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番外編 補完記録13章 『腹黒魔導師の冒険』
13章 没稿後半『魔導師はおしゃべりで困る』
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■おまけの書 後半■
とりあえず、魔法探査でヤトを探している態で甲板に居る僕ですが……アベルさんがその周りを落ち着きなく行ったり来たりしていてとても困っております……と、そこへ僕の魔導実験に致し方なく協力中のテリーさんがやってきましたね。
そう、乗り物酔い防止魔法開発の為の実験ですが今回は節約モードとして、不調が現れ始めた時だけ三半規管を水平に騙す魔法を起動させています。
まだ調子は良さそうで、若干機嫌が良い様に見受けられますね……ついでにこの状況から助けてくれませんかねぇと、視線だけで訴えて見ましょう。
あ、なんか通じた気がします。
「お前、こんな所に居たのかよ」
と、テリーさんはアベルさんに向けて声を掛けてくれました。
「何してんだ?」
……というのは、僕も含めて言われている気がして不機嫌なアベルさんの替わりに僕が応えましょうか。
「ヤトを探すように言われまして」
「ほう、テメェの魔法で探せんのか?」
「いやまぁそれは……やらないよりかはマシ的な感じではあるのですが……」
アベルさんの手前つい口ごもってしまう僕です。
「おいアベル、そんな事よりお前イシュタル国に戻るのは大丈夫なのか?」
「あ……」
テリーさん、ヤトを探す事を『そんな事』と切り捨てましたね、アベルさんの逆鱗に触れるかと思いましたが……それ処ではないという風にやや青ざめた顔で絶句している。
「おいおい、相変わらず一つ気を取られると一つ忘れる奴だなお前は……。アイツの事は放っておけ、どーせどっかでピンピンしてやがる」
「な、なんでそんな言い切れるのよ!?」
「あー、なんだろ、あれで結構しぶとい奴だからよ」
……約束、していましたものね。
僕はこっそりほくそ笑みリコレクトしますよ。エルエラーサで新生魔王軍相手に殲滅戦を行ったとき、最後に殴り合いながらテリーさんが誰かと話していたのが聞こえていましたから。
「そういえば、アベルさんはイシュタル国出身で……やはり自国には色々と不都合があるのでしょうか」
イシュタル国の首都レイダーカではそういう素振りは無かったのは……あれは、リコレクトコマンドが開放されていなかったからでしょうか?あるいは出身地であるというエズがある本島では無かったから問題無しという事だったのか。
「行先にもよるんじゃねーの、ストアの船は大人しくセイラードに入っちまうんだろ?って事は、エズ近辺に行くんじゃねーのかよ」
「そうですね、そうなると思います」
「だとするとエズは隣町だから、コイツには困った事になんだよ」
と、親指で差されているアベルさんはロープの束の上に座り込んで額を抑えていますね。
「そっか、忘れてた……この船イシュタルに向かってるんだっけ」
「ヤバそうなら船で待ってりゃいいんじゃねぇ」
「……ううん」
アベルさんは、少し遅れて顔を上げ……首を振る。
「大丈夫、あたしも逃げてちゃいけないんだと思うから」
「でも今の状況で、お前ん家の後始末に巻き込まれるのは勘弁だろうぜ、」
「積極的にエズに行こう、とは思ってないわよ。ただ成り行きそうなったならその時は、覚悟を決めるわ。目立ちそうなら変装でもなんでもすればいいじゃない」
アベルさんはイシュタル国エズ出身、そして何やら御家騒動があるらしい。
その詳しい事情を、テリーさんや恐らくはヤトも把握しているのでしょうねぇ。
テリーさん、一瞬僕に目配せしてから……甲板に置いてある樽に腰を掛ける。僕は小さく頷いてお願いしますアベルさんを説得して僕を自由にしてくださいという、訴えが通じた様です。
「マツナギからも聞いたがよ、ようやっとアイツの口から状況を聞いたらしいな」
「……」
アベルさんは無言で……頷きましたね。
状況とは、ヤトがどうにも一度死んでバグであるレッドフラグを持ち、そのエラー値をブルーフラグ権限で上書きするという異常なログインをしている……状況ですね。
より正確に言えばログイン出来る存在が二つ、あるいは二つ以上になるという異常事態をナドゥから引き起こされてしまった為、バグ扱いであるはずの複製された方にログインしてゲーム再開してしまった……いえ、せざるを得なかった、そうして始まった『異常事態』の事。
それは、ヤトだけが引き起こせた事ではありません。
僕らブルーフラグのテストプレイヤーなら誰でも、ヤトと同じ状況になる可能性があります。
肉体の複製で三界接合と時間操作という二つの禁忌魔法を犯しており、かつそこにナドゥが持つ『経験値の取得』による精神体の付与があって実現した、極めて稀な異常事態です。
ナドゥはヤトでそれが極めて理想的に実現した為に彼を特別視しましたが……恐らくは他のブルーフラグプレイヤーでも同じような事態にはなったと思いますよ。
だからと言って試してみたいとは、僕は魔導師ですが流石に思いませんね……本人の承諾が得られるのであればやってみてもいいかもしれませんが、自分を増やすという行為は感覚的には、極めて悍ましいのでは?
僕は元来死にたい方なので、ライフを増やす方向性には全く持って同意しかねます。
よくある悪役の目指す所が『永遠の命』だったり何だりしますが、そんな想像しただけで面白いはずが無い事を目論む者は大抵愚か者ですよ。いっそ永遠の命でも授かって大層ヒマな余生を永久に味わえば良いとも思いますが、最終的にこの手の死を失ったモノは最終的に自分を滅ぼす方向性にシフトし、自分自信を破壊出来ないなら自分以外を全部壊す、という方向性に行きつく事が多いですよね。
世界に住む、多くの者からは迷惑千万な話です。そういう都合『永遠の命』的な物を求める者は倒す方向性で勇者的な者があくせくするのでしょう。
ヤトは、最終的にバグプログムだからという都合解消されてしまう前提の上で……そういう、無限増殖する命を得てしまっている様な状況です。
その恩恵に今は生かされているだけだろうと……ドリュアートに会った時に理解し、それをアベルさんにだけは黙っていてくれと僕らに頼み込んで来たのです。
犬猿の仲である様に普段振る舞うこの二人は、都度理不尽な暴力を振るう側と振るわれる側、それはどう見たってイチャついているとしか見えないのに、両人そろってそういう関係性を否定しがちです。しかし、少なくともアベルさんのそれは完全に嘘なのは皆分かっています。
何だかんだ言いますが、間違いなくアベルさんはヤトが好きなのでしょう。ただ、少しだけ見ている側面が違う様な気はします。何と言いますか……ヤト・ガザミというキャラクターの後ろに居るサトウ-ハヤトという中身の方を好いている……それに似た……ちょっとした違和感のある好意の向け方をしている気がします。
ヤトもアベルに好かれている事は分かっていて、口を開けば嫌いだの、女じゃないだの散々言う割には彼女の事を常に気にしている。
彼女の『気持ち』を大切に思っている……それは、自分が陥っている状況を彼女には伝えないでくれと願った事からしても良く分かる話です。
理不尽に殴られるから、などと言っていましたがそんなの、照れ隠しなのは皆分かっていますよ。
「お前、その件でヤトの事を殴ったんじゃねぇって話だったが、」
「やめて」
「いや、止めねぇ。アイツが陥っている状況を聞いているなら……お前はそれからだって逃げる訳にはいかねぇんだよ。こればっかりはな」
アベルさんに向けては、この所ずっと同じような話をナッツさんとマツナギさんも含め、入れ立ち代わり立ち代わりで行っているのですが全く進展が無い。そういえば、テリーさんは船酔いを恐れてか暫らく船室から出て来てませんから……今回アベルさんの説得は初挑戦ですね。
「完全に……手遅れなの?」
「そのつもりでいい加減に諦めろと奴は言いたいんだろ。ま、それに限らず諦めろとアイツはお前に言い続けて来たんだろうが……違うのか?」
「……」
様子からすると、テリーさんの言葉通りの展開があったのでしょう。アベルさんは黙って俯いてしまいました。
「つっても現実目の前でピンピンされてたら信じられない気持ちも分からんでもねぇし、もしかすればその確定未来もどーにか突破するんじゃねぇかなっていう、なんつーのかな。楽観的希望もあったりするぜ。そうなってもらった方が俺達としては……仕合せだろうな」
「テリーも、アイツには生きていて欲しいんだよね」
「まぁな、死なれるよりかはそりゃぁな。好敵手だ、一手願ってガチで殴り合える、数少ない友人なんだからそんなのは当たり前だろ」
その当たり前を、否定するから彼は兎角アベルさんらから怒りを買いがちなのですよ。僕は一人心の中で何度も頷いています。
「でもアイツはな、最悪死ぬ事を覚悟してんだよ。もうとっくの昔にそいつはしたつもりでお前と別れてんだ。それは分かるだろ?」
「……分かりたくない」
テリーさん、ため息をつきつつもアベルの肩を叩く。
「じゃ昔の話は置いといて、とりあえず今ヤトは最悪死ぬ事を覚悟してだな、きっと俺らに余計な心配掛けまいと思って『俺最悪死ぬから』って予告してるに過ぎねぇんだよ。あいつ、超絶チキンだからな。それを煩ぇ知らねぇ聞きたくねぇっていう、お前の気持ちは分からんでもないが、あのチキン野郎の気持ちも汲んでやれよと俺は言ってる」
「テリーは納得出来るの?!」
顔を上げて睨まれたのを平然と受け止めて、テリーさんは真顔で応えましたね。
「納得はしてるな」
「は?なんで!?あたしの気持ちも分かるんでしょ?」
「それとこれとは別問題だからだ」
「は?訳わかんない……」
「だから、俺の気持ちと奴の気持ちは別問題だって言ってんだよ」
「………」
アベルさんの根本的な問題点は……気持ちを双方で理解しているというのなら『思いは同じ』だと思っている事なのですね。
「もう少し頭を冷やせ、アベル。そうしないとヤトを探したって、まともに顔合わせる事も出来ねぇぞ」
「……そんな事言ったって……」
「少なくとも、ヤトが怖がってお前と距離を取りたがるだろ。そんでお前が追っかけて、必死に奴は逃げる。昔からその繰り返しだ。やっと距離が縮まったかと思ったのにまた離れるハメになっちまうぞ?アイツの傍に居たいのがお前の本音だろうが」
アベルさん、僕がまだ近くに居る事に今更気が付いたように顔を上げて、僕を見て……ややバツが悪そうにしながらも小さく頷いてテリーさんに応えましたね。
「レッドは開放してやれ」
「……うん、ごめんねレッド」
「いえいえ、行方が気になるというのは僕も同じです」
などと口から出ましたが、実際にはあまり心配はしてないですね。何故でしょう。
一体何処へ行ったのか、さっぱり手掛かりが無くて皆さん比較的焦っている様ですが不思議と僕は落ち着いている気がします。ああ、あとテリーさんも同じくでしょうかね。ナッツさんは言葉にはしませんがやや悪い想像をしている雰囲気ですね……今、寝た切りのワイズさんの様態がまたしても悪化しているのでその緊張も相まってやや塞ぎこんでいる所がある様に思えます。
――――という所まで進めたのですが長くなるのでこの話は一旦ここで切る事にしました。その後、イズミヤ通信魔導師から連絡が入り、ヤトの行方がはっきりわかって予定通りセイラードに急行の段取りです。
ワイズ氏は様態悪化から意識を取り戻した設定で、イシュタル国セイラード港に入った時には大体復帰出来ています。
意識だけが戻らない状態で、稀に息をしなくなり心肺停止にならんとする『様態悪化』が都度起きていましたが……完全に話としてやり損ねてるそうですが裏設定として、ナッツ氏その都度気付けの薬を投薬。この成分の強さを段々と上げており、ぶっちゃけその副作用で昏睡し続けている様な物だったりもします。
なので、実は意識は戻ったものの覚醒剤成分にほど近い奴を投与されていた都合暫らく副作用で苦しんでると思われます。その世話までがナッツさんのお仕事です。
こちらはアップ系ですが、ディアスで氾濫したのはダウン系、こちらを抜く薬物複合型魔法治癒術を信頼できる魔導師に取り急ぎ引き継ぎました。その辺りは抜かりなく僕が派遣手配したものです。
光の剣によるパフォーマンスを行ったのは、魔導師協会としての念入りな手回しですね。その後魔導師協会も含めディアス国での活動が幅広く行う為の足掛かりとして麻薬治癒師を魔導師協会で用意した訳です。
とまぁ、このように『設定厨』と自分で認めるモノカキの様ですから、語り倒す口があると何でもかんでも語らせたくなってしまいたくなる様ですね。困ったものです。
作法的にはハコを作って、障害物を用意して最後にゴールを準備しておく。
で、上からキャラクターに『行ってこい』という感じでゴールに向かって流し込む方法で話を書いているのだそうです。キャラクターが辿らなければ作った箱の設定は無駄になる、あるいはそれはまた別の話になる様ですね。
本編をやっていた頃もそうやって削った話が沢山あり、端折っても良かったな……という都合 飛ばし読みOK部分として救済したページがあったのだそうですが、魔導師を主軸にしたらとてつもない量を削る羽目になったのだそうです。
ただでさえ話のボリュームがデカいというのに……。
というわけで、蛇足章はこれにて終了です。
本編含め、話数が決まっていて視点がヤト中心と決めていた都合公開していない話として、僕、レッド・レブナント視点の13章となりました。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
*** おわり ***
とりあえず、魔法探査でヤトを探している態で甲板に居る僕ですが……アベルさんがその周りを落ち着きなく行ったり来たりしていてとても困っております……と、そこへ僕の魔導実験に致し方なく協力中のテリーさんがやってきましたね。
そう、乗り物酔い防止魔法開発の為の実験ですが今回は節約モードとして、不調が現れ始めた時だけ三半規管を水平に騙す魔法を起動させています。
まだ調子は良さそうで、若干機嫌が良い様に見受けられますね……ついでにこの状況から助けてくれませんかねぇと、視線だけで訴えて見ましょう。
あ、なんか通じた気がします。
「お前、こんな所に居たのかよ」
と、テリーさんはアベルさんに向けて声を掛けてくれました。
「何してんだ?」
……というのは、僕も含めて言われている気がして不機嫌なアベルさんの替わりに僕が応えましょうか。
「ヤトを探すように言われまして」
「ほう、テメェの魔法で探せんのか?」
「いやまぁそれは……やらないよりかはマシ的な感じではあるのですが……」
アベルさんの手前つい口ごもってしまう僕です。
「おいアベル、そんな事よりお前イシュタル国に戻るのは大丈夫なのか?」
「あ……」
テリーさん、ヤトを探す事を『そんな事』と切り捨てましたね、アベルさんの逆鱗に触れるかと思いましたが……それ処ではないという風にやや青ざめた顔で絶句している。
「おいおい、相変わらず一つ気を取られると一つ忘れる奴だなお前は……。アイツの事は放っておけ、どーせどっかでピンピンしてやがる」
「な、なんでそんな言い切れるのよ!?」
「あー、なんだろ、あれで結構しぶとい奴だからよ」
……約束、していましたものね。
僕はこっそりほくそ笑みリコレクトしますよ。エルエラーサで新生魔王軍相手に殲滅戦を行ったとき、最後に殴り合いながらテリーさんが誰かと話していたのが聞こえていましたから。
「そういえば、アベルさんはイシュタル国出身で……やはり自国には色々と不都合があるのでしょうか」
イシュタル国の首都レイダーカではそういう素振りは無かったのは……あれは、リコレクトコマンドが開放されていなかったからでしょうか?あるいは出身地であるというエズがある本島では無かったから問題無しという事だったのか。
「行先にもよるんじゃねーの、ストアの船は大人しくセイラードに入っちまうんだろ?って事は、エズ近辺に行くんじゃねーのかよ」
「そうですね、そうなると思います」
「だとするとエズは隣町だから、コイツには困った事になんだよ」
と、親指で差されているアベルさんはロープの束の上に座り込んで額を抑えていますね。
「そっか、忘れてた……この船イシュタルに向かってるんだっけ」
「ヤバそうなら船で待ってりゃいいんじゃねぇ」
「……ううん」
アベルさんは、少し遅れて顔を上げ……首を振る。
「大丈夫、あたしも逃げてちゃいけないんだと思うから」
「でも今の状況で、お前ん家の後始末に巻き込まれるのは勘弁だろうぜ、」
「積極的にエズに行こう、とは思ってないわよ。ただ成り行きそうなったならその時は、覚悟を決めるわ。目立ちそうなら変装でもなんでもすればいいじゃない」
アベルさんはイシュタル国エズ出身、そして何やら御家騒動があるらしい。
その詳しい事情を、テリーさんや恐らくはヤトも把握しているのでしょうねぇ。
テリーさん、一瞬僕に目配せしてから……甲板に置いてある樽に腰を掛ける。僕は小さく頷いてお願いしますアベルさんを説得して僕を自由にしてくださいという、訴えが通じた様です。
「マツナギからも聞いたがよ、ようやっとアイツの口から状況を聞いたらしいな」
「……」
アベルさんは無言で……頷きましたね。
状況とは、ヤトがどうにも一度死んでバグであるレッドフラグを持ち、そのエラー値をブルーフラグ権限で上書きするという異常なログインをしている……状況ですね。
より正確に言えばログイン出来る存在が二つ、あるいは二つ以上になるという異常事態をナドゥから引き起こされてしまった為、バグ扱いであるはずの複製された方にログインしてゲーム再開してしまった……いえ、せざるを得なかった、そうして始まった『異常事態』の事。
それは、ヤトだけが引き起こせた事ではありません。
僕らブルーフラグのテストプレイヤーなら誰でも、ヤトと同じ状況になる可能性があります。
肉体の複製で三界接合と時間操作という二つの禁忌魔法を犯しており、かつそこにナドゥが持つ『経験値の取得』による精神体の付与があって実現した、極めて稀な異常事態です。
ナドゥはヤトでそれが極めて理想的に実現した為に彼を特別視しましたが……恐らくは他のブルーフラグプレイヤーでも同じような事態にはなったと思いますよ。
だからと言って試してみたいとは、僕は魔導師ですが流石に思いませんね……本人の承諾が得られるのであればやってみてもいいかもしれませんが、自分を増やすという行為は感覚的には、極めて悍ましいのでは?
僕は元来死にたい方なので、ライフを増やす方向性には全く持って同意しかねます。
よくある悪役の目指す所が『永遠の命』だったり何だりしますが、そんな想像しただけで面白いはずが無い事を目論む者は大抵愚か者ですよ。いっそ永遠の命でも授かって大層ヒマな余生を永久に味わえば良いとも思いますが、最終的にこの手の死を失ったモノは最終的に自分を滅ぼす方向性にシフトし、自分自信を破壊出来ないなら自分以外を全部壊す、という方向性に行きつく事が多いですよね。
世界に住む、多くの者からは迷惑千万な話です。そういう都合『永遠の命』的な物を求める者は倒す方向性で勇者的な者があくせくするのでしょう。
ヤトは、最終的にバグプログムだからという都合解消されてしまう前提の上で……そういう、無限増殖する命を得てしまっている様な状況です。
その恩恵に今は生かされているだけだろうと……ドリュアートに会った時に理解し、それをアベルさんにだけは黙っていてくれと僕らに頼み込んで来たのです。
犬猿の仲である様に普段振る舞うこの二人は、都度理不尽な暴力を振るう側と振るわれる側、それはどう見たってイチャついているとしか見えないのに、両人そろってそういう関係性を否定しがちです。しかし、少なくともアベルさんのそれは完全に嘘なのは皆分かっています。
何だかんだ言いますが、間違いなくアベルさんはヤトが好きなのでしょう。ただ、少しだけ見ている側面が違う様な気はします。何と言いますか……ヤト・ガザミというキャラクターの後ろに居るサトウ-ハヤトという中身の方を好いている……それに似た……ちょっとした違和感のある好意の向け方をしている気がします。
ヤトもアベルに好かれている事は分かっていて、口を開けば嫌いだの、女じゃないだの散々言う割には彼女の事を常に気にしている。
彼女の『気持ち』を大切に思っている……それは、自分が陥っている状況を彼女には伝えないでくれと願った事からしても良く分かる話です。
理不尽に殴られるから、などと言っていましたがそんなの、照れ隠しなのは皆分かっていますよ。
「お前、その件でヤトの事を殴ったんじゃねぇって話だったが、」
「やめて」
「いや、止めねぇ。アイツが陥っている状況を聞いているなら……お前はそれからだって逃げる訳にはいかねぇんだよ。こればっかりはな」
アベルさんに向けては、この所ずっと同じような話をナッツさんとマツナギさんも含め、入れ立ち代わり立ち代わりで行っているのですが全く進展が無い。そういえば、テリーさんは船酔いを恐れてか暫らく船室から出て来てませんから……今回アベルさんの説得は初挑戦ですね。
「完全に……手遅れなの?」
「そのつもりでいい加減に諦めろと奴は言いたいんだろ。ま、それに限らず諦めろとアイツはお前に言い続けて来たんだろうが……違うのか?」
「……」
様子からすると、テリーさんの言葉通りの展開があったのでしょう。アベルさんは黙って俯いてしまいました。
「つっても現実目の前でピンピンされてたら信じられない気持ちも分からんでもねぇし、もしかすればその確定未来もどーにか突破するんじゃねぇかなっていう、なんつーのかな。楽観的希望もあったりするぜ。そうなってもらった方が俺達としては……仕合せだろうな」
「テリーも、アイツには生きていて欲しいんだよね」
「まぁな、死なれるよりかはそりゃぁな。好敵手だ、一手願ってガチで殴り合える、数少ない友人なんだからそんなのは当たり前だろ」
その当たり前を、否定するから彼は兎角アベルさんらから怒りを買いがちなのですよ。僕は一人心の中で何度も頷いています。
「でもアイツはな、最悪死ぬ事を覚悟してんだよ。もうとっくの昔にそいつはしたつもりでお前と別れてんだ。それは分かるだろ?」
「……分かりたくない」
テリーさん、ため息をつきつつもアベルの肩を叩く。
「じゃ昔の話は置いといて、とりあえず今ヤトは最悪死ぬ事を覚悟してだな、きっと俺らに余計な心配掛けまいと思って『俺最悪死ぬから』って予告してるに過ぎねぇんだよ。あいつ、超絶チキンだからな。それを煩ぇ知らねぇ聞きたくねぇっていう、お前の気持ちは分からんでもないが、あのチキン野郎の気持ちも汲んでやれよと俺は言ってる」
「テリーは納得出来るの?!」
顔を上げて睨まれたのを平然と受け止めて、テリーさんは真顔で応えましたね。
「納得はしてるな」
「は?なんで!?あたしの気持ちも分かるんでしょ?」
「それとこれとは別問題だからだ」
「は?訳わかんない……」
「だから、俺の気持ちと奴の気持ちは別問題だって言ってんだよ」
「………」
アベルさんの根本的な問題点は……気持ちを双方で理解しているというのなら『思いは同じ』だと思っている事なのですね。
「もう少し頭を冷やせ、アベル。そうしないとヤトを探したって、まともに顔合わせる事も出来ねぇぞ」
「……そんな事言ったって……」
「少なくとも、ヤトが怖がってお前と距離を取りたがるだろ。そんでお前が追っかけて、必死に奴は逃げる。昔からその繰り返しだ。やっと距離が縮まったかと思ったのにまた離れるハメになっちまうぞ?アイツの傍に居たいのがお前の本音だろうが」
アベルさん、僕がまだ近くに居る事に今更気が付いたように顔を上げて、僕を見て……ややバツが悪そうにしながらも小さく頷いてテリーさんに応えましたね。
「レッドは開放してやれ」
「……うん、ごめんねレッド」
「いえいえ、行方が気になるというのは僕も同じです」
などと口から出ましたが、実際にはあまり心配はしてないですね。何故でしょう。
一体何処へ行ったのか、さっぱり手掛かりが無くて皆さん比較的焦っている様ですが不思議と僕は落ち着いている気がします。ああ、あとテリーさんも同じくでしょうかね。ナッツさんは言葉にはしませんがやや悪い想像をしている雰囲気ですね……今、寝た切りのワイズさんの様態がまたしても悪化しているのでその緊張も相まってやや塞ぎこんでいる所がある様に思えます。
――――という所まで進めたのですが長くなるのでこの話は一旦ここで切る事にしました。その後、イズミヤ通信魔導師から連絡が入り、ヤトの行方がはっきりわかって予定通りセイラードに急行の段取りです。
ワイズ氏は様態悪化から意識を取り戻した設定で、イシュタル国セイラード港に入った時には大体復帰出来ています。
意識だけが戻らない状態で、稀に息をしなくなり心肺停止にならんとする『様態悪化』が都度起きていましたが……完全に話としてやり損ねてるそうですが裏設定として、ナッツ氏その都度気付けの薬を投薬。この成分の強さを段々と上げており、ぶっちゃけその副作用で昏睡し続けている様な物だったりもします。
なので、実は意識は戻ったものの覚醒剤成分にほど近い奴を投与されていた都合暫らく副作用で苦しんでると思われます。その世話までがナッツさんのお仕事です。
こちらはアップ系ですが、ディアスで氾濫したのはダウン系、こちらを抜く薬物複合型魔法治癒術を信頼できる魔導師に取り急ぎ引き継ぎました。その辺りは抜かりなく僕が派遣手配したものです。
光の剣によるパフォーマンスを行ったのは、魔導師協会としての念入りな手回しですね。その後魔導師協会も含めディアス国での活動が幅広く行う為の足掛かりとして麻薬治癒師を魔導師協会で用意した訳です。
とまぁ、このように『設定厨』と自分で認めるモノカキの様ですから、語り倒す口があると何でもかんでも語らせたくなってしまいたくなる様ですね。困ったものです。
作法的にはハコを作って、障害物を用意して最後にゴールを準備しておく。
で、上からキャラクターに『行ってこい』という感じでゴールに向かって流し込む方法で話を書いているのだそうです。キャラクターが辿らなければ作った箱の設定は無駄になる、あるいはそれはまた別の話になる様ですね。
本編をやっていた頃もそうやって削った話が沢山あり、端折っても良かったな……という都合 飛ばし読みOK部分として救済したページがあったのだそうですが、魔導師を主軸にしたらとてつもない量を削る羽目になったのだそうです。
ただでさえ話のボリュームがデカいというのに……。
というわけで、蛇足章はこれにて終了です。
本編含め、話数が決まっていて視点がヤト中心と決めていた都合公開していない話として、僕、レッド・レブナント視点の13章となりました。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
*** おわり ***
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