろうが」
投げ飛ばされた都合、上からなお容赦なく降り注ぐ瓦礫に埋もれる事は回避し、ヤトが槍を杖にして起き上がった。
「乱戦気味だな」
その後で悠々と紫魔導師、レッドが階下に魔法による浮遊で降りて来た。瓦礫の量からして、一階分余計に崩れてしまっているだろう。
「あー、ダメだこりゃ、まずいわ」
聞いた声だとテリーが顔を上げると、先ほどオービットと名乗った軽薄そうな男が頭を掻きむしっていた。
「ヤバいから俺らもずらかろう」
遠くに待機させていた玉持ち一団が、まともに機能せず逃げを選択したのを確認したからだ。
おかげで遠くに引きはがした敵が逃げ出す者を相手にせず、即座仲間との合流を目指して動き出してしまったのを確認し、こちらも早急に合流するべきだと判断したのである。
一対一ならいざ知らず、こうやって乱戦になったら数の上でも勝ち目が無い。
「ちッ、根性の無い野郎どもだ」
ルインがグチを零すが……しかして、狙いは別にあった。
このままこちらが攻撃をする限り、相手も攻撃で応えるだろう。
敵わない相手に戦う必要はもはや無く、出来る事ならこの『経験』は失う事無く持ち帰った方が後々有利になると、オービットは考えている。
逃げるべきだ、そのためにまず仲間たちの攻撃姿勢を排除する必要があった。
彼の算段の上ではこれで、攻撃の手は緩むはず……だったのだが……。
遠くから矢が迫る音を察知して慌てて飛びさする。
内心、冗談じゃないと思いながら必死に、見えない所から弧を描き飛んでくる矢を避ける。きっと相手はこちらを見ていないだろうに、勘だけでここまで正確にこちらの位置を察知出来るものだろうか。
勘の鋭い精霊使い、マツナギだからこそ、出来る芸当だ。
障害物を避ける都合弓形で飛んでくる矢を辛うじて避けつつ、オービットはなんとか瓦礫をつたって階下に折り、盾役であるダークと合流しようとするが……。
矢ではない、何か別のものが突っ込んで来て足を踏み外す。
ダークの手が届き、転倒は免れたが体にしがみついている、子犬ほどの大きさの爬虫類、いや、ドラゴンだろうか?
がっつりとしがみつかれていて振り払えず、あんぐりと口を開けているのをオービットは、何の動作なのか理解してその小さな首を即座両手でつかんで方向を変えた。
「丸こげにおなりーッ!」
次の瞬間、白濁した光線の様な物がその小さなドラゴンの口から吐き出され、それは咄嗟に首を向けた方向の石壁に当ると、事も在ろうかそれをガラス質に溶かして穴を開けた。さらに壁の向こうの床に当って地下空間に向かって穴を開けてしまう。微妙に放射線状に広がるそれは、最終的に巨大な穴を城内部に穿つに至っていた。
「ちょっと!危ないじゃないのよアイ!」
その地下から、女性の罵倒が聞こえて来る。
オービットにしがみついていたチビドラゴンは、ダークの手によって強引に引きはがされ……しかし、禍々しい生物というより愛くるしい愛玩動物的な魅力のあるそれは、無下に握りつぶされる事無く……そっと、地上に放されていた。
「ん、あれ?小動物的なの好きだっけ?」
「……きらいじゃない」
それは意外な一面だとオービットは苦笑う。
チビドラゴンはちょっと驚いた顔をしつつも……瓦礫の散らばる床をとたとたと短い脚で仲間達の方へと走って行った。
それを、オービットは合点が言った様子で見送って呟く。
「……か……可愛い」
「で、しょ?」
敵である6人と一匹天…あの小さなドラゴンも攻撃力だけは一端であるようだ。
改めて、ドラゴンブレスが開けた大穴の行方を目で追うと、何時の間にやら地下に移動して戦っていたらしいブレイズと赤毛の女戦士の姿が見える。
「ちょうどいい、ブレイズ、撤退」
いつの間にかこんな地下で戦っていたんだと、すっかり戦闘に夢中で気が付いていなかったブレイズは頭を掻いている。
「どうりで、人がいないと思った」
女剣士より先に地下から地上階へ跳躍し、こちらに向かって来るブレイズは……それを止めようとした戦士の一撃を軽く受け流し、かつ重心をずらして押し返し、くるりと位置を入れ替える。
どこでどうすればそこまでの剣技が身につくのか、とにかく……一人放置しておいても問題無くどんな局面も切り抜けて来る、それがブレイズ・サンデイである事を知っているオービット達は難なく合流。
ハイドローが、小声でオービットに聞いた。
「逃げるなら今だぞ」
「大丈夫、もう少しだけこいつらの特性を見たい」
オービットは、にやりと笑った顔を仲間達にだけ見せた。
「おーい」
顔を上げ、オービットはあからさまにぎょっとした顔をしてみせたのを……ルインは奇妙な顔で見ていた。それをハイドローが隠せと無言で嗜める。
「扉、ゲットー」
やはり翼持ち、城の中に居るよりは、きっと外を飛び回っているだろうと思っていた。
無事、主塔の屋根の頂上付近にあるくぼみに置いてあった玉を見つけて来てくれたようだ。
「間違いないんだな?」
という拳闘士テリーの問いに、ふわふわとした雰囲気の有翼の男は黄金色に光を放つ玉を見せながら言った。
「うん、生き残っていたヘッドはこれを通じてログアウトしたから、間違いないよ」
そう言って、背中の翼を広げて三階付近から崩落し、すっかり広々とした城の内部に舞い降りて来る。
「あちゃー、負けちゃった」
オービットは苦笑して負けた宣言を出して……その後の相手の出方を伺っていた。
ヘッド、というのは多分……玉持ちの事だろう。一人でも残しておくべきでは無かったかもしれない。その宝玉の使い方をあの有翼種は見ていた……という事になる。
どうするのか、と……その男が、音も無くオービットの目の前に降りて来た。
ブレイズは納めていた剣の柄に手をやったがこれを、オービットは抑える。
「はい」
敵であろう男から宝玉を、差し出されてしまいこれは……完全に俺達の負けだとオービットは微かに天を仰いでいた。
きっと見つけたら即座割ってくれると思っていたのだが、こうやって……手渡された意味をオービットは悟っている。
彼らはこれを破壊しない。
玉を壊し、この世界から消えるなら……それは俺達自身でそう判断して撤退しろ。
その様に言われているのがひしひしと分かる。
致し方なく玉を受け取ったが笑みは、引きつっていた事だろう。
「えーッ!ナッツさん、何相手に渡してるんですか!」
「いやぁ、僕らの勝利は間違いないんだから、多少お情けを掛けても問題は無いだろう?」
*** *** ***
夢を見た様な気がする。
目が覚めた彰は、危うく耳元についている機器をつけたまま顔を洗う所だった。
何だこれはと取り外した時にようやく、昨夜の事情を思い出す。
「……そういえば、海人からゲームに誘われたんだった」
しかしそのゲームというのが奇天烈だった。
これは、夢の中でプレイするゲームだと云う。
こうやって夢の中で遊ぶゲームをするべく小さな機器を耳に付けて就寝し、何事も無く朝を迎えたのだが……。当然だが、いまいちゲームをしたという感覚が無い。
それはそうだろう、夢の中に自意識など無い。
ただ、夢を見た気がする。
そう思うだけだ。
でも、悪い夢じゃぁなかった気がするのだ。
彰は苦笑して、機器を濡れない所に置いてから顔を洗って髭を剃る。
懸命に夢の内容を思い出そうとするが……上手く行かない。だけど、思い出そうとするとなぜか愉快な気分になってくる。理由は良く分からない、そんなに面白い夢だったのか?
内容を覚えてないのに。
海人が起きるのは……きっと昼過ぎだなぁと彰は考えながら……。
夢の中でどんな冒険をしたのか。心なしかログ確認を楽しみにしている自分を知って再び苦笑する。
ゲーム嫌いの南なんか、どういう反応をするだろう。
是非、聞いてみたいと思ったのだ。
END
アレの宣伝。異世界創造NOSYUYO『トビラ』との合同番外編でした。
つまりこの話はSF長編、『SRPU』側にあった番外編で、この度余計に書き下ろしを加えましたが大凡SRPU側の話になっています。
下敷きにしている『隠れ鬼遊戯』というキャラクターだけ使いまわした四期の話があるのですが、改修工事が終わっていないので公開は多分、SRPUを持ってきたあとになると思います。
『叡智』の説話についてはナッツさんから別の番外編があるのでそちらをお待ちください。
……なんというか予定外に書いた感じが多大にします。おかしい、どうしてこんな事に?
トビラ側からは、トビラ視点の彼らの行動が見れます。あっちが総合的。こっちは付属的な感じです。
ちなみにトビラ内の設定はほぼ、『隠れ鬼遊戯』の設定で行ってます。
番外編に彼らが再登場するのがあるのでざっくりと説明しておきます。
魔導師盗賊……ルイ(ルイン)・クローディア
→戦部隆輝 攻撃特化05機 黄色カラーリングの リーダー職
冷徹軍師 ……オービット・ファース
→猿沢海人 情報統括04機 白色カラーリングの ヘタレ軍師
人外の盾 ……ダーク
→彼渡成馬 防御特化03機 黒色カラーリングの 心が乙女のゲイ
足手まとい……ハイドロー・フェラリラ
→合歓 南 バックアップ02機 青色カラーリング 文科系イジメっ子
鬼強剣士 ……ブレイズ・サンデイ
→月代 彰 バランス型01機 赤色カラーリングの 押しの弱いスポ根
大体逆っぺぇ性格ですが口調はそのまま。
理想が反映されて若干逆転が起きています。
この話『SRPU』は別の所に、番外編と終了後オマケを除いて改修が終わっているので、順次もって来れれば良いなとは思っています。
おわり。
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