ヒロインを性奴隷にする能力を得た童貞の俺はヘタレすぎて能力を使えない件

暁ノ鳥

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第18章

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 翌日、俺とセシリアは、王都から馬車で半日ほど揺られた、寂れた村に来ていた。
 
 なんでも、この村では原因不明の病が流行っており、村人たちはそれを「悪魔憑き」の仕業だと信じているらしい。
 そして、どこから聞きつけたのか、「王都に聖人のような若者と、清らかなシスターがいる」という噂を頼りに、セシリアに助けを求めてきたのだ。

 断れるはずもなかった。特に、使命感に燃えるセシリアの「蒼真さんと一緒なら、きっとどんな悪魔でも祓えます!」というキラキラした瞳を前にしては。

 案内されたのは、村の外れにある、今にも崩れそうなほど古びた教会だった。
 
 堂内は埃っぽく、窓ガラスの割れ目から差し込む光が、空気中のチリをきらきらと照らしている。
 祭壇の前には、村人たちが十数人ほど集まり、固唾をのんで俺たちを見守っていた。
 
 その中心には、ぐったりとした様子の青年が椅子に座らされている。
 彼が、例の「悪魔憑き」らしい。

「さあ、始めましょう、蒼真さん」

 セシリアは、いつになく真剣な表情で、ぎゅっと胸の前で十字を切った。
 その横顔は神々しいほどに美しいが、俺の胃はすでにキリキリと悲鳴を上げている。

 聖人でもなんでもない俺に、いったい何ができるって言うんだ。

 儀式は、セシリアの透き通るような祈りの言葉で始まった。
 荘厳な雰囲気に、村人たちが息を呑む。

 やがて、セシリアは俺の方を振り返り、その場にすっと膝まずいた。

「蒼真さん。あなたのその聖なる力を、まずはこの私に注いでください。私を器として、神の御力をこの地に顕現させるのです」
「え、俺が!?」
「はい。聖人であるあなた様の手で、お願いします」

 村人たちの、期待に満ちた視線が突き刺さる。もう後には引けない。
 俺は、セシリアから渡された聖水の入った小さな壺を手に取り、震える指で、彼女の額に数滴、水を垂らした。

「……あぁん……」

 セシリアの桜色の唇から、吐息とも喘ぎともつかない、甘い声が漏れた。
 彼女の身体が、ぴくん、と小さく痙攣し、その碧い瞳がうっすらと潤んで、恍惚とした光を宿す。

「な、なんだ今の反応!?」
「す、素晴らしいです……蒼真さんの聖なる力が、私の身体の隅々まで満たしていくのが分かります……」

 いや、ただの水だぞ!?
 俺の内心のツッコミなどお構いなしに、セシリアはさらに懇願する。

「もっと……もっとです、蒼真さん。もっと、あなたの聖なる力で、私を満たしてください……!」
「む、無茶言うな!」

 儀式は、どんどん俺の理解を超えた方向へとエスカレートしていく。
 祈りを捧げるセシリアの額には玉の汗が浮かび、その汗で、純白のシスター服がじっとりと肌に張り付き始めていた。
 布の下で、あの隠れ巨乳の輪郭が、ありありと浮かび上がっている。

 村人たちの視線が、熱を帯びていくのが分かった。
 彼らは、これを神聖な儀式の一部だと信じ込んでいる。

 そして、セシリアは、とどめの一言を放った。

「悪魔は、人の身体の弱い部分に取り憑きます。蒼真さんのその聖なる手で、私のこの身体を直接、清めてくださいませ……!」
「できるか、そんなこと!」

 俺が思わず叫ぶと、村人たちから「おい、聖人様は何をしておられるんだ?」「早く儀式を進めてくれ!」という囁き声が聞こえ始めた。
 前には、肌を晒すことを求める聖女。後ろには、儀式の続行を願う村人たち。

 完全な、板挟み。

 セシリアの、潤んだ瞳が俺を捉える。その瞳には、純粋な信頼と、どこか熱っぽい期待が入り混じっていた。
 村人たちの、すがるような視線が俺に突き刺さる。

 どうすればいい。どうすれば……!

 俺の迷いと葛藤が、引き金になった。

 ――ズキンッ!

 脳を灼く、あの衝撃。最悪のタイミングで、最悪の事態が起きた。
 セシリアの瞳から、理性の光が完全に消え失せ、神聖な恍惚の光だけが、爛々と輝き始めた。

「……ああ、蒼真様。あなた様の御心、しかと受け取りました」

 彼女は、うっとりとした表情で立ち上がると、村人たちが見守る前で、なんの躊躇もなく、自らのシスター服のボタンに手をかけた。

「この身を祭壇に捧げ、あなた様の望むままに清めていただくことこそ、神の御心。そして、悪魔を祓う、唯一の方法なのですね」

 カチリ、カチリ、とボタンが外れていく。
 白い肌が、一枚、また一枚と、衆目に晒されていく。
 その光景は、あまりにも背徳的で、そして、狂おしいほどに扇情的だった。

「や、やめろおおおおおおおおおおおっ!」

 俺は、我を忘れて叫んだ。

「ダメだ!  俺はそんなこと望んでない!」

 俺が、半狂乱で彼女の腕を掴み、その行為を止めさせた、まさにその時だった。

「……あれ?」

 祭壇の前でぐったりしていたはずの「悪魔憑き」の青年が、むくりと身体を起こした。

「なんだか……身体が、すごく軽いぞ……? あの苦しみは、一体どこへ……?」

 その瞬間、村人たちの間に、どよめきが走った。

「おおっ! 悪魔が祓われたぞ!」
「奇跡だ! 聖女様が、その身を捧げようとしたことで、奇跡が起きたんだ!」
「聖人様、聖女様、ありがとうございます!」

 村人たちは、熱狂的な歓声を上げ、俺とセシリアに向かってひれ伏し始めた。
 どうやら、俺の能力がセシリアの力を高めて、その結果悪魔を祓ったらしい。
 俺自身とても信じられないが、おそらくそういうことなのだろう。

 能力から解放されたセシリアは、自分が何をしかけたのかを理解し、顔を真っ赤にしながらも、俺の目を見て、恍惚とした表情で囁いた。

「……やはり、蒼真様の力は本物ですわ。私、今日の儀式で、また一歩、神様に近づけた気がします」

 ダメだ。もう、誰にも、何も、止められない。
 俺は、村人たちの熱狂的な称賛を浴びながら、背徳感と罪悪感の地獄の底で、意識を失いそうになっていた。
 
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