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制裁編

79 彼女の従姉妹だという女

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 俺とカツヒトがシズにポーションを使っている横で、アークとソーがチカコを捕縛しているのが目に入った。
 
 ソーの持つスキルの中に対象者のスキルを短時間使用不可にするというものがあるらしく、それを使ってチカコの持つ全てのスキルを封じると事前に言われていた。
 その所為なのか、王宮にいた兵士が次々と死体になっていた。
 
「うげぇー。香澄千歌子……。お前サイテーだな。死体に囲まれて暮らしてたのかよ……。って事は、山田も死体で、操られてたって可能性あるな……。お前、酷すぎ……。取り巻き連中は?」

 ソーがそう問いかけても、千歌子は項垂れた格好のまま答えることはなかった。
 
 チカコが大人しくなったことを確認した後、護衛に守られたノートレッド大公がやって来て、チカコに告げた。
 
「国を破滅に導いた大罪人、チカコ・カスミをゲヘナ送りの刑に処す。これは、フェールズ王国、国王からも裁可された決定事項だ。刑は……」

 大公がそこで一旦口を噤んでソーを見た。
 ソーは大公が何を聞きたがっているのか理解したようで、答えを口にしていた。
 
「大公さん。そうですねぇ~。頑張れば明日の昼過ぎまで大丈夫ですよ」

 それを聞いた大公は続けて言った。
 
「明日の正午、刑を執行する。それまでは城下の広場で見せしめとしてお前を晒す」

 その言葉が耳に入ったようで、チカコは醜く歪んだ表情を涙と鼻水で汚しながら言ったのだ。
 
「な、なに……?刑?見せしめ?何を言っているの!!ねえ!!何を言っているのよ!!私はこの国の主になったのよ!!王様だって、偉そうなおじさんだって、私に国をくれるって!!」

 チカコがそう言うと、大公は憐れむように言った。
 
「お前が仲間に殺させて、自分で操った死体に何を言わせても虚しいだけだ……。お前は自分の行いを一生死ぬことも出来ない地獄で悔い続けるのだ……。それでもお前の犯した罪は消えることはないけれどな……」

「なに?死ぬことも出来ない地獄?ねえ、何を……、何を言っているの!!ちょっと、離して!!離してってば!!なんで、なんでスキルが使えないの?誰か、誰か助けて!!ねえ、ねえってば!!!!」


 必死な形相で喚く声がその場に響いたが、それを無視して淡々とチカコの服を剥ぎ、手足を鎖で拘束した。

 ボロボロの貫頭衣を着せられたチカコは、城下の広場に鎖で拘束されたまま晒された。
 
 病に体を侵されていた民達は、最初はチカコに全く興味を持っていなかったが、誰かが言った一言でチカコを罵り、石を投げるようになっていった。
 
「この悪魔!!母ちゃんを返せよ!!お前が死ねばよかったんだ!!死ねよ!!死ねよ!!!」

 そう言って、まだ小さな少年が石を投げたことが始まりで、その後は、柵越しに手近にある石を投げつけたのだった。
 
「悪魔!!死ね!!」

「あの人を返してよ!!どうしてなのよ!!」

「死ね死ね!!」

 民達の憎悪に晒されたチカコは、最初は彼らに反発していた。
 
「何よ!!勝手に私をこんな不便なところに呼んでおいて!!勝手なこと言うな!!私は何も悪くない!!私は被害者なのよ!!」



 だが、次第にその声は小さくなっていった。
 しかし、石が当たり額が割れた後から様子が変わっていた。
 
「痛っ!!えっ、なに?えっ、血?えっ?なに、何よ!!痛い、痛い!!痛い痛い!!やめて!!止めてよ!!痛い痛い痛い!!もうやめて、止めてください。お願いします止めてください。痛いのは嫌!!止めてよ!!止めてください!!お願いします」


 そう言って、痛みに耐えられなくなった、チカコは涙と鼻水を流して地面に頭を擦り付けて許しを請うたのだ。
 しかし、民の怒りは収まらずに、刃物を投げつけも者も現れたのだ。
 小石程度なら弱った民たちでもチカコに届かせることは出来たが、それよりも重さのある刃物は、柵から距離のあったチカコに届くことはなかったが、そのうちのいくつかは間近に落ちることがあった。
 
「ひっーーー!!!止めて……、そんなのあたったら血がいっぱい出て死んじゃう……。お願いしますもうやめて!!!」

 そう言って、恐怖から穴という穴から色々なものを垂れ流して許しを請う姿は、流石にシズに見せることも聞かせることも出来ないと思った。
 彼女が未だ眠ったままだったことが幸いだった。
 きっと、シズが起きる頃には刑は執行されているだろう。
 
 皆で相談した結果、シズには、チカコの刑を島流しだと伝えることに決めていた。
 まぁ、島流しに近いものはあったので、まるきり嘘というわけではなかったが。
 
 日が沈んでも民達の怒りはチカコの身に降り注ぎ続けた。
 
 そして、次の日……。
 
 ゲヘナ送り……。つまり、永遠の牢獄と呼ばれる地獄にチカコを送るため、禁忌の術が展開されたのだった。
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