異世界転生で【魔法使い】になりたかった俺が【魔砲使い】になった件

暁ノ鳥

文字の大きさ
2 / 10

第2章

しおりを挟む
「う……ん……」
 
 意識がゆっくりと浮上してくる。
 
 なんだか身体が重い。特に頭。
 昨日の夜、調子に乗ってエナドリがぶ飲みしながら深夜アニメ見てたからか?

 いや、そもそも俺、トラックに轢かれて……。

 そこまで思い出して、俺はバッと目を開いた。
 
 目に飛び込んできたのは、うっそうと茂る木々の天井。
 見たこともないような巨木が何本も天を突き、その隙間から木漏れ日がキラキラと差し込んでいる。

 足元にはふかふかとした苔。
 鼻をくすぐるのは、濃密な土と植物の匂い。
 小鳥のさえずりや、風が葉を揺らす音が、やけにクリアに聞こえる。

「……森?  しかも、なんかこう、ファンタジー的な?」
 
 上半身を起こして周囲を見渡す。
 どう見ても日本の森林公園とかじゃない。
 
 空気の濃さが違う。
 生命の密度が違う。

 まさに、ラノベで読んだ「異世界の森」そのものだ。

「おお!  完璧にファンタジー世界だ! ってことは、俺、本当に転生したんだ!」
 
 女神様の顔が脳裏に浮かぶ。
 軽いノリだったけど、仕事はきっちりしてくれたみたいだ。
 
 興奮と期待で胸が高鳴る。
 まずは、お約束のアレを確認しないとな。
 
「ステータス、オープン!」
S
 Fチックなウィンドウが目の前にポップアップするのを期待して叫んでみる。
 ……が、何も起こらない。
 
「あれ?  ダメ?  じゃあ、念じればいいのか?  ええと、俺の能力は……」

 そう思った瞬間、頭の中に直接情報が流れ込んでくるような感覚があった。

【名前】アマギ・リク
【称号】異世界人、女神の祝福を受けし者
【種族】人族(ヒューマン)
【状態】健康
【レベル】1
【HP】100/100
【MP】50/50
【筋力】10
【耐久】8
【敏捷】12
【魔力】15
【スキル】魔砲 Lv.1、言語理解

「おお!  本当にステータスだ!  しかもMPあるってことは、魔法も……ん?」
 
 スキル欄に燦然と輝く文字。

 【魔砲 Lv.1】。
 
「まほう……砲?  大砲の砲か。まあ、魔法の一種なんだろうな。攻撃魔法が得意ってことか?  さすが女神様、わかってる!」

 細かいことは気にしない。
 とにかく「まほう」という文字が入っているだけで、俺のテンションはマックスだ。
 早く試してみたい!

 キョロキョロと獲物を探すハンターのように森の中を見渡すと、前方、木の根元あたりで何かがぷるぷると震えているのを発見。
 青くて、半透明で、不定形。大きさはバスケットボールくらいか。
 
「あれは……スライム!  うおお、定番中の定番、最弱雑魚モンスターの代名詞!」
 
 しかもご丁寧に三匹もいやがる。
 まるで「さあ、俺たちでチュートリアルをどうぞ」と言わんばかりの配置だ。
 
「よし!  早速、俺の華麗なる魔法デビューといくか!」

 意気揚々とスライムたちに近づく。
 気分はもう一人前の魔法使いだ。

 腕を前に突き出し、中二病全開で魔法の構えを取る。

「えーっと、まずは基本の火魔法だよな。燃えろ、俺のコスモ!  いでよ、炎の精霊!  我が呼び声に応え、敵を焼き尽くせ!――【ファイアボール】!」
 
 ラノベで読み漁った、それっぽい詠唱を口にする。
 気分は最高潮だ。

 さあ来い、俺の初魔法!
 ちっちゃな火の玉でもいいぞ!

 ところが、だ。

 詠唱の途中から、右腕に奇妙な感覚が走り始めた。
 ピキピキ、と微かな音が聞こえる。
 
 まるで、腕の中で何かが凍って、ヒビ割れていくような……。
 
「え?  なんだこれ?  なんか腕が……」
 
 異変に気づき、詠唱を中断して自分の右腕に視線を落とす。

 その瞬間、俺は自分の目を疑った。

 俺の右腕が、肘から先、青白い燐光に包まれ始めているのだ。
 
「は?  ひ、光ってる?」

 次の瞬間、メキメキメキッ! と骨が軋むような、筋肉が引き千切れるような、そんな冒涜的な音が響き渡った。
 
「い、痛くは……ないけど、でも、何だこれ!?」
 
 俺の意思とは無関係に、右腕の形状がみるみる変化していく。
 皮膚が硬質化し、まるで金属のような光沢を帯び始める。
 指はなくなり、腕そのものが太く、長く、そして円筒形に――。

 それは、まさしく。

「えええええええ!?  腕が!  俺の右腕が大砲になってるうううううううう!!!」

 もはや腕ではない。
 それは、SF映画に出てくるような、美しい流線形を描く青い砲身だった。
 表面には複雑な紋様が走り、淡い光を放っている。
 
 訳が分からない。
 
 魔法ってこんなのだっけ!?
 ファイアボールって、手から火の玉出すやつだよな!?
  腕が大砲に変形するなんて、一言も聞いてないぞ!

 パニックに陥る俺の脳裏に、女神様の言葉が蘇る。
 
『あなたに【魔砲(まほう)の祝福】を授けましょう♪』
 
 魔砲……これ、魔法じゃなくて、魔『砲』の方かあああああ!?

 砲身の先端が、さらに強く輝きを増していく。
 エネルギーが急速にチャージされていくのが、肌で感じ取れる。
 
 目の前のスライムたちが、何事かとこちらを不思議そうに見ている。
 ぷるぷる震えるその姿が、なぜか今は死刑執行を待つ罪人のように見えた。

 そして――次の瞬間。
 
【マジック・バースト】

 スキル名なのか何なのか、そんな単語が頭に響いたと同時に、俺の右腕――いや、魔砲から、極太の青白い閃光が轟音と共に迸った。

 ズドドドドドドオオオオオオオオンッッ!!!

 凄まじい衝撃と熱波。鼓膜が破れそうなほどの爆音。
 一瞬遅れて、視界が回復する。
 
 目の前にいたはずのスライム三匹は、跡形もなく消し飛んでいた。
 
 まあ、それはいい。
 いや、よくないけど、まだいい。

 問題は、その奥だ。
 
 スライムたちがいた場所から、直線状に、森の木々が薙ぎ払われ、大地がえぐられ、まるで巨大な爪で引っ掻いたかのような、幅数十メートル、長さ数百メートルはあろうかという更地が誕生していたのだ。
 
 薙ぎ倒された古代樹は軽く十数本じゃ済まない。
 そのいくつかは、根元から蒸発したかのように消滅している。
 
 そして、はるか遠くの空には、見事なきのこ雲がもくもくと立ち上っていた。

「…………」

 口をあんぐりと開けたまま、俺は呆然と立ち尽くす。

 あれ?  ファイアボールって、こんな戦略兵器みたいな威力だったっけ? 
 
 いや、そもそもこれ、ファイアボールじゃないし。
 完全に未知の何かだし。
 
 ぷるぷるぷる!
 
 ハッと我に返ると、爆心地から辛うじて逃げ延びたらしい数匹のスライムたちが、見たこともないような速度でプルプルと震えながら、森の奥へと猛ダッシュで逃げていくところだった。
 
 その姿は、恐怖におののいているようにしか見えない。
 うん、俺も怖い。

「と、とりあえず、この腕……元に戻さないと……」

 まだ青白い光を放ち続けている右腕の魔砲を見下ろす。
 どうやったら戻るんだこれ。
 
「戻れ……戻ってくれ……俺の頼れる右腕に……!」

 必死に、強く念じる。
 すると、先ほどとは逆のプロセスで、砲身がゆっくりと収縮し始め、青白い光が薄れ、徐々に人間の腕の形を取り戻していく。

 メキメキという音はしないが、代わりにキィンという金属が冷えるような微かな音が響いた。
 
 数秒後、俺の右腕は、完全に元の人間の腕に戻っていた。
 
 触ってみる。
 うん、普通の皮膚だ。
 指もちゃんと五本ある。
 
「何だったんだ、今の……。魔法、じゃないよな、完全に……」

 広大な爪痕が残る森と、自分の右手を見比べながら、俺はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
 
 これが、女神様がくれた「まほう」の力……。

 俺の異世界魔法使いライフ、開始数分でとんでもない方向に舵を切った気がする。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

処理中です...