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番外編・後日談 A SEQUEL
◆トビラ後日談 A SEQUEL『知りたがりの木』
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◆トビラ後日談 A SEQUEL『知りたがりの木』
※本編終了後閲覧推奨、完全なる後日談の一種です※
※全部中からの話で、カイエン・ナッツの独白です※
僕がそれを初めて知った時、その時は大した問題ではないと思っていた。
古書に書かれた事実か空想かも解らない記録を、選り好みもせず流し読むのが僕のささやかな趣味だった。
当時、手に入る書物に限りがあった事もある。
とにかく暇を持て余していてね、読めない古い文字でしたためられた古書を読み解くのはいい暇つぶしになったんだよ。
戦争は起こせど、戦乱には一度も巻き込まれた事の無いファマメント国高地の首都レズミオ。
西方国として、ファマメントの歴史はさほど古くは無い。割と新興国だよ。
それなのに、自国の創立より古い時代の書物が残っているのは珍しいし、貴重なはずだ。
ファマメントより歴史の古い国であるバセリオンやディアスなんて、国が滅んだり首都を移動したりする間に貴重な文献は失われていたり、あえて破棄されていたりするからね。
冷たい、半分凍りついた古書が地下書庫に埋もれていた。
それ少しずつ引き上げて、破かないように慎重にページをめくるのが僕の、昼からの日課になっていた時期があった。
これから話すのは、その中に書かれていた……事実かどうか『当時は』判断の仕様がない、そういうふわふわとした事だ。
でも、不思議とその書を引き当てた時から気になっていたんだ。
何故なのかは分からない。最初は何ともないと思ったのに、繰り返し読むでもないのにずっと僕の脳裏に引っ掛かっていた。
そしてその反芻は、いずれ一つの可能性へと結びつき長い年月を経て一つの、重大な事実となって僕の前に開ける事になった。
さて、それは誰かに語っても良いものなのか。
語って、語り継いでも許されるものなのか。
僕は、この説話の事実を知るからこそ迷ってる。
なんでかって?
うん、それはね……これから語る説話というのはようするに『知りたがり』な属性を宿した不思議な怪物の話だからなんだ。
これは『知』を巡る不思議な話でね。
今僕がこうやって拾いあげた『事実』を、こうやってまたどこかに伝えゆく事が正しいか、正しくないか、迷いの生じる存在なんだよ。『知りたがり』な怪物の意図を鑑みるに、この話は後世に伝えるような事をしても良いものなのかな?という……恐れを抱くからなんだ。
この怪物の正式な名前はよく解らない、畏怖も込めてかな、記号で記されているようにも思える。
Hだ。
所どころわざとなのか、どちらが正しいのかは判別が付かないけれど、Hという文字を横にした記号でこの怪物は表現されている。
当時の文献以外の資料、主に絵、等だけども……それらを見るにどうやらHという記号は、時に『目』を表した形に酷似しているようにも思える。
あるいは、エイチ、かもしれない。
叡智、だね。
この『恐るべき』怪物は木であると伝えられ、木に一つ目が付いている怪物として著された資料もいくつか拾った。
この怪物を伝える文献は古く、文字の形状や統計からして明らかに第四期以前になるだろう。
そもそも、第四期時代の文献が第六期に建国したファマメント国にある事がおかしいのだけれど、それについての謎は簡単に解ける。
この文献、ファマメント国由来のものじゃないんだよ。
恐らく、第六期後半にファマメント国で統合したトライアン王国時代のものだろう。トライアンの歴史はファマメントより古い、第四期にディアス・エルエラーサ王朝が西方全統一を成し遂げているけれど、その時に最後まで抗っていた国の一つにトライアンの名がある。西方統一国家ディアスが分裂を始めた時も、真っ先に離反したのがトライアンだ。しかしその後独立戦争による疲弊と疫病が重なって国が衰退し、今から数えても大分昔に……ファマメント国と統合したんだよね。
その前までは大分仲が悪かった歴史もあってね、数十世紀を経た今でもトライアン系民族との確執が残っていたりするんだよ。
うん、それでこのトライアン国由来の古書、焼き掃ってしまおうって話もあったみたいだ。
ファマメントの歴史を紐解くとそういう話があった事がたやすくわかる。それで、これがその時なんとか焼き捨てを免れた大切な古文書だってのは解ったって訳。
大切な古書の解読は……誰かによって、ある程度は進められていたようだ。
今は、その部署はすっかり廃れたてるね。一応形としては残ってるみたいだけど、僕みたいな門外漢が興味本位で手を出せるくらいなんだし、本当に適当な管理だよ。
あ、僕かい?
僕はカイエン・ナッツ。
今は隠居してファマメント国から出て、もっと南の暖かい所でまったりと暮らしてるよ。
古文書解析に勤しむ暇は無くなってね、当時みたいに何もすることが無い、って生活じゃなくなってる。生きるにあれこれ働かなきゃいけない、実にまっとうな生活をしているよ。
……当時の生活がまっとうじゃなかったのかって?うん、そうだね。
あんまり誇れる生活じゃなかった。退屈で、窮屈で、とても悲惨な生活だったんじゃないのかな。
すっかり振りかえってそんな風に言えちゃうね。
僕は、昔ファマメント国で神官をやっていた。
ファマメント国でやってる宗教、天使教というものの祭祀だ。僕はそれの、事もあろうか『最高神官』という立場あたりをウロウロしていた。
僕は生き神として天使教が必要とした偶像みたいなものだった。この、生まれつき色素の薄い羽の所為だね。
生まれ故郷から何もよくわからないうちに連れ出され、何も不自由がない代わりに、背に空を飛ぶ羽を持ちながら空を飛べない、鳥かご生活を送っていた。
それに満足出来たのは最初だけさ。成長するにつれて退屈だって解った。
許される限りの知恵を付けてみると、自分の生活がいかに惨めであるのかも解ってしまった。
天使教はさ、何も知らせず僕を飼ってくれてればよかったのに。
そんなふうに疎ましく思ったりもしたけれど、そうしない理由についてもそのうち理解するに至るんだ。
いずれ、この偶像職から僕は追い払われる。その時、要らなくなった僕を彼らは殺すのか?
殺せないんだ。
彼らは、すでにそうやって無知の偶像を作り失敗した事を覚えている。次に、事実を隠したばかりに反逆した偶像を殺す必要に迫られた事を覚えている。
そして……ならばいっそ用済みになれば殺そうという趣旨を、天使教に権力を握られたくない連中に利用されてしまう痛手を覚えているんだ。
そういう過去の出来事を経て、天使教の偶像役、これをハクガイコウって言うんだけど。
ハクガイコウにはちゃんと教育を施す事にしたんだね。
あえて、欲しがるものは全部与える事にしたらしい。
地位も、名誉も、そして……その後の居場所もね。
それで僕も満足すべきだったんだろう。けどまぁ、それってとても安寧で楽ではあるけれど……少しだけ面白くないというのも事実だ。
僕が本当にやりたい事は何なのか。
僕は、何の為に生きるのか。
自分の為に生きるとするなら僕は、何がしたいのか。
そういう事を一切封じられる事になっちゃう。
色々あって、僕は『僕』である事に目が覚めたんだろうね。
その色々、については長くなるし、別の話だからここではしない。
……何も知らなければ。
天使教は、無知なハクガイコウを作って失敗した前例を覚えている。
それはずっと前のハクガイコウだったようだけど、それでは上手く行かないって事を今でも覚えているんだ。当時生きていた人で今はもういないのに。
なんでかって?
別に謎でも何でもないよね。そう、記録に残っているからだ。
どういう理由でそれは失敗に終わるっていう教訓が、天使教に代々伝わっているからだよ。
人は、必ずいずれ死ぬ。生きる長さは人それぞれだ。僕は翼ある魔種『有翼族』であるため人間よりも幾分長生きでね、そういう属性もまたハクガイコウに据えられるに利用されてるみたいなんだけれど……それはいいや。
とにかく、この僕でもいずれ死ぬ。僕が得た知識は、僕が死んだ途端無に還る。
それもいいだろう、色々余計な事を知りすぎている事は自分自身がよくわかっている。早く僕にくたばって欲しいという人もいただろう。そうやって、僕の死を望みながら先に死んだ人もいる。
僕が得た『知』は僕だけのものか?
いいや、この『知』を伝え残す方法がある。
言葉で相手に伝える事。そして、文字にして書に書き残す事。
他にも色々あるけれど、一般的にはやっぱり文字じゃないのかな。
言葉の発達と文字の開発が、一体どこで、どの時期に始まったのかは分からない。それを明確に解明するには情報が足りない。いつか、誰かが解明したのだろう。僕はそう思うけれど……。
発祥が分からないって事はもしかすれば、誰かが『僕らに』与えたモノである、という説を完全に否定する事も出来ないんだよね。
文字を、言葉を与えたのは誰だろう?
この世界にはいくつかの『神』がいる。天使教が信じる神もそうだ。あ、正確にはハクガイコウは神じゃぁないんだよね、ややこしいからあえて詳しくは言わなかったんだけど……天使教は偶像崇拝は禁じられている。ハクガイコウってのは神の使いの事で、天使教は神を唯一と唱えて偶像化が許されている神の使いの『天使』の方に祈る事が多いんだ。
天使教の教義で言えば、この世界のすべてを作りたもうたのは『神』だ。
もちろん、人も世界も神が作った。そして言葉も神が人に教えたもので、文字も神が人に与えたものだという事になるだろう。
でも僕はそう思っていない。僕は天使教の『中の人』だからね、ぶっちゃけるけど……宗教ってのは装置なんだよ。事実を語る必要なんてないんだ。
この世界には天使教以外にも宗教がある。色々あるけれど、天使教の次に信仰者が多いのは『西教』だろう。
西の方位神と呼ばれる存在を神として崇めたもので、正確にはかつて西方を統一したディアス王、シュラードを神格化した宗教。
シュラードはその後、方位神と呼ばれる存在になったとされている。
実際、方位神ってのが見える触れられる存在ならばいいんだけどそうじゃない。これもまた天使教の神と同じく『装置』だ。世界の理を統べている……いや、今は、居たと過去形にする必要があったりもするけれどね。
他にも方位神を神として崇めている地方がいくつかあるよ。
大陸座、と呼ばれた実際に見えるようになってしまった『神』もいるね。
でもこれは除外だな、僕はこれらの存在の真を知っている。決して語れない、あんまり書き残しても良い事でもない。
それは同じく、大陸座もまた世界を統治する為の装置にすぎなかったからだ。
ようするに、知、というものは常に良い方向に働きかけるとは限らないんだろう。
平等にあるべきでもない。使い方次第で善にも悪にもなる。使い方だけならまだしも、困った事に『知』とは相いれるべきではない人間特有の物と化学反応を起こして、意図せずにとんでもない事を引き起こしてしまう事もある。
人間特有の物、それが何か、分からない?
心だよ、感情、とも言える。
知とは別のもの。
知を持って時に形を変えるに至るもの。
いや、形を変えるのは知の所為じゃない。
結局のところ『心』を持つ者の心の働きに他ならないんだ。
『知』は関係ない。
でも多くは、この二つは同じものか、あるいは近しいものか、同じ所にあるものだと思い込んでいる。そう勘違いしたくなる気持ちはわかるよ。でも、違うんだ。違うものなんだ。
もし、知りたがりの木に心があったらどうだろう?
きっと、それは怪物だとは伝えられていないだろうと思う。
一つ目の、知識をむさぼる怪物『叡智』について……僕は思うんだ。
世界の中にあって圧倒的な何かを持つ者を異質と感じ、それを時に神か、あるいは怪物として畏怖するのなら。結局のところ人の『心』がそれをどう捉えたかどうかに左右されているだけで『叡智』もまた、神ではなかったのか、と。
ゆるゆるとそんな事を考えていた。
叡智の存在を知り、それはどんな怪物だったろうかと考えているうちにもしかすればその木の怪物は、人に文字を与え、それを木などに書きつける方法を教え、そうやって自身の存在が死によって無に帰る事を防いだのではないのか。
『知』の伝達……それがもし、叡智という怪物の齎したものであったのなら?
この世界ではそれを否定する材料が足りない。だからこそ、もしかすればと思うんだ。
叡智は居るんだよ。
僕はそれを知ってしまった。それが滅ぶべきだったとは思わない。
滅んでいるなら今、知の伝達は失われ、人は無知なままある意味『仕合わせ』に同じ事を何度も繰り返し過去に何も学ばず、はたから見れば愚かに生きていたかもしれない。
与えられたルーチンに従い、その通りにしか動かない。
この世界はその戒めを破ったんだ。
叡智という神の、秩序の元に。
書は伝える。
一つ目を持つ木の怪物の説話。
全てを知ろうとする知識の怪物は、とある魔法使いの家系によって一度、滅んだとされる。しかしその後世界に溶け入った叡智は北西に再臨したと伝えられるね。
トライアン王国は北西を領土としていたからね、過去何度かこの怪物と思われるものに手古摺ったという文献がみられる。中には関連が怪しいもののあったけどね。
こっからは僕の推測。
うん、結局語っちゃうんだね。そこが叡智という怪物の恐ろしい所さ。
死んで自分の知が失われる事を惜しい、と思わせる、っていう。
誰かと『知』を共有したいと、人の『心』に働きかけるんだ。巧妙だよねぇ。なぜそうなるのかよくわからない。自分の存在証明の為だとも言われるけれど、どうして自分の存在証明なんてものが必要なんだい?それは本当に心の欲求なのかな?僕には、どうにも知が与えた呪いのようにも思う。
僕が知を引き継ぎ、知を紡ぎ、結局の所誰かに知を繋げるために……僕の推測を語ろう。
第四期に居た魔法使い、っていうと血筋が非常に限られるのが分かるんだ。
魔法使いっていうのは比較的新しいからね。
一番古い系統の魔法使いは実は近くに居てね、ハクガイコウ時代に僕の監視役を兼ねてた世話役のワイズ家がそうだった。ワイズはトライアン王国の家系でもある。
ワイズは自分の血筋について言っていたよ。
ワイズ家は、長らく魔法使いである事を隠ぺいする事でなんとか上手くやっていた家なんだ、って。隠し通せたからこそ今も続いている。
隠せなかったらどうなるかって?
書は語るよ。
古い系統の魔法使いは、叡智が絡む過去の大参事に何度か関わり合った事もあり嫌われている事が多い。
トライアンではかつて、古い魔法使いを世界から抹殺する為の政策が敷かれた事もあったようだ。それらを下敷きにして第六期前半の強烈な魔物蔑視の歴史が積み上げられる事になったのかもしれない、なぁんて研究結果もあるくらい。これは正式な奴だね、魔道都市の魔導師達でも知っている。
古い系統の魔法使いの血筋は、必死に逃げた。そうして世界に散らばった。
もうどこの系統だと拾いあげる事が不可能なくらいに。
でも、この古い系統の魔法使いの血筋が若干だけど、世界に混じらずそのまま残っていた。それは事もあろうかワイズ家の秘宝でね、長らくワイズ家がひた隠しにしてきた事を僕は知っている。
ワイズ家自体も古い系統の魔法使いではあったけれど大分薄まっていたから『それ』を引き起こすほどの事は無かったのだろうと僕は思っている。
『それ』っていうのは、ようするに叡智だよ。
一つ目の木の怪物。
叡智は古代魔法使いによって倒されたそうだけど、多分それは事実なんだろう。
でもこの世界において倒すと言う事はどういう事なのか?
真実を、僕は知っている。
倒すという事は滅ぼすのとは違う。
倒す、という事は圧倒するという事だ。その業を倒したものが背負っていくという事なんだよ。
勿論かつてそれを倒したものは、それを滅ぼしたつもりだったろう。けれど大抵の場合圧倒したものが、圧倒したものに躓いちゃう。
いやね、僕の知り合いにもそういう奴が居たからさ。よくわかる訳だよ。
だから、かつて叡智を圧倒した魔法使いはその時に、叡智という業を背負ったのではないのかと僕は思う。
だから、滅んだはずの叡智が再び魔法使いに絡んで出没するんだろう。
ワイズ家はこの古い魔法使いの血を滅ぼす事を止めた。賢いね、彼らはこの血を『封じた』
だからワイズ家は封印士っていう特殊な魔法を得意だったりする訳だ。独自の封印術を家で伝えていく様になったんだろう。
ところがワイズ家は割と近年の事だけど、この封印を解いちゃったんだね。
秘宝として秘めてきた封印を、解いてしまった。
僕の補佐を務めたワイズ家の男、グランソールはそれをどれだけ悔いていたか。
彼は自分をワイズ家というものに縛りつけるその、封印を疎ましく思っていただろう。それさえなければワイズ家というものに縛られる事も無い。だから、封印を解こうと思ったわけじゃない。
彼は封印もろとも消してしまおうと考えていた。
なぜワイズ家が封印と云う手段を取ったのか、きっと大切な『知』が、失われてしまったていたのだろうね。
今にしてそう思う。
その所為で古い血が復活した。
そうして、叡智がよみがえったのを僕はこの目で見た。
まさしく怪物として今も世界に君臨しているのを知っている。
あれはきっと、書に伝えられる所の叡智、知りたがりの木なのだろう。
だと、思う。
……なんか断言が出来ないのは……まぁ、彼がさほど知りたがりじゃぁないって事実も知っているから、だけれど。
違うな、彼は知らないふりが得意なだけか。得意と言うか……無駄にとぼけるのが好きっていうか。結構嘘ついてるのはバレバレだったりするし。
本当はたくさん、きっと余計な事を知っている。
そういう事に適当に目をつぶって、興味がない振りをして、必死に『一人』を演じるのが上手いだけかな。
日々、多くの見知らぬ『自分』が統合されていく。
全ての経験を、知を、受け入れると覚悟した彼は紛れもない、かつて古代にあり、恐れられた知の怪物の再臨なのだろうと僕は思っている。
誰かって?
今の『魔王八逆星』だよ。
かつてのそれらを圧倒し、倒した勇者のなれの果てって奴。
僕らの愛すべき人柱、ヤト・ガザミさ。
*** おわり ***
※本編終了後閲覧推奨、完全なる後日談の一種です※
※全部中からの話で、カイエン・ナッツの独白です※
僕がそれを初めて知った時、その時は大した問題ではないと思っていた。
古書に書かれた事実か空想かも解らない記録を、選り好みもせず流し読むのが僕のささやかな趣味だった。
当時、手に入る書物に限りがあった事もある。
とにかく暇を持て余していてね、読めない古い文字でしたためられた古書を読み解くのはいい暇つぶしになったんだよ。
戦争は起こせど、戦乱には一度も巻き込まれた事の無いファマメント国高地の首都レズミオ。
西方国として、ファマメントの歴史はさほど古くは無い。割と新興国だよ。
それなのに、自国の創立より古い時代の書物が残っているのは珍しいし、貴重なはずだ。
ファマメントより歴史の古い国であるバセリオンやディアスなんて、国が滅んだり首都を移動したりする間に貴重な文献は失われていたり、あえて破棄されていたりするからね。
冷たい、半分凍りついた古書が地下書庫に埋もれていた。
それ少しずつ引き上げて、破かないように慎重にページをめくるのが僕の、昼からの日課になっていた時期があった。
これから話すのは、その中に書かれていた……事実かどうか『当時は』判断の仕様がない、そういうふわふわとした事だ。
でも、不思議とその書を引き当てた時から気になっていたんだ。
何故なのかは分からない。最初は何ともないと思ったのに、繰り返し読むでもないのにずっと僕の脳裏に引っ掛かっていた。
そしてその反芻は、いずれ一つの可能性へと結びつき長い年月を経て一つの、重大な事実となって僕の前に開ける事になった。
さて、それは誰かに語っても良いものなのか。
語って、語り継いでも許されるものなのか。
僕は、この説話の事実を知るからこそ迷ってる。
なんでかって?
うん、それはね……これから語る説話というのはようするに『知りたがり』な属性を宿した不思議な怪物の話だからなんだ。
これは『知』を巡る不思議な話でね。
今僕がこうやって拾いあげた『事実』を、こうやってまたどこかに伝えゆく事が正しいか、正しくないか、迷いの生じる存在なんだよ。『知りたがり』な怪物の意図を鑑みるに、この話は後世に伝えるような事をしても良いものなのかな?という……恐れを抱くからなんだ。
この怪物の正式な名前はよく解らない、畏怖も込めてかな、記号で記されているようにも思える。
Hだ。
所どころわざとなのか、どちらが正しいのかは判別が付かないけれど、Hという文字を横にした記号でこの怪物は表現されている。
当時の文献以外の資料、主に絵、等だけども……それらを見るにどうやらHという記号は、時に『目』を表した形に酷似しているようにも思える。
あるいは、エイチ、かもしれない。
叡智、だね。
この『恐るべき』怪物は木であると伝えられ、木に一つ目が付いている怪物として著された資料もいくつか拾った。
この怪物を伝える文献は古く、文字の形状や統計からして明らかに第四期以前になるだろう。
そもそも、第四期時代の文献が第六期に建国したファマメント国にある事がおかしいのだけれど、それについての謎は簡単に解ける。
この文献、ファマメント国由来のものじゃないんだよ。
恐らく、第六期後半にファマメント国で統合したトライアン王国時代のものだろう。トライアンの歴史はファマメントより古い、第四期にディアス・エルエラーサ王朝が西方全統一を成し遂げているけれど、その時に最後まで抗っていた国の一つにトライアンの名がある。西方統一国家ディアスが分裂を始めた時も、真っ先に離反したのがトライアンだ。しかしその後独立戦争による疲弊と疫病が重なって国が衰退し、今から数えても大分昔に……ファマメント国と統合したんだよね。
その前までは大分仲が悪かった歴史もあってね、数十世紀を経た今でもトライアン系民族との確執が残っていたりするんだよ。
うん、それでこのトライアン国由来の古書、焼き掃ってしまおうって話もあったみたいだ。
ファマメントの歴史を紐解くとそういう話があった事がたやすくわかる。それで、これがその時なんとか焼き捨てを免れた大切な古文書だってのは解ったって訳。
大切な古書の解読は……誰かによって、ある程度は進められていたようだ。
今は、その部署はすっかり廃れたてるね。一応形としては残ってるみたいだけど、僕みたいな門外漢が興味本位で手を出せるくらいなんだし、本当に適当な管理だよ。
あ、僕かい?
僕はカイエン・ナッツ。
今は隠居してファマメント国から出て、もっと南の暖かい所でまったりと暮らしてるよ。
古文書解析に勤しむ暇は無くなってね、当時みたいに何もすることが無い、って生活じゃなくなってる。生きるにあれこれ働かなきゃいけない、実にまっとうな生活をしているよ。
……当時の生活がまっとうじゃなかったのかって?うん、そうだね。
あんまり誇れる生活じゃなかった。退屈で、窮屈で、とても悲惨な生活だったんじゃないのかな。
すっかり振りかえってそんな風に言えちゃうね。
僕は、昔ファマメント国で神官をやっていた。
ファマメント国でやってる宗教、天使教というものの祭祀だ。僕はそれの、事もあろうか『最高神官』という立場あたりをウロウロしていた。
僕は生き神として天使教が必要とした偶像みたいなものだった。この、生まれつき色素の薄い羽の所為だね。
生まれ故郷から何もよくわからないうちに連れ出され、何も不自由がない代わりに、背に空を飛ぶ羽を持ちながら空を飛べない、鳥かご生活を送っていた。
それに満足出来たのは最初だけさ。成長するにつれて退屈だって解った。
許される限りの知恵を付けてみると、自分の生活がいかに惨めであるのかも解ってしまった。
天使教はさ、何も知らせず僕を飼ってくれてればよかったのに。
そんなふうに疎ましく思ったりもしたけれど、そうしない理由についてもそのうち理解するに至るんだ。
いずれ、この偶像職から僕は追い払われる。その時、要らなくなった僕を彼らは殺すのか?
殺せないんだ。
彼らは、すでにそうやって無知の偶像を作り失敗した事を覚えている。次に、事実を隠したばかりに反逆した偶像を殺す必要に迫られた事を覚えている。
そして……ならばいっそ用済みになれば殺そうという趣旨を、天使教に権力を握られたくない連中に利用されてしまう痛手を覚えているんだ。
そういう過去の出来事を経て、天使教の偶像役、これをハクガイコウって言うんだけど。
ハクガイコウにはちゃんと教育を施す事にしたんだね。
あえて、欲しがるものは全部与える事にしたらしい。
地位も、名誉も、そして……その後の居場所もね。
それで僕も満足すべきだったんだろう。けどまぁ、それってとても安寧で楽ではあるけれど……少しだけ面白くないというのも事実だ。
僕が本当にやりたい事は何なのか。
僕は、何の為に生きるのか。
自分の為に生きるとするなら僕は、何がしたいのか。
そういう事を一切封じられる事になっちゃう。
色々あって、僕は『僕』である事に目が覚めたんだろうね。
その色々、については長くなるし、別の話だからここではしない。
……何も知らなければ。
天使教は、無知なハクガイコウを作って失敗した前例を覚えている。
それはずっと前のハクガイコウだったようだけど、それでは上手く行かないって事を今でも覚えているんだ。当時生きていた人で今はもういないのに。
なんでかって?
別に謎でも何でもないよね。そう、記録に残っているからだ。
どういう理由でそれは失敗に終わるっていう教訓が、天使教に代々伝わっているからだよ。
人は、必ずいずれ死ぬ。生きる長さは人それぞれだ。僕は翼ある魔種『有翼族』であるため人間よりも幾分長生きでね、そういう属性もまたハクガイコウに据えられるに利用されてるみたいなんだけれど……それはいいや。
とにかく、この僕でもいずれ死ぬ。僕が得た知識は、僕が死んだ途端無に還る。
それもいいだろう、色々余計な事を知りすぎている事は自分自身がよくわかっている。早く僕にくたばって欲しいという人もいただろう。そうやって、僕の死を望みながら先に死んだ人もいる。
僕が得た『知』は僕だけのものか?
いいや、この『知』を伝え残す方法がある。
言葉で相手に伝える事。そして、文字にして書に書き残す事。
他にも色々あるけれど、一般的にはやっぱり文字じゃないのかな。
言葉の発達と文字の開発が、一体どこで、どの時期に始まったのかは分からない。それを明確に解明するには情報が足りない。いつか、誰かが解明したのだろう。僕はそう思うけれど……。
発祥が分からないって事はもしかすれば、誰かが『僕らに』与えたモノである、という説を完全に否定する事も出来ないんだよね。
文字を、言葉を与えたのは誰だろう?
この世界にはいくつかの『神』がいる。天使教が信じる神もそうだ。あ、正確にはハクガイコウは神じゃぁないんだよね、ややこしいからあえて詳しくは言わなかったんだけど……天使教は偶像崇拝は禁じられている。ハクガイコウってのは神の使いの事で、天使教は神を唯一と唱えて偶像化が許されている神の使いの『天使』の方に祈る事が多いんだ。
天使教の教義で言えば、この世界のすべてを作りたもうたのは『神』だ。
もちろん、人も世界も神が作った。そして言葉も神が人に教えたもので、文字も神が人に与えたものだという事になるだろう。
でも僕はそう思っていない。僕は天使教の『中の人』だからね、ぶっちゃけるけど……宗教ってのは装置なんだよ。事実を語る必要なんてないんだ。
この世界には天使教以外にも宗教がある。色々あるけれど、天使教の次に信仰者が多いのは『西教』だろう。
西の方位神と呼ばれる存在を神として崇めたもので、正確にはかつて西方を統一したディアス王、シュラードを神格化した宗教。
シュラードはその後、方位神と呼ばれる存在になったとされている。
実際、方位神ってのが見える触れられる存在ならばいいんだけどそうじゃない。これもまた天使教の神と同じく『装置』だ。世界の理を統べている……いや、今は、居たと過去形にする必要があったりもするけれどね。
他にも方位神を神として崇めている地方がいくつかあるよ。
大陸座、と呼ばれた実際に見えるようになってしまった『神』もいるね。
でもこれは除外だな、僕はこれらの存在の真を知っている。決して語れない、あんまり書き残しても良い事でもない。
それは同じく、大陸座もまた世界を統治する為の装置にすぎなかったからだ。
ようするに、知、というものは常に良い方向に働きかけるとは限らないんだろう。
平等にあるべきでもない。使い方次第で善にも悪にもなる。使い方だけならまだしも、困った事に『知』とは相いれるべきではない人間特有の物と化学反応を起こして、意図せずにとんでもない事を引き起こしてしまう事もある。
人間特有の物、それが何か、分からない?
心だよ、感情、とも言える。
知とは別のもの。
知を持って時に形を変えるに至るもの。
いや、形を変えるのは知の所為じゃない。
結局のところ『心』を持つ者の心の働きに他ならないんだ。
『知』は関係ない。
でも多くは、この二つは同じものか、あるいは近しいものか、同じ所にあるものだと思い込んでいる。そう勘違いしたくなる気持ちはわかるよ。でも、違うんだ。違うものなんだ。
もし、知りたがりの木に心があったらどうだろう?
きっと、それは怪物だとは伝えられていないだろうと思う。
一つ目の、知識をむさぼる怪物『叡智』について……僕は思うんだ。
世界の中にあって圧倒的な何かを持つ者を異質と感じ、それを時に神か、あるいは怪物として畏怖するのなら。結局のところ人の『心』がそれをどう捉えたかどうかに左右されているだけで『叡智』もまた、神ではなかったのか、と。
ゆるゆるとそんな事を考えていた。
叡智の存在を知り、それはどんな怪物だったろうかと考えているうちにもしかすればその木の怪物は、人に文字を与え、それを木などに書きつける方法を教え、そうやって自身の存在が死によって無に帰る事を防いだのではないのか。
『知』の伝達……それがもし、叡智という怪物の齎したものであったのなら?
この世界ではそれを否定する材料が足りない。だからこそ、もしかすればと思うんだ。
叡智は居るんだよ。
僕はそれを知ってしまった。それが滅ぶべきだったとは思わない。
滅んでいるなら今、知の伝達は失われ、人は無知なままある意味『仕合わせ』に同じ事を何度も繰り返し過去に何も学ばず、はたから見れば愚かに生きていたかもしれない。
与えられたルーチンに従い、その通りにしか動かない。
この世界はその戒めを破ったんだ。
叡智という神の、秩序の元に。
書は伝える。
一つ目を持つ木の怪物の説話。
全てを知ろうとする知識の怪物は、とある魔法使いの家系によって一度、滅んだとされる。しかしその後世界に溶け入った叡智は北西に再臨したと伝えられるね。
トライアン王国は北西を領土としていたからね、過去何度かこの怪物と思われるものに手古摺ったという文献がみられる。中には関連が怪しいもののあったけどね。
こっからは僕の推測。
うん、結局語っちゃうんだね。そこが叡智という怪物の恐ろしい所さ。
死んで自分の知が失われる事を惜しい、と思わせる、っていう。
誰かと『知』を共有したいと、人の『心』に働きかけるんだ。巧妙だよねぇ。なぜそうなるのかよくわからない。自分の存在証明の為だとも言われるけれど、どうして自分の存在証明なんてものが必要なんだい?それは本当に心の欲求なのかな?僕には、どうにも知が与えた呪いのようにも思う。
僕が知を引き継ぎ、知を紡ぎ、結局の所誰かに知を繋げるために……僕の推測を語ろう。
第四期に居た魔法使い、っていうと血筋が非常に限られるのが分かるんだ。
魔法使いっていうのは比較的新しいからね。
一番古い系統の魔法使いは実は近くに居てね、ハクガイコウ時代に僕の監視役を兼ねてた世話役のワイズ家がそうだった。ワイズはトライアン王国の家系でもある。
ワイズは自分の血筋について言っていたよ。
ワイズ家は、長らく魔法使いである事を隠ぺいする事でなんとか上手くやっていた家なんだ、って。隠し通せたからこそ今も続いている。
隠せなかったらどうなるかって?
書は語るよ。
古い系統の魔法使いは、叡智が絡む過去の大参事に何度か関わり合った事もあり嫌われている事が多い。
トライアンではかつて、古い魔法使いを世界から抹殺する為の政策が敷かれた事もあったようだ。それらを下敷きにして第六期前半の強烈な魔物蔑視の歴史が積み上げられる事になったのかもしれない、なぁんて研究結果もあるくらい。これは正式な奴だね、魔道都市の魔導師達でも知っている。
古い系統の魔法使いの血筋は、必死に逃げた。そうして世界に散らばった。
もうどこの系統だと拾いあげる事が不可能なくらいに。
でも、この古い系統の魔法使いの血筋が若干だけど、世界に混じらずそのまま残っていた。それは事もあろうかワイズ家の秘宝でね、長らくワイズ家がひた隠しにしてきた事を僕は知っている。
ワイズ家自体も古い系統の魔法使いではあったけれど大分薄まっていたから『それ』を引き起こすほどの事は無かったのだろうと僕は思っている。
『それ』っていうのは、ようするに叡智だよ。
一つ目の木の怪物。
叡智は古代魔法使いによって倒されたそうだけど、多分それは事実なんだろう。
でもこの世界において倒すと言う事はどういう事なのか?
真実を、僕は知っている。
倒すという事は滅ぼすのとは違う。
倒す、という事は圧倒するという事だ。その業を倒したものが背負っていくという事なんだよ。
勿論かつてそれを倒したものは、それを滅ぼしたつもりだったろう。けれど大抵の場合圧倒したものが、圧倒したものに躓いちゃう。
いやね、僕の知り合いにもそういう奴が居たからさ。よくわかる訳だよ。
だから、かつて叡智を圧倒した魔法使いはその時に、叡智という業を背負ったのではないのかと僕は思う。
だから、滅んだはずの叡智が再び魔法使いに絡んで出没するんだろう。
ワイズ家はこの古い魔法使いの血を滅ぼす事を止めた。賢いね、彼らはこの血を『封じた』
だからワイズ家は封印士っていう特殊な魔法を得意だったりする訳だ。独自の封印術を家で伝えていく様になったんだろう。
ところがワイズ家は割と近年の事だけど、この封印を解いちゃったんだね。
秘宝として秘めてきた封印を、解いてしまった。
僕の補佐を務めたワイズ家の男、グランソールはそれをどれだけ悔いていたか。
彼は自分をワイズ家というものに縛りつけるその、封印を疎ましく思っていただろう。それさえなければワイズ家というものに縛られる事も無い。だから、封印を解こうと思ったわけじゃない。
彼は封印もろとも消してしまおうと考えていた。
なぜワイズ家が封印と云う手段を取ったのか、きっと大切な『知』が、失われてしまったていたのだろうね。
今にしてそう思う。
その所為で古い血が復活した。
そうして、叡智がよみがえったのを僕はこの目で見た。
まさしく怪物として今も世界に君臨しているのを知っている。
あれはきっと、書に伝えられる所の叡智、知りたがりの木なのだろう。
だと、思う。
……なんか断言が出来ないのは……まぁ、彼がさほど知りたがりじゃぁないって事実も知っているから、だけれど。
違うな、彼は知らないふりが得意なだけか。得意と言うか……無駄にとぼけるのが好きっていうか。結構嘘ついてるのはバレバレだったりするし。
本当はたくさん、きっと余計な事を知っている。
そういう事に適当に目をつぶって、興味がない振りをして、必死に『一人』を演じるのが上手いだけかな。
日々、多くの見知らぬ『自分』が統合されていく。
全ての経験を、知を、受け入れると覚悟した彼は紛れもない、かつて古代にあり、恐れられた知の怪物の再臨なのだろうと僕は思っている。
誰かって?
今の『魔王八逆星』だよ。
かつてのそれらを圧倒し、倒した勇者のなれの果てって奴。
僕らの愛すべき人柱、ヤト・ガザミさ。
*** おわり ***
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