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番外編 EX EDITION

■番外編EX『戦いを捧げろ!』#1/10

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N&SinMFC シリーズ番外編『戦いを捧げろ!』#1/10

※同世界設定同士の物語登場人物による、
 俗に言うパラレルの様なそうでもないような番外編です やや長め


 歓声、むしろ罵倒の叫びに沸くはコロシアム・アリーナ。
 ここはサークル型の壁に囲まれた儀式舞台を有するエズの某闘技場だ。

 ……もしやするとありえない。
 ありえませんが、ありえないものを時空・次元を捻じ曲げてやらかしますはこのたびのお遊び番外編。
 しばしお付き合い戴こう、カミと言うには余りに稚拙な『上の人』の自己満足遊戯。

 エイトエレメンタラティス、

 つおいのは誰だ選手権
   inイシュタル国エズ闘技場エトオノ!


*** *** ***
(こちらは、ブログで4回に渡って書き殴られた
  とんでもコメディ・テキストの再編集版です)
*** *** ***


 舞台を見下ろす中段の踊り場で、黒髪の青年が丸いメガネのブリッジを押し上げてからテーブルに肘をついて両手を組んだ。

 先に言っておくがこのコメディの視点は『上の人』だ。
 そして登場人物たちは稀にブログで記載された頃の状況を解説する場合もある。
 再編集版ながらも、都合そのままにしている所もあるのでそのあたりはご理解いただきたい。↓タトエバコンナセリフトカ

「みなさん、ごきげんよう。すっかり小説更新止めてますね、来週から再開ですので今しばらくお待ちいただけますようお願いいたします。というか、本来こういうのはもっと休みの間頃に挟むべきだと思うのですが……」
 ちょ、前置きが長いですよ貴方。
「……失礼、本日司会をさせていただきます紫魔導士、レッド・レブナントです。というかですね、どうして僕が解説じゃなくて司会なんだというツッコミもあるかと思われるのですが……もちろん、理由はあります」
 どうぞ、とばかりに珍しく敬意を持って魔導師の位で言うと上から2番目、事実上最高位であるレッドが案内したのは……。
 人間は基本的に持っていない天上の青い髪を持ち、史上3人にしか許されていない『青』を纏う者。
「別に魔導師だとか色が何とか、そんな事はどうでもいい事だと思うがね。……しかし、一応わかりやすく言っておこうか。三魔導長兄トリス・ヴァーニスだ。今回は詭弁バージョンなので存分に語らせていただく」
「や、流石に天位青魔の語りには僕も素直に解説の席を譲らざるを得ない」
 とかいいながら、レッド氏のほほ笑みはどことなく……爽やかだ。
 対しトリスは腐っても天位、腹黒魔導師の腹の中の色などお見通しと見え、癖の苦笑を交えながらレッドと同じように両手を組む。
「とりあえず、今回の方向性から説明してはどうかな?俺と君は歴史上、顔を合わせる事は無いんだし」
「そうですね、貴方は方位神眷属というお立場で時間など軽く超越すると極秘に伝わっている訳ですが」
 レッドの言葉にトリスは苦い顔をする。
「おかしいなぁ、そういう事はは一切伝播しないように徹底的に情報ツブしたはずなんだが」
「魔導師甘く見ちゃいけませんよ」
「そのようだ」
「……とにかく、我々の活躍時代は10世紀近い時代の隔たりを持っております。本来であればこのように、直接会話をする事は叶いません。しかし……番外編しかもお遊びという事でそのあたりの辻褄は、きっちりかっちり目をつぶっていただく方向で今回はお願い致します」
 軽く頭を下げるレッド。
 その隣でトリスはそうそう、と思い出したようにレッドとは反対側に顔を向ける。
 実はそこにももう一人。
「ああ、ついでだからSFな方からもご参加頂いたそうだ」
「…………」
「あいさつはしないのかね?」
「僕は司会も解説も断ったはずなんだけどな」
「まぁ、そう言わずに。これから君のお仲間も出るんだろう?」
 トリスを中心に、レッドの反対側に座っているのは……不機嫌に眉をひそめた中世的な顔立ちの一応青年。その顔がさらに迷惑そうに歪む。
「誰が仲間だ、本来であればこんな所にいるのだって吐き気がするってのに……」
「話を振られたく無いのなら通常観客席に行ったらどうですか」
「冗談言うな、僕に死ねと言っているようなものだぞ!」
 トリスを挟み憤慨をあらわにしてレッドに怒鳴る青年。それを頭上に苦笑いの解説。
「……これは、俺の仕事か。ええとこちら人間嫌いの人はハイドロウ・フェラリラ。ちょっと元来の性格と違うような気もするが、今回はSFの方の性格側面がより強い様だ。彼は魔導師、ではない。『魔法使い』だ。時代的に言うと俺が生まれるよりずっと昔の前の人で、先天的に魔法を取り扱える唯一の人間、その種族の祖にあたる人だな。……かのイン・テラール一族を排出した原因の……ようするに人間嫌い元祖でもある」
「濃い因縁ですよね」
「ほぅ、そのように未来の君が言うという事は、テラールサイドはまだ世界に迷惑をかけているのか」
「あなた、イン・テラール儲(シンジャ)の癖にそういう言い草するんですね」
 呆れたレッドにトリスは笑う。
「これが俺のキャラだからなぁ」
 キャラで片付けるなキャラで。
 ハイドロウは腕を組み、そっぽを向く。
「僕らはここに強制的に召喚されてて闘技場から出れないんだろ?都合、とかでさ。ダークの傍にいたかったのに……奴は下のに出る気満々だし。かといって出場するのはもっと嫌だし、控え室にいると余計な奴にちょっかい出されそうだし」
「出る気というか、出す気、だろうな」
「誰の気持ちを代弁しているんですかトリスさん……ふぅ、この僕がここまでツッコミフォロー役をやらなければならないとは。侮れません」
 話がかみ合っていないようで実は3人ちゃんと会話が成立している、魔法使い系は侮れない。
 ハイドロウは深いため息を漏らして司会・解説用のテーブルを差した。
「ここが一番マシなんだよ」
「それは、褒め言葉として受け取っていいのか?」
 あえて苦笑を浮かべてそのように受け答えるトリス。
 この懐の深さが青と紫の差だろうか、とレッドは思ってしまうが突っ込まずにはいられない。
「いや、間違いなくけなされていますから」
「自覚しているだけ多少はマシだね」
 あと、ウチの女男が解説に噛んでいない分マシさ、とハイドロウは小さくぼやいた。


※解説※
 本来司会・解説と言えばSF某のKFさんである。
 常に笑いを取ろうとし、その為に全てを命を懸けていじり倒すので、SFシリーズの人達からかなり恐れられている。


 *** *** ***


「早速ですが……僕らが楽しく腹の探り合いをしている間に第一試合が始まろうとしています」
「ご都合だが、間を埋めるのが俺達の仕事なのだから別に、問題ないだろう」
 相手が会話的に全く転ばないだけに、ちょっとだけやり辛いと思ってしまうレッドであった。
「……本日はトーナメント形式でもって試合が進められます。ブログ形式でいったいどれだけの行数書くつもりでいるんでしょうね」
 はい、後悔しています。
「……こういうのブログでするな、という自己に対するツッコミを入れたいのだろう」
「反省するならおとなしくテンプレートにしろと言いたいところではありますが……こんなろくでもないの格納してもねぇ?という気持ちもあるのではないでしょうか」
 ブログサイズには閲覧的に適切ではなかったので今こうやってテキスト版を作る羽目になりました。ごめんなさい。ただ、ブログは時に誤字脱字放置という緩い『文字撃ち』の為に運営していたものなので、その後手を加えて放置プレイの予定で書き殴ったシロモノながら……要望があってこちらにちゃんと持ってきた形です。
「かもしれん、というかスタンス的には全部同じようなものだと俺は思っていたが、違ったか」
「大体こんなのやってる場合じゃないだろうにね。明日の仕込みもうちょっとがんばれよって話」
「気が散ってしまったのでしょう。まったく、ダメな人です」

 ※解説※
 どうにもオフラインで出かける予定があって、その準備の合間に息抜き的にやらかしたものらしいですが、息抜きに撃ち殴る量じゃないですよ上の人。

 ……毒舌吐く人しか集まらないとフォローは入りません。
 レッドは再びメガネのブリッジを押し上げ、闘技場中央に進み出て来た二人に視線を落とす。
「第一試合は……最初からこのカードで問題ないんでしょうかねぇ」
「勝ち抜き戦だ、趣旨として一対一だったら最強は誰だ?を決めるだけだと聞いている。同レベルで戦わせる分には問題は無いと思うが……おそらく、本編でも戦っているカードは避けたというのが本音だろうな」
「ですよね」
 トリスのきっちりとした解説にレッド、それ以外にないですよねと相打ち。
「てゆーか、例のベータ版のリベンジがしたいんだろ」
「ですよね」
 うるさいよお前たち。お遊びなんだから文句言うな。


 現れたのは……対極的な二人である。
 片方は美しい彫像を思わせる、美しい男。
 背後から見ればある意味神々しくも見えるのだが……正面に立ってみてその美しい顔を見ようとすれば……落胆する事間違いない。
 不敵に笑うその顔はせっかくの美しい顔のバランスを台無しにし、それに引きずられるように格好のだらしなさが目につくようになってしまうだろう。
 口を開けばその速度はさらに加速する事請け合いである。口の悪さが外見をも悪くする事はありうる。
 傷一つ無い美しい素肌を遠慮なく露出し、それでもって最強の地位を体で表す男、バンクルド・ラニキス。

 対するはつややかな黒髪と黒い瞳を持つ、やや厚着でボタンが多い衣装をまとった青年。
 中途半端に長い髪は肩にかかり、前髪も長く顔の半分を隠している。しかし不思議と陰湿さ、むさくるしさは無い。
 毛皮がふんだんに使われた衣装も装飾だけではなく、機能性も失われてはいない。長い前髪の間から覗く瞳は大きく、意志の強さに溢れていた。
 優雅な動作で諸刃の剣を鞘から引き抜いたのは……ブレイズ・サンデイ。


「本来同レベル対決、となればバンクルド氏と当たるのはダァクさんになりますよね」
「でもそれじゃぁ本編と同じだからな。近々また戦うハメになる段取りだし」

 ※解説※
 エレメンタラティナ 63節の更新日が近かったようです

「本編実績から言うとダァクさんは、あのバンクルドさんに勝てた試しがないようですね」
「というか、奴は割とやられっぱなしだろう。ティナと会ってから」
 レッドは手元の資料にいったん目を落としてから……隣のトリスを窺う。
「……その片棒を貴方も担いでいるらしいとお聞きしましたが」
「ああ、そうだな。2回くらい叩きのめしてやったかもしれない」
 肘を突き両手を組んだ手で口元を隠して冷淡に言いきったトリスに……どうやら青魔導師殿はダァクが好きではない事がうかがえる。
 ダァク氏の話を振る時は気をつける事にしようと、レッドは苦笑いをうかべるのだった。


 白と黒、対極的な二人は右手片手に武器を構えたまま……中央で握手を交わした。ブレイズが手を差し出したのにバンクルドが答えた形だ。決してバンクルドから手を出した訳ではない。バンクルドに礼節を重んじる意識があるはずがないのだから当然である。
 握手を交わした後少しお互いに距離を取るように背後に下がった。


「ブレイズさんは右利きの剣士ですが、本職は領主のようです。が、今回は某ベータ版がベースとなっていますので本来の役職よりも戦闘特化しているのだそうですね。一体どんな技を使ってくるのでしょう。対しバンクルドさんはおおよその武器を操りしかも無敗、と聞き及んでおります。どちらかというと……ケンカ屋だとの事ですが。解説のトリスさん、親友として何か」
「親友って何だ」
「あ、全力否定ですか」
「バンクルドとは酒呑み友人だがなぁ、確かに付き合いも長すぎるけどなぁ……親友?それは無い」
「……きっぱりと言いましたね」
「俺にとって親友と呼べる者は我が兄弟と、親愛なる弟子と、愛国における故人だけだ。あとアンドレウル」
「……最後の付け足し的ですね」
 別に言い忘れた訳じゃない、とトリスは苦笑いを浮かべて弁解する。
「愛国における故人、に含めているのだが分かりにくいのであえて別で付け加えただけだ」


 そういう話している間に試合は、開始されている。
 互いが一歩ずつ踏み出せば獲物が届くだろう。比較的近い距離で素早く武器が構えられた。
 そして次の瞬間、お互い相手の様子を見る気配もなく一歩踏み出している。

 初撃、互いに力量を図っていた。それを両方が把握しバンクルドが頬の肉を引き上げ、ブレイズも珍しく好戦的に微笑んでこれに答える。
 返して二撃目で力を図る。互いに左から繰り出す中段の凪をぶつけ合いほぼ拮抗、すさまじい音を立てて互いの武器がはじかれ、勢いで半歩ずつ下がる。

 ここで互いに構えの差異が現れる。
 バンクルドが上段に構えたのに対しブレイスは下段、次にお互いが図るはスピードである。
 お互い遠慮なく心臓をめがけた斬撃が、ギリギリまで攻撃性を失おうとしない。限界は互いに同時に訪れ同時に、オフェンスからディフェンスへ切り替える。
 胸の中央で切り結んだ武器、速度もほぼ同等。
 しばらく鍔迫り合いをする中、命を取り合う死合い中にはなかなか出来るものではない、わずかな会話を交わす。
「やるねぇオタク、俺の時代に生きていないのが残念だ」
「実際会っても俺は、こんな試合は好んで受けないよ」
 バンクルドが悪態をついてブレイズの膝に向けて蹴りを出す。その動きを察知してブレイズは剣を押しやって背後に跳んだ。
 距離が今一番に開く。
「強い癖に戦わずに剣を鞘に収めているだけじゃ、鋼が腐るぜ?」
「戦いで答えるのは最後の手段だ……俺はそう思っている。それに俺が鞘に収めるのは……」
 ブレイズの顔の陰影が濃くなった。
 中段やや背後に構えるブレイズの剣が夕焼け色に染まり、そのまま白く眩く光を纏う。
「名前の通り……火炎だ。消え入る事はあっても腐る事は無い」
「け、変な理屈だ。よっしゃ、じゃぁ俺も遠慮なく使わせてもらおうじゃねぇか」
 そう言ってバンクルドは手の中にあった剣をあてずっぽうな方向に投げてしまった。
 壁に、剣が突き刺さったのに会場は少しのどよめきで揺れる。替わりに……バンクルドは背中に腕を回す。
 背負っていた武器、西方位剣シリウスの封印を解いて前に構える。
 先に構えていた武器よりも若干尺が短く、比較的長身のバンクルドとつり合いが取れていない雰囲気がある。それでも不思議な存在感のある剣である。


「……あれ、今手放しているはずなんだが」
 トリスの突っ込みにレッドはにこやかに答えた。
「今回に向けての『ご都合』ですよ。大体、後で出てくるダァクさんもばっちりディフレクト持ってますし」

 ※解説※
 本来の話がシリアス長編である事もあり、エレメンタラティナの登場人物はずっと同じ武器を持っているとは限らない。


「ふむ、そんなものか」
 トリスは若干つまらなそうに呟いた。


 会場の者の目を焼きつくす白い光。
 シリウスの放つ閃光と、ブレイズの太陽さえも焼く熱の剣が交差し……


「……見えないよ」
「はい、サングラス」
 ハイドロウに向けてレッドはシェイディ地竜族用の黒いレンズの飾りメガネを手渡した。すでにトリスは掛けている。魔法使いなんだから魔法使えよと突っ込みを入れたい所だが、魔法はどんな使い手にとってもノーコストではない。
 それに、光を色ガラスで偏光するのだって立派な『魔法』みたいなものである。


「うぁっちぃ!」
 下品な声が響いた。
 鈴が鳴るようなきれいな音を立てたのはバンクルドが取り落としたシリウス剣である。
 閃光が少しずつおさまり、光の起動ですべてを切り裂く剣はその本性を静かに閉ざす。
 感嘆と、むしろ驚愕のざわめきが場を揺らしている。
 闘技場はブレイズが武器を構える方向に向けて大きく、歪んで消し飛んでいるではないか。
 観覧席にも熱波は届いたようで一部観客の頭がアフロ、およびパンチパーマになっているのが見受けられる。
 さらに……先ほどバンクルドが投げ捨てた剣が溶けて壁から垂れている。
 それは今一瞬で翳された熱量がいかほどのものかという事を物語っていた。

 すなわち、ブレイズが魔法剣を繰り出してきた時点でフツーの剣では受けられない事をバンクルドは悟って光の剣を出してきた訳だが、その半端ない熱量をさしものシリウスもシャットアウトは出来なかったらしい。
 熱伝導によりバンクルドは右掌に受けた思いもよらないダメージに剣を取り落としてしまった、という状況なのだ。
「ちっ、魔法アリはこれだから嫌なんだよなぁ……俺は純粋に斬り合いたいんだっつの……」


「負け惜しみ言ってるな」
「トリスさん、なんか嬉しそうですね」
「いい気味だ、と思うこの気持を否定はしない」
 割とも何もこの人、伝承以上に意地悪い上に性格悪いのかもしれない……と、レッドは密かにそんな感想を胸に秘めるのだった。
 密かに伝わる伝承……決して一般的ではない……では、彼らは比較的仲が良いように伝わっているのだが。
 むしろケンカする程なんとやら、というものだろうか。お互い罵りあえるほど仲良し、という事もある。


 剣を手放してしまったバンクルドはそこで、素直に負けを認めている。それを察しブレイズは剣を納めた。
 拾い上げて食い下がってもいいだろうに、潔い態度にブレイズはやや感銘さえ受けている。
 ……元来、ブレイズは戦いを好んではいない。ありがたい事でもあった。
「魔法系は使ってはいけない、とは聞いていないからね」
「というか、お前が魔法を使えるというのは物語の都合上、合っていないと思うんだが」
 バンクルドはため息を漏らして司会・解説席をちらりと睨む。
 司会・解説・特別ゲストはあからさまに顔をそらし知らんぷりをした。
「それはほら、ベータ版の仕様だから」
 さわやかな笑みで剣を納めて柄から手を放し、ブレイズは右手をバンクルドに差し出す。
「しゃーねぇな、まぁちったぁ楽しめたからあとは本編始まるの待つわ」
 バンクルドはそれをやや乱暴に、強く握り返してやった。
 苦笑いを浮かべ……ブレイズは横目で彼の背後で戦いを見ていた人たちに視線を投げる。
「……袖でダァクさんがひきつった笑み浮かべてるけど……」


 *** *** ***


「という事で、なかなか波乱な幕開けとなりましたね。というか初戦に最強カード持ってくるのはどうかとも思いますが……。強いだけに勝敗もあっさり、という事なんでしょうかね。まぁいいでしょう。第一試合はブレイズさんの勝ち上がりになります」
「ねぇ、バンクルドって人は作中『無敗』って話だけどもし、ブレイズが勝っちゃったら本編の肩書的にどうなるの?」
 ハイドロウの問いに解説と司会は一瞬押し黙る。
「魔法使い相手には喧嘩売らないからな、あいつ。基本的には斬り合い目的だし……まぁ、酒場で発生する取っ組み合い的なケンカとかもやるけど……そういうのは一方的にデストロイで終わるから強いには強いんだが」
「それはそれは。割と卑劣なんですね」
「魔法使いは相手にしても面白くない、とか何とか言うな」
「へぇえええ」
「聞こえてんぞ貴様ら!吠えるなこの◎◆野郎ども、&#◇ぞ?!」
 初戦からハデに壊されてしまった舞台の修理がせかせかと始まる中、袖に去る前に司会・解説席に汚い言葉で怒鳴るバンクルドであるが……。
「どっちが吠えているやら」
「流石は方位神の自称犬、遠吠えは実に様になっているよ」
「ははは……これはでは俺もフォローのしようがない。困った困った。大げさな限定的な肩書であるという事情がここでバレてしまったなぁバンクルド。まぁ、ダァクに足を掬われない様に気をつけるんだな。一応応援しているぞ」
 手痛く反撃の言葉が返ってきたのに、言い返せずにバンクルドの顔が苦く、忌々しいという様子に歪んだ。
「くそッ、ヒマつぶしにこんなの出るんじゃなかった……」


「気を取り直しまして……次の対戦カードを見てみましょう。やや、ここからが本番という感じでしょうか」
「そうだな、次は……ウチの剣士と君の所の剣士か」
 トリスが対戦スケジュールを見て小さく頷く。
「心配ですねぇ、主人公のくせに初戦敗退の気配が濃厚で僕は少し心配です。一斉にブーイングを受けてこの場を盛り下げてしまったりしないだろうか……と。精一杯あがいていただきたいと思います。元剣闘士としてこの場はしっかり盛り上げて舞台を去っていただきたいですね」
 やや早口に悪口らしきものを言いきったレッド。
「……仲間なのだろう?少しは良い方向に応援してやったらどうなんだ……」
 何やら元から片方の負けを決めつけているような司会の個人的な見解に、トリスは苦笑いをこぼす。
 こういう方向には疎いらしい、とハイドロウは笑いながら囁いた。
「分かってないなトリス、それは俗に言うツ……」
「対するダァクさんも準主人公としての意地もあるでしょう。実力の差があるとしても無用な手加減はしないと僕は思うのです」
 しかしそれに被せて強引にかき消そうとする司会。
「……手加減という意味で言うとダァクのそれは職人芸の域、と俺は思っているがね」
 少しおもしろくなさそうにトリスは答えた。
「じゃ、ウチの人柱勇者が万が一勝ってもあまり勝利は誇れないという事ですね」
「……というか、そんなに実力の差があるだろうか?うーん、君の話を信じていいものか。資料を見る限り彼も頑張っていると思うんだけどな。そうだ、例の反則技とか使ったら割と強いんじゃないか?」
「本人が使いたがらないと思うのですが。というか、それがアリだったら今回のトーナメント、ギルがラインナップされてもおかしくないんですけどね」
 レッドの世界の剣士代表が抱えている『裏ワザ』が如何なるものか、本人にとってどういうものなのかよく分かっているレッドはそのように話を躱して、今回登場しないトンデモなキャラクターの名前を出す。
 その世界でどうにも『破壊魔王』の肩書であると資料から読み取ったハイドロウの目が怪しく光る。
「てか、初戦からしてアレだろ?観客巻き込んで町蒸発させていいならいいんじゃないのそれで?僕は全然かまわないよ。むしろ、それでいいなら僕も率先してこのろくでもない遊びに出てもいいよ」
 暗黒面全開でハイドロウは、このエズの町全破壊も視野に入れて遠い目を向かい側スタンドに向けていた。

 そうは見えないのだが、実は破壊の化身である彼の恍惚の笑みを横目で見ながら魔導師は囁き合う。

「一応、セーフティはついたんですよねぇ」
 レッド『破壊者』の先祖を横目で見ながらぼやく。
「そうか、それは喜ばしい事だ」
 破壊者の系譜をよく知るトリスは、未来……やっぱりテラール一族は何かしらトラブルを残しているらしいと察して小さくため息を漏らすのだった。


 *** 続く ***
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