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いとしの沸
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体臭に塗れた他者を、自分と同一化させてしまう能力を持つ、私から言えば実にふしだらな男レギオン・ストレンジア。
その能力で魅了して率いている部隊、通称レギオン軍。
男性のみを取り巻きにしているのは、レギオンが実働部隊であって庭の実務警護部隊、つまり『兵隊』である都合が第一と聞いている。実際、エヴェスへの短期遠征に同行してみて、彼らが積んでいる練度は相応なものだと知れる事が出来た。
しかし、レギオンの同一化技能には、他にも何かある様な気がするな。
彼らがどこであれだけの技能を磨いているのか、単に私が知らない所でしっかり鍛錬をしているだけかもしれないが……。
庭で過ごしていると、レギオンの方が私の周囲をうろつく都合遭遇する事は多いが、レギオンの取り巻きの方とは、まともな会話が成立した事が無かったと思う。というか、挨拶程度で後はどんなに傍に居ても存在自体無視されている、かな。
彼らの意識は、常に主であるレギオンにだけ注がれているのだから別段、期待をする事も無いのだが。
ところが、彼らは皆そういうものだと思っていたのが実は、全員が全員レギオン以外の他者へ関心を持たない訳ではなかった。
という事を私は、エヴェス殲滅戦で初めて知る事となったのだった。
*** *** ***
逃げ出していく人の命だけは取らない。そういう決まりをしっかりと定め、その上レギオンをしっかりと制御しておいた上で、約束されていた略奪が行われている。
武具や、明らかにフリードが手配しただろう物資以外の持ち出しも自由として、エヴェスの住人が町を出て行くのを平穏に見守る事。
それを、レギオンの意思に『反して』レギオン軍は、執行出来るのだという事実に私は、少しの感動を覚えてすらいた。
レギオン軍は、実に素晴らしい軍隊ではないか。首領と戴く男があの体たらくだというのに。
「いえいえ、別段レギオン様の意図に反している訳ではありません。口では色々仰ってますが、無駄な争いで我々に被害が及ぶ事をレギオン様は存外嫌っておいでなのですよ」
その、レギオンはすでに宿の一階の大広間で、振る舞われた食事と酒でご機嫌になっていた。勿論、甲斐甲斐しく係となったレギオン軍が武装を解いて彼の相手をしている。
やや大きな声でやれ『もっと戦いたかった』だのなんだの喚いているのが聞こえてくるな。
ちなみに、彼は……あまり酒が強くない。
あれは、あえて酒を呑ませて大人しくさせている、という所だろう。
「ああ、楽しんでおいでだ」
微笑を浮かべながら、そんなレギオンを遠くに見てうっとりしている……彼はロムス。中性的な顔立ちの、漆黒の長髪を見事に結い上げた美丈夫だ。庭でレギオンを取り巻いている中で、とりわけ彼のすぐ傍に居る事が多いからさぞお気に入りなのだろう。それだけにこの短期遠征には着いて来ていないものだと勝手に思い込んでいた。
庭では見ない、がっつりとした重鎧に身を包み、不格好な鉄の兜を横抱きにして……旅館を完全に占領。金銭等の交渉をしてこの宿の差配人に暫くの兵の世話をしてもらう事になったという。
エヴェスでの仕事場は失うが、命の保証と見合う金銭の支払いがあり、安全な街の脱出を約束されているならばむしろ、宿屋や飲食店など、商売人は仕事をする方を選ぶものだ。商人のこういう気質はどこでも変わりはしない。
兵隊だって屋根のある部屋で、美味しいご飯が食べられて生活が出来る駐留の方がありがたいものだろう?
支払えるモノがあるのなら、双方協力するのは至極真っ当な方向性である。
ここが、北にほど近い西の町である、というのもそういう気質の高さを保証している。西方だと、どうしても魔物種を軽蔑するような地域もある。しかし北や東に近いほどに人間などより有能な魔物種は増えるし、それらの混血も多い。北西人は必然と、人間以外を相手にする事を覚える必要があるのだろう。
言葉が通じるのならば、商人はどこでも、誰にでも逞しく『商人』である。
レギオン軍は、先ほど感動した通りとても規律の取れた軍隊だ。一人一人が兵站を兼ね、物資もそれなりに運ぶ。何より横の諍いが一切ない。
一人、レギオンという首魁の意思の下、極めて高い統率が保たれている。
とはいえ、楽が出来るなら楽を選ぶ。
何しろ今回の短期遠征は彼らにとって、その為のものだったのだ。
宿屋街は西に開ける町の入り口付近。レギオン軍は、まずその地域から徹底的に人を『避難』させる事から制圧を始めた。特段何も打ち合わせをしている風でもない。占領政策も急ぐ必要は無いというのに、その日の夜までには西側地区および、その風下には絶対に、近づかないようにという立札や障害物なども置き始めた。
その理由を……私は、なんとなく察している。
何となく、などとあえて遠い目をしてしまうのは、彼と彼らの『真の目的』について心底呆れているからに他ならない。
そこまでか、と思うも、彼らにとってはそこまでしてというモノであるのかと……ソコの所、真相をどうしても聞きたかった私である。
私の宿も用意されていたからそちらで、返り血を浴びた装備の調整などを頼んである。レギオン軍の静止を振り切り、レギオンが寛いでいる宿街に入ったはいいが、即座このロムスに止められたのが現状になる。
彼が宥めすかされているのを遠めに見て、別に彼に話がある訳ではないとロムスに伝えた。
「では、どういう御用事でしょう」
言葉は丁寧だがやはり、拒否されている気がする。
「……もしかしなくても、どっちかっていうと、これからが君たちの本命なのか?」
「そこまでご存じでいらっしゃるのなら、何故こちらに?」
彼は口調こそ穏やかであるがどうにも私を良く思っていない様だ。レギオンが居る手前、邪険にこそしないが普段私を無視しているのは『わざと』だった可能性が高い。
にこやかに、微笑む姿は美しいがその花には棘がある。
「貴方様がここにいてはまた何時ものように、レギオン様は貴方に靡くでしょう。それでは、我々が面白くないのです」
「それはまぁ、うん、理解はするが」
一応、どういう感情のもとにロムスが拗ねた口調になっているのか、理解はしているつもりだ。
「まさか、我々の房事を覗き見たい趣味をお持ちであるとか」
「は、え?」
「レギオン様の事です、全然構わない、むしろ歓迎などと言い出しかねません。ジャン様はそういう状況をお望みだと云うのですか?」
悲鳴を上げるに近い形相をしながらも、何故か興奮した様子で言われて慌てて首を横に振り続けた。
「邪魔しない、邪魔をしたい訳じゃない、そこに善悪の問題が無い事は分かっている、ちゃんと始まる前に外れの宿屋に戻るから」
そう、私の世話をしてくれる宿もちゃんと、北のはずれに彼は、しっかり用意してくれているのだ。
何故離れた宿を用意されているかについてもちゃんと、これで、私は理解しているのだと、興奮するロムスをなだめて伝える。
「では貴方様の宿にお戻りになられては?」
他に何の用があるのだと云わんばかりの彼の口調に、私は気圧されながらも提案してみる。
「ええと、その、宴会くらいには参加しても問題無いのかなぁ、と」
「あちらでも、ちゃんと料理は良いものを出す様手配をしたはずですが」
「酒を呑むなら一人より、大勢の方が美味いんだが……というか、」
酒宴をとりわけ好んでいると、いうワケではない。ただ、大勢と飲み交わす場が存外『楽しい』事を、心得ているだけだ。
美味いのは酒や、料理だけではない。
その場で聞ける、人の語る何というワケでもない話が……口に運ぶものを不思議と旨くするものだ。
「成る程、俺達と話をしながら呑みたいって所か」
一層がっちりとした重鎧の戦士が宿の入り口で諍う私たちの前に立った。
兜は既に脱いでいて、あちこち動き回ったのか大分汗を流し、手団扇をしながら爽やかな笑みを投げる。
「いいんじゃないか、潮時を見てちゃんと退出させれば。その方がレギオン様もお喜びになるのと思うぞ、ロムス」
「ですけど……」
顔に傷のある、随分と体格の良い西方人だ。確か、ケレスと呼ばれていた。西方人、であるならばほぼ人間だろう、混血はあまりない。
ならば、多くがそうであるようにレギオンの同一化からは逃げようが無いはずだ。その割に彼は、レギオンを上手く宥めすかしてくれていた様に見えた。
「君は……庭ではあまり見かけない気がするけれど」
「ああ、はい。俺は庭のちょっと外れた所で部隊の調練を担当してまして、あまり庭の方には行く機会がありません。ですがこういう荒事には大抵顔を出せますからね、」
やはり、調練している別の施設があったのか。正直そういう所を見学したい、あわよくば手合わせなどもお願いしたいという、個人的な希望があったので、思わず彼の手をを取り強引に握手していた。
「庭の外か、そんなに外れにあるのだろうか?実はちょっと、一人で素振りだけでは物足りなくてな。出来ればそういう軍隊を調練している施設なり、そういうのは無いのだろうかと思っていた所だった」
「良いですね、是非こちらに御出でになさってください。ご興味があるとは存じ上げず申し訳ない、それについてはレギオン様に伝えておきますので」
「ありがとう、助かるよ」
「しかし何故庭の外に?フリード隊の部署は庭にそろっている様だが」
「あー……ご存じだとは思いますが、我々はフリード様の部隊とは仲が悪い上に相性も良くありませんので」
確かに、そうだと聞いている。実際、庭に居るレギオンの取り巻きと、フリードの部隊がすれ違った時の、双方の険悪さは目に余る程だった。フリード隊の方が事を荒立てない様に強く教育されているのか、何か起きる前にどちらかが速やかにその場を去る、という現場を何度か目撃した事があった。
「良かったですね、ケレス」
私に対しては辛辣なのに、同朋には友愛を込めて心から喜んだ声を掛けるロムス。と、その彼がすぐに私を横目でやや睨んだで来たので驚いて目を瞬く。
「最近は誰か様の所為でずっと庭にいて、あちらにはあまり顔を出していない様子でしたものね」
「ああ、おかげさまでエヴェスの遠征は楽しみで成らなかったよ」
そんな屈託無く笑わないでくれ、と私はやや口が引きつってしまう。
レギオン軍は『その件』に関しては極めて本気である事が、極めて優れた軍隊であるが故に、優秀である理由がそんな所にあって良いものだろうかと一瞬、悩んでしまいそうだ。
「ジャン様が視察に来るなら、きっとレギオン様がご案内してくださるはず。きっと皆、喜びます」
普通の軍隊なら、お偉いさんが視察に来る事をこんなに無邪気に喜びはしないんだよなぁと、私は苦笑が漏れそうになるのを抑える必要があった。
レギオンと同一化してしまったレギオン軍は本当に、純粋にレギオンの視察を喜ぶだろう。
彼らの完成された関係性の上では、悪い事ではないかもしれない。
どうにも私の所為で彼らレギオン軍を、少なからずヤキモキさせている。少なくとも、ロムスは何時も会うたびにそういう事を私に訴えていたのかもしれなかった。
「実は、君達と会話が成り立つのを知らなくて」
それを聞いて、ケレスが苦笑をしてロムスを伺う。拗ねた美丈夫が視線を逸らしているのを二人で、笑って見てしまった。
「ロムス、レギオン様に知れたら怒られるんじゃないか」
「怒られたって構いませんよ、お仕置きならなお歓迎です」
「ジャン様の事は、どうにも特別に思っていらっしゃるのだから側近である君は、そこの所もう少し配慮をするべきだろう」
「……うう」
と、そんな悔しそうな顔をこっちに向けないでくれ、レギオンの気持ちはともかく、私は絶対そっち側には行かないんだから。それこそ私の態度で理解しているだろうに、それでもロムスにとっては愛するレギオンを取られる心配の方が上回る為に、どうしても彼に私を近づけたくない様である。
「能力が一切通じない私に、どうして彼は固執するんだろうな」
正直に言えば少し困っているがと、同意を求めるような事を二人に振ってみたが、ケレスの方がかぶりを振って、緩やかに……微笑む。
「分かりませんよジャン様」
「……何がだ?」
「俺もロムスも、最初は貴方と同じ事を言っていましたからね」
「……ん?」
思わず怪訝な顔をしてしまう。
「さっきの、会話が成り立たないって話ですけど……ぶっちゃけ成り立たないと思いますよ、レギオン軍とは」
「レギオン様が望めば、ジャン様に話を合わせる事もあるかと思いますが」
「レギオン軍は殆ど『我』が残りません。……名前も、無意味です。俺達はジャン様と同じであんまり、レギオン様の力を頂けていないんです」
極めて残念だ、という顔をした二人に、私は思わず声を失う。
暫らくしてからようやく言った。
「という事は君達には、レギオンの異能に抵抗力があるという事か」
それなのになんで、こんなに二人ともレギオンに従順なんだ!?
*** *** ***
ふしだらで、言葉が悪くて意地も悪い。口を開けば猥雑な事ばかりだし、乱暴で残忍で、その上普段はぴっちりとした服と鉄仮面で完全に隠しているが、体全体が極めて醜い、らしい。
私はたまに垣間見る程度なので、どの程度不細工なのか、レギオンの素顔については良く知らない。
隙間から見えるだけでも、傷跡が醜く治った蟹足腫に覆われている事や、口が奥歯が見える程割けている事分かる。見た目は醜いかもしれないが、全体で見れば彼が選んだレギオン軍の様に、整った顔立ちなのかもしれない。
などと、懸命に彼の『良い』所を探してみたり、妄想してみたりしているがやはり、どうしても思い至らない。
能力が無ければ、誰が彼を愛するものかと思う位には最低な男だと思う。
ああ、さすが悪人として庭に招き入れられていると、正義の使徒と自らを信じる私が断言するくらいに、彼には『愛すべき所』が無い。
それなのに、そんな彼を愛する人間が居る。
ロムスとケレス、二人がレギオンの同一化を受けていない事。
二人はそれでも心から、レギオンを愛していて彼の軍隊に加わっているという事態を理解してなお、やはり……信じられない。訳が分からない。
酒の席には無事に加えてもらったが、確かに二人以外とは会話が通じなかった。必要な事であれば双方の状況確認として普通の会話が成り立っているのに、いざ酒の席で私が話しかけたり、レギオン軍が話している会話と聞いてみたりすると全部が全部、レギオンの言葉だった。
口調こそレギオン程悪くはない、ある程度は温和な言い回しになっているが、間違う事無きレギオンの思考だ。
レギオンが望む殺戮を繰り広げられなくて残念だった。
でもジャン様がそういう風にしてしまったのならしょうがない。
とにかく今日は約束された日であるから……ソレに対する期待に向けた、極めて低俗かつ猥雑な会話が繰り広げられているだけであった。
「いえーい、ジャンくーん、良い顔してるよぉ」
と、レギオンが若干は酒が抜けたな、という風な声で、呆れて酒を煽っている私を見て冷やかしてくる。するとレギオン軍は一斉に反応して同じように冷やかし立ててくるのだった。
ロムスは、私と酒を呑むのは拒否すると云わんばかりに距離を取り、しっかりレギオンの隣に座り込んでいる。かくして、私と酒を酌み交わしまともな会話を返してくれているのはケレス氏だけなのであった。
しかしそれも、どうしてあんな男が良いのだ?という私の疑問に対し、純粋な愛の奇跡を事も在ろうか私にも勧めてくるだけという実に不毛なものになりつつある。
ロムスも、ケレスも、本当に純粋にあのレギオンが好きなのだ。
これから繰り広げるであろう性愛を抜きにしても、心の底からあの男を愛おしいのだと云う。
いや、最初はまだ少しマトモな会話をしていたと思うんだ。
そもそも、どういう経緯でレギオン軍に下ったのかとか。しかしそれも最初は良かったものの、恋に落ちるまでの経緯が実に、実に最低で途中で話を辞退したくらいだ。
聞きたくなかった。
決着が、心の底からの純愛になった事を先に知るからこそ、その経緯がどんなに『悪どい』事であっても、今更悪しきと斬り捨てる事が出来ない。
出来るはずが無い。
同一化能力が通じない、しかしレギオンの方で惚れてしまってどうしても手元に美しいモノや、有能なモノを、一体全体どうすれば、こうなるというのか?その経緯はちょっと予測したとおり、最悪なものだった。
レギオンの事を語る以外は極めて好青年にしか見えないケレスを前に、私はもう一度深いため息を漏らす。
しかもケレス氏は、場合によってはこの私も自分たちと同じ経緯で、レギオンにハマるものだと若干、信じて疑ってない気がする。
その頃から、恐ろしい場に来てしまった事に後悔を隠し切れていない私である。そんな私を面白おかしくレギオンの方は楽しんでいる気配すらある。
最低だ。
レギオン軍は、本当に、軍隊としてはあんなに完璧なのに繋がっている経緯が本当に最低最悪だと思わずテーブルに突っ伏してしまった。
「まぁ不健全である事は否定しませんが、ジャン様はそういう所に目くじらは立てないのですね?」
ケレス氏の洩らす稀にマトモな会話に反応し私は顔を上げた。
「人の恋愛事情に正義も悪も在ると思うのか」
暫らくして私はそそくさとレギオン軍の宿から自分の寝床へ逃げ帰った。
酔いが醒め、あわよくばどうにかされてしまいそうな身の危険を理解したからだ。
そんな私をレギオン程バカみたいに笑うでもなく、ケレス氏は親身になって帰りの支度を手伝ってくれたし、ロムスは絶対こちらには近づかないでくださいよねと心底嫉妬した風に、私を追い払ってくれるのだった。
終
その能力で魅了して率いている部隊、通称レギオン軍。
男性のみを取り巻きにしているのは、レギオンが実働部隊であって庭の実務警護部隊、つまり『兵隊』である都合が第一と聞いている。実際、エヴェスへの短期遠征に同行してみて、彼らが積んでいる練度は相応なものだと知れる事が出来た。
しかし、レギオンの同一化技能には、他にも何かある様な気がするな。
彼らがどこであれだけの技能を磨いているのか、単に私が知らない所でしっかり鍛錬をしているだけかもしれないが……。
庭で過ごしていると、レギオンの方が私の周囲をうろつく都合遭遇する事は多いが、レギオンの取り巻きの方とは、まともな会話が成立した事が無かったと思う。というか、挨拶程度で後はどんなに傍に居ても存在自体無視されている、かな。
彼らの意識は、常に主であるレギオンにだけ注がれているのだから別段、期待をする事も無いのだが。
ところが、彼らは皆そういうものだと思っていたのが実は、全員が全員レギオン以外の他者へ関心を持たない訳ではなかった。
という事を私は、エヴェス殲滅戦で初めて知る事となったのだった。
*** *** ***
逃げ出していく人の命だけは取らない。そういう決まりをしっかりと定め、その上レギオンをしっかりと制御しておいた上で、約束されていた略奪が行われている。
武具や、明らかにフリードが手配しただろう物資以外の持ち出しも自由として、エヴェスの住人が町を出て行くのを平穏に見守る事。
それを、レギオンの意思に『反して』レギオン軍は、執行出来るのだという事実に私は、少しの感動を覚えてすらいた。
レギオン軍は、実に素晴らしい軍隊ではないか。首領と戴く男があの体たらくだというのに。
「いえいえ、別段レギオン様の意図に反している訳ではありません。口では色々仰ってますが、無駄な争いで我々に被害が及ぶ事をレギオン様は存外嫌っておいでなのですよ」
その、レギオンはすでに宿の一階の大広間で、振る舞われた食事と酒でご機嫌になっていた。勿論、甲斐甲斐しく係となったレギオン軍が武装を解いて彼の相手をしている。
やや大きな声でやれ『もっと戦いたかった』だのなんだの喚いているのが聞こえてくるな。
ちなみに、彼は……あまり酒が強くない。
あれは、あえて酒を呑ませて大人しくさせている、という所だろう。
「ああ、楽しんでおいでだ」
微笑を浮かべながら、そんなレギオンを遠くに見てうっとりしている……彼はロムス。中性的な顔立ちの、漆黒の長髪を見事に結い上げた美丈夫だ。庭でレギオンを取り巻いている中で、とりわけ彼のすぐ傍に居る事が多いからさぞお気に入りなのだろう。それだけにこの短期遠征には着いて来ていないものだと勝手に思い込んでいた。
庭では見ない、がっつりとした重鎧に身を包み、不格好な鉄の兜を横抱きにして……旅館を完全に占領。金銭等の交渉をしてこの宿の差配人に暫くの兵の世話をしてもらう事になったという。
エヴェスでの仕事場は失うが、命の保証と見合う金銭の支払いがあり、安全な街の脱出を約束されているならばむしろ、宿屋や飲食店など、商売人は仕事をする方を選ぶものだ。商人のこういう気質はどこでも変わりはしない。
兵隊だって屋根のある部屋で、美味しいご飯が食べられて生活が出来る駐留の方がありがたいものだろう?
支払えるモノがあるのなら、双方協力するのは至極真っ当な方向性である。
ここが、北にほど近い西の町である、というのもそういう気質の高さを保証している。西方だと、どうしても魔物種を軽蔑するような地域もある。しかし北や東に近いほどに人間などより有能な魔物種は増えるし、それらの混血も多い。北西人は必然と、人間以外を相手にする事を覚える必要があるのだろう。
言葉が通じるのならば、商人はどこでも、誰にでも逞しく『商人』である。
レギオン軍は、先ほど感動した通りとても規律の取れた軍隊だ。一人一人が兵站を兼ね、物資もそれなりに運ぶ。何より横の諍いが一切ない。
一人、レギオンという首魁の意思の下、極めて高い統率が保たれている。
とはいえ、楽が出来るなら楽を選ぶ。
何しろ今回の短期遠征は彼らにとって、その為のものだったのだ。
宿屋街は西に開ける町の入り口付近。レギオン軍は、まずその地域から徹底的に人を『避難』させる事から制圧を始めた。特段何も打ち合わせをしている風でもない。占領政策も急ぐ必要は無いというのに、その日の夜までには西側地区および、その風下には絶対に、近づかないようにという立札や障害物なども置き始めた。
その理由を……私は、なんとなく察している。
何となく、などとあえて遠い目をしてしまうのは、彼と彼らの『真の目的』について心底呆れているからに他ならない。
そこまでか、と思うも、彼らにとってはそこまでしてというモノであるのかと……ソコの所、真相をどうしても聞きたかった私である。
私の宿も用意されていたからそちらで、返り血を浴びた装備の調整などを頼んである。レギオン軍の静止を振り切り、レギオンが寛いでいる宿街に入ったはいいが、即座このロムスに止められたのが現状になる。
彼が宥めすかされているのを遠めに見て、別に彼に話がある訳ではないとロムスに伝えた。
「では、どういう御用事でしょう」
言葉は丁寧だがやはり、拒否されている気がする。
「……もしかしなくても、どっちかっていうと、これからが君たちの本命なのか?」
「そこまでご存じでいらっしゃるのなら、何故こちらに?」
彼は口調こそ穏やかであるがどうにも私を良く思っていない様だ。レギオンが居る手前、邪険にこそしないが普段私を無視しているのは『わざと』だった可能性が高い。
にこやかに、微笑む姿は美しいがその花には棘がある。
「貴方様がここにいてはまた何時ものように、レギオン様は貴方に靡くでしょう。それでは、我々が面白くないのです」
「それはまぁ、うん、理解はするが」
一応、どういう感情のもとにロムスが拗ねた口調になっているのか、理解はしているつもりだ。
「まさか、我々の房事を覗き見たい趣味をお持ちであるとか」
「は、え?」
「レギオン様の事です、全然構わない、むしろ歓迎などと言い出しかねません。ジャン様はそういう状況をお望みだと云うのですか?」
悲鳴を上げるに近い形相をしながらも、何故か興奮した様子で言われて慌てて首を横に振り続けた。
「邪魔しない、邪魔をしたい訳じゃない、そこに善悪の問題が無い事は分かっている、ちゃんと始まる前に外れの宿屋に戻るから」
そう、私の世話をしてくれる宿もちゃんと、北のはずれに彼は、しっかり用意してくれているのだ。
何故離れた宿を用意されているかについてもちゃんと、これで、私は理解しているのだと、興奮するロムスをなだめて伝える。
「では貴方様の宿にお戻りになられては?」
他に何の用があるのだと云わんばかりの彼の口調に、私は気圧されながらも提案してみる。
「ええと、その、宴会くらいには参加しても問題無いのかなぁ、と」
「あちらでも、ちゃんと料理は良いものを出す様手配をしたはずですが」
「酒を呑むなら一人より、大勢の方が美味いんだが……というか、」
酒宴をとりわけ好んでいると、いうワケではない。ただ、大勢と飲み交わす場が存外『楽しい』事を、心得ているだけだ。
美味いのは酒や、料理だけではない。
その場で聞ける、人の語る何というワケでもない話が……口に運ぶものを不思議と旨くするものだ。
「成る程、俺達と話をしながら呑みたいって所か」
一層がっちりとした重鎧の戦士が宿の入り口で諍う私たちの前に立った。
兜は既に脱いでいて、あちこち動き回ったのか大分汗を流し、手団扇をしながら爽やかな笑みを投げる。
「いいんじゃないか、潮時を見てちゃんと退出させれば。その方がレギオン様もお喜びになるのと思うぞ、ロムス」
「ですけど……」
顔に傷のある、随分と体格の良い西方人だ。確か、ケレスと呼ばれていた。西方人、であるならばほぼ人間だろう、混血はあまりない。
ならば、多くがそうであるようにレギオンの同一化からは逃げようが無いはずだ。その割に彼は、レギオンを上手く宥めすかしてくれていた様に見えた。
「君は……庭ではあまり見かけない気がするけれど」
「ああ、はい。俺は庭のちょっと外れた所で部隊の調練を担当してまして、あまり庭の方には行く機会がありません。ですがこういう荒事には大抵顔を出せますからね、」
やはり、調練している別の施設があったのか。正直そういう所を見学したい、あわよくば手合わせなどもお願いしたいという、個人的な希望があったので、思わず彼の手をを取り強引に握手していた。
「庭の外か、そんなに外れにあるのだろうか?実はちょっと、一人で素振りだけでは物足りなくてな。出来ればそういう軍隊を調練している施設なり、そういうのは無いのだろうかと思っていた所だった」
「良いですね、是非こちらに御出でになさってください。ご興味があるとは存じ上げず申し訳ない、それについてはレギオン様に伝えておきますので」
「ありがとう、助かるよ」
「しかし何故庭の外に?フリード隊の部署は庭にそろっている様だが」
「あー……ご存じだとは思いますが、我々はフリード様の部隊とは仲が悪い上に相性も良くありませんので」
確かに、そうだと聞いている。実際、庭に居るレギオンの取り巻きと、フリードの部隊がすれ違った時の、双方の険悪さは目に余る程だった。フリード隊の方が事を荒立てない様に強く教育されているのか、何か起きる前にどちらかが速やかにその場を去る、という現場を何度か目撃した事があった。
「良かったですね、ケレス」
私に対しては辛辣なのに、同朋には友愛を込めて心から喜んだ声を掛けるロムス。と、その彼がすぐに私を横目でやや睨んだで来たので驚いて目を瞬く。
「最近は誰か様の所為でずっと庭にいて、あちらにはあまり顔を出していない様子でしたものね」
「ああ、おかげさまでエヴェスの遠征は楽しみで成らなかったよ」
そんな屈託無く笑わないでくれ、と私はやや口が引きつってしまう。
レギオン軍は『その件』に関しては極めて本気である事が、極めて優れた軍隊であるが故に、優秀である理由がそんな所にあって良いものだろうかと一瞬、悩んでしまいそうだ。
「ジャン様が視察に来るなら、きっとレギオン様がご案内してくださるはず。きっと皆、喜びます」
普通の軍隊なら、お偉いさんが視察に来る事をこんなに無邪気に喜びはしないんだよなぁと、私は苦笑が漏れそうになるのを抑える必要があった。
レギオンと同一化してしまったレギオン軍は本当に、純粋にレギオンの視察を喜ぶだろう。
彼らの完成された関係性の上では、悪い事ではないかもしれない。
どうにも私の所為で彼らレギオン軍を、少なからずヤキモキさせている。少なくとも、ロムスは何時も会うたびにそういう事を私に訴えていたのかもしれなかった。
「実は、君達と会話が成り立つのを知らなくて」
それを聞いて、ケレスが苦笑をしてロムスを伺う。拗ねた美丈夫が視線を逸らしているのを二人で、笑って見てしまった。
「ロムス、レギオン様に知れたら怒られるんじゃないか」
「怒られたって構いませんよ、お仕置きならなお歓迎です」
「ジャン様の事は、どうにも特別に思っていらっしゃるのだから側近である君は、そこの所もう少し配慮をするべきだろう」
「……うう」
と、そんな悔しそうな顔をこっちに向けないでくれ、レギオンの気持ちはともかく、私は絶対そっち側には行かないんだから。それこそ私の態度で理解しているだろうに、それでもロムスにとっては愛するレギオンを取られる心配の方が上回る為に、どうしても彼に私を近づけたくない様である。
「能力が一切通じない私に、どうして彼は固執するんだろうな」
正直に言えば少し困っているがと、同意を求めるような事を二人に振ってみたが、ケレスの方がかぶりを振って、緩やかに……微笑む。
「分かりませんよジャン様」
「……何がだ?」
「俺もロムスも、最初は貴方と同じ事を言っていましたからね」
「……ん?」
思わず怪訝な顔をしてしまう。
「さっきの、会話が成り立たないって話ですけど……ぶっちゃけ成り立たないと思いますよ、レギオン軍とは」
「レギオン様が望めば、ジャン様に話を合わせる事もあるかと思いますが」
「レギオン軍は殆ど『我』が残りません。……名前も、無意味です。俺達はジャン様と同じであんまり、レギオン様の力を頂けていないんです」
極めて残念だ、という顔をした二人に、私は思わず声を失う。
暫らくしてからようやく言った。
「という事は君達には、レギオンの異能に抵抗力があるという事か」
それなのになんで、こんなに二人ともレギオンに従順なんだ!?
*** *** ***
ふしだらで、言葉が悪くて意地も悪い。口を開けば猥雑な事ばかりだし、乱暴で残忍で、その上普段はぴっちりとした服と鉄仮面で完全に隠しているが、体全体が極めて醜い、らしい。
私はたまに垣間見る程度なので、どの程度不細工なのか、レギオンの素顔については良く知らない。
隙間から見えるだけでも、傷跡が醜く治った蟹足腫に覆われている事や、口が奥歯が見える程割けている事分かる。見た目は醜いかもしれないが、全体で見れば彼が選んだレギオン軍の様に、整った顔立ちなのかもしれない。
などと、懸命に彼の『良い』所を探してみたり、妄想してみたりしているがやはり、どうしても思い至らない。
能力が無ければ、誰が彼を愛するものかと思う位には最低な男だと思う。
ああ、さすが悪人として庭に招き入れられていると、正義の使徒と自らを信じる私が断言するくらいに、彼には『愛すべき所』が無い。
それなのに、そんな彼を愛する人間が居る。
ロムスとケレス、二人がレギオンの同一化を受けていない事。
二人はそれでも心から、レギオンを愛していて彼の軍隊に加わっているという事態を理解してなお、やはり……信じられない。訳が分からない。
酒の席には無事に加えてもらったが、確かに二人以外とは会話が通じなかった。必要な事であれば双方の状況確認として普通の会話が成り立っているのに、いざ酒の席で私が話しかけたり、レギオン軍が話している会話と聞いてみたりすると全部が全部、レギオンの言葉だった。
口調こそレギオン程悪くはない、ある程度は温和な言い回しになっているが、間違う事無きレギオンの思考だ。
レギオンが望む殺戮を繰り広げられなくて残念だった。
でもジャン様がそういう風にしてしまったのならしょうがない。
とにかく今日は約束された日であるから……ソレに対する期待に向けた、極めて低俗かつ猥雑な会話が繰り広げられているだけであった。
「いえーい、ジャンくーん、良い顔してるよぉ」
と、レギオンが若干は酒が抜けたな、という風な声で、呆れて酒を煽っている私を見て冷やかしてくる。するとレギオン軍は一斉に反応して同じように冷やかし立ててくるのだった。
ロムスは、私と酒を呑むのは拒否すると云わんばかりに距離を取り、しっかりレギオンの隣に座り込んでいる。かくして、私と酒を酌み交わしまともな会話を返してくれているのはケレス氏だけなのであった。
しかしそれも、どうしてあんな男が良いのだ?という私の疑問に対し、純粋な愛の奇跡を事も在ろうか私にも勧めてくるだけという実に不毛なものになりつつある。
ロムスも、ケレスも、本当に純粋にあのレギオンが好きなのだ。
これから繰り広げるであろう性愛を抜きにしても、心の底からあの男を愛おしいのだと云う。
いや、最初はまだ少しマトモな会話をしていたと思うんだ。
そもそも、どういう経緯でレギオン軍に下ったのかとか。しかしそれも最初は良かったものの、恋に落ちるまでの経緯が実に、実に最低で途中で話を辞退したくらいだ。
聞きたくなかった。
決着が、心の底からの純愛になった事を先に知るからこそ、その経緯がどんなに『悪どい』事であっても、今更悪しきと斬り捨てる事が出来ない。
出来るはずが無い。
同一化能力が通じない、しかしレギオンの方で惚れてしまってどうしても手元に美しいモノや、有能なモノを、一体全体どうすれば、こうなるというのか?その経緯はちょっと予測したとおり、最悪なものだった。
レギオンの事を語る以外は極めて好青年にしか見えないケレスを前に、私はもう一度深いため息を漏らす。
しかもケレス氏は、場合によってはこの私も自分たちと同じ経緯で、レギオンにハマるものだと若干、信じて疑ってない気がする。
その頃から、恐ろしい場に来てしまった事に後悔を隠し切れていない私である。そんな私を面白おかしくレギオンの方は楽しんでいる気配すらある。
最低だ。
レギオン軍は、本当に、軍隊としてはあんなに完璧なのに繋がっている経緯が本当に最低最悪だと思わずテーブルに突っ伏してしまった。
「まぁ不健全である事は否定しませんが、ジャン様はそういう所に目くじらは立てないのですね?」
ケレス氏の洩らす稀にマトモな会話に反応し私は顔を上げた。
「人の恋愛事情に正義も悪も在ると思うのか」
暫らくして私はそそくさとレギオン軍の宿から自分の寝床へ逃げ帰った。
酔いが醒め、あわよくばどうにかされてしまいそうな身の危険を理解したからだ。
そんな私をレギオン程バカみたいに笑うでもなく、ケレス氏は親身になって帰りの支度を手伝ってくれたし、ロムスは絶対こちらには近づかないでくださいよねと心底嫉妬した風に、私を追い払ってくれるのだった。
終
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