怪盗ダーク ―5人の怪盗、世界を欺く―

七梨

文字の大きさ
67 / 69
3rd DARK

第67話 3rd DARK inside ②

しおりを挟む







 午後9時35分
【ダーク出没予告時間25分前】

「送るぞ」

「あぁ」

 まさかりさんはイエロージュエリーの警備会社に、DKの名で一通のメールを送信した。
 内容は、今から10分後の45分に、イエロージュエリーの隣のサファイアホテルへ青山を一人で行かせろというもの。

 これは後に警官を眠らす際、青山のみを隔離し起きていてもらうためだ。

「さて、そろそろ」

 じーさんとエリンギはベランダに出て、目立たないようにこっそりと、隣のイエロージュエリーの屋上の様子を見る。
 イエロージュエリーの屋上は壁で仕切られているが、その壁と今いるベランダの高低差はわずかに壁が低いくらい。屋上とベランダの幅は1メートル弱ある。

「こレ……、跳ぶノ?」

「行けるじゃろ」

 俺たちがいるのは3階。
 エリンギは下を見下ろして、震え上がった。

「エェー……」

「おいエリンギ、顔見せるなよ」

 俺は外から見えないように、部屋の中から言った。

「見張りは3人じゃ」

「ならじーさんとエリンギは同時に2人を仕留め、残りはじーさんがやれ」

「任せなさい。昔サバゲーをよくしとったんじゃ、射撃は得意なんじゃよ」

「じーさん……やっぱリ経験豊富だネ……。頼りになるヨ……」

「ほほほ。唯一の平成生まれじゃからの、このメンバーで」

「ヘイセイ……って何だっケ?」

「エリンギは知らんのか……、まあ日本人しか知らんわの。昔の元号じゃよ、2019年まで平成じゃった。わしは2013年生まれ」

「……とてつもなく昔だネ」

「とてつもなくは失礼じゃろ、60なんてまだ若いぞわし」

「おい、昔話は後にして集中しろ」

 俺がピシャリと叱ると、2人は麻酔銃を取り出した。
 ……麻酔銃と言ってもいつもの拳銃タイプではなく、遠距離でも狙えるスナイパータイプのものだ。

 2人はDKの仮面を被り、ローブを羽織り、銃口をベランダから屋上の警官に向ける。

「いいかじーさん、3人目に援軍を呼ばせないように素早く仕留めろ」

「了解した」

「そろそろ45分だぜ」

 まさかりさんの声に、ベランダに緊迫した空気が流れる。

【午後9時45分】

 2人はそれぞれ狙い撃つ警官を決め、照準を合わせる。

「エリンギ、どっちがカウントする?」

「じゃア……、じーさんガ」

「分かった」

 エリンギがごくりと唾を飲んだ。

 俺が手伝わないのは、万が一警官にこちらを見られた時に、DKは2人なのにベランダには3人いたとなると、あまりにも不自然だからだ。

 俺(ダーク)も遅れて同じ場所から侵入することになるのだが、ダークとDKは敵対関係にあるため、同じ空間にいたことがバレてはいけない。
 このDKの部屋は必ず割れる。だからわざわざ俺は別の部屋を取り、ここの部屋に入る時も人に見られないように細心の注意を払った。

「行くぞエリンギ……」

「……OK」

「3、2、1……」

 2人が同時に引き金を引くと、次の瞬間屋上の2人の警官が倒れた。

「どうした!?」

 残された1人が、こちらに気付いた。
 それと同時にじーさんは再び引き金を引き、最後の警官は倒れた。

「ふぅ~……」

「ヨッシャ!」

 エリンギとじーさんはハイタッチして、束の間安堵した。

「急げ。ここからは時間との闘いだ」

「了解!」

 2人はまず荷物の入った鞄を屋上の方へ放り投げる。

「まさかりさんは今のうちに扉のロックを」

「分かった」

 その間まさかりさんは、警備会社にハッキングし屋上の扉のロックの解除を始める。

「さぁ行くぞエリンギ」

「ウ、ウン……」

 身軽なじーさんは、軽々とベランダから屋上へと跳び移った。
 ……60を過ぎた人間の技とは思えない。
 コスプレイヤーにその技術を提供する為各地を飛び回っているからか、じーさんは年齢の平均以上の体力はあるらしい。

「さぁエリンギも、早く」

「よ、ヨ~シ……」

 そう口では意気込んでみるが、エリンギの脚はガタガタと震えていた。

「おい早くしろエリンギ」

「わ、分かってるっテ……」

 尻込みをするエリンギに、俺は少しイラついて言った。

「じーさんが出来たんだ。お前はじーさんの何倍も若いし、外人なんだから脚も長いだろ」

「外人言うナ!」

「タカっ、『何倍も』は蛇足じゃろ!」

「今だ行けっ」

 エリンギの背中を軽く押すと、エリンギは意図も容易く屋上へ跳び移った。

「ア……、行けタ」

「おい、ロック解除完了だ!」

「後は計画通りに。特にエリンギ、失敗したらひかるが死ぬと思え」

「ワ……、分かったからプレッシャーかけないデ」

 2人はまさかりさんがロックを解いた扉から、それぞれ荷物を持って侵入する。

「侵入したぞ!」

「今度は逆に、ロックを掛けるぜぇ!」

 無線からまさかりさんが激しくキーを叩く音が聞こえる。
 イエロージュエリーの全ての出入口がロックされ、人の力での出入りは不可能になった。

 一方その間じーさんとエリンギは二手に分かれ、それぞれショールームの右と左の、天窓用の通路──キャットウォークの入口に立った。

「まさかり、照明を」

「行くぜ! 3、2、1……!」

 照明が落ちると、2人は暗闇の中でショールームの中へと壁伝いに進んでいく。

 彼らのすぐ下では警官たちが混乱していた。
 警官は皆懐中電灯を持っている。DKの存在が知れるのはもはや時間の問題。

 2人はそれぞれ両脇に抱えていた鞄を開ける。
 強力なガス噴射器だ。ショールームの左右から、計4台の噴射器が催眠ガスを放出し始める。
 暗闇の中静かにガスは瞬く間に広がり、警官達の8割が倒れた。

「上だ! 上の通路にDKだ!」

「催眠ガスだ! ガスマスクをつけろ!」

 警官がDKの存在に気付き、光線銃を撃ち始める。
 しかし今回からダークとDKの衣装は、光線を打ち消す素材に特注し直した。よって当たったとしても大丈夫ではある。

 それでもやはり、幾つも飛んでくる光線は恐怖である。
 じーさんとエリンギは屈みながら、ガスマスクを付けた数人に麻酔銃を撃ち込んだ。

「ヒィィィ!! 早くみんな眠ってェェ!」

 しばらくすると警官側の光線は止み始め、静寂が訪れる。
 エリンギがおそるおそる下を見ると、警官たちは皆眠っていた。

「……眠ったか」

「目視出来る範囲なら、恐らくの」

「まさかりさん、換気を」

「分かってら」

 まさかりさんはショールームの全ての窓をコンピューター操作で開け、換気扇を回した。
 ついでに照明も回復する。

 その間、今度は俺 (ダーク)はホテルのベランダからイエロージュエリーの屋上へと跳び移る。

「まさかりさん」

「今度は高英の方だな」

 まさかりさんは先程DKのために解除した屋上の扉を、再び解除する。
 中に入った俺はDKが向かったショールームの方ではなく、鍵庫の方へ向かった。

 一つ階段を下り鍵庫の前に辿り着くと、まさかりさんが扉のロックを解除する。
 重い扉が開かれると、壁全面にショーケースの鍵が掛けられていた。

「……すごいな」

 見た者にしか分からぬ圧迫感。俺は思わず言葉を漏らす。

 ここで前日のけいの仕事が役立つ。
 けいが撮った写真を繋げ、大方鍵庫全面の見取り図を作り上げたまさかりさんは、地道な作業でお目当ての鍵を見つけ出した。
 よって今ここで切迫しながら鍵を探す手間が省けるという訳だ。

「“R6223”……」

 あった。まさかりさんが見つけた場所に。
 俺はその鍵を持ち、ショールームへの扉に向かった。

「……そろそろ時間じゃ」

「扉、開くぞ」

 午後9時57分
【ダーク出没予告時間3分前】

 イエロージュエリーの全ての扉が再び開かれる。

「いいかエリンギ、じーさん。青山の受け答えは全てじーさんがやれ。エリンギは喋るな、ボロが出る」

「酷い言い様じゃな」

「否定は出来ないけド……」

 エリンギとじーさんは、微かな足音を聞き取った。

「来るぞ」

 エリンギもじーさんも、ショールームの正面入口に銃口を向けた。

 そして慎重に銃を構えながら、青山が姿を現した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

処理中です...