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おまけ

クロードとジョザイアの出会い。〈クロード目線〉

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『いつでも、私は悪い男に惹かれてしまう。

異常な男に。

そして私は尽くしてしまう。

この身がどうなろうとも。


それが私の…悪い癖だ。』


私は恋人に殴られた頬を撫でながら、
ため息を吐く。



私はクロード・ウェイン。
変装の達人で情報屋。
今日もクラブのカウンターで
取引相手を待っていた。


クラブは色とりどりのライトで照らされ、
薬でラリった若者たちの喧騒が響く。
この喧騒が、情報を売るには適している。

しかし、タバコや麻薬、
酒の匂いは…正直好きじゃない。


そんなことを考え頬杖をついていると、
背後がやけに騒がしいことに気がつき、
振り返る。






「…!!!」





その時だった…彼を初めて見たのは。


人混みと喧騒の中で
彼だけが、美しく存在感を放っていた。

まるで彼の周りだけ時間が
止まっているかのように。


金色の髪に
憂いを帯びながらも整った顔立ち。
銀色の瞳。彫刻のようなバランスの良い体格。


…美しい…。



彼は大勢の酔った女性に囲まれて
辟易した様な嫌悪の表情を浮かべていた。


「別に君らに用ないんだけど。通してよ…」


「えー!私たちと遊びたくないの?」


「遊びたくない。」


彼女達の気持ちは、よくわかる。
だって、美しい。抱かれたくもなる。
私が女性であれば言い寄っていたかもしれない。


まぁ、男性の私では 
相手にはされないし、何もできはしないが。


そう思って身を引くのは良くあること。

現恋人も、やはり女性がいいと
言い出して、私を今にも捨てそうだ。


「…はぁ」


まぁ、どうでもいいことだ…
どうでも…。

ため息を吐きながら、なんとなく金髪の男と
女性達の会話に耳を傾ける。


「それより、僕は人を探してるんだけど。
知らない?<メガネで黒髪の男の人>」


「あっ!!みたみた!
あのカウンターのとこの客じゃない?
てか…そんな事よりさぁ…」


私はパッと振り向き、そちらを見据えた。
メガネの男は私だ。彼こそが取引相手の様だ。

ということは、あの人が
マフィアのフラテリのNo.2?あの若さで? 

マジか…

噂には聞いてる。
残虐無慈悲なサイコ野郎だって。
…正に私の好みのドストライク。


彼は真っ直ぐに私の方へと歩いてきて、
目の前で止まる。

私は平静を装いながら、声を絞り出す。


「やぁ、ジョザイア・マクベイン。
お会いできて光栄ですよ。何を御所望ですか?」


そう聞くと、彼は薄く柔らかそうな
美しい唇を動かす。


「あぁ、調べて欲しいことがあって…」


彼がそう言いかけたとき、先ほどの女性が
割って入る。
ジョザイア・マクベインの
辟易とした表情も無視して。


「ねぇってば!!あたしを無視する気?!
男なんて、放っておいて遊…」


彼女の言葉を聞きながら
『仕事の邪魔だ』と私はため息をつく。



「マクベイン。場所を変え…」



そう言いかけた瞬間…

口が塞がった。
   

気づけば彼にキスされてた。


激しい混乱の中、考える

え…?????
なんだ???このラッキースケベは???
死ぬの??え…なに???


彼の唇が柔らかくて冷たい。
長くて滑らかな舌が入って来る。

後頭部を掴まれ逃げれない。

ああ…訳がわからないが…最高…


「…ん」


不意に口は離され、肩を抱かれた。
隣で彼の声がする。


「ごめんね。お姉さん、君には興味ないって
こーいう事なんだ。どっか行ってよ。」

「えー…そーなの??じゃ
しょーがないね!ま、楽しみなよ。」


女性は少し残念そうに
しかし、なぜか少し嬉しそうな様な顔をして
その場を去っていった。


私はというと、
カウンターの椅子にへたり込み
もう放心状態だ。


「あの…マクベイン…えっと…貴方って
その…」


「場所を僕らが変えたとしても、
あの人ついて来ると思うよ?こうするのが1番楽。

で、調べて欲しい事があるんだけど。」


あ、ああそうだ。仕事。
仕事をしなければ。落ち着いてくれ私。
聞くのはその後でいい。  


「なんでしょう?なんでもお調べしますよ?
貴方のためなら。」


「それは頼もしいね」


彼は軽く微笑んで私の隣の椅子に座る。

くだらない、淡い期待に私の胸は踊った。

そして、彼は言う。


「この人を探して欲しいんだ。
アイリーン・タウンゼント。
僕の、一番愛してる人。」


「……そう、ですか。お安い御用です…」


私は答える。息の詰まる様な想い。
けれど、構わない。
ああ、構わないとも。




「…お代は、そうですね…。
私を貴方の従者にすること…なんてどうです?」




美しい貴方を常に近くで見れるなら…
それだけでも十分だ…
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