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第五話 毎日でも
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予備の服に着替えたラヴィリオラは、拠点に選んだ場所に向かうとそこには扉がポツンと立っていた。
扉が一枚あるだけの不思議な光景に立ち止まっていると、扉が開き、中からノエルが顔を出す。
「おかえり。さあ、はいって」
ノエルの「おかえり」という言葉に面はゆい気持ちになるラヴィリオラだったが、すぐに意識が他に移る。
「なんか……、いい匂いがする……」
食欲を誘う香ばしい匂いに唾を飲むラヴィリオラ。
そんなラヴィリオラに笑顔を向けるノエルは、手を広げて見せた。
「じゃーん。久しぶりに腕を振るったんだけど、どうかな?」
招かれた食卓には、いい焼き加減の肉! いい煮込み具合いの肉! 付け合わせの野菜とスープ、パンがところ狭しと並んでいたのだ。
それを見たラヴィリオラは、ごくりと唾を飲み込む。
「これ……」
「うん。温かいうちに食べてね」
「ごくり……。うん。いただきます……」
椅子に座ったラヴィリオラは、目の前の肉にフォークを刺して口に運んだ。
「う……まっ!!」
言葉に出来ないとラヴィリオラは、思った。
噛んだ瞬間溶けるように消える肉。搦められたソースがさらに美味しさを引き上げていた。
煮込まれた肉は、ほろほろと崩れ、飲み物だと錯覚するほどだった。
スープも何の材料が入っているのか全くわからないほど複雑だが、癖のない優しい味でどんどん飲めてしまいそうだった。
「おいひい!! ふごい! ぅまぁーいい!!」
「そっか。口に合ったみたいでよかったよ」
「まいにち、たべたい!! おいしすぎる!!」
「そっか。毎日ね。俺は毎日だって腕を振るうよ? ラヴィリオラが望むならね」
「……っ!! ごふっ!!」
「ちょっ、大丈夫? お水飲んで!」
まさにプロポーズの返しのようなセリフに、ラヴィリオラは肉を喉に詰まらせてしまう。
ただの会話の流れであって、ノエルにそんな気持ちなんてないとわかっていても、ラヴィリオラは慌てずにはいられなかった。
「ごほごほ!!」
「ほら、お水!!」
「ごくごくっ……。ぷはぁ……。嬉し死ぬところだった……」
「うれしぬ?」
「なっ、なんでもない!! 君の手料理が美味しすぎて、頬張りすぎてしまった! それよりもすごく美味しい!! 君は天才だよ!!」
本音が零れたことを必死に誤魔化すラヴィリオラは、ノエルの手料理を褒めちぎる。
普段、褒められることが無かったノエルは、気恥ずかしそうに下を向いてしまう。
そんな姿に胸が痛いと感じたラヴィリオラは、手を伸ばしていた。
想像よりも柔らかく、触り心地のいい金色の髪を撫でる。
「誰がなんと言おうとだよ。君はすごい! ありがとう。とっても美味しいごはんで、わたしはすごくうれしいよ」
「うん……。うん、こちらこそありがとう」
「ふふっ。それじゃ、どんどん食べるぞ!!」
「どうぞ、まだたくさんあるからいっぱい食べてね」
それから二人は、何でもない雑談に花を咲かせながら食事の時間を楽しむ。
「あぁ、お腹いっぱいでしあわせぇ~。すごく美味しかった。ごちそうさま」
「うん。口に合ったみたいでよかったよ」
「ふぁああ……。ごめん。ねむく……なっ……て、き…………すうぅ、すぅ」
「くすっ。眠っちゃった。ラヴィリオラ……、ありがとう。君に会えてよかった……。今度こそ、俺は……間違えないから……。だから、もう少し、もう少しだけ……」
懺悔するかのような、ノエルの言葉を聞く者はいなかった。
ノエルは、すっかり寝落ちてしまったラヴィリオラを抱き上げる。
「軽い……」
ますます幼く見える寝顔にノエルは胸が痛くなる。
「あっ……」
近くで見たラヴィリオラの表情は幼かった。そんなラヴィリオラの白い肌にうっすらと見えるそばかすにノエルの胸は高鳴る。
「そばかす……。かわいいなぁ……って、そういうあれじゃなくて、そう、知らなかった一面を知ったというかだな……、こんなに薄いそばかすが見えるくらい近くにいられることがうれしいからって言うか……。ああ、もう、俺はなにがしたいんだよ」
独り言を口にしたノエルは、そっとベッドにラヴィリオラを降ろす。
腕の中の温もりがなくなり、寂しさを覚えてしまうが、頭を振ってそれ以上を考えないようにする。
「おやすみ」
そう呟いたノエルは、ソファーに横になり目を閉じた。
翌朝のことだった。
早く目覚めたノエルが朝食の準備をしていると、寝室のドアがゆっくりと開きラヴィリオラが体を伸ばしながら現れたのだが、その姿に味見をしていたスープを盛大に噴き出してしまっていた。
「おはよぅ」
「おはっ、ぶっふぅうーーーーー!!」
制服のワイシャツ一枚だけの、無防備な姿で現れたラヴィリオラにノエルは狼狽する。
シャツもボタンが辛うじて二つほど留まっているだけ、素足を晒した姿に慌てるなという方が無理だと言えた。
ノエルは、椅子に掛けていた制服のジャケットを慌てながらラヴィリオラに被せていた。
「なんて格好で出てくるんだよ!!」
「ふぁあ……。かっこぅ?」
眠そうにそう言ったラヴィリオラは、自身の姿を見下ろしたあと、一瞬で寝室に戻っていた。
数分後、身支度を整えたラヴィリオラは、何でもないような表情で現れる。
「おはよう……。見苦しい姿を見せて……。悪かった……」
そういうラヴィリオラだったが、首元まで真っ赤に染まっているのを見たノエルは、何も言えなくなってしまう。
本当は、恥じらいとか、無自覚が過ぎるとか、いろいろと言いたいことがあったはずなのに、ラヴィリオラの顔を見たら何も注意することなんてできなかったのだ。
「反則だよ……、それは……。はぁ……」
扉が一枚あるだけの不思議な光景に立ち止まっていると、扉が開き、中からノエルが顔を出す。
「おかえり。さあ、はいって」
ノエルの「おかえり」という言葉に面はゆい気持ちになるラヴィリオラだったが、すぐに意識が他に移る。
「なんか……、いい匂いがする……」
食欲を誘う香ばしい匂いに唾を飲むラヴィリオラ。
そんなラヴィリオラに笑顔を向けるノエルは、手を広げて見せた。
「じゃーん。久しぶりに腕を振るったんだけど、どうかな?」
招かれた食卓には、いい焼き加減の肉! いい煮込み具合いの肉! 付け合わせの野菜とスープ、パンがところ狭しと並んでいたのだ。
それを見たラヴィリオラは、ごくりと唾を飲み込む。
「これ……」
「うん。温かいうちに食べてね」
「ごくり……。うん。いただきます……」
椅子に座ったラヴィリオラは、目の前の肉にフォークを刺して口に運んだ。
「う……まっ!!」
言葉に出来ないとラヴィリオラは、思った。
噛んだ瞬間溶けるように消える肉。搦められたソースがさらに美味しさを引き上げていた。
煮込まれた肉は、ほろほろと崩れ、飲み物だと錯覚するほどだった。
スープも何の材料が入っているのか全くわからないほど複雑だが、癖のない優しい味でどんどん飲めてしまいそうだった。
「おいひい!! ふごい! ぅまぁーいい!!」
「そっか。口に合ったみたいでよかったよ」
「まいにち、たべたい!! おいしすぎる!!」
「そっか。毎日ね。俺は毎日だって腕を振るうよ? ラヴィリオラが望むならね」
「……っ!! ごふっ!!」
「ちょっ、大丈夫? お水飲んで!」
まさにプロポーズの返しのようなセリフに、ラヴィリオラは肉を喉に詰まらせてしまう。
ただの会話の流れであって、ノエルにそんな気持ちなんてないとわかっていても、ラヴィリオラは慌てずにはいられなかった。
「ごほごほ!!」
「ほら、お水!!」
「ごくごくっ……。ぷはぁ……。嬉し死ぬところだった……」
「うれしぬ?」
「なっ、なんでもない!! 君の手料理が美味しすぎて、頬張りすぎてしまった! それよりもすごく美味しい!! 君は天才だよ!!」
本音が零れたことを必死に誤魔化すラヴィリオラは、ノエルの手料理を褒めちぎる。
普段、褒められることが無かったノエルは、気恥ずかしそうに下を向いてしまう。
そんな姿に胸が痛いと感じたラヴィリオラは、手を伸ばしていた。
想像よりも柔らかく、触り心地のいい金色の髪を撫でる。
「誰がなんと言おうとだよ。君はすごい! ありがとう。とっても美味しいごはんで、わたしはすごくうれしいよ」
「うん……。うん、こちらこそありがとう」
「ふふっ。それじゃ、どんどん食べるぞ!!」
「どうぞ、まだたくさんあるからいっぱい食べてね」
それから二人は、何でもない雑談に花を咲かせながら食事の時間を楽しむ。
「あぁ、お腹いっぱいでしあわせぇ~。すごく美味しかった。ごちそうさま」
「うん。口に合ったみたいでよかったよ」
「ふぁああ……。ごめん。ねむく……なっ……て、き…………すうぅ、すぅ」
「くすっ。眠っちゃった。ラヴィリオラ……、ありがとう。君に会えてよかった……。今度こそ、俺は……間違えないから……。だから、もう少し、もう少しだけ……」
懺悔するかのような、ノエルの言葉を聞く者はいなかった。
ノエルは、すっかり寝落ちてしまったラヴィリオラを抱き上げる。
「軽い……」
ますます幼く見える寝顔にノエルは胸が痛くなる。
「あっ……」
近くで見たラヴィリオラの表情は幼かった。そんなラヴィリオラの白い肌にうっすらと見えるそばかすにノエルの胸は高鳴る。
「そばかす……。かわいいなぁ……って、そういうあれじゃなくて、そう、知らなかった一面を知ったというかだな……、こんなに薄いそばかすが見えるくらい近くにいられることがうれしいからって言うか……。ああ、もう、俺はなにがしたいんだよ」
独り言を口にしたノエルは、そっとベッドにラヴィリオラを降ろす。
腕の中の温もりがなくなり、寂しさを覚えてしまうが、頭を振ってそれ以上を考えないようにする。
「おやすみ」
そう呟いたノエルは、ソファーに横になり目を閉じた。
翌朝のことだった。
早く目覚めたノエルが朝食の準備をしていると、寝室のドアがゆっくりと開きラヴィリオラが体を伸ばしながら現れたのだが、その姿に味見をしていたスープを盛大に噴き出してしまっていた。
「おはよぅ」
「おはっ、ぶっふぅうーーーーー!!」
制服のワイシャツ一枚だけの、無防備な姿で現れたラヴィリオラにノエルは狼狽する。
シャツもボタンが辛うじて二つほど留まっているだけ、素足を晒した姿に慌てるなという方が無理だと言えた。
ノエルは、椅子に掛けていた制服のジャケットを慌てながらラヴィリオラに被せていた。
「なんて格好で出てくるんだよ!!」
「ふぁあ……。かっこぅ?」
眠そうにそう言ったラヴィリオラは、自身の姿を見下ろしたあと、一瞬で寝室に戻っていた。
数分後、身支度を整えたラヴィリオラは、何でもないような表情で現れる。
「おはよう……。見苦しい姿を見せて……。悪かった……」
そういうラヴィリオラだったが、首元まで真っ赤に染まっているのを見たノエルは、何も言えなくなってしまう。
本当は、恥じらいとか、無自覚が過ぎるとか、いろいろと言いたいことがあったはずなのに、ラヴィリオラの顔を見たら何も注意することなんてできなかったのだ。
「反則だよ……、それは……。はぁ……」
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