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脱出編

26 私とこれからのこと

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 アーくんがサラサラと描いてくれたものを見て私は驚いてしまった。
 
 私が召喚された国、ベルディアーノ王国は大陸の東側に広がっているが、その西側には魔の森が大陸を縦断するように広がっていたのだ。
 そして、魔の森を挟んだ西側の南側にアーくん達の国である、フェールズ王国があって、北側にシェランドー王国があった。
 手描きの地図を見て思いの外魔の森が広大なことを知った私は驚きで声が出なかった。

 アーくんは、地図を指しながら、ベルディアーノ王国に行くには、航路を使うと教えてくれた。
 ただし、シェランドー王国側の北側の海域は悪天候に加えて、浅瀬が続くため大きな船が進むことは難しいんだって。でも、小舟では荒波に耐えられないため、実質シェランドー王国側からはベルディアーノ王国に向かうことは不可能なんだって。
 フェールズ王国側の南側の海域は穏やかで船を出すことは可能だけど、そうまでして交易をする旨味は無いから、交流はないに等しいって教えてくれた。
 
 その他にも、文字の読み書きも教えてくれた。それと、フェールズ王国のこともだ。
 
 フェールズ王国は、16歳で成人となるらしくて、アーくんはもう成人しているため、家を出て騎士団に入ったと教えてくれた。
 16歳で成人ということは、私も成人として扱われると気がついたので、アーくん達の国に行った時の生活についてどうしようかと相談することにした。
 
「そっか、そうなると、私も立派な成人として扱われるんだね。一人で生活するには、生活費を稼がないと……。その前に、戸籍?住民登録は、どうしたらいいんだろう?私でも簡単にできるかな?」

「成人にはとても見えないが……、まぁ、それは置いておいてだ。生活費は心配するな。僕と兄様の借りている騎士団の寮に一緒に住めば問題ない。それに、住民登録はいくつか方法がある。正規の住民登録は色々と、時間が掛かるが登録しておくと、何かあった時に国から手当が出る。その他には、冒険者組合か、商業組合に登録する方法だな。この2つは短時間でできるが、なんの保証もないし、費用がかかる。僕のオススメは、とりあえずどちらかの組合に登録した上で、住民登録をすることだな。費用は僕が持つから、この方法で登録するといい」

 まさかの、提案に私は慌てて待ったをかけていた。
 
「待って!!これ以上二人のお世話になることは……」

「おい、今世話になっているのは完全に僕と兄様だ。恩を返させると思って受け入れなさい。ということで、オススメする理由だが、費用はそこまで高額ではないので、どちらかの組合に入ってから登録したほうが、住民登録が早く終わるという理由だ。組合は、冒険者組合は初期費用として、千ジギル掛かるが、その後は規定の依頼数をこなせばそれ以上費用はかからない。商業組合は、初期費用は百ジギルと安いが、年会費が掛かる。会費は、組合ランクによって変わるらしいから、何らかの商売をする気がないなら、とりあえず冒険者組合に入ることをオススメします」

 私の言葉は、さっくりと拒否された上でマイペースに説明を続けられてしまった。話の中で、商売をする気があるならという言葉で、私は思いたった。
 そうだ、なにか商売をしてお金を稼いで自立しよう。お金が貯まったら独り立ちしよう。それまでは、お言葉に甘えてお二人のお世話になろう。
 
「うん。分かった。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうよ。費用は、働いて返すね」

「別に、返さなくてもいいです」

「駄目、そこはちゃんとしないといけません」

 私がそう言うと、アーくんは渋々と言った感じで頷いてくれた。
 そんなアーくんの気持ちを変えるべくではないけど、お金を稼ぐための手段としてお店を開きたいと相談してみることにした。
 
「ねぇ、アーくん。フェールズ王国に行ったらお店を開いてみたいな。私にできるかな?」

 私の言葉を受けて、アーくんは何かを考えた後に可能だと答えてくれた。
 
「大丈夫だと思いますよ。そうなると、商業組合に登録して、店舗を借りる手続きをしないといけないですね。組合に入れば、安く店舗を借りることも出来ますし、可能だと思いますよ。でも、なんの店を出す気ですか?僕たちの住んでいた王都は、商売が盛んな街でもありますから、下手な商売では赤字になってしまいますよ?」

 なるほど、そうなると需要があるものがいいよね?う~ん、需要、需要~。
 うん、その国のこともよく分からないうちに需要がある物なんて見当付かないね。王都に暮らして、よく考えた上でお店を出そう。そうしよう。
 
「わかった。なんのお店にするかは、王都で暮らして、需要がありそうなものを調べてからにするね」

「その方がいいと思います。店のことは焦らずに考えてください」

 ここから出た後に、何をするのか考えることがここまで楽しいなんて想像していなかった私は、その日からどんなお店にしようかと楽しみながら思いを巡らせたのだった。
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