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第六話 わたしが教えてあげよう
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「おいしぃ!! 流石はゾーシモス令息だ! 君の作る手料理は美味しすぎる! しあわせだぁ」
頬をリスのように膨らませながらもぐもぐと食事を楽しむラヴィリオラと、それを嬉しそうに見つめるノエル。
ノエルは、過去の自分に感謝を送る。
料理に妥協せずに、腕を磨いてきて本当に良かったと。
残すことなく完食したラヴィリオラは、ポッコリとしたお腹を擦ってから、ノエルの意見を聞く。
「試験終了まで一日あるけど、君はどうしたい?」
今まで意見を聞かれることが無かったノエルは瞬きをする。
そんなノエルを見たラヴィリオラは、困ったように微笑んだ。
「うーん。困らせるつもりはなかったんだ。何も思い浮かばないなら、わたしと遊ぶかい?」
そう言うラヴィリオラの表情は、とても楽しそうではあったが、何か悪戯を思いついたようなそんな表情も見え隠れしていた。
それに気が付いたノエルだったが、なんとなく気が付かないふりをしてラヴィリオラの話を聞くことにする。
「うーん。俺は特にしたいことはないけど……」
「くふっ。それじゃあ、わたしが面白い遊びを教えてあげよう」
そう言ったラヴィリオラは、唇の端を舐めた。
その表情にノエルの心臓はバクバクと激しく高鳴る。
動揺を知られないように、ノエルは何でもないことのように聞き返す。
「へっ、へえ。楽しみだなぁ……、ははっ……」
「ふふ。すっごく楽しい。癖になると日常に支障をきたすが大丈夫。わたしがいつでも相手になるから問題ないぞ」
「ふあっ!」
「大丈夫。とっても楽しいだけだ。なにも心配することなんてないぞ? 君はわたしに身を委ねるだけでいいから」
「ででで、でもっ!!」
「ほら」
そう言って手を差し出すラヴィリオラに、勝てそうになかったノエルは覚悟を決める。
言われるがまま外に出たノエルは、ラヴィリオラに腰を抱き寄せられてびくりと身を捩らせる。
「あっ、ごめん。びっくりしたよな。大丈夫。優しくする」
心の中で、「優しくするって……、俺は何をされてしまうんだ?」と動揺をしていたノエルだったが、ラヴィリオラの行動におかしな声を上げてしまう。
「やっ、あっ、なっ……、はぁああああ!!!?」
さらに強く腰を抱き寄せられ、ノエルが身を硬くした次の瞬間だった。
全身に強い風を受けたと感じた後、目の前の景色が開けていたのだ。
「と……、飛んでる?」
「楽しいだろう?」
そう言ってニコニコと笑うラヴィリオラは、ノエルを抱き寄せると空中を泳ぐように移動を開始する。
何とも言えない快感を感じていた。
頬を撫でる風。風を切るように進むスピード感。
空を飛ぶという初めての体験に興奮を覚えるノエルは、無意識にラヴィリオラを強く抱き寄せていた。
「ははっ! ラヴィリオラの言う通りだ! 楽しい! すごく楽しいな!」
子供のようにはしゃぐノエルが可愛く思えたラヴィリオラは、彼をもっと楽しませたいと考える。
「ふふ。それじゃぁ、もっとスピードを上げるぞ」
そう言ったラヴィリオラは、旋回を加えながら加速していく。
腕の中のノエルの感触に胸が高鳴ることを止められないラヴィリオラ。
加速すればするほど、旋回すればするほど、強く抱きしめられる。
服越しに感じる、鍛えられたノエルの胸板の厚さを知ってしまい、ラヴィリオラの心臓が暴れだす。
お互いに満足するころには、太陽の陽は天辺を少し過ぎてしまっていた。
「ありがとう。すごい体験だったよ」
「君のためなら、お安い御用だ。また飛びたくなったら言って。わたしはいつでも大歓迎」
ラヴィリオラは、そう言ったあとにぎゅっとノエルを抱きしめた。
ノエルもぎゅっとラヴィリオラの小さな体を抱きしめ返す。
「うん。ありがとう」
お互いの体温が心地よいと感じている中で、ラヴィリオラの腹が小さく鳴いた。
きゅー……。
その音にラヴィリオラは、少しの恥ずかしさを覚えて、顔を隠すかのように、ノエルの胸に顔を深く埋める。
「……お腹減った」
「ははっ。少し遅くなったけど、昼にしようか。すぐに用意するよ」
「ああ! メニューは何だ?」
「それは、出来てからのお楽しみだよ」
「おお! 楽しみだよ」
短い間ではあったが、ラヴィリオラとノエルは、お互いの温度を心地いいものだと知った。
昼食後、ラヴィリオラは腹ごなしにもう少し魔獣を狩ると言い出す。
「五匹も倒したんだ。十分だと思うのだが?」
「駄目だ。わたしは君を下にみた奴の吠え面が見たいのだよ」
「……、それは趣味が悪いよ」
「いいや、奴には思い知らせる必要があるのさ。ふふっ」
「はぁ……」
そう言ってラヴィリオラは外に出てしまうのだ。
慌てるようにその背中を追いかけたノエルは、必要なさそうだとは思いつつも補助魔法をラヴィリオラに張った。
「ふーん。やっぱり君はすごいね。補助魔法の常識をこうも簡単に覆すとは……」
「努力はしたさ。そうじゃないと、家に迷惑をかけかねるからね」
「だとしてもだ。攻撃防御の双方強化だけでもすごいのに、素早さ、魔法攻撃魔法防御も強化されてるし……」
「出来るけど、効果はそれほどでもないから……」
「いやいや……。はぁ。よし、君のすごさってやつをわたしがわからせてやるよ……。あああああああ!!!」
そう言ったラヴィリオラは、咆哮する。
その声が聞こえたのだろう、魔獣たちがラヴィリオラに向かって突進してくるのが見えた。
「わたしは君の補助魔法だけで勝ってみせる!!」
そう言い放ったラヴィリオラは、武器も持たずに拳を振り上げたのだ。
「やぁああ!!」
拳ひとつで地面を砕くと、突進してきた魔獣が速度を止められずに、大きく空いた穴に落下する。
続々と集まる魔獣をケーキかのように簡単に潰していく様子にノエルは、ポカンと口を開くのだ。
あっという間に十以上の魔獣を潰し終えたラヴィリオラは、笑顔で言うのだ。
「ノエルの補助魔法のおかげで簡単にぶっ殺せたぞ」
「……。いやぁ……。ラヴィリオラがすごいと思うんだけど」
「いやいや、謙遜は駄目だぜ。ちっちっちー。全然疲れないし、ここまで動けたのはノエルの補助があったからだぞ!」
「う~ん……」
納得できないといった顔でそう唸るノエルだったが、ラヴィリオラの楽しそうな笑顔を見てそれ以上の問答をやめたのだった。
頬をリスのように膨らませながらもぐもぐと食事を楽しむラヴィリオラと、それを嬉しそうに見つめるノエル。
ノエルは、過去の自分に感謝を送る。
料理に妥協せずに、腕を磨いてきて本当に良かったと。
残すことなく完食したラヴィリオラは、ポッコリとしたお腹を擦ってから、ノエルの意見を聞く。
「試験終了まで一日あるけど、君はどうしたい?」
今まで意見を聞かれることが無かったノエルは瞬きをする。
そんなノエルを見たラヴィリオラは、困ったように微笑んだ。
「うーん。困らせるつもりはなかったんだ。何も思い浮かばないなら、わたしと遊ぶかい?」
そう言うラヴィリオラの表情は、とても楽しそうではあったが、何か悪戯を思いついたようなそんな表情も見え隠れしていた。
それに気が付いたノエルだったが、なんとなく気が付かないふりをしてラヴィリオラの話を聞くことにする。
「うーん。俺は特にしたいことはないけど……」
「くふっ。それじゃあ、わたしが面白い遊びを教えてあげよう」
そう言ったラヴィリオラは、唇の端を舐めた。
その表情にノエルの心臓はバクバクと激しく高鳴る。
動揺を知られないように、ノエルは何でもないことのように聞き返す。
「へっ、へえ。楽しみだなぁ……、ははっ……」
「ふふ。すっごく楽しい。癖になると日常に支障をきたすが大丈夫。わたしがいつでも相手になるから問題ないぞ」
「ふあっ!」
「大丈夫。とっても楽しいだけだ。なにも心配することなんてないぞ? 君はわたしに身を委ねるだけでいいから」
「ででで、でもっ!!」
「ほら」
そう言って手を差し出すラヴィリオラに、勝てそうになかったノエルは覚悟を決める。
言われるがまま外に出たノエルは、ラヴィリオラに腰を抱き寄せられてびくりと身を捩らせる。
「あっ、ごめん。びっくりしたよな。大丈夫。優しくする」
心の中で、「優しくするって……、俺は何をされてしまうんだ?」と動揺をしていたノエルだったが、ラヴィリオラの行動におかしな声を上げてしまう。
「やっ、あっ、なっ……、はぁああああ!!!?」
さらに強く腰を抱き寄せられ、ノエルが身を硬くした次の瞬間だった。
全身に強い風を受けたと感じた後、目の前の景色が開けていたのだ。
「と……、飛んでる?」
「楽しいだろう?」
そう言ってニコニコと笑うラヴィリオラは、ノエルを抱き寄せると空中を泳ぐように移動を開始する。
何とも言えない快感を感じていた。
頬を撫でる風。風を切るように進むスピード感。
空を飛ぶという初めての体験に興奮を覚えるノエルは、無意識にラヴィリオラを強く抱き寄せていた。
「ははっ! ラヴィリオラの言う通りだ! 楽しい! すごく楽しいな!」
子供のようにはしゃぐノエルが可愛く思えたラヴィリオラは、彼をもっと楽しませたいと考える。
「ふふ。それじゃぁ、もっとスピードを上げるぞ」
そう言ったラヴィリオラは、旋回を加えながら加速していく。
腕の中のノエルの感触に胸が高鳴ることを止められないラヴィリオラ。
加速すればするほど、旋回すればするほど、強く抱きしめられる。
服越しに感じる、鍛えられたノエルの胸板の厚さを知ってしまい、ラヴィリオラの心臓が暴れだす。
お互いに満足するころには、太陽の陽は天辺を少し過ぎてしまっていた。
「ありがとう。すごい体験だったよ」
「君のためなら、お安い御用だ。また飛びたくなったら言って。わたしはいつでも大歓迎」
ラヴィリオラは、そう言ったあとにぎゅっとノエルを抱きしめた。
ノエルもぎゅっとラヴィリオラの小さな体を抱きしめ返す。
「うん。ありがとう」
お互いの体温が心地よいと感じている中で、ラヴィリオラの腹が小さく鳴いた。
きゅー……。
その音にラヴィリオラは、少しの恥ずかしさを覚えて、顔を隠すかのように、ノエルの胸に顔を深く埋める。
「……お腹減った」
「ははっ。少し遅くなったけど、昼にしようか。すぐに用意するよ」
「ああ! メニューは何だ?」
「それは、出来てからのお楽しみだよ」
「おお! 楽しみだよ」
短い間ではあったが、ラヴィリオラとノエルは、お互いの温度を心地いいものだと知った。
昼食後、ラヴィリオラは腹ごなしにもう少し魔獣を狩ると言い出す。
「五匹も倒したんだ。十分だと思うのだが?」
「駄目だ。わたしは君を下にみた奴の吠え面が見たいのだよ」
「……、それは趣味が悪いよ」
「いいや、奴には思い知らせる必要があるのさ。ふふっ」
「はぁ……」
そう言ってラヴィリオラは外に出てしまうのだ。
慌てるようにその背中を追いかけたノエルは、必要なさそうだとは思いつつも補助魔法をラヴィリオラに張った。
「ふーん。やっぱり君はすごいね。補助魔法の常識をこうも簡単に覆すとは……」
「努力はしたさ。そうじゃないと、家に迷惑をかけかねるからね」
「だとしてもだ。攻撃防御の双方強化だけでもすごいのに、素早さ、魔法攻撃魔法防御も強化されてるし……」
「出来るけど、効果はそれほどでもないから……」
「いやいや……。はぁ。よし、君のすごさってやつをわたしがわからせてやるよ……。あああああああ!!!」
そう言ったラヴィリオラは、咆哮する。
その声が聞こえたのだろう、魔獣たちがラヴィリオラに向かって突進してくるのが見えた。
「わたしは君の補助魔法だけで勝ってみせる!!」
そう言い放ったラヴィリオラは、武器も持たずに拳を振り上げたのだ。
「やぁああ!!」
拳ひとつで地面を砕くと、突進してきた魔獣が速度を止められずに、大きく空いた穴に落下する。
続々と集まる魔獣をケーキかのように簡単に潰していく様子にノエルは、ポカンと口を開くのだ。
あっという間に十以上の魔獣を潰し終えたラヴィリオラは、笑顔で言うのだ。
「ノエルの補助魔法のおかげで簡単にぶっ殺せたぞ」
「……。いやぁ……。ラヴィリオラがすごいと思うんだけど」
「いやいや、謙遜は駄目だぜ。ちっちっちー。全然疲れないし、ここまで動けたのはノエルの補助があったからだぞ!」
「う~ん……」
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