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番外編 補完記録13章  『腹黒魔導師の冒険』

13章 没稿前半 『魔導師はおしゃべりで困る』

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■おまけの書 前半■

 13章終わり……と、したい所なんですが。 

 ぶっちゃけメタな事言いますが実はディアス国で終わる予定だった……のですがね。
 実はもう1か所、ヤトの冒険の書から抜け落ちている所があるのです……ええ、ファマメント国の話ですね。

 魔王に殴り込めるメンツとして、ヤト、ランドール、アービス、ギルというトンデモ4人組を先に中央大陸へ送り出した後の、最後の大陸座ファマメントを訊ねる旅です。とかく先走りたい連中は放っておいて、我々だけで予定通りの大陸座全退避をしましょうねぇ、という感じで自然とそういう段取りになっていました。

 後に確認するに、ヤトは「あーそっか、そうだよな」などと言っていたので、完全にファマメントの事とか大陸座全退避の話は頭から抜け落ちていたのだろうと思われます。

 さて……僕が割とどーでも良い話を沢山挟み込む都合13章も大分長くなってしまった訳ですが、某新型ナニガシの影響もあり暇をしている都合もありまして……。

 レズミオ編を、僕ではない人をメインにしてやるそうです。

 そうですね、引き続き僕では無い方が良いでしょう、今回の事で皆さん解説が多すぎだと辟易した事この上ないでしょうから。
 
 番外編でやっていないのはあと、誰になりますか?
 そうです、彼女の番外編をこの勢いでやってしまおうとの事です。
 具体的な日時についてはどこかでアナウンスがされるでしょう。
 

 さてそれで、多く僕が解説を熱く語りすぎた所為で削った行数が計り知れないという13章です★
 この闇に消えた文章の、差支えが無い部分だけ二つ、以下に記載します。



 *** 何故ナドゥが魔導師ではないのかの理由について


 ―――彼がリュステルだったとしても、シーミリオン国のリュステル・シーサイドなんて人物が魔導都市に属していない事は間違い事です。名簿の確認をしたのかと聞かれれば、すでにカルケード国に居た時にそれは済ませましたと答えますね。
 居ないだろう事は大体察していましたが、一応確実を取ってちゃんと確認しておくのが、彼が言う通り『臆病』な僕のやり方ですよ。

 シーミリオン国の王家は水貴族種という、貴族種に近く水際に特化した魔物種が多い様です。ユーステルとキリュウがそうでした、キリュウの兄のリュステルも同じくである可能性は高いでしょう。
 具体的に水貴族とは何か、というと……貴族種、俗称エルフと同じ字は当てますがリアルにおける分かりやすい変換をするならば、マーマン、あるいはマーメイド、あるいはセイレーンや河童、みたいな所でしょうか。
 水辺に生息する魔物はリアル世界において多種多様に在るのと同じく、この世界の水貴族種は、貴族種と呼ばれる魔種よりかは見た目や生態系が整っていないのです。
 つまり下半身、あるいは上半身が魚とは限らないのがこの世界、八精霊大陸の水貴族と云う事になります。なぜ色々な種類が居るのか、諸説ありますがリュステル・シーサイドの話を聞いて色々と納得できることがありますね。
 要するに、後天的に暗黒比種レベルにまで魔道への変化を促す薬、あるいは『技術』がその答えなのでしょう。僕は副作用が無いのは在りえないレベルで疑っていたのですが、形状や生態系、見た目などが混沌としていて定まっていない事こそがリュステルの技法における、唯一の『副作用』なのではないでしょうか?
 リュステルやナドゥも水貴族種であるのなら、成長レベルが人間と同じとは限りません。
 貴族種と同じ字をあてる位なのです、水貴族種も多くは長命だと云われます。

 つまり……僕が把握していない時代の魔導師名簿に名前が在る可能性だってある。
 だから一応ちゃんと調べたのです。

 僕が、魔導都市で紫魔導師として請け負っていた仕事は名簿の管理なんですよ。

 勿論、名簿に記された名前を全部覚える必要は全くありません。無いのですが『僕』はこれで歩く百科事典という二つ名が在ります。そういうプレイヤーが中に居るキャラクターが、同じような趣味特技を持ち合わせてしまうのは、これはもう仕様が無い事ですよ。
 別に僕は技能として、一度見た文章や文字はほぼ覚えるという『超記憶力』を持って居ます。この技能をわざわざポイントを支払って取得したつもりはないのです。
 何しろ、僕は性別を変えた都合で大変不条理な値の経験値を持っていかれましたからね、そういう有利な技能は欲しくても取れる状況ではありませんでした。
 そうして実際ログインしてみると、キャラクターはある程度プレイヤーに備わる技能を自動的に履修してしまうシステムが組まれている様ですね。リコレクト・コマンドが開放されると同時に、イガラシ-ミギワが備えている記憶力能力が技能として自動履修されたのを知りました。
 僕は、意図的に思い出せる知識の量と深さを『選べる』のです。
 こっそりとナッツさんとは確認を取りましたからね、彼は意図的にそういう技能を取得してキャラクターメイキングをしたそうですよ。
 知能的な技能にスペシャルを得た場合、リコレクト・コマンドに……イメージ的に言えばボリューム摘みがついていて……思い出せる記憶の量を調節できる、あるいはさらに思い出す、という風に記憶の鎖をもっと長く引き上げる事が出来るのです。

 現職魔導師の名前と所属、ざっくりとした知識は大体僕の記憶の中に在る。名簿管理者として書類に最低一度は目を通して判子を押さなければならない職です。
 そうして、自然と頭に記録されてしまっている。思い出そうと思えばそれを思い出す事が出来る。だから、例えばアベルさんが探していた『メルア』と云う魔導師が、名簿上では数名居るのですが推定される人物は亡くなっている事はすぐに分かったし、それについて改めて調べる事だって造作も無い。
 何しろその名簿の管理者が僕なんですから。

 ナドゥ、リュステル、と云った人物が魔導師協会に属している、あるいは過去属していた記録にも無い、しかし僕が紫魔導師になるずっと前の記録までは保管義務はあれど中身を開いて管理する事が無い限り僕の記憶には保管されていない。
 だから、一応遡って詳しく調べる事はした、そしてやはりそれらしい名前や人物は魔導師協会に見つける事が出来なかった。
 この他に魔導技術と接触しそうな人物の名簿として、僕が把握していないのは……天導館の図書貸出名簿くらいですかね。
 そちらは管理統制が別になるので紫魔導師とはいえど特例でもない限り、正式な手順を踏んで探索依頼を出すしかない。
 僕が統制している所ではないのでちょっと仕事が遅いんですよね……仕事にえり好みをするのは魔導師の悪癖です、興味が在れば即座調べてくれるのですが、そうでは無ければトコトン後回しにされてしまいます。

 *** *** ***

 ―――という風に、エズ三人組が探している魔導師の名前から、誰の事かを即座知っている都合とか、ナドゥが魔導師では無い理由を断定するのに以上の様な理由がありましたが、解説は必須では無いという事で端折りました。



 *** ストアはなんでディアスに居たの?


―――実は、ディアス国ではナドゥの他に、ストアと誼を通じていた連中が居る事が分かったのです。ディアス国には貧困層が在った通りで、奴隷身分の人身売買も平気でまかり通っている所です。いえ、そうですね、魔導都市でもやってるしイシュタル国エズでも奴隷文化は在りますのでそんなに驚く事では無いのですが……ディアスの場合、植民地化した所から強引に連れて来た奴隷が多い。
 魔王八逆星ストアは、推測するに魔王軍を『産む』者でしょう。
 いくつかのホストとしての魔王軍も産みだして来た実績が在る。もしかすれば元々は、北魔槍側に入れようとしていた魔王軍はストアが用意する予定だったのではないでしょうか?しかしその前に、新生魔王軍の規格が整ってストアは……お払い箱になっている、という可能性は……どうでしょうか?

 とにかくその、ディアスの一番底辺の奴隷たちを貪り食っていた様で法王サイドの側近に、ストアに魅了されたのでしょう、法王に秘密で魔王八逆星を匿っていた一角があったのです。
 なぜそれが今回安易に発覚したのかといえば、ストアがディアス国に居た所に僕ら魔王討伐隊が来た事を察知して……すでに逃げていたからです。
 そこにナドゥらの意図があったかどうかは勿論良く分かりませんが……とにかくストアである事をはっきりと証言する者が、かの魔王はすでにキラから船で発ったとあっさりと懺悔して来た。

 ご丁寧にも行き先はイシュタル国だと宣言して行ったという。

 イシュタル国は、場所からしても魔王八逆星の手が届いていない国です。大陸座イシュタルトは確実にそこに居るだろうとしても、ディアス国以上に手がかりが掴めずに魔王八逆星……というよりはナドゥが、探すのに苦労しているはずです。
 僕らもそれは同じですが……ストアをそこに向かわせるという事は何か予兆でもあったのでしょうかね。
 とにかく、魔王八逆星と魔王軍は、新生旧型問わず一つの国家で容易く対処出来る存在だとは云い難い。
 航路も割れました、外洋巡りの大型貨物船です。補給地として他国の港を経由しないのは幸いですが、その分この航路は極めて速度が速い。
 エイオール船はすぐにでも追いついてやると息巻くでしょうが、ストアが船でキラから発ってすでに4日立っています。

 僕らがキラから上陸して、その次の日にはキラからストアが逃げ出しているんです。

 恐らくは……ストアはナドゥからの新しい指示は受けておらず、魔王討伐隊が近づいた時には逃げ出すようにという命令が先にあったのではないかと考えます。
 新生魔王軍が整えられてからは微妙な所ですが、その前まで多くの魔王軍を整えていたのはストアでしょう。タトラメルツでの会話から僕は、その様に推察します。
 魔王軍を駒の一つとして見做しているならば、ストアはどこかに安全に確保しておき、魔王軍を増やす為に保全されてしかるべきです。

 しかしアービスが去った後、北魔槍騎士団には新生魔王軍が収まっていました。

 ストアは、捨て置かれていた可能性もあります。

 しかし万が一の時はイシュタル国に逃げ、次の本拠地をそこに設ける……そういう段取りがあってそれが生きている、という可能性も捨てきれない。

「じゃ、ヤト達を探さないでこのままイシュタル国に行くの?!」
 とりあえず急いでますと押し切って船を出してもらいましたが……間に合うかどうか。その間興奮しっぱなしのアベルさんをなだめる事になりましたが、彼を探すだけなら船の上からでも出来ますからと、僕は探査魔法を展開する羽目になっています。
 いやですがねぇ、ヤトとの魔法的な相性がすでに最悪に戻っている現在……あまり期待して貰っても困ります。まだナッツさんの方が頼りになると思うのですが。
 ナッツさんも距離が開き過ぎていて、残念ながらお手上げだとの事です。

 アベルさんは、宥めても宥めても落ち着きを取り戻しませんね……一体ヤトは何を仕出かした事やら。

 もくろみ通り、彼女らはヤトの救いには成らなかったのでしょう。
 アベルさんも、マツナギさんも……アインさんも。ヤトにとっては守ってくれと縋りつける相手ではない。種族的なポテンシャルという意味で自分より格上の存在だとしても彼の中で二人は女という別の性で、仲間としての信頼はあれどもテリーさんやナッツさんに向けたそれとはまた別の感覚であったでしょう。

 トライアンには……ヤトにとって相当ショックな事件が待ち構えていたはずです。
 しかしその衝撃的な事実を、連れて行った面子に説明するにも出来ない事にヤトは気が付き、さらに絶望したでしょう。

 彼は……どう結末をつけたのでしょうね?

 アベルさんとマツナギさんは、どうにもヤトがおかしくなった事は認めましたが具体的に何が起きたのかは分かっていない様です。
 カオスは仲違いをしていると言いましたが、あれは人間の心を理解出来ない悪魔なので何か勘違い発言をしている気がします。

 なんとか一人で片をつけたのかもしれませんね。
 いいえ、一人で片をつけてしまった、というべきでしょうか。
 本来はそこで対面した自分の問題をどうするべきか、誰かに頼って答えを探しても良いのです。しかしそれを安易にしないように僕らがちょっとした意地悪をしている。
 同じ目線で悩めるだろう人を着いて行かせました。だから、リオさんには何も話さずに道案内だけをお願いしたのです。

 でも彼はその悩みを、アベルさんやマツナギさんとは共有出来なかった。しなかった、あるいは……したくなかった……か。

 性別というものは、いくら平らに均そうとしてもそう簡単に双方を同感覚では捉えられない所があるものだと僕は、思っていますよ。
 性別問題で一番躓いているからこそ、そこにある致命的な溝を理解出来て居る方だと思っています。

 そういう意味では僕は……レッド・レブナントで正解だったのかもしれないと思ったりもします。僕がこの世界でも女性であったなら……彼は僕の事をもっと違った目で見ていただろう。その想像は容易い。
 僕は決してそのように見て欲しいとは望んでいない。
 この仮想世界は勿論の事、実は現実の方でもそうなのでしょう。だから性別を偽っている。女性として見て欲しくは無い、男性になりたい……正しくは男性と等しい強烈な友情が欲しい『女性』なのです。

 今は、そうだと素直に認める事が出来ます。
 その自分の心理を、無かった事にしたいとは思っているけれど死ぬほどの事じゃないと言う彼の言葉にその通りなのだろうと……頷ける。

 そうであってもいいのです。
 恥ずかしい事でも、許されていない事でもない。

 そう在った僕がこの世界に在るのだからそれは、そう在って良い事なのです。

 ヤトは、この僕を頼ってくれるでしょうかね。
 一体何処へ行ったのか、さっぱり手掛かりが無くて皆さん焦っている様ですが不思議と僕は落ち着いている気がします。

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