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番外編 EX EDITION
■番外編EX『戦いを捧げろ!』#2/10
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N&SinMFC シリーズ番外編『戦いを捧げろ!』#2/10
※同世界設定同士の物語登場人物による、
俗に言うパラレルの様なそうでもないような番外編です やや長め
初戦結果に機嫌の悪いバンクルドの殺気にあてられ、ややヤル気を失ったダァク・シン・バメルダと……なぜだか不機嫌な様子の元剣闘士、ヤト・ガザミが修復の終わった舞台に現れている。
「なぁ、アンタ」
「……なんだ」
やる気のないダァクに、ヤトは腕を組んで少し不機嫌に尋ねた。
「一応事前に一通り、相手の傾向とか聞いたけどさ。……もちろん手加減しないでヤるんだろうな?」
「お、そういうところこだわりはあるわけね、一応」
ダァクも色々聞いている。
闘う相手、ヤト・ガザミというのは元剣闘士らしいのだがそれを卒業したばっかりに戦いに向ける執着は相当に失われており、強いには強いのだが積極性に欠けるとの事だった。
最終的には例え相手が魔王でも誰も傷つけたくない、まで陥って弱体化の一途をたどっている……と、紫色のマントを纏う魔導師から聞いている。
闘えるのかそいつ?と疑問に思っていたが、顔を合わせるに一応戦う気はある様に見受けられる。
「中途半端な戦いをささげるつもりはねぇんだよ……手加減されて嬉しい腰抜けと一緒にされたくねぇだけだ」
その会話をちゃっかりしっかり魔法『聞き耳』で聞いている司会・解説・特別ゲスト。
歓声がすさまじいので、割と舞台に立つ二人の会話は聞き取りにくい。ましてや今、次の試合が始まる前で会場は沸き立っているので猶更だ。
「いやさー、でもこの場合俺が勝っちゃうと、あのおにーさんの不機嫌が増す訳でしょ?……やる気出ないのよねぇ」
ダァクが言っているお兄さんとはバンクルドの事である。
「勝敗にこだわりは無いわけか?なら棄権しろ、邪魔だ、」
あ、やはり戦わない方向性に持ってこうとしてる……と、紫魔導師の言っていた事は確かだとダァクは内心苦笑を洩らした。
はたして彼は何の為に剣を握り、何の為に戦うのだろう。戦うのが嫌なら棄権すべきはそちらの方だとダァクは思うもそれは口には出さない。
そうしない彼の行動から、彼の心理は読み解ける。
「……たぶん、それだとお前さんの評価上がらないと思うんだけど」
「…………かもしれん」
この子、頭悪い子だわ、とダァクは内心思いつつそれは顔に出さないようにしつつ、武器の封を解きながら提案した。
「俺も色々聞いてるんだけど、お前さんは一応『裏ワザ』持ちなんでしょ?」
彼はなるべく楽をして名声を得たいらしい。いや、多くは皆そうだろうともダァクは思う。
「言っておくがそれは絶対に出さない、使わない」
即答され、やっぱりこの子頭悪いわと納得してしまうダァク。
でも、扱いやすくて助かるかもなと笑った。
彼は詭弁魔導師トリスと殺り合った経験があるだけあって……口も上手いし頭も回るんである。
「うん、じゃぁ俺も裏ワザは使わない」
腰の武器を抜いて、袖に控えているクリスに向け、投げ渡してしまった。
見たところ……ダァクは武器を三つもっているのをヤトは確認している。そのうちの一本を舞台の外に放り投げた訳だ。
「それは、どういう意味だ?」
「ようするに、ディフレクトは使わんという話。大体アレは人に向けるべき武器じゃないしねぇ……てか、同時に持っているのは物語的には在り得ないんだけど。俺はお前さんとは、黒剣と竜の牙で戦うわ」
獲物の確認、とヤトは把握して腰の武器を取り鞘ごと差し出すように見せる。
「サガラの剣と、あと矛盾の篭手を使う」
よく切れる名剣と、使用者の意図で槍と盾に形を変える篭手をヤトは差し出した。
「了解、じゃ、始めましょ」
司会・解説に向けて笑い顔で振り返り、ちょろいもんだというのを顔だけで伝えてきているダァク。
しっかり手加減ルールを通してしまった件にレッドは、関心すると同時に自分のリーダーの低レベル加減に溜息も出てしまう。
「やぁ、文武両道とは……ああいうのを言うのでしょうねぇ……」
「相手するに面倒だぞああいう輩は。実に小賢しい」
微笑んでいるが明らかに、その笑みには反対の感情が見え隠れするトリス、ハイドロウはめんどくさそうに肩肘をついて一応フォロー。
「ボケ倒されてたり、極端に頭悪かったりして会話に疲れるよりはいいんじゃない?」
いや、それはフォローだろうか……と、レッドは続ける言葉に困って結局茶を濁す。
「……みなさん、それぞれに苦労があるわけですね」
気を取り直して、とレッドは互いに武器を構えた二人を見比べて仕事に戻った。
「お互い魔法、および裏ワザ的なものは一切使わないという約束が成立したようです。これは純粋な戦いが期待できますね」
「バンクルドがひねているだろうな」
「……トリスさん、ちゃんと仕事してくださいよ」
「ん、ああ……すまん。そうだな……ヤト君がどこまでやるのか、というのを見どころにすればいいのかな?」
「そもそもあの二人は、そんなに実力の差があるのか?」
「それは俺も気になる」
正直闘わせてみないと分からない、そんな所であるようだ。
「では、見てみましょう」
*** *** ***
立ち上がりは初戦と似ている。最初から本気で斬り合わず、多少の小手調べは入るものであるらしい。
鋭い切っ先は空気さえも切り裂くサガラの剣を、両手剣の刀身を削り過ぎたような無気味な形の黒い剣が、切っ先の動作で捌く。
その素早く、さりげない動作は注視していなければ把握出来ないだろう。
諸刃の片手剣を型通りに繰り出すヤトに対し、ダァクは巨大な細い剣を突き刺しに特化した形で構えている。レイピアとするには剣が長く、大きすぎるのだ。ダァクの武器は異様に感じる事だろう。
剣の交差するベクトルが異なる。突きを主体としないヤトの左右からの攻撃を、長いリーチで突きこんでくる黒い剣の切っ先が巧妙に軌道をずらして捌いている。
切れる剣も相手に打ち込めないのであれば意味がない。そもそもリーチの差がありすぎる事が問題であると判断し、ヤトは攻撃手段を変化させた。
槍と盾、どちらかに任意で変える事が出来る左手の篭手で槍を呼び出し、器用にも突きによる攻撃を加え始めた。
両利きであるだけではここまで器用に、属性の違う武器を操る事は出来ないだろう。
槍でもって黒剣の突き攻撃を巧妙に誘導し、隙あらば一歩踏み出し剣を振りかぶってくる。
この異常な器用さはバンクルドに通じるものがあるな、と思いながら……接近を許して迫る一撃をダァクは、左手で背後から引き抜いた短剣竜の牙で受け止めた。
「ちぃッ!」
捉えたと思っていたのだろう、相手の悪態にダァクは軽々と相手の剣を力任せに振り払う。
思いのほか相手の力が強い事にヤトは警戒し、一旦距離を置いた。
「悪かないね、バンクルドが相手だったらきっと喜んだと思うわよ」
「見下してくれるじゃねぇかッ!」
ヤトは渾身の力で床を蹴りあげてダァクに迫る。
読まれている軌道に、突き出された細長い剣をギリギリで避ける。接近される事を把握しているように次に突き出されていた短剣を、盾にした篭手で流した。
右で流していた剣を横から振りかざす。軌道修正に入ってくる黒い剣と擦れ合い火花が散る。
この場合突き込んで来ている方が力の入る方向性から言って不利だ、黒剣の軌道に導かれるようにサガラの剣が迫る……が、ダァクは素早く黒剣の角度をわずかに変化させて、自分の近くまで迫ってきていた刃をここぞというところで絡め取った。
武器の重点を十二分に把握している、冷静な者が出来る芸当である。
武器ごと右手をひねられる感覚に危険を感じてヤトは右足でブレーキ。右腕に掛ろうとする力、および殺気を感じて迷いなく武器を手放す。
サガラの剣が飛んだ、右手を急いでひっこめたヤトはその隙に背後に下がっている。
「……やりづれぇ」
その理由をようやく把握し、ヤトは苦笑を浮かべた。
なぜ戦いにくいのか、今ようやくその正体を見極めて……今後の戦い方を考える。
同時になぜ目の前の大して歳の変わらない、どっちかというと老け顔の青年が類稀なる強者の称号を隠し持っているのか合点がいった。
戦法を変えなければ自分に勝利は無い、それを同時にも把握した。
この男、つまりダァクには……戦うに時に普通は発せられるべき殺気が一切無い。
戦いにここまで無関心な剣とヤトは戦った事がなかった。
舞台が何であれ、振りかざされる武器の目的は相手を打ち負かす事だ。だからこそあらゆる一撃には攻撃性がある。ようするに、相手を沈めようとする意図、すなわち殺気。
その度合は様々ではあるが、ヤトはこの殺気を何より敏感に察して戦っている。その種明かしはした覚えは無いが、勘のよい者はその事実に気が付いているだろう。
バレてしまっても問題は無かった。
そも、戦うに殺気を発しない者などいないし、殺気を殺して武器を殺す事がどれだけ難しいかという事はヤト自身がよく把握している。
それなのに今戦っているこの男、ダァク・S・バメルダの一挙一動には一切の殺気が無い。
今、近い過去を注意深くヤトは思い出して……相手からの攻撃がほとんど無かった事を確認して視線を敵に向け直す。
全てが威嚇と防御的な動作だ、相手の攻撃を引き出さなければ。
しかし、どうするか。
ヤトが攻撃に出ない為、静かに沈黙して構えて動作の止まる二人に、会場観客も何が起こっているのかと静まり返っている。
「どうやら梃子摺っているようですね……どう思われますかトリスさん」
「そうだな、典型的なダァクの戦い方にハメられたのをどうやら、ヤト君も気がついた……と、いった所だろう」
まじめな解説になるのは、コメディとはいえ戦いだけはガチである事に向けての忖度である。
トリスはダァクと戦った事があるのだから、ダァクがどういう戦いをするのかはよく知っている。
弱点すらも把握しているのだ。
睨みあいを破ったのはダァクだ。
「これでじゃじゃ馬の手綱握ってるもんでね、我慢比べは得意よ?」
このまま永遠に睨みあっていても何も焦れたりしないという意味と受取り、ヤトは小さく舌を鳴らした。仕方がなさそうに構えを解く。肩の力を抜き、深くため息をついた。
何をするつもりなのか。どよめきが静かに巻き起こる中……相手が攻撃をしてこない、と悟ったヤトは吹き飛ばされていた武器を拾いに動いたのだ。
完全に敵に向けた警戒を解いた動作にダァクは苦笑いして同じく構えを解いた。
「キモ座ってんなぁ、お前さんみたいなのと戦ったの俺、初めてかも」
「俺だって、ここまでふざけた相手は初めてだよ」
剣を拾ってきて元の場所に戻り、再び構える……のかと思ったが、そうではなく。右手に武器をぶら下げて左手の槍は篭手に戻した状態でラフに構え、ダァクと対峙するヤト。
そしてそのまま、静かに前に踏み出していく。
攻撃させる、それを何より優先した為の最大の挑発行為だ。
あっという間にヤトはダァクの攻撃範囲に踏み込み、そこで一切歩調を緩めずもう一歩踏み入れる。
対するダァクは少しの迷いを伺わせて口の端を引き上げる。
挑発に乗ってやるべきか、もう少し焦らすべきか。
相手の歩みの分背後に下がって、今少し相手との我慢比べもしてみたい気持ちもあったダァクだったが……それでも自身の描く結果に自信があったのだろう。
ヤトの無防備な接近を許す。
黒剣を構えずダァクは余裕の笑みでこれを受け入れた。
腕が届く距離。もういいだろう。
ダァクの左腕が閃いたのにヤトは、まったく対応が出来ない。
いわく、その動作に殺気が無い。だからだろう。
短剣、竜の牙がみぞおちに食い込んでいるのに遅れて気が付くヤト。
息が出来なくなった事にようやく状況を把握したように顔をこわばらせる。
「……ひでぇ、」
攻撃にも殺気が無いのかよ……
ここまで精神と肉体が乖離した奴、いるんだな……と、小さく呟いてヤトは崩れ落ちるのだった。
「…………」
司会・解説・特別ゲストは沈黙を送った後に顔を見合わせる。
「……自爆?」
「はたから見ると間違いなく、自爆ですね」
「どうフォローしていいのやら。まぁ、彼なりに頑張ったのだと俺は思う。あれはお互い戦ってみないとどうしてああいう事になったのか、というのは理解されないだろうな」
「出来うる最高のフォローです、ありがとうございます」
「いやいや、……とすると、あいつかなりイイ所まで行ってしまうんではないのか……バンクルド先に落ちたし……」
トリスは口元に手をやって小さくぼやいた。
「ん?何か言いましたか?」
「いや、独り言だ」
*** *** ***
「……さて、早くも僕らの主人公が無様にも自爆で敗れ去るという波乱の第二戦が終了しました」
「君のその様子だと、あの子はきっとマゾなんだろうね」
ハイドロウの突っ込みをレッドは華麗にスルー。
「次は武器無し対戦です、拳と拳の語り合い……ぶっちゃけて作者が一番やりたかったとウワサのテリーさんとダークさんの対戦です。ああ、ちなみに似ている名前なのですでに混同されている方もいらっしゃったのかもしれませんが。ダァクさんとダークさんは別人です」
レッドは対戦カードの写真を示して説明。
ダァク・シン・バメルダは茶髪で軽薄そうな老け顔の東方人。
対しダークは色素の薄い北方人。顔の表情が無いに等しい巨体の持ち主。
名前のつけられた経歴が同じである為、芸のない事に同じような名前になっている。
「だったら別の名前でエントリーすればいいだろうに。ダァクが本名の方で、とか」
「ダークは名前とか無頓着だからねぇ。ようするに、セーマだよ。ゲンブでもいい」
ハイドロウの言葉にレッドは極秘データをめくりながら囁いた。
「……噂では本業の方でとんでもない化け物っぷりを発揮している……と、噂のダークさんですが。動きが人間じゃないとか、性癖が色々な意味でレッドカードだとか、その上無敵の盾能力まで発動したとか何とか」
「や、もとから怪物だけどね。僕と同類だし」
さっぱり言いきるハイドロウ。
「属性的には……ウチの人柱リーダーの地雷源大量保有みたいな人ですよね……。そのダークさんと対するのはウチの筋肉バ……ゴホン、脳まで筋肉ケンカバカ」
「いい直す事かそれは」
トリス、小さく突っ込み。
「テリオス・ウィン事テリーさんですが。大丈夫でしょうか?これもかなり実力の差が開いている対戦カードなのでは?」
レッドの問いに解説のトリスは腕を組み、話しだす前に小さくぼやく
「……アルシャとか出てたらおもしろかったろうなぁ」
それをしっかり聞きとめたレッド。
「いいじゃないですか、クリスさん出てますよ。次です」
「何を言っている、彼らは別人だろう」
「あ、そこは貫いておくのですね」
トリスは、レッドが振ってきた話は無視する。
クリスとアルシャの関係性につきましては超長いエレメンタラティナを頑張って読んでください。
「……そうだ、肉弾戦が書きたいという都合はよくわからないが、力勝負という点で言うとダークに拮抗するのはクリスだろう。確かに不安ではある」
「いやでもさ、ウチのはパワーとタフさだけしかないから」
「何言っています。ウチのだってそうです」
レッド、爽やかにハイドロウに応対する。
「なるほど、そういう対戦カードな訳だ」
ちなみにクリスもパワーとタフさでは引けを取らないがな、とトリスは付け加えておいた上で……余計なひと言をぼやく。
「ただし、クリスは脳内まで筋肉じゃないけど」
「ようするに、そこが対戦を外された要因かと」
3回戦目選手の一人、テリーはかなり立派な体躯を持っていると言えるだろう。
種族的有意な特徴を一切持たない、いわばバンクルドと同じく純粋な西方人だ……外見は。
鍛え抜かれた筋肉を纏う体は自然と大きくなるものなのだろう。ヤトも背はそれなりに高い方であるにも関わらずテリーはそれより頭一つ分高い。完全な逆三角形体格。魅せるものではなく、使うものとしての筋肉の持ち主である。
全体的に見れば均等で美しいとは言い難い、しかし間違いなく機能美を感じる事ができる身体。
対するダークがまさしく、のっそりと表現するにふさわしい足取りで袖から姿をあらわにする。
テリーのそれを凌駕する巨体、丸められた背中を伸ばした時、果たしてどれだけの身長差が生まれるのだろう。肌の色、髪の色。色素の薄い西方人とはまた違った白子であるダークが纏うのは金ではなく鈍く光る銀の色。
「よぅ、木偶の坊」
早速の挑発は……戦いに滾るテリーの悪癖だ。
普段冷静である分軽率とも感じられるその言葉に、ダークは無表情の顔をゆっくり向ける。
「言っておくが俺は、俊いぜ?」
無感情な顔がテリーの挑発を受け止める。何も感じていないのではない。感じたとしても、それをどのように表現すればいいのかダークは分からないのだ。
「何やらさっそくガン飛ばし合ってますねぇ……」
「資料によるとこの一戦だけは完全にリベンジらしいな。一度戦っているらしいけど、その詳細が乗ってないな。結果どうなったんだ?」
資料をテーブルに投げてトリスがレッドをうかがう。
「ああ、ベータ版の話ですね。加筆版が公開中ですが、結局途中で邪魔が入って戦いが中断したようですが……ちゃんと途中までは間サシ勝負していたようですよ。ある意味決着つかなくてもテリーさんが満足するくらい」
「……戦いバ……うん、俺もいい直しておこう。脳まで筋肉戦いバカの考えは俺にはわからないな。何が満足なのだろう?」
「全くです、僕もさっぱりわかりません」
「テリーとやらがその脳まで筋肉のケンカ戦いバカなのは分かったけど、ダークもひとくくりにしないでよ」
「おや、違うんですか?」
「……違うと思うけどなぁ……彼はそもそも暴力沙汰嫌いだし」
レッドはメガネのブリッジを押し上げる。
「某月を見るたび思い出せ~な人の矛盾っぽいですねぇ。暴力キャラの癖に暴力は嫌い、ですか」
「……なんだいそれ?」
「ご存じないとは思いますが八神なんたらって人が某……にいましてね、この方暴走癖とか持っててものすごい暴言吐きながら攻撃してくるんですよ。くたばれ、とか、泣け、叫べ、そして死ねとか。その割に『暴力は嫌い』なぁんて肩書になってるんですよね」
※解説※
現実ネタを引っ張ってくるのはレッドだけの特権である。リアルに在る格闘ゲーム、KOFシリーズ参照
それでもどうやらハイドロウはダークの肩を持ちたいらしい。
「ようするに、その人も好きで暴力をふるっている訳じゃないって事じゃないの?」
「……なるほど全部血の所為……っと。実に古典的な言い訳です」
◆◆◆◆ その2に続く ◆◆◆◆
※解説※
ここまでが一回のブログに記載されていた内容です。
……ブログの長さじゃないとか突っ込みは聞いていない
*** *** ***
「少し間が開きましたね。その間にお手紙が来ております」
前回から10日ぶりだという前振りからさらりと始める紫魔導のレッド。何しろ今回彼は解説ではなくこの『お遊び ぶっちゃけ 都合全部忘れてください勝ちぬきトーナメントだよ闘技大会inエズ』での司会である。
物語を始めるきっかけ作りは重要だ。
「ほぅ、一体どんなモノ好きから」
何気に酷い事を言うのは、人がよさそうな外見とは裏腹にものすごい毒舌家でものすごい詭弁家の天衣青魔導トリス。
「あー……それがですね」
言葉を濁すレッドに、いつの間にやら特別ゲスト席にすっかり定着してしまった暴走・凶悪・魔法使いの先祖、ハイドロウが頬杖をつきながらぼやく。
「どうせあれだろ、Rなんたらっていう作者からの懺悔の手紙だろ」
「あー、ありうる」
トリス、そんな事だろう事は把握していたように適当に流した。
「散々な言われようをしておりますよRさん。はい、その通り。仕方がないのでお読みしましょう」
「仕方がないなら読まなくてもいいんじゃないのか?」
「……それもそうです。じゃ、読まずに進めましょうか」
あっさり手に持つ手紙を伏せてしまうレッド。
「いいの?」
「懺悔の気持ちがあったという事だけ汲んででいただければいいと思います。言い訳は見苦しいですしね」
すみません、その後もっと放置するハメになったりしました。
*** *** ***
というわけで、とレッドは改めてテーブルの上で手を組んだ。
「早速状況の解説からお願いいたしますトリスさん」
「ああ、俺の仕事だったな。……今、円型闘技場の中央には脳まで筋肉戦いバカが二人にらみ合っている訳だが……」
「ちょっと待って!だから、ダークをそれに加えないでって言っただろ!」
ハイドロウの静止にトリスは彼の方に顔を少し向けたのち……少し咳ばらい。
「そうだな、脳まで筋肉でできていて戦う事しか頭にない筋肉バカでは一体誰の事なのか分からないだろう。不本意ではあるが」
「……いつの間に不本意になったんですか」
レッドの小さなツッコミをいつもの苦笑いで躱してトリスはちゃんとした解説を始めるのだった。
「まず、金髪で体格の方が厳つい西方人がテリー君。本名は……一応本編では地雷という事なので今回は織り交ぜない事にしよう。レッド君の所の第二の肉の壁だそうです」
「いやま、第一肉の壁に全部ダメージ行っててあまり機能してませんが」
二人の魔導師のやりとりにハイドロウはあきれる。
「聞かれていないのをいい事にさんざん言うんだから。言って置くけど、その調子でダークの事紹介したら僕、キレるよ?」
「はっはっは、そこまではっきり依存していると分かりやすいのはいい事だ」
ハイドロウにとってダークは数少ない『同類』、怪物としての仲間だ。唯一心を許せる存在なのである。それゆえにかなり贔屓しているし悪く言われるのが許せないらしい。
破壊神イン・テラールの先祖であろうと物おじしない、これが青魔導の実力かと関心するレッドである。
「さて、もう片方は先ほどからハイド君がやきもきしているとおり、全体的に白っぽい巨体のダーク君だ。大昔に廃れた種族の一つだが一応分類すれば北方人。北方人は骨格が大きく背が高いという第一特徴があり、のちに巨人族などと言われる場合もあるという。テリー君もかなり背は高いが、ダークはそれをさらに超えて大きいようだが……少々猫背なのは、巨体である為に自身の重さを支え切るに……」
「ちょっと止まりましょう。……確かに解説はお願いいたしましたが、そこまできっちりこのコメディ駄文に対し解説する必要はあるのか、と」
「ん?俺にそーいうの語らせるために俺を解説にしたんじゃないのか?」
「そもそも、魔導師に進行と解説を頼む時点で色々間違っているんだよ」
レッドとトリスは顔を見合わせる。
「そうですね」
「全くだ、笑いを取りたいなら例のKFさんでも呼べばいいのにな」
「……それは止めて、ほんと、シャレにならなくなるから……」
割とそこら辺は否定はしない、魔導師達である。
そのころ下では、色々余計な事をくっちゃべっているらしい(声は聞こえてない)司会・解説・特別ゲストをテリーが睨んで悪態をついていた。
「どうでもいいからさっさと始めろよ」
そう言った途端3人がこちらを向いたのを見て、どうやら会話を聞かれている事をちゃんと察したテリーである。相変わらず悪趣味だ、とは言葉に出さずに考えるだけにしておいた。
「さ、お待たせしているようですので始めましょう。武器を特に装備しない、むしろ武器は己の体のみという肉弾戦格闘技戦、開始です」
*** 続く ***
※同世界設定同士の物語登場人物による、
俗に言うパラレルの様なそうでもないような番外編です やや長め
初戦結果に機嫌の悪いバンクルドの殺気にあてられ、ややヤル気を失ったダァク・シン・バメルダと……なぜだか不機嫌な様子の元剣闘士、ヤト・ガザミが修復の終わった舞台に現れている。
「なぁ、アンタ」
「……なんだ」
やる気のないダァクに、ヤトは腕を組んで少し不機嫌に尋ねた。
「一応事前に一通り、相手の傾向とか聞いたけどさ。……もちろん手加減しないでヤるんだろうな?」
「お、そういうところこだわりはあるわけね、一応」
ダァクも色々聞いている。
闘う相手、ヤト・ガザミというのは元剣闘士らしいのだがそれを卒業したばっかりに戦いに向ける執着は相当に失われており、強いには強いのだが積極性に欠けるとの事だった。
最終的には例え相手が魔王でも誰も傷つけたくない、まで陥って弱体化の一途をたどっている……と、紫色のマントを纏う魔導師から聞いている。
闘えるのかそいつ?と疑問に思っていたが、顔を合わせるに一応戦う気はある様に見受けられる。
「中途半端な戦いをささげるつもりはねぇんだよ……手加減されて嬉しい腰抜けと一緒にされたくねぇだけだ」
その会話をちゃっかりしっかり魔法『聞き耳』で聞いている司会・解説・特別ゲスト。
歓声がすさまじいので、割と舞台に立つ二人の会話は聞き取りにくい。ましてや今、次の試合が始まる前で会場は沸き立っているので猶更だ。
「いやさー、でもこの場合俺が勝っちゃうと、あのおにーさんの不機嫌が増す訳でしょ?……やる気出ないのよねぇ」
ダァクが言っているお兄さんとはバンクルドの事である。
「勝敗にこだわりは無いわけか?なら棄権しろ、邪魔だ、」
あ、やはり戦わない方向性に持ってこうとしてる……と、紫魔導師の言っていた事は確かだとダァクは内心苦笑を洩らした。
はたして彼は何の為に剣を握り、何の為に戦うのだろう。戦うのが嫌なら棄権すべきはそちらの方だとダァクは思うもそれは口には出さない。
そうしない彼の行動から、彼の心理は読み解ける。
「……たぶん、それだとお前さんの評価上がらないと思うんだけど」
「…………かもしれん」
この子、頭悪い子だわ、とダァクは内心思いつつそれは顔に出さないようにしつつ、武器の封を解きながら提案した。
「俺も色々聞いてるんだけど、お前さんは一応『裏ワザ』持ちなんでしょ?」
彼はなるべく楽をして名声を得たいらしい。いや、多くは皆そうだろうともダァクは思う。
「言っておくがそれは絶対に出さない、使わない」
即答され、やっぱりこの子頭悪いわと納得してしまうダァク。
でも、扱いやすくて助かるかもなと笑った。
彼は詭弁魔導師トリスと殺り合った経験があるだけあって……口も上手いし頭も回るんである。
「うん、じゃぁ俺も裏ワザは使わない」
腰の武器を抜いて、袖に控えているクリスに向け、投げ渡してしまった。
見たところ……ダァクは武器を三つもっているのをヤトは確認している。そのうちの一本を舞台の外に放り投げた訳だ。
「それは、どういう意味だ?」
「ようするに、ディフレクトは使わんという話。大体アレは人に向けるべき武器じゃないしねぇ……てか、同時に持っているのは物語的には在り得ないんだけど。俺はお前さんとは、黒剣と竜の牙で戦うわ」
獲物の確認、とヤトは把握して腰の武器を取り鞘ごと差し出すように見せる。
「サガラの剣と、あと矛盾の篭手を使う」
よく切れる名剣と、使用者の意図で槍と盾に形を変える篭手をヤトは差し出した。
「了解、じゃ、始めましょ」
司会・解説に向けて笑い顔で振り返り、ちょろいもんだというのを顔だけで伝えてきているダァク。
しっかり手加減ルールを通してしまった件にレッドは、関心すると同時に自分のリーダーの低レベル加減に溜息も出てしまう。
「やぁ、文武両道とは……ああいうのを言うのでしょうねぇ……」
「相手するに面倒だぞああいう輩は。実に小賢しい」
微笑んでいるが明らかに、その笑みには反対の感情が見え隠れするトリス、ハイドロウはめんどくさそうに肩肘をついて一応フォロー。
「ボケ倒されてたり、極端に頭悪かったりして会話に疲れるよりはいいんじゃない?」
いや、それはフォローだろうか……と、レッドは続ける言葉に困って結局茶を濁す。
「……みなさん、それぞれに苦労があるわけですね」
気を取り直して、とレッドは互いに武器を構えた二人を見比べて仕事に戻った。
「お互い魔法、および裏ワザ的なものは一切使わないという約束が成立したようです。これは純粋な戦いが期待できますね」
「バンクルドがひねているだろうな」
「……トリスさん、ちゃんと仕事してくださいよ」
「ん、ああ……すまん。そうだな……ヤト君がどこまでやるのか、というのを見どころにすればいいのかな?」
「そもそもあの二人は、そんなに実力の差があるのか?」
「それは俺も気になる」
正直闘わせてみないと分からない、そんな所であるようだ。
「では、見てみましょう」
*** *** ***
立ち上がりは初戦と似ている。最初から本気で斬り合わず、多少の小手調べは入るものであるらしい。
鋭い切っ先は空気さえも切り裂くサガラの剣を、両手剣の刀身を削り過ぎたような無気味な形の黒い剣が、切っ先の動作で捌く。
その素早く、さりげない動作は注視していなければ把握出来ないだろう。
諸刃の片手剣を型通りに繰り出すヤトに対し、ダァクは巨大な細い剣を突き刺しに特化した形で構えている。レイピアとするには剣が長く、大きすぎるのだ。ダァクの武器は異様に感じる事だろう。
剣の交差するベクトルが異なる。突きを主体としないヤトの左右からの攻撃を、長いリーチで突きこんでくる黒い剣の切っ先が巧妙に軌道をずらして捌いている。
切れる剣も相手に打ち込めないのであれば意味がない。そもそもリーチの差がありすぎる事が問題であると判断し、ヤトは攻撃手段を変化させた。
槍と盾、どちらかに任意で変える事が出来る左手の篭手で槍を呼び出し、器用にも突きによる攻撃を加え始めた。
両利きであるだけではここまで器用に、属性の違う武器を操る事は出来ないだろう。
槍でもって黒剣の突き攻撃を巧妙に誘導し、隙あらば一歩踏み出し剣を振りかぶってくる。
この異常な器用さはバンクルドに通じるものがあるな、と思いながら……接近を許して迫る一撃をダァクは、左手で背後から引き抜いた短剣竜の牙で受け止めた。
「ちぃッ!」
捉えたと思っていたのだろう、相手の悪態にダァクは軽々と相手の剣を力任せに振り払う。
思いのほか相手の力が強い事にヤトは警戒し、一旦距離を置いた。
「悪かないね、バンクルドが相手だったらきっと喜んだと思うわよ」
「見下してくれるじゃねぇかッ!」
ヤトは渾身の力で床を蹴りあげてダァクに迫る。
読まれている軌道に、突き出された細長い剣をギリギリで避ける。接近される事を把握しているように次に突き出されていた短剣を、盾にした篭手で流した。
右で流していた剣を横から振りかざす。軌道修正に入ってくる黒い剣と擦れ合い火花が散る。
この場合突き込んで来ている方が力の入る方向性から言って不利だ、黒剣の軌道に導かれるようにサガラの剣が迫る……が、ダァクは素早く黒剣の角度をわずかに変化させて、自分の近くまで迫ってきていた刃をここぞというところで絡め取った。
武器の重点を十二分に把握している、冷静な者が出来る芸当である。
武器ごと右手をひねられる感覚に危険を感じてヤトは右足でブレーキ。右腕に掛ろうとする力、および殺気を感じて迷いなく武器を手放す。
サガラの剣が飛んだ、右手を急いでひっこめたヤトはその隙に背後に下がっている。
「……やりづれぇ」
その理由をようやく把握し、ヤトは苦笑を浮かべた。
なぜ戦いにくいのか、今ようやくその正体を見極めて……今後の戦い方を考える。
同時になぜ目の前の大して歳の変わらない、どっちかというと老け顔の青年が類稀なる強者の称号を隠し持っているのか合点がいった。
戦法を変えなければ自分に勝利は無い、それを同時にも把握した。
この男、つまりダァクには……戦うに時に普通は発せられるべき殺気が一切無い。
戦いにここまで無関心な剣とヤトは戦った事がなかった。
舞台が何であれ、振りかざされる武器の目的は相手を打ち負かす事だ。だからこそあらゆる一撃には攻撃性がある。ようするに、相手を沈めようとする意図、すなわち殺気。
その度合は様々ではあるが、ヤトはこの殺気を何より敏感に察して戦っている。その種明かしはした覚えは無いが、勘のよい者はその事実に気が付いているだろう。
バレてしまっても問題は無かった。
そも、戦うに殺気を発しない者などいないし、殺気を殺して武器を殺す事がどれだけ難しいかという事はヤト自身がよく把握している。
それなのに今戦っているこの男、ダァク・S・バメルダの一挙一動には一切の殺気が無い。
今、近い過去を注意深くヤトは思い出して……相手からの攻撃がほとんど無かった事を確認して視線を敵に向け直す。
全てが威嚇と防御的な動作だ、相手の攻撃を引き出さなければ。
しかし、どうするか。
ヤトが攻撃に出ない為、静かに沈黙して構えて動作の止まる二人に、会場観客も何が起こっているのかと静まり返っている。
「どうやら梃子摺っているようですね……どう思われますかトリスさん」
「そうだな、典型的なダァクの戦い方にハメられたのをどうやら、ヤト君も気がついた……と、いった所だろう」
まじめな解説になるのは、コメディとはいえ戦いだけはガチである事に向けての忖度である。
トリスはダァクと戦った事があるのだから、ダァクがどういう戦いをするのかはよく知っている。
弱点すらも把握しているのだ。
睨みあいを破ったのはダァクだ。
「これでじゃじゃ馬の手綱握ってるもんでね、我慢比べは得意よ?」
このまま永遠に睨みあっていても何も焦れたりしないという意味と受取り、ヤトは小さく舌を鳴らした。仕方がなさそうに構えを解く。肩の力を抜き、深くため息をついた。
何をするつもりなのか。どよめきが静かに巻き起こる中……相手が攻撃をしてこない、と悟ったヤトは吹き飛ばされていた武器を拾いに動いたのだ。
完全に敵に向けた警戒を解いた動作にダァクは苦笑いして同じく構えを解いた。
「キモ座ってんなぁ、お前さんみたいなのと戦ったの俺、初めてかも」
「俺だって、ここまでふざけた相手は初めてだよ」
剣を拾ってきて元の場所に戻り、再び構える……のかと思ったが、そうではなく。右手に武器をぶら下げて左手の槍は篭手に戻した状態でラフに構え、ダァクと対峙するヤト。
そしてそのまま、静かに前に踏み出していく。
攻撃させる、それを何より優先した為の最大の挑発行為だ。
あっという間にヤトはダァクの攻撃範囲に踏み込み、そこで一切歩調を緩めずもう一歩踏み入れる。
対するダァクは少しの迷いを伺わせて口の端を引き上げる。
挑発に乗ってやるべきか、もう少し焦らすべきか。
相手の歩みの分背後に下がって、今少し相手との我慢比べもしてみたい気持ちもあったダァクだったが……それでも自身の描く結果に自信があったのだろう。
ヤトの無防備な接近を許す。
黒剣を構えずダァクは余裕の笑みでこれを受け入れた。
腕が届く距離。もういいだろう。
ダァクの左腕が閃いたのにヤトは、まったく対応が出来ない。
いわく、その動作に殺気が無い。だからだろう。
短剣、竜の牙がみぞおちに食い込んでいるのに遅れて気が付くヤト。
息が出来なくなった事にようやく状況を把握したように顔をこわばらせる。
「……ひでぇ、」
攻撃にも殺気が無いのかよ……
ここまで精神と肉体が乖離した奴、いるんだな……と、小さく呟いてヤトは崩れ落ちるのだった。
「…………」
司会・解説・特別ゲストは沈黙を送った後に顔を見合わせる。
「……自爆?」
「はたから見ると間違いなく、自爆ですね」
「どうフォローしていいのやら。まぁ、彼なりに頑張ったのだと俺は思う。あれはお互い戦ってみないとどうしてああいう事になったのか、というのは理解されないだろうな」
「出来うる最高のフォローです、ありがとうございます」
「いやいや、……とすると、あいつかなりイイ所まで行ってしまうんではないのか……バンクルド先に落ちたし……」
トリスは口元に手をやって小さくぼやいた。
「ん?何か言いましたか?」
「いや、独り言だ」
*** *** ***
「……さて、早くも僕らの主人公が無様にも自爆で敗れ去るという波乱の第二戦が終了しました」
「君のその様子だと、あの子はきっとマゾなんだろうね」
ハイドロウの突っ込みをレッドは華麗にスルー。
「次は武器無し対戦です、拳と拳の語り合い……ぶっちゃけて作者が一番やりたかったとウワサのテリーさんとダークさんの対戦です。ああ、ちなみに似ている名前なのですでに混同されている方もいらっしゃったのかもしれませんが。ダァクさんとダークさんは別人です」
レッドは対戦カードの写真を示して説明。
ダァク・シン・バメルダは茶髪で軽薄そうな老け顔の東方人。
対しダークは色素の薄い北方人。顔の表情が無いに等しい巨体の持ち主。
名前のつけられた経歴が同じである為、芸のない事に同じような名前になっている。
「だったら別の名前でエントリーすればいいだろうに。ダァクが本名の方で、とか」
「ダークは名前とか無頓着だからねぇ。ようするに、セーマだよ。ゲンブでもいい」
ハイドロウの言葉にレッドは極秘データをめくりながら囁いた。
「……噂では本業の方でとんでもない化け物っぷりを発揮している……と、噂のダークさんですが。動きが人間じゃないとか、性癖が色々な意味でレッドカードだとか、その上無敵の盾能力まで発動したとか何とか」
「や、もとから怪物だけどね。僕と同類だし」
さっぱり言いきるハイドロウ。
「属性的には……ウチの人柱リーダーの地雷源大量保有みたいな人ですよね……。そのダークさんと対するのはウチの筋肉バ……ゴホン、脳まで筋肉ケンカバカ」
「いい直す事かそれは」
トリス、小さく突っ込み。
「テリオス・ウィン事テリーさんですが。大丈夫でしょうか?これもかなり実力の差が開いている対戦カードなのでは?」
レッドの問いに解説のトリスは腕を組み、話しだす前に小さくぼやく
「……アルシャとか出てたらおもしろかったろうなぁ」
それをしっかり聞きとめたレッド。
「いいじゃないですか、クリスさん出てますよ。次です」
「何を言っている、彼らは別人だろう」
「あ、そこは貫いておくのですね」
トリスは、レッドが振ってきた話は無視する。
クリスとアルシャの関係性につきましては超長いエレメンタラティナを頑張って読んでください。
「……そうだ、肉弾戦が書きたいという都合はよくわからないが、力勝負という点で言うとダークに拮抗するのはクリスだろう。確かに不安ではある」
「いやでもさ、ウチのはパワーとタフさだけしかないから」
「何言っています。ウチのだってそうです」
レッド、爽やかにハイドロウに応対する。
「なるほど、そういう対戦カードな訳だ」
ちなみにクリスもパワーとタフさでは引けを取らないがな、とトリスは付け加えておいた上で……余計なひと言をぼやく。
「ただし、クリスは脳内まで筋肉じゃないけど」
「ようするに、そこが対戦を外された要因かと」
3回戦目選手の一人、テリーはかなり立派な体躯を持っていると言えるだろう。
種族的有意な特徴を一切持たない、いわばバンクルドと同じく純粋な西方人だ……外見は。
鍛え抜かれた筋肉を纏う体は自然と大きくなるものなのだろう。ヤトも背はそれなりに高い方であるにも関わらずテリーはそれより頭一つ分高い。完全な逆三角形体格。魅せるものではなく、使うものとしての筋肉の持ち主である。
全体的に見れば均等で美しいとは言い難い、しかし間違いなく機能美を感じる事ができる身体。
対するダークがまさしく、のっそりと表現するにふさわしい足取りで袖から姿をあらわにする。
テリーのそれを凌駕する巨体、丸められた背中を伸ばした時、果たしてどれだけの身長差が生まれるのだろう。肌の色、髪の色。色素の薄い西方人とはまた違った白子であるダークが纏うのは金ではなく鈍く光る銀の色。
「よぅ、木偶の坊」
早速の挑発は……戦いに滾るテリーの悪癖だ。
普段冷静である分軽率とも感じられるその言葉に、ダークは無表情の顔をゆっくり向ける。
「言っておくが俺は、俊いぜ?」
無感情な顔がテリーの挑発を受け止める。何も感じていないのではない。感じたとしても、それをどのように表現すればいいのかダークは分からないのだ。
「何やらさっそくガン飛ばし合ってますねぇ……」
「資料によるとこの一戦だけは完全にリベンジらしいな。一度戦っているらしいけど、その詳細が乗ってないな。結果どうなったんだ?」
資料をテーブルに投げてトリスがレッドをうかがう。
「ああ、ベータ版の話ですね。加筆版が公開中ですが、結局途中で邪魔が入って戦いが中断したようですが……ちゃんと途中までは間サシ勝負していたようですよ。ある意味決着つかなくてもテリーさんが満足するくらい」
「……戦いバ……うん、俺もいい直しておこう。脳まで筋肉戦いバカの考えは俺にはわからないな。何が満足なのだろう?」
「全くです、僕もさっぱりわかりません」
「テリーとやらがその脳まで筋肉のケンカ戦いバカなのは分かったけど、ダークもひとくくりにしないでよ」
「おや、違うんですか?」
「……違うと思うけどなぁ……彼はそもそも暴力沙汰嫌いだし」
レッドはメガネのブリッジを押し上げる。
「某月を見るたび思い出せ~な人の矛盾っぽいですねぇ。暴力キャラの癖に暴力は嫌い、ですか」
「……なんだいそれ?」
「ご存じないとは思いますが八神なんたらって人が某……にいましてね、この方暴走癖とか持っててものすごい暴言吐きながら攻撃してくるんですよ。くたばれ、とか、泣け、叫べ、そして死ねとか。その割に『暴力は嫌い』なぁんて肩書になってるんですよね」
※解説※
現実ネタを引っ張ってくるのはレッドだけの特権である。リアルに在る格闘ゲーム、KOFシリーズ参照
それでもどうやらハイドロウはダークの肩を持ちたいらしい。
「ようするに、その人も好きで暴力をふるっている訳じゃないって事じゃないの?」
「……なるほど全部血の所為……っと。実に古典的な言い訳です」
◆◆◆◆ その2に続く ◆◆◆◆
※解説※
ここまでが一回のブログに記載されていた内容です。
……ブログの長さじゃないとか突っ込みは聞いていない
*** *** ***
「少し間が開きましたね。その間にお手紙が来ております」
前回から10日ぶりだという前振りからさらりと始める紫魔導のレッド。何しろ今回彼は解説ではなくこの『お遊び ぶっちゃけ 都合全部忘れてください勝ちぬきトーナメントだよ闘技大会inエズ』での司会である。
物語を始めるきっかけ作りは重要だ。
「ほぅ、一体どんなモノ好きから」
何気に酷い事を言うのは、人がよさそうな外見とは裏腹にものすごい毒舌家でものすごい詭弁家の天衣青魔導トリス。
「あー……それがですね」
言葉を濁すレッドに、いつの間にやら特別ゲスト席にすっかり定着してしまった暴走・凶悪・魔法使いの先祖、ハイドロウが頬杖をつきながらぼやく。
「どうせあれだろ、Rなんたらっていう作者からの懺悔の手紙だろ」
「あー、ありうる」
トリス、そんな事だろう事は把握していたように適当に流した。
「散々な言われようをしておりますよRさん。はい、その通り。仕方がないのでお読みしましょう」
「仕方がないなら読まなくてもいいんじゃないのか?」
「……それもそうです。じゃ、読まずに進めましょうか」
あっさり手に持つ手紙を伏せてしまうレッド。
「いいの?」
「懺悔の気持ちがあったという事だけ汲んででいただければいいと思います。言い訳は見苦しいですしね」
すみません、その後もっと放置するハメになったりしました。
*** *** ***
というわけで、とレッドは改めてテーブルの上で手を組んだ。
「早速状況の解説からお願いいたしますトリスさん」
「ああ、俺の仕事だったな。……今、円型闘技場の中央には脳まで筋肉戦いバカが二人にらみ合っている訳だが……」
「ちょっと待って!だから、ダークをそれに加えないでって言っただろ!」
ハイドロウの静止にトリスは彼の方に顔を少し向けたのち……少し咳ばらい。
「そうだな、脳まで筋肉でできていて戦う事しか頭にない筋肉バカでは一体誰の事なのか分からないだろう。不本意ではあるが」
「……いつの間に不本意になったんですか」
レッドの小さなツッコミをいつもの苦笑いで躱してトリスはちゃんとした解説を始めるのだった。
「まず、金髪で体格の方が厳つい西方人がテリー君。本名は……一応本編では地雷という事なので今回は織り交ぜない事にしよう。レッド君の所の第二の肉の壁だそうです」
「いやま、第一肉の壁に全部ダメージ行っててあまり機能してませんが」
二人の魔導師のやりとりにハイドロウはあきれる。
「聞かれていないのをいい事にさんざん言うんだから。言って置くけど、その調子でダークの事紹介したら僕、キレるよ?」
「はっはっは、そこまではっきり依存していると分かりやすいのはいい事だ」
ハイドロウにとってダークは数少ない『同類』、怪物としての仲間だ。唯一心を許せる存在なのである。それゆえにかなり贔屓しているし悪く言われるのが許せないらしい。
破壊神イン・テラールの先祖であろうと物おじしない、これが青魔導の実力かと関心するレッドである。
「さて、もう片方は先ほどからハイド君がやきもきしているとおり、全体的に白っぽい巨体のダーク君だ。大昔に廃れた種族の一つだが一応分類すれば北方人。北方人は骨格が大きく背が高いという第一特徴があり、のちに巨人族などと言われる場合もあるという。テリー君もかなり背は高いが、ダークはそれをさらに超えて大きいようだが……少々猫背なのは、巨体である為に自身の重さを支え切るに……」
「ちょっと止まりましょう。……確かに解説はお願いいたしましたが、そこまできっちりこのコメディ駄文に対し解説する必要はあるのか、と」
「ん?俺にそーいうの語らせるために俺を解説にしたんじゃないのか?」
「そもそも、魔導師に進行と解説を頼む時点で色々間違っているんだよ」
レッドとトリスは顔を見合わせる。
「そうですね」
「全くだ、笑いを取りたいなら例のKFさんでも呼べばいいのにな」
「……それは止めて、ほんと、シャレにならなくなるから……」
割とそこら辺は否定はしない、魔導師達である。
そのころ下では、色々余計な事をくっちゃべっているらしい(声は聞こえてない)司会・解説・特別ゲストをテリーが睨んで悪態をついていた。
「どうでもいいからさっさと始めろよ」
そう言った途端3人がこちらを向いたのを見て、どうやら会話を聞かれている事をちゃんと察したテリーである。相変わらず悪趣味だ、とは言葉に出さずに考えるだけにしておいた。
「さ、お待たせしているようですので始めましょう。武器を特に装備しない、むしろ武器は己の体のみという肉弾戦格闘技戦、開始です」
*** 続く ***
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