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3rd DARK
第67話 3rd DARK inside ②
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午後9時35分
【ダーク出没予告時間25分前】
「送るぞ」
「あぁ」
まさかりさんはイエロージュエリーの警備会社に、DKの名で一通のメールを送信した。
内容は、今から10分後の45分に、イエロージュエリーの隣のサファイアホテルへ青山を一人で行かせろというもの。
これは後に警官を眠らす際、青山のみを隔離し起きていてもらうためだ。
「さて、そろそろ」
じーさんとエリンギはベランダに出て、目立たないようにこっそりと、隣のイエロージュエリーの屋上の様子を見る。
イエロージュエリーの屋上は壁で仕切られているが、その壁と今いるベランダの高低差はわずかに壁が低いくらい。屋上とベランダの幅は1メートル弱ある。
「こレ……、跳ぶノ?」
「行けるじゃろ」
俺たちがいるのは3階。
エリンギは下を見下ろして、震え上がった。
「エェー……」
「おいエリンギ、顔見せるなよ」
俺は外から見えないように、部屋の中から言った。
「見張りは3人じゃ」
「ならじーさんとエリンギは同時に2人を仕留め、残りはじーさんがやれ」
「任せなさい。昔サバゲーをよくしとったんじゃ、射撃は得意なんじゃよ」
「じーさん……やっぱリ経験豊富だネ……。頼りになるヨ……」
「ほほほ。唯一の平成生まれじゃからの、このメンバーで」
「ヘイセイ……って何だっケ?」
「エリンギは知らんのか……、まあ日本人しか知らんわの。昔の元号じゃよ、2019年まで平成じゃった。わしは2013年生まれ」
「……とてつもなく昔だネ」
「とてつもなくは失礼じゃろ、60なんてまだ若いぞわし」
「おい、昔話は後にして集中しろ」
俺がピシャリと叱ると、2人は麻酔銃を取り出した。
……麻酔銃と言ってもいつもの拳銃タイプではなく、遠距離でも狙えるスナイパータイプのものだ。
2人はDKの仮面を被り、ローブを羽織り、銃口をベランダから屋上の警官に向ける。
「いいかじーさん、3人目に援軍を呼ばせないように素早く仕留めろ」
「了解した」
「そろそろ45分だぜ」
まさかりさんの声に、ベランダに緊迫した空気が流れる。
【午後9時45分】
2人はそれぞれ狙い撃つ警官を決め、照準を合わせる。
「エリンギ、どっちがカウントする?」
「じゃア……、じーさんガ」
「分かった」
エリンギがごくりと唾を飲んだ。
俺が手伝わないのは、万が一警官にこちらを見られた時に、DKは2人なのにベランダには3人いたとなると、あまりにも不自然だからだ。
俺(ダーク)も遅れて同じ場所から侵入することになるのだが、ダークとDKは敵対関係にあるため、同じ空間にいたことがバレてはいけない。
このDKの部屋は必ず割れる。だからわざわざ俺は別の部屋を取り、ここの部屋に入る時も人に見られないように細心の注意を払った。
「行くぞエリンギ……」
「……OK」
「3、2、1……」
2人が同時に引き金を引くと、次の瞬間屋上の2人の警官が倒れた。
「どうした!?」
残された1人が、こちらに気付いた。
それと同時にじーさんは再び引き金を引き、最後の警官は倒れた。
「ふぅ~……」
「ヨッシャ!」
エリンギとじーさんはハイタッチして、束の間安堵した。
「急げ。ここからは時間との闘いだ」
「了解!」
2人はまず荷物の入った鞄を屋上の方へ放り投げる。
「まさかりさんは今のうちに扉のロックを」
「分かった」
その間まさかりさんは、警備会社にハッキングし屋上の扉のロックの解除を始める。
「さぁ行くぞエリンギ」
「ウ、ウン……」
身軽なじーさんは、軽々とベランダから屋上へと跳び移った。
……60を過ぎた人間の技とは思えない。
コスプレイヤーにその技術を提供する為各地を飛び回っているからか、じーさんは年齢の平均以上の体力はあるらしい。
「さぁエリンギも、早く」
「よ、ヨ~シ……」
そう口では意気込んでみるが、エリンギの脚はガタガタと震えていた。
「おい早くしろエリンギ」
「わ、分かってるっテ……」
尻込みをするエリンギに、俺は少しイラついて言った。
「じーさんが出来たんだ。お前はじーさんの何倍も若いし、外人なんだから脚も長いだろ」
「外人言うナ!」
「タカっ、『何倍も』は蛇足じゃろ!」
「今だ行けっ」
エリンギの背中を軽く押すと、エリンギは意図も容易く屋上へ跳び移った。
「ア……、行けタ」
「おい、ロック解除完了だ!」
「後は計画通りに。特にエリンギ、失敗したらひかるが死ぬと思え」
「ワ……、分かったからプレッシャーかけないデ」
2人はまさかりさんがロックを解いた扉から、それぞれ荷物を持って侵入する。
「侵入したぞ!」
「今度は逆に、ロックを掛けるぜぇ!」
無線からまさかりさんが激しくキーを叩く音が聞こえる。
イエロージュエリーの全ての出入口がロックされ、人の力での出入りは不可能になった。
一方その間じーさんとエリンギは二手に分かれ、それぞれショールームの右と左の、天窓用の通路──キャットウォークの入口に立った。
「まさかり、照明を」
「行くぜ! 3、2、1……!」
照明が落ちると、2人は暗闇の中でショールームの中へと壁伝いに進んでいく。
彼らのすぐ下では警官たちが混乱していた。
警官は皆懐中電灯を持っている。DKの存在が知れるのはもはや時間の問題。
2人はそれぞれ両脇に抱えていた鞄を開ける。
強力なガス噴射器だ。ショールームの左右から、計4台の噴射器が催眠ガスを放出し始める。
暗闇の中静かにガスは瞬く間に広がり、警官達の8割が倒れた。
「上だ! 上の通路にDKだ!」
「催眠ガスだ! ガスマスクをつけろ!」
警官がDKの存在に気付き、光線銃を撃ち始める。
しかし今回からダークとDKの衣装は、光線を打ち消す素材に特注し直した。よって当たったとしても大丈夫ではある。
それでもやはり、幾つも飛んでくる光線は恐怖である。
じーさんとエリンギは屈みながら、ガスマスクを付けた数人に麻酔銃を撃ち込んだ。
「ヒィィィ!! 早くみんな眠ってェェ!」
しばらくすると警官側の光線は止み始め、静寂が訪れる。
エリンギがおそるおそる下を見ると、警官たちは皆眠っていた。
「……眠ったか」
「目視出来る範囲なら、恐らくの」
「まさかりさん、換気を」
「分かってら」
まさかりさんはショールームの全ての窓をコンピューター操作で開け、換気扇を回した。
ついでに照明も回復する。
その間、今度は俺 (ダーク)はホテルのベランダからイエロージュエリーの屋上へと跳び移る。
「まさかりさん」
「今度は高英の方だな」
まさかりさんは先程DKのために解除した屋上の扉を、再び解除する。
中に入った俺はDKが向かったショールームの方ではなく、鍵庫の方へ向かった。
一つ階段を下り鍵庫の前に辿り着くと、まさかりさんが扉のロックを解除する。
重い扉が開かれると、壁全面にショーケースの鍵が掛けられていた。
「……すごいな」
見た者にしか分からぬ圧迫感。俺は思わず言葉を漏らす。
ここで前日のけいの仕事が役立つ。
けいが撮った写真を繋げ、大方鍵庫全面の見取り図を作り上げたまさかりさんは、地道な作業でお目当ての鍵を見つけ出した。
よって今ここで切迫しながら鍵を探す手間が省けるという訳だ。
「“R6223”……」
あった。まさかりさんが見つけた場所に。
俺はその鍵を持ち、ショールームへの扉に向かった。
「……そろそろ時間じゃ」
「扉、開くぞ」
午後9時57分
【ダーク出没予告時間3分前】
イエロージュエリーの全ての扉が再び開かれる。
「いいかエリンギ、じーさん。青山の受け答えは全てじーさんがやれ。エリンギは喋るな、ボロが出る」
「酷い言い様じゃな」
「否定は出来ないけド……」
エリンギとじーさんは、微かな足音を聞き取った。
「来るぞ」
エリンギもじーさんも、ショールームの正面入口に銃口を向けた。
そして慎重に銃を構えながら、青山が姿を現した。
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