最強と言われるパーティーから好きな人が追放されたので搔っ攫うことにしました

バナナマヨネーズ

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第七話 家に来るか?

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「最高記録だ……。ごほんっ。ゾーシモス君。アークス君。二人に特別単位を付与する」

 実技試験終了後の教室で、実技担当教諭はそう告げた。
 クラス中が騒めく中、ただ一人だけは下を向き、悔しそうに歯を食いしばる者がいた。
 悔しそうなジャスパーを見たラヴィリオラは、満面の笑みを浮かべ、ノエルの隣の席でふんぞり返るのだ。
 
「ゾーシモス令息。やったな。ところで、特別単位って?」

「はぁぁ……。ああ、うん……。特別単位っていうのは、卒業時の進路選びで加点される点数のことだよ」

「ふーん」

「はは……。どうでも良さそうだね……」

「まぁね。わたしってさ……。これは、ここで話すことじゃないか。君が私のことをもっと知りたいっていうなら、教えてあげるよ?」

 途中で声を潜めたラヴィリオラは、揶揄うようにノエルの耳元に唇を寄せてそう呟く。
 耳にかかる吐息に、ノエルは頬を赤くさせていた。
 ノエルの反応に満足そうに微笑んだラヴィリオラは、ノエルの手を取って言うのだ。
 
「君になら何でも教えてあげるよ。試験中みたいにね。ふふ」

「……!! 揶揄うのは……、いや、俺は君のことをもっと知りたい」

 そう言ったノエルは、ぐっと身を寄せてラヴィリオラの緑色の瞳を見つめた。
 積極的なノエルの反応に、耳まで赤くさせてしまうラヴィリオラだったが、気まずそうに顔を背けながらも言うのだ。
 
「あっ……、ああ、いいとも……、それじゃ、わたしの借りている家に来るか?」

「うん。行くよ!」

 そんな二人の、試験前とは違う距離感とやり取りにクラスメイト達は思うのだ。
 これは試験の間になにかあったなと。
 そして、どう見ても好き合っているように見える二人を見てため息をつくのだ。
 イチャイチャは、教室以外の場所でやってくれよと。
 そんな中、暗い表情で二人を睨みつけるジャスパーに気が付く者などいなかった。
 
 
 
「どうぞ。いらっしゃい」

 そう言ってラヴィリオラが案内したのは、学校からそこそこ遠い場所にある貸家だった。
 そこそこの広さのある一軒家に案内されたノエルは、物珍しそうに室内を見回した。
 ラヴィリオラは、途中で買ってきた茶菓子と家にあった紅茶を淹れてノエルの隣に座った。
 
「はい。どうぞ」

「いただきます……」

 少しの無言状態が続いた後、最初に口を開いたのはラヴィリオラだった。
 
「いやぁー、悪かったね。改めて謝罪させてくれないかな?」

「えっ?」

「ほら、試験前に、君がフリーになったから、どうしても君と居たくて、無理やり誘ってしまったことだ」

 そう言われたノエルは、二人がパーティーを組むことになった切っ掛けを思い出した。
 
「まぁ、確かに最初は驚いたし、俺でいいのかとか、思うところはあったよ。でも、今はラヴィリオラと組めて良かったと思っているよ」

「ほっ……。それならよかった……。ほら、君の居たパーティーはさっ、クソな男はいたけど、他の女子は綺麗どころだったし、わたしとなんて―――」

「そんなことない! ラヴィリオラはすごく、かっ……、かわいいとおもうけど……」

「そっ……そうか……」

 むず痒い空気が漂う。
 何を話していいのか分からず、無言でいるとラヴィリオラの腹の虫が鳴る。
 
 きゅーーーー。
 
 とっさに両手で腹を押さえるも、すでに遅かった。
 
「くっ……、あははは! 良ければ夜ご飯作らせてほしいかな?」

「ふへへ……、君の手料理はうれしい……、けど、わたしの腹の虫が……恥ずかしすぎる……」

「ありのままのラヴィリオラを知れて俺は楽しいよ」

 そう言って立ち上がったノエルは、下を向くラヴィリオラの頭を優しく撫でる。
 
「それじゃ、台所を借りるけどいいかな?」

「う、うん。あぁ、何もないかも……」

「そうか……。なら、買い出しに行こう」

「えっ? いいのか?」

「ほら、俺の手料理を喜んでくれるラヴィリオラに食べて欲しいんだよ」

 ノエルの言葉が嬉しかったラヴィリオラはにっこりと無邪気な笑顔を向けた。
 その無防備な笑顔を嬉しく感じたノエルは思うのだ。
 俺に勇気があったらと。
 
 
 
 その後、買い出しを終えたノエルは存分にその腕を振るうのだが……。
 
「悪い。作りすぎた……」

「ううん。嬉しい! 明日も君の手料理が食べられるなんてラッキーだ!」

 そう言って、その場で楽しそうにターンをするラヴィリオラを見たノエルは、普段なら言わないことを口にしてしまう自分に驚愕する。
 
「そんなに喜んでくれるなら、毎日ご飯を作るけど?」

「本当か?! 本気にするぞ? 約束だぞ!」

「うん。毎日……。毎日一緒にご飯をたべよう」

「うん!!」

 それから、毎日のように放課後は共に過ごすようになった二人は、いつの間にか二人でいるのが当たり前になっていくのだった。
 
 
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