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第十二話 二人の距離
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金級と白級の異例の組み合わせでのパーティーは、すぐに噂になった。
それ以外にも、ソロ専門だと思われていたラヴィリオラが初めて組むパーティーだったからとも言えた。
マーティーの勧めで、最初は簡単な採取や弱い魔物の討伐などをしている間に、あっという間にノエルは青級まで昇級していた。
ダンジョン探索は、緑級以上が推奨ランクとされているため、ノエルが青級になったところでラヴィリオラからダンジョン探索の提案がされた。
冒険者として共に過ごすうちに、二人の連携は強化されていった。
長年連れ添った仲間のように、何も言わずとも相手の言いたいことが分かるようになってきていたのだ。
そんなある日、ラヴィリオラはノエルをとある場所に誘った。
そこは、ダンジョン都市の外。白い花が咲き乱れる小さな丘だった。
二人で用意したサンドイッチとお菓子を並べて、長閑な風景を楽しむ。
「どうだい? ダンジョン都市での生活は」
サンドイッチを頬張りながらそう問いかけるラヴィリオラに、ノエルは笑顔で答えた。
「楽しいよ。すごく……。俺を誘ってくれてありがとう」
「そうか。君は色々なものを抱えているだろう。わたしは思うんだ」
ノエルの青い瞳をじっと見つめながら、ラヴィリオラは次の言葉を口にする。
「君は……、とても強くなったな」
ラヴィリオラの言葉に、ノエルは緩く頭を振る。
「俺なんて、まだまだだよ。これからもラヴィリオラと居る為にも、俺はもっと強くなるよ」
強い意志の込められた視線を眩しく感じたラヴィリオラは、心の底から思うのだ。
ノエルは強くなったと。
身も心も、あの時から比べるとすごく強くなったと。
「そうか。それは楽しみだよ。わたしたちは結構いいパーティーになったと思うよ」
「そうだね……。いいパーティー仲間になれて、俺も嬉しいよ」
穏やかで温かい風を浴びながら、二人はそれぞれの想いから目を逸らすのだ。
その後、あっという間に時間は過ぎていった。
補助魔法を主とした後衛のノエルと、超好戦的な前衛のラヴィリオラのパーティーは、瞬く間に有名なパーティーへと成長していた。
以前のラヴィリオラを知っている街の人間は、その変わりように目を丸くさせるのだ。
効率重視で多少の怪我は大目に見ていたラヴィリオラを心底心配し、フォローするノエル。
そのノエルの働きはとても献身的だった。
小さな傷にも薬を丁寧に塗り込み、回復魔法も惜しみなくかけるのだ。
服装にもあれこれ気を配り、以前のような適当な服ではなく、休みの日には年相応の可愛らしい服装をするようになっていたのだ。
それは見るからにノエルの趣味が前面に押し出されたものだったが、ラヴィリオラは何も気が付いていない。
そんな一方的に見える献身だと思いきや、ラヴィリオラはラヴィリオラで重い感情をノエルに向けているのが見て取れたのだ。
薄い桃色を溶かしたような金の髪と、優しい青色の瞳の美しい青年に、街の女性たちはすぐに夢中になったのだ。
しかし、そんな女性たちを視線でけん制し、ノエルの美貌に嫉妬する男たちには拳で分からせたのだ。
はたから見れば、お互いに思い合っているのは明白だったが、二人の仲は全くといっていいほど進展していなかった。
マーティー曰く、「そのうち、丸く収まるわよ。下手に口出しして拗れたら大変だし、静観が一番よ」だそうだ。
そんな二人の仲に周囲の方がじれったく思っている中、長期休暇の終わりが差し迫った。
「はぁ……。あっという間だったな……。次に戻ってこれるのは、次の長期休暇かぁ」
「そうだね。あっという間だったね。すごく楽しかったよ。ラヴィリオラ、ありがとう」
「いいよ。わたしも君と過ごせてすごく楽しかったから」
「うん。戻ったら進級試験だね」
「そっか。まぁ、君もわたしも問題なく進級できるさ」
「あはは。相変わらず、すごい自信だね」
「ああ、自信があるからね」
そう言って近い距離で笑い合う。
近い距離ではあるが、どちらともなく、これ以上近づいてはいけないという暗黙の了解があった。
翌日、マーティーに挨拶をした二人は、英雄養成学校のある王都に戻ったのだ。
長期休暇を終えた、二週間後の実技実習中のことだった。
「ノエル!! とおまけの女! 俺のパーティーに入れてやるから感謝しろ!!」
傲慢な声が、静まり返った空間に響く。
声の主は、ジャスパーだった。
あの日、ノエルを追放したつもりが、自分の方がパーティーから追放されてしまったのだ。
それ以来、学校中の生徒から距離を置かれるようになっていた。
ジャスパーの家格が無駄に高いため、全員が当たり障りのない対応はするが、前のようなチヤホヤした空気は一切なかったのだ。
無駄に高いプライドもあり、あれからどのパーティーにも属せずにいたのだ。
しかし、進級試験はパーティーに所属するのが必須項目だったのだ。
だからといって、この発言にはその場にいた全員が眉を顰めるのだ。
しかし、ラヴィリオラとノエルは、ジャスパーの存在を完全に無視をしていた。
全く視界に入っていないのだろう、二人は楽しそうに実技実習に取り組んでいた。
そんな二人にしびれを切らせたジャスパーは、二人の視線に入るように場所を移動して再び声高らかに言うのだ。
「ノエル!! 貴様ぁ!! 俺のパーティーに入れてやると言っているんだ!」
ラヴィリオラがうるさそうに顔をしかめると、ジャスパーは顔を赤くさせて激昂した。
「貴様さえいなければ!! チビ女! どうやってノエルを唆した!! どうせそのからっむぐぅ……」
ジャスパーの言葉は途中で、ノエルの手によって遮られていた。
顔面を握りつぶすかの勢いで掴まれたジャスパーは、涙目でくぐもった唸り声を上げた。
「ふぐっ! うがっ!!」」
今まで誰も見たことのない冷たい視線でジャスパーを見たノエルが、一際感情のこもらない声で言うのだ。
「そんなに俺とラヴィリオラの仲を邪魔したいっていうのなら、受けて立つよ。俺に勝てたら考えてやらなくもない」
ノエルはそう言って、掴んでいたジャスパーを地面に叩きつける。
ジャスパーを冷たく見下ろしたノエルは、挑発するように右手の人差し指をくいくいと動かす。
それを見たジャスパーは、顔を真っ赤にさせながらノエルに飛びかかったのだ。
それ以外にも、ソロ専門だと思われていたラヴィリオラが初めて組むパーティーだったからとも言えた。
マーティーの勧めで、最初は簡単な採取や弱い魔物の討伐などをしている間に、あっという間にノエルは青級まで昇級していた。
ダンジョン探索は、緑級以上が推奨ランクとされているため、ノエルが青級になったところでラヴィリオラからダンジョン探索の提案がされた。
冒険者として共に過ごすうちに、二人の連携は強化されていった。
長年連れ添った仲間のように、何も言わずとも相手の言いたいことが分かるようになってきていたのだ。
そんなある日、ラヴィリオラはノエルをとある場所に誘った。
そこは、ダンジョン都市の外。白い花が咲き乱れる小さな丘だった。
二人で用意したサンドイッチとお菓子を並べて、長閑な風景を楽しむ。
「どうだい? ダンジョン都市での生活は」
サンドイッチを頬張りながらそう問いかけるラヴィリオラに、ノエルは笑顔で答えた。
「楽しいよ。すごく……。俺を誘ってくれてありがとう」
「そうか。君は色々なものを抱えているだろう。わたしは思うんだ」
ノエルの青い瞳をじっと見つめながら、ラヴィリオラは次の言葉を口にする。
「君は……、とても強くなったな」
ラヴィリオラの言葉に、ノエルは緩く頭を振る。
「俺なんて、まだまだだよ。これからもラヴィリオラと居る為にも、俺はもっと強くなるよ」
強い意志の込められた視線を眩しく感じたラヴィリオラは、心の底から思うのだ。
ノエルは強くなったと。
身も心も、あの時から比べるとすごく強くなったと。
「そうか。それは楽しみだよ。わたしたちは結構いいパーティーになったと思うよ」
「そうだね……。いいパーティー仲間になれて、俺も嬉しいよ」
穏やかで温かい風を浴びながら、二人はそれぞれの想いから目を逸らすのだ。
その後、あっという間に時間は過ぎていった。
補助魔法を主とした後衛のノエルと、超好戦的な前衛のラヴィリオラのパーティーは、瞬く間に有名なパーティーへと成長していた。
以前のラヴィリオラを知っている街の人間は、その変わりように目を丸くさせるのだ。
効率重視で多少の怪我は大目に見ていたラヴィリオラを心底心配し、フォローするノエル。
そのノエルの働きはとても献身的だった。
小さな傷にも薬を丁寧に塗り込み、回復魔法も惜しみなくかけるのだ。
服装にもあれこれ気を配り、以前のような適当な服ではなく、休みの日には年相応の可愛らしい服装をするようになっていたのだ。
それは見るからにノエルの趣味が前面に押し出されたものだったが、ラヴィリオラは何も気が付いていない。
そんな一方的に見える献身だと思いきや、ラヴィリオラはラヴィリオラで重い感情をノエルに向けているのが見て取れたのだ。
薄い桃色を溶かしたような金の髪と、優しい青色の瞳の美しい青年に、街の女性たちはすぐに夢中になったのだ。
しかし、そんな女性たちを視線でけん制し、ノエルの美貌に嫉妬する男たちには拳で分からせたのだ。
はたから見れば、お互いに思い合っているのは明白だったが、二人の仲は全くといっていいほど進展していなかった。
マーティー曰く、「そのうち、丸く収まるわよ。下手に口出しして拗れたら大変だし、静観が一番よ」だそうだ。
そんな二人の仲に周囲の方がじれったく思っている中、長期休暇の終わりが差し迫った。
「はぁ……。あっという間だったな……。次に戻ってこれるのは、次の長期休暇かぁ」
「そうだね。あっという間だったね。すごく楽しかったよ。ラヴィリオラ、ありがとう」
「いいよ。わたしも君と過ごせてすごく楽しかったから」
「うん。戻ったら進級試験だね」
「そっか。まぁ、君もわたしも問題なく進級できるさ」
「あはは。相変わらず、すごい自信だね」
「ああ、自信があるからね」
そう言って近い距離で笑い合う。
近い距離ではあるが、どちらともなく、これ以上近づいてはいけないという暗黙の了解があった。
翌日、マーティーに挨拶をした二人は、英雄養成学校のある王都に戻ったのだ。
長期休暇を終えた、二週間後の実技実習中のことだった。
「ノエル!! とおまけの女! 俺のパーティーに入れてやるから感謝しろ!!」
傲慢な声が、静まり返った空間に響く。
声の主は、ジャスパーだった。
あの日、ノエルを追放したつもりが、自分の方がパーティーから追放されてしまったのだ。
それ以来、学校中の生徒から距離を置かれるようになっていた。
ジャスパーの家格が無駄に高いため、全員が当たり障りのない対応はするが、前のようなチヤホヤした空気は一切なかったのだ。
無駄に高いプライドもあり、あれからどのパーティーにも属せずにいたのだ。
しかし、進級試験はパーティーに所属するのが必須項目だったのだ。
だからといって、この発言にはその場にいた全員が眉を顰めるのだ。
しかし、ラヴィリオラとノエルは、ジャスパーの存在を完全に無視をしていた。
全く視界に入っていないのだろう、二人は楽しそうに実技実習に取り組んでいた。
そんな二人にしびれを切らせたジャスパーは、二人の視線に入るように場所を移動して再び声高らかに言うのだ。
「ノエル!! 貴様ぁ!! 俺のパーティーに入れてやると言っているんだ!」
ラヴィリオラがうるさそうに顔をしかめると、ジャスパーは顔を赤くさせて激昂した。
「貴様さえいなければ!! チビ女! どうやってノエルを唆した!! どうせそのからっむぐぅ……」
ジャスパーの言葉は途中で、ノエルの手によって遮られていた。
顔面を握りつぶすかの勢いで掴まれたジャスパーは、涙目でくぐもった唸り声を上げた。
「ふぐっ! うがっ!!」」
今まで誰も見たことのない冷たい視線でジャスパーを見たノエルが、一際感情のこもらない声で言うのだ。
「そんなに俺とラヴィリオラの仲を邪魔したいっていうのなら、受けて立つよ。俺に勝てたら考えてやらなくもない」
ノエルはそう言って、掴んでいたジャスパーを地面に叩きつける。
ジャスパーを冷たく見下ろしたノエルは、挑発するように右手の人差し指をくいくいと動かす。
それを見たジャスパーは、顔を真っ赤にさせながらノエルに飛びかかったのだ。
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