8 / 13
第八話 長期休暇は何をする?
しおりを挟む
二人で一緒にいることが日常になりつつある、とある日の放課後。
ラヴィリオラは、ノエルに聞かなければならないことがあった。
何時ものようにノエルと一緒に夕食の用意をしている間、ラヴィリオラは迷った末にその言葉を口に出した。
「来週から始まる長期休暇のことだけど……」
「ん? ああ、俺はいつも通り王都に残るよ。実家に帰ってもやることが無いしね」
「そうか……」
「ラヴィリオラは?」
「わたしは……、家に帰るが……」
「そっか。二ヶ月の間、離れて過ごすのは寂しいね」
本当に寂しそうな表情を見せるノエルに、ラヴィリオラはなんの考えもなしに提案していた。
「なら! わたしと一緒に過ごさないか!」
「え?」
ラヴィリオラが勢いよくそう言うと、ノエルは目を丸くさせる。
「蓄えはあるけど、こういう機会に稼いでおきたいし。でも、君と離れるのはわたしも寂しいというか……」
「蓄え? 稼ぐ?」
ラヴィリオラの言葉の中に疑問が湧くノエルは、首を傾げていた。
そんなノエルを見たラヴィリオラは、ハッとしたような表情で両手を振って早口で説明を始めた。
「言ってなかったかも……。わたし、家を出て自立してるんだ。迷宮都市に家を持っていて、そこで暮らしていたんだよ。趣味で冒険者の資格も持ってるんだよ!」
初めて聞くラヴィリオラの素上に無意識に胸を押さえたノエルは、ぼんやりとした声音で問う。
「そうなんだ……。知らなかった。そうだよね。冒険者……。強いわけだよ……」
「隠していた訳じゃなくて!」
「わかっているよ。俺も聞かなかったし……」
「……」
少しの沈黙のあと、ノエルはラヴィリオラの瞳を見つめて言った。
「行く。長期休暇はラヴィリオラと過ごしたい!」
ノエルの言葉に、表情を明るくさせたラヴィリオラ。
「ああ! 楽しみだよ!」
こうして、長期休暇の予定が決まった二人は、これからのことに、それぞれが思いを馳せたのだ。
週明けの早朝のことだった。
ノエルはラヴィリオラの家の前に着ていた。
大荷物を持ったノエルが呼び鈴を鳴らすと、眠たそうな表情のラヴィリオラが扉を開けた。
「ふぁぁぁああぁ。おはよぅ……」
「おh……!? ちょっ、なんて格好を!」
シャツだけを羽織ったような格好で現れたラヴィリオラに驚いたノエルは、慌てて家の中に押し入る。
無防備すぎるラヴィリオラに背中を向けたノエルは、動揺の滲む声でお願いする。
「ラヴィリオラ! 服! 服を着てくれないか!!」
「ふくぅ? ああ、ごめん。見苦しい姿で……」
「はぁ……。見苦しくはないけど……。目に毒と言うか……」
「ふふーん。わたしは全然見られても問題ないけどな?」
「恥じらいを持ってよ! どうしてこうなったんだ? 試験の時のあの恥じらいは? どこに失くしてしまったというのか……」
一人嘆いているノエルを横目にラヴィリオラは、にっこりと微笑む。
凹凸のない子供のような体型の自分でも、男らしい美男子のノエルを狼狽させられる事実に嬉しさが込み上げる。
出会った時より、一緒に過ごすうちに恋しさが募る一方だった。
自信のなさが玉に瑕だが、そこを慰められるのはラヴィリオラだけの特権だった。
ノエルの器用なところも、お人好しなところも、何もかもが好きだった。
「ふふっ。今日から二か月間、よろしくね」
「うん。よろしく」
朝食を手早く済ませたあと、貸家を内側から施錠したことを確認し終えたラヴィリオラは、身軽な格好でノエルに手を差し出した。
「よし、それじゃあ、行こうか」
「えっ?」
「おっと、君の荷物もしまうからちょっと失礼するよ」
そう言ったラヴィリオラは、ノエルの脇に置いてあった荷物を腰に付けた袋に入れてしまったのだ。
あり得ないことにノエルが驚愕し疑問の声を上げた。
「えっ? そう言えば、試験の時も……」
脳裏に過る謎の袋の存在に言及するノエルに対して、ラヴィリオラはあっけらかんと真実を口に出していた。
「ん? ああ、マジックバッグだよ」
「…………?!」
「ダンジョンで拾ったんだよ。いっぱいあるから、君もいる?」
「いやいやいやいや!」
「あっ、君には空間魔法があったっけ」
「はぁ……、ラヴィリオラは常識をもっと知った方がいいと思うよ」
ノエルがそう言うと、ラヴィリオラは頬を膨らませて不満顔で言った。
「それはこっちのセリフだ!」
「心外だよ……。だいたいね、マジックバッグは超貴重品なんだよ? それをホイホイと人にあげるなんて……」
「むむっ! マジックバッグなんて、運さえあれば誰でも拾えるし、ピンキリで、見た目が悪い!」
「はぁ……。その運がだね……。まぁいいか……。こんなことでラヴィリオラと言い合いなんてしたくないよ」
「そうだね。じゃぁ気を取り直して、わたしの家に向かってしゅっぱーつっ!!」
そう言ったラヴィリオラは、ノエルの手を掴んで、その体を抱き寄せていた。
「それじゃ、飛ぶよ!」
「えっ?」
ラヴィリオラは、ノエルに聞かなければならないことがあった。
何時ものようにノエルと一緒に夕食の用意をしている間、ラヴィリオラは迷った末にその言葉を口に出した。
「来週から始まる長期休暇のことだけど……」
「ん? ああ、俺はいつも通り王都に残るよ。実家に帰ってもやることが無いしね」
「そうか……」
「ラヴィリオラは?」
「わたしは……、家に帰るが……」
「そっか。二ヶ月の間、離れて過ごすのは寂しいね」
本当に寂しそうな表情を見せるノエルに、ラヴィリオラはなんの考えもなしに提案していた。
「なら! わたしと一緒に過ごさないか!」
「え?」
ラヴィリオラが勢いよくそう言うと、ノエルは目を丸くさせる。
「蓄えはあるけど、こういう機会に稼いでおきたいし。でも、君と離れるのはわたしも寂しいというか……」
「蓄え? 稼ぐ?」
ラヴィリオラの言葉の中に疑問が湧くノエルは、首を傾げていた。
そんなノエルを見たラヴィリオラは、ハッとしたような表情で両手を振って早口で説明を始めた。
「言ってなかったかも……。わたし、家を出て自立してるんだ。迷宮都市に家を持っていて、そこで暮らしていたんだよ。趣味で冒険者の資格も持ってるんだよ!」
初めて聞くラヴィリオラの素上に無意識に胸を押さえたノエルは、ぼんやりとした声音で問う。
「そうなんだ……。知らなかった。そうだよね。冒険者……。強いわけだよ……」
「隠していた訳じゃなくて!」
「わかっているよ。俺も聞かなかったし……」
「……」
少しの沈黙のあと、ノエルはラヴィリオラの瞳を見つめて言った。
「行く。長期休暇はラヴィリオラと過ごしたい!」
ノエルの言葉に、表情を明るくさせたラヴィリオラ。
「ああ! 楽しみだよ!」
こうして、長期休暇の予定が決まった二人は、これからのことに、それぞれが思いを馳せたのだ。
週明けの早朝のことだった。
ノエルはラヴィリオラの家の前に着ていた。
大荷物を持ったノエルが呼び鈴を鳴らすと、眠たそうな表情のラヴィリオラが扉を開けた。
「ふぁぁぁああぁ。おはよぅ……」
「おh……!? ちょっ、なんて格好を!」
シャツだけを羽織ったような格好で現れたラヴィリオラに驚いたノエルは、慌てて家の中に押し入る。
無防備すぎるラヴィリオラに背中を向けたノエルは、動揺の滲む声でお願いする。
「ラヴィリオラ! 服! 服を着てくれないか!!」
「ふくぅ? ああ、ごめん。見苦しい姿で……」
「はぁ……。見苦しくはないけど……。目に毒と言うか……」
「ふふーん。わたしは全然見られても問題ないけどな?」
「恥じらいを持ってよ! どうしてこうなったんだ? 試験の時のあの恥じらいは? どこに失くしてしまったというのか……」
一人嘆いているノエルを横目にラヴィリオラは、にっこりと微笑む。
凹凸のない子供のような体型の自分でも、男らしい美男子のノエルを狼狽させられる事実に嬉しさが込み上げる。
出会った時より、一緒に過ごすうちに恋しさが募る一方だった。
自信のなさが玉に瑕だが、そこを慰められるのはラヴィリオラだけの特権だった。
ノエルの器用なところも、お人好しなところも、何もかもが好きだった。
「ふふっ。今日から二か月間、よろしくね」
「うん。よろしく」
朝食を手早く済ませたあと、貸家を内側から施錠したことを確認し終えたラヴィリオラは、身軽な格好でノエルに手を差し出した。
「よし、それじゃあ、行こうか」
「えっ?」
「おっと、君の荷物もしまうからちょっと失礼するよ」
そう言ったラヴィリオラは、ノエルの脇に置いてあった荷物を腰に付けた袋に入れてしまったのだ。
あり得ないことにノエルが驚愕し疑問の声を上げた。
「えっ? そう言えば、試験の時も……」
脳裏に過る謎の袋の存在に言及するノエルに対して、ラヴィリオラはあっけらかんと真実を口に出していた。
「ん? ああ、マジックバッグだよ」
「…………?!」
「ダンジョンで拾ったんだよ。いっぱいあるから、君もいる?」
「いやいやいやいや!」
「あっ、君には空間魔法があったっけ」
「はぁ……、ラヴィリオラは常識をもっと知った方がいいと思うよ」
ノエルがそう言うと、ラヴィリオラは頬を膨らませて不満顔で言った。
「それはこっちのセリフだ!」
「心外だよ……。だいたいね、マジックバッグは超貴重品なんだよ? それをホイホイと人にあげるなんて……」
「むむっ! マジックバッグなんて、運さえあれば誰でも拾えるし、ピンキリで、見た目が悪い!」
「はぁ……。その運がだね……。まぁいいか……。こんなことでラヴィリオラと言い合いなんてしたくないよ」
「そうだね。じゃぁ気を取り直して、わたしの家に向かってしゅっぱーつっ!!」
そう言ったラヴィリオラは、ノエルの手を掴んで、その体を抱き寄せていた。
「それじゃ、飛ぶよ!」
「えっ?」
19
あなたにおすすめの小説
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました
鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。
素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。
とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。
「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」
ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります
奏音 美都
恋愛
ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。
そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。
それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです
果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。
幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。
ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。
月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。
パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。
これでは、結婚した後は別居かしら。
お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。
だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。
感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました
九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」
悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。
公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。
「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」
――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。
身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~
ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。
彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。
――死んだはずの彼女が、生きている?
同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。
「今さら、逃げ道があると思うなよ」
瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。
秘された皇子と、選び直した愛。
三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?
* * *
後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる