拝み屋一家の飯島さん。

創作屋 鬼聴

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伝承

贄女とニエヨメの伝承

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プロジェクターに煌々とその題が
映し出され、ナレーションが始まる。


「…このナレーション…
プロを雇ってつけたんだ…
いいでしょ…」


禊さんが背後でボソッと言ってくる。


なにその熱意…


『いまは昔、明治末頃。
すでに飯島家は国内でも有数の霊媒集団でした。

呪術に、除霊、封印、払い、陰陽
なんでもござれの最強の霊力を持つ家系。それが我ら飯島家。


そんな飯島家の当主にある依頼が
持ち込まれました。』


カシャリと
プロジェクターの絵が変わる。
それは古い写真で、

了さんによく似た綺麗な男の人が写っている。

当時の当主…かな?



『その依頼はとある村の邪神の封印。

けれど、その邪神の力は強く、
飯島家総出でも敵わず、死者も出た。

そこで飯島家の当主は邪神を
封印ではなく収めることにしました。』


次は気味の悪い洞窟の写真。
真っ暗な洞窟の
奥には、薄っすらと張り巡らせた
ボロボロの縄と祭壇?の様なものが
写っている。


「?…封印と収めるって違うの?」


なんとなく授業のノリで挙手する
と、禊さんもそれに乗った。


「い…いい質問!
封印はいろんな定義あるけど…
文字通り、封じ込めること。
収めるは、なだめて悪さしない様にする
…みたいな感じ…」


「なるほど…。」


私はまたプロジェクターの方を向き直す。


『そして邪神を収めるためには
8人の生贄が必要でした。
それを最小限に抑えるため…

… 当主は、その村の娘に目をつけました。』


禊さんは背後から私の両肩を掴んで
尋ねる。


「なんでか…わかる…?」


私は小さく首を振る。


『その娘は、容姿端麗な当主に
好意を持っていました。
それはもう狂信的なほどに。

そして、
その好意を当主は利用したのです。

当主は娘に取り入り、
彼女と結婚しました。

彼女はとっても幸せでしたが
その幸せは脆く崩れ去ります』


「こっからが…最高に…いいとこ…」


禊さんはボソリと呟く。


『当主は娘を、座敷牢に閉じ込め
使用人や家の男共に言いました。

『その女を孕ませろ。7人産ませて
贄にする。最後にその女だ』


彼女は目を潰され飯島家の男共に嬲られて

絶望と苦痛の中、
7人の子供を産まされました。

その、子供達は贄として
目も開かないうちに殺され、


最後は彼女自身も。


座敷牢からは


『当主様…!!
どうして…どうして!!』

と彼女の泣き叫ぶ声が 
毎日響いたとか。



こうして、
村に平和が訪れましたとさ。


おしまい。』



プロジェクターはパチリと音を立てて
消えた。


「……酷い…」


そう私が口にすると禊さんは
私を後ろ抱きにする様にして
話し続ける。


「…酷いよね…でもこの憎しみ、
悲しみこそ彼女の…魅力!!

死霊達の魅力なんだ!!

…ゾクゾクしちゃうよね…

…特に彼女は別格だ…欲しい…!!
欲しい…

どうしても欲しい!!」


彼の手に力が入っていくのがわかる。

彼の恍惚と話す唇が耳に触れそうになり、荒い息遣いが感じられる。


「…ぇあの…み…禊さん??」


私が困惑気味に呼びかけると
禊さんはハッとして
後ろ抱きにしていた私の身体を離した。


「あ…!!ごめん…興奮しちゃって…

じ…じゃなくて。こっからが本題…。

そうして、贄にされた彼女や子供達は
化け物となり、

贄女にえおんな

として
今もこの家で彷徨っている…」



「…この家で…?」


ふと昨日、見た夢が思い出される。
…まさか…ね。


禊さんは私の周りを
ぐるりと回りながら話しを続ける。


「で、…ここが…一番大事なところ…
邪神を収めるには贄が必要だった。

じゃあ…贄女を収める為には?」


そこまで言われて気がついた。


「…さらに生贄がいるってこと…?」


「そう…正解。



それが君。"ニエヨメ"…


家の奴らは、贄女を抑える為に
君を〈贄嫁〉として彼女に捧げるつもり
なんだよ。

君の置かれてる状況のヤバさ…
わかった…?」



「……」


想像していたより、
事態は深刻だった。


逃げて捕まれば了さんに殺される。


逃げなくても、飯島家の人に
生贄にされる。


気持ち悪い汗が流れて、
ゴクリと喉が鳴る。


「…どうしたら…?」


そう小さな声で彼に聞く。
私の声は震えてた。


「だから…言ったでしょ?
逃げるんだよ…逃げ切るんだ…
了くんからも家の奴らからも、

それしか…アンタに…道はない。」


「…そ…そう…」


……それを聞いて、私は俯く。
こんな山奥に連れてこられて、
警察にも頼れない。

了さんからも
この家の何十人もいる使用人や
家の人からも逃げ切る…

そんなの…無理じゃ…。


「……」


……



部屋に沈黙が流れる。


彼は黙ったまま、俯く私を見ていた。
それから気まずそうに呟く。


「えっと…その…」

「……」


私が黙っていると、
禊さんは屈んで
私の手を取り握った。

細くて骨っぽい、指輪だらけの
大きな手が私の手を力強く包み込む。


「…なんか…怖がらせ…すぎた…?
かも……ごめん。

大丈夫…僕だけは…アンタの…味方。」


彼は私の不安を和らげようとしたのか
ぎこちなく、慣れない笑顔を作った。

その笑顔がなんだか可笑しくて
ふっと力が抜ける。


「…ありがとう。禊さん」


私はそう言って彼の手を握り返す。


うん…きっと大丈夫だよね。
きっと逃げきれる。


味方はいないわけじゃない。



そう考える私の横で、
禊さんがさっきまで持っていた壺が

私の考えに抗議するように
ガタガタと揺れていたことに

私は気がつかなかった。
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