怪盗ダーク ―5人の怪盗、世界を欺く―

七梨

文字の大きさ
27 / 69
Trap

第27話 強烈な違和感

しおりを挟む



◆◇◆
 

 2073年7月15日

 青山の刑事の勘が、そろそろだと告げていた。
 怪盗ダークが出没するだろうと。

 今朝前回と同様に、鷲尾邸にダークからの予告状が届いたと警察に連絡を受けた。

 その以前から悪戯で何件かニセの予告状が警察に届いたことがあったが、今回こそは本物と言い切れる。
 文面が、前回とほとんど違わないことから。

「これがそのコピーだよ」

 上司の松浦に、コピーを手渡しで受け取る。

 今回から捜査の指揮官は上官である松浦に移った。
 ……仕方ない、捜査本部もでき大所帯になった。
 警部補の青山では役不足という判断だろう。

 予告状は前回と同様のフォントに字面。
 文字の回りは、お洒落に金色や銀色で縁取られている。



 ***********************************************



 海の日の午の正刻

 客船レインボー号の船上にて

 桜色の宝を頂きに参る




 怪盗DARK


 ***********************************************




 文面を読んで、何故だか心踊る。
 またもう一度、奴と対峙出来る……!

「で、そのウシの刻とは何時かな?」 

「ぶ……っ」

 松浦が真顔で間違えるので、青山は思わず吹き出してしまった。

 牛(ウシ)→×
 午(ウマ)→○

「う、午(ウマ)の正刻はそのまま、正午です。明るいので前回の様に照明を落としたりは出来ませんから、こちらに少し有利になるかと」

「……おぉ。そうかそうか」

 自分の失態に気付いてないのか、それとも気付かないフリをしているのか、何事もなかった様に頷く松浦。

「で、『桜色の宝』とは? それよりも、鷲尾さんは確実にこの船に乗るんですか?」

「総理に確認した所、確かにその日乗船するつもりらしい。『桜色の宝』とは、総理が旅先で知人にプレゼントする、ピンクダイヤモンドを指すだろうとの事だ」

 今回はダークが盗むものがハッキリしていて、前回よりはやりやすくなりそうだ。

「当然、鷲尾さんには交通手段を変えてもらいますよね?」

「いや、拒否された」

「は?」

「前回のこともあり、一刻も早くダークを捕まえたいと。自分が乗船しなければダークは現れないだろう、是非警察には彼を捕まえて欲しい。とのことだ」

 あぁまぁ、ごもっともな意見だ。
 寧ろここで逃げてしまえば、世間からバッシングを受けるだろう。

 青山が予告状としばらくにらめっこしていると、素朴な疑問が浮かんだ。

「ところでダークは、どうやってこの鷲尾さんの渡航の情報を得たんです?」

「そう。それが問題なんだ」

「……分かってないんですか」

 松浦は渋い顔で頷いた。

「情報は今の今まで、一般には一切。総理にも確認したが、当然非公開だと」

「不思議ですね……」

 前回のダークから、奴には有能なハッカーが付いている可能性が高い。
 そいつの手にかかれば、情報を盗み出すことなど可能か……?

 しかし何だか今一つ、しっくりこない。


◆◇◆


 2073年7月16日
 ダーク作戦決行前日、夕方

 さくら号

 鷲尾邸に予告状が届いてから、ひっきりなしにダークのことを報道している。

 さくら号の奴等(けいを含む)は大抵の準備を終え、呑気に話を盛り上げている傍ら、俺は一人テレビに釘付けになっていた。

 ……おかしい。何かがおかしい。

『……また、総理のスケジュールの情報の発信源が分かっておらず、警察は全力でこれを究明していますが――』

 そう。この文言。

 情報ソースはネット素人の俺でも見れる、鷲尾のブログだ。
 それが見つけられない程、警察は無能だとは思っていない。そもそも鷲尾本人に聞けばすぐに分かる事なのに。

 俺は自分の携帯で鷲尾のブログを今一度確認したが、普通に見る事ができる。
 しっくりこない。何だこの強烈な違和感は?

『タカ……、それはダークを捕まえる罠という事にはならんか?』

 先日のじーさんの言葉を思い出す。

 “罠”。

 鷲尾があのブログを発信したのは『船上という逃げ場の無い鳥籠にダークを誘き寄せ、捕まえる』。
 最初に思った通りそれが目的で、それが“罠”と言う事だろう。

 しかしそれなら余計に、ブログの記事の存在を世間にも大っぴらにしていいと思うのだが。

 警察が情報統制しているのか……?
 いや、だとしてもそうする理由が分からないし、そもそもブログを見れる状態のままにしない。

 まさか、他に意図が……?
 ……考えすぎだとは思うが。

 とは言えやはり、この報道の仕方には違和感が拭えない。

 念の為……。

「まさかりさん。今一度、あの鷲尾のブログの記事を調べろ」

「は? 調べる? 何を?」

「何でもいい。とにかく何か怪しい点を見つけろ」

「何でも良いって、めちゃくちゃ言うなよ。怪しいってあの記事自体が怪しいじゃねーか」

「確かにそうだ。だが今の『情報源がない』という報道の仕方は何かがおかしい」

「じゃあ何が怪しくて、オレは何を調べればいいのかを明確にしろよ。そんなフワッとした指示じゃ司令塔として失格じゃねーの?」

「……」

「それにダークは明日だぜ? そっちより明日のことに集中させろよ、もう夕方だぜ? 今何か分かったところで、明日の計画は変更出来ないだろ」

 確かに、まさかりさんが言うことは正論か……。
 焦ったところでもう、意味のないこと。

「……まさかりさん、珍しくタカを黙らせたね」

「口喧嘩じゃ、いつもまさかりが墓穴を掘って勝てないからの。ほほ」

「まぁオレが本気を出せばこんなもんよ。なはは」

 馬鹿馬鹿しい。
 俺は蔑む様な目つきで、まさかりさんを見下してやった。

「ねぇねぇ。みんなこの前は円陣を組んでダークしたんだよね?」

「あぁ、うん。そうだったよ?」

「やりたいやりたいー!」

「いいぜー! やろーぜ」

 あぁ、けいめ、くそ。
 俺が場を去ろうとしたその時、横にいたエリンギががっちりと俺の腕を掴んだ。

「俺はやらない。部活じゃないんだぞバカバカしい」

「と、言いつつ前回もやったじゃン?」

「あれは無理矢理……」

「タカよ、ダークを成功させるにはチームワークが必要じゃろ? 君はリーダーを名乗るなら、味方の顔を見て、コンディションを把握しておくのも司令塔の重大な役割だと、わしは思うが?」

「それは円陣じゃなくてもいいだろ」

「いや。円陣を組むのが皆の顔がよく見えて、一番手っ取り早いじゃろ。何より士気が上がるのが良い」

「……」

 ……じーさんはたまに、的を得た反論に困る事を言ってくる……。
 俺の倍以上生きてる事は、あるな……。

 6人は円になって、俺は無理矢理肩を組まされる。
 もう抵抗するのも面倒で、俺はわざと皆に聞こえる様に溜め息をついた。

「掛け声、今日はエリンギがしろよ」

「いいヨ」

 エリンギは少し考えてから、声を張り上げて言った。

「行くゾー!!」

「おーッ!!」

「また普通だ」

「ちょっとはひねって欲しかったのぅ……」

 俺はまだ、この空気には馴染めない。


◆◇◆


 同日、鷲尾邸

 鷲尾は一人、PCの画面を見つめていた。

 先日の来訪者からメールだ。
 それを開くと、写真が添付されていた。

「案外、簡単にトラップに掛かってくれたものだ。ダークは、5人の怪盗か……。面白い」

 鷲尾がほくそ笑む先。
 モニターに映っていたのは。

 さくら号の5人の写真だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

処理中です...