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6章

7、逃がさない。 (軽度⚠︎

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 ダクトを抜けて、外を覗いた。
曇った空と少し遠くに街が見える。

ここは二階だけど
飛び降り、
逃げるのは不可能ではない‥

私は怪我を覚悟で
ダクトを飛び出る。



トッ




足が浮いて、心臓がヒュッとなり、
身体が風を切る音が聞こえた。

空中で眼を閉じて、衝撃を待つ。




ドサッ!!!


という音がして、
私は着地した。痛みはない。


ただ何かが

おかしい‥


私は地上に着地したのではない‥








誰かに受け止められたのだ


それが誰かは私にはわかる。







眼を開けることができず、
身体はもう震え、歯をガチガチ言わせて
本能が逃げろと警鐘をならす。

恐怖が私の心臓を押し潰すのがわかる



もう、何もかもが絶望的だった。

聞きなれた声が聞こえる‥






「アイリーン‥
一体どこに行こうとしたのかな?」





「あっ‥あぁっ‥許して‥許してっ‥!!
ジョザイア‥ごめんなさい‥ごめんなさっ‥っ!!」



私の顔から一気に血が引いて、
背筋が凍る。

私は涙を流し、謝罪をくりかえすが



彼は無言で私を抱きしめる腕に力を込める、

ミシッと骨の軋む嫌な音が耳に届く。


苦しくて、内臓が潰れてしまいそうなくらい、
強く、じっくりと私を締め上げる。

呼吸ができなくなり、
唾液や涙が溢れてくる。



「‥うぁぐ‥‥ぁぐ‥ごめ‥なさ‥」


「うるさい‥‥!!」


彼は聞いたこともないような冷たい声を放って、
私の頭を前から鷲掴みにして、
家の壁に叩きつけた。


「っっぎゃっ!!!」


痛みの余り、金切り声で悲鳴をあげる。
彼は私の頭を掴んだまま、壁に押し付け
顔を近ずけてくる。


「なぁ‥アイリーン‥アイリーン‥
なんで僕から逃げようとするの?

逃げないと僕は信じて、脱出路を見せたのに‥」


私は彼に試されていたんだ‥
けれどもう気づくのには遅かった‥


彼の眼光は開き、
その銀の瞳が。憎しみと怒りに染まり、
狂気をたたえて、
私を睨みつけていた。


‥私は選択を間違えてしまった。


そう確信があった。

彼が私に乱暴をするとき
どこか、彼は自分をセーブしていた、

私を殺さぬように、
傷つけないように。
なのに今は、そのタガが外れた。

いや、外してしまったんだ‥




誰でもない私自身が。



「ほら、アイリーン‥なんとか言えよ!!」



彼は私の頭を髪ごと鷲掴みにしたまま、
後頭部を壁に叩きつける。 
何度もなんども、気が狂ったみたいに。


何度も襲いかかる鈍い痛みに
私は悲鳴をあげるが彼の耳には届かない。

彼は私を叩きつけながら怒声をあげる。


「なんで!!?どうして!!!?
好きになってくれないの?!!

アイリーンは僕のために存在してるんだ!!
わかってる?!

僕だけみて!!
僕だけを愛しさえすればいいのに!!

あんたは僕のもので!!
所有物のくせに!!
なんで言う通りにしない?!!
クソが‥!!クソが!!
ふざけるな‥!!あぁ‥畜生‥!!
一生、僕の玩具にしてやるよ‥!!」


彼は息を荒げ、私の頭を掴んだまま、
地面に投げつける。

頭を打ち付けられ、
グワングワンと視界が揺れる。

後頭部からは血が流れ、
地面に染み込んでいった。

揺れて滲む視界の向こう、
彼が近づいてくるのが見える。


私‥殺されるの‥?


ぼんやりとそう考えていると
私の右足を
グッと踏みつける感触がした。


「アイリーン‥
僕から逃げようとするからこうなるんだ‥」


彼は足を踏みつける力を強くして、
私の顔を覗き込む。
痛みと恐怖で私の全ては支配され
必死で涙を流し懇願する。


「‥いやぁっっ!!‥や、だぁっっ!!!
‥やめて!!!!」


そんな私を見て彼は滑稽だと言わんばかりに嗤う。


「僕だってこんなことしたくないよ?
でも仕方ない。僕とアイリーンの為なんだ。

このいけない脚を折ってしまおうね。」


声すらも出なくなって、私は必死に首を振る。

後頭部の痛みも忘れて
必死に声にならない悲鳴をあげる。
それでも、ギリギリと
私の脚を踏みつける力は強まっていく。


「アイリーン‥愛してるよ。 
僕は貴女を絶対に‥逃がさない。」



ジョザイアが私の脚を勢いよく踏みつけると、

私の脚は


ゴキッッっ‥



と嫌な音をさせ、


あらぬ方向へと踏み折られた。




踏み折られた脚から激痛が電気のように走り
絶叫する。


「ッッッぎああああぁああぁああっ!!!!!」


彼は痛みに喘ぐ私を見下し、
恍惚と嗤う。


「あははははっ!!いい気味だ!!
僕を裏切るからいけないんだよ?

アイリーン?もう、どこにも行けないね?
僕のところにずーっと居るといい!!
僕がずーっと可愛がってあげる!!」


私は何も考えられない、
苦痛と恐怖だけが私の中に溢れ、
泣きながら体を丸くして、痛みに耐える。


「あ‥ぁ‥うっ‥‥ぁ‥あぁ‥!!」


体が震えて、大量の血と汗が額から滴って、
苦しい‥痛い‥怖い‥、

もう、このまま死んでしまいたい。


そう思うと、ジョザイアが
私の顔を両手で包み笑いかける。
ヒヤリとした大きな手は、
私の顔から熱を奪う。


得体の知れない恐怖を感じたが、


私にできることなど何もなかった。



「アイリーンごめんね?痛かった?
‥ふふっ可愛いね。凄く苦しそう‥

少し楽にしてあげるね‥」


そう言うと、私の上に馬乗りになって、
無抵抗の私に口付ける。

血塗れになった私の頭を
大きな手で撫で回し、

唇を甘く噛み、舐め上げると

舌を指し挿れて、
クチュクチュと深く舌を絡める。



「んっふっ‥ぁんん‥ぅんんっ‥はぁ‥」



血塗れの接吻は何度も繰り返され、
身体が熱くなり、びくりと反応してしまう。

キスは長く、どれだけの時間が
経ったのかわからないほどだった。

けれど
それが終わり、ぷちゅりと舌が抜かれると
痛みが少しばかり引いていた。


「ねぇアイリーン知ってた?
キスには鎮痛効果があるって。」


彼はいつも通りに笑う。

私はもはや、頭を打ち付けられ、足を折られ、
痛みと、失血によって、
意識を保つのが精一杯だった。

全身の力が抜けて、まるで動けない‥



私がピクリとも動かないのを見ると、



彼の顔から
狂った笑顔も怒りも何もかもが消えて、


青ざめていく。




「ぁ‥‥アイリーン‥?」




彼は慌てて私の身体を揺すって、
顔や首に触れる。

それでも、私は全く動けない。
ぐったりしたままだった。

彼の眼から光が喪われて、 

声が震える。



「‥‥えっあ、アイリーン‥?!
アイリーン?!‥大丈夫‥だよね‥!?

あ‥ぁあ!!いやだ!!いやだ‥!!

死なないで‥!!

僕をおいてかないで‥!!」



幼い頃の彼が今の彼と重なる。
不安定で、愛情に飢えた、
可哀想な人‥


彼は慌てて、私の胸に耳をあて、
心音を聞く。



「あぁ‥よかった‥よかった‥
待って、今すぐ治療するから‥!」



そう言って、
私を大事そうに優しく抱え上げ、
急いで、屋敷の中に戻る。


私はまた、あのベットに寝かされた。


全ては振り出しに戻ったのだ。
いや、振り出しより、もっと酷い。


激しい痛みに朦朧とする中、
うっすらと目を開けると、私を抱き締め、

私の胸に頭を乗せて、
泣きじゃくるジョザイアが見えた。



「‥ごめん‥ごめんね‥アイリーン‥

‥僕も‥傷つけたくはないんだよ‥‥?
殺したくもない‥けど、
‥アイリーンが逃げるから‥


どうして逃げたの‥?
僕のこと‥嫌いになったの‥?


ねぇ‥僕のこと嫌いにならないでよ‥


‥ほんとに‥大好きなんだ‥

深く深く‥愛してるんだよ‥


アイリーン‥どこにも行かないで‥


ずっと僕の側にいてよ‥」



彼はギュッと私を抱きしめる。
熱い体温が伝わってくるが、
その抱擁によって、
身体の痛みは、酷くなる。




「う…っっ!!!!」






‥‥人を殺しかけておいて、愛してる‥ね‥
イカれてるわ。



こんな人に同情してた私がバカみたい‥




‥‥バカみたいだわ‥‥





すると、ジョザイアが私の身体から
離れるのを感じた。
そして鎖の音‥



「‥でも、アイリーンが悪いんだよ?
僕から逃げるから‥

はやく僕のものになって‥?

じゃないと、僕、貴女を壊しちゃうよ?
犯して、嬲ってメチャクチャに‥」



ガチャリと音がして、
私の手脚が、ベットに拘束された。






















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