怪盗ダーク ―5人の怪盗、世界を欺く―

七梨

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第17話 有り得ないミス

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 俺はひかるとまさかりさんとじーさんをちゃぶ台の前に正座させて、俺はちゃぶ台の上に足を組んで座った。
 3人ともまだ目が据わっている。

「ホント、信じられない程低能だなお前ら。呆れてものも言えない」

「……ごめんなさい」

 全員、顔色が悪い。
 俗に言う、二日酔い。

「特にひかるは何故酒を飲んだ」

「えーっと……」

「じーさん、普段のアンタなら冷静に止めてただろ」

「すまん……、あまりに嬉しすぎて、羽目を外してしまった……」

「オレが勧めたってか、無理矢理……」

「だろうと思った。特に未成年のひかるに飲ませたのは法律に反する」

「ひぇー、お許しを……」

 まだ頭が働いてないのか、まさかりさんは目を半開きのまま、俺に頭を下げた。
 滑稽だな。
 今更『法律に反する』とか言える立場じゃないが。

「ひかる、部活は」

「へ?」

「今日は土曜日だが、行くって言ってなかったか? もう昼過ぎどころか夕方だ」

「あぁー! 忘れてた、行かなきゃ」

「馬鹿、行くな」

 よろよろと立ち上がろうとするひかるの頭を押さえ付ける。

「そんな酒臭いまま行けるか。第一風呂にも入ってないだろ。臭いんだよ」

「う……っ」

 この言葉は女子高生であるこいつに効いた様だ。
 俯いて縮こまってしまう。

「事件の前後に普段と違う行動をするな。それこそ毎日休まず出てた部活を休むとか。その行動で警察に目をつけられる可能性もあるんだぞ」

「はい……気をつけます……」

 横で唯一俺の私刑を免れたエリンギが、ソワソワしていた。

「やっパタカ、相当キレてル」

「当たり前だろ。本気で殺意が芽生えたからな。このティアラ……5,000万で一体どれ程の事が出来る? それを畳に投げ捨てるなんて……」

「エーット、ヘリが一台買えるかナ」

「……エリンギお前には聞いてない。まさかりさん、ティアラの換金の準備を」

「悪かったって、なぁ? 先に打ち上げして。つーか頭いてぇ……」

「今すぐ」

「……ヘイ」


 ◆


 その翌日の夜。

 初日の打ち上げは俺とエリンギが不在だった為、再び仕切り直しとなった。
 と言っても、俺は参加せずにまた2段ベッドの上段から、下のちゃぶ台の4人の会話を聞くだけだったが。

「タカ……本当に参加しない?」

 乾杯する前に、ひかるが少し寂しそうに聞いてきた。

「しない。勝手にしてろ」

「せっかく5人で成功させたのに……」

「馴れ合うつもりはない。大体、俺は昨日のことまだ怒ってるからな」

「散々謝ったじゃん……」

「いいじゃねーか。参加したくねー奴はほっとこうぜ」

 まさかりさんがそう言うと、ひかるは諦めてちゃぶ台の輪の中に戻った。

「んじゃ、ダークの成功を祝いまして!」

「かんぱーい」

 4つのコップがぶつかり合う。……流石にまさかりさん以外の3人は酒は避けている。
 飲み物を口にして開口一番、まさかりさんがハイテンションで言った。

「よしっ! 一番最初にっ。ティアラいくらになったか知りたい人ー!」

「えっ、もう換金出来たんだ!?」

 ……は? 俺も聞いてないんだが?

「はいっはーイ」

「はいマイケルくん!」

「やる前にタカが5,000万って言ってたかラ、5,000万!」

「ブブーッ!」

「えっ、違うノ?」

「何と、“ダークの盗品”という箔がついて、5,200万になりました!」

「おおーっ!!」

「おいっ、聞いてないぞ!?」

 俺は思わず、ベッドの上から口を挟んだ。

「おう。今初めて言ったからな?」

「普通、そういうことは誰よりも先に俺に言わないか?」

「はぁ? 何でだよ」

「ダークは俺が仕切ってるんだ。そういう大事なことはまずはリーダーに通すのが筋だろ」

「高英がリーダー!? 誰がそんな事決めたんだよ!」

「俺がダークの発案者で、司令塔だからに決まってるだろ」

「んな事関係ねーよ!」

 俺とまさかりさんの言い合いに、他の3人は「またか」という顔を露骨にする。

 俺は堪らずベッドから降りた。

「経費はざっと200万だな、エリンギ」

「ウン。タカの読み通リ」

「じゃあ配分もやる前話した、経費200万はエリンギが立て替えてるから返す。あとは寄付に4,000万、残り1,000万を山分けだ」

「待てよ! 大体何でそういう大事なことお前1人で決めるんだよ! みんなで相談して決めよーぜ、なあ!?」

「おれはタカに賛成ですけど」

「わしも」

「ボクも。まあ、寄付額をもっと増やしてもいいと思うけド」

「なっ……、マジかよ!」

 墓穴を掘ってしまったまさかりさんを、俺は鼻で笑った。

「第一、はっきり言うぞ! 昨日一番何にもしてねーの、オレはお前だと思うぜ!」

「……は?」

「ちょ、まさかりさん! 何言い出すの!?」

「だってコイツがやったの、縄はしごに掴まってハッハッハーって逃げてくだけじゃねーか!」

「まさかり、止めんか。何故そこまでタカに突っかかるんじゃ」

 俺はまさかりさんをキツく睨んだが、怯まない。

「『俺が仕切ってるんだ』なんて言って、本当は自分が一番楽な様に作戦考えたんだろ!?」

「何だと?」

「そ、そんなことないっテ! ボクには縄ハシゴに掴まって上空に何分モ、安定しない場所にいるなんテ出来ないシ……!」

「人のことばかり言うが、じゃああんたはどうなんだ」

「あ゛ぁ!?」

 俺も声を荒げずにはいられなかった。

「あんたはずっと、一番リスクの少ない車の中にいたんじゃないのか? 現場にいた俺よりずっと捕まるリスクは低かったな? 内心『自分は安全でよかった』なんて思ったんじゃないか?」

「思ってねーよ!」

「それに俺やエリンギの帰りも待たずあんたは何してた? ちっとも反省の色が見られないけどな!」

「もう、2人とも――」

「やめてよ!!」

 俺やまさかりさんのみならず、全員の動きが止まった。
 ……今、誰が叫んだ?

「けんかはやめて!」

 甲高い声だった。

「ひかる……、喋っタ……?」

「お……おれじゃない……」

 聞こえたのは、明らかに俺たち5人ではない声だった。
 全員が顔を青白くして、声の主の方向を見る。
 それは俺の二段ベッドの、対角線のベッドの上段。

「そ、そんなとこでなにやってんだ、けい……」

「え、何って? みんなを驚かせようと思ってねー」

 さくら号の大家の子、小学四年生の遠藤ケイト――けいが、ひょっこりと顔を覗かせていた。

 この大家の餓鬼がさくら号に来ることはよくあった。
 人懐っこくて他の4人はさておき俺ですら好かれて付き纏ってくる。……邪険にしているが。

 しかし、こんな隠れて奇襲のような真似をされるのは初めてだ。
 皆がいない間に合鍵を使って入ったに違いない。

 俺は目眩がして、思わず眉間を押さえた。
 さっきの会話、全部聞かれた。
 信じられない……、こんなの有り得ないミスだろ……。

「あれ……、もう仲直りした?」

「……」

 もうまさかりさんも喧嘩どころじゃなくなった。

「けい……、いつからそこに?」

「んーと。みんなの留守を狙ってずっと隠れてたんだー! すごいでしょー?」

「あ……、そっか。けいはパワフルの合鍵使えるもんね……」

「話、全部聞かれてんジャン!」

「ど、どうするんだよ」

「ねぇねぇ、それよりさぁ」

 けいはベッドから下りてくると同時に、最高級の笑顔で俺たちが一番恐れていたことを口にする。

「タカたちがダークなの?」

 
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