拝み屋一家の飯島さん。

創作屋 鬼聴

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歪なデート

デートで修羅場

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都内某所。


青空の下、若者で賑わう並木道を
私は飯島さんと歩いていた。

道沿いにはオーガニックカフェだとか
パンケーキの専門店とか
ブランド物の服屋とかコスメショップなどが所狭しと並んでいる。


どれもまぁ、結構興味あるんだけど
それどころじゃ無い。もっと気になるのは…周り。

「ねぇあの人ヤバくない無い?
めっちゃイケメンじゃない?」

「それな!モデルとか俳優じゃね?
肌、陶器すぎ。てか女の子?
ヒールだし綺麗すぎん?」

「えー!あのデカさで女子はないよ!
ひとまずアタックしてみよーよ
案外いけっかもよ!隣の子ちょっと垢抜けん感じだし!」


コイツ飯島 了!!めっちゃモテてる…!!!
あの子たち中身を知らないから!!!

しかも誰が垢抜けないだよ!!もう!!


「飯島さ…じゃなくて了さん。
むっちゃモテてますね……」 


「えーそうですか?
まぁ俺、見た目がいいですしね!

…でも、モテないですよー。
お話すると、みんな潰れた毛虫を見る様な目で俺をみて帰ります」


「中身を見抜かれてる…」


「俺は見た目だって中身だって
良いと思うんですがねー。

まぁ、いいんですよ!だって今は…」



了さんは、するぅっと私の腰を抱えて
自分の近くに引き寄せる。


「楓さんにさえモテれば、なんでもいいので。」


了さんはいつも通り、ニンマリと狐みたいに笑う。


「…っ了さん!近っ近いから…!!」


凄いい香りがする!
あと…顔が!顔だけは本当に良い!!


「そうですね。わざと近くしてます。

楓さん的にはどうですか?
俺カッコイイですかね?

今日は滅茶苦茶に気合入れてメイクしたんですよ?」


「わかった!わかったから!
カッコいいんで!離れて…!」


あーヤバイ!!顔が良い!!死ぬ!!
オタクの様な感想で頭がいっぱいだ…

でも、冷静に…。

この人は、人の両手両脚を
切断しようとする。ヤバイ人!
落ち着いて…

「…あれそう言えば、
了さんメイクするんだ。」

「しますよそりゃ!
好きな女の子とデートですよ!
ちょっとでもよく見られたい
男心わかりません?

頑張りすぎて今日は5時起きでしたよ!!」

「はっや…」

そんな話をグダグタしながらも、
街を歩いていく。

新緑の街路樹がゆらゆら揺れて、
レンガの床に木漏れ日も揺れる。

でも、飯島さんが
そんなに気合い入れてくれてると思うと正直ちょっと嬉しい…かも。

私も一応はデートだし家から
持ってきてもらったもので頑張ったし…


「………楓さんも今日は特に綺麗ですよね?

もしかして、
気合い入れてくれました?」


了さんはニコニコ笑う。


「ええ、まぁちょっとだけ。
デートとか久しぶりだし、一応。」


そう言った時、
了さんはヒクリと眉を吊り上げる。


「…『久しぶり』ですか…。
ふうん…」


了さんはつまらなそうな顔をして
少しだけ私から目を逸らした。


「?…」

「あ、そうだ!そんなことより楓さん!
せっかくですから化粧品みません?」

「え、いいけど…」


了さんは私の手を取って軽く引く。
その手はひんやりしていて滑らかで大きい。

「うーん楓さんには
何が似合いますかねぇ…」

そう言いながら了さんは早速
リップやらシャドーやらファンデやらを吟味し始める。


「やっぱ、楓さんが垢抜けないって言われたのって
ちょっとカラーが肌色に合ってないからだと思うんですよねー」

「う…聞いてたんだ…さっきの人の会話…」

「ええ、まぁ、大声でしたからね。

メイクの雰囲気とか
どう言うのがいいとか拘りあります?」

「特にはないなぁ…
なんか適当にやってます。」


「なるほど、なるほど。じゃあ俺好みにしましょう!いいですよね!楓さん!」

私が気圧されたように軽く頷くと
了さんは次から次へとカゴに
化粧品を放り込んでいく。


「よし、じゃあこれ全部買ってきますね!
帰ったら使ってみましょう!」


「え、それ全部?!顔は一つなのに!?」


了さんの持っている籠はもう化粧品で溢れそうだった。

「要りますよ!
シャドーはグラデーションにしたいし、
ファンデだってマットにしたい日と
艶にしたい日だってあるでしょう?

コンシーラーも少なくとも3種は欲しい…
シェーディングもハイライターも欲しい
楓さんにはアレもコレも似合いそう…

となると、こうなります。」


「別に良いけど…。お化粧好きなんですねー
なんかきっかけとかあったんですか?」

了さんはちょっと考えると、
思い出した様にこちらに目をやる。

「小学生の頃に『贄鎮めの神楽にえおさめのかぐら』をやりまして…

その際に女装しないといけなくて、
高い靴を履いて神楽用の化粧をしたんです。
それからですかねー」


「ああ!ヒールもそれで?」


「ええ、そうですよ。
『あ、俺こういう格好の方が似合うな』と思って。」


確かに、今の了さんの格好は
彼に凄くしっくり来るというか似合う。

………格好良い…。

それに比べて元彼はなんも気づかないし、
服適当だし、メイクなんてもちろんしないし…
クソだったな…

…なんで一瞬でも付き合ってたんだろ?

まぁ…人殺しよりマシな気はするけど…

……………


「そうだよ!!?この人
人殺しじゃん!!」


「?…何か言いました?」


了さんが振り向き様に聞き返してきた。


「あ、ううん!なんでもない。」


…普通に楽しんでたけど
今、相当ヤバイ状況なんだった。

了さんは女の子の両手両脚を
線路で切断する様な奴だし、
家もヤバヤバのカルト集団でしょ!!?

ニエヨメだとか何だとか言われるし…

また、山奥に連れてかれる前に逃げないと…

「さてと、楓さん、楓さん。
俺、お会計してくるので
ちょっと待っててくれます?」

「え、うん。わかった。」

「良い子にしててくださいね?」


了さんはニッコリ笑うと私の額に軽くキスをした。

「!?ちょっ…了さん?!」

「??…ダメでした?」

了さんはキョトンとしている。


「…いや、ダメではないけど
その…」


流石にちょっと顔が熱い。


「よかった。恋人ならこれくらい普通でしょう?
じゃあこれ、買ってきますね。」


彼は安心した様に笑って
その場を去る。その後ろ姿を見ながら思った。

………チャンスでは??

えっえ…どうしよ!!?
一切一隅のチャンス!!!

でも、どうやって逃げよう!?!
走って外の人混みに紛れるとか???

今って使用人とかいるの?
簡単に私から離れたし…いるっぽいよね

逃げて、もし捕まったら
絶対酷い目に遭わされるし…

「えっと…えーっと…」

私がアワアワと逃げる手段を考えていると
後ろから男性の話声が聞こえた。

「あれ!楓ちゃんじゃね?
お前が捨てられたって噂の元カノ。」

「俺が捨てられたんじゃねーわ!
ちょっと合わなかっただけだって!
今も仲良いし!みてろよ!

おーい楓!」


そう言って彼らは私の肩を叩いた。
これから何が起こるかも知らずに。



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