怪盗ダーク ―5人の怪盗、世界を欺く―

七梨

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2nd DARK

第29話 2nd DARK outside ②

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 2人のDKの視線は青山に定まる。
 DKαが持つ銃は、未だ鷲尾に向けたまま。

「本物の“桜色の宝”は、俺が持っている」

「何?」

「俺は警察の者だ。ダークから宝石を守るため預かっている」

「……成程。ならばそれを渡してもらおうか」

「渡したら直ぐに人質を解放すると約束しろ」

「それが本物ならな」

 青山は小さなネックレスケースを投げ渡した。
 受け取ったDKαはケースを開き、そしてすぐさま2つの宝石に鑑定器の先端を当てる。

 どちらの方も、先端が赤く発光した。
 DKαは失笑した。

「どちらもレプリカだな」

「!?」

 青山は鷲尾を見た。
 鷲尾の目が泳いでいる。

「抜かったな鷲尾。今お前はこの少年の命と宝石を天秤にかけて、リスクがあるにも関らず偽物を渡したな。子どもの命より金を取ったんだ」

「……」

「呆れるだろうな、国民は。たった一人の子どもの命すら守れない総理大臣なぞーー」

「分かった。これが本物だ……。投げないぞ」

 鷲尾は懐から出したネックレスケースを床に置いて、少し下がった。

 受け取ったDKαはそれにも鑑定器を当てる。
 今度は青く発光した。

 DKαはニヤリと笑って、銃口を下げた。

「引くぞ」

「うわぁぁん!」

 するとDKβは人質を解放するどころか、そのまま後退して会場の出口に向かったのだ。
 DKαも銃を構えたままそれに続く。

「おい待て、約束が違うだろっ! 人質を解放しろ!」

「それは我々の安全が確立されてからだ。お前も下がれ、さもなければ撃つ」

 DKαは銃を俺に向けた。
 しかし青山は動じなかった。

「そんなオモチャの銃じゃ脅しにもなんねぇよ!」

 2人のDKの動きが止まった。

「……玩具?」

「オモチャだよ! あれだけ漏れなく金属検査をしたんだ! それが本物の訳がない!」

 さぁ動揺しろDK!

 DKの周りは既に本物の拳銃を持った、私服警官たちに囲まれている。
 スキを見て取り押さえる!

 しかしDKαは動揺するどころか、嘲笑した。

「あんたは、この俺を馬鹿にしているのか?」

「……は?」

 ──何を言ってるんだあいつは。それは俺のセリフだ。

「試し撃ちしてやろうか?」

「な……」

「あんたがいい? それとも鷲尾か? あの餓鬼か? 賭けの対象だよ。これが本物ならその人間は死ぬ」

「……!」

 こいつ、正気か……!?
 それとも何だ、こっちが動揺するのを狙ったハッタリか?

 するとDKαはふっと笑って、

「嘘だよ。俺が殺したいのはダークだけだ」

 銃口を天井に向けて、発砲した。

「きゃーッ!」

 客の悲鳴が響き渡る。
 銃口から光線が飛び出し、天井のシャンデリアを割った。

 予想外の事に、青山は唖然とした。

 偽物じゃ、ない。
 何故だ!?

「行け」

 今度こそ人質を連れたままDKβは会場を去り、DKαはそれに続く。

「くそ……っ」

「追うぞ!」

 青山や松浦・私服警官も銃を構え、少し距離を開けて3人の後を追った。

 会場を出たDKは、廊下を出て階段を使い2階へ上がり始める。

「うぇぇ……、助けてよぉ……」

 DKβは人質を連れて前へ進んでいるため、俺たち警察に背を向けている。
 しかしその背中を守るのがDKαだ。
 警察とDKαの睨み合いが続く。
 
 息ピッタリの2人。
 かなり緻密に計画した犯行であろう。

 DKβはある客室の前で足を止めた。
 空いた手で扉のカードキーを差し込み、人質を無理矢理部屋に押し込む。

「嫌だぁぁ! 助けて、助けて!」

 泣き叫ぶ声が、余計に青山たちを焦らせる。

 そしてDKαも素早く部屋に入り、銃口を最後までこっちに向けたまま扉を閉めた。
 扉は閉まると自動でロックが掛かってしまう。

「くそ、やられた……!」

 部屋番号は203号室。
 防音扉だ。中からは音は聞こえない。

「おい、合鍵持って来い! 至急!」
「はいっ」

 松浦が叫ぶと、部下の一人が走って行った。
 しかし青山はハッとする。

「松浦警部、この船の構造……。客室には一部屋に一つずつ、ベランダに非常はしごがついていたハズです」

「それがどうした」

「下の部屋、窓の鍵さえ開けておけば、直結で中に逃げられます!」

 その言葉と同時に、青山は一階に向かって走った。
 松浦も気づき、無線に叫んだ。

「合鍵! 103号室もだ!」

 青山は多少息を切らして、103号室の扉の前に辿り着いた。

「はぁ……、……?」

 周りを見渡しても、静かだ。人影が見当たらない。
 逃げられたか……、それともまだ中に?

「青山さんっ、カードキーです」

「よし。松浦警部、こっちはいつでも」

 青山は2階にいる松浦と無線で会話する。

「カードキーを差し込むぞ」

「了解」

 カードキーを差し込むと、音もなく小さな赤いランプが緑に変わる。ロックが解除された証だ。

「カウント後に突入する」

「はい」

 右手で銃を構え、左手でドアノブを握る。

「……3、2、1、突入!」

 青山は扉を開けると同時に銃を構えた。

 パッと見、DKはいなかったが。
 右、左、上、下、後ろも。全てに銃口を向けた。
 異常なし、しかし……。

 人質が部屋の隅で震えているのはいい。
 それよりも先に目に入ったのは、ロープで縛られて床に転がっている男が2人。

「青山、2階は誰もいない。人質も……」

 ベランダの上から非常はしごが降りていた。
 読みは当たっていたが、もう少し早く気付いていれば……。

「人質は無事です。あと……何故かオマケで転がってるのが2人」

「ん? 誰だ?」

「うわぁん……!」

 人質だった男の子が泣き出す。

「おい泣くな。もう大丈夫だ。怖かったな」

「うん……」

 青山は頭をぽんぽんと叩いてやると、男の子は泣きやんで落ち着いた。
 そして床に縛られて転がっている男2人を見た。

「で? お前らは何をやってんだよ。萩本、中林」

「すみません……、DKにやられました」

 申し訳なさそうに言う萩本。
 一階に降りて来た部下と、数人がかりで縄を解く。

「今日お前らを一回も見てないと思ったら……、DKにやられたのか」

「そうです。すみません」

 何度も詫びる萩本。別に責めてないのに。

「中林はホントツイてないな。まさか前回と連チャンで狙われるなんてな。お前カモにされてんじゃねーか?」

「はは、そうかもしれないですね。すみません」

 ……ん?

 松浦がやって来た。

「青山、DKの捜索だ。オレは本部室へ戻る。中林と萩本は動けるか?」

「はい」

「松浦警部、DKはローブと仮面さえ取れば客に紛れてしまいます。監視カメラで奴らの行方を探すしか手はないかと」

「成程。そうだな」

 松浦は人質だった男の子と他の部下たちを引き連れて、部屋を出て行った。

 青山は、萩本と中林に言った。

「……まぁ、お前ら2人はちょっと残れ。DKに襲われた時の話を聞かせてくれ」

「突然催眠スプレーで眠らされて、気付いたらこの状況です。青山さん……、今どういう状況ですか? 拳銃を取られてしまいまして。すみません」

 渋い顔で、口を開いたのは萩本。
 そうか……、DKが持っていた本物の銃はこいつらのだったのか。

 青山は先程バイキング会場で起きたことを、簡潔に説明した。

「そうですか……、あの男の子が人質に……」

 ますます渋い顔で俯く萩本。
 まぁ、負い目を感じるのは分かるが。

「いい。もう終わったことだ。それよりDKは、やはりこの部屋を通って逃げたのか」

「そうです。さっきの男の子を連れて、あのはしごを降りて来ました」

「そうか」

 ちらりと中林の方を見た。
 どうした? 今日はヤケに静かな気が……。

「中林」

「え、はい」

「調子が悪かったら休めよ。勤務中とはいえ、被害者になってしまったんだから」

「……いえ。大丈夫です」

 ……おかしい。変だ。
 何だかしっくりこないのは……。

「萩本」

「はい」

「お前はもう行っていいぞ。やばかったら休め」

「……はい」

 その時。

 一瞬、萩本の視線に寒気がした。
 睨まれた……気がする。

 それだけじゃない。
 何かゾッとする様な……、黒い影を感じた。

 萩本も中林も、変だ。

 萩本は静かに戸を開き、部屋を後にする。
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