GM8 Garden Manage 8 Narrative

RHone

文字の大きさ
19 / 22

監獄送りの世話係

しおりを挟む
 悪の庭と噂され、実際多くの悪が『悪』という認識をここでは、俄に失って……平穏に在る。
 ついに季節は冬となった。冬は、私、ジャン・ジャスティの心に僅かな影を落とす、そういう季節となってしまった感じがする。
 雪が積もってしまう事も在るというこの地域の、冬は比較的長いそうだ。
 もっとも、私の故郷程ではないとは思うが。

 宛てがわれている部屋の、寝室のカーテンを開け放ち……昇ったばかりの太陽を拝む。
 私の朝は早い、館の管理をする者達とほぼ同時に起きているらしい、井戸水を汲みだしては顔を洗い、朝一番の仕事に向かう使用人達を3階から見下ろしている。こちらに気付いた何人かが手を振るのに答え、おはようなどと言葉を交わした。

「ジャン様、相変わらずお早いお目覚めで……今、湯を沸かしお持ちしますよ」

 私の部屋がある館の、担当が慌てたように駆けてくるのに、私は手を振って笑って答えた。
 ……積雪は、さほどではないが刺すような鋭い空気は息を吸い込む度に肺に満ちる。
 今が冬である事を思う度、思い出している。オウカと過ごした季節は殆ど冬だった事を。どうにも春はまだ遠いらしい、春になれば一時忘れるかもしれないが再び冬となればきっと、オウカの事を思い出すのだろう。
 幻の中で春を見た気がしたがやはり、幻だったな……ほんの数日前の事か、数週間前の事か、あの時からどれくらいの日々が過ぎ去ったのかも良く分からない。
 
 オウカと過ごした地域より、幾分ここは冬の厳しさが緩い。火守として過ごした日々を思えば実に、すがすがしい朝ではないか。私はすぐさま支度をすると中庭に出て、何時もと同じく、冷たい井戸水で顔を洗った。

 そうしているうちにバドロム、館の世話役の男はが漸く私を追いかけてきて言った。
「この寒い中を我々に習う必要はありません、そんな事させてる事を知られたらわっしがフリード様に叱られてしまいます」
「こっちの方がよく目が覚めるんだ、元々寒い地域に住んでいたからこれくらいは慣れているよ」
 そういいつつ、壺には約束通りお湯を持ってきているようだ。バドロムは深いため息を漏らす。 
「ジャン様は上客人として応対するようにとフリード様から伺っております、どうぞ、構わずこちらを御使いください」
 手ぬぐいで顔を拭きながら私は、仕方が無くそれを受け取った。
 バドロムは胸に手を置き、客人を遇し服従を示す礼をする。胸に手を当てて、頭をずっと低く下げてこちらの顔を見ないようにする……私が育った国では見ない仕草であるが。さてはて、何処での所作だったか。

  私は、この礼を一度……受けた事があったはずだ。その時、その動作や、言葉の意味する所は何であるのかと根掘り葉掘り聞いたのだ。こういう作法は文化が違えば異なるもの、かつて魔王軍討伐部隊を指揮していた頃は、見知らぬ土地への遠征も良くある事だった。他国の作法を覚えておいて悪い事は無い。一応は、そういう事を進言補佐する章礼士官が付いて来るのだが、これは当たり外れが多く当てに出来ない事が少なくなかった。
 ディアス国などでは危うく国際問題になりかけた事も在る。……そうだ、ディアス東部地方での任務の時だな。ほとんどペランストラメールか、という境に行った時の事だろう。あの辺りの領主達の動作が、バドロムの振る舞いに似ている。
「君達は本当に色んな所からこの庭に来ているんだな。もしかするとミシャル地方の出身じゃないか?」
 バドロムは礼から顔を上げて笑って答えた。
「おお、よくご存じで。わっしら館庭保全部は元は……へへ、これを言うとフリード様に叱られてしまいそうですが、ミシャル平原をちょっとばかり賑わしていた盗賊団なんでさぁ」
 普段は口に出さない様に努力している、少し悪びれた口調でバドロムは言って、笑った。
「元々は地方役人をやってたんですがね、人生色々っすねぇ。その果てに魔王様に御仕えするなんて、思っても見ませんでしたよ」
「盗賊団か……今は足を洗ってフリードに仕えて、この森の世話係か」
「足を洗ったかどうかは微妙な所ですが……あ、フリード様には言わないで下さいよ。わっしら(俺達)の秘密の話です。暇なときにはミシャル民らしく畑を耕していましたからね、わっしら、人に仕えて保全管理する今の仕事が好きなんです、なんつーか、性に合ってる」
 ペランストラメールとの境界にある肥沃な平原、ミシャルに暮らす農耕民族、それがどうして盗賊団など名乗る悪の道へ足を踏み外したのか。私は、そういう人の機微に……興味があった。
 知りたいのだ。絶対正義としてある私には、実の所良く分からない。世間において悪とされる、非道な道を選ぶ、人の心について。
「勿論、フリードには秘密にするからもう少し私と話に付き合ってくれないか」
「はぁ、ジャン様がそうおっしゃるのなら世話係りのわっしはお断りする理由がありませんが……」
「どうして盗賊団を率いたんだ?」
 大きく、バドロムはため息を一つ漏らしてた。ふいと空を仰ぎ見てから言う。
「今日は上空の風が強いです、空の雲の流れが速い。午後から荒れ始めるでしょうな。良ければ部屋にお茶でもお持ちしますよ」
 館の世話役が終わった後、外の仕事が出来ない事を見越しての判断か。ここはミシェルと環境はかなり異なるが、すでにこの悪の庭に仕えて長いのだろう彼らは天候を読むのにも長ける事だろう。


 約束通り部屋に戻って待っていると、バドロムはお茶や茶菓子、ブランデーなども引っ提げてやって来た。
 天候は、予見された通り空は真っ黒い雲が多く、部屋はすでに薄暗い。雨か、霙でも降りそうな気配だ。
「では失礼します、一つ無礼講でいかがですか」
「構わない、……ああ、アルコールはあまり得意じゃないのだが」
「では、ちょっとばかし香り付け程度にしておきましょう」
 たっぷりの干した果実などを混ぜ込めた堅いパンを、このたっぷり淹れた濃い目の紅茶に浸しながら食べると良いと教えられ、私は彼の薦め通りに手袋を外し、慣れない手掴みで菓子を口に運ぶ。
「ジャン様は平騎士隊みたいなこともやってらしたんですか?」
「ヘイキシタイ、というのは……ディアスの騎士団の一種だろうか」
「へぇ。治安維持のために見廻って来る国の軍隊です、そもそも自警団があるんですがね、わっしらも元々はミシャル地方の自警団だったんスよ。今のクズ部(館庭保全部)が全員同じ穴出身って訳じゃぁないんですが」
 ディアスは兵を率いているのは騎士で、騎士にも色々な名前や部署があるらしい。あまり詳しくは無いが、治安維持のための部隊として平騎士隊か……。ファマメントにおける青軍の事なのだろうが、とすれば、私がかつて所属していた魔王軍討伐隊とは全然権限の違う所という事になる。
「いや、私は政府直轄で少数部隊ごとに命令を与えられ、それを遂行する仕事をしていた。その目標が多くは魔王軍残党と目されたものに限っていた筈だが……誤報も多かったな」
「そうなんですか、巷、正義実行者とお聞きしておりましたからね、元来悪い奴見つけてバンバン首を上げる仕事でも為さっていたのかと思ってましたよ」
「悪人というのも、なかなか存外見つけにくいものだよ。実際私はこの庭で殆どそれらしい悪を見つけられないでいるし」
 そうなんですかい、と笑ってバドロムは、一口ブランデーが濃い目の紅茶を含んでから……やはりため息を漏らした。盗賊団だった過去の事は、あまり話したくない事だったろうか?
「平騎士隊じゃないのなら、解って下さるかなぁ……俺達の事情」
「自警団が、盗賊団になってしまった理由があるのだろう?」
「そういう事です、わっしらは平騎士隊によって盗賊に、成っちまったんでさぁ」
 盗賊団、すなわちそれが悪と同義語にならない事情は、これで分かっているんだ。
 私は警察の様な事はした事が無いが、そういう仕事をしているはずの青軍が、ファマメント国の末端において逆に治安を乱し、対抗する組織が盗賊団として成り立っていた事実をいくつか知っている。というのもそうやって盗賊団に手を焼いた挙句、そこに魔王軍が絡んでいるとして私に仕事が回って来た事が何度かあった。
 実際ふたを開ければ『悪人』は、青軍や地方役人だったという顛末が少なくないのだ。
 まさかそれを正義の使者たる私が見破って、抵抗する組織の殲滅を願い出た自分達の方が逆に、粛清される事を考えていなかったのだろうか?私がこの庭に来る発端となった、イースターの壁守も似たような事情と云える。
 魔王軍の残党を探す中、疑わしいという都合で時に国家反逆の意図がある所に私は、派遣される様にもなっていた。その時正しく国家の為の正義を振るう剣として私が、機能していたからだ。
 本当の悪を暴き、それを正義の名の下に切って良いという権限を与えられた私は、国家の下で法に縛られ、時に悪しきにも目をつぶる警察機関とは、明らかに異なる仕事をしていたはずだ。

 思えばそういう事は沢山あって、そうやって正義を貫いて行くにつれて心に、少しのわだかまりの様なものが生まれて来た事は否めない。

「ミシェル平原統治には自警団があるのに、国からの治安維持が派遣されるというのはつまり、そこに何か問題があったからなのでは?」
「問題ねぇ……まぁ、良くある話だと思うんですが……農作物っていうのはどうしたってお天道様のご機嫌に左右されてしまうもんでしょう?」
「……不作の事があったんだな」
「不作なんてもんじゃなかったですよ、大凶作って奴でさぁ」
 空になったティーカップに、バドロムはブランデーをそのまま注ぐ。
「沢山の人が餓死におびえ、畑を捨て、逃げようとしましたがその時、国はわっしらを救済をしませんでした」
 農作物の、不作と豊作はどうしたって繰り返すものであるらしい。それは、体感として分かる。毎年豊作、という訳では無い事は国の災害報告などを聞いているだけでも想像出来る事だ。河川普請が多い年は、前年に多くの雨が降ったという事で、貧民層が溢れて治安が乱れる時は決まって、農作物の上りが少ない。
 平和な年と、そうではない年がある。その根底には、天候不順や災害、農作物の不作が絡まっている事は想像に容易い事だ。
 その為、治世者はこの繰り返される不平を均す手腕が問われるのだろう。
 平穏な時に様々な災害復興を行うのも、末端で治安を乱す自国の膿を斬って捨てるのも、その先を見据えて必要とされるからだ。

 ディアスは、その時のディアス国は……悪しき治世者があったと云う事だな。私は思わずカップを持つ手に力を込めていた。そういう『悪』は、どうにも私には斬り難い。その時に露呈しない、大抵はすべてが過ぎ去った後だ。

「意にそぐわないとして全部殺してしまう様な、酷い治世を為さる時があるんです、国の政もまた、お天道様みたいなもんですよ、わっしらみたいな末端にしてみれば」
「天候の様なもの……か」

 災害は、天が悪意を持って齎すものではない。
 地の震え、川の増水、風雪の嵐、陽照る旱魃。
 それらが、人にとって悪しきと分かっていてもどうしたって手が出せい事に私は、少なからず歯噛みした事があったな。今よりずっと若い頃の話だ。

「そんなわけで、まぁ……わかるでしょう。飢えそうだっていうのに作物を全部取り上げて、土地から逃げる奴らを追い殺す様な国の連中に従う訳には行かない事情ってのも出てくるってモンです。無抵抗ではなかったわっしらは、そう呼ばれるに等しい取捨選択も色々しちまった後でした」
「それで盗賊団か」
「一度そうなっちまったら足を洗うのは難しい」
 お茶のおかわりは如何ですか?ミルクティーも在りますと、素焼きの壺を振るバドロムに私は、頂こうとカップを空けた。
「国からの独立なんかはあんまり考えていませんで、本当に行き当たりばったりにわっしらは、盗賊団ってぇ事になってしまった。終いには、一番大事だった耕すべき土地から追われた。どうするべきか路頭に迷うとはあの事ですな……国に頭を下げに行けばその場で首切りです」
 雨が、降って来たな。
 いや……薄暗い窓の外に視線を泳がせる、霙か、霰が降っている様で随分と騒がしい。雲の層も一層厚く、不安定な低い音がガラスを震わせている。
「そういう時、助けて下さったのが……ジャン様みたいな正義の味方だったら良かったんですがねぇ」
「……」
「いいや、ジャン様みたいな方なら多分……あの時の国の役人も等しく、あっしたの首をお斬りに為さるんでしょうなぁ」
 どうだろう、私はその時のバドロムの状況を上手く想像出来ずに目を細める。
「何をしたんだ」
「過去の罪状から数えられてしまいますかね?」
 バドロムはかつて罪を犯した事で、今私から斬られる事を懸念している様だ。
「そんな事はしないよ、私は現行悪にしか手を出さない事にしている。その悪事が、今も続いているのなら話は別だが」
 茶葉を、牛の乳で煮だしたものをカップに継ぎ足しながらバドロムは安心して頷いた。
「わっしらはあの時、平騎士隊と競い合う様に多くの村から略奪し、口減らしと称して人を殺しました」
「……何故」
「そんな事をって?そりゃぁ多分……その時の国が憎かったんでしょう。平騎士隊にやらせる位ならわっしらで摘み取ってやろう、そうして農民が減って困るのは国だ。逃げるなと、逃げた人を容赦なく根絶やす連中のやり方に頭に来ていたんでしょうよ。困らせてやろうと思ったんです。そういう方法でしか天にも等しい国って奴に盾突く方法が思い浮かばなかったんでしょう」

 愚かな事でしたよ、と……小さく呟いたバドロムに私は、なんと返せば良いのか言葉を濁していた。

 厄災が、手の届くところに形があって、意思もあって存在するならば私の剣は届くだろう。バドロムは国も天と等しく手の届かない存在だと嘆くが、難しいとはいえ不可能ではない。
 過去にあって、もはや途切れた悪事を……私は裁く技量が無い。それにバドロムの件は、まず大凶作という天災から地続きに起こった悲劇だ。
 もしその時そこに私が居たらどうしただろう。彼の言う通り全ての首を斬っただろうか?
 何をするのが最善だったか。
 ふいと、現状に気が付いて顔を上げる。結局、その泥沼から抜け出して彼は私の前に今居るではないか。

「フリード様が我々を勧誘に来たのは比較的早い段階でしたなぁ。あの方は一体どこからわっしらの事を知ってやって来たのか。かなり不審には思いましたが、それ以上にすでにどん詰まりで、選択肢が無い」
 そうだ、結局そうやって彼らは、この悪の集う庭に招致されている。それを為したのはフリークス・フリード……庭に、多く人を入れてそれらを組織とし、管理をしている男だ。
「ディアス平騎士隊と消耗戦になる前にあのお方は、わっしらを逃がすと言ってこの庭に案内してくれました。当時はまだ寄せ集めみたいな状況でしたが庭の整備や畑仕事が出来るというし……。国では御尋ね者だ、もうミシェル平原には帰れない」
 悪とされた盗賊団が、追い込まれた末に生まれた存在だと知って私は、彼らを討つ手を緩めただろうか?いや、略奪や殺戮を辞さない、その理由が国への反逆だというのなら、もし私がディアスの平騎士隊であれば……私は、彼らを悪としただろう。
 そうではなく、私が平騎士隊も外から眺める部外者であるならばどうか。
 悪しき所は平騎士隊や、それを指揮するディアスにも在る様に感じたとする。その中で苛政に反した自警団が盗賊団に転じた事を知っていればどうか。

 何が、最善か。すべての首を斬る事か?いいや、恐らく……そうだ、フリードが取った手が最善だ。

 全て奪われた彼らを闘争から遠ざけて、別の仕事を与えて封じる。それで彼らが収まるのであれば最善だ。
 ともすればフリードは、ミシャル平原の騒動を外から眺めていたのだろう。悪しき動きがある事を知り、事の顛末を伺い……あわよくばそれらを自らの手足とするべく彼らを、逃がした。
「フリード様は、あちこちからそういう人をここに連れてくるんでさぁ」
 そういう事情は今は、良く知っている。
「それでは、フリードに大いに恩を感じていると言う事か」
「ところが、そいつが微妙な所でしてね」
 バドロムは苦笑して頭を掻いた。
「結局国には戻れないし、盗賊家業に身を窶した罪も消えない。ここは在り難い牢獄みたいな所です。仕事をしなけりゃ左遷もされますしね」
「それは、何処に居たって同じことだろう?」
「わっしらはここからはもう、何処にも行けはしねぇんです。それを思う度に自分がもう何処にも居場所のないろくでなしなのだって、思い知るんでさ」

 私は、知っているな。
 この庭は、そういった居場所を失ったものが存在する事を等しく『許される』所であるのを。
 庭の王が、どうでもいい事だと笑って許している。
 この世界の何処にその不気味な価値観を敷いて、悪しきも全て、許す所があるだろうか?王が全てを許しているからどんな犯罪者であっても受け入れてしまう。時に癖の強い彼らを受け入れる皿をフリードが用意している。
 この庭に私は悪を見付けられない。だが全てを許すあの、悪の庭の王が……失われたのなら。
 途端悪しき庭はその名前の通りとして世界に在り、私の正義の剣は届くだろう。

 だがその時、バドロムらを即座悪と見做すことは無い。フリードがこの庭に施している禁獄の掟は存外優しい。庭に、主が失われれば今ある秩序が崩れるとしても、新しい主を立てられれば崩壊を免れる。その為に、この庭に閉ざされた彼らは新しい主人を見つければいいのだ。そうやって自立する方法までが内側に閉ざされている。
 巧妙に、悪を秩序に組み込んだ小さな国の様な物がこの庭に在る。
 バドロムに言わせれば牢獄か。
「良い牢獄だ」
「ん?何かおっしゃいましたか?」
 思わずつぶやいていた言葉を誤魔化して私は、話題を変える。
「労働に対する対価はあるのだろう?」
「ああ?それは、勿論」
 しっかりと労働契約とやらを結び、衣食住、娯楽施設までを揃え報酬もしっかり与えている事は間違いないのだろう。
「ミシェル平原に帰りたいのだろうか?」
「それも微妙な所です。この庭で、似たような暮らしが適っていると思えば戻る必要は無いと思えてくる」
「庭からは、出れられないのか」
「いや……実はそういうワケでも無いんですが」
 バドロムは、苦笑して頭を掻いた。
「ここに住んでる奴らは庭の外に何も繋がりが無くなってしまった連中ばかりです。わっしもそう。一から何か努力して得るより、与えられて昔と似た生活を送れる方が楽なもんで、結局……そういう厄介な牢獄なんでさぁ」

 全てを許す庭の王が失われる事は、思うに……『悪しき』と感じ始めている。

 彼が居る限り、私はこの庭に悪を見つけることが難しいが……同時に悪は、悪である事を失って平穏と在る。
 なのにこの庭に集う、自称悪人達が目指している事は、あの王を真に正しく殺す事だ。ああ、だからこそ自称悪なのか?

 大いなる矛盾という檻で成り立つ庭に、捕らわれた者達は多い。
 正義であるはずの私も……捕らわれている側であろうか?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...