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番外編 EX EDITION
■番外編EX『戦いを捧げろ!』#10/10
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N&SinMFC シリーズ番外編『戦いを捧げろ!』#10/10
※同世界設定同士の物語登場人物による、
俗に言うパラレルの様なそうでもないような番外編です やや長め
「だとよ、」
テリー、肩をすくめてどうすりゃいいとダァクに無言で尋ねる。
「……てゆーかあんた、拳闘士じゃなかったのか?」
「さて、どーかな」
テリーは地面に、土の上に砂の撒かれた石舞台に綺麗に、突き刺さっている剣を左で抜き放った。
直線の両刃だが……この剣は一般的なソードと分類される物からは微妙に形式が異なっているのをテリーは知っている。
『剣』というのは斬る道具だが、同時に殴る道具でもある。
剣すなわちソードとは、刃はついているが料理人が使う包丁のように切れ味までは求められていない場合が多い。
頻繁に剣を振るう者ならよく分かっている事だろうが……柔らかいものだけを斬るとは限らないうえ、どちらかというと武器同士で打ち合わせる事が多い『剣』の刃は、切味まで維持しようとするとメンテナンスが追い付かないという事に陥るのである。
刃は欠ける、潰れる、それが当たり前であって定期的にこれを研ぎ直す必要に迫られる。
剣は、武器は……消耗品なのである。
ところが『剣』という分類の中で以上の条件を違える形式があり、その一つとして『カタナ』がある。
カタナ、という言葉はこのお遊び仕様とはいえ立派な世界設定の敷かれた『エイトエレメンタラティス』において、東方および遠東方のみで使われている特殊な『剣』の事だ。
すなわち東方および遠東方では……剣とは違う『刀』と呼ばれる『斬るため』の剣が存在する。
例によって曲刃で片刃のものが全てというわけではない。エイトエレメンタラティスにおいてカタナの定義は『斬る剣』に集約されている。
すなわち一般的な剣より強靭な刃を持ち、切味を追及した剣。
サガラの剣はこのカタナに分類され、またサガラという鍛冶屋が冠する特徴を名を持つ通り備えている。
サガラの武具は武具としてほぼ最強強度を誇る。まず折れない、さらに手入れしなくても錆びない。欠ける事もほとんどないので手入れも不要。
剣士ならばぜひ手に入れたいと願ってやまない逸品で、もちろん……相当値の張る一品でもある。
斬る剣はその非常に鋭い切っ先の為、必ずと言って良い程鞘がついて来る。むしろ鞘も合わせて一つの剣と考えるべきなのだが……美学と称して拳一つに拘る西方人(東方文化には疎い、つまりカタナを好んで使ったりしない)……そんなお約束はご存じではない事は本編参照ッ
※解説※
一度カタナを手に取り即座鞘を捨てた事があります カタナ使いにしてみればえェェェエエエ!な事です。
故に鞘は重要だから捨てちゃダメ!と言ったとしてもどーせ鞘の使い方は知らんだろうとヤト、剣だけ投げ渡した訳である。
テリーは右手の包帯を緩め、サガラの剣の柄に縛りつけた。
纏っていた飾り布を引き抜いてさらに強く縛りつけ……右腕全体で引き抜き、ダァクに向けて突き出す。
「俺が剣を使えるかどうか、ここは一つ『楽しみ』ながら戦ってみねぇか?」
「おもしろいね、俺は全然かまわないけど……武器に振り回されなきゃいいねぇ」
テリーが採った構えは『衝突剣技』のものだ。対するダァクも元よりそのスタイルである。
テリーはダァクがそういうスタイルで戦う事を知らないので、合わせてきやがったのかと思っているが……そうではない。ダァク、黒剣を使う場合これが通常スタイルなのだ。
事もあろうか長い剣、明らかに元は両手剣だったろう代物を片手で握りこんで突き技で戦う。
「これは……西方における決闘形式になるようだな」
「そういうの、まだ西方文化的にはあるものでしょうか」
「うーん、俺の時代はまだかろうじてあるようだが。というか、公族連中は武器を嗜むに携帯デザインも鑑みるからな。一般的にフルーレやサーベルになるだろう。両手剣背負うような公族は……一人知り合いにいるが」
トリス、やや目をそらし口を濁してから続ける。→バンクルド
「あとは乗馬しての槍試合があったかな」
「流石にそういう文化圏特有の事までは僕も精通しておりませんでしたので、貴重なお話を聞けましたね」
解説さんグッジョブ、とレッドは言うが本当に彼は知らなかったのだろうか。彼の腹黒いところのみぞ知るである。
「うん、実際そういう文化があるってのは……どこでも書いてないと思うからな」
上の人の事情をさらっと混ぜ込んでみるトリス。
いや、ありますよ?一応。設定厨なめんな。
そもそも公族関係のみの話が少ないから出てこないだけですってば。
「剣と拳の戦いは……一応、クリスの時にやってるし」
「毎度同じ戦略展開じゃ飽きるでしょうし、いいんじゃないでしょうか」
……書いてる人的にも。
お遊びだもん、可能性ある限り楽しく展開したいじゃない。
二人が武器を高く掲げ、ゆっくりと歩みより……切っ先が触れるか、触れないかという気配に観客は沈黙を送った。
奇跡的に二人が剣を打ち合わせた最初の音が響き渡る事を許される。
次の瞬間お互いの胸を狙った遠慮のない一撃が沈み込むも、お互い反転したように同じ動作で紙一重で避けている。
その場で軽く刀身を回し、次なる一手を送り出すに自然と右へと体がずれる。
お互い前に出している足が触れるか、触れないかという超至近距離。
武器長いんだからそんな近付かなくてもいいのに、と思えるほど……時に深く相手を貫通するほどの突きが見舞われるも全て、空を裂くのみ。
一部観客席からはお互いに避けているのか、刺さっているのか分からないだろう。
正確に円を描き時計回りに二人は立ち位置を変えていく。中心が移動しないのは、実力が拮抗しているからに違いなかった。
しかし、その割にテリーの動きはダァクに比べややおおざっぱだ。
「やや対極的な試合だな、テリー君の方が責め手が多いようだ」
「ダァクさんはそもそも長らく『カウンター』使いだったわけでしょう、あまり積極的に自分から攻撃を仕掛けるというタイプではないように思われます」
「珍しくちゃんと仕事してやがるな」
「……ルインさん、こういう時ツッコミはいりませんから」
空気くらい読んでくださいという二人の視線を受けて、悪い……もともと会話コメディとかって都合で遠慮なくツッコミ役振られてたもんでと頭を掻いているルイン。
「でもあぶなっかしいなぁ、ダァクの動きに無駄がない分、彼は押されてるんじゃないの?」
ハイドロウの言葉にトリスは小さく頷いた。
「どうやら見ている限りでは……テリー君はただの西方人ではないようだな。明らかに目で見て反射神経で避けている気配がある。これがヤト君だったら気配で避けるだろうが……相手がダァクとなると……テリー君のように実際見て避けないと対処ができないのかもしれない」
ダァクの剣技が全体的に他より抜きん出ている理由は、彼が剣を振るう時『殺気を出さない』という特徴にある。
これを意図して出来る剣士は稀だ、むしろいないと言ってもいい。だからこそ、殺気を正確に読んでこれを頼りに戦うヤトはいかなる不利な状況でも的確に戦える。
ところが、ヤトVSダァクとなると……ヤトには目の前の相手が『見えない』に等しい状況となってしまうわけだ。
ダァクは自分の振るう剣に殺気が無い事を知らないかもしれない。
そもそも、彼は誰かを殺すつもりで剣を振る事自体あまりない。
いつも手加減する癖がついている。
そうなってしまった理由は色々あるものの……とにかく、無意識的に全てにおいて殺気が載っていないのだ。
だからこそ普段、戦い事に疎いお嬢様を隣にしていながらも、彼女から恐れられるという事が無い訳である。
決してティナを意識して殺気を出さないようにしているのではない。
……故に、意図的に殺気を載せる事はもちろん可能である。
そんな事をする時は非常に限られてくるものの。
フェンシングや剣道と違い判定はどこまで、というルールは闘技場には無い。
時に足、相手の喉も隙あらば狙いながら時計回りに一周と何度か。
二人はほぼ同時に一歩背後に下がって距離をとった。
集中力の限界だ、一般的に長時間斬り合うとなると集中力が欠けた方が負ける。それを支える体力もまた重要な要素だが……。
どちらも体力に関しては自信のある方である。
深い息をついて噴出した汗をぬぐいつつ、お互い……自然と用心してもう一歩背後に下がった。
今後も同じ突き試合をつづけるとは限らない。戦い方は自由だ、舞台にいる以上武器を持って、いかなる戦略も許されている。
これ以上同じ戦い方をしていてはらちがあかないと判断しただろう。
これではどっちが勝てるかお互いに判別が付け辛い。
……賭けるならばなるべく自分の勝率が高い方へ、……基本的な事だ。
息を整えつつ、今後どう戦いを変化させれば有利に働くか……虎視眈眈を隙を狙う。
ここで二人の特性の差が現れる事になる。
テリーは『逃げ』を嫌い一方的に自分から仕掛ける事も厭わない。相手が待ちに入れば必ずそうする。長期的な集中力に自信がないからこそ自然とそうなってしまう。
対するダァクはどちらかといえば『待ち』で、受け身を取ってのカウンターを狙いたがる。
余計な剣は振らない……無駄のない戦いを好む。
「じゃ、こーいうのはどうだッ?」
仕掛けたのはテリーが先だ、そうなるだろう、今までの戦いをみるに恐らくそうなるだろうと多くは予感していたに違いない。
突きが……貫いてくる。
相手が衝撃波を剣から絞って打ち込んできたと察してダァク、回避を選択。
衝撃が拡散していない、受ければ吹っ飛ぶにとどまらない事を理解しているのだ。テリーが放つ一撃が恐ろしく『重い』事は先の戦いを見ていて把握している。
任意で右側に逃げる、テリーの攻撃が一撃に留まるはずがないと見越しての右だ。今だ動く気配のない左の拳を警戒したのである。
もちろんそのように逃げられる事はテリーもまた把握していた。右に逃げられては左の拳を繰り出すに間合いが広がり過ぎているし自分の体が邪魔して上手くいかない。
しかし、右に逃げると分かっていれば戦略はさらに練り上げる事が出来る。
右に逃げ距離を置き相手の出方を見ようとするのは……ダァクの癖と言っていいだろう。
しかし……安全圏を手に入れたはずだというのに、何かの気配が迫ってくるのを戦士としての勘が訴えてくる。ダァクはテリーほど身体能力に優れている訳ではない……というか、テリーがやや人間としては異常値なのだ。そういう所ダァクはバンクルドを思い浮かべてしまう。
勘を疑うことなく……黒剣をふるい驚異と感じ警戒した『もの』を撃ち落とす。
間違いない、撃ちおとしたのは……テリーの左手から放りなげられていた小石。
虚(フェイント)だ、気がついた時には……ひねり出されてしまった隙にテリーの左腕が地面を掬う。
これはテリーの、殺気全てに超反応して逃げ回る対ヤト用の戦略の一つでもある。
拡散する衝撃波を避けるための動作を一切奪われたダァクは黒剣を振り払った動作のまま背後に吹っ飛ばされた。いや、かろうじて背後に飛んで衝撃を緩和。それでも壁まで押し込まれ、叩きつけられる。
壁に叩きつけられたと思った次の瞬間、壁を蹴って飛び出す。
カウンター待ち戦略に特化しているだけはある、自分がダメージを受ける事に一切ひるまない。
衝撃波を出した後出来てしまう致命的な隙目がけ、ダァクは突きを見舞ったがやや距離が開き過ぎた、あっさりとテリーからは逃げられてしまった。
というより、一応用心をした為に全力で左を叩きつけていないのだ。
衝撃波を伴う攻撃は出した後の隙が酷い事は本人が一番知っている。だからこそ軽々しく出すことは無い。
ダァクの一撃を避けたテリーだが体勢がまだ完全に整わないうちに相手は鋭く反転、低く地面で着地して地面を蹴る。ダァクは黒剣を片手に握り込んだまま斬撃を含めた攻撃に転じてくる。
テリーは右腕の武器を『盾』として攻撃を往なすもダァクの攻撃は巧妙だ。
ようやく勢いが止まり再び距離を置く頃……テリーの右手に固定される剣を抑えている布がずたずたになっていた。わざと手元を狙われた。……狙いが武器を手放させる事だと悟ったからこそこの程度ですんだのだ。
よもや『武器破壊』を専売特許とするテリーが逆に、それに等しい行為を仕掛けられるとは。
矜持と呼べる感情を逆なでにされた気分になってテリーは笑った。
笑う、とはすなわち口を引き上げ大きく見せて牙を見せる……威嚇の動作とも言われる。
すぐにもダァクは追撃体制を取って仕掛けてくる。まず右手の武器を奪う、その戦略方法でダァクは攻め続けるつもりのようであるが……
同じ手を何度も食らっていては後手に回る……先制こそが勝利の鍵。
強引にテリーは『合わせた』
乾いたた音と一緒に、撃ち合わせた武器が弾かれて吹き飛ばされる。
背後に倒れるのをなんとか免れ……布がはじけとび、武器が吹っ飛んで行ったのをテリーは目で追った。あまりの衝撃に右手が肩からすべて痺れている。武器は、滅多な事では折れないので衝撃のあまりにそのままの形ではじけ飛んでいってしまったのである。武器が頑丈なのを見越しての攻撃だったが、やはり自分の腕の方が持たなかった。
筋が違え、肉離れを起こしおそらく骨も一部砕けただろう。
見る間にどす黒く右腕が変色して膨れ上がった。
状況はダァクも同じだろう。
ただダァクはテリーと違い腕を露出していないので……右腕がどういう状況か正確には分からない。表情から笑みは消え無表情だ、痛みを表現しないようにしているのだろう。
わからないが、素早く黒剣を左手に持ち替えたところ右腕は破壊されているに違いなかった。
袖の方から 俺の剣壊す気かー!などと怒鳴り声が聞こえてくるわけだが当然二人は無視。
「お望みの通り、武器を手放してやったぜ」
テリーの言葉にようやくダァクはいつもの調子で笑う。
「忘れていたよ……あんたが自分の肉を断つに遠慮ないって事」
ダークやクリスとの戦いにおいて彼は、最大の武器であるはずの右の拳を差し出してここまで来たのだ。
その勝利の為に『死』も厭わない真剣な態度をダァクは素直に忘れていたのだ。
そこまでして勝つ必要は無いとどこかで思っていた所為もあるのだろうと……ダァクは自分を律する。
勝利へのこだわりは……ある。
割とこれで負けず嫌いを自負するダァクだが……ティナと出会ってから、彼女を泣かすような事だけは止めようと努めるに……元来持っていた無茶な態度がなり潜めてしまう事が多くなっているのは分かっていた。
彼女の前に、我慢する事もよくあってそれで苛々して、衝突してしまう事も。
「楽しむってのは、遊びじゃぁないのね」
「そりゃ勘違いだな、命を掛けて遊んでいいなら遊びでもいいが」
……せっかくまじめにやっている所悪いのだが解説席が呼び出されてしまいますよ。
「ええと、……ついにお遊び仕様初の死人が出る気配なのかな?」
「というか、こういう場合は殺し法度にしておいたらどうなんだろう」
ごもっともである。
残念ながら死んだら復活できるような呪文がないので本当にジエンドなのだが。
「問題ありませんよ」
レッド、珍しくブラックじゃない穏やかな笑みを浮かべて目を閉じ、言った。
「……今回集っている皆さんには恐らく『楽しい』戦いを提供しあった相手を殺してしまうような、ヤボったい人はいませんので」
「……それもそうか」
少しだけ彼ら、戦いヴァカの仕様とやらを悟った気持ちでトリスは頷く。
「いや、例外がここに一人」
こっそり逃げ出そうとしていたルインにハイドロウ、遠慮なく指で示す。
「毀損系上級魔法を最初からぶち込んだもんね」
「き、効いてなかったんだから別にいいだろうが!」
「効いてたらクリス君、今頃肉片になってただろうけど」
「物騒な魔法だったんですねぇ」
その通りだよとトリスも同意し、なぜか笑い声が響く解説席。
……『毀損-ハヴォック』……非常に物騒な攻撃魔法である事くらい連中、ハナから知っている。
ルイン、乾いた誤魔化し笑いをしていたが……ここは突っ込まないとどーしよーもない場だと途中で把握。
「いや、笑ってる場合じゃねーだろ!なんだ?何が起こったのか説明しろよ!」
「そうだな、解説しておこう……テリー君は相手本体を打ち込むより先にまず、相手の武器防具を破壊して戦意喪失を図る事が多いそうだが」
「そうですね、ヤトやアベルさんから聞くにそういう事が多いらしいです。……闘技場で闘士として戦うに勝者は敗者の命を奪っても良いらしいのですが……テリーさんはほとんど殺した事が無いのだそうです」
「ん、それ実は本邦初公開んなんじゃないのか」
「ふふふ……ま、そのうち彼の番外編出ますのでそちらで詳細は」
と、一応CM。
※解説※
殺さなかった訳ではない。殺した数は少ない、が正しい。物事の伝承は極端な方に傾くのが情報学的によく見られる傾向である。そのあたりの詳しい経緯については『トビラ』番外編『西負の逃亡と密約』参照
「テリーさんも外見上はただの西方人なんですが色々ありまして……圧倒的な破壊力を有する攻撃を放つ事が出来るのは皆さん把握いただけたでしょう。あれを人体に向けて打つ事はめったにしないという事ですね。基本的に武器・防具に向けて撃ってそれを壊してしまうようです」
「つまり、……奴はダァクの武器を壊しに行ったって事か」
ルインは状況を把握し腕を組んだ。
「多分そうするに攻撃の正体である『振動』を直接、叩き込む必要があるんだと思う。強引に武器破壊を行ったんだろう、自分の持つ武器を媒体にしたんじゃないのかい」
「……しかし自分の右腕にもダメージを与えている、失敗したのかな」
トリスの分析にレッド、小さく首を振る。
「恐らく……相手の右腕をも壊しにいったのではないでしょうか。基本的に肉体から直接武器に放つところ右手はあの通りです、最初から使えないならとまさしく、捨石にしてしまったのかもしれません。場合によっては部位破壊も使うとヤトが言っていました。実際足をツブされてボコ殴りにされた事があると言ってましたし」
「そりゃえげつないねー」
えげつないねーとか言いながらなぜかあやしく笑っているハイドロウ。
SFな本編にあるとおり彼は本性ドSである。
ルインは腕を組み、お互い左腕を構えたまま様子をうかがうのを眺め……吹っ飛ばされ、遠くに投げだされているサガラの剣を見つける。
「武器破壊って、結局どっちも壊れているようには見えねぇけど」
「だから、武器より武器を握る腕を狙ったんじゃないの?」
「そうじゃないな、元来武器も壊そうとしたはずだ。ただ……あの二つの剣は互いに特殊過ぎるから無事と言える。一方は龍鍛合金などと呼んでいるがようするにリンクソードの一種だろう、滅多なことでは欠ける事すら無い」
まぁ、それでも本編にて一回折れましたけどね。
レッド、こそっと呟いた。トリスはリンクソードと言い切ったが実際には『リメイク』と呼ばれる模倣品か、劣化複製品なのでクオリティについては少々傷がある。
「対しダァクの黒剣は……見ていたものは気が付いていただろうが柔らかい。柔軟性の高い特殊な鋼だ」
一見硬い棒に見える黒剣だがその実、振るとぐにゃりと撓る程に柔軟性に優れている。
「詳しくは俺もよくわからんが、ええと……バンクルド曰く、超長期間にわたって使い潰された剣であって鍛え直しの数がハンパネェからすんげぇ事になってんだよ……との事」
「よくわからん」
「うん、俺もよくわからん。まぁ想像で補うに……打ち直し、鍛え直す度に鋼の質が変化向上して普通では考えられないような状態になった武器、と言ったところか?色からして炭素含有量が高そうだが……それならあんなにしなったりはしないだろうし」
レッド、超強度で炭素含有でしなる物体についてリアル知識があるので思わず額を抑える。
「……あれこれとそーいう『剣』の伝承に心当たりはあるのですが、実際はっきりしていないのですよね……ダマスカス鋼はこっちの世界ちゃんと流通してますけどリアルのアレとはまた別ですし……」
現実におけるダマスカスと、エイトエレメンタラティスにおけるダマスカスは構成が違うという意味で、だ。……世界が違うという事になっている以上、当たり前ではあるけれど。
「もしかすれば龍鍛合金の祖にあたる存在かもしれないな」
「とにかく、希少な剣なんですね。……魔導都市の連中には格好の研究材料だと」
「ま、だからファーステクもずっと隠し持ってたみたいだが……さてはて」
剣の曰くは又別の話という事で……機会があればどっかでやるだろう。
「……壊れてねぇな」
壊したつもりだったが黒剣は無傷であるようだ。
時に、このように破壊が不可能な武器もまた存在する。ヤトが使っているサガラの剣もその一つだが、鉄の塊を一発で粉砕するような破壊力が保障されている訳ではない。力点を間違えば折れるべき武器も折れ無くなる。細かいコントロールが重要なのだ。
ゆえにこの武器破壊という技はテリーオリジナルである。決してランドールには真似ができない芸当なんである。
※解説※
ランドール……テリーと同規格を持つ外見南方人の爆裂勇者
戦っていて、どうにも黒剣がやけに撓る事をテリーは分かっていた。
その性質からどういう武器なのか記憶を探ってみたが……結局よくわからなかったのである。
破壊まで持っていけるか不安だったからこそ……テリーは自分の右腕を破壊してまで相手の右腕を奪う選択肢に出た。
「言っとくが、一応これで左手でも武器は扱えるぞ?」
そんなダァクの言葉にテリーは左腕を握りこんで見せた。
まだ勝負がついたと思うなよというアピールにテリーは笑って目を細める。
「こっちだってそれは同じだ、こっちの左腕は無傷っての忘れんな」
もう一発その左腕にも破壊の衝撃ブチ込んだっていいんだぜ、と……挑発されているとダァクは察する。
そうするだろう、標的が腕だけとは限らない。
足など片方でも持っていかれたらおそらく打つ手はなくなるだろうな……と、ダァクは剣を前に構えやや腰を低く体制を整える。
「やっぱディフクレクトは持ってくるべきだったわねぇ」
「はッ、気が付くのが遅ぇんだよ!」
「けどまぁ、黒剣と合わせて使うってのは実際のところ実現しないし、本来はどっちか一方を選ばなきゃいけない。もしどちらか選択って事でディフレクト持ってきてたらさっきので俺は負けだ」
「その、ディフレクトってのはリンクソードとか言うので……ヤケクソに頑丈らしいと聞いたが」
「本体はね、ところが残念な事にディフレクトの本体は『柄』なのよ、刃は普通の鋼だから……今の喰らってたら間違いなく折れて使い物にならなくなってるでしょう」
「なら、その剣で間違ってねぇんじゃねぇの?」
選択は黒剣で合っていた。そういう意味だ。
「……かもしれない」
お互い出せる手札は出しつくした。
あとは……お互い持ちうる残った札を叩きつけ、その組み合わせ次第となるだろう。
勝敗の行方は刹那の分岐により結果は幾千と移り変わるもの。
状況、状態、その時の気持ち。
一対一とは限らないし、地面が平坦だとは限らない。
天候が晴れとも限らないし、お互い最高のコンディションで戦えるとも限らない。
その場その場に合わせた戦略があり、得意の舞台があり、得意な場面がある。
*** *** *** ***
「この結果は全てではない」
……勝敗のついた舞台に向けて……トリスは呟いた。
「そうですね、時と場合によっては今まで着いた勝敗が全てひっくり返る事もあるのでしょう」
眼鏡のブリッジを押し上げてレッドもゆっくりと答える。
「でもま、それぞれの特性は出しつくした。あとはその噛み合わせで……どうなるのか。ようするに想像の幅は尽きないという事を言いたいんだろう?」
ハイドロウはようやくこのふざけた舞台が終わるのだ……と、ため息を交えて姿勢を崩す。
「いい試合だったじゃねぇか。そんでもって、最後の最後で他人に放るのは……上の人って奴の悪い癖だ」
ルインは肩をすくめて笑う。
「想像を止めるな、それが……どうにも全体に向けたコンセプトらしい。優しくないのは誰かの真似だとかいうが。答えを出すのは好きではないのは確かなようだな」
「最後真面目に〆てもねえ、しょうがないので僕がすっきりはっきり言っておきますが」
レッド、にこやかにカメラ(?)目線で振り返る。
「結局どっちが勝ったのか。それは、貴方のご想像にお任せします……と、ようするに言いたいみたいです。無責任この上ないですね」
「全くだ、そこらへんはこのウチの責任感だけはあるトコロ、見習ってほしいもんだね」
「ダケ、とかゆーな!」
ルインの最後のツッコミにいつもの苦笑いを浮かべ、トリスは青いマントを翻し立ち上がる。
「やれ、これで俺はまたひたすらしゃべらない何考えてるか分からない人に戻るのかー。いやぁ、久しぶりに全開で会話するとすがすがしいなー」
「そんな事言って、どっかに呼ばれる事想定させないでくださいよ」
「はははは、たまにはこういう席も悪くないな。おもしろかったよ」
「というわけで、これにて終わりだよ。……ええと、終わりだよね?」
ハイドロウがそのように念を押したのだが。
レッド、眼鏡のブリッジを押し上げて怪しい含み笑いを零した。
「ふふ……実はですね。まだちょっと悪だくみがあるらしいです」
手を組んで司会席についたままのレッドをみやり、トリス再びマントを翻して席につき直した。
「ふむ、正直に味をしめたと言っておこう。付き合おうか」
「あー……これもうブログ版じゃないもんねー……やるんだ」
「何をやるんだ?」
ルインの突っ込みはどうやら、まだ…………続くらしい。
*** 終…………? ***
※同世界設定同士の物語登場人物による、
俗に言うパラレルの様なそうでもないような番外編です やや長め
「だとよ、」
テリー、肩をすくめてどうすりゃいいとダァクに無言で尋ねる。
「……てゆーかあんた、拳闘士じゃなかったのか?」
「さて、どーかな」
テリーは地面に、土の上に砂の撒かれた石舞台に綺麗に、突き刺さっている剣を左で抜き放った。
直線の両刃だが……この剣は一般的なソードと分類される物からは微妙に形式が異なっているのをテリーは知っている。
『剣』というのは斬る道具だが、同時に殴る道具でもある。
剣すなわちソードとは、刃はついているが料理人が使う包丁のように切れ味までは求められていない場合が多い。
頻繁に剣を振るう者ならよく分かっている事だろうが……柔らかいものだけを斬るとは限らないうえ、どちらかというと武器同士で打ち合わせる事が多い『剣』の刃は、切味まで維持しようとするとメンテナンスが追い付かないという事に陥るのである。
刃は欠ける、潰れる、それが当たり前であって定期的にこれを研ぎ直す必要に迫られる。
剣は、武器は……消耗品なのである。
ところが『剣』という分類の中で以上の条件を違える形式があり、その一つとして『カタナ』がある。
カタナ、という言葉はこのお遊び仕様とはいえ立派な世界設定の敷かれた『エイトエレメンタラティス』において、東方および遠東方のみで使われている特殊な『剣』の事だ。
すなわち東方および遠東方では……剣とは違う『刀』と呼ばれる『斬るため』の剣が存在する。
例によって曲刃で片刃のものが全てというわけではない。エイトエレメンタラティスにおいてカタナの定義は『斬る剣』に集約されている。
すなわち一般的な剣より強靭な刃を持ち、切味を追及した剣。
サガラの剣はこのカタナに分類され、またサガラという鍛冶屋が冠する特徴を名を持つ通り備えている。
サガラの武具は武具としてほぼ最強強度を誇る。まず折れない、さらに手入れしなくても錆びない。欠ける事もほとんどないので手入れも不要。
剣士ならばぜひ手に入れたいと願ってやまない逸品で、もちろん……相当値の張る一品でもある。
斬る剣はその非常に鋭い切っ先の為、必ずと言って良い程鞘がついて来る。むしろ鞘も合わせて一つの剣と考えるべきなのだが……美学と称して拳一つに拘る西方人(東方文化には疎い、つまりカタナを好んで使ったりしない)……そんなお約束はご存じではない事は本編参照ッ
※解説※
一度カタナを手に取り即座鞘を捨てた事があります カタナ使いにしてみればえェェェエエエ!な事です。
故に鞘は重要だから捨てちゃダメ!と言ったとしてもどーせ鞘の使い方は知らんだろうとヤト、剣だけ投げ渡した訳である。
テリーは右手の包帯を緩め、サガラの剣の柄に縛りつけた。
纏っていた飾り布を引き抜いてさらに強く縛りつけ……右腕全体で引き抜き、ダァクに向けて突き出す。
「俺が剣を使えるかどうか、ここは一つ『楽しみ』ながら戦ってみねぇか?」
「おもしろいね、俺は全然かまわないけど……武器に振り回されなきゃいいねぇ」
テリーが採った構えは『衝突剣技』のものだ。対するダァクも元よりそのスタイルである。
テリーはダァクがそういうスタイルで戦う事を知らないので、合わせてきやがったのかと思っているが……そうではない。ダァク、黒剣を使う場合これが通常スタイルなのだ。
事もあろうか長い剣、明らかに元は両手剣だったろう代物を片手で握りこんで突き技で戦う。
「これは……西方における決闘形式になるようだな」
「そういうの、まだ西方文化的にはあるものでしょうか」
「うーん、俺の時代はまだかろうじてあるようだが。というか、公族連中は武器を嗜むに携帯デザインも鑑みるからな。一般的にフルーレやサーベルになるだろう。両手剣背負うような公族は……一人知り合いにいるが」
トリス、やや目をそらし口を濁してから続ける。→バンクルド
「あとは乗馬しての槍試合があったかな」
「流石にそういう文化圏特有の事までは僕も精通しておりませんでしたので、貴重なお話を聞けましたね」
解説さんグッジョブ、とレッドは言うが本当に彼は知らなかったのだろうか。彼の腹黒いところのみぞ知るである。
「うん、実際そういう文化があるってのは……どこでも書いてないと思うからな」
上の人の事情をさらっと混ぜ込んでみるトリス。
いや、ありますよ?一応。設定厨なめんな。
そもそも公族関係のみの話が少ないから出てこないだけですってば。
「剣と拳の戦いは……一応、クリスの時にやってるし」
「毎度同じ戦略展開じゃ飽きるでしょうし、いいんじゃないでしょうか」
……書いてる人的にも。
お遊びだもん、可能性ある限り楽しく展開したいじゃない。
二人が武器を高く掲げ、ゆっくりと歩みより……切っ先が触れるか、触れないかという気配に観客は沈黙を送った。
奇跡的に二人が剣を打ち合わせた最初の音が響き渡る事を許される。
次の瞬間お互いの胸を狙った遠慮のない一撃が沈み込むも、お互い反転したように同じ動作で紙一重で避けている。
その場で軽く刀身を回し、次なる一手を送り出すに自然と右へと体がずれる。
お互い前に出している足が触れるか、触れないかという超至近距離。
武器長いんだからそんな近付かなくてもいいのに、と思えるほど……時に深く相手を貫通するほどの突きが見舞われるも全て、空を裂くのみ。
一部観客席からはお互いに避けているのか、刺さっているのか分からないだろう。
正確に円を描き時計回りに二人は立ち位置を変えていく。中心が移動しないのは、実力が拮抗しているからに違いなかった。
しかし、その割にテリーの動きはダァクに比べややおおざっぱだ。
「やや対極的な試合だな、テリー君の方が責め手が多いようだ」
「ダァクさんはそもそも長らく『カウンター』使いだったわけでしょう、あまり積極的に自分から攻撃を仕掛けるというタイプではないように思われます」
「珍しくちゃんと仕事してやがるな」
「……ルインさん、こういう時ツッコミはいりませんから」
空気くらい読んでくださいという二人の視線を受けて、悪い……もともと会話コメディとかって都合で遠慮なくツッコミ役振られてたもんでと頭を掻いているルイン。
「でもあぶなっかしいなぁ、ダァクの動きに無駄がない分、彼は押されてるんじゃないの?」
ハイドロウの言葉にトリスは小さく頷いた。
「どうやら見ている限りでは……テリー君はただの西方人ではないようだな。明らかに目で見て反射神経で避けている気配がある。これがヤト君だったら気配で避けるだろうが……相手がダァクとなると……テリー君のように実際見て避けないと対処ができないのかもしれない」
ダァクの剣技が全体的に他より抜きん出ている理由は、彼が剣を振るう時『殺気を出さない』という特徴にある。
これを意図して出来る剣士は稀だ、むしろいないと言ってもいい。だからこそ、殺気を正確に読んでこれを頼りに戦うヤトはいかなる不利な状況でも的確に戦える。
ところが、ヤトVSダァクとなると……ヤトには目の前の相手が『見えない』に等しい状況となってしまうわけだ。
ダァクは自分の振るう剣に殺気が無い事を知らないかもしれない。
そもそも、彼は誰かを殺すつもりで剣を振る事自体あまりない。
いつも手加減する癖がついている。
そうなってしまった理由は色々あるものの……とにかく、無意識的に全てにおいて殺気が載っていないのだ。
だからこそ普段、戦い事に疎いお嬢様を隣にしていながらも、彼女から恐れられるという事が無い訳である。
決してティナを意識して殺気を出さないようにしているのではない。
……故に、意図的に殺気を載せる事はもちろん可能である。
そんな事をする時は非常に限られてくるものの。
フェンシングや剣道と違い判定はどこまで、というルールは闘技場には無い。
時に足、相手の喉も隙あらば狙いながら時計回りに一周と何度か。
二人はほぼ同時に一歩背後に下がって距離をとった。
集中力の限界だ、一般的に長時間斬り合うとなると集中力が欠けた方が負ける。それを支える体力もまた重要な要素だが……。
どちらも体力に関しては自信のある方である。
深い息をついて噴出した汗をぬぐいつつ、お互い……自然と用心してもう一歩背後に下がった。
今後も同じ突き試合をつづけるとは限らない。戦い方は自由だ、舞台にいる以上武器を持って、いかなる戦略も許されている。
これ以上同じ戦い方をしていてはらちがあかないと判断しただろう。
これではどっちが勝てるかお互いに判別が付け辛い。
……賭けるならばなるべく自分の勝率が高い方へ、……基本的な事だ。
息を整えつつ、今後どう戦いを変化させれば有利に働くか……虎視眈眈を隙を狙う。
ここで二人の特性の差が現れる事になる。
テリーは『逃げ』を嫌い一方的に自分から仕掛ける事も厭わない。相手が待ちに入れば必ずそうする。長期的な集中力に自信がないからこそ自然とそうなってしまう。
対するダァクはどちらかといえば『待ち』で、受け身を取ってのカウンターを狙いたがる。
余計な剣は振らない……無駄のない戦いを好む。
「じゃ、こーいうのはどうだッ?」
仕掛けたのはテリーが先だ、そうなるだろう、今までの戦いをみるに恐らくそうなるだろうと多くは予感していたに違いない。
突きが……貫いてくる。
相手が衝撃波を剣から絞って打ち込んできたと察してダァク、回避を選択。
衝撃が拡散していない、受ければ吹っ飛ぶにとどまらない事を理解しているのだ。テリーが放つ一撃が恐ろしく『重い』事は先の戦いを見ていて把握している。
任意で右側に逃げる、テリーの攻撃が一撃に留まるはずがないと見越しての右だ。今だ動く気配のない左の拳を警戒したのである。
もちろんそのように逃げられる事はテリーもまた把握していた。右に逃げられては左の拳を繰り出すに間合いが広がり過ぎているし自分の体が邪魔して上手くいかない。
しかし、右に逃げると分かっていれば戦略はさらに練り上げる事が出来る。
右に逃げ距離を置き相手の出方を見ようとするのは……ダァクの癖と言っていいだろう。
しかし……安全圏を手に入れたはずだというのに、何かの気配が迫ってくるのを戦士としての勘が訴えてくる。ダァクはテリーほど身体能力に優れている訳ではない……というか、テリーがやや人間としては異常値なのだ。そういう所ダァクはバンクルドを思い浮かべてしまう。
勘を疑うことなく……黒剣をふるい驚異と感じ警戒した『もの』を撃ち落とす。
間違いない、撃ちおとしたのは……テリーの左手から放りなげられていた小石。
虚(フェイント)だ、気がついた時には……ひねり出されてしまった隙にテリーの左腕が地面を掬う。
これはテリーの、殺気全てに超反応して逃げ回る対ヤト用の戦略の一つでもある。
拡散する衝撃波を避けるための動作を一切奪われたダァクは黒剣を振り払った動作のまま背後に吹っ飛ばされた。いや、かろうじて背後に飛んで衝撃を緩和。それでも壁まで押し込まれ、叩きつけられる。
壁に叩きつけられたと思った次の瞬間、壁を蹴って飛び出す。
カウンター待ち戦略に特化しているだけはある、自分がダメージを受ける事に一切ひるまない。
衝撃波を出した後出来てしまう致命的な隙目がけ、ダァクは突きを見舞ったがやや距離が開き過ぎた、あっさりとテリーからは逃げられてしまった。
というより、一応用心をした為に全力で左を叩きつけていないのだ。
衝撃波を伴う攻撃は出した後の隙が酷い事は本人が一番知っている。だからこそ軽々しく出すことは無い。
ダァクの一撃を避けたテリーだが体勢がまだ完全に整わないうちに相手は鋭く反転、低く地面で着地して地面を蹴る。ダァクは黒剣を片手に握り込んだまま斬撃を含めた攻撃に転じてくる。
テリーは右腕の武器を『盾』として攻撃を往なすもダァクの攻撃は巧妙だ。
ようやく勢いが止まり再び距離を置く頃……テリーの右手に固定される剣を抑えている布がずたずたになっていた。わざと手元を狙われた。……狙いが武器を手放させる事だと悟ったからこそこの程度ですんだのだ。
よもや『武器破壊』を専売特許とするテリーが逆に、それに等しい行為を仕掛けられるとは。
矜持と呼べる感情を逆なでにされた気分になってテリーは笑った。
笑う、とはすなわち口を引き上げ大きく見せて牙を見せる……威嚇の動作とも言われる。
すぐにもダァクは追撃体制を取って仕掛けてくる。まず右手の武器を奪う、その戦略方法でダァクは攻め続けるつもりのようであるが……
同じ手を何度も食らっていては後手に回る……先制こそが勝利の鍵。
強引にテリーは『合わせた』
乾いたた音と一緒に、撃ち合わせた武器が弾かれて吹き飛ばされる。
背後に倒れるのをなんとか免れ……布がはじけとび、武器が吹っ飛んで行ったのをテリーは目で追った。あまりの衝撃に右手が肩からすべて痺れている。武器は、滅多な事では折れないので衝撃のあまりにそのままの形ではじけ飛んでいってしまったのである。武器が頑丈なのを見越しての攻撃だったが、やはり自分の腕の方が持たなかった。
筋が違え、肉離れを起こしおそらく骨も一部砕けただろう。
見る間にどす黒く右腕が変色して膨れ上がった。
状況はダァクも同じだろう。
ただダァクはテリーと違い腕を露出していないので……右腕がどういう状況か正確には分からない。表情から笑みは消え無表情だ、痛みを表現しないようにしているのだろう。
わからないが、素早く黒剣を左手に持ち替えたところ右腕は破壊されているに違いなかった。
袖の方から 俺の剣壊す気かー!などと怒鳴り声が聞こえてくるわけだが当然二人は無視。
「お望みの通り、武器を手放してやったぜ」
テリーの言葉にようやくダァクはいつもの調子で笑う。
「忘れていたよ……あんたが自分の肉を断つに遠慮ないって事」
ダークやクリスとの戦いにおいて彼は、最大の武器であるはずの右の拳を差し出してここまで来たのだ。
その勝利の為に『死』も厭わない真剣な態度をダァクは素直に忘れていたのだ。
そこまでして勝つ必要は無いとどこかで思っていた所為もあるのだろうと……ダァクは自分を律する。
勝利へのこだわりは……ある。
割とこれで負けず嫌いを自負するダァクだが……ティナと出会ってから、彼女を泣かすような事だけは止めようと努めるに……元来持っていた無茶な態度がなり潜めてしまう事が多くなっているのは分かっていた。
彼女の前に、我慢する事もよくあってそれで苛々して、衝突してしまう事も。
「楽しむってのは、遊びじゃぁないのね」
「そりゃ勘違いだな、命を掛けて遊んでいいなら遊びでもいいが」
……せっかくまじめにやっている所悪いのだが解説席が呼び出されてしまいますよ。
「ええと、……ついにお遊び仕様初の死人が出る気配なのかな?」
「というか、こういう場合は殺し法度にしておいたらどうなんだろう」
ごもっともである。
残念ながら死んだら復活できるような呪文がないので本当にジエンドなのだが。
「問題ありませんよ」
レッド、珍しくブラックじゃない穏やかな笑みを浮かべて目を閉じ、言った。
「……今回集っている皆さんには恐らく『楽しい』戦いを提供しあった相手を殺してしまうような、ヤボったい人はいませんので」
「……それもそうか」
少しだけ彼ら、戦いヴァカの仕様とやらを悟った気持ちでトリスは頷く。
「いや、例外がここに一人」
こっそり逃げ出そうとしていたルインにハイドロウ、遠慮なく指で示す。
「毀損系上級魔法を最初からぶち込んだもんね」
「き、効いてなかったんだから別にいいだろうが!」
「効いてたらクリス君、今頃肉片になってただろうけど」
「物騒な魔法だったんですねぇ」
その通りだよとトリスも同意し、なぜか笑い声が響く解説席。
……『毀損-ハヴォック』……非常に物騒な攻撃魔法である事くらい連中、ハナから知っている。
ルイン、乾いた誤魔化し笑いをしていたが……ここは突っ込まないとどーしよーもない場だと途中で把握。
「いや、笑ってる場合じゃねーだろ!なんだ?何が起こったのか説明しろよ!」
「そうだな、解説しておこう……テリー君は相手本体を打ち込むより先にまず、相手の武器防具を破壊して戦意喪失を図る事が多いそうだが」
「そうですね、ヤトやアベルさんから聞くにそういう事が多いらしいです。……闘技場で闘士として戦うに勝者は敗者の命を奪っても良いらしいのですが……テリーさんはほとんど殺した事が無いのだそうです」
「ん、それ実は本邦初公開んなんじゃないのか」
「ふふふ……ま、そのうち彼の番外編出ますのでそちらで詳細は」
と、一応CM。
※解説※
殺さなかった訳ではない。殺した数は少ない、が正しい。物事の伝承は極端な方に傾くのが情報学的によく見られる傾向である。そのあたりの詳しい経緯については『トビラ』番外編『西負の逃亡と密約』参照
「テリーさんも外見上はただの西方人なんですが色々ありまして……圧倒的な破壊力を有する攻撃を放つ事が出来るのは皆さん把握いただけたでしょう。あれを人体に向けて打つ事はめったにしないという事ですね。基本的に武器・防具に向けて撃ってそれを壊してしまうようです」
「つまり、……奴はダァクの武器を壊しに行ったって事か」
ルインは状況を把握し腕を組んだ。
「多分そうするに攻撃の正体である『振動』を直接、叩き込む必要があるんだと思う。強引に武器破壊を行ったんだろう、自分の持つ武器を媒体にしたんじゃないのかい」
「……しかし自分の右腕にもダメージを与えている、失敗したのかな」
トリスの分析にレッド、小さく首を振る。
「恐らく……相手の右腕をも壊しにいったのではないでしょうか。基本的に肉体から直接武器に放つところ右手はあの通りです、最初から使えないならとまさしく、捨石にしてしまったのかもしれません。場合によっては部位破壊も使うとヤトが言っていました。実際足をツブされてボコ殴りにされた事があると言ってましたし」
「そりゃえげつないねー」
えげつないねーとか言いながらなぜかあやしく笑っているハイドロウ。
SFな本編にあるとおり彼は本性ドSである。
ルインは腕を組み、お互い左腕を構えたまま様子をうかがうのを眺め……吹っ飛ばされ、遠くに投げだされているサガラの剣を見つける。
「武器破壊って、結局どっちも壊れているようには見えねぇけど」
「だから、武器より武器を握る腕を狙ったんじゃないの?」
「そうじゃないな、元来武器も壊そうとしたはずだ。ただ……あの二つの剣は互いに特殊過ぎるから無事と言える。一方は龍鍛合金などと呼んでいるがようするにリンクソードの一種だろう、滅多なことでは欠ける事すら無い」
まぁ、それでも本編にて一回折れましたけどね。
レッド、こそっと呟いた。トリスはリンクソードと言い切ったが実際には『リメイク』と呼ばれる模倣品か、劣化複製品なのでクオリティについては少々傷がある。
「対しダァクの黒剣は……見ていたものは気が付いていただろうが柔らかい。柔軟性の高い特殊な鋼だ」
一見硬い棒に見える黒剣だがその実、振るとぐにゃりと撓る程に柔軟性に優れている。
「詳しくは俺もよくわからんが、ええと……バンクルド曰く、超長期間にわたって使い潰された剣であって鍛え直しの数がハンパネェからすんげぇ事になってんだよ……との事」
「よくわからん」
「うん、俺もよくわからん。まぁ想像で補うに……打ち直し、鍛え直す度に鋼の質が変化向上して普通では考えられないような状態になった武器、と言ったところか?色からして炭素含有量が高そうだが……それならあんなにしなったりはしないだろうし」
レッド、超強度で炭素含有でしなる物体についてリアル知識があるので思わず額を抑える。
「……あれこれとそーいう『剣』の伝承に心当たりはあるのですが、実際はっきりしていないのですよね……ダマスカス鋼はこっちの世界ちゃんと流通してますけどリアルのアレとはまた別ですし……」
現実におけるダマスカスと、エイトエレメンタラティスにおけるダマスカスは構成が違うという意味で、だ。……世界が違うという事になっている以上、当たり前ではあるけれど。
「もしかすれば龍鍛合金の祖にあたる存在かもしれないな」
「とにかく、希少な剣なんですね。……魔導都市の連中には格好の研究材料だと」
「ま、だからファーステクもずっと隠し持ってたみたいだが……さてはて」
剣の曰くは又別の話という事で……機会があればどっかでやるだろう。
「……壊れてねぇな」
壊したつもりだったが黒剣は無傷であるようだ。
時に、このように破壊が不可能な武器もまた存在する。ヤトが使っているサガラの剣もその一つだが、鉄の塊を一発で粉砕するような破壊力が保障されている訳ではない。力点を間違えば折れるべき武器も折れ無くなる。細かいコントロールが重要なのだ。
ゆえにこの武器破壊という技はテリーオリジナルである。決してランドールには真似ができない芸当なんである。
※解説※
ランドール……テリーと同規格を持つ外見南方人の爆裂勇者
戦っていて、どうにも黒剣がやけに撓る事をテリーは分かっていた。
その性質からどういう武器なのか記憶を探ってみたが……結局よくわからなかったのである。
破壊まで持っていけるか不安だったからこそ……テリーは自分の右腕を破壊してまで相手の右腕を奪う選択肢に出た。
「言っとくが、一応これで左手でも武器は扱えるぞ?」
そんなダァクの言葉にテリーは左腕を握りこんで見せた。
まだ勝負がついたと思うなよというアピールにテリーは笑って目を細める。
「こっちだってそれは同じだ、こっちの左腕は無傷っての忘れんな」
もう一発その左腕にも破壊の衝撃ブチ込んだっていいんだぜ、と……挑発されているとダァクは察する。
そうするだろう、標的が腕だけとは限らない。
足など片方でも持っていかれたらおそらく打つ手はなくなるだろうな……と、ダァクは剣を前に構えやや腰を低く体制を整える。
「やっぱディフクレクトは持ってくるべきだったわねぇ」
「はッ、気が付くのが遅ぇんだよ!」
「けどまぁ、黒剣と合わせて使うってのは実際のところ実現しないし、本来はどっちか一方を選ばなきゃいけない。もしどちらか選択って事でディフレクト持ってきてたらさっきので俺は負けだ」
「その、ディフレクトってのはリンクソードとか言うので……ヤケクソに頑丈らしいと聞いたが」
「本体はね、ところが残念な事にディフレクトの本体は『柄』なのよ、刃は普通の鋼だから……今の喰らってたら間違いなく折れて使い物にならなくなってるでしょう」
「なら、その剣で間違ってねぇんじゃねぇの?」
選択は黒剣で合っていた。そういう意味だ。
「……かもしれない」
お互い出せる手札は出しつくした。
あとは……お互い持ちうる残った札を叩きつけ、その組み合わせ次第となるだろう。
勝敗の行方は刹那の分岐により結果は幾千と移り変わるもの。
状況、状態、その時の気持ち。
一対一とは限らないし、地面が平坦だとは限らない。
天候が晴れとも限らないし、お互い最高のコンディションで戦えるとも限らない。
その場その場に合わせた戦略があり、得意の舞台があり、得意な場面がある。
*** *** *** ***
「この結果は全てではない」
……勝敗のついた舞台に向けて……トリスは呟いた。
「そうですね、時と場合によっては今まで着いた勝敗が全てひっくり返る事もあるのでしょう」
眼鏡のブリッジを押し上げてレッドもゆっくりと答える。
「でもま、それぞれの特性は出しつくした。あとはその噛み合わせで……どうなるのか。ようするに想像の幅は尽きないという事を言いたいんだろう?」
ハイドロウはようやくこのふざけた舞台が終わるのだ……と、ため息を交えて姿勢を崩す。
「いい試合だったじゃねぇか。そんでもって、最後の最後で他人に放るのは……上の人って奴の悪い癖だ」
ルインは肩をすくめて笑う。
「想像を止めるな、それが……どうにも全体に向けたコンセプトらしい。優しくないのは誰かの真似だとかいうが。答えを出すのは好きではないのは確かなようだな」
「最後真面目に〆てもねえ、しょうがないので僕がすっきりはっきり言っておきますが」
レッド、にこやかにカメラ(?)目線で振り返る。
「結局どっちが勝ったのか。それは、貴方のご想像にお任せします……と、ようするに言いたいみたいです。無責任この上ないですね」
「全くだ、そこらへんはこのウチの責任感だけはあるトコロ、見習ってほしいもんだね」
「ダケ、とかゆーな!」
ルインの最後のツッコミにいつもの苦笑いを浮かべ、トリスは青いマントを翻し立ち上がる。
「やれ、これで俺はまたひたすらしゃべらない何考えてるか分からない人に戻るのかー。いやぁ、久しぶりに全開で会話するとすがすがしいなー」
「そんな事言って、どっかに呼ばれる事想定させないでくださいよ」
「はははは、たまにはこういう席も悪くないな。おもしろかったよ」
「というわけで、これにて終わりだよ。……ええと、終わりだよね?」
ハイドロウがそのように念を押したのだが。
レッド、眼鏡のブリッジを押し上げて怪しい含み笑いを零した。
「ふふ……実はですね。まだちょっと悪だくみがあるらしいです」
手を組んで司会席についたままのレッドをみやり、トリス再びマントを翻して席につき直した。
「ふむ、正直に味をしめたと言っておこう。付き合おうか」
「あー……これもうブログ版じゃないもんねー……やるんだ」
「何をやるんだ?」
ルインの突っ込みはどうやら、まだ…………続くらしい。
*** 終…………? ***
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