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第七話 回想(副音声付)
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リリルが部屋に籠った日の夜まで時は遡る。
屋敷に遅い時間に帰宅したフェデュイに執事が言ったのだ。
「お嬢様がお食事の時間になってもお部屋から出てきませんでした。具合でも悪いのかとお声をかけましたが、大丈夫だとおっしゃるだけで、部屋から出てこなかったのです」
「リリルが? それは大丈夫ではない」
(なんてことだ、リリルに何かあったのか? 心配だ……。どうしたらいいんだ。そうだ、様子を見に行こう。だが、眠っているリリルの部屋に勝手に入るなんて……。だが、俺はリリルの夫になる男なんだ、だから大丈夫だ)
「旦那様……。いけません。心配なのは理解できます。ですが、未婚の女性の部屋に忍び込むのはいかがなものかと……」
執事にそう言われたフェデュイは、眉を不機嫌そうに少し上げてしかめっ面で鼻を鳴らして言った。
「誤解だ」
(べっ、別に忍び込むとか……、そんなんじゃない! 俺はリリルが心配なだけで、やましい気持ちなんてちょっとしかない……)
「はぁ。信じます。お嬢様のことはお任せください」
そう言われてしまえは、有能な執事を信じる以外に道がないフェデュイは、渋々頷くのだった。
その日の夜、フェデュイは、リリルと初めて会った日のことを思い出していた。
それは、戦争の祝賀会にいやいや参加した日のことだった。
パーティーなど面倒な行事には基本的に参加したくないフェデュイだったが、軍を率いて自らの作戦で戦争に勝利した立役者として、祝賀会に参加しない訳にはいかなかったのだ。
そして、面倒なことに国王陛下から褒美は何が欲しいのかとうるさいくらいに言われてうんざりしていたところだった。
そんな時、会場の隅で料理を美味しそうに頬張るリリルに一目ぼれしていたのだ。
小さな口で料理を口いっぱいに頬張る姿は小動物のようで微笑ましかったというのが第一印象だった。
そして、いつしかそんなリリルを夢中で見つめていた。
隣にいる親し気な男に遅れて気が付いた時、その男に殺意が芽生えた。
リリルを誰にも渡したくないという思いから、気が付くとリリルの元に跪いて告白をしていたのだ。
「お前、俺のものになれ」
(君に一目ぼれしてしまった。どうか、俺と付き合ってください)
驚きに目を丸くするその姿が可愛くてつい見入ってしまった。
しかし、リリルはフェデュイを気にもせずに隣にいる男の皿から肉を取って食べだしたのだ。
すぐ近くで美味しそうに肉を食べる姿が可愛くもあったが、今は自分の思いについて考えて欲しかったフェデュイは、リリルの手を引いてダメ押しの告白をしていた。
「俺の妻になれ」
(好きです。結婚してください)
そう言った時の驚いた表情のリリルが可愛すぎて、抱きしめたくなったがそれを堪えて行動を起こしていた。
とにかく、リリルとの結婚をするためにどうしたらいいのかと一瞬で考えを巡らせた結果、今回の褒美としてリリルとの結婚の許可を求めることにしたのだ。
結婚の許可はすぐに下りたが、これは一方的な一目惚れから始まった関係だと分かっていたフェデュイは、さっそくリリルに贈り物をした。
しかし、いつまで経っても一緒に送った手紙の返事は来なかった。
最初は、リリルからの返事を待とうと我慢したが、結局我慢しきれずにクロケット男爵家まで足を運んでしまった。
男爵邸で、簡素なワンピースに身を包み、美しい髪をポニーテールに縛って細い首を晒しているリリルを見て胸が高鳴っていた。
そして、可愛らしい耳と尻尾を見たフェデュイは、今すぐ可愛いリリルをもふもふと撫でたくなったが、そんな事をしてしまえば嫌われてしまうと考えて、何とか踏みとどまった。
しかし、我慢の限界に来ていたフェデュイは、混乱するリリルをそのまま屋敷に連れ帰ってしまったのだ。
フェデュイは、いつでもリリルが屋敷に来てもいいように部屋を整えていたので、その部屋にリリルを通すことにした。
「今日から、結婚の日までこの部屋を使え」
(君のために整えた部屋だ。気に入ってもらえると嬉しい。でも、結婚後は夫婦の部屋に移ってもらうよ)
「えっ?」
結婚後は夫婦の部屋に移ってもらうため、この部屋は一時的に使うものだと説明したが、何故かリリルは驚きの声を上げたのだった。
「安心しろ。正式に夫婦になったときには、部屋を移ってもらう」
(君を大切にしたいんだ。だから、結婚するまでは別々の部屋で過ごそう)
「結婚?」
「ああ」
(リリルが好きすぎて、今すぐにでも結婚したいくらいだよ)
「閣下は私と結婚をしたいのですか?」
「ああ」
(許されるのなら今すぐにでも結婚したいよ)
フェデュイがリリルとの結婚を考えて顔がにやけそうになるのを必死に堪えていると、突然リリルが抱き着いてきたのだ。
「閣下。結婚して欲しいのでしたら、我が家に金銭的な援助をお願いします。そうしてくださるのでしたら、私は喜んで閣下に尽くします。どんな要求にだって答えて見せます! 妻にだってなって見せます!!」
屋敷に遅い時間に帰宅したフェデュイに執事が言ったのだ。
「お嬢様がお食事の時間になってもお部屋から出てきませんでした。具合でも悪いのかとお声をかけましたが、大丈夫だとおっしゃるだけで、部屋から出てこなかったのです」
「リリルが? それは大丈夫ではない」
(なんてことだ、リリルに何かあったのか? 心配だ……。どうしたらいいんだ。そうだ、様子を見に行こう。だが、眠っているリリルの部屋に勝手に入るなんて……。だが、俺はリリルの夫になる男なんだ、だから大丈夫だ)
「旦那様……。いけません。心配なのは理解できます。ですが、未婚の女性の部屋に忍び込むのはいかがなものかと……」
執事にそう言われたフェデュイは、眉を不機嫌そうに少し上げてしかめっ面で鼻を鳴らして言った。
「誤解だ」
(べっ、別に忍び込むとか……、そんなんじゃない! 俺はリリルが心配なだけで、やましい気持ちなんてちょっとしかない……)
「はぁ。信じます。お嬢様のことはお任せください」
そう言われてしまえは、有能な執事を信じる以外に道がないフェデュイは、渋々頷くのだった。
その日の夜、フェデュイは、リリルと初めて会った日のことを思い出していた。
それは、戦争の祝賀会にいやいや参加した日のことだった。
パーティーなど面倒な行事には基本的に参加したくないフェデュイだったが、軍を率いて自らの作戦で戦争に勝利した立役者として、祝賀会に参加しない訳にはいかなかったのだ。
そして、面倒なことに国王陛下から褒美は何が欲しいのかとうるさいくらいに言われてうんざりしていたところだった。
そんな時、会場の隅で料理を美味しそうに頬張るリリルに一目ぼれしていたのだ。
小さな口で料理を口いっぱいに頬張る姿は小動物のようで微笑ましかったというのが第一印象だった。
そして、いつしかそんなリリルを夢中で見つめていた。
隣にいる親し気な男に遅れて気が付いた時、その男に殺意が芽生えた。
リリルを誰にも渡したくないという思いから、気が付くとリリルの元に跪いて告白をしていたのだ。
「お前、俺のものになれ」
(君に一目ぼれしてしまった。どうか、俺と付き合ってください)
驚きに目を丸くするその姿が可愛くてつい見入ってしまった。
しかし、リリルはフェデュイを気にもせずに隣にいる男の皿から肉を取って食べだしたのだ。
すぐ近くで美味しそうに肉を食べる姿が可愛くもあったが、今は自分の思いについて考えて欲しかったフェデュイは、リリルの手を引いてダメ押しの告白をしていた。
「俺の妻になれ」
(好きです。結婚してください)
そう言った時の驚いた表情のリリルが可愛すぎて、抱きしめたくなったがそれを堪えて行動を起こしていた。
とにかく、リリルとの結婚をするためにどうしたらいいのかと一瞬で考えを巡らせた結果、今回の褒美としてリリルとの結婚の許可を求めることにしたのだ。
結婚の許可はすぐに下りたが、これは一方的な一目惚れから始まった関係だと分かっていたフェデュイは、さっそくリリルに贈り物をした。
しかし、いつまで経っても一緒に送った手紙の返事は来なかった。
最初は、リリルからの返事を待とうと我慢したが、結局我慢しきれずにクロケット男爵家まで足を運んでしまった。
男爵邸で、簡素なワンピースに身を包み、美しい髪をポニーテールに縛って細い首を晒しているリリルを見て胸が高鳴っていた。
そして、可愛らしい耳と尻尾を見たフェデュイは、今すぐ可愛いリリルをもふもふと撫でたくなったが、そんな事をしてしまえば嫌われてしまうと考えて、何とか踏みとどまった。
しかし、我慢の限界に来ていたフェデュイは、混乱するリリルをそのまま屋敷に連れ帰ってしまったのだ。
フェデュイは、いつでもリリルが屋敷に来てもいいように部屋を整えていたので、その部屋にリリルを通すことにした。
「今日から、結婚の日までこの部屋を使え」
(君のために整えた部屋だ。気に入ってもらえると嬉しい。でも、結婚後は夫婦の部屋に移ってもらうよ)
「えっ?」
結婚後は夫婦の部屋に移ってもらうため、この部屋は一時的に使うものだと説明したが、何故かリリルは驚きの声を上げたのだった。
「安心しろ。正式に夫婦になったときには、部屋を移ってもらう」
(君を大切にしたいんだ。だから、結婚するまでは別々の部屋で過ごそう)
「結婚?」
「ああ」
(リリルが好きすぎて、今すぐにでも結婚したいくらいだよ)
「閣下は私と結婚をしたいのですか?」
「ああ」
(許されるのなら今すぐにでも結婚したいよ)
フェデュイがリリルとの結婚を考えて顔がにやけそうになるのを必死に堪えていると、突然リリルが抱き着いてきたのだ。
「閣下。結婚して欲しいのでしたら、我が家に金銭的な援助をお願いします。そうしてくださるのでしたら、私は喜んで閣下に尽くします。どんな要求にだって答えて見せます! 妻にだってなって見せます!!」
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